(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147259
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】管継手の屈曲角測定方法および管継手の屈曲角測定用の基準治具
(51)【国際特許分類】
G01B 21/22 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01B21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049758
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022053480
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA83
2F069AA93
2F069CC02
2F069DD19
2F069GG01
2F069GG06
2F069QQ05
2F069QQ08
(57)【要約】
【課題】管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することか可能な管継手の屈曲角測定方法を提供する。
【解決手段】水準器4と、水準器4が水平を示した状態において各管体1、2と所定の位置関係に位置決めされる基準部5と、を有する基準治具3を水準器4が水平状態を示すように第一管体1にセットした上で、基準部5上の所定位置に測定機器8を載置し、第一管体1の第一方位角θ
MH1および第一傾斜角θ
MV1を測定する第一測定工程と、基準治具3を水準器4が水平状態を示すように第二管体2にセットした上で、前記所定位置に測定機器8を載置し、第二管体2の第二方位角θ
MH2および第二傾斜角θ
MV2を測定する第二測定工程と、各方位角θ
MH1、θ
MH2と各傾斜角θ
MV1、θ
MV2から第一管体1と第二管体2との間の屈曲角θを算出する算出工程と、を有する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された第一管体(1)と第二管体(2)との間の屈曲角(θ)を測定する管継手の屈曲角測定方法において、
水準器(4)と、前記水準器(4)が水平を示した状態において前記管体(1、2)と所定の位置関係に位置決めされる基準部(5)と、を有する基準治具(3)を前記水準器(4)が水平状態を示すように前記第一管体(1)にセットした上で、前記基準部(5)上の予め定めた所定位置に測定機器(8)を載置し、前記測定機器(8)で、水平面内における予め定めた基準方位と測定方位との間の角度である第一方位角(θMH1)、および、鉛直面内における水平面からの前記測定機器(8)の傾きである第一傾斜角(θMV1)をそれぞれ測定する第一測定工程と、
前記基準治具(3)を前記水準器(4)が水平状態を示すように前記第二管体(2)にセットした上で、前記基準部(5)上の前記所定位置に前記測定機器(8)を載置し、前記測定機器(8)で、水平面内における予め定めた基準方位と測定方位との間の角度である第二方位角(θMH2)、および、鉛直面内における水平面からの前記測定機器(8)の傾きである第二傾斜角(θMV2)をそれぞれ測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程で測定した前記第一方位角(θMH1)および前記第一傾斜角(θMV1)、ならびに、前記第二測定工程で測定した前記第二方位角(θMH2)および前記第二傾斜角(θMV2)から、前記第一管体(1)と前記第二管体(2)との間の屈曲角(θ)を算出する算出工程と、
を有することを特徴とする管継手の屈曲角測定方法。
【請求項2】
前記第一方位角(θMH1)および前記第二方位角(θMH2)を前記測定機器(8)が備える地磁気の方向を検出可能な磁気センサによって測定する一方で、前記第一傾斜角(θMV1)および前記第二傾斜角(θMV2)を前記測定機器(8)が備える当該測定機器の水平面からの傾きを検出可能な加速度センサによって測定する請求項1に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項3】
前記測定機器(8)が、グローバル・ポジショニング・システム機能を備えており、前記第一測定工程および前記第二測定工程の実施位置の位置情報を得ることが可能な請求項2に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項4】
前記測定機器(8)が、カメラ(9)と、当該カメラ(9)で撮影された画像を表示するディスプレイ(10)を備えるとともに、前記ディスプレイ(10)の所定位置に基準表示(11)が表示されるようになっており、前記第一測定工程および前記第二測定工程において、前記カメラ(9)が前記管体(1、2)の管軸方向と平行な方向を向いた前記測定機器(8)の基準姿勢から、前記測定機器(8)を前記基準治具(3)の前記所定位置に載置された状態のまま前記管軸方向を含む鉛直面内で揺動させて、前記基準表示(11)が前記ディスプレイ(10)に表示される前記管体(1、2)の所定の管位置と一致したときの前記基準姿勢からの揺動角度と、前記基準表示(11)が前記ディスプレイ(10)に表示される前記所定の管位置の真上の地表面と一致したときの前記基準姿勢からの揺動角度、をそれぞれ記録し、前記両揺動角度と前記カメラ(9)の前記管体(1、2)の表面からの高さから、地表面から前記所定の位置までの深さ(L)を算出する請求項3に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項5】
前記測定機器(8)がスマートデバイスである請求項2から4のいずれか1項に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項6】
