(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147125
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】床タイル張付けモルタルおよび床タイル張付け方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20231004BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20231004BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20231004BHJP
E04F 15/08 20060101ALI20231004BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 C
C04B24/38 A
E04F15/08 G
E04F15/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054704
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】庄司 広和
【テーマコード(参考)】
2E220
4G112
【Fターム(参考)】
2E220AA25
2E220BA03
2E220DA01
2E220DB09
2E220EA04
2E220GA26X
2E220GB14Z
2E220GB22Z
2E220GB32Z
2E220GB33Z
2E220GB34Z
2E220GB35Z
2E220GB37Z
2E220GB39Z
2E220GB40Z
4G112MD00
4G112PB30
4G112PB40
(57)【要約】
【課題】下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高い大形床タイル張付けモルタルを提供すること。更に、材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上である床タイル張付けモルタルを提供すること。また、下地にタイル張付けモルタルを塗布してからタイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高い床タイル張付け方法を提供すること。
【手段】セメント、細骨材、セメント用ポリマー、特定の水溶性セルロース誘導体を含有し、セメント用ポリマーの固形分量が、タイル張付けモルタルの固形分の特定割合且つ特定の水溶性セルロース誘導体の含有量をセメントの質量に対し特定の割合とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、細骨材、セメント用ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する床タイル張付けモルタルであって、前記セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の13質量%以下であり、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2~0.5質量%であることを特徴とする床タイル張付けモルタル。
【請求項2】
上記セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の3~13質量%であることを特徴とする請求項1記載の床タイル張付けモルタル。
【請求項3】
下地の表面に請求項1又は2記載の床タイル張付けモルタルをくし目鏝を用いて塗布した後に、該床タイル張付けモルタル表面に床タイルを押し付けることを行うことを特徴とする床タイル張付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床タイル張付けモルタルに関する。特に、大形床タイルの張付けに用いるときに、塗布してから60分経過後に大形床タイルを下地に張り付けても付着率が高い床タイル張付けモルタルに関する。また、本発明は、床タイル張付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一辺の長さが300mm(300mm角)以上の大きさの大形床タイル(大形の床用タイル)が施工されている。大形タイルを下地にモルタルで張付ける技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。下地に大形タイルをタイル張付けモルタルで張付けるときに、タイルが大きくなる程、タイル張付けに掛かる時間が長くなる。また、タイルが大きくなる程、タイルを張付けたときに、タイルにモルタルが付着する割合(付着率)が悪いことがあることが分かった。
【0003】
タイルへのタイル張付けモルタルの付着率が低いと、タイルとタイル張付けモルタルとの間に僅かな隙間が生じてしまう。床に大形床タイルをタイル張付けモルタルで張付けたときに、大形床タイルとタイル張付けモルタルとの間に隙間が生じてしまうと、大形床タイルの付着が悪くなるだけでなく、靴や台車の車輪等による荷重により張付けた大形床タイルが割れてしまうことがある。
【0004】
そこで、本願発明者等は、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで60分程度間が空いてしまっても、付着率が高い床タイル張付けモルタルがあれば良いことに気が付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-150075号公報
【特許文献2】実開平06-049631号公報
【特許文献3】特開平04-108952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高い床タイル張付けモルタルを提供することを目的とする。即ち、本発明は、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が90%以上である床タイル張付けモルタルを提供することを目的とする。更に、材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上である床タイル張付けモルタルを提供することを目的とする。また、本発明は、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高い床タイル張付け方法を提供することを目的とする。即ち、本発明は、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が90%以上である床タイル張付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、セメント、細骨材、セメント用ポリマー、特定の水溶性セルロース誘導体を含有し、セメント用ポリマーの固形分量が、タイル張付けモルタルの固形分の特定割合且つ特定の水溶性セルロース誘導体の含有量をセメントの質量に対し特定の割合とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で表す床タイル張付けモルタル、及び(3)で表す床タイル張付け方法である。
