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特開2023-147197受信装置、受信方法および受信プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147197
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】受信装置、受信方法および受信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7107 20110101AFI20231004BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H04B1/7107
H04B1/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021566
(22)【出願日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2022053919
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】安達 宏一
(72)【発明者】
【氏名】熊田 遼汰
【テーマコード(参考)】
5K052
【Fターム(参考)】
5K052DD02
5K052FF32
5K052FF33
(57)【要約】
【課題】無線電力伝送に由来する干渉を低減させて所望の信号を受信する。
【解決手段】受信装置(4)は、受信部(421)と、推定部(422)と、検出部(423)とを備える。受信部(421)は、外部の送信装置(3)からLoRa変調されて送信された希望信号(30)と、無線電力伝送に由来する干渉信号(200)とを含む無線信号を受信する。推定部(422)は、希望信号(30)のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブル(71)に基づいて、干渉信号(200)の初期位相(φ)および干渉電力(Pint)を推定する。検出部(423)は、初期位相(φ)および干渉電力(Pint)に基づいて、無線信号から希望信号(30)を検出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の送信装置からLoRa変調されて送信された希望信号と、無線電力伝送に由来する干渉信号とを含む無線信号を受信する受信部と、
前記希望信号のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブルに基づいて、前記干渉信号の初期位相および干渉電力を推定する推定部と、
前記初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出する検出部と
を備える
受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記推定部は、
前記干渉信号の複数の周波数成分のそれぞれを、前記干渉電力の平方根と、前記初期位相を偏角として有する単位ベクトルとを掛け算した積で割り算した値に等しい複素数関数を算出し、
前記無線信号のうち、前記プリアンブルのシンボル成分を除いた複数のシンボル成分のそれぞれに、前記複素数関数の偏角に基づく位相補償を施し、
前記位相補償を施した前記複数のシンボル成分の総和ベクトルの偏角を、前記初期位相の推定値として算出し、
前記総和ベクトルのノルムを、前記位相補償を施した前記複数のシンボル成分の総数で割り算した平均値の二乗を、前記干渉電力の推定値として算出する
受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の受信装置において、
前記検出部は、
前記初期位相の前記推定値と、前記干渉電力の前記推定値とに基づいて、前記干渉信号の推定値を算出し、
前記位相補償を施した前記複数のシンボル成分のそれぞれから、前記干渉信号の前記推定値を除去し、
前記干渉信号の前記推定値を除去した前記複数のシンボル成分のうち、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)出力強度が最大であるシンボル成分を、前記希望信号として検出する
受信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の受信装置において、
前記受信部は、前記希望信号と、前記希望信号の信号帯域内における複数の前記干渉信号とを含む前記無線信号を受信し、
前記推定部は、前記プリアンブルに含まれる複数のプリアンブルシンボルに基づいて、前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力を推定し、
前記検出部は、前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出する
受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置において、
前記推定部は、前記複数の干渉信号に含まれる複数の周波数成分のそれぞれについて、
前記干渉信号の複数の周波数成分のそれぞれを、前記干渉電力の平方根と、前記初期位相を偏角として有する単位ベクトルとを掛け算した積で割り算した値に等しい複素数関数を算出し、
前記無線信号のうち、前記プリアンブルのシンボル成分を除いた複数のシンボル成分のそれぞれに、前記複素数関数の偏角に基づく位相補償を施し、
前記位相補償を施した前記複数のシンボル成分の総和ベクトルの偏角を、前記初期位相の推定値として算出し、
前記総和ベクトルのノルムを、前記位相補償を施した前記複数のシンボル成分の総数で割り算した平均値の二乗を、前記干渉電力の推定値として算出する
受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受信装置において、
前記推定部は、
前記複数のプリアンブルシンボルのうち、前記複数の干渉信号に含まれる複数の周波数成分のそれぞれのDFT出力強度を部分空間に射影したベクトルの総和ベクトルのノルムが最大となるシンボルの正規化周波数オフセット量を、前記プリアンブルの正規化周波数オフセット量の推定値として判定し、
前記希望信号に含まれるペイロードに含まれる複数のペイロードシンボルのおのおのに含まれる複数の周波数成分のそれぞれに対して、前記正規化周波数オフセット量の前記推定値と、前記初期位相の前記推定値と、前記干渉電力の前記推定値とに基づいて、前記干渉信号の前記推定値を推定し、
前記検出部は、前記複数のペイロードシンボルのおのおのに含まれる複数の周波数成分のそれぞれに対して、前記干渉信号の前記推定値を除去する除去過程を逐次的に実行することによって、前記希望信号を検出する
受信装置。
【請求項7】
外部の送信装置からLoRa変調されて送信された希望信号と、無線電力伝送に由来する干渉信号とを含む無線信号を受信することと、
前記希望信号のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブルに基づいて、前記干渉信号の初期位相および干渉電力を推定することと、
前記初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出することと
を含む
受信方法。
【請求項8】
請求項7に記載の受信方法において、
前記受信することは、
前記希望信号と、前記希望信号の信号帯域内における複数の前記干渉信号とを含む前記無線信号を受信すること
を含み、
前記推定することは、
前記プリアンブルに含まれる複数のプリアンブルシンボルに基づいて、前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力を推定すること
を含み、
前記検出することは、
前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出すること
を含む
受信方法。
【請求項9】
演算装置が実行することによって所定の処理を実現するための受信プログラムであって、
前記処理は、
外部の送信装置からLoRa変調されて送信された希望信号と、無線電力伝送に由来する干渉信号とを含む無線信号を受信することと、
前記希望信号のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブルに基づいて、前記干渉信号の初期位相および干渉電力を推定することと、
前記初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出することと
を含む
受信プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の受信プログラムにおいて、
前記受信することは、
前記希望信号と、前記希望信号の信号帯域内における複数の前記干渉信号とを含む前記無線信号を受信すること
を含み、
前記推定することは、
前記プリアンブルに含まれる複数のプリアンブルシンボルに基づいて、前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力を推定すること
を含み、
前記検出することは、
前記複数の干渉信号のそれぞれの初期位相および前記干渉電力に基づいて、前記無線信号から前記希望信号を検出すること
を含む
受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信装置、受信方法および受信プログラムに関し、例えば、無線通信に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Thing:モノのインターネット)の発展に伴い、LoRaWAN(登録商標)が注目されている。LoRaWANは、低い消費電力で長距離の通信を可能とする通信規格の一つであり、雑音および干渉に強く、高い頑健性を有する。
【0003】
また、無線電力伝送による無線給電の技術が注目されている。IoTの端末を無線電力伝送で無線給電すると、バッテリで駆動させる場合と比較して、連続稼働時間を伸長させることが可能となる。さらに、無線給電の場合は、バッテリの交換または充電の手間を省略することが可能となるので、端末の稼働を停止させる必要が無くなる。
【0004】
その一方で、既存の無線通信システムに無線電力伝送を導入した場合には、無線電力伝送に由来する電磁波が、端末から送信される無線信号に干渉する可能性がある。一般的に、無線信号を送信する端末が動作するために必要な要求電力は比較的高いため、無線電力伝送に由来する干渉を低減または回避する必要がある。
【0005】
上記に関連して、非特許文献1(Y.Chen,D.B.da Costa and H.Ding、「Interference Analysis in Wireless Power Transfer」、IEEE Communications Letters、vol.21、no.10、pp.2318-2321、2017年10月)には、無線電力伝送によって生成される、種々の情報配信への同一チャネル干渉について、数値結果の比較が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Chen,D.B.da Costa and H.Ding、「Interference Analysis in Wireless Power Transfer」、IEEE Communications Letters、vol.21、no.10、pp.2318-2321、2017年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況に鑑み、本開示は、無線電力伝送に由来する干渉を低減させて所望の信号を受信するための受信装置、受信方法および受信プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
