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特開2023-147179抗ウイルス剤、抗ウイルス性樹脂組成物、及び抗ウイルス性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147179
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤、抗ウイルス性樹脂組成物、及び抗ウイルス性物品
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/40 20060101AFI20231004BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20231004BHJP
   A01N 43/68 20060101ALI20231004BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A01N43/40 101E
A01P1/00
A01N43/68
A01N25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205872
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022052963
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 孝三郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】早川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 心代導
(72)【発明者】
【氏名】土居 誠司
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB09
(57)【要約】
【課題】耐候性及び透明性に優れた抗ウイルス性の物品を製造しうる樹脂組成物を調製することが可能な、安全性に優れた抗ウイルス剤を提供する。
【解決手段】(a)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート及び(b)ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等の2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を含む抗ウイルス剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を含む抗ウイルス剤。
【請求項2】
前記2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体が、下記(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1に記載の抗ウイルス剤。
(a)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(b)ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]
(c)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物
(d)テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
(e)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗ウイルス剤及び樹脂を含有する抗ウイルス性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂100質量部に対する、前記抗ウイルス剤の含有量が、0.05~10質量部である請求項3に記載の抗ウイルス性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の抗ウイルス性樹脂組成物により形成された抗ウイルス性物品。
【請求項6】
請求項4に記載の抗ウイルス性樹脂組成物により形成された抗ウイルス性物品。
【請求項7】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体の抗ウイルス剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤、抗ウイルス性樹脂組成物、及び抗ウイルス性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
抗ウイルス剤は、例えば、無機系の抗ウイルス剤と有機系の抗ウイルス剤に大別される。無機系の抗ウイルス剤を樹脂、合成繊維、及び塗料等に添加すると、得られる製品の耐熱性及び耐候性が良好となる。また、有機系の抗ウイルス剤を樹脂、合成繊維、及び塗料等に添加すると、得られる製品の機械的強度が向上する。
【0003】
無機系の抗ウイルス剤を用いた例としては、酸化鉄や酸化アルミニウム等の金属酸化物を含む無機粒子及び亜酸化銅粒子を含有する樹脂組成物(特許文献1)や、銀や亜鉛等の金属のイオンを含有するポリカーボネート樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。また、有機系の抗ウイルス剤を用いた例としては、無機充填剤にスルホン酸系の界面活性剤を担持して得た抗ウイルス剤を含有する樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-117187号公報
【特許文献2】特開2021-191831号公報
【特許文献3】特開2017-218516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、無機系の抗ウイルス剤を用いると、得られる製品の透明性が低下するとともに、機械的強度等の物性が劣化しやすくなるといった課題があった。さらに、無機系の抗ウイルス剤は各種金属イオンを含有するので、金属の蓄積に起因する生態系への影響について十分に配慮する必要がある。また、有機系の抗ウイルス剤を用いて得た製品は耐候性が低下しやすいとともに、抗ウイルス剤の種類によっては製品の透明性が低下しやすくなることがあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐候性及び透明性に優れた抗ウイルス性の物品を製造しうる樹脂組成物を調製することが可能な、安全性に優れた抗ウイルス剤、並びにその使用を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の抗ウイルス剤を用いた抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す抗ウイルス剤が提供される。
