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特開2023-147134成形用組成物の製造方法およびブリケットの製造方法
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  • 特開-成形用組成物の製造方法およびブリケットの製造方法 図1
  • 特開-成形用組成物の製造方法およびブリケットの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147134
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】成形用組成物の製造方法およびブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/248 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
C22B1/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022067925
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】522153002
【氏名又は名称】株式会社金城商事
(72)【発明者】
【氏名】金城 信榮
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA22
4K001CA26
(57)【要約】
【課題】 そのまま圧縮成形によって成形することが困難な鉄系金属研削切粉を圧縮成形により成形可能な成形用組成物とする成形用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 鉄系金属の研削切粉と、油分及び水分を含有する切削液とを含む鉄系金属研削切粉に、焼き入れ前の鉄系金属の研削切粉焼き入れ後の研削切粉を混合し撹拌することを特徴とする成形用組成物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系金属の研削切粉を含有する成形用組成物の製造方法であって、前記鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉と鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉を混合し撹拌することを特徴とする成形用組成物の製造方法。
【請求項2】
上記鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉と、前記鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉を2:1の割合で混合し撹拌することを特徴とする請求項1に記載の成形用組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の記載の成形用組成物製造方法で製造された成形用組成物を圧縮成形することを特徴とするブリケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄系金属の研削時に発生する研削切粉を用いて成型用組成物を製造する方法及び、この成形用組成物を用いてブリケットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受鋼や浸炭鋼等の鉄系金属を水溶性研削(以下、水溶性研削液を使用した研磨切粉)した際に生じる切粉は、水分を含有する研削液や砥粒等を含む鉄系金属研削切粉として回収されている。
この鉄系金属研削切粉は、多量の純鉄を含むことからこれを製鋼原料として再利用する事が出来る。しかし、この鉄系金属研削切粉は多量の水分を含有していることから、この鉄系金属研削切粉を溶鉱炉にそのまま投入すると、当該水分によって突沸(水蒸気爆発)が生じるという問題が引き起こす。
したがって、従来、上記鉄系金属研削切粉は再利用されることなく廃棄物処理業者に委託して埋め立て処分されることが多かった。
【0003】
これに対して、特許文献1には、鉄系金属の研削切粉と油分及び水分含有する切削液を含み、含油率が7~30重量%の鉄系金属研削切粉に、平均粒子径が1mm以下の生石灰を混合することを特徴とする成形用組織物の製造方法と、そのまま圧縮成形によって成形することが困難な鉄系金属研削切粉を圧縮成形により成形可能な成形用組成物とする成形用組成物の製造方法が開示されている。
所定の粒子径の生石灰を混合する事で固形化されたブリケットは強度を充分確保することができ、製銅原料として再利用する事ができるため、環境保全に役立つとともに、研削切粉の廃棄コストを削減する事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5986284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の、鉄系金属の研削切粉と、油分及び水分を含有する切削液を含む鉄系金属研削切粉に、平均粒子径が1mm以下の生石灰を混合するには目開1mmの篩によってふるい分けする工程が必要となる。
