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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147258
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】プーリ構造体
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20231004BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F16H55/36 Z
F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049682
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022053614
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】今井 勝也
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】西本 卓馬
【テーマコード(参考)】
3J011
3J031
【Fターム(参考)】
3J011AA03
3J011AA20
3J011BA02
3J011KA02
3J011PA03
3J031AC07
3J031BA08
3J031BA19
3J031CA03
(57)【要約】
【課題】外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制しつつ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立が可能なプーリ構造体を提供する。
【解決手段】プーリ構造体において、外回転体は、滑り軸受と径方向に対向し、軸方向に延びる内周面であって、他端側の端部が、滑り軸受よりも他端側に位置する内周面と、内周面の他端側の端部から径方向外側に延びる側面と、を有している。外回転体における、上記内周面と上記側面とが全周に渡って交わる角部は、内周面から側面に向かうほど内径が拡大する、平坦な面であるテーパ面と、テーパ面と側面とを繋ぐ、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面と、で構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、
前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、
前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、
前記一対の軸受のうち、一方の軸受は滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であり、
前記滑り軸受は、熱可塑性樹脂からなり、有端環状に形成され、且つ、前記内回転体に接触しており、
前記滑り軸受の周方向の両端部における厚みが、前記滑り軸受の厚みの基準寸法よりも小さく、
前記外回転体は、内径が前記他端側から前記一端側に向かって段階的に小さく形成されており、さらに、
前記外回転体は、
前記滑り軸受と前記径方向に対向し、前記軸方向に延びる内周面であって、前記他端側の端部が、前記滑り軸受よりも前記他端側に位置する内周面と、
前記内周面の前記他端側の端部から前記径方向外側に延びる側面と、を有しており、
前記内周面と前記側面とが全周に渡って交わる角部は、
前記内周面から前記側面に向かうほど内径が拡大する、平坦な面であるテーパ面と、
前記テーパ面と前記側面とを繋ぐ、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面と、で構成されていることを特徴とする、プーリ構造体。
【請求項2】
前記テーパ面は、
テーパ角が、15°以上40°以下、
テーパ幅が、0.4mm以上0.9mm以下、
テーパ長さが、0.7mm以上前記滑り軸受の前記他端側の端面と前記側面との間の前記軸方向の長さ以下であり、
前記凸状曲面は
曲率半径が、0.3mm以上1mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプーリ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受を備えたプーリ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプーリ構造体は、外回転体と、内回転体と、一対の軸受とを備えている。外回転体は、ベルトが巻き掛けられ、このベルトから付与されるトルクによって、所定の回転軸を中心に回転する筒状の部材である。内回転体は、外回転体の径方向内側に設けられ、上記回転軸を中心として、外回転体に対して相対回転可能となっている。一対の軸受は、上記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて外回転体と内回転体との間に配置され、外回転体と内回転体とを相対回転可能に連結する。また、上記一対の軸受のうち一方の軸受が滑り軸受となっており、他方の軸受が転がり軸受となっている。この滑り軸受は、熱可塑性樹脂からなり、有端環状に形成され、且つ、内回転体に装着されている。また、外回転体の内径は、軸方向の滑り軸受が備わる他端側から、転がり軸受が備わる一方側に向かって段階的に小さく形成されている。
【0003】
特許文献1には、射出成形法によって作製された滑り軸受の周方向の両端部の厚みが、周方向の両端部以外の部分の厚みよりも若干大きくなるために、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体と内回転体との隙間を広げるように、滑り軸受(周方向の両端部)から外回転体又は内回転体に周期的に力が加えられることによって、外回転体又は内回転体に振動が発生して異音が発生してしまうという問題を解決すべく、滑り軸受の構成に着目し、周方向の両端部の厚みが、周方向の両端部以外の部分における厚みよりも小さくなるように、滑り軸受を形成させたプーリ構造体、が開示されている。
【0004】
上記問題(外回転体又は内回転体が振動し、異音が発生する問題)は、外回転体と内回転体とが相対回転する際に、滑り軸受の厚みが基準寸法よりも大きい部分(周方向の両端部における厚みの大きい部分)が外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に到達する毎に、滑り軸受が、外回転体と内回転体との隙間を広げるように、外回転体に対して径方向外側に力を加えることによって生じたものである。
即ち、上記問題は、いわば、滑り軸受の厚みが基準寸法よりも大きい、滑り軸受自体の凸状部分に起因するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-003064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近は、ユーザニーズ及び採用車種の多様化による、更なる高品質化(製造品質等の向上)、ならびに低コスト化の要求に対応するため、プーリ構造体の製造にあっては、製造品質と生産性の両立が求められている。そこで、プーリ構造体の製造工程の内、比較的省人化を進めにくいアッセンブリー工程、特には予め滑り軸受が装着されている内回転体に外回転体をセットする工程において、製造品質と生産性の両立を図る必要があった。
【0007】
ここで、特許文献1に記載のプーリ構造体において、滑り軸受が装着された内回転体(滑り軸受と内回転体とで構成される部分)における外径が最も大きい部分は、滑り軸受の外周面である。また、外回転体の内径は、軸方向の滑り軸受が備わる他端側から、転がり軸受が備わる一方側に向かって段階的に小さく形成されている。このため、内回転体に外回転体をセットする工程においては、外回転体の他端側から先に内回転体に挿入されることになる。この内回転体に外回転体をセットする際に、セット前の初期状態で2つの回転体が若干芯ずれした状態であった場合、即ち、セット前の初期状態で内回転体の中心軸と外回転体の中心軸とが径方向に若干(例えば0.5mm程度)ずれていた場合は、滑り軸受と外回転体の角部とが干渉する。なお、「角部」とは、外回転体における、滑り軸受と径方向に対向する内周面と、内周面の他端側の端部(挿入方向下流側の端部)から径方向外側に延びる側面とが全周に渡って交わる部分である。
【0008】
本願発明者は、鋭意研究したところ、この外回転体の角部の形状によっては、滑り軸受が外回転体の角部に干渉した際に滑り軸受が損傷して製造品質が低下する虞があること、及び、外回転体と内回転体との芯出し性が確保できずに生産性が低下する虞があることを知見した。また、滑り軸受が損傷すると、特許文献1に記載のプーリ構造体のように滑り軸受を周方向の両端部の厚みが周方向の両端部以外の部分における厚みよりも小さくなるように形成したとしても、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体に振動が発生して異音が発生し得ることを知見した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制可能であり、且つ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立が可能なプーリ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のプーリ構造体は、
ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、