一実施の形態によれば、受信装置(4)は、受信部(421)と、推定部(422)と、検出部(423)とを備える。受信部(421)は、外部の送信装置(3)からLoRa変調されて送信された希望信号(30)と、無線電力伝送に由来する干渉信号(200)とを含む無線信号を受信する。推定部(422)は、希望信号(30)のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブル(71)に基づいて、干渉信号(200)の初期位相(φ)および干渉電力(Pint)を推定する。検出部(423)は、初期位相(φ)および干渉電力(Pint)に基づいて、無線信号から希望信号(30)を検出する。
【0010】
一実施の形態によれば、受信方法は、外部の送信装置(3)からLoRa変調されて送信された希望信号(30)と、無線電力伝送に由来する干渉信号(200)とを含む無線信号を受信すること(S1)と、希望信号(30)のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブル(71)に基づいて、干渉信号(200)の初期位相(φ)および干渉電力(Pint)を推定すること(S3)と、初期位相(φ)および干渉電力(Pint)に基づいて、無線信号から希望信号(30)を検出すること(S4)とを含む。
【0011】
一実施の形態によれば、受信プログラムは、演算装置(42)が実行することによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、外部の送信装置(3)からLoRa変調されて送信された希望信号(30)と、無線電力伝送に由来する干渉信号(200)とを含む無線信号を受信すること(S1)と、希望信号(30)のうちの、位置および内容が既知の部分であるプリアンブル(71)に基づいて、干渉信号(200)の初期位相(φ)および干渉電力(Pint)を推定すること(S3)と、初期位相(φ)および干渉電力(Pint)に基づいて、無線信号から希望信号(30)を検出すること(S4)とを含む。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、無線電力伝送に由来する干渉を低減させて所望の信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施の形態による通信システムの一構成例を示す図である。
図2図2は、一実施の形態による受信装置としてのゲートウェイの一構成例を示すブロック回路図である。
図3図3は、一実施の形態による受信方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、アップチャープ信号について説明するための図である。
図4B図4Bは、ダウンチャープ信号について説明するための図である。
図5図5は、一実施の形態によって得られるDFT出力の絶対値の一例を示す図である。
図6図6は、希望信号の搬送波周波数と、干渉信号の搬送波周波数と、これら2つの周波数の差と、帯域幅Wとの関係を説明するための図である。
図7A図7Aは、無線電力伝送に由来する干渉が無く、LoRaシンボルのピークが判別可能である場合について説明するためのグラフである。
図7B図7Bは、無線電力伝送に由来する干渉があり、LoRaシンボルのピークが判別できない場合について説明するためのグラフである。
図8A図8Aは、帯域幅Wで正規化した周波数オフセット量の影響について説明するためのグラフである。
図8B図8Bは、帯域幅Wで正規化した周波数オフセット量の影響について説明するためのグラフである。
図8C図8Cは、帯域幅Wで正規化した周波数オフセット量の影響について説明するためのグラフである。
図9図9は、一実施の形態による無線電力伝送に由来する干渉がある場合のシンボルエラーレートについて説明するためのグラフである。
図10図10は、一実施の形態による希望信号に含まれる1つのフレームの一構成例を示す図である。
図11A図11Aは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図11B図11Bは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図11C図11Cは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図12A図12Aは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図12B図12Bは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図12C図12Cは、一実施の形態によるシンボル成分の位相補償について説明するための図である。
図13図13は、一実施の形態による総和ベクトルの一例を示す図である。
図14A図14Aは、一実施の形態における、干渉信号を除去する前の各シンボル成分のDFT出力強度について説明するための図である。
図14B図14Bは、一実施の形態における、干渉信号を除去した後の各シンボル成分のDFT出力強度について説明するための図である。
図15A図15Aは、正規化周波数オフセット量εが既知である場合のシンボルエラーレート特性の計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図15B図15Bは、正規化周波数オフセット量εが既知である場合のシンボルエラーレート特性の計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図15C図15Cは、正規化周波数オフセット量εが既知である場合のシンボルエラーレート特性の計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図16図16は、正規化周波数オフセット量εが既知である場合のシンボルエラーレート特性の計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図17図17は、一実施の形態における、SIRの違いおよび位相補償の有無による干渉成分の位相推定誤差の分布について計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図18図18は、一実施の形態における、拡散率SFの違いによる干渉成分の電力推定誤差の分布について計算機シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図19A図19Aは、一実施の形態による通信システムの一構成例を示す図である。
図19B図19Bは、一実施の形態による受信装置の一構成例を示す図である。
図20図20は、一実施の形態によるLoRa信号帯域と、WPT信号の搬送周波数との関係について説明するための図である。
図21図21は、一実施の形態による手法を用いた正規化周波数オフセットのコンピュータシミュレーションの結果を表すグラフの一例である。
図22図22は、一実施の形態による手法を用いた正規化周波数オフセットのコンピュータシミュレーションにおける推定誤差を表すグラフの一例である。
図23図23は、一実施の形態による手法を用いた正規化周波数オフセット推定を考慮した場合のシンボルエラーレート特性を表すグラフの一例である。
図24図24は、一実施の形態による手法を用いて複数の正弦波干渉成分を除去する処理のコンピュータシミレーションの結果を表すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本開示による受信装置、受信方法および受信プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による通信システム1は、無線給電装置2と、端末としてのエンドノード3と、受信装置としてのゲートウェイ4とを備える。エンドノード3は、無線給電装置2からの無線給電20で動作し、希望信号30を生成してゲートウェイ4へ送信する。このとき、無線給電装置2が無線給電20を行うために放射する電磁波は、所望しない干渉信号200としてゲートウェイ4に届く場合がある。
【0016】
図2に示すように、一実施の形態による受信装置としてのゲートウェイ4は、いわゆるコンピュータのように構成されてもよい。図2の例において、ゲートウェイ4は、バス41と、演算装置42と、記憶装置43と、通信装置44と、入出力装置45とを備える。一例として、バス41は、演算装置42、記憶装置43、通信装置44および入出力装置45を相互に通信可能に接続するように構成されている。
【0017】
演算装置42は、受信部421と、推定部422と、検出部423とを備えている。記憶装置43は、受信プログラムを格納する受信プログラム記憶部431を備えている。演算装置42は、受信プログラムを実行することによって、受信部421、推定部422および検出部423の処理を実現する。受信部421、推定部422および検出部423のそれぞれは、演算装置42と記憶装置43とが協働して処理を実現する仮想的な機能ブロックである。受信部421、推定部422および検出部423が実現する処理の詳細については、後述する。
【0018】
受信プログラムは、記録媒体430から読み出されて受信プログラム記憶部431に格納されてもよい。記録媒体430は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0019】
通信装置44は、エンドノード3が送信する希望信号30を受信する。通信装置44は、他の外部端末との通信を行ってもよい。受信プログラムは、通信装置44を介して外部から取得されて受信プログラム記憶部431に格納されてもよい。
【0020】
入出力装置45は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置45は、画像を出力する表示装置、キー入力操作を受け付けるキーボード、タッチ操作を受け付けるとともに画像の出力を行うタッチパネルなどを含む。
【0021】
一実施の形態による通信システム1の動作について説明する。無線給電装置2が無線給電20を行うために電磁波を放射する。エンドノード3は、この無線給電20によって駆動し、希望信号30をゲートウェイ4へ送信する。ゲートウェイ4の受信部421が受信する無線信号には、希望信号30と、干渉信号200とが含まれる。干渉信号200は、無線給電装置2が無線給電20を行うために放射する電磁波である。無線信号は、さらに、雑音信号を含んでもよい。
【0022】
ゲートウェイ4は、受信した無線信号のうち、干渉信号200を除去して希望信号30を検出する。図3のフローチャートを参照してゲートウェイ4のこの動作について説明する前に、希望信号30と、干渉信号200とについて説明する。
【0023】
一実施の形態において、エンドノード3が送信する希望信号30は、LoRa(Long Range)変調されている。LoRa変調方式は、CSS(Chirp Spread Spectrum:チャープ拡散スペクトル)変調方式とも呼ばれる。LoRa変調方式では、変調後の信号としてチャープ信号が生成される。チャープ信号には、アップチャープシンボルおよび/またはダウンチャープシンボルが含まれる。
