(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147133
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】皮膚用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20231004BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q1/00
A61K8/37
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022067923
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 悠生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 奈津子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083BB04
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE18
(57)【要約】
【課題】補酵素Q10の原料臭を著しく低減させることができ、かつ、塗布後のベタつき感を著しく低減させることができる皮膚用組成物の提供。
【解決手段】下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含有し、前記成分Aの含有量が、0.3質量%より多く1.0質量%以下であることを特徴とする皮膚用組成物を提供する。
成分A:補酵素Q10
成分B:不飽和脂肪酸エステル油
成分C:アミノ酸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含有し、
前記成分Aの含有量が、0.3質量%より多く1.0質量%以下であることを特徴とする皮膚用組成物。
成分A:補酵素Q10
成分B:不飽和脂肪酸エステル油
成分C:アミノ酸
【請求項2】
前記成分Cが、アラニン、アルギニン、グリシン、システイン、セリンおよびエクトインの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
さらに下記成分Dを含有してなる請求項1又は2に記載の皮膚用組成物。
成分D:ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア製剤に求められる機能の一つに「保湿」がある。従来から、例えば、セラミド、スフィンゴ脂質、レシチンなどの角質細胞間脂質を構成する成分;天然保湿因子(NMF)などの角質細胞内に存在する成分;ヒアルロン酸、コラーゲンなどの真皮にもともと存在する成分;多価アルコール、油剤、糖類、植物エキスなどの種々の保湿効果を発揮する成分が製剤中に配合されている。
【0003】
このような成分の中でも、格段に優れた保湿能力を有する成分として補酵素Q10が注目を浴び続けている。しかしながら、補酵素Q10は、格段に優れた保湿能力を発揮させることができる反面、保湿効果を期待して高配合すると、原料臭が際立ち、製剤化に支障をきたすといった問題や、塗布後のベタつき感が続くといった問題がある。
【0004】
原料臭の問題に対しては、香料などを用いて臭いをマスキングする手法も考え得るが、製剤への香り付与は、使用者の匂いの嗜好性もあり、最善の改善方法とは言えない。そのため、マスキング方法以外に臭いを抑制する手法の開発が求められている。これまでにも補酵素Q10を配合した製剤において、経時的な変臭を抑制する試みがなされている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この試みは油性の皮膚用組成物における経時的な劣化や変臭を抑えることを目的としたものであり、補酵素Q10の原料臭を抑える根本的な解決には至っていない。
【0005】
一方、ベタつきを低減させるためには補酵素Q10を低配合せざるを得ず、望む保湿効果を付与することができない。これまでにも補酵素Q10を配合した製剤において、ベタつきを抑制する様々な試みがなされている(例えば、特許文献2~3を参照)。しかしながら、これら試みでは、製剤化に工夫を要し、調製に手間がかかるといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-084505号公報
【特許文献2】特開2007-077084号公報
【特許文献3】特開2013-136545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、補酵素Q10の主機能を存分に発揮させるべく高配合したとしても、補酵素Q10の原料臭を著しく低減させることができ、かつ、塗布後のベタつき感を著しく低減させることができる皮膚用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含有し、前記成分Aの含有量が、0.3質量%より多く1.0質量%以下であることを特徴とする皮膚用組成物を提供する。
成分A:補酵素Q10
成分B:不飽和脂肪酸エステル油
成分C:アミノ酸
【0009】
上記成分Cが、アラニン、アルギニン、グリシン、システイン、セリンおよびエクトインの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記皮膚用組成物は、さらに下記成分Dを含有することが好ましい。
成分D:ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、補酵素Q10の原料臭を著しく低減させることができるという従来にはない手法での臭い抑制効果を発揮する。さらに、本発明の皮膚用組成物は、塗布後のベタつき感を著しく低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の皮膚用組成物は、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含有することを特徴とする。
成分A:補酵素Q10
成分B:不飽和脂肪酸エステル油
成分C:アミノ酸
【0013】
以下、本発明の皮膚用組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0014】
[成分A]
上記成分Aは、補酵素Q10である。補酵素Q10とは、別名、コエンザイムQ10、CoQ10、ユビキノン、ユビデカレノンと称される化合物である。本発明では、成分Aを用いることにより、塗布後の肌に格段に優れた潤い、所謂、保湿効果を付与することができる。
【0015】
なお、上記成分Aは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、特に限定されない。本発明において、上記成分Aは市販品を用いることができる。補酵素Q10の市販品としては、例えば、Solfonte Q10、Phytopresome Q10、Phytopresome Lipo-Q、Presome Q10(商品名,何れも日本精化社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明の皮膚用組成物中の成分Aの含有量は、0.3質量%よりも多く含み、1.0質量%以下である。使用感の観点から、0.9質量%以下であることがより好ましい。本発明においては、例え成分Aを高配合、具体的には、0.3質量%よりも多く配合したとしても、後述する成分と組み合わせることにより、原料臭を著しく低減させることができる。また、本発明では、成分Aを高配合できることから、格段に優れた保湿効果を奏することは言うまでもない。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0017】
[成分B]
上記成分Bは、不飽和脂肪酸エステル油である。本発明においては、驚くべきことに、上記成分Bを用いることにより、上記成分Aの原料臭を低減させることができるという、従来には全く知られていない格別顕著な効果を発揮する。それゆえに、例え上記成分Aの皮膚用組成物中の含有量が0.3質量%よりも多い場合であっても、原料臭を低減させることが可能となる。