前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、
前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、
前記一対の軸受のうち、一方の軸受は滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であり、
前記滑り軸受は、熱可塑性樹脂からなり、有端環状に形成され、且つ、前記内回転体に接触しており、
前記滑り軸受の周方向の両端部における厚みが、前記滑り軸受の厚みの基準寸法よりも小さく、
前記外回転体は、内径が前記他端側から前記一端側に向かって段階的に小さく形成されており、さらに、
前記外回転体は、
前記滑り軸受と前記径方向に対向し、前記軸方向に延びる内周面であって、前記他端側の端部が、前記滑り軸受よりも前記他端側に位置する内周面と、
前記内周面の前記他端側の端部から前記径方向外側に延びる側面と、を有しており、
前記内周面と前記側面とが全周に渡って交わる角部は、
前記内周面から前記側面に向かうほど内径が拡大する、平坦な面であるテーパ面と、
前記テーパ面と前記側面とを繋ぐ、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面と、で構成されていることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、外回転体の角部において、外回転体の側面に繋がれている部分は、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面で構成されている。これにより、アッセンブリー時に、外回転体の角部が滑り軸受に干渉した際には、滑り軸受は角部の凸状曲面に干渉することになるため、滑り軸受が損傷することを抑制することができる。その結果として、アッセンブリー工程での製造品質を確保することができ、且つ、滑り軸受の損傷に起因して、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制することができる。
また、アッセンブリー工程において、外回転体の角部のテーパ面に滑り軸受が当接することで、テーパ面を案内として外回転体と内回転体との芯出し性が確保されるので、アッセンブリー工程での生産性を確保することができる。以上より、本構成によれば、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制可能であり、且つ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立が可能となる。
【0012】
また、本発明のプーリ構造体において、
前記テーパ面は、
テーパ角が、15°以上40°以下、
テーパ幅が、0.4mm以上0.9mm以下、
テーパ長さが、0.7mm以上前記滑り軸受の前記他端側の端面と前記側面との間の前記軸方向の長さ以下であり、
前記凸状曲面は
曲率半径が、0.3mm以上1mm以下であってもよい。
【0013】
本構成によれば、テーパ面(テーパ角、テーパ幅、テーパ長さ)が適切な態様で形成されているため、アッセンブリー時における、外回転体と内回転体との芯出し性をより確実に確保することができる。また、凸状曲面(曲率半径)が適切な態様で形成されているため、アッセンブリー時に、外回転体の角部に滑り軸受が干渉した際に、滑り軸受が損傷することをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外回転体のベルトから力が加えられる際に外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制可能であり、且つ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立が可能なプーリ構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るプーリ構造体を示す、プーリ構造体の回転軸を通り且つ当該回転軸と平行な方向に沿った断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図2のIII部の拡大図である。
図4図1のIV部の、エンドキャップを省略した拡大図である。
図5】比較例1に係る図4相当の図である。
図6】(a)は、比較例1に係る、アッセンブリー時に、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際よりも径方向内側部分に干渉した状態を示す断面図であり、(b)は、比較例1に係る、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際に干渉した状態を示す断面図である。
図7】比較例2に係る図4相当の図である。
図8】(a)は、比較例2に係る、アッセンブリー時に、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際よりも径方向内側部分に干渉した状態を示す断面図であり、(b)は、比較例2に係る、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際に干渉した状態を示す断面図であり、(c)は、比較例2における滑り軸受の損傷部分の態様を示す断面図である。
図9】(a)は、本発明の実施形態に係る、アッセンブリー時に、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際よりも径方向内側部分に干渉した状態を示す断面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る、滑り軸受が、外回転体の角部における他端側の側面際に干渉した状態を示す断面図である。
図10】アイドル試験機の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<プーリ構造体の構造>
図1に示す、本発明の実施形態に係るプーリ構造体1は、例えば、自動車の補機駆動システムにおいて、オルタネータの駆動軸Sに取り付けられる。補機駆動システムは、エンジンのクランク軸に取り付けられた駆動プーリと、オルタネータ等の補機を駆動する従動プーリ及びプーリ構造体1と、これらプーリ及びプーリ構造体1に巻回されたベルトBとを含む。クランク軸の回転がベルトBを介して従動プーリ及びプーリ構造体1に伝達されることで、オルタネータ等の補機が駆動される。クランク軸の回転速度がエンジンの燃焼に応じて変動するのに伴い、ベルトBの走行速度も変動する。
【0017】
図1図2に示すように、プーリ構造体1は、外回転体2と、内回転体3と、ねじりコイルばね4(以下、単に「ばね4」という)と、エンドキャップ5と、滑り軸受6及び転がり軸受7からなる一対の軸受6、7とを含む。
【0018】
外回転体2及び内回転体3は、共に略円筒状であり、同一の回転軸A(プーリ構造体1の回転軸であり、以下、単に「回転軸A」という)を有する。回転軸Aは、図1の左右方向(軸方向)に沿って延在する。また、以下では、図1の右側を軸方向の一端側、図1の左側を軸方向の他端側という。
【0019】
外回転体2の外周面に、ベルトBが巻回される。
【0020】
内回転体3は、外回転体2の内側に設けられ、外回転体2に対して相対回転可能である。内回転体3は、オルタネータの駆動軸Sが嵌合される筒本体3aと、筒本体3aの他端の外側に配置された外筒部3bと、筒本体3aの他端と外筒部3bの他端とを連結する円環板部3cとを有する。駆動軸Sは、筒本体3aの内周面のネジ溝に螺合される。
【0021】
ばね4は、外回転体2と内回転体3との間に配置されている。具体的には、ばね4は、外回転体2の内周面及び内回転体3の外筒部3bの内周面と、内回転体3の筒本体3aの外周面と、内回転体3の円環板部3cとによって画定された、転がり軸受7よりも他端側にある空間Uに収容されている。ばね4は、断面が正方形状の線材(例えば、ばね用オイルテンパー線(JISG3560:1994に準拠)等)で構成されており、左巻き(ばね4の他端から一端に向かって反時計回り)である。
【0022】
空間Uには、グリース等の潤滑剤が封入されている。潤滑剤は、プーリ構造体1の組み付け時に、ペースト状の塊の状態で、空間Uに投入される。投入量は、例えば0.2g程度である。プーリ構造体1を動作させると、空間Uの温度上昇やせん断発熱(摩擦熱)によって、潤滑剤の粘度が下がり、潤滑剤が空間U全体に拡散する。
【0023】
エンドキャップ5は、外回転体2及び内回転体3の他端に配置されている。
【0024】
一対の軸受6、7は、一端側及び他端側のそれぞれにおいて、外回転体2及び内回転体3の間に介在している。具体的には、外回転体2の他端側の内周面と内回転体3の外筒部3bの外周面との間の隙間(以下「筒状隙間」という)に、滑り軸受6が介在している。外回転体2の一端側の内周面と内回転体3の筒本体3aの一端側の外周面との間に、転がり軸受7が介在している。一対の軸受6、7によって、外回転体2及び内回転体3が相対回転可能に連結されている。外回転体2及び内回転体3は、他端から一端に向かう方向から見て時計回り(図2の矢印方向。以下、「正方向」という)に回転する。
【0025】
