(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147130
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】多孔性シリコンを用いた応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1286 20160101AFI20231004BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20231004BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M8/1286
H01M8/12 101
H01M8/12 102Z
H01M8/1226
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066258
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0039238
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522149614
【氏名又は名称】エイエムエックス ラブ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMX Lab Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンヨン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H126GG12
5H126HH04
(57)【要約】
【課題】メンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物燃料電池は、シリコン基板、前記シリコン基板の第1面に形成された電解質膜、前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極、前記シリコン基板の前記第1面の反対面である第2面から前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面の前記第1電極に対向する一部が露出するように形成されたリセス部、及び少なくとも前記電解質膜の露出した前記第2面に形成された第2電極を備え、前記シリコン基板は少なくとも前記リセス部の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の第1面に形成された電解質膜と、
前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極と、
前記シリコン基板の前記第1面の反対面である第2面から前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面の前記第1電極に対向する一部が露出するように形成されたリセス部と、
少なくとも前記電解質膜の露出した前記第2面に形成された第2電極と
を備え、
前記シリコン基板は少なくとも前記リセス部の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部を含む、
固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
シリコン基板の第1面及び前記第1面の反対面である第2面にそれぞれ誘電体膜を蒸着する工程と、
前記第2面に蒸着した誘電体膜を所定のパターンによって除去する工程と、
前記第1面に蒸着した前記誘電体膜の第1面に電解質膜を形成する工程と、
前記第2面の前記誘電体膜が除去された部分をエッチングし、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜が露出するようにリセス部を形成する工程と、
前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜及び前記第2面に残っている前記誘電体膜を除去する工程と、
前記シリコン基板の少なくとも前記リセス部の縁の付近を多孔性で形成する工程と、
前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に第1電極を形成する工程と、
前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜を除去することで露出した前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面に第2電極を形成する工程と
を備える、
固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項3】
多孔性シリコン基板と、
前記多孔性シリコン基板の第1面に形成された電解質膜と、
前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極と、
前記多孔性シリコン基板の前記第1面の反対面である第2面から前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面の前記第1電極に対向する一部が露出するように形成されたリセス部と、
少なくとも前記電解質膜の露出した前記第2面に形成された第2電極と
を備える、
固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
単結晶シリコン基板の第1面及び前記第1面の反対面である第2面にそれぞれ誘電体膜を蒸着する工程と、
前記第2面に蒸着した誘電体膜を所定のパターンによって除去する工程と、
前記第1面に蒸着した前記誘電体膜の第1面に電解質膜を形成する工程と、
前記第2面の前記誘電体膜が除去された部分をエッチングし、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜が露出するようにリセス部を形成する工程と、
前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜及び前記第2面に残っている前記誘電体膜を除去する工程と、
前記シリコン基板を多孔性で形成する工程と、
前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に第1電極を形成する工程と、
前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜を除去することで露出した前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面に第2電極を形成する工程と
を備える、