【0018】
用いられる上記成分Bとしては、例えば、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、オレイン酸フィトステリルなどが挙げられる。これら成分Bは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、上記成分Bの中でも、上記成分Aの原料臭を著しく低減させる観点から、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシルを用いることが好ましい。
【0020】
なお、上記成分Bは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Bは市販品を用いることができる。オレイン酸デシルの市販品としては、例えば、CETIOL V(商品名,BASFジャパン社製)、オレイン酸オレイルの市販品としては、例えば、SR CRODAMOL OO-LQ-(JP)(商品名,クローダジャパン社製)、オレイン酸オクチルドデシルの市販品としては、例えば、O.O.D.(商品名,進栄化学社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚用組成物中の成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、上記成分Aの原料臭を著しく低減させる観点から、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0022】
本発明においては、上記成分Aの原料臭を著しく低減させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)は0.01~20.0の範囲を満たし調製することが好ましく、0.05~5.0の範囲を満たし調製することがより好ましく、0.1~1.5の範囲を満たし調製することがさらに好ましい。
【0023】
[成分C]
上記成分Cは、アミノ酸である。本発明においては、驚くべきことに、上記成分Cを用いることにより、上記成分Aの塗布後のベタつき感を低減させることができるという、従来には全く知られていない格別顕著な効果を発揮する。それゆえに、例え上記成分Aの皮膚用組成物中の含有量が0.3質量%よりも多い場合であっても、ベタつき感を低減させることが可能となる。
【0024】
用いられる上記成分Cとしては、例えば、グリシン、アラニンなどの単純構造のアミノ酸;リシン、アルギニン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;アスパラギン、グルタミンなどの側鎖がアミドであるアミノ酸;セリン、スレオニンなどの側鎖がアルコールであるアミノ酸;システイン、メチオニンなどの側鎖に硫黄原子を持つアミノ酸;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの側鎖に芳香環を持つアミノ酸;バリン、ロイシン、イソロイシンなどの側鎖が脂肪族に疎水性アミノ酸;プロリン、エクトインなどの側鎖が環をまいているアミノ酸などが挙げられる。これら成分Cは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明においては、上記成分Cの中でも、上記成分Aの塗布後の過度なベタつき感を低減させる観点から、アラニン、アルギニン、グリシン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、ロイシン、セリンおよびエクトインの群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アラニン、アルギニン、グリシン、システイン、セリンおよびエクトインの群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0026】
なお、上記成分Cは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Cは市販品を用いることができる。アラニンの市販品としては、例えば、L-アラニン協和(商品名,KHネオケム社製)、アルギニンの市販品としては、例えば、L-アルギニンCグレード(商品名,味の素社製)グリシンの市販品としては、例えば、グリシンM(商品名,扶桑化学工業株社製)、システインの市販品としては、例えば、L-システイン(P)(商品名,日本プロテイン社製)などが挙げられる。セリンの市販品としては、例えば、L-セリン(商品名,日本理化学薬品社製)、L-セリン(商品名,純正化学社製)、P.P.A.A.-C(商品名,成和化成社製)などが挙げられる。エクトインの市販品としては、例えば、RonaCare Ection、RonaCare Cyclopeptide-5(商品名,何れもメルク社製)、Ectoin natural(商品名、Bitop AG社製)などが挙げられる。
【0027】
本発明の皮膚用組成物中の成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、上記成分Aによる過度なベタつき感を低減させる観点から、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0028】
本発明においては、上記成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を著しく低減させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Cの含有量の比(成分C/成分A)は0.01~20.0の範囲を満たし調製することが好ましく、0.05~5.0の範囲を満たし調製することがより好ましく、0.1~1.0の範囲を満たし調製することがさらに好ましい。
【0029】
[成分D]
本発明の皮膚用組成物には、上記成分Aの原料臭の低減効果をさらに高める観点から、成分Dとして、ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0030】
上記成分Dのポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは8~24であり、より好ましくは10~20であり、さらに好ましくは12~18である。また、脂肪酸部は、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であっても、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、上記成分Aによる原料臭の低減効果をさらに高める観点から、不飽和脂肪酸であることが好ましい。一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは2~12であり、より好ましくは5~10である。
【0031】
上記成分Dのポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体が挙げられる。すなわち、成分Dとしては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸ジエステル、ポリグリセリン脂肪酸トリエステルが挙げられる。成分Dはこれらの混合物であっても良い。
【0032】
用いられる上記成分Dとしては、例えば、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、モノカプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、ジオレイン酸ペンタグリセリル、モノカプリル酸ヘキサグリセリル、モノカプリル酸トリグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4~10)グリセリル、モノステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ポリ(2~10)グリセリル等が挙げられる。これら成分Dは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記成分Dの中でも、上記成分Aによる原料臭の低減効果をさらに高める観点から、モノオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ポリ(2~10)グリセリルを用いることが好ましく、モノオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリルを用いることがより好ましい。