滑り軸受6は、有端環状の部材であり、滑り軸受6の周方向の両端部の間に隙間6dが存在している。滑り軸受6は、ロックウェルRスケール(JIS K7202-2:2001に準拠)が80~130である硬質の熱可塑性樹脂で形成されている。具体的には、滑り軸受6は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン類、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド類、シンジオ型ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系樹脂(ABS樹脂、ポリスチレン等)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン系ブロックコポリマー樹脂などによって形成されている。ただし、低摩擦摺動性や耐摩耗性等の観点から、滑り軸受6は、これらの材料のうち、ポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂で形成されたものとすることがより好ましい。また、滑り軸受6のロックウェルRスケールによる硬さは、85~125程度がより好ましい。
【0026】
また、滑り軸受6は、1種の樹脂組成物によって形成された1層のものであってもよいし、2種以上の樹脂組成物によって形成される2層以上のものでもよい。ただし、製造コストの観点から、滑り軸受6は1種の樹脂組成物によって形成された1層のものとすることがより好ましい。また、滑り軸受6は、射出成形機及び金型(射出成形金型)を用いて射出成形法によって製造される。
【0027】
図3に示すように、滑り軸受6は、若干拡径された状態で内回転体3の外筒部3bの外周面に装着されており、滑り軸受6の内周面6aは、自己弾性復元力によって外筒部3bの外周面に密着(接触)している。また、滑り軸受6の内周面6aは、その全周にわたって径がほぼ一定であり、内周面6aの全周が外筒部3bの外周面に密着している。図4に示すように、外筒部3bの外周面における滑り軸受6の両側には、滑り軸受6の抜けを防止する突起3b1が設けられている。滑り軸受6は、当該突起3b1の間で、微小に軸方向に移動可能である。
【0028】
滑り軸受6の外周面6bと外回転体2の内周面(後述する内周面2c)との間には、例えば0.1mm程度の隙間R(摺動隙間)が存在する。隙間Rに空間Uに封入された潤滑剤が入り込むことで、滑り軸受6の摩擦面(滑り軸受6における外回転体2との接触面)の摩耗が抑制される。なお、潤滑剤がこの隙間から他端側に漏れ出すことはほとんどない。
【0029】
また、図3に示すように、滑り軸受6の外周面6bは、滑り軸受6の周方向の両端部において、各端に向かうほど径が小さくなるように延びた面取り部6b1となっている。これにより、滑り軸受6の外周面6bの周方向の両端部の径は、滑り軸受6の外周面6bの周方向の両端部以外の部分の径よりも小さくなっている。そして、このことと、上記のように滑り軸受6の内周面6aの径が全周にわたってほぼ一定であることとから、滑り軸受6は、周方向の両端部における厚み(径方向の幅)が、周方向の両端部以外の部分における厚み(径方向の幅)よりも小さくなっている。すなわち、滑り軸受6の周方向の両端部における厚みが、滑り軸受6の厚みの基準寸法より小さい。言い換えると、滑り軸受6は、略一定の厚みを有する主部と、それより厚みの薄い両端部を有する。また、滑り軸受6は、局所的に厚い部分を有さない。なお、滑り軸受6の厚みの基準寸法とは、滑り軸受6の厚みの設計基準寸法のことを指し、例えば本実施形態の場合、1.4mmである。
【0030】
図1に示すように、転がり軸受7は、接触シール式の密閉形玉軸受であって、外回転体2の内周面に固定された外輪7aと、内回転体3の筒本体3aの外周面に固定された内輪7bと、外輪7aと内輪7bとの間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)7cと、複数の玉7cの軸方向両側に配置された環状の接触シール部材7dとを有する。転がり軸受7の内部にグリース等の潤滑剤(例えば、空間Uに封入された潤滑剤と同じ潤滑剤)が封入されることで、転がり軸受7の摩擦面(玉7cにおける外輪7a及び/又は内輪7bとの接触面)の摩耗が抑制される。
【0031】
外回転体2の内径は、他端から一端に向かって3段階で小さくなっている。最も小さい内径部分における外回転体2の内周面を圧接面2a、2番目に小さい内径部分における外回転体2の内周面を環状面2bという。また、最も大きい内径部分の外回転体2の内周面は、滑り軸受6と径方向に対向し、軸方向に延びる内周面2cである。圧接面2aにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径よりも小さい。環状面2bにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径と同じか、それよりも大きい。
【0032】
内周面2cの軸方向の長さは、滑り軸受6の外周面6bの軸方向の長さよりも長い。そして、この内周面2cの他端側の端部は、滑り軸受6よりも他端側に位置している。
【0033】
図4に示すように、外回転体2の他端側の側面2sは、内周面2cの他端側の端部から径方向外側に延びている。側面2sは、エンドキャップ5と軸方向に対向する。この側面2sと内周面2cとが全周に渡って交わる角部Cについては、後で詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、内回転体3の筒本体3aは、他端側において外径が大きくなっている。この部分における内回転体3の筒本体3aの外周面を接触面3axという。
【0035】
ばね4は、一端側で外回転体2に接触する一端側領域4aと、他端側で内回転体3に接触する他端側領域4bと、一端側領域4a及び他端側領域4bの間において外回転体2及び内回転体3のいずれにも接触しない中領域4cとを有する。一端側領域4a及び他端側領域4bは、それぞれ、ばね4の一端及び他端から半周以上(回転軸回りに180°以上)に亘った領域をいう。また、他端側領域4bのうち、ばね4の他端から回転軸回りに90°離れた位置付近を第2領域4b2、第2領域4b2よりも他端側の部分を第1領域4b1、残りの部分を第3領域4b3という(図2参照)。
【0036】
ばね4は、外力を受けていない状態において、全長に亘って径が一定であり、このときのばね4の外径は、環状面2bにおける外回転体2の内径よりも小さく、圧接面2aにおける外回転体2の内径よりも大きい。ばね4は、一端側領域4aが縮径された状態で、空間Uに収容されている。
【0037】
ばね4は、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態(即ち、プーリ構造体1が停止した状態)において、軸方向に圧縮されている。このとき、ばね4の一端側領域4aの外周面はばね4の拡径方向の自己弾性復元力によって圧接面2aに押し付けられ、ばね4の他端側領域4bは若干拡径された状態で接触面3axと接触している。つまり、ばね4の他端側領域4bの内周面は、ばね4の縮径方向の自己弾性復元力によって、接触面3axに押し付けられている。
【0038】
図2に示すように、内回転体3の他端部分には、ばね4の他端面4bxと対向する当接面3dが形成されている。また、外筒部3bの内周面には、外筒部3bの径方向内側に突出して他端側領域4bの外周面と対向する突起3eが設けられている。突起3eは、第2領域4b2と対向している。
【0039】
ばね4の他端側領域4bの内周面が接触面3axと接触している状態において、ばね4の他端側領域4bの外周面と内回転体3の外筒部3bの内周面との間には、隙間が形成されている。また、外回転体2の環状面2bとばね4の外周面との間には、隙間が形成されている。本実施形態では、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態において、図2に示すように、ねじりコイルばね4の外周面と突起3eとは、互いに離隔しており、両者の間に隙間が形成されているが、互いに接してもよい。
【0040】
以上説明したプーリ構造体1では、滑り軸受6の周方向の両端部における厚みが、周方向の両端部以外の部分における厚みよりも小さくなっているため、外回転体2のベルトBから力が加えられる際に、外回転体2又は内回転体3に振動が発生して異音が発生することを抑制することができる。以下、具体的に説明する。
【0041】
プーリ構造体1の外回転体2にベルトBが掛けられると、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分が、滑り軸受6に向けて押し付けられる。そのため、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分において、摺動隙間Rが狭くなってほぼ0となる。このとき、回転軸Aに対して、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と反対側のベルトBから力が加えられていない部分における摺動隙間Rが広がる(例えば0.2mm程度となる)。
【0042】
この場合において、本実施形態と異なり、滑り軸受の周方向の両端部の厚みが、周方向の両端部以外の部分の厚みよりも大きくなっていると、滑り軸受の周方向の両端部(厚みの大きい部分)が、外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に到達する毎に(周期的に)、滑り軸受が、外回転体と内回転体との隙間を広げるように、外回転体に対して径方向の外側に力を加える。これにより、外回転体又は内回転体が振動し、異音が発生する虞がある。
【0043】
これに対して、本実施形態では、滑り軸受6が、周方向の両端部における厚みが、周方向の両端部以外の部分における厚みよりも小さい。したがって、滑り軸受6の周方向の両端部が外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置に到達しても、滑り軸受6が、外回転体2と内回転体3との隙間Rを広げるように、外回転体2を径方向の外側に力を加えるということがない。これにより、外回転体2又は内回転体3が振動して、異音が発生してしまうことを抑制することができる。