[1]2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を含む抗ウイルス剤。
[2]前記2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体が、下記(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である前記[1]に記載の抗ウイルス剤。
(a)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(b)ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]
(c)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物
(d)テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
(e)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
【0008】
また、本発明によれば、以下に示す抗ウイルス性樹脂組成物が提供される。
[3]前記[1]又は[2]に記載の抗ウイルス剤及び樹脂を含有する抗ウイルス性樹脂組成物。
[4]前記樹脂100質量部に対する、前記抗ウイルス剤の含有量が、0.05~10質量部である前記[3]に記載の抗ウイルス性樹脂組成物。
【0009】
さらに、本発明によれば、以下に示す抗ウイルス性物品が提供される。
[5]前記[3]又は[4]に記載の抗ウイルス性樹脂組成物により形成された抗ウイルス性物品。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示すピペリジン誘導体の抗ウイルス剤としての使用が提供される。
[6]2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体の抗ウイルス剤としての使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐候性及び透明性に優れた抗ウイルス性の物品を製造しうる樹脂組成物を調製することが可能な、安全性に優れた抗ウイルス剤、並びにその使用を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の抗ウイルス剤を用いた抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<抗ウイルス剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明者らは、各種成形品や繊維等の製品の材料となる樹脂に2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を添加したところ、金属や金属イオン等を実質的に含有せずとも、抗ウイルス性、耐候性、及び透明性に優れた物品を製造しうる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の抗ウイルス剤は、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を含むものであり、好ましくは、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体のみで実質的に構成されるものである。
【0013】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体は、例えば、その分子中に下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である。
【0014】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、*は結合位置を示す)
【0015】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体は、下記(a)~(e)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
(a)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(b)ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]
(c)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物
(d)テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
(e)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート
【0016】
(a)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(以下、「抗ウイルス剤a」とも記す)は、下記式(a)で表される化合物である。
【0017】
【0018】
(b)ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](以下、「抗ウイルス剤b」とも記す)は、下記式(b)で表される化合物である。
【0019】
【0020】
(c)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物(以下、「抗ウイルス剤c」とも記す)は、下記式(c)で表される化合物である。
【0021】
【0022】
(d)テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(以下、「抗ウイルス剤d」とも記す)は、下記式(d)で表される化合物である。
【0023】
【0024】
(e)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(以下、「抗ウイルス剤e」とも記す)は、下記式(e)で表される化合物である。
【0025】
【0026】
抗ウイルス剤a、b、及びdは、2020年4月28日に改正された食品衛生法のポジティブリストに記載されており、食品容器及び包装用途への使用が認められていることから安全性に優れている。さらに、抗ウイルス剤a及びbは、アメリカ食品医薬品局(FDA)認可品でもあり、特に安全性に優れている。
【0027】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体の融点又は軟化点は、好ましくは80~135℃であることから、樹脂への分散性に優れているとともに、透明性の高い抗ウイルス性の樹脂組成物及び各種物品とすることができる。
