(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014713
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】運行管理装置、運行管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230124BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230124BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20230124BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118827
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA07
5H181BB04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181MB02
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】乗務員による不正行為を検知できる運行管理装置、運行管理システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】運行管理装置は、ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより車両の運行を管理する。運行管理装置は、車載器が記録した運行データ(稼働情報)を取得する(S1)。運行管理装置は、運行データと、車両に対して作成された運行指示との比較(S2)により、車両の運行における運行指示からの逸脱(S3でYES)が不正か否かを判定する(S4,S5,S6)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置であって、
前記車両に対して作成された運行指示を保存する指示記憶部と、
前記車載器が記録した稼働情報を取得する取得部と、
前記指示記憶部に保存された前記運行指示と前記取得部が取得した前記稼働情報との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定する判定部と、
を備えた運行管理装置。
【請求項2】
前記取得部は、車両速度、車両位置、及びエンジン回転数のうち、少なくとも車両速度の情報を時刻情報と関連付けて、前記稼働情報として取得する、
請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記逸脱が、複数の条件のうちいずれを満たすかに応じて、前記不正の種別を判定する、
請求項1又は2に記載の運行管理装置。
【請求項4】
前記取得部が取得した前記稼働情報を保存する稼働情報記憶部をさらに備え、
前記取得部は、前記車両以外の他車両に搭載された他の車載器が取得した他の稼働情報を取得し、
前記稼働情報記憶部は、前記他の稼働情報をさらに保存し、
前記判定部は、前記他の稼働情報を利用して、前記車両の運行における前記運行指示からの前記逸脱が不正か否かを判定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記稼働情報及び前記他の稼働情報に基づいて、前記運行指示で指定されたルートの妥当性を判定し、前記妥当性の判定結果を加味して、前記逸脱が不正か否かを判定する、
請求項4に記載の運行管理装置。
【請求項6】
前記判定部によって不正と判定された場合、前記稼働情報において、前記運行指示から逸脱し不正と判定された部分を示す提示部を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の運行管理装置と、
前記車載器と、
前記ネットワークに接続されて、前記逸脱が不正か否かを前記判定部が判定した結果を、前記運行管理装置から受信する端末と、
を備えた運行管理システム。
【請求項8】
コンピュータを、ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置として機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータに、
前記車載器が記録した稼働情報を取得するステップと、
前記稼働情報と、前記車両に対して作成された運行指示との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するステップと、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理装置、運行管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配送業者等は、トラック等の車両に搭載したデジタルタコグラフ等の車載器が収集した稼働情報を運行管理装置に集約することで、車両の運行管理や、乗務員の労務管理を行っている。特許文献1には、走行中の乗り合い車両の運行状況を把握して運行計画を調整し、調整した運行計画を車載用管理装置に送信することにより、乗務員への指示を行うセンタ装置が開示されている。特許文献1のセンタ装置によれば、例えば走行速度、遅延状況、混雑状況等の運行状況に応じて、正常な運行ダイヤを守れるように、運行計画を調整し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記運行管理装置によれば、車両が走行中又は停止中であるか、もしくは、車両の位置等といった、車両の状態を把握できる。しかしながら、例えば、車両の停止が、乗務員の正当な行為によるものか、又は、不要な停車(さぼり)であるかは、上記運行管理装置によっては把握できない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗務員による不正行為を検知できる運行管理装置、運行管理システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理装置は、下記を特徴としている。
ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置であって、
前記車両に対して作成された運行指示を保存する指示記憶部と、
前記車載器が記録した稼働情報を取得する取得部と、
前記指示記憶部に保存された前記運行指示と前記取得部が取得した前記稼働情報との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定する判定部と、
を備えた運行管理装置。
【0007】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、下記を特徴としている。
上記運行管理装置と、
前記車載器と、
前記ネットワークに接続されて、前記逸脱が不正か否かを前記判定部が判定した結果を、前記運行管理装置から受信する端末と、
を備えた運行管理システム。
【0008】
さらに、前述した目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、下記を特徴としている。
コンピュータを、ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置として機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータに、
前記車載器が記録した稼働情報を取得するステップと、
前記稼働情報と、前記車両に対して作成された運行指示との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するステップと、を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る運行管理装置、運行管理システム及びプログラムによれば、乗務員による不正行為を検知できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態の運行管理システムの一例を示す構成図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す車載器が行う処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示すサーバがDBに格納した稼働情報の一例である速度及びエンジン回転数を時間の経過とともに示したグラフである。
【
図6】
図6は、
図1に示すサーバがDBに格納した稼働情報の一例である燃料残量を時間の経過とともに示したグラフである。
【
図7】
図7は、
図1に示すサーバが行う不正行為判定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図1に示すサーバが行う運行データ解析の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図1に示すサーバが行う、運行指示の妥当性判定の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
図1は、実施形態の運行管理システム1の一例を示す構成図である。本実施形態の運行管理システム1は、トラック(車両)10の乗務員による不正行為を検知するシステムである。同図に示すように、運行管理システム1は、車両の一例であるトラック10に搭載された車載器2と、車載器2とインターネット通信網11を介して通信可能なサーバ3と、サーバ3とインターネット通信網11を介して通信可能な端末6と、を備えている。サーバ3は、車載器2とインターネット通信網11を介して車載器2と情報の送受信を行うことによりトラック10の運行を管理する。
【0014】
車載器2は、
図2に示すように、インターネット通信部21と、GPS通信部22と、外部接続端子23と、CANインタフェース24と、制御部25と、を備えている。インターネット通信部21は、インターネット通信網11に接続するための回路やアンテナなどで構成されている。GPS通信部22は、周知のように複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、受信した電波から現在位置、時刻を求めて後述する制御部25に出力する。外部接続端子23には、表示部30やスピーカ40などの外部機器が接続されている。表示部30には、目的地までの走行経路などを表示する。スピーカ40は、ドライバに対して走行経路などを案内する音声を出力する。
【0015】
CANインタフェース(I/F)24は、車内のCAN(Controller Area Network)バスに接続するために設けられている。車載器2は、CAN通信を行うことにより、CANから燃料残量や、速度、G値(加速度)、エンジン回転数などの運行データを取得できる。
【0016】