【0044】
<外回転体の角部の構成>
次に、本実施形態に係る外回転体2の角部Cの構成について説明するに先立って、先ずは前提となる事項について説明する。
【0045】
上述したように、滑り軸受6が装着された内回転体3(滑り軸受6と内回転体3とで構成される部分)において、外径が最も大きい部分は滑り軸受6の外周面6bである。また、外回転体2の内径は、軸方向の滑り軸受6が備わる他端側から、転がり軸受7が備わる一方側に向かって段階的に小さく形成されている。このため、内回転体3に外回転体2をセットする工程においては、外回転体2の他端側から先に内回転体3に挿入されることになる。この内回転体3に外回転体2をセットする際に、セット前の初期状態で2つの回転体2,3が若干芯ずれした状態であった場合は、滑り軸受6と外回転体2の角部とが干渉する。
【0046】
本願発明者は、この外回転体2の角部の形状によっては、滑り軸受6が外回転体2の角部に干渉した際に滑り軸受6が損傷する虞があること、及び、外回転体2と内回転体3との芯出し性が確保できずに生産性が低下する虞があることを知見した。そして、滑り軸受6が損傷すると、滑り軸受6を周方向の両端部の厚みが周方向の両端部以外の部分における厚みよりも小さくなるように形成したとしても、外回転体2のベルトBから力が加えられる際に、外回転体2又は内回転体3に振動が発生して異音が発生し得ることを知見した。以下、具体的に説明する。
【0047】
先ず、外回転体2の角部が、図5に示すような、角部Dであった場合(以下、「比較例1」とする)について考える。角部Dは、一定の曲率(曲率半径は例えば0.5mm以上1mm以下)で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面DPから構成されている。
【0048】
この比較例1の場合、図6(b)に示すように、アッセンブリー時に、外回転体2の角部D(凸状曲面DP)に滑り軸受6が干渉しても、熱可塑性樹脂製の滑り軸受6が損傷する虞はほとんどなく、製造品質を確保できると考えられる。一方で、比較例1では、図6(a)に示すように、凸状曲面DPを案内として、外回転体2と内回転体3との芯出し性を確保するのは難しい構成である。即ち、比較例1だと、外回転体2と内回転体3との径方向のずれを修正してセット動作をやり直す頻度が高くなる。その結果として、比較例1では、生産性を確保するには不十分な構成である。
【0049】
次に、外回転体2の角部が、図7に示すような、角部Eであった場合(以下、「比較例2」とする)について考える。角部Eは、内周面2cから側面2sに向かうほど内径が拡大する平坦な面であるテーパ面ETから構成されている。
【0050】
この比較例2の場合、図8(a)に示すように、アッセンブリー時に、テーパ面ETに滑り軸受6が当接することで、該テーパ面ETを案内として外回転体2と内回転体3との芯出し性が確保される。即ち、比較例2は、比較例1と比較して、外回転体2と内回転体3との径方向のずれを修正してセット動作をやり直す頻度を低くすることができ、その結果として、生産性を確保することができる。
【0051】
しかしながら、比較例2の場合、図8(b)に示すように、セット前の初期状態で外回転体2と内回転体3とが若干芯ずれした状態であった場合、セット動作の際に、外回転体2のエッジ部分EEに滑り軸受6が噛み込むことで、滑り軸受6が損傷する虞がある。なお、エッジ部分EEとは、テーパ面ETと、側面2sとが全周に渡って交わる、断面が尖ったエッジ(稜線)部分のことである。
【0052】
具体的には、外回転体2のエッジ部分EEに滑り軸受6が噛み込んだ状態で、内回転体3に外回転体2がセットされると、図8(c)に示すように、滑り軸受6の損傷部分の一部は凸状に形成される。本願発明者らの詳細な観察により、この凸状に形成された損傷部分に起因して、滑り軸受6として、周方向の両端部における厚みが滑り軸受6の厚みの基準寸法よりも小さくなるように形成したものを採用したとしても、外回転体2又は内回転体3が振動して、異音が発生する問題が生じる虞があることが推察された。
【0053】
(観察結果)
アッセンブリー状態では、滑り軸受6を目視できないため、滑り軸受6が損傷しているか否かを観察できないため、アッセンブリーと分解検査とを繰返し行い、アッセンブリー時の2つの回転体2,3の芯ずれ状態、ならびにアッセンブリー後の滑り軸受6の状態を観察した。
【0054】
その結果、予め滑り軸受6が装着されている内回転体3に外回転体2を挿入する態様でセットする際に、外回転体2は、最大で滑り軸受6よりも一端側(転がり軸受7が備わる側)の、外回転体2の内周面2cと内回転体3の外周面との間の最小隙間寸法VM分(図7参照)、径方向に芯ずれする(例えば1mm程度振れる)余地がある。本実施形態では、最小隙間寸法VMは、外回転体2の内周面2cと、内回転体3における、滑り軸受6よりも一端側に位置する突起3b1との間の径方向の長さである。なお、上記芯ずれは、手組みではなく、装置を用いてセットすると、当然にその程度を抑制できる。
【0055】
しかしながら、装置を用いても、径方向の取り合い誤差が累積し、セット前の初期状態で2つの回転体2,3の芯ずれが0.5mm程度の範囲内で生じる可能性があり、芯ずれが生じた状態でセット動作が行われると、角部Eの他端側の側面際のエッジ部分EEに滑り軸受6が噛み込むことで、滑り軸受6が損傷することがある。その損傷部分(周上1ケ所)は図8(c)の態様を呈する。即ち、噛み込み部分(周上1ケ所)が凹凸状に塑性変形し、窪んだ部分と膨らんだ部分とができる。この膨らんだ部分は凸状に構成される。従って、滑り軸受6及びアッセンブリー時に生じた滑り軸受6の損傷部分で構成される部分は、その全体の厚みが滑り軸受6の厚みの基準寸法よりも大きい部分(凸状部分)となり得る。
【0056】
(推察事項)
外回転体2の角部Eがテーパ面ETから構成さている比較例2の場合には、アッセンブリー工程での生産性は確保できるものの、製造品質を確保できない。また、滑り軸受6自体の凸状部分(滑り軸受の厚みが基準寸法よりも大きい部分)のみならず、いわば滑り軸受6及びアッセンブリー時に生じた滑り軸受6の損傷部分で構成される凸状部分(滑り軸受6及びアッセンブリー時に生じた滑り軸受6の損傷部分で構成される部分の全体の厚みが滑り軸受の厚みの基準寸法よりも大きい部分)によっても、外回転体2と内回転体3とが相対回転しつつ、外回転体2のベルトBから力が加えられる際に、上記滑り軸受6及びアッセンブリー時に生じた滑り軸受6の損傷部分で構成される凸状部分が、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置に到達する毎に、上記凸状部分が、外回転体2と内回転体3との隙間Rを広げるように、外回転体2に対して径方向外側に力を加えてしまう虞がある、と推察された。
【0057】
以上のように、比較例2の場合には、周方向の両端部における厚みが滑り軸受の厚みの基準寸法よりも小さくなるように形成した滑り軸受6を採用したとしても、外回転体2のベルトBから力が加えられる際に外回転体2又は内回転体3が振動し、異音が発生する問題の解決は不十分である。
【0058】
そこで、上記の問題を解決すべく、本実施形態に係る角部Cは、図4に示すように、テーパ面CTと、凸状曲面CPとで構成されている。
【0059】
テーパ面CTは、内周面2cから側面2sに向かうほど内径が拡大する平坦な面である。凸状曲面CPは、テーパ面CTと側面2sとを繋ぐ、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である。
【0060】
以上の構成によれば、外回転体2の角部Cにおいて、外回転体2の側面2sに繋がれている部分は、一定の曲率で外側に膨らんだ円弧面である凸状曲面CPで構成されている。これにより、図9(b)に示すように、アッセンブリー時に、外回転体2の角部Cが滑り軸受6に干渉した際には、滑り軸受6は角部Cの凸状曲面CPに干渉することになるため、滑り軸受6が損傷することを抑制することができる。その結果として、アッセンブリー工程での製造品質を確保することができ、且つ、滑り軸受6の損傷に起因して、外回転体2のベルトBから力が加えられる際に、外回転体2又は内回転体3が振動して異音が発生することを抑制することができる。
【0061】
また、図9(a)に示すように、アッセンブリー工程において、外回転体2の角部Cのテーパ面CTに滑り軸受6が当接することで、テーパ面CTを案内として外回転体2と内回転体3との芯出し性が確保されるので、アッセンブリー工程での生産性を確保することができる。以上より、本実施形態によれば、外回転体2又は内回転体3が振動して異音が発生することを抑制可能であり、且つ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立が可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、テーパ面CTにおける、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)のそれぞれは、下記の数値範囲内となるように設定されている。
【0063】
・テーパ角(θ)が、15°以上40°以下。
・テーパ幅(TW)が、0.4mm以上0.9mm以下。
・テーパ長さ(TL)が、0.7mm以上、滑り軸受6の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さSD以下。
【0064】
ここで、「テーパ角(θ)」とは、図4に示すように、テーパ開始点TSがある、外回転体2の内周面2cと、テーパ面CTとのなす角度である。
【0065】