【0024】
図4Aおよび図4Bを参照して、アップチャープシンボルおよびダウンチャープシンボルについて説明する。図4Aに示すように、アップチャープシンボルは、時間とともに周波数が増加するような信号である。図4Aは、合計4本のグラフ511、512、513、514を含んでいる。図4Aにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表す。アップチャープシンボルの周波数は、グラフ514のように、時刻T1における周波数F1から、時刻T5における周波数F5まで増加してもよい。もしくは、アップチャープシンボルの周波数は、グラフ511のように、時刻T1における周波数F4から、時刻T2における周波数F5まで増加し、時刻T2において周波数F1に切り替わり、時刻T5における周波数F4まで増加してもよい。アップチャープシンボルの周波数が切り替わるタイミングは、グラフ512、513のように、時刻T3、T4であってもよい。グラフ511~グラフ514のような波形を有するアップチャープシンボルは、周波数が瞬間的に切り替わるタイミングの有無または違いに応じて異なるデータに対応付けることができる。
【0025】
図4Bに示すように、ダウンチャープシンボルは、時間とともに周波数が減少するような信号である。図4Bは、合計4本のグラフ521、522、523、524を含んでいる。図4Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表す。ダウンチャープシンボルの周波数は、グラフ521のように、時刻T1における周波数F5から、時刻T5における周波数F1まで減少してもよい。もしくは、ダウンチャープシンボルの周波数は、グラフ522のように、時刻T1における周波数F2から、時刻T2における周波数F1まで減少し、時刻T2において周波数F5に切り替わり、時刻T5における周波数F2まで減少してもよい。ダウンチャープシンボルの周波数が切り替わるタイミングは、グラフ523、524のように、時刻T3、T4であってもよい。グラフ521~グラフ524のような波形を有するダウンチャープシンボルは、周波数が瞬間的に切り替わるタイミングの有無または違いに応じて異なるデータに対応付けることができる。
【0026】
チャープ信号は、複数のアップチャープシンボルおよび/またはダウンチャープシンボルを組み合わせることによって任意のデータを表すことができる。
【0027】
図4Aおよび図4Bでは、アップチャープシンボルおよびダウンチャープシンボルの周波数が、時刻T1から時刻T5までのシンボル長Tの間に、帯域幅Wの範囲内で増加または減少する例を示した。また、図4Aおよび図4Bの例では、アップチャープシンボルおよびダウンチャープシンボルの周波数が瞬間的に切り替わる時刻T2~T4が、シンボル長Tを4等分したチップ長Tごとに配置される例を示した。これらのパラメータはあくまでも一例であって、一実施の形態を限定しない。
【0028】
LoRa変調方式の基本CSS変調信号は、以下の「数1」式のように表される。
【0029】
【数1】
ここで、「ψ~lc(t)」(正確には、チルダ記号「~」は「ψ」の上にある)は、基本CSS変調信号を表す。基本CSS変調信号は、帯域通過信号とも呼ばれる。「t」は、時間を表す。「SF」は、拡散率を表す。拡散率は、所定の範囲に含まれる自然数であり、シンボル長Tとチップ長Tとの間にはSF=log(T/T)という関係がある。「f」は、搬送波周波数を表す。「μ」は、チャープシンボルの種別を表し、アップチャープシンボルの場合には「1」に等しく、ダウンチャープシンボルの場合には「-1」に等しい。「W」は、帯域幅を表す。「T」は、シンボル長を表す。
【0030】
LoRa変調方式の基底帯域信号は、以下の「数2」式のように表される。
【0031】
【数2】
ここで、「ψ lc(t)」は、基底帯域信号を表す。基底帯域信号は、ベースバンド信号とも呼ばれる。「t」は、時間を表す。「SF」は、拡散率を表す。「W」は、帯域幅を表す。「T」は、シンボル長を表す。
【0032】
上記の「数2」式では、基底帯域信号を連続する時間の関数として表した。基底帯域信号は、チップ長Tが帯域幅Wの逆数に等しい(T=1/W)とき、チップ長Tで正規化した離散時間の関数として、以下の「数3」式のように表すことができる。
【0033】
【数3】
ここで、「ψ lc[l]」は、基底帯域信号を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「SF」は、拡散率を表す。
【0034】
チャープ信号に含まれる複数のシンボルのうちの第mシンボルの第lチップは、以下の「数4」式のように表される。
【0035】
【数4】
ここで、「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「m」は、注目しているシンボルの番号を表す。シンボルの番号mは、0以上、かつ、2SF-1以下の範囲に含まれる整数である。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間であり、第mシンボルに含まれる複数のチップのうちの、注目しているチップの番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。
【0036】
エンドノード3とゲートウェイ4との間で、時間と周波数とが同期されているとき、第mシンボルの送信時における受信信号は、第mシンボルを表す信号と、雑音成分とを含み、以下の「数5」式のように表される。
【0037】
【数5】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGN(Additive White Gaussian Noise:加法性白色ガウス雑音)を表す。
【0038】
LoRa変調された信号は、基本ダウンチャープによる逆拡散と、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)処理とを施すことによって、LoRa復調される。ここで、まず、基本ダウンチャープによる逆拡散について説明する。基本ダウンチャープのシンボル番号mは0に等しい。このとき、第lチップの出力は、以下の「数6」式のように表される。
【0039】
【数6】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。
【0040】
上記の「数6」式のうち、希望信号30の成分は、以下の「数7」式のように表される。
【0041】
【数7】
ここで、「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「SF」は、拡散率を表す。
【0042】
次に、LoRa変調で行うDFT処理について説明する。逆拡散後の出力チップ系列にDFT処理を行うと、以下の「数8」式のように表される第n周波数成分が得られる。
【0043】
【数8】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。
【0044】
上記の「数8」式のうち、希望信号30の成分は、以下の「数9」式のように表される。
【0045】
【数9】
ここで、「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「m」は、シンボルの番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「δ」は、デルタ関数を表す。「n」は、周波数の番号を表す。
【0046】
また、上記の「数8」のうち、雑音の成分は、以下の「数10」式のように表される。
【0047】
【数10】
ここで、「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。「n」は、周波数の番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。
【0048】
上記の「数8」式は、上記の「数9」式と「数10」式とを用いて、以下の「数11」式のように表される。
【0049】
【数11】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。
【0050】
上記の「数11」式の絶対値を取ると、以下の「数12」が得られる。
【0051】
【数12】
ここで、「|F(ψ)|」は、第mシンボルの第n周波数成分の出力強度の絶対値を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。
【0052】
LoRa変調方式では、受信装置としてのゲートウェイ4が、複数のシンボルのうち、DFT出力の絶対値が最大となる番号mのシンボルを、送信シンボルと判定する。この判定処理は、以下の「数13」式のように表される。
【0053】
【数13】
ここで、「m」は、送信シンボルの番号を表す。「argmax」は、変数kで表した複数の要素のうちの最大要素を取り出す関数を表す。変数kは、0以上、かつ、2SF-1以下の範囲に含まれる整数である。「|F(ψ)|」は、第mシンボルの第k周波数成分の出力強度の絶対値を表す。
【0054】
図5は、一実施の形態によって得られるDFT出力の絶対値の一例を示す図である。図5において、横軸はシンボルの番号を表し、縦軸はDFT出力の強度(絶対値)を表す。図5の例では、50番目のシンボルにおいてDFT出力の絶対値のピークが認められる。このような場合には、m=50と判定される。
【0055】
無線電力伝送に由来する干渉信号200について説明する。ここでは、一例として、干渉は200が連続波であり、その周波数、位相および電力のそれぞれが一定である場合について説明する。このような場合において、時刻tにおける干渉信号200は、以下の「数14」式のように表される。
【0056】
【数14】
ここで、「ψ~wpt(t)」(正確には、チルダ記号(~)は「ψ」の上にある)は、時刻tにおける干渉信号200を表す。「t」は、時間を表す。「f wpt」は、無線電力伝送の搬送波周波数を表す。「φ」は、初期位相を表す。「f lc」は、希望信号30の搬送波周波数を表す。「Δf」は、希望信号30の搬送波周波数と、無線電力伝送の搬送波周波数との差を表す(Δf=f lc-f wpt)。
【0057】
上記の「数14」式のベースバンド表現は、以下の「数15」式のように表される。
【0058】
【数15】
ここで、「ψwpt(t)」は、時刻tにおける干渉信号200のベースバンド表現を表す。「t」は、時間を表す。「Δf」は、希望信号30の搬送波周波数と、無線電力伝送の搬送波周波数との差を表す。「φ」は、初期位相を表す。
【0059】
上記の「数15」式を、チップ長Tで正規化した離散時間で表現すると、以下の「数16」式が得られる。
【0060】
【数16】
ここで、「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「Δf」は、希望信号30の搬送波周波数と、無線電力伝送の搬送波周波数との差を表す。「W」は、帯域幅を表す。「φ」は、初期位相を表す。「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。
【0061】
上記の「数16」式の正規化周波数オフセット量は、以下の「数17」式のように定義される。
【0062】
【数17】
ここで、「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「Δf」は、希望信号30の搬送波周波数と、無線電力伝送の搬送波周波数との差を表す。「W」は、帯域幅を表す。