制御部25は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備え、プログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)で構成され、車載器2全体の制御を司る。制御部25は、定期的にGPS通信部22から現在位置を時刻情報と関連付けて取得してサーバ3に送信する。また、制御部25は、CANI/F24から定期的に燃料残量や、速度、エンジン回転数、その他運行データを取得してサーバ3に送信する。
【0017】
サーバ3は、
図3に示すように、インターネット通信部31と、指示データデータベース(DB)32と、運行データDB33と、制御部34と、を有している。
【0018】
インターネット通信部31は、インターネット通信網11に接続するための回路などで構成されている。
【0019】
指示データDB32は、トラック10に対して作成された運行指示を保存する指示記憶部として機能する。運行指示は、一例として、管理者によって端末6において作成され、指示データDB32に保存される。運行指示は、トラック10の当日の運行計画、すなわち乗務員への指示内容を示し、トラック10の行先(目的地)、走行ルート、休憩時間、休憩場所、搬送する荷物の種別等の情報を含み得る。
【0020】
運行データDB33には、車載器2から定期的に送信される車両位置、車両速度、エンジン回転数、燃料残量などが、時刻情報と関連付けて記録される。すなわち、運行データDB33は、インターネット通信部31が車載器2から取得した稼働情報の一例である運行データを保存する。運行データDB33は、複数のトラック10に搭載された各車載器2が取得した運行データを保存する。
【0021】
制御部34は、例えばRAMやROMなどのメモリを備え、プログラムに従って動作するCPU(コンピュータ)で構成され、サーバ3全体の制御を司る。制御部34は、指示データDB32に保存された運行指示と、車載器2から取得した運行データとの比較により、トラック10の運行における運行指示からの逸脱が不正か否かを判定する。
【0022】
端末6は、例えばPCやスマートフォンなどから構成され、インターネット通信網11に接続されてサーバ3と通信する。端末6は、配送業者の管理者が操作する端末である。端末6は、トラック10の運行における運行指示からの逸脱が不正か否かを、サーバ3が判定した結果を、サーバ3から受信する。
【0023】
次に、上述した構成の運行管理システム1の動作について
図4~
図9を参照して説明する。
図4は、
図1に示す車載器2のμCOM25(以下、車載器2と略記する)が行う処理手順を示すフローチャートである。車載器2は、イグニッションスイッチ(以下、IGと略記)がオンしたか否かを判定する(S1)。IGがオンされていれば(S1でYES)、車載器2は、定期的に運行データを取得して(S2)、取得した運行データをサーバ3に送信する(S3)。
【0024】
その後、車載器は、IGがオフしたか否かを判定する(S4)。IGがオフされていなければ(S4でNO)、車載器2は、再びS2に戻り、定期的に運行データの取得、サーバ3への送信を繰り返す。IGがオフされていれば(S4でYES)、車載器2は、S1に戻る。車載器2が取得し、送信した運行データは、サーバ3が取得し、保存する。
【0025】
図5は、サーバ3が運行データDB33に格納した稼働情報の一例である速度及びエンジン回転数を時間の経過とともに示したグラフであり、
図6は、サーバ3が運行データDB33に格納した稼働情報の一例である燃料残量を時間の経過とともに示したグラフである。
図5において、グラフL1はIGがオンされていた時間、グラフL2はエンジン回転数、グラフL3は速度をそれぞれ示す。
図5及び
図6に示すように、サーバ3の運行データDB33には、トラック10の一運行中における運行データが時刻情報と関連付けて保存される。また、運行データDB33には、トラック10の位置情報が時刻情報と関連付けて保存され、例えば地図上に重畳されて表示される。
【0026】
図7は、サーバ3が行う不正行為判定の処理手順の概要を示すフローチャートである。サーバ3の制御部34(以下、サーバ3と略記する)は、例えば、所定のタイミングで、又は、管理者の要求に応じて、乗務員の運行状況確認を行う。
図7並びに後述する
図8及び
図9に示す処理は、サーバ3に予め組み込まれたプログラムが実行されることにより実施される。
【0027】
まず、サーバ3は、トラック10に対して作成された運行指示を指示データDB32から取得し、トラック10の当日分の運行データ(稼働情報)を運行データDB33から取得する(S1)。サーバ3は、運行データと運行指示とを比較し(S2)、運行指示からの逸脱があるか否かを判定し(S3)、逸脱がある場合(S3でYES)、逸脱が条件を満たすか否かを判定する(S4)。逸脱有無の判定及び逸脱が条件を満たすか否かの判定の詳細については後述する。逸脱が条件を満たす場合(S4でYES)、サーバ3は不正行為の疑いありと判定する(S5)。一方、運行指示からの逸脱がない場合(S3でNO)又は逸脱が条件を満たさない場合(S4でNO)、サーバ3は不正行為なしと判定する(S6)。
【0028】
次に、
図8を参照して、乗務員によるトラック10の運行状況、すなわち不正行為有無の確認に関する具体的な手順を説明する。