「テーパ幅(TW)」とは、テーパ面CT部分の径方向長さであり、具体的には、外回転体2の内周面2cにおけるテーパ開始点TSと、外回転体2の側面2sにおけるテーパ終点TEとの間の径方向長さである。なお、本実施形態のように角部Cが凸状曲面CPを有する場合には、テーパ終点TEは、テーパ面CTの仮想延長線と、側面2sの仮想延長線とが交わる仮想点として存在する。
【0066】
「テーパ長さ(TL)」とは、テーパ面CT部分の軸方向長さであり、具体的には、外回転体2の内周面2cにおけるテーパ開始点TSと、外回転体2の側面2sにおけるテーパ終点TEとの間の軸方向長さである。
【0067】
また、本実施形態では、凸状曲面CPの曲率半径は、下記の数値範囲内となるように設定されている。
【0068】
・曲率半径が0.3mm以上1mm以下。
【0069】
本実施形態では、テーパ面CTにおける、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)、並びに、凸状曲面CPの曲率半径それぞれは下記の値に設定されている。
【0070】
・テーパ面CTのテーパ角(θ):30°
・テーパ面CTのテーパ幅(TW):0.4mm
・テーパ面CTのテーパ長さ(TL):0.7mm
・凸状曲面CPの曲率半径:0.5mm
【0071】
以上のように、テーパ面CTにおける、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)、並びに、凸状曲面CPの曲率半径それぞれの値を上記数値範囲に設定することで、下記に示すように、アッセンブリー時における、外回転体2と内回転体3との芯出し性をより確実に確保することができ、且つ、外回転体2の角部Cに滑り軸受6が干渉した際に、滑り軸受6が損傷することをより抑制することができる。
【0072】
即ち、テーパ角(θ)を40°以下にすると、径方向の力の成分(作用)が支配的とはならないため、外回転体2と内回転体3との芯出し性をより確保しやすくなる。
また、テーパ角(θ)を15°以上にすると、滑り軸受に係る動的性能(特に滑り軸受の異常を抑制すること)をより確保しやすくなる。
【0073】
テーパ幅(TW)を0.4mm以上にすると、装置を用いてセットした場合、セット前の初期状態で2つの回転体の芯ずれが0.5mm程度の範囲内で生じる虞があるが、隙間R(摺動隙間)の大きさ(0.1mm程度)を差し引いた0.4mm程度を上限に、滑り軸受6の外周面6bの径方向の位置が、外回転体2の内周面2cの径方向の位置に対し、径方向外側にずれるにすぎないため、芯出し性をより確実に確保できる。
また、テーパ幅(TW)を0.9mm以下にすると、滑り軸受に係る動的性能をより確保しやすくなる。
【0074】
また、テーパ長さ(TL)が、滑り軸受6の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さSDを上回ると、隙間Rを介して滑り軸受6と径方向に対向する摺動面の軸方向長さが滑り軸受6の軸方向長さを下回ることになり、その分(滑り軸受6の受圧面積が減少する分)、滑り軸受6の機能及び耐久性が低下する虞がある。従って、テーパ長さ(TL)を滑り軸受6の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さSD以下にすることで、滑り軸受6の機能及び耐久性が低下することを抑制することができる。
また、テーパ長さ(TL)を0.7mm以上にすることで芯出し性(生産性)をより確実に確保できる。
【0075】
凸状曲面CPの曲率半径が0.3mm以上であれば、内回転体3に外回転体2をセットする際に、滑り軸受6が損傷することをより抑制することができる。また、凸状曲面CPの曲率半径が1mmを上回ると、テーパ幅が0.4mm、且つテーパ角が40°に形成された場合にテーパ面CTを形成できなくなってしまい(外回転体の角部が凸状曲面のみで形成される態様となり)、芯出し性の確保が難しくなる。
【0076】
なお、「テーパ角(θ)」、「テーパ幅(TW)」、及び「テーパ長さ(TL)」の各規定で、数値規定のない、下限値又は上限値については、他の規定範囲との関係で(例えば、数値規定のない、「テーパ角(θ)」の下限値であれば「テーパ幅(TW)が0.4mm以上」及び「テーパ長さ(TL)が、滑り軸受6の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さSD以下」との関係で)、自動的に定まる値である。
【0077】
<プーリ構造体の動作>
次に、プーリ構造体1の動作について説明する。
【0078】
先ず、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも大きくなった場合(即ち、外回転体2が加速する場合)について説明する。
【0079】
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して正方向(図2の矢印方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2aと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が拡径方向にねじれる。ばね4の一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど増大する。第2領域4b2は、ねじり応力を最も受け易く、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなると、接触面3axから離れる。このとき、第1領域4b1及び第3領域4b3は、接触面3axに圧接している。第2領域4b2が接触面3axから離れると略同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第2領域4b2の外周面が突起3eに当接する。第2領域4b2の外周面が突起3eに当接することで、他端側領域4bの拡径方向の変形が規制され、ねじり応力がばね4における他端側領域4b以外の部分に分散され、特にばね4の一端側領域4aに作用するねじり応力が増加する。これにより、ばね4の各部に作用するねじり応力の差が低減され、ばね4全体で歪エネルギーを吸収できるため、ばね4の局部的な疲労破壊を防止できる。
【0080】
また、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど低下する。第2領域4b2が突起3eに当接すると同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力が略ゼロとなる。このときのばね4の拡径方向のねじり角度をθ1(例えば、θ1=3°)とする。ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1を超えると、第3領域4b3は、拡径方向に変形することで、接触面3axから離れていく。しかし、第3領域4b3と第2領域4b2との境界付近において、ばね4が湾曲(屈曲)することはなく、他端側領域4bは円弧状に維持される。つまり、他端側領域4bは、突起3eに対して摺動し易い形状に維持されている。そのため、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなって他端側領域4bに作用するねじり応力が増加すると、他端側領域4bは、第2領域4b2の突起3eに対する圧接力及び第1領域4b1の接触面3axに対する圧接力に抗して、突起3e及び接触面3axに対して外回転体2の周方向に摺動する。そして、他端面4bxが当接面3dを押圧することにより、外回転体2と内回転体3との間で確実にトルクを伝達できる。
【0081】
なお、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1以上且つθ2(例えば、θ2=45°)未満の場合、第3領域4b3は、接触面3axから離隔し且つ内回転体3の外筒部3bの内周面に接触しておらず、第2領域4b2は、突起3eに圧接されている。そのため、この場合、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1未満の場合に比べて、ばね4の有効巻数が大きく、ばね定数が小さい。また、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ2になると、ばね4の中領域4cの外周面が環状面2bに当接すること、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度が限界に達することにより、ばね4のそれ以上の拡径方向の変形が規制され、外回転体2及び内回転体3が一体的に回転する。これにより、ばねの拡径方向の変形による破損を防止できる。
【0082】
次に、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも小さくなった場合(即ち、外回転体2が減速する場合)について説明する。
【0083】
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して逆方向(図2の矢印方向と逆の方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2aと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が縮径方向にねじれる。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3(例えば、θ3=10°)未満の場合、一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干低下するものの、一端側領域4aは圧接面2aに圧接している。また、他端側領域4bの接触面3axに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干増大する。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3以上の場合、一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は略ゼロとなり、一端側領域4aは圧接面2aに対して外回転体2の周方向に摺動する。したがって、外回転体2と内回転体3との間でトルクは伝達されない。