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器(4)と、
前記水準器(4)が水平を示した状態において管体(1、2)と所定の位置関係に位置決めされる基準部(5)と、
を有する管継手の屈曲角測定用の基準治具。
【請求項7】
前記基準部(5)が、前記管軸方向を含む面内で揺動可能な揺動機能を有している請求項6に記載の管継手の屈曲角測定用の基準治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手の屈曲角測定方法、および、この屈曲角測定方法に用いられる基準治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、上下水道、工業用水道、農業用水道などの管路の配管接合においては、継手を破損させることなく確実に接合を行うとともに、接合後の継手性能を確保するため、管種に応じた施工管理の手法や基準が定められている。特に近年は耐震化が求められることから、狭い掘削幅で布設可能なGX形ダクタイル鉄管の需要が増大しているが、高品質な管路を構築するための施工管理の一つとして、接合時の継手角度の確認が必要となる。
【0003】
この継手角度の確認手段の一つとして、
図16に示すように、継手の屈曲外側と屈曲内側とで、挿し側管体20の端部に形成された環状の白線21と受け側管体22の受口端面との間の寸法a1、a2をそれぞれ測定し、次の(1)式に基づいて継手の屈曲角θを算出する手段がある。このように屈曲角θを算出して許容曲げ角度の管理を行っている。
θ=tan
-1((a1-a2)/D) (1)
【0004】
この屈曲角の測定においては、例えば下記特許文献1に示すように、接合部を撮像装置で上方から撮像し、その画像からエッジを抽出して屈曲角を求める手法も提案されている(特許文献1の段落0081、
図9(b)などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図16に示すように白線21と受口端面との間の寸法差から継手の屈曲角θを算出する方法は、上記の(1)式に基づいてその測定値から屈曲角に換算する必要があるが、施工現場での計算作業は煩わしく、作業者の負担となるとともに施工効率が低下する問題がある。また、寸法の測定作業は作業者の熟練度や測定環境などによって誤差が生じやすい。また、鉛直方向の屈曲を算出するためには管底での寸法の測定作業を要し、作業が困難な場合もある。また、測定間隔が粗いことが多く、角度管理が正確に行われているか否か判断できないこともある。また、特許文献1の構成は、水平面内での屈曲角を求めることができても、鉛直面内での屈曲角を求めることはできない。
【0007】
そこで、この発明は、管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明では、
接続された第一管体と第二管体との間の屈曲角を測定する管継手の屈曲角測定方法において、
水準器と、前記水準器が水平を示した状態において前記管体と所定の位置関係に位置決めされる基準部と、を有する基準治具を前記水準器が水平状態を示すように前記第一管体にセットした上で、前記基準部上の予め定めた所定位置に測定機器を載置し、前記測定機器で、水平面内における予め定めた基準方位と測定方位との間の角度である第一方位角、および、鉛直面内における水平面からの前記測定機器の傾きである第一傾斜角をそれぞれ測定する第一測定工程と、
前記基準治具を前記水準器が水平状態を示すように前記第二管体にセットした上で、前記基準部上の前記所定位置に前記測定機器を載置し、前記測定機器で、水平面内における予め定めた基準方位と測定方位との間の角度である第二方位角、および、鉛直面内における水平面からの前記測定機器の傾きである第二傾斜角をそれぞれ測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程で測定した前記第一方位角および前記第一傾斜角、ならびに、前記第二測定工程で測定した前記第二方位角および前記第二傾斜角から、前記第一管体と前記第二管体との間の屈曲角を算出する算出工程と、
を有することを特徴とする管継手の屈曲角測定方法を構成した。
【0009】
このようにすると、各管体で測定した第一方位角と第一傾斜角、および、第二方位角と第二傾斜角から、管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度や測定環境などによる誤差を低減することができる。
【0010】
前記構成においては、
前記第一方位角および前記第二方位角を前記測定機器が備える地磁気の方向を検出可能な磁気センサによって測定する一方で、前記第一傾斜角および前記第二傾斜角を前記測定機器が備える当該測定機器の水平面からの傾きを検出可能な加速度センサによって測定するのが好ましい。
【0011】
このようにすると、第一管体と第二管体の方位角と傾斜角を簡便かつ正確に測定することができるとともに、屈曲角の測定作業の効率を向上することができる。
【0012】
前記のすべての構成においては、
前記測定機器が、グローバル・ポジショニング・システム機能を備えており、前記第一測定工程および前記第二測定工程の実施位置の位置情報を得ることが可能とするのが好ましい。
【0013】
このようにすると、測定機器に保存された各管体の位置情報に基づいて、コンピュータなどの情報処理機器を用いて、管路の2次元地図情報を自動的に作成することができる。
【0014】
前記のすべての構成においては、