図8は、サーバ3が行う運行データ解析の処理手順を示すフローチャートである。サーバ3は、運行データ解析を行うことにより、不正行為有無を確認する。サーバ3は、一運行分の運行データにおいて、速度データがない、すなわち速度が時速2km以下の場合(S11でYES)、トラック10が停止状態であると判定する(S12)。サーバ3は、この停止時間が閾値より長い場合(S13でYES)、乗務員が休憩状態であると判定する(S14)。この閾値として、例えば管理者によって定められた値を使用できる。このように、トラック10の速度によって休憩状態と判定された場合に、サーバ3は、運行データと運行指示との比較により、運行指示からの逸脱有無の判定、及び逸脱が条件を満たすか否かの判定を行う。サーバ3は、一例として、一運行分の運行データのすべてについて休憩状態と判定された時間のデータセットを特定し、各データセットについて、以下の判定を行う。
【0029】
サーバ3は、休憩状態と判定したデータセットに含まれる位置が指定場所以外である場合(S15でYES)、さぼりの疑いありと判定する(S16)。また、サーバ3は、休憩状態の継続時間である休憩時間が閾値より長い場合(S17でYES)、さぼりの疑いありと判定する(S16,S18)。
【0030】
サーバ3は、休憩状態と判定したデータセットに含まれるエンジン回転数が、アイドリング回転数よりも高い場合(S19でYES)、燃料盗難の疑いありと判定する(S20)。燃料盗難の手口として、エンジンルームから燃料タンクへ燃料を戻すためのリターンパイプを、燃料タンクから外してポリタンクに繋ぎ、燃料を抜き取ることが知られている。停車中にエンジン回転数を高くすることは、この燃料盗難の手口において、ポリタンクへの燃料の戻り量を増加させ効率よく燃料を抜き取ろうとしている可能性が高い。そこで、サーバ3は、S19においてエンジン回転数が高い場合に、燃料盗難の疑いありと判定する。
【0031】
サーバ3は、例えば、走行及び停止を繰り返す、不要なアイドリング等の不審な車両挙動を示す異常データがある場合(S21でYES)、不正行為の疑いありと判定する(S22)。
【0032】
サーバ3は、上述したS15,S17,S19,S21の各条件を満たすか否かをそれぞれ判定し、いずれかがYESの場合、運行指示からの逸脱ありかつ条件を満たすとして、不正行為の疑いありと判定し、判定結果を運行データDB33に保存する。サーバ3は、逸脱が、複数の条件のうちいずれを満たすかに応じて、不正の種別が、例えば、さぼり、燃料盗難、その他不正行為のいずれであるかを判定する。一方、いずれの条件も満たさなかった場合(S15,S17,S19,S21の全てでNO)、サーバ3は、不正行為なしと判定してS11の処理に戻る。
【0033】
サーバ3は、不正行為の疑いありと判定した場合、運行データDB33に保存された運行データにおいて、運行指示から逸脱し不正と判定された部分を特定して、端末6に提示する。運行データから、不正と判定された部分だけを抜き出したり、強調して提示することにより、管理者は、不正と判定された運行データの部分を容易に把握できる。よって、管理者は、例えば、運行時間や場所を指摘しながら、乗務員に確認・指導が可能となる。
【0034】
上述したように、サーバ3は、
図8の処理手順によれば、実際の運行データにおいて運行指示からの逸脱がある場合、その逸脱に不正行為の疑いがあるか否かを判定できる。よって、管理者は、不正行為の疑いがある場合には、乗務員への確認や指導を行うことができる。
【0035】
しかしながら、例えば当日の道路状況によっては、又は、作業指示にミスがあった場合には、サーバ3は乗務員の不正行為を正しく判定できない、又は、判定処理自体が無駄になるおそれがある。そこで、サーバ3は、当日の複数のトラック10に関する運行データをもとに運行指示の妥当性を判定する機能を有する。
【0036】
図9は、サーバ3が行う、運行指示の妥当性判定の処理手順を示すフローチャートである。サーバ3は、運行データDB33から、当日に同じ運行指示を受けた複数のトラック10の運行データを取得する(S31)。サーバ3は、複数のトラック10の運行データから、計画ルート(指示された走行経路)で工事があったか否か(S32)、計画ルートで渋滞があったか否か(S33)、計画ルートでその他障害があったか否か(S34)、をそれぞれ判定する。サーバ3は、例えば、複数のトラック10についての運行データが、共通して、計画ルートとは異なる特定のルートで走行したことを示している場合には、工事等があったと判定し(S32,S33,S34でYES)、計画ルートが不適正と判定する(S37)。また、サーバ3は、例えば管理者の入力操作により、計画ルートの誤入力があったと判定した場合(S35でYES)、計画ルートが不適正と判定する(S37)。一方、S32~S36の全てがNOの場合、サーバ3は、計画ルートが適正と判定する(S36)。
【0037】
図9に示した運行指示の妥当性判定処理によれば、サーバ3は、複数のトラック10の運行データを利用することで、当日の道路状況に関するデータを収集できるため、実際の道路状況に照らし運行指示が妥当であったかを判定できる。また、計画ルートが誤入力された場合には、サーバ3は、運行指示が妥当でないと判定できる。よって、サーバ3は、運行指示の妥当性を予め判定し、妥当な運行指示であった場合に、
図7及び