(1)セメント、細骨材、セメント用ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する床タイル張付けモルタルであって、前記セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の13質量%以下であり、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2~0.5質量%であることを特徴とする床タイル張付けモルタル。
(2)上記セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の3~13質量%であることを特徴とする上記(1)の床タイル張付けモルタル。
(3)下地の表面に上記(1)又は(2)の床タイル張付けモルタルをくし目鏝を用いて塗布した後に、該床タイル張付けモルタル表面に床タイルを押し付けることを行うことを特徴とする床タイル張付け方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高い床タイル張付けモルタル、即ち、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が90%以上であるタイル張付けモルタルが得られる。また、本発明によれば、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても付着率が高く、且つ材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上である床タイル張付けモルタルが得られる。また、本発明によれば、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が高いタイル張付け方法、即ち、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを張付けるまで60分経っても、付着率が90%以上である床タイル張付け方法が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルであっても、付着率が90%以上である床タイル張付けモルタルが得られる。また、本発明によれば、300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを用いても、付着率が90%以上である床タイル張付け方法が得られる。また、本発明によれば、タイルの付着率が90%以上であることから、300mm角タイル以上の大きさの大形床タイルを床に張付けても、その上を人や台車が通過しても靴や台車の車輪で割れることが起こり難い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の床タイル張付けモルタルは、セメント、細骨材、セメント用ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する床タイル張付けモルタルであって、前記セメント用ポリマーの固形分量が、セメントの質量の13質量%以下であり、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2~0.5質量%であることを特徴とする。
【0011】
本発明に使用するセメントとしては、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、白色セメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント、白色セメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメントが挙げられ、これらを二種以上併用してもよい。
【0012】
本発明におけるセメントの含有率は、床タイル張付けモルタルの固形分の35~60質量%であることが、下地に塗布し易いことから好ましい。より好ましいセメントの含有率は、床タイル張付けモルタルの固形分の40~55質量%である。
【0013】
本発明に使用するセメント用ポリマーとしては、ポリマーセメントモルタルやポリマーセメントコンクリートの結合材として用いられるものであればよく、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体,クロロプレンゴム,アクリロニトリル・ブタジエン共重合体又はメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリクロロピレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル・アクリル共重合体,酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体,変性酢酸ビニル,エチレン・酢酸ビニル共重合体,エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体,酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体,アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t-デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト,ゴムアスファルト及びパラフィン等の瀝青質等が好ましい例として挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。下地との接着が良いという理由から、本発明に使用するセメント用ポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル・アクリル共重合体,酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体,変性酢酸ビニル,エチレン・酢酸ビニル共重合体,エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体,酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体,アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t-デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の酢酸ビニル系樹脂;ポリアクリル酸エステル,ポリメタクリル酸エステル,アクリル酸エステル・スチレン共重合体,スチレン・アクリル共重合体,オールアクリル共重合体等のアクリル系樹脂;スチレン・ブタジエン共重合体,クロロプレンゴム,アクリロニトリル・ブタジエン共重合体又はメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴムから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。本発明に使用するセメント用ポリマーの状態は、液体、エマルション又はエマルションを粉末状にした再乳化型粉末樹脂の何れでもよい。