前記測定機器が、カメラと、当該カメラで撮影された画像を表示するディスプレイを備えるとともに、前記ディスプレイの所定位置に基準表示が表示されるようになっており、前記第一測定工程および前記第二測定工程において、前記カメラが前記管体の管軸方向と平行な方向を向いた前記測定機器の基準姿勢から、前記測定機器を前記基準治具の前記所定位置に載置された状態のまま前記管軸方向を含む鉛直面内で揺動させて、前記基準表示が前記ディスプレイに表示される前記管体の所定の管位置と一致したときの前記基準姿勢からの揺動角度と、前記基準表示が前記ディスプレイに表示される前記所定の管位置の真上の地表面と一致したときの前記基準姿勢からの揺動角度、をそれぞれ記録し、前記両揺動角度と前記カメラの前記管体の表面からの高さから、地表面から前記所定の位置までの深さを算出するのが好ましい。
【0015】
このようにすると、コンピュータなどの情報処理機器を用いることで、測定機器に保存された各管体の深さ(土被り)情報に基づいて、管路の深さ情報を含む平面配管図や縦断配管図を自動的に作成することができる。しかも、CADなどを用いた配管図の作成に際して生じ得る、作業者による現場での記録間違いや、その記録に基づいて作図する際の作図ミスなどのヒューマンエラーが生じることがないため、配管図の正確性を確保することができる。
【0016】
前記のすべての構成においては、
前記測定機器がスマートデバイスであるのが好ましい。
【0017】
このようにすると、身近に調達可能なスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスによって、測定作業をスムーズに行うことができる。また、スマートデバイスのデータ保存機能によって、測定結果の記録作業を同時に行うことができる。さらに、算出された屈曲角に基づいて、施工の合否判定をスムーズに行うことができる。
【0018】
また、上記の課題を解決するため、この発明では、
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器と、
前記水準器が水平を示した状態において管体と所定の位置関係に位置決めされる基準部と、
を有する管継手の屈曲角測定用の基準治具を構成した。
【0019】
このようにすると、管体と所定の位置関係に位置決めされた基準部に測定機器を載置することで、各管体の方位角と傾斜角を同条件で測定することができ、各管体での測定結果から正確かつ簡便に屈曲角を算出することができる。
【0020】
前記の基準治具においては、
前記基準部が、前記管軸方向を含む面内で揺動可能な揺動機能を有しているのが好ましい。
【0021】
このようにすると、基準部に設けられた測定機器の角度調節を容易に行うことができるため、この測定機器を揺動させる際の揺動角度の計測の正確性を期することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明では、水準器が水平を示した状態において前記管体と所定の位置関係に位置決めされる基準部を有する基準治具を用いて、第一管体の第一方位角と第一傾斜角、および、第二管体の第二方位角と第二傾斜角を測定して、これらの角度から第一管体と第二管体との間の屈曲角を算出するようにしたので、管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度や測定環境などによる誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明に係る管継手の屈曲角測定方法の第一実施形態のフローを示す図
【
図2】
図1に示す屈曲角測定方法で用いられる基準治具の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は斜視図
【
図3】
図2に示す基準治具を管体にセットした上で、測定機器を載置した状態を示す斜視図
【
図4】第一管体の測定状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図
【
図5】第一管体の測定結果を示す図であって、(a)は方位角、(b)は傾斜角
【
図6】第二管体の測定状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図
【
図7】第二管体の測定結果を示す図であって、(a)は方位角、(b)は傾斜角
【
図9】この発明に係る管継手の屈曲角測定方法の第二実施形態のフローを示す図
【
図10】
図9に示す屈曲角測定方法で用いられる基準治具に測定機器を載置した状態の一例を示し、(a)は正面図、(b)は測定機器が直立した状態(基準姿勢)の側面図、(c)は測定機器を下向きに揺動させた状態の側面図
【
図11】第一管体(管体が水平の場合)での測定状態を示す側面図であって、(a)は第一方位角と第一傾斜角の測定、および、位置情報の取得を行っている状態、(b)は測定機器(カメラ)を管測点に向けた状態、(c)は測定機器(カメラ)を地表面測点に向けた状態
【
図12】
図11(b)の状態においてディスプレイに表示される画像図の一例
【
図13】
図11(c)の状態においてディスプレイに表示される画像図の一例
【
図14】第一管体(管体が下向きに傾斜している場合)での測定状態を示す側面図であって、(a)は第一方位角と第一傾斜角の測定、および、位置情報の取得を行っている状態、(b)は測定機器(カメラ)を管測点に向けた状態、(c)は測定機器(カメラ)を地表面測点に向けた状態
【
図15】第一管体(管体が上向きに傾斜している場合)での測定状態を示す側面図であって、(a)は第一方位角と第一傾斜角の測定、および、位置情報の取得を行っている状態、(b)は測定機器(カメラ)を管測点に向けた状態、(c)は測定機器(カメラ)を地表面測点に向けた状態
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係る管継手の屈曲角測定方法(以下、屈曲角測定方法と略称する。)の第一実施形態は、接続された第一管体1と第二管体2との間の屈曲角θの測定方法であって、この測定方法は、