図8に示したように、トラック10の運行状況確認を行い、乗務員の不正行為の疑いを判定できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の運行管理システム1によれば、運行指示と実際の運行データ(稼働情報)との比較により、トラック10の実際の運行における運行指示からの逸脱有無を判定し、逸脱が不正か否かを判定するので、乗務員の不正行為を検知できる。また、不正行為が検知された場合には、乗務員への確認や指導を行うことにより、乗務員の不正行為を抑止できる。さらに、乗務員のモラルの向上を促し、輸送時における燃料費の低減を図ることができる。
【0039】
また、運行データにおける運行指示からの逸脱が、複数の条件のうちいずれを満たすか否かに応じて、サーバ3は、不正の種別が、例えば、燃料盗難、又はさぼりであると判定できる。
【0040】
加えて、他のトラック10の運行状況を考慮することにより、精度よく、不正行為か否かを判定できる。例えば、トラック10の実際の運行が運行指示から逸脱している場合において、他のトラック10の運行も同様に運行指示から逸脱していたときは、当日の道路状況等に応じた適切な行為であり、不正行為なしと判定できる。
【0041】
さらに、サーバ3は、運行指示で指定されたルートの妥当性の判定結果を加味することにより、より精度よく不正行為か否かを判定できる。例えば、計画ルートが妥当でない場合には、サーバ3は、逸脱が不正か否かの判定を行わない、又は、逸脱が不正と判定された場合において、計画ルートが妥当でなかったときは、サーバ3は、逸脱が不正でないと再判定できる。
【0042】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。上述した実施形態では、サーバ3が、全ての判定処理を行ったが、必要な情報をインターネット通信網11を介して送受信することで、
図7,8,9に示す処理の一部又は全部を、端末6又は車載器2が行うこともできる。
【0043】
例えば、不正行為か否かを判定するための条件として、上述した条件(
図8のS15,S17,S19,S21)以外を利用できる。
運行データとして、運搬物が、冷蔵又は冷凍のように温度管理が必要な物品、又は精密部品である等の運搬物種別の情報が含まれる場合において、種別に応じて異なる条件を設けてもよい。一例として、温度管理が不要な通常物品であれば、休憩時間が第1閾値を越えた時に不正行為と判定し、冷蔵品であれば、第1閾値よりも小さい第2閾値を越えた時に不正行為と判定できる。
さらに、要注意場所として、特定の位置情報を予め登録しておき、要注意場所での停車が含まれる場合に、不正行為と判定してもよい。
【0044】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る運行管理装置、運行管理システム、プログラム、運行管理方法、及び記録媒体の特徴をそれぞれ以下[1]~[11]に簡潔に纏めて列記する。
【0045】
[1] ネットワーク(インターネット通信網11)に接続されて車両(トラック10)に搭載された車載器(2)と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置(サーバ3)であって、
前記車両に対して作成された運行指示を保存する指示記憶部(指示データDB32)と、
前記車載器が記録した稼働情報を取得する取得部(インターネット通信部31)と、
前記指示記憶部に保存された前記運行指示と前記取得部が取得した前記稼働情報との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定する判定部(制御部34)と、
を備えた運行管理装置(サーバ3)。
【0046】
上記[1]の構成の運行管理装置によれば、運行指示と稼働情報との比較により、車両の実際の運行における運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するので、乗務員の不正行為を検知できる。よって、この運行管理装置によれば、乗務員の不正行為を抑止できる。また、この運行管理装置によれば、乗務員のモラルの向上を促し、輸送時における燃料費の低減を図ることができる。
【0047】
[2] 前記取得部(インターネット通信部31)は、車両速度、車両位置、及びエンジン回転数のうち、少なくとも車両速度の情報を時刻情報と関連付けて、前記稼働情報として取得する、
上記[1]に記載の運行管理装置(サーバ3)。
【0048】
上記[2]の構成の運行管理装置によれば、少なくとも車両速度の情報と時刻情報とから、指定時間以上の停車は不正行為と判定できる。また、この運行管理装置によれば、車両速度の情報、時刻情報に加え、車両位置の情報から、指定場所以外での停車は不正行為と判定できる。
【0049】
[3] 前記判定部(制御部34)は、前記逸脱が、複数の条件のうちいずれを満たすかに応じて、前記不正の種別を判定する(S15~S22)、
上記[1]又は[2]に記載の運行管理装置(サーバ3)。
【0050】
上記[3]の構成の運行管理装置によれば、逸脱が、複数の条件のうちいずれを満たすか否かに応じて、例えば、燃料盗難、又はさぼりである等、不正行為の種別を分類して判定できる。
【0051】
[4] 前記取得部が取得した前記稼働情報を保存する稼働情報記憶部(運行データDB33)をさらに備え、
前記取得部(制御部34)は、前記車両以外の他車両(10)に搭載された他の車載器(2)が取得した他の稼働情報を取得し、
前記稼働情報記憶部(運行データDB33)は、前記他の稼働情報をさらに保存し、
前記判定部(制御部34)は、前記他の稼働情報を利用して、前記車両の運行における前記運行指示からの前記逸脱が不正か否かを判定する、