上記問題点を鑑みなされたものであり,このような結合剤を使用する複雑な工程を踏まなくともブリケットの強度が充分確保する課題を解決すべき方法を検討した結果、軸受製造工程で発生する鉄系金属の研削切粉の金属形状の違いで、ブリケット強度が異なることが発見することができた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鉄系金属の研削切粉を含有する成形用組成物の製造方法であって、前記鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉と鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉混合し撹拌することを特徴とする成形用組成物の製造方法。
【0007】
上記鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉と、前記鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉を2:1の割合で混合し撹拌することを特徴とする。成形用組成物製造方法で製造された成形用組成物を圧縮成形することを特徴とするブリケットの製造方法が課題解決することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鉄系金属研削切粉のブリケット製造方法によれば,軸受製造工程で発生する鉄系金属の研削切粉を圧縮成形により強度に優れたブリケットを製造することができる。強度不充分に対応するための結合剤を使用しなくても圧縮成形でき、製造工程の簡素化とランニングコスト低減に繋げることできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
成形用製造方法の説明
図1】実施形態の工程を示す工程図。
図2】1-1成形用組成物の製造方法の説明図 1-2ブリケットの製造工程 2-1鉄系金属焼入れ前の研削切粉の写真 2-2鉄系金属焼入れ後の研削切粉の写真 2-3鉄系金属焼入れ前の研削切粉(拡大鏡500倍)の写真 2-4鉄系金属焼入れ後の研削切粉(拡大鏡500倍)の写真 2-5落下試験後の良品ブリケットの写真 2-6落下試験後の不具合品ブリケットの写真(比較例)
【発明を実施するための形態】
【00010】
本発明の実施形態にかかる鉄系金属の焼き入れ前研削切粉と鉄系金属の焼き入れ後研削切粉について説明する。
【0011】
自動車用の精密部品や金型用鋼材などに使用される素材は、硬度を上げて耐久性や靭性を上げて、壊れにくくする必要がある。素材の硬度を高めるためには、熱を加えて硬くする「焼き入れ」と呼ばれる熱処理方法が重要な工程となっている。
【0012】
鉄系金属の研削時に発生する研削切粉は、軸受鋼や浸炭鋼等の鉄系金属の焼き入れ前の水溶性研削切粉と鉄系金属の焼き入れ後の水溶性研削切粉の両方を回収する。
【0013】
この鉄系金属研削切粉は,多量の純鉄を含むことから製鋼原料として再利用することができる。しかしこの鉄系金属研削切粉は多量の水分を含有していることから溶鉱炉にそのまま入れると当該水分によって突沸(水蒸気爆発)が生じる。又、水分を除去した鉄系金属研削切粉は軽量のため溶鉱炉に投入しても、風圧で拡散されて再利用ができない。
【0014】
鉄系金属の研削時に発生する研削切粉を有価物として再利用するには、ブリケット化(圧縮して固形物化)が必要となる。鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉だけでそのまま圧縮成形によって成形体を製作することはできるが、鉄系金属焼き入れ後の研削切粉は含有金属が粉状態のためブリケット化しても欠けや割れが発生し、強度、形状の保持が難しい。ブリケットを高さ1.5mから落下させるとブリケットが落下衝撃で円筒径形状が破壊されて、ブリケットの有価物としての商品価値が維持できない。
一方、鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉は含有金属の針状状態が衝撃に破損しないためブリケット化しても落下衝撃にも耐えて円筒径形状が維持でき、有価物としての商品価値がある。鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉の特徴を活かして、鉄系金属焼入れ後の研削切粉の弱点を補うため、鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉を一定の割合で混合し攪拌した鉄系金属研削切粉を圧縮成形機で製造をすることで強固なブリケットが可能となった。
【0015】
鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉及び鉄系金属の焼き入れ後研削切粉を圧縮成形機で製造したブリケットの鉄含有量が80%以上であることが有価物商品としての条件になっているため、定期的に金属含有量の分析成績表を公的機関へ提出している。
【0016】
この鉄系金属の研削切粉と水分を含有する研削液を含む鉄系金属研削切粉を圧縮成形して得られる余剰の水分を除去した製鋼原料用のブリケットは、鉄系金属研削切粉を高品質の製鋼原料として再利用することができるため、環境保全に役立つとともに、研削切粉の廃棄コストを削減することができる。
【実施例0017】