【0063】
図6は、希望信号30の搬送波周波数f lcと、干渉信号200の搬送波周波数f wptと、これら2つの周波数の差Δfと、帯域幅Wとの関係を説明するための図である。図6の横軸は周波数を表し、周波数F1、F5および帯域幅Wは図4A図4Bのそれらに対応している。
【0064】
無線電力伝送に由来する干渉信号200が存在するとき、ゲートウェイ4が受信する受信信号は、上記の「数5」式が表す受信信号に干渉信号200の成分を加えることで、以下の「数18」式のように表される。
【0065】
【数18】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「SF」は、拡散率を表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。
【0066】
上記の「数18」式の受信信号を、シンボル番号m=0の基本ダウンチャープで逆拡散すると、第lチップの出力は、以下の「数19」式のように得られる。
【0067】
【数19】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「SF」は、拡散率を表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。
【0068】
上記の「数19」式のうち、干渉信号成分は、以下の「数20」式のように表される。
【0069】
【数20】
ここで、「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「SF」は、拡散率を表す。「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「φ」は、初期位相を表す。
【0070】
上記の「数19」式で表した、干渉信号成分を含む受信信号の逆拡散後の出力チップ系列に、DFT処理を行うと、以下の「数21」式のように表される第n周波数成分が得られる。
【0071】
【数21】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。
【0072】
上記の「数21」式のうちの干渉信号成分は、上記の「数20」式を代入すると、以下の「数22」式のように表される。
【0073】
【数22】
ここで、「F(ψwpt)」は、干渉信号成分の第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「ψwpt[l]」は、ベースバンド表現による干渉信号200の離散時間表現を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「φ」は、初期位相を表す。「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「z(ε,n)」は、正規化周波数オフセット量εと、周波数の番号nとの関数である。
【0074】
上記の「数22」式のうち、関数z(ε,n)は、以下の「数23」式のように定義される。
【0075】
【数23】
ここで、「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「n」は、周波数の番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。送信機としてのエンドノード3と、受信機にとしてのゲートウェイ4とは、拡散率SFの値を予め共有しているので、ゲートウェイ4は、正規化周波数オフセット量εと、周波数番号nとに基づいて関数z(ε,n)を算出できる。関数z(ε,n)は、干渉信号成分の第n周波数成分F(ψwpt)を、干渉信号200の電力Pintの平方根と、初期位相を偏角として有する単位ベクトルとを掛け算した積で割り算した値に等しい。
【0076】
上記の「数22」式および「数23」式のうちの関数z(ε,n)は、複素数の値を取るので、その絶対値および偏角は、以下の「数24」式のように表される。
【0077】
【数24】
ここで、「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「n」は、周波数の番号を表す。「r(ε,n)」は、関数z(ε,n)の値の絶対値を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。
【0078】
上記の「数21」式は、上記の「数9」式、「数10」式および「数22」式を用いて、以下の「数25」式のように表される。
【0079】
【数25】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。「φ」は、初期位相を表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「z(ε,n)」は、上記の「数23」式で定義された関数である。「ε」は、帯域幅に対する周波数オフセット量を表す。
【0080】
この後、上記の「数25」式で得られる第mシンボルの第n周波数成分の出力強度の絶対値を求め、上記の「数13」式で表した判定処理を行うことによって、複数のシンボルのうち、DFT出力の絶対値が最大となる番号mのシンボルを、送信シンボルと判定してもよい。しかしながら、図5に示した場合とは異なり、受信信号が干渉信号成分を含む場合には、絶対値のピークが干渉信号200に埋もれてしまう可能性がある。一例として、図7Aに示すように、無線電力伝送に由来する干渉が無い場合にはLoRaシンボルのピークが判別可能であっても、図7Bに示すように、その他の条件が同じでも無線電力伝送に由来する干渉がある場合にはLoRaシンボルのピークが判別できなくなり、SER(Symbol Error Rate:シンボルエラーレート)が増加する。なお、図7A図7Bのグラフは、シンボルごとのDFTの出力強度を表す。図7A図7Bに共通して、横軸はシンボル番号を表し、縦軸はDFT出力強度を表す。また、図7A図7Bに共通して、SNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)は-4.0dB(デシベル)であり、図7BにおけるSIR(Signal-to-Interference Power Ratio:信号対干渉電力比)は-20dBである。
【0081】
図8A図8B図8Cのグラフを参照して、帯域幅Wに対する正規化周波数オフセット量εの影響について説明する。図8A図8B図8Cは、シンボルごとのDFTの出力強度を表す。図8A図8B図8Cに共通して、縦軸はシンボル番号を表し、縦軸はDFT出力強度を表す。また、図8A図8B図8Cに共通して、SIRは-100dBである。
【0082】
図8Aのグラフは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しい場合を表している。同様に、図8Bおよび図8Cのグラフは、正規化周波数オフセット量εが0.1および0.3にそれぞれ等しい場合を表している。図8A図8Cのグラフから読み取れるように、正規化周波数オフセット量εが異なると、各シンボル成分に対する干渉の影響が異なり、結果的にシンボルによって検出に偏りが生じる。
【0083】
図9のグラフを参照して、無線電力伝送に由来する干渉がある場合のシンボルエラーレートについて説明する。図9は、合計6本のグラフG11、G12、G13、G14、G15、G16を含む。図9の横軸はSNRを表し、縦軸はシンボルエラーレートを表す。グラフG11~G16に共通して、拡散率SFは7であり、正規化周波数オフセット量εはゼロに等しい。グラフG11は、無線電力伝送に由来する干渉が無く、SIRが無限大である場合を表している。グラフG12~G16は、無線電力伝送に由来する干渉があり、この干渉を除去しない場合を表している。グラフG12、G13、G14、G15、G16において、SIRはそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dB、-25dBである。図9から読み取れるように、干渉が大きいほどシンボルエラーレートは大きくなる。したがって、エンドノード3とゲートウェイ4とを含む通信システム1が無線電力伝送と共存するためには、無線電力伝送に由来する干渉の除去が必要不可欠である。
【0084】
発明者らは、上記の「数25」式を導出したことで、干渉を除去する処理において重要なパラメータが干渉信号200の電力Pintおよび初期位相φであることを明らかにした。なお、上記の「数25」式などに示した正規化周波数オフセット量εおよび周波数番号nの関数z(ε,n)は、ゲートウェイ4が推定できるので、干渉信号200の電力Pintおよび初期位相φが分かれば干渉を除去することが可能となる。
【0085】
そこで、一実施の形態によれば、LoRa変調方式を用いるLoRaWAN(登録商標)におけるパケット構成に着目し、無線電力伝送に由来する干渉信号200の電力Pintおよび初期位相φを推定し、この推定の結果に基づいて、受信した無線信号から干渉成分を除去して希望信号30を検出できることについて説明する。
【0086】
図3のフローチャートに戻り、一実施の形態による受信方法の処理の一例について説明する。ここでは特に受信装置としてのゲートウェイ4の動作に注目する。図3のフローチャートは、一実施の形態による受信プログラムの処理の一例を表している。
【0087】
図3のフローチャートの処理は、ゲートウェイ4が起動するときに開始してもよい。図3のフローチャートの処理が開始すると、ステップS1が実行される。
【0088】
ステップS1において、ゲートウェイ4の受信部421が、希望信号30と干渉信号200を含む無線信号を受信する。前述のとおり、希望信号30は、エンドノード3から送信される。また、干渉信号200は、無線給電装置2が無線給電20を行うために放射する電磁波である。受信部421が受信する無線信号は、希望信号30と、干渉信号200とを含む。無線信号は、さらに、雑音信号を含んでもよい。
【0089】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1の後、ステップS2が実行される。ステップS2において、ゲートウェイ4の検出部423が、希望信号30のプリアンブルを検出する。
【0090】
図10に示すように、希望信号30に含まれる1つのフレーム7は、プリアンブル71と、PHDR(Physical HeaDeR)72と、PHDR_CRC(Physical HeaDeR Cyclic Redundancy Check)73と、ペイロード74と、CRC(Cyclic Redundancy Check)75とを含む。一実施の形態によるプリアンブル71は、所定の個数のシンボルで構成される無変調アップチャープ信号である。検出部423は、フレーム7におけるプリアンブル71の位置と、プリアンブル71の構成とを予め把握している。検出部423は、プリアンブル71を検出するとき、その時点におけるシンボルの番号mはゼロに等しい(m=0)と判定することができる。
【0091】
なお、希望信号30に含まれるプリアンブル71の検出は、フレーム7のプリアンブル71の受信時に実行可能である。
【0092】
図3のフローチャートにおいて、ステップS2の後、ステップS3が実行される。ステップS3において、ゲートウェイ4の推定部422が、干渉信号200の初期位相と干渉電力とを推定する。
【0093】