上記[1]~[3]のいずれか一に記載の運行管理装置。
【0052】
上記[4]の構成の運行管理装置によれば、他車両の運行状況を考慮することにより、精度よく、不正行為か否かを判定できる。この運行管理装置によれば、例えば、車両の運行が運行指示から逸脱している場合において、他車両の運行も同様に運行指示から逸脱していたときは、当日の道路状況等に応じた適切な行為であり、不正行為なしと判定できる。
【0053】
[5] 前記判定部(制御部34)は、前記稼働情報及び前記他の稼働情報に基づいて、前記運行指示で指定されたルートの妥当性を判定し、前記妥当性の判定結果を加味して、前記逸脱が不正か否かを判定する(
図9参照)、
上記[4]に記載の運行管理装置(サーバ3)。
【0054】
上記[5]の構成の運行管理装置によれば、運行指示で指定されたルートの妥当性の判定結果を加味することにより、より精度よく不正行為か否かを判定できる。この運行管理装置によれば、例えば、計画ルートが妥当でない場合には、逸脱が不正か否かの判定を行わないことで、適切な走行を行った乗務員に対して不正行為と誤判定することを回避できる。又は、この運行管理装置によれば、逸脱が不正と判定された場合において、計画ルートが妥当でなかったときは、逸脱が不正でないと再判定することで、精度よく不正行為か否かを判定できる。
【0055】
[6] 前記判定部によって不正と判定された場合、前記稼働情報において、前記運行指示から逸脱し不正と判定された部分を示す提示部(インターネット通信部31)を備える、
上記[1]~[5]のいずれか一に記載の運行管理装置(サーバ3)。
【0056】
上記[6]の構成の運行管理装置によれば、管理者が、不正と判定された稼働情報の部分を示して、乗務員に確認・指導が可能となる。
【0057】
[7] 上記[1]~[6]のいずれか一に記載の運行管理装置と、
前記車載器と、
前記ネットワークに接続されて、前記逸脱が不正か否かを前記判定部が判定した結果を、前記運行管理装置から受信する端末と、
を備えた運行管理システム。
【0058】
上記[7]の構成の運行管理システムによれば、運行指示と稼働情報との比較により、車両の実際の運行における運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するので、乗務員の不正行為を検知できる。よって、この運行管理システムによれば、乗務員の不正行為を抑止できる。また、この運行管理システムによれば、乗務員のモラルの向上を促し、輸送時における燃料費の低減を図ることができる。
【0059】
[8] コンピュータを、ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置として機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータに、
前記車載器が記録した稼働情報を取得するステップ(S1)と、
前記稼働情報と、前記車両に対して作成された運行指示との比較(S2)により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱(S3でYES)が不正か否かを判定するステップ(S4,S5,S6)と、を実行させるためのプログラム。
【0060】
上記[8]の構成のプログラムによれば、運行指示と稼働情報との比較により、車両の実際の運行における運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するので、乗務員の不正行為を検知できる。よって、このプログラムによれば、乗務員の不正行為を抑止できる。また、このプログラムによれば、乗務員のモラルの向上を促し、輸送時における燃料費の低減を図ることができる。
【0061】
[9] 前記指示記憶部は、前記運行指示として、前記車両が運搬する運搬物の種別を含む情報を保存し、
前記判定部は、前記種別に応じて、前記逸脱が不正か否かを判定する、
上記[1]~[6]のいずれか一に記載の運行管理装置。
【0062】
[10] ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置における運行管理方法であって、
前記車載器が記録した稼働情報を取得し、
前記稼働情報と、前記車両に対して作成された運行指示との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定する、
運行管理方法。
【0063】
[11] コンピュータを、ネットワークに接続されて車両に搭載された車載器と情報の送受信を行うことにより前記車両の運行を管理する運行管理装置として機能させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記車載器が記録した稼働情報を取得するステップと、
前記稼働情報と、前記車両に対して作成された運行指示との比較により、前記車両の運行における前記運行指示からの逸脱が不正か否かを判定するステップと、を実行させるためのプログラムである、
記録媒体。
【符号の説明】
【0064】
1 運行管理システム
2 車載器
3 サーバ
6 端末
10 トラック(車両)
11 インターネット通信網
21,31 インターネット通信部
22 GPS通信部
23 外部接続端子
24 CANインタフェース(I/F)
25,34 制御部
30 表示部
31 インターネット通信部
32 指示データデータベース(DB)
33 運行データデータベース(DB)
40 スピーカ