図1に示すように、第一管体1の第一方位角θ
MH1と第一傾斜角θ
MV1を測定する第一測定工程(
図1中のステップS1)と、第二管体2の第二方位角θ
MH2と第二傾斜角θ
MV2を測定する第二測定工程(
図1中のステップS2)と、第一方位角θ
MH1および第一傾斜角θ
MV1ならびに第二方位角θ
MH2および第二傾斜角θ
MV2から第一管体1と第二管体2の屈曲角θを算出する算出工程(
図1中のステップS3)と、を主要な構成要素としている。
【0025】
第一測定工程および第二測定工程で使用される基準治具3の一例を
図2(a)~(c)に、基準治具3を管体1、2にセットした状態を
図3にそれぞれ示す。この基準治具3は、水準器4と基準部5とを有している。基準部5は、その下部に第一管体1および第二管体2の呼び径に対応する曲率の円弧状の凹部6が形成され、その上面に矩形状の平坦面が形成されている。凹部6の中心角は約180度であって、この基準治具3が各管体1、2の外周面に安定的に跨ることができるように構成されている。このとき、単に管体1、2に基準治具3を載せるだけでもよいが、例えば凹部6に粘着剤などを設けておくことによって、基準治具3を管体1、2の外周面により安定的にセットすることができる。
【0026】
水準器4は、矩形状上面の一辺から外向きに突出した突出部7に設けられている。この実施形態においては、水準器4として気泡管水準器を採用している。この水準器4は、水平状態を示す内部の気泡が管軸方向(凹部6の延設方向)に対し垂直な方向に移動可能な向きに配置されており、この垂直な方向の水平状態を検出することができるように構成されている。この水準器4を水平とした状態において基準部5の上面は水平状態または管軸方向のみに傾斜した傾斜面となり、この基準部5は、管体1、2と所定の位置関係に位置決めされる。
【0027】
この基準部5の矩形状上面の一辺と水準器4が設けられた突出部7との境界は、後述する測定機器8を載置する際の目印となっている。なお、前記境界は、基準部5の上面に明示されていると測定機器8の載置位置の位置決めが容易になるため好ましいが、基準部5の矩形状上面と突出部7の境界の位置が明確に分かる場合は明示されていなくてもよい。また、基準部5の上面の前記境界とは異なる位置に目印を明示しておき、この目印を基準にして測定機器8を載置するようにしてもよい。
【0028】
基準治具3の素材は特に限定されないが、使用時においてこの基準治具3には特に大きな力は作用しないため、樹脂を採用することができる。このようにすれば、基準治具3を軽量化することができ、その設置や運搬を容易に行うことができる。
【0029】
この実施形態においては凹部6の中心角が180度の基準治具3を用いたが、測定機器8を安定的に載置できる限りにおいて、この中心角をさらに小さくすることもできる。このようにすれば、基準治具3の更なる小型化および軽量化を図ることができる。また、凹部6が円弧状でない構成(例えば、基準部5の下部が正面視において逆V字形)とすることができる可能性もある。
【0030】
この実施形態において用いた基準治具3は、水平な管体1、2に載置した上で水準器4を水平状態としたときに、基準部5の上面が水平状態となるが、水平でない管体1、2に載置した上で水準器4を水平状態としたときに、基準部5の上面が管軸方向のみに傾斜した状態となる。
【0031】
基準部5の上面が傾斜した状態における測定機器8の滑り止めとして、基準部5の上面に測定機器8を所定位置で引っ掛けて保持する突起状のストッパを形成したり、基準部5の上面に滑り止め加工(滑り止めゴムの敷設、粘着剤の塗布など)を施したりすることもできる。
【0032】
測定機器8は、地磁気の方向(磁北の方向)を検出可能な磁気センサと加速度センサ(いずれも図示せず)を備えている。この磁気センサによって、水平面内における予め定めた基準方位と測定方位との間の角度である方位角θMH1、θMH2を測定する。この実施形態では、基準方位を磁北とし、この磁北からの時計回りの角度を方位角θMH1、θMH2と定義している。また、加速度センサによって、鉛直面内における水平面からの測定機器8の傾きである傾斜角θMV1、θMV2を測定する。この実施形態においては、測定機器8として、磁気センサおよび加速度センサを備えたスマートデバイスを用いている。このスマートデバイスは具体的にはスマートフォン(以下、測定機器8と同じ符号を付する。)である。なお、測定機器8としてスマートデバイス8(スマートフォン8)を用いる代わりに、この発明に係る測定方法を実施するための専用機器を用いることもできる。
【0033】
第一測定工程においては、
図4(a)(b)に示すように、まず、水準器4が水平状態を示すように目視で確認しながら、基準治具3を第一管体1にセットする。次に、基準治具3の所定位置にスマートフォン8を載置する。この実施形態においては、基準部5の矩形状上面の一辺と突出部7の境界にスマートフォン8の短辺が一致するように(すなわち、第一管体1の管軸方向とスマートフォン8の長辺が平行となるように)載置している(
図3を参照)。
【0034】
さらに、このスマートフォン8に搭載された方位角および傾斜角の測定アプリの機能によって、第一管体1の第一方位角θ
MH1と第一傾斜角θ
MV1を測定する。
図5(a)(b)に測定結果の画面の一例を示す。この測定例の場合、第一管体1は、水平面内で磁北に対して35°東方向に傾いており、鉛直面内で水平面から0.3°(勾配換算(正接値)において0.5%)傾斜していることが分かる。
【0035】
第二測定工程においては、