【0084】
このように、ばね4は、内回転体3が外回転体2に対して正方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3のそれぞれと係合して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達する一方、内回転体3が外回転体2に対して逆方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3の少なくとも一方(本実施形態では、圧接面2a)に対して摺動(本実施形態では、外回転体2の周方向に摺動)して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達しない。また、プーリ構造体1は、ばね4の拡径又は縮径により外回転体2及び内回転体3の間でトルクを伝達又は遮断するように構成されている。
【0085】
<プーリ構造体の製造方法>
次に、プーリ構造体1の製造方法について説明する。
【0086】
先ず、内回転体3にばね4を軸方向の一端側から圧入して、内回転体3にばね4を装着する。続いて、内回転体3の外筒部3bに滑り軸受6を他端側から圧入して、内回転体3に滑り軸受6を装着する。このとき、有端環状の滑り軸受6は、拡径された状態で、外筒部3bの2つの突起3b1のうちの他端側の突起3b1を乗り越えて、2つの突起3b1で軸方向に挟まれる部分まで移動する。続いて、ばね4及び滑り軸受6が装着された内回転体3に、外回転体2を軸方向の一端側から装着する。次に、外回転体2の軸方向の一端部と内回転体3の軸方向の一端部との間に、転がり軸受7を圧入する。その後、外回転体2の軸方向の他端部にエンドキャップ5を装着する。これにより、プーリ構造体1が完成する。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0088】
角部におけるテーパ面の、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)の値は、上述の数値範囲(テーパ角(θ)が、15°以上40°以下。テーパ幅(TW)が、0.4mm以上0.9mm以下。テーパ長さ(TL)が、0.7mm以上、滑り軸受6の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さSD以下。)に限定されるものではない。同様に、角部における凸状曲面の曲率半径は上述の数値範囲(曲率半径が0.3mm以上1mm以下)に限定されるものではない。
【0089】
滑り軸受の周方向の両端部の間に隙間があることにも限られない。滑り軸受の軸方向の両端部が互いに接触しており、滑り軸受の周方向の両端部の間の隙間がほとんどなくてもよい。
【0090】
プーリ構造体において、ねじりコイルばねを含むコイルスプリング式のクラッチとは別の構成のクラッチによって、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するように構成されていてもよい。さらには、プーリ構造体は、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するクラッチが設けられていないものであってもよい。すなわち、プーリ構造体において、外回転体と内回転体との間で常にトルクが伝達されるようになっていてもよいし、外回転体と内回転体との間で常にトルクが遮断されるようになっていてもよい。
【実施例0091】
本発明においては、プーリ構造体において、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制可能であり、且つ、アッセンブリー工程での製造品質と生産性の両立を図る必要がある。
そこで、本実施例では、実施例1~9および比較例1~7に係るプーリ構造体(以下、各供試体)を作製し、アッセンブリー試験およびアイドル試験を行い、比較検証を行った。
なお、以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0092】
(各供試体で共通)
(滑り軸受)
有端環状の部材であり、滑り軸受の外周面は、滑り軸受の周方向の両端部(周方向の両端面から2mm未満の範囲に位置する部分)において、各端に向かうほど径が小さくなるように延びた面取り部になっている。
・厚みの基準寸法(周方向の両端部以外の厚み):1.4mm
・周方向の端面から0mmの位置の厚み(周方向端面の厚み):1.2mm
・周方向の端面から2mmの位置の厚み:1.4mm
・軸方向の長さ:6mm
・周方向の両端部以外の部分における内径:55mm
【0093】
(滑り軸受の製造)
滑り軸受を、ロックウェルRスケールが114のポリアセタール樹脂(商品名「ベスタールG」(三ツ星ベルト社製))からなるものとした。
上記樹脂材料を上記形状・寸法に対応するキャビティを有する同じ金型(射出成形金型)(不図示)を用いて滑り軸受の作製を行った。
なお、各供試体とも、上述したような射出成形法によって、各部分の厚みが上記の厚みとなる滑り軸受が再現性良く作製されることを確認したうえで、上記の厚みを有する滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成した。
射出成形条件に関しては、射出成形時の樹脂の温度は、可塑化シリンダ後部(ノズルと反対側の部分)において170℃程度、可塑化シリンダ前部(ノズル側の部分)において200℃程度、ノズル部において210℃程度であった。また、金型の温度は70℃程度であった。また、樹脂の射出圧力は80MPa程度であり、樹脂の射出速度は30mm/秒程度であった。また、成形収縮率は約2%であった。
【0094】
(外回転体の一端側の内周面と内回転体の筒本体の一端側の外周面との間)
・ベルトが掛けられる前の状態の、筒状隙間:1.5mm
・ベルトが掛けられる前の状態の、摺動隙間:0.1mm
・ベルトが掛けられる前の状態の、最小隙間寸法(VM):1.0mm
・滑り軸受の他端側の端面と外回転体の他端側の側面(側面2s)との間の軸方向長さ(SD):1.5mm
【0095】
(各供試体で相違)
(外回転体の角部の構成)
供試体毎に、下記に示す外回転体の角部の構成を表1~4に記載の各形状・寸法値に準じて設定し、外回転体を切削加工して作製した。
・テーパ面CTからなる角部の形状の有無、並びに、凸状曲面CPからなる角部の形状の有無
・テーパ面CTと凸状曲面CPとを共に外回転体の角部に有する場合、テーパ面CTにおける、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)、並びに、凸状曲面CPの曲率半径、のそれぞれの値
【0096】
[プーリ構造体の製造]
上記実施形態に記載の方法に準じ、プーリ構造体(各供試体)を作製した。
但し、後述のアッセンブリー試験は、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体(単体)がまだ装着されていない段階で行うものである。
後述のアッセンブリー試験で設定した芯ずれ量(0.4mm又は0.5mm)通りに、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体を軸方向の一端側から装着できるよう、供試体毎に、径方向の取り合い誤差が生じない組み合わせの、内回転体及び外回転体を選別し、試験に供した。
【0097】
[プーリ構造体の評価:項目、方法、基準]
各供試体(表1~4に記載の、実施例1~9および比較例1~7)について、本願課題を解決し得るプーリ構造体が得られたかどうかを見極めるために、アッセンブリー工程での製造品質(滑り軸受の損傷の有無)、アッセンブリー工程での生産性(芯出し性)、ならびに、滑り軸受に係る動的性能(異音発生の有無、滑り軸受の異常の有無)を検証した。
【0098】
[アッセンブリー試験]
(アッセンブリー装置)
アッセンブリー装置(不図示)は、上下移動可能な上側ロードセル連結部に、一端側が上方となる態様にて、外回転体を把持するための上部掴み部を備え、下側固定部に、一端側が上方となる態様にて、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体を把持するための下部掴み部を備えている。上側ロードセル連結部は、ロードセル(荷重検知器)に連結されている。アッセンブリー時に付加する荷重(押し付け荷重)や移動速度(例えば50mm/分)等の条件を予め制御パネルに入力したうえで、装置を起動すると、上側ロードセル連結部が外回転体の中心軸方向に沿って下方に移動し、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体を軸方向の一端側からセットできるように構成されている。
当アッセンブリー装置は、通常は、セット前の初期状態で内回転体の中心軸と外回転体の中心軸とが径方向に一致する態様(つまり芯ずれ量がゼロ)に設けられているが、当アッセンブリー装置には、セット前の初期状態で内回転体の中心軸と外回転体の中心軸とを意図的に径方向に若干ずらして(芯ずれ量0.4mm又は0.5mmにて)試験できるよう、上下の掴み部の位置関係(各回転体の径方向の位置関係)を微調整できる調整機構が付加されている。