推定部422は、まず、上記の「数25」式に示したシンボル成分F(ψ)のそれぞれに着目する。ここで、上記の「数24」式に示したように、それぞれのシンボル成分F(ψ)における干渉成分は、その位相が、初期位相φから偏角θ(ε,n)だけ回転された状態で出力される。そこで、推定部422は、干渉成分が「√Pint・exp(jφ)」となるように、位相補償を行う。より詳細には、それぞれのシンボル成分F(ψ)の位相を偏角θ(ε,n)だけ逆回転させる。位相補償されたシンボル成分F(ψ)は、以下の「数26」式のように表される。
【0094】
【数26】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。
【0095】
上記の「数26」式のように求めた、位相補償されたシンボル成分F(ψ)の、第0シンボル成分を除いた総和を、以下の「数27」式のように算出する。
【0096】
【数27】
ここで、「n」は、周波数番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「m」は、シンボル番号を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。「ε」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。なお、第0シンボル成分を除く理由は、プリアンブル71のシンボル番号mがゼロに等しいからである。
【0097】
上記の「数27」式のように求めた、位相補償されたシンボル成分F(ψ)の総和の偏角を、以下の「数28」式のように算出することで、干渉成分の初期位相φの推定値が求められる。
【0098】
【数28】
ここで、「φ^」(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)は、干渉成分の初期位相φの推定値を表す。「n」は、周波数番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「m」は、シンボル番号を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。「ε」は、正規化周波数オフセット量を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「r(ε,n)」は関数z(ε,n)の動径を表す。
【0099】
上記の「数28」式のうち、2行目の右辺の「arg」(偏角)関数の括弧の中身の第1項は、以下の「数29」式に示すように、ゼロにほぼ等しい。
【0100】
【数29】
ここで、「n」は、周波数番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。「ε」は、正規化周波数オフセット量を表す。
【0101】
また、上記の「数28」式のうち、3行目の右辺の「arg」(偏角)関数の括弧の中身の、「exp」(指数)関数以外の部分は、以下の「数30」式に示すように、実数である。
【0102】
【数30】
ここで、「n」は、周波数番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「r(ε,n)」は関数z(ε,n)の動径を表す。「ε」は、正規化周波数オフセット量を表す。
【0103】
また、上記の「数27」式のように求めた、位相補償されたシンボル成分F(ψ)の総和の絶対値の平均値の二乗を、以下の「数31」式のように算出することで、干渉成分の電力Pintの推定値が求められる。
【0104】
【数31】
ここで、「P^int」(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)は、干渉成分の電力Pintの推定値を表す。「n」は、周波数番号を表す。「SF」は、拡散率を表す。「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「m」は、シンボル番号を表す。「θ(ε,n)」は、関数z(ε,n)の偏角を表す。「ε」は、正規化周波数オフセット量を表す。「φ」は、初期位相を表す。「Pint」は、干渉信号200の電力を表す。「r(ε,n)」は関数z(ε,n)の動径を表す。
【0105】
上記の「数31」式のうち、1行目と2行目との間の近似は、上記の「数29」式から導かれる。また、上記の「数31」式のうち、3行目と4行目との間の近似は、上記の「数30」式から導かれる。
【0106】
干渉成分の初期位相φの推定値φ^(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)が上記の「数28」式のように求められ、干渉成分の電力Pintの推定値P^int(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)が上記の「数31」式のように求められることについて説明する。
【0107】
まず、a、図11B図11Cを参照して、シンボル成分F(ψ)の位相補償について説明する。図11A図11B図11Cに共通して、横軸は実数成分を表し、縦軸は虚数成分を表す。
【0108】
図11Aは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しい場合の、シンボル成分F(ψ)に含まれる希望信号成分81および干渉信号成分91の一例を示す。干渉信号成分91の位相は、偏角911である。また、図11Bは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しい場合の、シンボル成分F(ψ)に含まれる希望信号成分82および干渉信号成分92の一例を示す。干渉信号成分92の位相は、偏角921である。同様に、図11Cは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しい場合の、シンボル成分F(ψ)に含まれる希望信号成分83および干渉信号成分93の一例を示す。干渉信号成分93の位相は、偏角931である。
【0109】
推定部422が、図11A図11B図11Cのシンボル成分に含まれる希望信号成分81、82、83および干渉信号成分91、92、93のそれぞれに、上記の「数26」式に示した演算による位相補償を行うことで、図12A図12B図12Cに示す雑音成分84、85、86および干渉信号成分94、95、96がそれぞれ得られる。
【0110】
図11Aの例に示した干渉信号成分91の位相に、正規化周波数オフセット量ε=0かつ周波数番号n=1の偏角θ(0,1)で位相補償を行うと、図12Aに示す干渉信号成分94が得られる。干渉信号成分94の位相は、偏角941である。また、図11Bの例に示した干渉信号成分92の位相に、正規化周波数オフセット量ε=0かつ周波数番号n=2の偏角θ(0,2)で位相補償を行うと、図12Bに示す干渉信号成分95が得られる。干渉信号成分95の位相は、偏角951である。同様に、図11Cの例に示した干渉信号成分93の位相に、正規化周波数オフセット量ε=0かつ周波数番号n=シンボル番号mの偏角θ(0,m)で位相補償を行うと、図12Cに示す干渉信号成分96が得られる。干渉信号成分96の位相は、偏角961である。ここで、図12A図12Cの例に示すように、位相補償された干渉信号成分94、95、96の位相941、951、961が、周波数番号nに関係無く、同じ初期位相φになることに注目されたい。また、その一方で、図12A図12Cの例に示すように、位相補償された雑音成分84、85、86の位相が、周波数番号nによって異なることに注目されたい。
【0111】
図12A図12Cに示す、位相補償された雑音成分84、85、86および干渉信号成分94、95、96の総和を、プリアンブル71のシンボル番号であるゼロを除く全ての周波数番号nについて求めると、図13に示す総和ベクトル90が得られる。
【0112】
ここで、総和ベクトル90の偏角901は、図12A図12Cの例に示した、位相補償された干渉信号成分94、95、96の位相941、951、961である初期位相φに実質的に等しいと推定される。その理由は、位相補償された雑音成分84、85、86の絶対値および偏角はそれぞれランダムであり、位相補償された雑音成分84、85、86はそれらのベクトルの大部分が相殺し、したがって、総和ベクトル90の中で位相補償された干渉信号成分94、95、96の総和が支配的になると推定されるからである。
【0113】
また、総和ベクトル90のノルムを、上記の「数27」式の総和に含まれる要素の総数で割り算した値は、干渉電力Pintに実質的に等しいと推定される。ここで、上記の「数27」式の総和を算出するときに、第0シンボル成分を除いたことで、干渉電力Pintの推定精度が向上している。
【0114】
図3のフローチャートにおいて、ステップS3の後、ステップS4が実行される。ステップS4において、ゲートウェイ4の検出部423が、受信した無線信号から干渉信号を除去することによって、希望信号30を検出する。
【0115】
より詳細には、図3のステップS3で得られた推定初期位相φ^(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)および推定干渉電力P^int(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)に基づいて以下の「数32」式を演算することによって、受信した無線信号から干渉信号を除去する。
【0116】
【数32】
ここで、「F’(ψ)」は、受信した無線信号から干渉信号を除去して得られる希望信号30のうちの、第mシンボル成分の第n周波数成分を表す。ただし、この希望信号30は、エンドノード3が送信した希望信号30に加えて、無線電力伝送に由来しない雑音成分を含んでいる場合がある。「F(ψ)」は、受信した無線信号のうちの、第mシンボル成分の第n周波数成分を表す。「P^int」(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)は、干渉電力の推定値を表す。「φ^」(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)は、初期位相の推定値を表す。「z(ε,n)」は、上記の「数23」式で定義された関数である。「ε」は、正規化周波数オフセット量を表す。
【0117】
上記の「数32」式のように求められた、雑音成分を含む希望信号30の、第mシンボル成分の第n周波数成分F’(ψ)の中から、絶対値が最大となる番号mのシンボルを、送信シンボルと判定する。この判定処理は、以下の「数33」式のように表される。
【0118】
【数33】
ここで、「m」は、送信シンボルの番号を表す。「argmax」は、変数kで表した複数の要素のうちの最大要素を与える変数kを取り出す関数を表す。変数kは、0以上、かつ、2SF-1以下の範囲に含まれる整数である。「|F’(ψ)|」は、第mシンボルの第k周波数成分の出力強度の絶対値を表す。
【0119】
図14Aに示すように、干渉信号を除去する前の各シンボル成分のDFT出力強度からはピークを検出することが困難であり、検出誤りが発生する可能性が高い。反対に、図14Bに示すように、干渉成分を除去した後の各シンボル成分のDFT出力強度からはピークを容易に検出することができる。図14Aおよび図14Bに共通して、横軸はシンボル番号を表し、縦軸はDFT出力強度を表す。また、図14Aおよび図14Bに共通して、SNRは0dBであり、SIRは-25dBであり、正規化周波数オフセット量εは0.0であり、希望信号30のシンボル番号は98である。
【0120】