固体酸化物燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性シリコンを用いた応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は化学エネルギーを電気エネルギーに変換する高効率のエネルギー変換装置の一種で、電解質として固体酸化物膜を用いる燃料電池である。
【0003】
SOFCの電解質膜に用いられる電解質としてはYSZ(Yttria Stabilized Zirconia)が主に用いられ、Micro-electro-mechanical System(MEMS)工程を介して製造する薄膜型(Thinfilm)SOFCはシリコン基板にFree Standing方式で電解質膜と電極を形成する後面エッチングのメンブレン構造を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即ち、シリコン基板上に電解質薄膜を形成した後、後面エッチングを介して電解質薄膜の下部を露出した後に、電解質薄膜の上下に電極を形成することで電解質の両面に反応気体が到達できるようにする。
【0005】
このように、MEMS基盤の薄膜型SOFCはメンブレンと電極を薄膜で形成することで電解質内のイオン伝導によるオーミック損失を最小化し、低温での動作性能を向上させる長所があるが、動作時に縁の付近に応力が集中し、この付近に位置するセルが損傷する短所がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許公報4、914、831
【特許文献2】米国特許公報10、637、088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、メンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池を提供することを一つの目的とする。
【0008】
さらに、メンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池の製造方法を提供することをもう一つの目的とする。
【0009】
本発明の解決課題は以上で言及されたものに限定されず、言及されていない他の解決課題は下記の記載から当該技術分野における通常の知識を有した者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の少なくとも一つの実施例においては、シリコン基板と、前記シリコン基板の第1面に形成された電解質膜と、前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極と、前記シリコン基板の前記第1面の反対面である第2面から前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面の前記第1電極に対向する一部が露出するように形成されたリセス部と、少なくとも前記電解質膜の露出した前記第2面に形成された第2電極とを備え、前記シリコン基板は少なくとも前記リセス部の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部を含む、固体酸化物燃料電池を提供する。
【0011】
本発明の少なくとも一つの実施例においては、シリコン基板の第1面及び前記第1面の反対面である第2面にそれぞれ誘電体膜を蒸着する工程と、前記第2面に蒸着した誘電体膜を所定のパターンによって除去する工程と、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜の第1面に電解質膜を形成する工程と、前記第2面の前記誘電体膜が除去された部分をエッチングし、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜が露出するようにリセス部を形成する工程と、前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜及び前記第2面に残っている前記誘電体膜を除去する工程と、前記シリコン基板の少なくとも前記リセス部の縁の付近を多孔性で形成する工程と、前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に第1電極を形成する工程と、前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜を除去することで露出した前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面に第2電極を形成する工程とを備える、固体酸化物燃料電池の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の少なくとも一つの実施例においては、多孔性シリコン基板と、前記多孔性シリコン基板の第1面に形成された電解質膜と、前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極と、前記多孔性シリコン基板の前記第1面の反対面である第2面から前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面の前記第1電極に対向する一部が露出するように形成されたリセス部と、少なくとも前記電解質膜の露出した前記第2面に形成された第2電極とを備える、固体酸化物燃料電池を提供する。
【0013】
本発明の少なくとも一つの実施例においては、単結晶シリコン基板の第1面及び前記第1面の反対面である第2面にそれぞれ誘電体膜を蒸着する工程と、前記第2面に蒸着した誘電体膜を所定のパターンによって除去する工程と、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜の第1面に電解質膜を形成する工程と、前記第2面の前記誘電体膜が除去された部分をエッチングし、前記第1面に蒸着した前記誘電体膜が露出するようにリセス部を形成する工程と、前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜及び前記第2面に残っている前記誘電体膜を除去する工程と、前記シリコン基板を多孔性で形成する工程と、前記電解質膜の第1面の少なくとも一部に第1電極を形成する工程と、前記リセス部を介して露出した前記第1面に蒸着した前記誘電体膜を除去することで露出した前記電解質膜の前記第1面の反対面である第2面に第2電極を形成する工程とを備える、固体酸化物燃料電池の製造方法を提供する。
【0014】
本明細書でそれぞれの実施例は互いに独立的に記載されている場合であっても、それぞれの実施例は相互組合せが可能であり、組合せによる実施例も本発明の権利範囲に含まれる。
【0015】