また、アッセンブリー時に、滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際に、外回転体の角部から受ける中心軸方向の反力(荷重)がロードセルで検知され、逐次、そのチャート(ストローク-荷重線図)がPC(パーソナルコンピュータ)に記録される。
【0099】
(試験方法)
(1)上記アッセンブリー装置を用いて、芯ずれ量を0.4mmに設けた状態で、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体を軸方向の一端側から装着し、芯出し性を上記チャートにてチェックした。
(2)一旦、内回転体と外回転体を分解し、内回転体に装着されていた滑り軸受を新品に取り替えた。
(3)上記アッセンブリー装置を用いて、芯ずれ量を0.5mmに設けた状態で、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体を軸方向の一端側から装着し、芯出し性を上記チャートにてチェックした。
(4)一旦、内回転体と外回転体を分解し、芯ずれ量を0.5mmに設けてアッセンブリーされた状態での、滑り軸受の損傷の有無を目視にて検査した。
【0100】
(判定基準)
(製造品質)
芯ずれ量を0.5mmに設けてアッセンブリーされた状態での滑り軸受に、損傷(凸状に膨らんだ塑性変形部分有り)も、損傷の兆候(凸状の塑性変形は無いが僅かに圧痕有り)も認められなかった場合は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での製造品質を確保できると評価し、a判定とした。
芯ずれ量を0.5mmに設けてアッセンブリーされた状態での滑り軸受に、損傷(凸状に膨らんだ塑性変形部分有り)が認められなかったが、損傷の兆候(凸状の塑性変形部分は無いが、軽微な圧痕有り)が認められた場合は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での製造品質の観点でやや劣ると評価し、b判定とした。
芯ずれ量を0.5mmに設けてアッセンブリーされた状態での滑り軸受に損傷(凸状に膨らんだ塑性変形部分有り)が認められた場合は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での製造品質を確保できないと評価し、c判定とした。
本用途での実使用に対する適正(プーリ構造体のアッセンブリー工程での製造品質)の観点から、a判定、b判定のプーリ構造体を合格レベルとした。
【0101】
(生産性)
予め測定した既知のテーパ角が45°のテーパ面のみに構成された外回転体の角部に滑り軸受が干渉したときの反力(荷重)を基準荷重として、該基準荷重からの測定荷重の大小関係を生産性(芯出し性)の指標とした。具体的には、供試体毎に、滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際の測定荷重が基準荷重未満であった場合は、生産性(芯出し性)が確保される構成と見なした。
芯ずれ量を0.5mmに設けた状態でも、芯出し性が良好であった場合[滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際の測定荷重が基準荷重未満であった場合]は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での生産性を確保できると評価し、a判定とした。
芯ずれ量を0.4mmに設けた状態では、芯出し性が良好であった[滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際の測定荷重が基準荷重未満であった]が、芯ずれ量を0.5mmに設けた状態では、芯出し性が困難であった場合[滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際の測定荷重が基準荷重以上であった場合]は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での生産性の観点でやや劣ると評価し、b判定とした。
芯ずれ量を0.4mmに設けた状態でも、芯出し性が困難であった場合[滑り軸受と外回転体の角部とが干渉した際の測定荷重が基準荷重以上であった場合]は、プーリ構造体のアッセンブリー工程での生産性を確保できないと評価し、c判定とした。
本用途での実使用に対する適正(プーリ構造体のアッセンブリー工程での生産性)の観点から、a判定、b判定のプーリ構造体を合格レベルとした。
【0102】
[アイドル試験]
(アイドル試験機)
実施例1~9および比較例1~7の供試体を用いて、図10に示すようなアイドル試験機80を形成し、このアイドル試験機80を作動させて異音の発生の有無の評価を行った。
アイドル試験機80は、オルタネータ81と、オルタネータ81の駆動軸Sに取り付けられた供試体(プーリ構造体)1xと、クランクプーリ83と、クランクプーリ83と供試体1xとに巻回されたVリブドベルト84と、クランクプーリ83と同軸に固定されたタイミングプーリ85と、モータ86と、モータ86の駆動軸に連結されたタイミングプーリ87と、タイミングプーリ85、87に巻回されたタイミングベルト88とを含む構成をしている。また、オルタネータ81、供試体1x、クランクプーリ83及びVリブドベルト84を含む空間を、恒温槽82とし、雰囲気温度を一定に保った。
【0103】
(試験方法)
各供試体とも、上記アッセンブリー試験における最終的な分解検査(滑り軸受の損傷の有無の検査)後、そのまま、芯ずれ量を0mmに設定した状態(芯ずれ無しの状態)で、ばね及び滑り軸受が装着された内回転体に、外回転体を軸方向の一端側から装着し、次いで、転がり軸受の圧入、及びエンドキャップの装着を行い、各供試体1x(プーリ構造体)を完成させた。
【0104】
アイドル試験における、異音の発生の有無の評価は、以下の条件で、約20分間の慣らし運転の後、約3分間運転させて行った。
・クランクプーリ83の回転数:約700rpm(回転数の変動率は10%程度)
・オルタネータ81(補機)及び供試体1xの回転数:約1500rpm
・オルタネータ81(補機)及び供試体1xの表面温度:約130℃(恒温槽82を実車のアイドルリング状態で想定される最高温度と同じ130℃に保った)。
【0105】
異音の発生の有無の評価では、聴覚障害のない5名の評価者によって、比較例1の場合に発生している音を基準として、それ以外の異音を聞き取ることができたか否かを判定した。具体的には、アイドル試験機80を上述したように作動させたときに、オルタネータ81から後方(プーリ構造体と反対側)に2m離れた位置で、評価者の聴覚によって異音を聞き取ることができたか否かを判定した。
【0106】
アイドル試験における、滑り軸受の異常の有無の評価(滑り軸受の機能及び耐久性の評価に相当)は、上記と同じ条件で、そのまま100時間運転させてから行うものとし、運転終了後、プーリ構造体(各供試体)を分解し、滑り軸受の損傷の有無を目視にて検査した。
【0107】
(判定基準)
(滑り軸受に係る動的性能)
アイドル試験において、異音の発生、滑り軸受の異常(線状の異常摩耗等有り)、及び滑り軸受の異常の兆候(僅かに線状痕有りなど)のいずれも認められなかった場合は、滑り軸受に係る動的性能を確保できると評価し、a判定とした。
アイドル試験において、異音の発生、及び滑り軸受の異常(線状の異常摩耗等有り)のいずれも認められなかったが、滑り軸受に異常の兆候(軽微な線状痕有りなど)が認められた場合は、滑り軸受に係る動的性能の観点でやや劣ると評価し、b判定とした。
アイドル試験において、異音の発生、及び/又は滑り軸受の異常(線状の異常摩耗等有り)が認められた場合は、滑り軸受に係る動的性能を確保できないと評価し、c判定とした。
本用途での実使用に対する適正(滑り軸受に係る動的性能)の観点から、a判定、b判定のプーリ構造体を合格レベルとした。
【0108】
(総合判定)
本課題を解決し得るプーリ構造体としての総合的な判定(ランク付け)の基準は、上記3つの試験項目(生産性、製造品質、滑り軸受に係る動的性能)における判定の結果から、以下の通りとした。
・ランクA:上記の試験項目で、すべてa判定であった場合は、実用上全く問題ないものと判断し、最良のランクとした。
・ランクB:上記の試験項目で、c判定はないが、1つでもb判定があった場合は、実用上問題ないが、やや劣るランクとした。
・ランクC:上記の試験項目で、1つでも判定がc判定であった場合は、本課題の解決策として不充分なランク(不合格)とした。
【0109】
(検証結果および考察)
検証結果を表1~4に示す。
【0110】
(外回転体の角部の形状を変更した比較)
【表1】
【0111】
(実施例1、比較例1~2)
外回転体の角部にテーパ面(テーパ角30°、テーパ幅0.4mm、テーパ長さ0.7mm)を有するか有さないか、並びに、外回転体の角部に凸状曲面(曲率半径0.5mm)を有するか有さないか、を変更し、比較した。
上記構成のテーパ面及び上記構成の凸状曲面を共に外回転体の角部に有する場合(実施例1)は、所定(合格レベル)の、製造品質、生産性(芯出し性)、ならびに滑り軸受に係る動的性能を確保できた(総合判定でもランクA)。
上記構成の凸状曲面を有するが、テーパ面を有さない場合(比較例1)は、製造品質、ならびに滑り軸受に係る動的性能はいずれもa判定であったが、生産性(芯出し性)がc判定(総合判定でもランクC)となった。
逆に、上記構成のテーパ面を有するが、凸状曲面を有さない場合(比較例2)は、生産性(芯出し性)はa判定であったが、製造品質、ならびに滑り軸受に係る動的性能がいずれもc判定(総合判定でもランクC)となった。
以上の結果から、所定(合格レベル)の、アッセンブリー工程での製造品質、アッセンブリー工程での生産性(芯出し性)、ならびに滑り軸受に係る動的性能を確保できる、という点で、外回転体の角部にテーパ面及び凸状曲面を共に有するプーリ構造体が好適と云える。