図6(a)(b)に示すように、まず、水準器4が水平状態を示すように目視で確認しながら、基準治具3を第二管体2にセットする。次に、基準治具3の所定位置にスマートフォン8を載置する。この実施形態においては、第一測定工程と同様に、基準部5の矩形状上面の一辺と突出部7の境界にスマートフォン8の短辺が一致するように(すなわち、第二管体2の管軸方向とスマートフォン8の長辺が平行となるように)載置している(
図3を参照)。
【0036】
さらに、このスマートフォン8に搭載された方位角および傾斜角の測定アプリの機能によって、第二管体2の第二方位角θ
MH2と第二傾斜角θ
MV2を測定する。
図7(a)(b)に測定結果の画面の一例を示す。この測定例の場合、第二管体2は、水平面内で磁北に対して37°東方向に傾いており、鉛直面内で水平面から2.2°(勾配換算(正接値)において3.8%)傾斜していることが分かる。
【0037】
なお、
図5(b)および
図7(b)では、角度と勾配の両方が表示される測定アプリの画面を示したが、角度のみの表示とすることもできる。
【0038】
算出工程においては、第一測定工程で測定した第一方位角θ
MH1および第一傾斜角θ
MV1、ならびに、第二測定工程で測定した第二方位角θ
MH2および第二傾斜角θ
MV2から、第一管体1と第二管体2の間の屈曲角θを算出する。この算出は、
図8に示す算出フローに基づいて行われる。
【0039】
この算出フローにおいては、まず、第一測定工程および第二測定工程において測定された、第一管体1の第一方位角θ
MH1および第一傾斜角θ
MV1、ならびに、第二管体2の第二方位角θ
MH2および第二傾斜角θ
MV2(
図8中のステップS11)から、次の(2)式および(3)式に基づいて、水平面内での差分角θ
Hおよび鉛直面内での差分角θ
Vをそれぞれ算出する(
図8中のステップS12)。上記の測定例の場合、水平面内での差分角θ
H=|35°-37°|=2°、鉛直面内での差分角θ
V=|0.3°-2.2°|=1.9°となる。すなわち、この場合、第一管体1を基準とすると、第二管体2は水平面内で北東方向に2°、鉛直面内で上方向に1.9°それぞれ屈曲した状態で接合されているといえる。
θ
H=|θ
MH1-θ
MH2| (2)
θ
V=|θ
MV1-θ
MV2| (3)
【0040】
さらに、水平面内での差分角θ
Hおよび鉛直面内の差分角θ
Vから、次の(4)式に基づいて、屈曲角θを算出する(
図8のステップS13)。上記の測定例の場合、θ=cos
-1(cos2°・cos1.9°)=2.76°となる。
θ=cos
-1(cosθ
H・cosθ
V) (4)
【0041】
なお、上記においては、第一管体1と第二管体の方位角θMH1、θMH2と傾斜角θMV1、θMV2を別個に測定するような説明としたが、実際の測定においては、専用の測定アプリを使用することによって、方位角θMH1、θMH2と傾斜角θMV1、θMV2を同時に計測することができる。また、この測定アプリでは、計測した管体1、2の情報(方位角θMH1、θMH2と傾斜角θMV1、θMV2)を順次追加していくことで、各管体1、2同士の屈曲角θを自動で算出することもできる。
【0042】
上記において説明した屈曲角測定方法は、管体1、2の継手方式や呼び径に関係なく広く適用することが可能である。
【0043】
上記の屈曲角測定方法によると、水準器4が水平を示した状態において管体1、2と所定の位置関係に位置決めされる基準部5を有する基準治具3を用いて、第一管体1の第一方位角θMH1と第一傾斜角θMV1、および、第二管体2の第二方位角θMH2と第二傾斜角θMV2を測定して、これらの角度から第一管体1と第二管体2との間の屈曲角θを算出するようにしたので、管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角θを測定することができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度や測定環境などによる誤差を低減することができる。
【0044】
また、測定機器8として身近に調達可能なスマートフォン8を用いたことにより、測定作業をスムーズに行うことができる。また、スマートフォン8のデータ保存機能によって、測定結果の記録作業を同時に行うことができる。さらに、算出された屈曲角θに基づいて、施工の合否判定をスムーズに行うことができる。なお、スマートフォン8の代わりに、タブレット端末などの他の種類のスマートデバイスを採用することもできる。
【0045】
なお、上記の実施形態においては、磁気センサと加速度センサを備えた測定機器8によって方位角θMH1、θMH2と傾斜角θMV1、θMV2を測定したが、他の種類のセンサによって方位角θMH1、θMH2と傾斜角θMV1、θMV2を測定する構成とすることができる可能性もある。
【0046】
この発明に係る屈曲角測定方法の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る屈曲角測定方法は、
図9に示すように、第一測定工程(
図9中のステップS21)と、第二測定工程(
図9中のステップS22)と、算出工程(
図9中のステップS23)と、を主要な構成要素としている点で第一実施形態に係る屈曲角測定方法と共通するが、各工程の内容が異なっている。
【0047】
具体的には、第一測定工程および第二測定工程において、第一方位角θMH1および第一傾斜角θMV1、ならびに、第二方位角θMH2および第二傾斜角θMV2の測定に加えて、測定機器8が備えるグローバル・ポジショニング・システム(以下、GPSと略称する。)機能によって、各測定工程の実施位置の位置情報を得るとともに、測定機器8が備える加速度センサの機能によって、各管体1、2の設置深さLの算出を可能としている。ここで用いた測定機器8は、第一実施形態と同様にスマートフォン(以下、測定機器8と同じ符号を付する。)である。このスマートフォン8には、背面側にカメラ9が、前面側にディスプレイ10がそれぞれ設けられている。
【0048】