【0014】
本発明におけるセメント用ポリマーの含有率は、床タイル張付けモルタルに含まれるセメントの質量の13質量%以下である。この範囲の含有率であれば、本発明のタイル張付けモルタルは、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイル(1辺が300mm(目地共寸法)の正方形タイル(300mm角タイル)以上の大きさの床用タイル)を張付けるまで20℃において60分経っても、付着率が90%以上である。セメント用ポリマーの含有率は、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで20℃において60分経っても付着率が90%以上であり且つJIS A 6916:2014「建築用下地調整塗材」附属書A(規定)「タイル張付け用モルタルの試験方法」に準拠した材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上となることから、セメントの質量の3~13質量%とすることが好ましく、更に、5~12質量%とすることがより好ましい。
【0015】
本発明に使用する細骨材としては、細骨材は、特に限定されず、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、人工細骨材、スラグ細骨材等を用いることができ、これらの二種以上を併用してもよい。使用する細骨材としては、粒径1.2mm超の含有率が1%以下の細骨材が、タイルに付着し易いことから好ましい。本発明における細骨材の含有率は、床タイル張付けモルタルの固形分の35~60質量%であることが、下地に塗布し易いことから好ましい。より好ましい細骨材の含有率は、床タイル張付けモルタルの固形分の40~55質量%である。
【0016】
本発明は、水溶性セルロース誘導体を含有し、当該水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する。本発明におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有率は、床タイル張付けモルタルに含有するセメントの質量の0.2~0.5質量%、つまり、セメントの質量100質量部に対し0.2~0.5質量部とする。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量をこの範囲とすることで、下地に床タイル張付けモルタルを塗布してから大形床タイルを張付けるまで20℃において60分経っても付着率が90%以上とすることができる。セメントの質量の0.2質量%未満では、床タイル張付けモルタルを下地にくし目鏝を用いて塗布しても、下地にモルタルが殆ど残らずに、くし目鏝による凹凸が形成されず(くし目が付けられず)に、付着率を90%以上にし難い。また、セメントの質量の0.5質量%を超えると、付着率が90%未満となる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有率は、床タイル張付けモルタルに含有するセメントの質量の0.24~0.4質量%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の床タイル張付けモルタルには、本発明の効果を実質損なわない範囲で、セメント用ポリマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の混和材料を1種又は2種以上を用いることができる。この混和材料としては、例えば、セメント分散剤、膨張材、防水材、防錆剤、収縮低減剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、発泡剤、消泡剤、石膏、高炉スラグ微粉末、ポゾラン物質、表面硬化剤等が挙げられる。
【0018】
また、本発明の床タイル張付けモルタルには、水を用いる。水の使用量は、下地に塗布し易く且つ高い強度を得られることから、床タイル張付けモルタルの固形分(粉体)の10~30質量%、つまり、水粉体比を10~30質量%とすることが好ましく、より好ましくは、床タイル張付けモルタルの固形分の15~25質量%(水粉体比を15~25質量%)とする。
【0019】
本願発明の床タイル張付け方法は、下地の表面に上記の床タイル張付けモルタルをくし目鏝を用いて塗布した後に、該床タイル張付けモルタル表面に床タイルを押し付けることを行うことを特徴とする。ここで、下地としては特に限定されないが、コンクリート又はモルタル等のセメント硬化体からなる下地が好ましい。床タイル張付けモルタルの下地表面への塗布は、下地の表面全面に塗布することが好ましい。
【0020】
本発明において、下地の表面に上記の床タイル張付けモルタルを塗布する方法としては、くし目鏝を用いて塗布すればそれ以外は特に限定されない。くし目鏝のみを用いて床タイル張付けモルタルを塗布する方法、くし目鏝以外の鏝で床タイル張付けモルタルを塗布した後にくし目鏝で床タイル張付けモルタルの表面にくし目を付ける方法等が好ましい方法として例示できる。
【0021】
本発明において、下地表面に塗布した床タイル張付けモルタル表面に床タイルを押し付ける方法としては、特に限定されないが、床タイル張付けモルタル表面に床タイルを配置し当該タイル表面をゴムハンマーで叩く方法、ゴム製又は木製緩衝材を床タイル表面に配置した上で当該緩衝材表面をハンマーで叩く方法、床タイル張付けモルタル表面に床タイルを配置し当該タイル表面を振動機で振動させる方法、或いは、ゴム製又は木製緩衝材を床タイル表面に配置した上で当該緩衝材表面を振動機で振動させる方法が、好ましい例として挙げられる。床タイル張付けモルタルを塗布してから当該床タイル張付けモルタル表面に床タイルを押し付けるまでの時間は、60分以内とすることが好ましい。
【実施例0022】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
<モルタルの作製>