図3のフローチャートのステップS4が終了すると、フローチャートの処理は終了する。
【0121】
以上に説明したように、一実施の形態による受信装置としてのゲートウェイ4と、受信方法と、受信プログラムとによれば、受信した無線信号に、無線電力伝送に由来する干渉成分が含まれていても、この干渉を低減させて所望の信号を受信することができる。
【0122】
図15A図15B図15C図16を参照して、正規化周波数オフセット量εが既知である場合のシンボルエラーレート特性の計算機シミュレーションを行った結果について説明する。図15A図15B図15C図16に共通して、横軸はSNRを表し、縦軸はシンボルエラーレートを表す。
【0123】
図15Aは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しく、拡散率SFが7に等しい場合の計算機シミュレーション結果を表す。図15Aは、合計9本のグラフG21、G22、G23、G24、G25、G26、G27、G28、G29を含む。グラフG21は、SIRが無限大であり、除去すべき干渉成分が存在しないという意味で理想的な場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG22~G25は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去しない場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG26~G29は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去する場合のシンボルエラーレート特性を表す。
【0124】
グラフG22~G25はグラフG21から離れており、グラフG26~G29はグラフG21とほぼ一致している。このことから、SIRの値に関係なく干渉信号の除去が可能であることが読み取れる。また、干渉によるシンボルエラーレートの劣化は実質的に無いことが読み取れる。
【0125】
図15Bは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しく、拡散率SFが8に等しい場合の計算機シミュレーション結果を表す。図15Bは、合計9本のグラフG31、G32、G33、G34、G35、G36、G37、G38、G39を含む。グラフG31は、SIRが無限大であり、除去すべき干渉成分が存在しないという意味で理想的な場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG32~G35は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去しない場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG36~G39は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去する場合のシンボルエラーレート特性を表す。
【0126】
グラフG32~G35はグラフG31から離れており、グラフG36~G39はグラフG21とほぼ一致している。このことから、SIRの値に関係なく干渉信号の除去が可能であることが読み取れる。また、干渉によるシンボルエラーレートの劣化は実質的に無いことが読み取れる。
【0127】
図15Cは、正規化周波数オフセット量εがゼロに等しく、拡散率SFが8に等しい場合の計算機シミュレーション結果を表す。図15Cは、合計9本のグラフG41、G42、G43、G44、G45、G46、G47、G48、G49を含む。グラフG41は、SIRが無限大であり、除去すべき干渉成分が存在しないという意味で理想的な場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG42~G45は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去しない場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG46~G49は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去する場合のシンボルエラーレート特性を表す。
【0128】
グラフG42~G45はグラフG41から離れており、グラフG46~G49はグラフG41とほぼ一致している。このことから、SIRの値に関係なく干渉信号の除去が可能であることが読み取れる。また、干渉によるシンボルエラーレートの劣化は実質的に無いことが読み取れる。
【0129】
図15A図15Cから、拡散率SFの値によらず、干渉成分の除去が可能であることが読み取れる。
【0130】
図16は、正規化周波数オフセット量εが0.1であり、拡散率SFが7に等しい場合の計算機シミュレーション結果を表す。図16は、合計9本のグラフG51、G52、G53、G54、G55、G56、G57、G58、G59を含む。グラフG51は、SIRが無限大であり、除去すべき干渉成分が存在しないという意味で理想的な場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG52~G55は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去しない場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG56~G59は、SIRがそれぞれ-5dB、-10dB、-15dB、-20dBであり、干渉成分を除去する場合のシンボルエラーレート特性を表す。
【0131】
グラフG52~G55はグラフG51から離れており、グラフG56~G59はグラフG51とほぼ一致している。このことから、SIRの値に関係なく干渉信号の除去が可能であることが読み取れる。また、干渉によるシンボルエラーレートの劣化は実質的に無いことが読み取れる。
【0132】
図15A図16から、正規化周波数オフセット量εに影響を受けることなく、干渉成分の除去が可能であることが読み取れる。これは、ゲートウェイ4が各シンボル成分における干渉成分の影響の強さを推定できるためと考えられる。
【0133】
図17を参照して、一実施の形態における、SIRの違いおよび位相補償の有無による干渉成分の位相推定誤差の分布について計算機シミュレーションを行った結果について説明する。図17において、横軸は位相推定誤差を表し、縦軸は強度を表す。図17は、合計4本のグラフG61、G62、G63、G64を含む。グラフG61は、SIRが-5dBであり、位相補償を行わない場合を表す。グラフG62は、SIRが-10dBであり、位相補償を行わない場合を表す。グラフG63は、SIRが-5dBであり、位相補償を行う場合を表す。グラフG64は、SIRが-5dBであり、位相補償を行う場合を表す。なお、図17において、グラフG63およびグラフG64は重なり合っている。
【0134】
図17から、SIRの値によらず、位相補償を行うことによって初期位相φの推定精度を向上させられることが読み取れる。
【0135】
図18を参照して、一実施の形態における、拡散率SFの違いによる干渉成分の電力推定誤差の分布について計算機シミュレーションを行った結果について説明する。図18において、横軸は正規化電力推定誤差を表し、縦軸は強度を表す。図18は、合計2本のグラフG71、G72を含む。グラフG71は、SNRが-4dBであり、SIRが-10dBであり、拡散率SFが7である場合を表す。グラフG71は、SNRが-4dBであり、SIRが-10dBであり、拡散率SFが8である場合を表す。
【0136】
図18から、干渉成分の電力の推定誤差が概ね正規分布に従うことが読み取れる。これは、推定誤差が雑音の影響によるからと考えられる。また、拡散率SFが高くなると、干渉成分の電力の推定の精度が向上することが読み取れる。これは、拡散率SFが高くなると雑音の影響がゼロに収束するからと考えられる。
【0137】
(変形例)
上述した実施の形態では、希望信号30を送信するエンドノード3が、無線給電装置2からの無線給電20によって駆動する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、エンドノード3は、無線給電装置2からの無線給電20とは別の給電手段によって駆動してもよい。
【0138】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態では、無線給電装置2が無線給電によって他の装置を駆動させるために、1つの電磁波を放射する場合の構成について説明した。本実施の形態では、無線給電のために複数の電磁波を放射する場合の構成について説明する。
【0139】
(通信システム)
図19Aに示すように、一実施の形態による通信システム1Aは、図1に示した第1の実施の形態による通信システム1に以下の変更を加えることで得られる。すなわち、図19Aの通信システム1Aは、無線給電装置2Aと、無線給電により駆動する無線受電装置21Aと、エンドノードとしての送信装置3Aと、ゲートウェイとしての受信装置4Aとを備える。以下、図19Aの通信システム1Aの構成要素と、図1の通信システム1の構成要素との共通点および差異について説明する。
【0140】
図1の無線給電装置2は無線給電20を行うために1つの電磁波を放射するが、図19Aの無線給電装置2Aは無線給電20Aを行うために複数の電磁波を放射する。図19Aの無線給電装置2Aは、これら複数の電磁波を放射するために、複数のアンテナA11、A12、…、A1Uを備える。これらのアンテナA11、A12、…、A1Uを区別しないとき、アンテナA1と総称する場合がある。ここで、Uは、アンテナA1の総数である。
【0141】
図19Aの無線受電装置21Aは、無線給電装置2Aから放射される電磁波をアンテナA2で受け、無線給電20Aによって駆動する。図1では、エンドノード3が無線給電20Aによって駆動する例を示したが、図19Aのエンドノードとしての送信装置3Aは無線給電20A以外の給電手段によって駆動してもよい。なお、送信装置3Aは、無線給電20Aによって駆動してもよい。
【0142】
図1のエンドノード3が希望信号30をゲートウェイ4へ送信するのと同様に、図19Aの送信装置3Aは希望信号30Aを受信装置4Aへ送信する。送信装置3Aは、希望信号30Aとしての電磁波を放射するためのアンテナATを備える。本実施の形態による希望信号30Aは、第1の実施の形態による希望信号30と同様に構成されていてもよい。
【0143】
図1のゲートウェイ4が希望信号30および干渉信号200を含む無線信号を受信するのと同様に、図19Aのゲートウェイとしての受信装置4Aは希望信号30Aおよび干渉信号200Aを含む無線信号を、アンテナARで受信する。ここで、干渉信号200Aは、無線給電装置2Aが無線給電20Aを行うために放射した電磁波である。
【0144】
図19Bを参照して、図19Aの受信装置4Aの一構成例について説明する。受信装置4Aは、第1入力部401と、周波数時間同期部402と、第2入力部403と、逆拡散部404と、離散フーリエ変換部405と、最大要素抽出部406と、出力部407とを備える。
【0145】