このスマートフォン8は、カメラ9で撮影した画像をディスプレイ10に表示させたときに、その表示内(ディスプレイ10の上下方向のほぼ中央位置)に基準表示11としての水平ガイドライン(以下、基準表示11と同じ符号を付する。)が重ねて表示される拡張現実機能(AR機能)を備えている。カメラ9の向きを移動させると、それに合わせてカメラ9で撮影された画像も移動するが、水平ガイドライン11の位置はその表示内で固定されている。
【0049】
第二実施形態に係る屈曲角測定方法で使用される基準治具3にスマートフォン8を載置した状態の一例を
図10(a)~(c)に示す。この基準治具3は、下部に正面視において逆V字形の凹部6が形成された基部12と、基部12から鉛直方向上向きに延設されたアーム部13と、アーム部13の上端に設けられた基準部5と、基部12に設けられた水準器4と、を有している。スマートフォン8は、カメラ9が各管体1、2の継ぎ目側、ディスプレイ10が作業者側をそれぞれ向くように基準部5の予め決められた所定位置に載置される。なお、スマートフォン8の加速度センサ機能を用いて基準治具3の水平状態を確認する場合は、水準器4を省略することもできる。
【0050】
アーム部13は伸縮機能を有し、必要に応じて基部12に対する基準部5の高さを変えることができる。アーム部13には目盛(図示せず)が付されており、このアーム部13を伸縮させたときの管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さを確認できるようになっている。基準部5は、各管体1、2の管軸方向を含む面内で揺動可能な揺動機構を有している。この揺動機構は、基準部5に載置されたスマートフォン8の向きが管軸方向と平行な方向を向いたときにアーム部13に対して基準部5が軽く固定されるノッチ機構を備えている。以下においては、基準部5に載置されたスマートフォン8の向き(カメラ9の向き)が管軸方向と平行となったときの基準部5(スマートフォン8)の姿勢のことを基準姿勢と称する。
【0051】
なお、第二実施形態に係る基準治具3は、凹部6を逆V字形としたので、この基準治具3を各管体1、2の呼び径に関係なく適用することができるが、第一実施形態に用いた基準治具3と同様に、凹部6を各管体1、2の呼び径に対応する曲率の円弧状とすることもできる。また、水平とした基準部5の上にスマートフォン8を載置することにより、
図10(a)~(c)に示す基準治具3で、
図2などに示した基準治具3を代用することができる。
【0052】
(a)管軸が水平の場合
第一測定工程においては、
図11(a)に示すように、まず、水準器4が水平状態を示している、または、スマートフォン8の加速度センサ機能が水平状態であることを表示していることを目視で確認しながら、基準治具3を第一管体1(この実施形態では受口の近傍)にセットする。そして、スマートフォン8に管体1、2の種類、呼び径、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1などの情報を入力した上で、基準治具3の基準部5にスマートフォン8を基準姿勢となるように載置する。この状態で、このスマートフォン8に搭載された磁気センサ機能および加速度センサ機能によって第一管体1の第一方位角θ
MH1と第一傾斜角θ
MV1を測定するとともに、スマートフォン8のGPS機能によって、第一測定工程の実施位置の位置情報を併せて取得する。
【0053】
次に、
図11(b)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を下向きに傾斜させる。そして、
図12に示すように、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置(この実施形態ではディスプレイ10の上下方向のほぼ中間位置)に表示される水平ガイドライン11の位置に所定の管位置(この実施形態では、両管体1、2の継ぎ目。以下、管測点P1と称する。)の位置を一致させ、スマートフォン8の加速度センサ機能によって、このときのスマートフォン8の下向きの傾斜角度(水平方向からの傾斜角度θ
1)を測定する。
【0054】
さらに、
図11(c)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を上向きに傾斜させる。そして、
図13に示すように、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置に表示される水平ガイドライン11の位置に管測点P1の真上の地表面の位置(以下、地表面測点P2と称する。)を一致させ、スマートフォン8の加速度センサ機能によって、このときのスマートフォン8の上向きの傾斜角度(水平方向からの傾斜角度θ
2)を測定する。
【0055】
地表面測点P2から管測点P1までの深さLは、次のように導出される。まず、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1と、スマートフォン8の下向きの傾斜角度θ1から、次の(5)式に基づいて、カメラ9から管測点P1までの水平距離L2が算出される。
L2=L1/tanθ1 (5)
【0056】
次に、カメラ9から管測点P1までの水平距離L2と、スマートフォン8の上向きの傾斜角度θ2から、次の(6)式に基づいて、カメラ9から地表面測点P2までの高さL3が算出される。
L3=L2×tanθ2 (6)
【0057】
そして、管頂部からカメラ9までの高さL1と、カメラ9から地表面測点P2までの高さL3から、次の(7)式に基づいて、地表面測点P2から管測点P1までの深さLが算出される。
L=L1+L3 (7)
【0058】