【0028】
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を用いることで、耐候性及び耐劣化性を樹脂に付与することができる。このため、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体を抗ウイルス剤として用いることで、従来の有機系の抗ウイルス剤を用いた場合に比して、耐候性等の諸特性により優れた抗ウイルス性樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の抗ウイルス剤の抗ウイルス性は、以下の機構により発現するものと推測される。まず、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体が第4級アンモニウム塩を形成する。次いで、形成された第4級アンモニウム塩が、(i)ウイルスの外殻構造(カプシド)の変性;(ii)感染に必要なウイルスエンベロープ上のタンパク質の変性;又は(iii)(i)の変性及び(ii)の変性の両方;を引き起こして、抗ウイルス性が発現すると推測される。
【0030】
<抗ウイルス性樹脂組成物>
本発明の抗ウイルス性樹脂組成物は、前述の抗ウイルス剤及び樹脂を含有する。樹脂の種類は特に限定されない。樹脂の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂等を挙げることができる。
【0031】
抗ウイルス性樹脂組成物中の抗ウイルス剤(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン誘導体)の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがさらに好ましい。抗ウイルス剤の含有量が、樹脂100質量部に対して0.3質量部未満であると、樹脂組成物の抗ウイルス性が認められにくくなることがある。一方、抗ウイルス剤の含有量が、樹脂100質量部に対して10質量部超であると、樹脂組成物の物性に影響が及ぶ場合がある。
【0032】
抗ウイルス性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、顔料、各種添加剤、及び他の抗ウイルス剤等をさらに含有させることができる。
【0033】
<抗ウイルス性物品>
本発明の抗ウイルス性物品は、前述の抗ウイルス性樹脂組成物により形成されたものである。物品の種類は、前述の抗ウイルス性樹脂組成物で形成されたものであればよく、特に限定されない。物品の具体例としては、以下に示すもの等を挙げることができる。
【0034】
(1)抗ウイルス性成形品
抗ウイルス性成形品は、抗ウイルス性樹脂組成物を射出成形、押出成形、及びブロー成形等により成形した物品である。成形品の具体例としては、食品容器、ごみ箱、文具、電気器具のハウジング、化粧品容器、車両内装部品、台所用品、浴用製品、衣装収納製品等を挙げることができる。
【0035】
(2)抗ウイルス性繊維
抗ウイルス性繊維は、抗ウイルス性樹脂組成物を紡糸等により繊維化した物品である。また、抗ウイルス性繊維を織布又は不織布としたものである。このような物品のさらなる具体例としては、衣服やカーペット等を挙げることができる。
【0036】
(3)抗ウイルス性塗料
抗ウイルス性樹脂組成物を各種溶剤に溶解又は分散させることによって、抗ウイルス性塗料とすることができる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0038】
<抗ウイルス剤の用意>
以下に示す抗ウイルス剤a~eを用意した。
・抗ウイルス剤a:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS登録番号 52829-07-9、化審法官報整理番号 5-3732)
・抗ウイルス剤b:ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](CAS登録番号 71878-19-8)
・抗ウイルス剤c:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物(CAS登録番号 85631-01-2、化審法官報整理番号 5-5713)
・抗ウイルス剤d:テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(CAS登録番号 91788-83-9、化審法官報整理番号 5-6116)
・抗ウイルス剤e:テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(CAS登録番号 64022-61-3、化審法官報整理番号 5-5555)
【0039】
<抗ウイルス剤の使用・評価>
(実施例1)
バクテリアを宿主とするウイルスであるバクテリオファージQβ(非エンベローブ型ウイルス)及びバクテリオファージΦ6(エンベローブ型ウイルス)を用いて、抗ウイルス剤a~e(原体)の抗ウイルス性試験を実施した。
【0040】
バクテリオファージQβを宿主(大腸菌)とともに培養してバクテリオファージストック液を調製した。調製したストック液を、6.7×10~2.6×10pfu/mL(pfu:プラーク形成単位)の感染価となるように、普通ブイヨン培地(1/500濃度)で希釈して試験液を得た。得られた試験液10mLを滅菌検査用のコップ入れ、抗ウイルス剤aを500ppmとなるように添加した。振とう機を使用し、25℃で24時間ゆっくりと撹拌した後、ペプトン加生理食塩水で適宜希釈した。カルシウム添加LB軟寒天培地(約50℃に保温)2.0mLに、別途カルシウム添加LB培地で培養した大腸菌(宿主)0.1mLを添加してよく撹拌した。希釈した試験液1.0mLをさらに添加してよく撹拌し、ウイルス及び大腸菌を含む混合液を得た。得られた混合液をカルシウム添加LB寒天平板培地に重層し、培地が固化した後、37℃で16~20時間培養した。30~300pfuのプラークが現れた培地のプラーク数をカウントし、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。ウイルスの抑制率は、以下の式から算出した(減少したプラーク数(pfu)の桁数を有効数字の桁数とした)。
抑制率(%)
={(比較例1のpfu-実施例のpfu)/比較例1のpfu}×100
【0041】
また、バクテリオファージQβに代えてバクテリオファージΦ6を用いるとともに、シュードモナス属のPseudomonas syringaeを宿主として用い、さらに、カルシウム添加LB培地に代えてNB培地を用い、25℃で培養したこと以外は、上記と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2~5)