【0034】
なお、上記成分Dは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Dは市販品を用いることができる。モノオレイン酸デカグリセリルの市販品としては、例えば、Decaglyn 1-OV(商品名,日本サーファクタント工業社製)、サンソフトQ-17Y-C(商品名,太陽化学社製)などが挙げられる。モノステアリン酸デカグリセリルの市販品としては、例えば、Decaglyn 1-SV(商品名,日本サーファクタント工業社製)サンソフトQ-18Y-C(商品名,太陽化学社製)などが挙げられる。ジイソステアリン酸デカグリセリルの市販品としては、例えば、NIKKOL Decaglyn 2-ISV(商品名,日本サーファクタント工業社製)などが挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚用組成物中の成分Dの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、上記成分Aによる原料臭の低減効果をさらに高める観点から、組成物100質量%中、0.1質量%以上であるが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0036】
本発明の皮膚用組成物は、上記成分Aによる原料臭の低減効果、並びに塗布後のベタつき感を低減させる効果を最大限発揮させることができる製剤の安定性をさらに高める観点から、増粘性高分子を含有させることが好ましい。増粘性高分子としては、水溶性を有する天然高分子、半合成高分子、合成高分子などが挙げられる。なお、本明細書において、増粘性高分子を成分Eと称することがある。
【0037】
上記成分Eとしては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼインなどの天然高分子;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどの半合成高分子;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂などの合成高分子などが挙げられる。これら成分Eは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の皮膚用組成物中の成分Eの含有量は、特に限定されないが、製剤安定性をさらに高める観点から、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0039】
[その他成分]
本発明の皮膚用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、飽和脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油などの上記成分B以外の油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの上記成分D以外の界面活性剤;皮膜形成剤、紫外線吸収剤、美白剤、抗炎症剤、清涼剤、pH調整剤、中和剤、香料などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0040】
本発明の皮膚用組成物の残部には精製水が用いられる。精製水の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を発揮させる観点から、30~95質量%であることが好ましく、より好ましくは50~90質量%である。
【0041】
本発明の皮膚用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法、若しくは、ホモミキサーなどを用いた転相乳化法により乳化させる方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0042】
本発明の一実施形態に係る皮膚用組成物の用途は、特に限定されないが、皮膚化粧料として用いることが好ましく、より具体的には、例えば、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア化粧料、シワ抑制やたるみ抑制などを目的としたアンチエージング化粧料として用いることが好ましい。また、本発明の皮膚用組成物は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨などの形態をとり得る。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る皮膚用組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中などに用いることができる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0045】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~8および比較例1~5の皮膚用組成物を常法に準じて乳化剤型に調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0046】
(試験例1:原料臭の有無の評価)
実施例および比較例の各試料を50mL容の透明ガラス容器に夫々封入し、25℃の恒温槽に4週間保管した。保管後、各試料1gを手の甲に塗布し、延展時の匂い立ちから成分Aに起因する原料臭の有無を官能評価した。なお、評価は10名の専門パネラーにより行い、評価前に嗅いだ成分Aの原料臭を感じるか否かで判断した。また、成分Aを含まない比較例1は当該試験に供していない。
【0047】
<原料臭の有無の評価基準>
◎(かなり良好):10名中、9~10名が成分Aに起因する原料臭を感じないと回答
○(良好):10名中、6~8名が成分Aに起因する原料臭を感じないと回答
△(不十分):10名中、3~5名が成分Aに起因する原料臭を感じないと回答
×(不良):10名中、1~2名が成分Aに起因する原料臭を感じないと回答
【0048】
(試験例2:塗布後のベタつき感の評価)
実施例および比較例の各試料1g手の平に取り、両頬に馴染ませるように塗布した。塗布から30分後に塗布部分の「ベタつき感」について官能評価を行い、下記評価基準に従って判定した。なお、評価は25℃の条件下で、10名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0049】
<塗布後のベタつき感の評価基準>
◎(かなり良好):ベタつきを全く感じず、最適な使用感である
○(良好):ベタつきをごく僅かに感じるが、良好な使用感である
△(不十分):ベタつきをやや感じ、良好な使用感であるとは言えない
×(不良):明らかにベタつきを感じ、使用感が悪い
【0050】
【0051】
【0052】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた皮膚用組成物は、各比較例で得られたものと対比して、補酵素Q10が高配合されているにもかかわらず、補酵素Q10に起因する原料臭を著しく抑えることができるとともに、塗布後のベタつき感を著しく低減させることができることが分かる。一方、本発明の必須構成成分を充足しない比較例1~3、並びに他の成分へ置き換えた比較例4~5では、本発明の効果を十分に発揮できていないことが分かる。
【0053】
これら結果からも明らかな通り、本発明の皮膚用組成物は、従来の試みでは困難であった、補酵素Q10が高配合された組成物における、原料臭とベタつき感の双方の課題に対して解決できるものであることが分かる。