第二測定工程も第一測定工程と同様に、第二管体2の第二方位角θMH2と第二傾斜角θMV2を測定するとともに、第二測定工程の実施位置の位置情報を取得した上で、スマートフォン8を上下に揺動させることによって、地表面測点P2から管測点P1までの深さLを算出する。なお、算出工程における、第一測定工程および第二測定工程において得られた第一方位角θMH1および第一傾斜角θMV1、ならびに、第二方位角θMH2および第二傾斜角θMV2からの屈曲角の算出手段は第一実施形態と同じなので説明は省略する。
【0059】
(b)管軸が下向きに傾斜している場合
第一測定工程においては、
図14(a)に示すように、まず、水準器4が水平状態を示している、または、スマートフォン8の加速度センサ機能が水平状態であることを表示していることを目視で確認しながら、基準治具3を第一管体1(この実施形態では受口の近傍)にセットする。そして、スマートフォン8に管体1、2の種類、呼び径、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1などの情報を入力した上で、基準治具3の基準部5にスマートフォン8を基準姿勢となるように載置する。この状態で、このスマートフォン8に搭載された磁気センサ機能および加速度センサ機能によって第一管体1の第一方位角θ
MH1と第一傾斜角θ
MV1を測定するとともに、スマートフォン8のGPS機能によって、第一測定工程の実施位置の位置情報を併せて取得する。管軸が下向きに傾斜している場合は、その傾斜角θ
Aの値がスマートフォン8に記録される。この傾斜角θ
Aの値は、第一傾斜角θ
MV1の値に対応する。
【0060】
次に、
図14(b)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を下向きに傾斜させる。そして、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置に表示される水平ガイドライン11を管測点P1の位置に一致させ、スマートフォン8の下向きの傾斜角度(基準姿勢からの傾斜角度θ
1)を測定する。
【0061】
さらに、
図14(c)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を上向きに傾斜させる。そして、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置に表示される水平ガイドライン11を地表面測点P2の位置に一致させ、スマートフォン8の加速度センサ機能によって、このときのスマートフォン8の上向きの傾斜角度(基準姿勢からの傾斜角度θ
A+θ
3)を測定する。ここで、角度θ
Aは基準姿勢から水平方向までの角度、角度θ
3は水平方向から上向きの傾斜角度である。
【0062】
地表面測点P2から管測点P1までの深さLは、次のように導出される。まず、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1と、管軸の傾斜角度θAと、スマートフォン8の下向きの傾斜角度θ1から、次の(8)~(10)式に基づいて、管軸の傾斜に伴って形成された三角形の垂線の長さLA、カメラ9から管測点P1までの管軸方向に沿った距離LB、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1に対応する鉛直方向の高さL1’が算出される。
LA=L1×tanθA (8)
LB=L1/tanθ1 (9)
L1’=L1/cosθA (10)
【0063】
次に、算出された管軸の傾斜に伴って形成された三角形の垂線の長さLA、カメラ9から管測点P1までの管軸方向に沿った距離LBから、次の(11)(12)式に基づいて、管測点P1の真上における基準姿勢におけるスマートフォン8の向きの延長線と水平方向への延長線との間の垂直方向距離L1’’、カメラ9から管測点P1までの水平方向距離L2、が算出される。
L1’’=(LB-LA)×sinθA (11)
L2=(LB-LA)×cosθA (12)
【0064】
さらに、算出されたカメラ9から管測点P1までの水平方向距離L2と、水平方向からのカメラ9の上向きの傾斜角度θ3から、次の(13)式に基づいて、管測点P1の真上におけるスマートフォン8を通る水平方向への延長線から地表面測点P2までの高さL1’’’が算出される。
L1’’’=L2×tanθ3 (13)
【0065】
そして、管頂部からカメラ9までの高さL1に対応する鉛直方向の長さL1’、管測点P1の真上における基準姿勢におけるスマートフォン8の向きの延長線とスマートフォン8を通る水平方向への延長線との間の垂直方向距離L1’’、管測点P1の真上におけるスマートフォン8を通る水平方向への延長線から地表面測点P2までの高さL1’’’から、次の(14)式に基づいて、地表面測点P2から管測点P1までの深さLが算出される。
L=L1’+L1’’+L1’’’ (14)
【0066】
なお、第二測定工程および算出工程は上記と同じなので説明は省略する。
【0067】
(c)管軸が上向きに傾斜している場合
第一測定工程においては、
図15(a)に示すように、まず、水準器4が水平状態を示している、または、スマートフォン8の加速度センサ機能が水平状態であることを表示していることを目視で確認しながら、基準治具3を第一管体1(この実施形態では受口の近傍)にセットする。そして、スマートフォン8に管体1、2の種類、呼び径、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1などの情報を入力した上で、基準治具3の基準部5にスマートフォン8を基準姿勢となるように載置する。この状態で、このスマートフォン8に搭載された磁気センサ機能および加速度センサ機能によって第一管体1の第一方位角θ
MH1と第一傾斜角θ
MV1を測定するとともに、スマートフォン8のGPS機能によって、第一測定工程の実施位置の位置情報を併せて取得する。管軸が上向きに傾斜している場合は、その傾斜角θ