上述した要約は単に説明のためのものであり、如何なる形でも限定を意図するものではない。上述した説明様態、実施例、及び特徴に加え、追加の様態、実施例、及び特徴が図面及び詳細な説明を参照することで明確になるはずである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の少なくとも一つの実施例によれば、メンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池を提供できるという効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明の少なくとも一つの実施例によれば、メンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池の製造方法を提供できるという効果を奏する。
【0018】
本発明の効果は以上で言及されたものなどに限定されず、言及されていない他の効果は下記の記載から当該技術分野における通常の知識を有した者に明確に理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池の側断面図である。
【
図2A-2G】本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池の製造工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照し、本発明の少なくとも一つの実施例に係る多孔性シリコンを用いた応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池及びその製造方法について詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池100の側断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池100は、シリコン基板110、シリコン基板110の第1面(
図1に示す例では上面)に形成された電解質膜120、電解質膜120の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極130、シリコン基板110の第1面の反対面である第2面(
図1に示す例では下面)から電解質膜120の第1面の反対面である第2面の第1電極130に対向する一部が露出するように形成されたリセス部140、及び少なくともリセス部140を介して露出した電解質膜120の第2面に形成された第2電極150で構成される。
【0023】
本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池100はMEMS基盤の薄膜型SOFCで、メンブレンと電極を薄膜で形成することで電解質内のイオン伝導によるオーミック損失を最小化し、低温での動作性能を向上させる構造を有する。
【0024】
動作時にメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に応力が数中止、この付近に位置するセルが損傷する短所を解決するため、本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池100はシリコン基板110の少なくともリセス部140の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部160を含む。
【0025】
このように、シリコン基板110の少なくともリセス部140の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部160を形成することで、メンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させることができる。
【0026】
図1ではシリコン基板110のリセス部140の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部160を形成してメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させる例を示しているが、シリコン基板110全体を多孔性にしてメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させることも可能である。
【0027】
このために、本発明の少なくとも一つの実施例において、薄膜型固体酸化物燃料電池100は、多孔性シリコン基板110、多孔性シリコン基板110の第1面に形成された電解質膜120、電解質膜120の第1面の少なくとも一部に形成された第1電極130、多孔性シリコン基板110の第2面から電解質膜120の第2面の第1電極130に対向する一部が露出するように形成されたリセス部140、及び少なくともリセス部140を介して露出した電解質膜120の第2面に形成された第2電極150で構成される。
【0028】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はMEMS工程を用いたイオン伝導性セラミック電解質膜で形成することができ、第1電極130及び第2電極150は多孔性白金材質を用いて形成することができる。
【0029】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような個体酸素イオン伝導体またはイットリウムドープドBaZrO3(BYZ)のようなプロトン伝導体で形成することができる。
【0030】
図2Aないし
図2Gは、本発明の少なくとも一つの実施例に係る薄膜型固体酸化物燃料電池100の製造工程を説明するための概略図である。
【0031】
図2Aに示すように、両面をポリシングしたシリコン基板110の第1面(
図2Aに示す例では上面)及び第1面の反対面である第2面(
図2Aに示す例では下面)にそれぞれ誘電体膜111及び誘電体膜112を蒸着する。ここで、誘電体膜111及び誘電体膜112にはSiNを用いることができる。
【0032】
その後、
図2Bに示すように、第2面に蒸着した誘電体膜112を所定のパターンによって除去する。即ち、第2面に蒸着した誘電体膜に所定のパターンを有するマスクを用いてフォトリソグラフィーを介してSiN誘電体膜112にパターニングをした後に適切なエッチャントを用いたエッチングを介してパターに沿って誘電体膜112を除去する。
【0033】
その後、
図2Cに示すように、第1面に蒸着した誘電体膜111の第1面に電解質膜120を形成する。第2面に蒸着した誘電体膜112を所定のパターンによって除去する工程と第1面に蒸着した誘電体膜111の第1面に電解質膜120を形成する工程は順番を逆にしても良い。
【0034】
その後、