以下の使用材料を用いて、プレミックスモルタルを14種類(No.1~No.14)を作製した。作製したプレミックスモルタルに水を加えて混練し、床タイル張付けモルタルを作製した。14種類の床タイル張付けモルタルは、セメント:500質量部、細骨材1:350質量部、細骨材2:150質量部、石膏:1質量部、水溶性セルロース誘導体:セメント質量の0.15~0.8質量%、セメント用ポリマー:固形分がセメント質量の0~20質量%、水:タイル張付けモルタルの固形分(プレミックスモルタル)の16.5~20質量%(フロー値が160±10mmとなるように調整。)としたモルタルとした。作製したプレミックスモルタルの配合、並びに、試験に用いた床タイル張付けモルタルに含まれる水溶性セルロース誘導体の含有割合、セメント用ポリマーの含有割合、及び水の含有割合(床タイル張付けモルタルの固形分の質量に対する水の質量割合(水粉体比))を表1に示した。
<使用材料>
・セメント: 普通ポルトランドセメント、記号:C
・細骨材1: 石灰石砂、粒径1.2mm超の含有率0.1質量%、粒径0.3mm以下の含有率2.4質量%、記号:S1
・細骨材2: 石灰石砂、粒径0.6m超の含有率0.0質量%、粒径0.075mm以下の含有率0.6質量%、記号:S2
・石膏: 二水石膏、記号:Gyp
・水溶性セルロース誘導体1: ヒドロキシプロピルメチルセルロース(市販品)、記号:MC1
・水溶性セルロース誘導体2: ヒドロキシエチルメチルセルロース(市販品)、記号:MC2
・水溶性セルロース誘導体3: ヒドロキシエチルメチルセルロースを主成分とする混合物(市販品)、記号:MC3
・セメント用ポリマー: 再乳化型粉末樹脂(主成分:エチレン・酢酸ビニル共重合体)、記号:P
・水: 水道水、記号:W
【0024】
【0025】
作製した床タイル張付けモルタルについて、以下に示す品質評価試験を行った。試験結果を表2~表4に示した。表4は、床タイル張付けモルタルについての評価を示した。下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が90%以上且つ材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上であった場合を「優良」(記号:◎)と評価した。下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が90%以上であるが、材齢28日における付着強さが2.0N/mm2未満であった場合を「良」(記号:○)と評価した。また、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が90%未満の場合を「不充分」(記号:×)と評価した。
<フロー試験>
JIS A 6916:2014「建築用下地調整塗材」の7.7 軟度変化試験に規定される初期フロー値を測定した。初期フロー値は、ミリメートルを単位とする無名数の整数で表したものである。初期フロー値をミリメートル単位で表しフロー値とした。
<単位容積質量試験>
JIS A 6916:2014「建築用下地調整塗材」附属書A(規定)「タイル張付け用モルタルの試験方法」のA.2.4 単位容積質量試験に従って求めた。
<保水性試験>
JIS A 6916:2014「建築用下地調整塗材」附属書A(規定)「タイル張付け用モルタルの試験方法」のA.2.3 保水性試験(ろ紙法)により保水率を求めた。
<付着強さ試験>
JIS A 6916:2014「建築用下地調整塗材」附属書A(規定)「タイル張付け用モルタルの試験方法」のA.2.5付着強さ試験により付着強さを測定した。養生は標準養生とした。
<付着率試験>
JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」附属書B(規定)「舗装・境界ブロック類」推奨仕様B-1「平板」に規定する普通平板N300(寸法:300×300×60mm、コンクリート製)の表面を研磨布(P180)で研磨処理後に、樹脂エマルション(吸水調整材)を塗布・乾燥させた面に、作製したタイル張付けモルタルを13mmくし目鏝を用いて全面に塗り付けた。所定時間(30分又は60分)経過後に、300mm角の大形床タイル(製作寸法:294×294×9mm)又は150mm角の床用タイル(製作寸法:144×144×9mm)を、塗布したタイル張付けモルタルの上面に置いた後に、タイルの4辺からタイル張付けモルタルがはみ出るまでゴムハンマーでタイル表面を叩いた後に、床用タイルを剥がし、剥がしたタイル裏面を観察し、次式(1)により、付着率を求めた。尚、叩き方に差が出ないように、叩いた後のモルタルの厚さが3mm程度となるように調整した。
付着率(%)=(タイル裏面に付着したモルタル面積)÷(タイル裏面の面積)×100 ・・・・ (1)
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の13質量%以下であり、且つヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2~0.5質量%であるタイル張付けモルタルは、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が90%以上且つ材齢28日における付着強さが1.5N/mm2以上であった。更に、セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の3~13質量%であるタイル張付けモルタルは、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が95%以上であった。また、セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の3~13質量%であり、且つヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2~0.5質量%であるタイル張付けモルタルは、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が95%以上且つ材齢28日における付着強さが2.0N/mm2以上であった。それに対し、セメント用ポリマーの固形分量がセメントの質量の13質量%を超えるタイル張付けモルタル、水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースではないタイル張付けモルタル、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.5質量%を超えるタイル張付けモルタルは、何れも、下地にタイル張付けモルタルを塗布してから60分経って300mm角の大形床タイルを張付けたときの付着率が90%未満であった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がセメントの質量の0.2質量%未満であるタイル張付けモルタルは、下地にくし目鏝を用いて塗布しても、下地にモルタルが殆ど残らず、くし目鏝による凹凸が形成されず(くし目が付けられず)に、大形床タイルを張付けられなかった。