Aの値がスマートフォン8に記録される。この傾斜角θ
Aの値は、第一傾斜角θ
MV1の値に対応する。
【0068】
次に、
図15(b)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を下向きに傾斜させる。そして、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置に表示される水平ガイドライン11を管測点P1の位置に一致させ、スマートフォン8の下向きの傾斜角度(基準姿勢からの傾斜角度θ
1)を測定する。この傾斜角度θ
1は、スマートフォン8の基準姿勢から水平方向までの傾斜角θ
Aと、水平方向から管測点P1に向く下向きの傾斜角θ
Bの和(θ
1=θ
A+θ
B)である。
【0069】
さらに、
図15(c)に示すように、基準部5を揺動させることによって、スマートフォン8を上向きに傾斜させる。そして、スマートフォン8のディスプレイ10の所定位置に表示される水平ガイドライン11を地表面測点P2の位置に一致させ、スマートフォン8の加速度センサ機能によって、このときのスマートフォン8の上向きの傾斜角度(水平方向からの傾斜角度θ3)を測定する。
【0070】
地表面測点P2から管測点P1までの深さLは、次のように導出される。まず、管頂部からスマートフォン8のカメラ9までの高さL1と、スマートフォン8の下向きの傾斜角度θ1から、次の(15)式に基づいて、カメラ9から管測点P1までの距離LAが算出される。
LA=L1/sinθ1 (15)
【0071】
次に、算出されたカメラ9から管測点P1までの距離LAから、次の(16)式に基づいて、カメラ9の高さを通る水平線を底辺、カメラ9と管測点P1を結ぶ線を斜辺、管測点P1を通る鉛直線を垂線とする三角形の垂線の長さ(管測点P1の真上における管測点P1からスマートフォン8を通る水平方向への延長線までの高さL1’)が算出される。
L1’=LA×sinθB (16)
【0072】
ここで、上記底辺の長さL2は次の(17)式で表すことができるため、(16)式は次の(18)式のように変形できる。
L2=LA×cosθB (17)
L1’=(L2/cosθB)×sinθB=L2×tanθB (18)
【0073】
さらに、上記三角形の底辺の長さL2と、スマートフォン8の水平方向からの上向きの傾斜角度θ3から、次の(19)式に基づいて、管測点P1の真上におけるスマートフォン8を通る水平方向への延長線から地表面測点P2までの高さL1’’が算出される。
L1’’=L2×tanθ3 (19)
【0074】
そして、管測点P1の真上における管測点P1からスマートフォン8を通る水平方向への延長線までの高さL1’、管測点P1の真上におけるスマートフォン8を通る水平方向への延長線から地表面測点P2までの高さL1’’から、次の(20)式に基づいて、地表面測点P2から管測点P1までの深さLが算出される。
L=L1’+L1’’ (20)
【0075】
なお、第二測定工程および算出工程は上記と同じなので説明は省略する。
【0076】
上記においては、地表面測点P2から管測点P1までの深さLの算出手順を、管体1、2が水平の場合と下向きまたは上向きに傾斜している場合に分けて説明したが、作業者は現場において管体1、2の傾斜について意識することなく作業を行うことができる。
【0077】
なお、GPS機能によって得られた管体1、2の位置情報はこの管体1、2の受口近傍のものであるのに対し、管体1、2の深さ情報は同じ管体1、2の挿し口近傍のものであるため、3次元マッピングの際には、このズレを考慮するのが好ましい。
【0078】
第二実施形態に係る屈曲角測定方法によると、スマートフォン8に保存された各管体1、2の位置情報に基づいて、コンピュータなどの情報処理機器を用いて、管路の2次元地図情報を自動的に作成することができるとともに、スマートフォン8に保存された各管体1、2の深さ(土被り)情報に基づいて、管路の深さ情報を含む平面配管図や縦断配管図を自動的に作成することができる。しかも、CADなどを用いた配管図の作成に際して生じ得る、作業者による現場での記録間違いや、その記録に基づいて作図する際の作図ミスなどのヒューマンエラーが生じることがないため、配管図の正確性を確保することができる。
【0079】
また、第二実施形態に係る屈曲角測定方法は、スマートフォン8のカメラ9で撮影した画像をディスプレイ10に表示させ、その表示内に基準となる水平ガイドライン11を表示することでスマートフォン8の角度を揺動調節するAR機能を活用したことにより、このスマートフォン8を用いた角度測定作業をスムーズに行うことができる。
【0080】
また、第二実施形態に係る屈曲角測定方法においては、基準部5が各管体1、2の管軸方向を含む面内で揺動可能な揺動機能を有する基準治具3を用いているため、この基準部5に設けられたスマートフォン8の角度調節を容易に行うことができ、このスマートフォン8を揺動させる際の揺動角度の計測の正確性を期することができる。
【0081】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 第一管体
2 第二管体
3 基準治具
4 水準器
5 基準部
6 凹部
7 突出部
8 測定機器(スマートフォン)
9 カメラ
10 ディスプレイ
11 基準表示(水平ガイドライン)
12 基部
13 アーム部
θ 屈曲角
θMH1 第一方位角
θMV1 第一傾斜角
θMH2 第二方位角
θMV2 第二傾斜角
θH (水平面内での)差分角
θV (鉛直面内での)差分角
θA (管軸の)傾斜角度
θ1、θ2、θ3 (測定機器の)傾斜角度
L 深さ
L1、L1’、L1’’、L1’’’、L3 高さ
L2 水平距離
P1 管測点
P2 地表面測点