図2Dに示すように、第2面の誘電体膜112が除去された部分をエッチングし、第1面に蒸着した誘電体膜111が露出するようにリセス部140を形成する。このとき、下部からシリコン基板110をエッチングするためにKOH溶液を用いたウェットエッチングを行うことができる。
【0035】
その後、
図2Eに示すように、リセス部140を介して露出した第1面に蒸着した誘電体膜111及び第2面に残っている誘電体膜112を除去する。
【0036】
その後、
図2Fに示すように、シリコン基板110の少なくともリセス部140の縁の付近を多孔性で形成する。このとき、例えば単結晶シリコンを所定の濃度のフッ酸溶液に浸した後に陽極処理して多孔性シリコンを形成する方法を用いることができる。
【0037】
その後、
図2Gに示すように、電解質膜120の第1面の少なくとも一部に第1電極130を形成し、リセス部140を介して露出した第1面に蒸着した誘電体膜111を除去することで露出した電解質膜120の第2面に第2電極150を形成する。
【0038】
このように製造した薄膜型固体酸化物燃料電池100はMEMS基盤の薄膜型SOFCで、メンブレンと電極を薄膜で形成することで電解質内のイオン伝導によるオーミック損失を最小化し、低温での動作性能を向上させることが可能である。
【0039】
動作時にメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に応力が集中し、この付近に位置するセルが損傷するのを防ぐために、シリコン基板110の少なくともリセス部140の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部160を形成することで、メンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させることができる。
【0040】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はMEMS工程を用いてイオン伝導性セラミック電解質膜として形成することができ、第1電極130及び第2電極150は多孔性白金材質を用いて形成することができる。
【0041】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような個体酸素イオン伝導体またはイットリウムドープドBaZrO3(BYZ)のようなプロトン伝導体で形成することができる。
【0042】
図2Aないし
図2Gではシリコン基板110のリセス部140の縁の付近に多孔性で形成された多孔質部160を形成してメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させる例を示しているが、シリコン基板110の全体を多孔性にしてメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させることも可能である。
【0043】
例えば、両面をポリシングした単結晶シリコン基板110の第1面及び第2面にそれぞれ誘電体膜111及び誘電体膜112を蒸着する。ここで、誘電体膜111及び誘電体膜112にはSiNを用いることができる。
【0044】
その後、第2面に蒸着した誘電体膜112を所定のパターンによって除去する。即ち、第2面に蒸着した誘電体膜に所定のパターンを有するマスクを用いてフォトリソグラフィーを介してSiN誘電体膜112にパターニングをした後に適切なエッチャントを用いたエッチングを介してパターンに沿って誘電体膜112を除去する。
【0045】
その後、第1面に蒸着した誘電体膜111の第1面に電解質膜120を形成する。第2面に蒸着した誘電体膜112を所定のパターンによって除去する工程と第1面に蒸着した誘電体膜111の第1面に電解質膜120を形成する工程は順番を逆にしても良い。
【0046】
その後、第2面の誘電体膜112が除去された部分をエッチングし、第1面に蒸着した誘電体膜111が露出するようにリセス部140を形成する。このとき、下部からシリコン基板110をエッチングするためにKOH溶液を用いたウェットエッチングを行うことができる。
【0047】
その後、リセス部140を介して露出した第1面に蒸着した誘電体膜111及び第2面に残っている誘電体膜112を除去する。
【0048】
その後、シリコン基板110を多孔性で形成する。このとき、例えば単結晶シリコンを所定の濃度のフッ酸溶液に浸した後に陽極処理して多孔性シリコンを形成する方法を用いることができる。
【0049】
その後、電解質膜120の第1面の少なくとも一部に第1電極130を形成し、リセス部140を介して露出した第1面に蒸着した誘電体膜111を除去することで露出した電解質膜120の第2面に第2電極150を形成する。
【0050】
このように製造した薄膜型固体酸化物燃料電池100はMEMS基盤の薄膜型SOFCで、メンブレンと電極を薄膜で形成することで電解質内のイオン伝導によるオーミック損失を最小化し、低温での動作性能を向上させることが可能である。
【0051】
動作時にメンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に応力が集中し、この付近に位置するセルが損傷するのを防ぐために、シリコン基板110を多孔性で形成することで、メンブレンの縁の付近(メンブレンにおいてリセス部140の縁の付近)に集中する応力を分散させることができる。
【0052】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はMEMS工程を用いてイオン伝導性セラミック電解質膜として形成することができ、第1電極130及び第2電極150は多孔性白金材質を用いて形成することができる。
【0053】
本発明の少なくとも一つの実施例において、電解質膜120はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような個体酸素イオン伝導体またはイットリウムドープドBaZrO3(BYZ)のようなプロトン伝導体で形成することができる。
【0054】
以上のように、本発明の少なくとも一つの実施例によれば、多孔性シリコンを用いたメンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池を提供することができる。
【0055】
さらに、本発明の少なくとも一つの実施例によれば、多孔性シリコンを用いたメンブレン縁の応力弛緩構造を有する薄膜型固体酸化物燃料電池の製造方法を提供することができる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0057】
100:固体酸化物燃料電池
110:シリコン基板
111、112:誘電体膜
120:電解質膜
130:第1電極
140:リセス部
150:第2電極
160:多孔質部