第1入力部401は、アンテナARで受信された無線信号を周波数時間同期部402に供給する。周波数時間同期部402は、受信した無線信号の同期を取る。第2入力部403は、基本ダウンチャープ信号を受信する。逆拡散部404は、基本ダウンチャープ信号を用いて、同期した無線信号の逆拡散処理を施す。離散フーリエ変換部405は、逆拡散処理を施された信号に離散フーリエ変換を施す。最大要素抽出部406は、離散フーリエ変換によって得られた複数の周波数成分のうち、出力強度の絶対値が最大である周波数成分に対応するシンボル番号mを抽出する。出力部407は、抽出されたシンボル番号mを出力する。
【0146】
(受信信号)
上述した第1の実施の形態では、ゲートウェイとしての受信装置4が受信する受信信号は、エンドノードとしての送信装置3から送信される希望信号30と、無線給電装置2から放射される1つの電磁波としての干渉信号200とを含む場合について説明した。本実施の形態では、受信装置4Aが受信する受信信号は、送信装置3Aから送信される希望信号30Aと、複数のアンテナA1が無線給電20Aのために放射する複数の電磁波としての干渉信号200Aとを含む。以下、本実施の形態における受信信号の、上述した第1の実施の形態との差異について説明する。
【0147】
無線給電装置2AがU本のアンテナA1のそれぞれから放射する電磁波は、複数の周波数の無変調正弦波を多重化した波形を有する。一例として、それぞれのアンテナA1から放射される電磁波が含む周波数の総数をI個と置く。これらI個の周波数は、周波数軸上に等間隔に設定されている。一例として、これらI個の周波数は、以下の「数34」式のように表される。
【0148】
【数34】
ここで、「f wpt」は、WPT(Wireless Power Transmission:無線給電)送信信号に含まれる第i搬送周波数を表す。「i」は、WPT送信信号に含まれる搬送周波数の番号を表す。「f wpt」は、0番目の周波数を表す。「Δfwpt」(正確には、「wpt」は「f」の右肩にある)は、周波数の間隔を表す。なお、「wpt」は「無線給電(Wireless Power Transmission)」を表す。
【0149】
時刻tにおいて第uアンテナが放射するWPT送信信号は、以下の「数35」式のように表される。
【0150】
【数35】
ここで、「Ψ wpt」(正確には、チルダ記号(~)は「Ψ」の上にある)は、干渉信号200Aのうち、時刻tにおいて第uアンテナが放射するWPT送信信号を表す。「Re」は、実数部分を表す。「xu,i wpt」は、第uアンテナが放射するWPT送信信号のうち、第i搬送周波数成分の重みを表す。重み「xu,i wpt」は、一例として、以下の「数36」式のように表される。
【0151】
【数36】
ここで、「su,i wpt」は、第uアンテナが放射する電磁波に含まれる第i搬送周波数成分の振幅を表す。「φu,i wpt」は、第uアンテナが放射する電磁波に含まれる第i搬送周波数成分の初期位相を表す。
【0152】
上記の「数35」式から、時刻tにおいて第uアンテナが放射するWPT送信信号のバンドパス表現は、以下の「数37」式のように求められる。
【0153】
【数37】
ここで、「f lc」は、希望信号30Aの搬送波周波数を表す。「Δf wpt」は、i番目のWPT搬送周波数と、LoRa変調の搬送周波数とのオフセットを表す。
【0154】
上記の「数37」式のベースバンド表現は、以下の「数38」式のように表される。
【0155】
【数38】
ここで、「ψ wpt(t)」は、干渉信号200Aのうち、時刻tにおいて第uアンテナが出力するWPT送信信号のベースバンド表現を表す。「t」は、時間を表す。「xu,i wpt」は、第uアンテナが放射するWPT送信信号のうち、第i搬送周波数成分の重みを表す。「Δf wpt」は、希望信号30Aの搬送波周波数と、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の搬送波周波数との差を表す。
【0156】
上記の「数38」式を、チップ長Tで正規化した離散時間で表現すると、以下の「数39」式が得られる。
【0157】
【数39】
ここで、「ψ wpt[l]」は、干渉信号200Aのうち、第uアンテナが出力するWPT送信信号のベースバンド表現によるの離散時間表現を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「xu,i wpt」は、第uアンテナが放射するWPT送信信号のうち、第i搬送周波数成分のチャネル重みを表す。「ε」は、第uアンテナが放射するWPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表し、以下の「数40」式のように定義される。
【0158】
【数40】
ここで、「Δf wpt」は、希望信号30Aの搬送波周波数と、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の搬送波周波数との差を表す。「W」は、帯域幅を表す。
【0159】
受信装置4AのアンテナARが受信する受信信号のうち、LoRa変調された希望信号30Aがシングルパスで到来する一方で、WPT信号は、それぞれが異なる場所に配置された複数のアンテナA1から放射されるため、実質的にマルチパスで到来する。このような場合の受信信号は、上記の「数5」式にWPT信号の成分を加えることで、以下の「数41」式のように表される。
【0160】
【数41】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「SF」は、拡散率を表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。「I’」は、LoRa信号帯域内に含まれるWPT信号の搬送周波数の総数を表す。「hu,i」は、チャネル係数を表し、以下の「数42」式のように求められる。
【0161】
【数42】
ここで、「αu,i,l」と、「τu,i,l」と、「ηu,i,l」と(正確には、「l」は筆記体の「l」であって、チップ長Tで正規化した離散時間を表す「l」とは異なる)は、WPT信号のうち、第uアンテナで受信した第i周波数成分の振幅と、遅延と、位相とを表す。
【0162】
一例として、LoRa信号帯域内に含まれるWPT信号の搬送周波数の総数I’が2に等しい場合について説明する。図20において、横軸は周波数を表す。図20の例では、希望信号30Aの搬送波周波数f lcを中心としたLoRa信号帯域Rの中に、WPT信号の搬送周波数のうち、第1搬送周波数f wptおよび第2搬送周波数f wptの2つが含まれている。ここで、希望信号30Aの搬送波周波数f lcと、LoRa信号帯域Rの帯域幅Wと、WPT信号の周波数間隔Δfwpt(正確には、「wpt」は「f」の右肩にある)との組み合わせによっては、LoRa信号帯域内に含まれるWPT信号の搬送周波数の総数I’は別の値を取ってもよいし、LoRa信号帯域Rの外にWPT信号の搬送周波数が存在してもよい。図20の例では、第0搬送周波数f wptおよび第3搬送周波数f wptがLoRa信号帯域Rの外に存在している。
【0163】
WPT信号のチャネルが静的であり、チャネル係数hu,iと、チャネル重みxu,i wptとがそれぞれ一定である場合について説明する。この場合、マルチパスフェージングの影響を受けた第i搬送周波数の干渉信号は、受信装置4Aにおいて一定となる。すなわち、上記の「数41」式のうち、右辺の第3項を、下記の「数43」式のように表すとき、「数43」式の右辺の内側の総和を、下記の「数44」式のように表すことができる。その結果、下記の「数45」式が得られる。
【0164】
【数43】
【0165】
【数44】
ここで、「P int」は、第i搬送周波数成分の干渉電力を表す。「φ int」は、第i搬送周波数成分の初期位相を表す。
【0166】
【数45】
【0167】
上記の「数41」式の受信信号を、シンボル番号m=0の基本ダウンチャープで逆拡散すると、第lチップの出力は、以下の「数46」式のように得られる。
【0168】
【数46】
ここで、「r[l]」は、受信信号を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「SF」は、拡散率を表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。「P int」は、第i搬送周波数成分の干渉電力を表す。「φ int」は、第i搬送周波数成分の初期位相を表す。「ε」は、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。
【0169】
上記の「数46」式のうち、干渉信号成分は、以下の「数47」式のように表される。
【0170】
【数47】
ここで、「exp(j2πε )ψ [l]」は、干渉信号200Aのうち、第i搬送周波数成分の、ベースバンド表現による離散時間表現を表す。「ε」は、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「SF」は、拡散率を表す。
【0171】
上記の「数46」式で表した、干渉信号成分を含む受信信号の逆拡散後の出力チップ系列に、DFT処理を行うと、以下の「数48」式のように表される第n周波数成分が得られる。
【0172】
【数48】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「ψ lc[l]」は、第mシンボルの第lチップを表す。「wm’」は、分散σ を持つAWGNを表す。
【0173】
上記の「数48」のうちの干渉信号成分は、上記の「数47」式を代入すると、以下の「数49」式のように表される。
【0174】
【数49】
ここで、「F(ψwpt)」は、干渉信号成分の第n周波数成分を表す。「l」は、チップ長Tで正規化した離散時間を表す。「SF」は、拡散率を表す。「P int」は、干渉信号200Aのうちの第i搬送周波数成分の電力を表す。「φ int」は、第i搬送周波数成分の初期位相を表す。「ε」は、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「ψ [l]」は、基本ダウンチャープを表す。「z(ε,n)」は、第i搬送周波数成分の正規化周波数オフセット量εと、周波数の番号nとの関数であり、上記の「数23」式と同様に定義される。
【0175】
上記の「数48」式は、上記の「数9」式、「数10」式および「数49」式を用いて、以下の「数50」式のように表される。
【0176】
【数50】
ここで、「F(ψ)」は、第mシンボルの第n周波数成分を表す。「SF」は、拡散率を表す。「E」は、シンボルあたりのエネルギーを表す。「T」は、チップ長を表す。「w」は、雑音の第n周波数成分の強度を表す。「P int」は、干渉信号200Aのうちの第i搬送周波数成分の電力を表す。「φ int」は、第i搬送周波数成分の初期位相を表す。「ε」は、WPT送信信号に含まれる第i搬送周波数成分の、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「z(ε,n)」は、第i搬送周波数成分の正規化周波数オフセット量εと、周波数の番号nとの関数であり、上記の「数23」式と同様に定義される。
【0177】
(正規化周波数オフセットの推定)
上述した第1の実施の形態では、図3に示したステップS3において、図2に示した推定部422が、1つの電磁波である干渉信号200の初期位相と干渉電力とを推定する。本実施の形態では、図3に示したステップS3において、図2に示した推定部422が、複数の電磁波を含む干渉信号200Aの初期位相と干渉電力とを推定する。
【0178】