図1は、実施形態の工程図である。
ここでは図1(1-1)鉄系金属の焼き入れ前の研削切粉(50kg)鉄系金属の焼き入れ後の研削切粉(25kg)の割合で混合し撹拌させる圧縮機により成形用組成物を用いてブリケットを製造する一連の工程順に説明をする。
【0018】
鉄系金属焼入れ前の鉄系金属研削切粉(A)と鉄系金属焼入れ後の鉄系金属研削切粉(B)を2(50kg):1(25kg)の割合で混合して、混合物(C)とする。この混合物(C)を撹拌機に供給し、撹拌機により3分間撹拌して鉄系金属研削切粉(D)を得る。つまり、鉄系金属焼入れ前の鉄系金属研削切粉(A)と鉄系金属焼入れ後の鉄系金属研削切粉(B)とを混合した混合物(C)を3分間撹拌機で回転させて撹拌させ、鉄系金属研削切粉(D)を得る。
次に撹拌により得られた鉄系金属研削切粉(D)が撹拌排出口から円筒案内筒(J)に送られる。成形油圧シリンダー(E)のピストン(L)を前進させて鉄系金属研削切粉(D)を圧縮すると、ブリケットを製造する事が出来る。円筒案内筒(J)内には、鉄系金属研削切粉(D)を回転させながら成形油圧シリンダー(E)に供給されるための供給スクリュー(K)が形成される。
【0019】
上記の鉄系金属研削切粉の圧縮成形は、図1(1-2)に示される圧縮成形機を用いておこなわれる。
この圧縮成形機(図1(1-2))は、鉄系金属焼入れ前の鉄系金属研削切粉(A)と鉄系金属焼入れ後の鉄系金属研削切粉(B)と、2:1の割合で混合し、さらに撹拌されて得られた鉄系金属研削切粉(D)(図1(1-1))が投入される円筒案内筒(J)と鉄系金属研削切粉(D)を圧縮するための圧縮部を有する成形油圧シリンダー(E)と、圧縮部の一端側開口を開閉し得る様に配設されたゲート(F)を備えている。そして円筒案内筒(J)を介して、供給された撹拌させた鉄系金属研削切粉(D)は、成形型の成形油圧シリンダー(E)のピストン(L)を前進駆動させることにより圧縮成形することが出来る。その際撹拌鉄系金属研削切粉(D)に含まれる余分な水分は、ゲート部(F)に形成された液体受けオイルパン(G)より外部に排出される。 これにより余分の水分が除去されて、ブリケット(H)が製造される。
【0020】
この鉄系金属の研削切粉と水分を含有する研削液を含む鉄系金属研削切粉を圧縮成形して得られる余剰の水分を除去した製鋼原料用のブリケットは、鉄系金属研削切粉を高品質の製鋼原料として再利用することができるため、環境保全に役立つとともに、研削切粉の廃棄コストを削減することができる。
【0021】
本発明の成形用組成物の製造方法によれば、鉄系金属焼き入れ前の研削切粉と鉄系金属焼入れ後の研削切粉を2:1の割合で混合し撹拌させる鉄系金属研削切粉を圧縮機で圧縮することにより強固なブリケットを製造することができる。
【0022】
本発明の成形用組成物の製造方法によれば、結合剤等を使用しなくても強固なブリケットを製造することができ、又鉄系金属焼入れ後の研削切粉を廃棄せず再利用することで製造コストを低減することができる。
【0023】
図2を説明する。
鉄系金属焼入れ前の金属研削切粉図2(2-1)を50kgと鉄系金属の焼入れ後の金属研削切粉図2(2-2)25kgを混合し撹拌した後、圧縮成形機で製造したブリケットを高さ1.5mからコンクリート床に自然落下させた良品ブリケット図2(2-5)を示した。
【0024】
2回の落下試験後の観察評価は、図2(2-5)ブリケットの円筒径外径角部に当たり面が見られるが大きな破損部はなかった。
【0025】
図2(2-1)鉄系金属焼入れ前研削切粉
図2(2-2)鉄系金属焼入れ後研削切粉
拡大鏡撮影では目視観察では違いが見られないが拡大鏡を用いて500倍の撮影をした
図2(2-3)鉄系金属焼入れ前研削切粉の鉄切れ端形状は針状形状が見られる。
図2(2-4)鉄系金属焼入れ後研削切粉は切れ端形状が短針の粉な形状と見られる。
図2(2-5)鉄系金属焼入れ前金属研削切粉と鉄系金属焼入れ後金属研削切粉2:1の比率で混合して撹拌させた圧縮成形すると鉄系金属焼入れ前金属研削切粉の金属形状が線状の効果で、形状の保持力により落下衝撃に耐えて破損しない。
図2(2-6)鉄系金属焼入れ後の金属研削切粉のみの金属は粉形状ため落下衝撃に保持力が耐えられなく破損が発生する。
【0026】
(比較例)
鉄系金属焼入れ後金属研削切粉図2(2-2)のみを圧縮成形機で製造したブリケットを高さ1.5mからコンクリート床に自然落下させた不具合品ブリケット図2(2-6)に示した。落下試験後の観察評価は,落下衝撃により円筒径形状が大きく3つに破損したので、ブリケットとして有価物になり得なかった。そこで評価を終了した。
【0027】
実施例及び比較例の結果から、本発明の実施形態に係る成型用組成物の製造方法によれば、鉄系金属焼入れ前の金属研削切粉と鉄系金属焼入れ後金属研削切粉を2:1の割合で混合し撹拌させることで、圧縮成形により成形可能な成型用組成物とすることができ、本発明の実施形態に係るブリケットの製造方法によれば、高い強度を備えたブリケットを製造することができる。
【符号の説明】
【0028】
A鉄系金属焼入れ前研削切粉
B鉄系金属焼入れ後研削切粉
C混合物
D撹拌させた鉄系金属研削切粉
E成形用圧縮油圧シリンダー
Fゲート
Gオイルパン
Hブリケット
J円筒案内筒
K供給スクリュー
Lピストン
図1
図2