【0112】
(テーパ面のテーパ角を変量した比較)
【表2】
【0113】
(実施例1~3、比較例3~4)
外回転体の角部にテーパ面及び凸状曲面を共に有するプーリ構造体において、実施例1のプーリ構造体(テーパ面のテーパ幅0.4mm、凸状曲面の曲率半径0.5mm)をベースにして、テーパ面のテーパ角30°を変量し、比較した。
テーパ面のテーパ角が大きくなるほど、テーパ面のテーパ長さが小さくなるとともに、生産性(芯出し性)が劣る傾向が見られ、逆にテーパ面のテーパ角が小さくなると、テーパ面のテーパ長さが大きくなり、生産性(芯出し性)は確保されるが、滑り軸受に係る動的性能が劣る傾向が見られた。
【0114】
(実施例1~3、比較例4)
具体的には、テーパ面のテーパ角の上限水準を確認するため、実施例1に対して、テーパ面のテーパ角を40°まで大きくした実施例3では、芯ずれ量0.4mmでの芯出し性は良好であったが、芯ずれ量0.5mmでの芯出し性が困難で、生産性(芯出し性)がb判定(総合判定でもランクB)であった。
さらに、実施例1に対して、テーパ面のテーパ角を45°まで大きくした比較例4では、芯ずれ量0.4mmでも芯出し性が困難となり、生産性(芯出し性)がc判定(総合判定でもランクC)となった。
この結果から、テーパ面のテーパ角の上限水準は、40°程度が好ましく、30°程度がより好ましいと云える。
【0115】
(実施例1、2、比較例3)
テーパ面のテーパ角の下限水準を確認するため、実施例1に対して、テーパ面のテーパ角を、15°まで小さくした実施例2では、実施例1と同等にランクAとなったが、さらに、テーパ面のテーパ角を10°まで小さくした比較例3では、テーパ面のテーパ長さが2.3mmと、SD寸法(滑り軸受の他端側の端面と側面2sとの間の軸方向長さ:1.5mm)を上回り、その分、滑り軸受の受圧面積が減少したためか、滑り軸受に異常(線状の異常摩耗)が発生し、滑り軸受に係る動的性能がc判定(総合評価でもランクC)となった。
この結果から、テーパ面のテーパ角の下限水準は、15°程度であると云える。
【0116】
以上の結果から、所定(合格レベル)の、生産性(芯出し性)、ならびに滑り軸受に係る動的性能(特に滑り軸受の異常を抑制すること)を確保できる、という点で、テーパ面のテーパ角の好適な範囲は15°以上40°以下であり、より好適な範囲は15°以上30°以下と云える。
【0117】
(テーパ面のテーパ幅及びテーパ面のテーパ長さを変量した比較)
【表3】
【0118】
(実施例1、4、比較例5~6)
外回転の角部にテーパ面及び凸状曲面を共に有するプーリ構造体において、実施例1のプーリ構造体(テーパ面のテーパ角30°、凸状曲面の曲率半径0.5mm)をベースにして、テーパ面のテーパ幅0.4mm、テーパ面のテーパ長さ0.7mmを変量し、比較した。
上記条件のもと、テーパ面のテーパ幅が大きくなることは、テーパ面のテーパ長さも大きくなることを表す。
テーパ面のテーパ幅が大きくなるほど、テーパ面のテーパ長さも大きくなるとともに、滑り軸受に係る動的性能が劣る傾向が見られ、逆に、テーパ面のテーパ幅が小さくなるほど、テーパ面のテーパ長さも小さくなり、滑り軸受に係る動的性能は確保されるが、生産性(芯出し性)が劣る傾向が見られた。
【0119】
(実施例1、4、比較例6)
具体的には、テーパ面のテーパ幅の上限水準、及びテーパ面のテーパ長さの上限水準を確認するため、実施例1に対して、テーパ面のテーパ幅を0.9mm、テーパ面のテーパ長さを1.5mm(SD寸法に相当)まで大きくした実施例4では、実施例1と同等にランクAとなったが、さらに、テーパ面のテーパ幅を1.0mm、テーパ面のテーパ長さを1.7mmまで大きくした比較例6では、テーパ面のテーパ長さがSD寸法(1.5mm)を上回り、その分、滑り軸受の受圧面積が減少したためか、滑り軸受に異常(線状の異常摩耗)が発生し、滑り軸受に係る動的性能がc判定となり、ランクCであった。
この結果から、テーパ面のテーパ幅の上限水準は0.9mm程度であり、テーパ面のテーパ長さの上限水準はSD寸法(1.5mm)程度であると云える。
【0120】
(実施例1、比較例5)
テーパ面のテーパ幅の下限水準、及びテーパ面のテーパ長さの下限水準を確認するため、実施例1 に対して、テーパ面のテーパ幅を0.3mm、テーパ面のテーパ長さを0.5mmまで小さくした比較例5では、所定(合格レベル)の生産性(芯出し性)を確保できず(c判定)、ランクCとなった。
この結果から、テーパ面のテーパ幅の下限水準は0.4mm程度であり、テーパ面のテーパ長さの下限水準は0.7mm程度であると云える。
以上の結果から、所定(合格レベル)の、アッセンブリー工程での生産性(芯出し性)、ならびに滑り軸受に係る動的性能(特に滑り軸受の異常を抑制すること)を確保できる、という点で、テーパ面のテーパ幅の好適な範囲は0.4mm以上0.9mm以下、テーパ面のテーパ長さの好適な範囲は0.7mm以上SD寸法(本実施形態では1.5mm)以下と云える。
【0121】
(凸状曲面の曲率半径を変量した比較)
【表4】
【0122】
(実施例1、5~9、比較例2、7)
外回転体の角部にテーパ面及び凸状曲面を共に有するプーリ構造体において、実施例1のプーリ構造体(テーパ面のテーパ角30°、テーパ面のテーパ幅0.4mm、テーパ面のテーパ長さ0.7mm)をベースにして、凸状曲面の曲率半径0.5mmを変量し、上記構成のテーパ面を有するが凸状曲面を有さない場合(比較例2)と共に、比較した。
凸状曲面の曲率半径が大きくなるほど、生産性(芯出し性)が劣る傾向が見られ、逆に凸状曲面の曲率半径が小さくなるほど、生産性(芯出し性)は確保されるが、製造品質及び滑り軸受に係る動的性能が劣る傾向が見られた。
【0123】
(実施例1、8~9、比較例7)
具体的には、凸状曲面の曲率半径の上限水準を確認するため、実施例1に対して、凸状曲面の曲率半径を1.0mmまで大きくした実施例8では、実施例1と同等にランクAとなったが、さらに、凸状曲面の曲率半径を1.1mmまで大きくした実施例9では、芯ずれ量0.4mmでの芯出し性は良好であったものの、芯ずれ量0.5mmでの芯出し性は困難で、生産性(芯出し性)がb判定(総合判定でもランクB)であった。
さらに、実施例1に対して、凸状曲面の曲率半径を1.2mmまで大きくした比較例7では、芯ずれ量0.4mmでも芯出し性が困難となり、生産性(芯出し性)がc判定(総合判定でもランクC)となった。
この結果から、凸状曲面の曲率半径の上限水準は、1.1mm程度が好ましく、1.0mm程度がより好ましいと云える。
【0124】
(実施例1、5~7、比較例2)
凸状曲面の曲率半径の下限水準を確認するため、実施例1に対して、凸状曲面の曲率半径を0.3mmまで小さくした実施例7では、実施例1と同等にランクAとなったが、さらに、凸状曲面の曲率半径を小さくした実施例6(0.2mm)、実施例5(0.1mm)では、芯ずれ量を0.5mmに設けてアッセンブリーされた状態の滑り軸受に、損傷の兆候(凸状の塑性変形部分は無いが軽微な圧痕)があり、製造品質がb判定(総合判定でもランクB)であった。
凸状曲面の曲率半径を0mmにした(即ち凸状曲面を無くした)比較例2では、上記アッセンブリーされた状態の滑り軸受に損傷(凸状の塑性変形部分)があり、製造品質がc判定で、かつアイドル試験において異音が発生し、滑り軸受に係る動的性能もc判定(総合判定でもランクC)となった。
この結果から、凸状曲面の曲率半径の下限水準は、0.1mm程度が好ましく、0.3mm程度がより好ましいと云える。
以上の結果から、所定(合格レベル)の、アッセンブリー工程での製造品質、アッセンブリー工程での生産性(芯出し性)、ならびに滑り軸受に係る動的性能(特に異音の発生を抑制すること)を確保できる、という点で、凸状曲面の曲率半径の好適な範囲は0.1mm以上1.1mm以下であり、より好適な範囲は0.3mm以上1.0mm以下と云える。
【0125】
(得られた効果)
表1~4の結果から、実施例1~9の各プーリ構造体は、課題に対応し、外回転体の角部Cを、テーパ面CTと、凸状曲面CPとで構成することで、アッセンブリー時における、外回転体と内回転体との芯出し性を確保し、その結果として、アッセンブリー工程での生産性を確保し易くでき、且つ、外回転体の角部Cに滑り軸受が干渉した際に、潜り軸受が損傷することを抑制し、その結果として、アッセンブリー工程での製造品質を確保し易くでき、且つ、滑り軸受の損傷に起因して、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することを抑制し易くできた。
また、テーパ面CTにおける、テーパ角(θ)、テーパ幅(TW)、及びテーパ長さ(TL)、並びに、凸状曲面CPの曲率半径のそれぞれの値を適切な数値範囲に設計することで、滑り軸受の機能及び耐久性が低下する(滑り軸受に異常が生じる)ことを抑制し、且つ、アッセンブリー時における、外回転体と内回転体との芯出し性をより確実に確保し、その結果として、アッセンブリー工程での生産性をより確実に確保し易くでき、且つ、外回転体の角部Cに滑り軸受が干渉した際に、滑り軸受が損傷することをより抑制し、その結果として、アッセンブリー工程での製造品質をより確実に確保し易くでき、且つ、滑り軸受の損傷に起因して、外回転体のベルトから力が加えられる際に、外回転体又は内回転体が振動して異音が発生することをより抑制し易くできた。
【符号の説明】
【0126】
1 プーリ構造体
2 外回転体
2c 内周面
2s 側面
3 内回転体
6 滑り軸受
7 転がり軸受
B ベルト
C 角部
CT テーパ面
CP 凸状曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10