ここで、推定部422は、まず、上述の第1の実施の形態で図11A図13を参照して説明した手法と同様に、離散フーリエ変換における第n周波数に対応するDFT出力強度を部分空間に射影し、その総和ベクトルのノルムが最大となるシンボル番号の正規化周波数オフセット量ε’を正規化周波数オフセットの推定値ε^(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)として判定する。この処理は、以下の「数51」式を用いて行ってもよい。
【0179】
【数51】
ここで、「ε^」(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)は、正規化周波数オフセットの推定値を表す。「ε’」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「U」(正確には筆記体の「U」であって、アンテナA1の総数を表す「U」とは異なる)は、正規化した周波数オフセット量の集合であって、以下の「数52」式のように定義されてもよい。「kpr」は、検出時のプリアンブルインデックスを表す。「Npr」は、希望信号30Aに含まれるプリアンブルの長さを表す。「SF」は、拡散率を表す。「Fn,p(ψ)」は、第pプリアンブルシンボルにおける第mシンボルの第n周波数成分を表す。「θ(ε’,n)」は、関数z(ε’,n)の偏角を表す。「ξpr(ε’,p)」は、第pプリアンブルシンボルにおける位相オフセットであり、以下の「数53」式のように求められる。
【0180】
【数52】
ここで、「Δε」は、探索ステップサイズを表す。
【0181】
【数53】
ここで、「ε’」は、帯域幅で正規化した周波数オフセット量を表す。「T」は、シンボル長を表す。
【0182】
図21は、上記の「数51」式を用いた正規化周波数オフセットのコンピュータシミュレーションの結果を表すグラフの一例である。図21のグラフにおいて、横軸は正規化周波数オフセットを表し、縦軸は相関を表す。グラフG80の例では、正規化周波数オフセットが約-0.07のときに明白なピークが検出されているので、正規化周波数オフセットの推定値は約-0.07と求められる。
【0183】
図22は、上記の「数51」式を用いて正規化周波数オフセットのコンピュータシミュレーションにおける推定誤差を表すグラフの一例である。図22のグラフにおいて、横軸は正規化周波数オフセット推定誤差を表し、縦軸は強度を表す。グラフG81、G82、G83に共通して、拡散率SF=9、SNR=-10.0dB、SIR=-10.0dBである。探索ステップサイズΔεは、グラフG81において0.1、グラフG82において0.01、グラフG83において0.001である。図22の例から読み取れるように、探索ステップサイズΔεを小さくすることで、推定精度を向上させることができる。
【0184】
図23は、上記の「数51」式を用いた正規化周波数オフセット推定を考慮した場合のシンボルエラーレート特性を表すグラフの一例である。図23のグラフにおいて、横軸は信号対雑音比の平均値をdBで表し、縦軸はシンボルエラーレートを表す。図23に含まれる合計16本のグラフのうち、グラフG911、G912、G921、G922、G931、G932、G941、G942は、正規化周波数オフセットが既知である場合を表し、残るグラフG913、G914、G923、G924、G933、G934、G943、G944は、本実施の形態による手法で正規化周波数オフセットを推定した場合を表す。グラフG911、G913、G921、G923、G931、G933、G941、G943は、信号対雑音比の平均値γSIR=-5dBの場合を表し、残るグラフG912、G914、G922、G924、G932、G934、G942、G944は、信号対雑音比の平均値γSIR=-15dBの場合を表す。拡散率SFは、グラフG911、G912、G913、G914においては10であり、グラフG921、G922、G923、G924においては9であり、グラフG931、G932、G933、G934においては8であり、グラフG941、G942、G943、G944においては7である。図23の例から読み取れるように、本実施の形態による手法で推定した正規化周波数オフセットを用いても、正規化周波数オフセットが既知である場合と同等の性能が達成される。
【0185】
(干渉成分の除去)
図3に示したステップS3において、推定部422は、希望信号30Aのペイロードに含まれる第qペイロードシンボルの第n周波数成分に対して、正規化周波数オフセット量の推定値ε^(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)と、初期位相の推定値φ^int(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)と、干渉電力の推定値P^int(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)とを用いて、干渉成分の除去を行う。
【0186】
より詳細には、図20の例に示したように、LoRa信号帯域R内に含まれる複数のWPT信号の搬送周波数の総数I’が1より大きい場合、すなわち、LoRa信号帯域R内に複数のWPT干渉波が含まれる場合には、上述した第1の実施の形態による干渉成分の除去過程を、それぞれのWPT干渉波について逐次的に実行する。第1の過程として、上記の「数51」式を用いて第i搬送周波数成分に対応する正規化周波数オフセット量の推定値ε^(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)を求める。第2の過程として、第i搬送周波数成分に対応する正規化周波数オフセット量の推定値ε^に基づいて、第i搬送周波数成分に対応する初期位相の推定値φ^ int(正確には、ハット記号「^」は「φ」の上にある)と、第i搬送周波数成分に対応する干渉電力の推定値P^ int(正確には、ハット記号「^」は「P」の上にある)とを推定する。この推定は、上記の「数28」式~「数31」式を用いて説明した手法と同様に行ってもよい。第3の過程として、これらの推定値ε^、φ^ int、P^ intに基づいて、干渉成分の除去を行う。この除去は、以下の「数54」式を用いて行われてもよい。これら第1~第3の過程を、第0搬送周波数成分~第(I’-1)搬送周波数成分のそれぞれについて実行する。
【0187】
【数54】
ここで、「F(i) n,q(ψm)」は、干渉成分のうちの第0周波数成分から第i周波数成分までを除去した後の、第qペイロードシンボルの第mシンボルの第n周波数成分を表す。「F(i-1) n,q(ψm)」は、干渉成分のうちの第0周波数成分から第i-1周波数成分までを除去した後の、第qペイロードシンボルの第mシンボルの第n周波数成分を表す。「ξpl(ε^,q)」は、正規化周波数オフセット量の第i周波数成分の推定値ε^に基づく、第qプリアンブルシンボルにおける位相オフセットであり、以下の「数55」式のように求められる(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)。
【0188】
【数55】
ここで、「Npr」は、希望信号30Aに含まれるプリアンブルの長さを表す。「NFS」は、周波数同期シンボル長を表す。「NSFD」は、フレームスタート検出シンボル長を表す。
【0189】
図24は、上記の「数54」式を用いて複数の正弦波干渉成分を除去する処理のコンピュータシミレーションの結果を表すグラフの一例である。図24のグラフにおいて、横軸は信号対雑音比の平均値を表し、縦軸はシンボルエラーレートを表す。グラフG1001は、干渉成分が存在しない場合の理想的なシンボルエラーレート特性を表し、グラフG1011、G1012は、本実施の形態による干渉成分の除去を行わない場合のシンボルエラーレート特性を表し、グラフG1021、G1022は、本実施の形態による干渉成分の除去を行う場合のシンボルエラーレート特性を表す。グラフG1011、G1021に共通して、LoRa信号帯域R内に複数のWPT信号の搬送周波数の総数I’は2であり、グラフG1012、G1022に共通して、総数I’は4である。図24の例から読み取れるように、信号対雑音比の平均値が高くなるほど、グラフG1011、G1012はグラフG1001から離れるが、グラフG1021、G1022はグラフG1001にほぼ一致している。このように、本実施の形態によれば、LoRa信号帯域R内に複数のWPT信号の搬送周波数の総数I’が1より大きい場合でも、干渉成分の推定および除去を逐次的に行うことによって、干渉が存在しない場合と同等の性能が得られる。
【0190】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、WPT信号のうち、LoRa信号帯域R内に複数の搬送周波数が含まれる場合でも、第1の実施の形態を応用して、複数の搬送周波数のそれぞれについて干渉信号の各種パラメータを推定し、干渉成分を逐次的に除去することによって、干渉信号が存在しない場合と同等のシンボルエラーレート特性が得られる。
【0191】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0192】
1 通信システム
1A 通信システム
2 無線給電装置
2A 無線給電装置
20 無線給電
20A 無線給電
21A 無線受電装置
200 干渉信号
200A 干渉信号
3 エンドノード(送信装置)
3A 送信装置
30 希望信号
30A 希望信号
4 ゲートウェイ(受信装置)
401 第1入力部
402 周波数時間同期部
403 第2入力部
404 逆拡散部
405 離散フーリエ変換部
406 最大要素抽出部
407 出力部
4A 受信装置
41 バス
42 演算装置
421 受信部
422 推定部
423 検出部
43 記憶装置
430 記録媒体
431 受信プログラム記憶部
44 通信装置
45 入出力装置
511、512、513、514 グラフ
521、522、523、524 グラフ
7 フレーム
71 プリアンブル
72 PHDR
73 PHDR_CRC
74 ペイロード
75 CRC
81、82、83 希望信号成分
84、85、86 雑音成分
90 合成干渉信号
91、92、93、94、95、96 干渉信号成分
901、911、921、931、941、951、961 偏角(位相)
A1、A11、A12、A1U アンテナ
A2 アンテナ
AT アンテナ
AR アンテナ
ΔF 周波数差
F1、F2、F3、F4、F5 周波数
lc 搬送波周波数
wpt 搬送波周波数
G11、G12、G13、G14、G15、G16 グラフ
G21、G22、G23、G24、G25、G26、G27、G28、G29 グラフ
G31、G32、G33、G34、G35、G36、G37、G38、G39 グラフ
G41、G42、G43、G44、G45、G46、G47、G48、G49 グラフ
G51、G52、G53、G54、G55、G56、G57、G58、G59 グラフ
G61、G62、G63、G64 グラフ
G71、G72 グラフ
G80、G81、G82、G83 グラフ
G911、G912、G913、G914 グラフ
G921、G922、G923、G924 グラフ
G931、G932、G933、G934 グラフ
G941、G942、G943、G944 グラフ
G1001、G1011、G1012、G1021、G1022 グラフ
R 帯域範囲
T1、T2、T3、T4、T5 時刻
チップ長
シンボル長
W 帯域幅
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24