抗ウイルス剤aに代えて、表1に示す種類の抗ウイルス剤を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして抗ウイルス剤の抗ウイルス性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
抗ウイルス剤を用いなかったこと以外は、前述の実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
<抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品の製造・評価(1)>
(実施例6)
低密度ポリエチレン樹脂100部及び抗ウイルス剤a 1.0部を加熱混練した後に成形し、透明な試料プレート(5cm×5cm)を得た。実施例1の場合と同様にして調製したバクテリオファージQβの試験液0.2mLを試料プレートの表面に滴下した。滴下した試験液上に無菌ポリエチレンフィルム(4cm×4cm)をかぶせ、試験液がフィルム全体に行き渡るように軽く押さえて密着させた(フィルム密着法)。25℃、相対湿度90%以上の環境で24時間保持した後、SCDLP培地で試験液を洗い出した。洗い出した試験液をペプトン加生理食塩水で適宜希釈した後、前述の実施例1と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0046】
また、バクテリオファージQβに代えてバクテリオファージΦ6を用いるとともに、シュードモナス属のPseudomonas syringaeを宿主として用い、さらに、カルシウム添加LB培地に代えてNB培地を用い、25℃で培養したこと以外は、上記と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例7~10)
抗ウイルス剤aに代えて、表1に示す種類の抗ウイルス剤を用いたこと以外は、前述の実施例6と同様にして抗ウイルス性を評価した。結果を表2に示す。
【0048】
(比較例2)
抗ウイルス剤を用いなかったこと以外は、前述の実施例6と同様の試験を実施した。結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
<抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品の製造・評価(2)>
(実施例11)
ポリプロピレン樹脂100部及び抗ウイルス剤a 1.0部を加熱混練した後に成形し、透明な試料プレート(5cm×5cm)を得た。得られた試料プレートを使用し、JIS K7113に準拠した耐候性試験を実施した。具体的には、サンシャインウェザオメーターを用いて得られた試料プレートを500時間暴露させた。その後、引張試験機を使用して試料プレートの破断伸度を測定し、以下に示す評価基準にしたがって耐候性を評価した。結果を表3に示す。
・有:下記式により算出した伸び率が200%以上であった。
・無:下記式により算出した伸び率が200%未満であった。
伸び率(%)
=(試料プレートの標線間距離の増加量/試料プレートの標線間距離)×100
【0051】
また、実施例1の場合と同様にして調製したバクテリオファージQβの試験液0.2mLを試料プレートの表面に滴下した。滴下した試験液上に無菌ポリエチレンフィルム(4cm×4cm)をかぶせ、試験液がフィルム全体に行き渡るように軽く押さえて密着させた(フィルム密着法)。25℃、相対湿度90%以上の環境で24時間保持した後、SCDLP培地で試験液を洗い出した。洗い出した試験液をペプトン加生理食塩水で適宜希釈した後、前述の実施例1と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表3に示す。
【0052】
また、バクテリオファージQβに代えてバクテリオファージΦ6を用いるとともに、シュードモナス属のPseudomonas syringaeを宿主として用い、さらに、カルシウム添加LB培地に代えてNB培地を用い、25℃で培養したこと以外は、上記と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表3に示す。
【0053】
(実施例12~15)
抗ウイルス剤aに代えて、表1に示す種類の抗ウイルス剤を用いたこと以外は、前述の実施例11と同様にして抗ウイルス性及び耐候性を評価した。結果を表3に示す。
【0054】
(比較例3)
抗ウイルス剤を用いなかったこと以外は、前述の実施例11と同様の試験を実施した。結果を表3に示す。
【0055】
【0056】
<抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品の製造・評価(3)>
(実施例16)
飽和ポリエステル100部及び抗ウイルス剤a 1.0部を加熱混練した後に紡糸し、透明な試料繊維を得た。試料繊維0.4gをバイアル瓶に入れ、実施例1の場合と同様にして調製したバクテリオファージQβの試験液0.2mLを接種した。25℃で24時間保持した後、SCDLP培地で試験液を洗い出した。洗い出した試験液をペプトン加生理食塩水で適宜希釈した後、前述の実施例1と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表4に示す。
【0057】
また、バクテリオファージQβに代えてバクテリオファージΦ6を用いるとともに、シュードモナス属のPseudomonas syringaeを宿主として用い、さらに、カルシウム添加LB培地に代えてNB培地を用い、25℃で培養したこと以外は、上記と同様にして、試験液中のウイルス感染価(pfu/mL)及び抑制率(%)を算出した。結果を表4に示す。
【0058】
(実施例17~20)
抗ウイルス剤aに代えて、表4に示す種類の抗ウイルス剤を用いたこと以外は、前述の実施例16と同様にして抗ウイルス性を評価した。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例4)
抗ウイルス剤を用いなかったこと以外は、前述の実施例16と同様の試験を実施した。結果を表4に示す。
【0060】
【0061】
<抗ウイルス性樹脂組成物及び抗ウイルス性物品の製造・評価(4)>
(実施例21)
実施例6で製造した樹脂組成物を加熱混練した後、押出成形して食品用トレーを得た。そして、得られた食品用トレーが優れた抗ウイルス性を有することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の抗ウイルス剤を用いることで、安全性、耐候性、及び透明性に優れた抗ウイルス性の樹脂組成物や各種物品を製造することができる。