(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147261
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法、及びオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6192 20060101AFI20231004BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C08F4/6192
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050150
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022052776
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】石濱 由之
(72)【発明者】
【氏名】松村 悠生
(72)【発明者】
【氏名】寺山 勇
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
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4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】触媒スラリーの帯電を抑制し、粘度を改善し、重合チャンク発生を抑制する。
【解決手段】オレフィン重合用固体触媒及び成分(D)により調製したオレフィン重合用触媒懸濁液と、成分(E)及び成分(F)を含む混合物と、を混合し、条件(1)及び条件(2)を満たすようにする、オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
成分(D):流動パラフィン、ミネラルオイル、及びポリブテンからなる群より選ばれる少なくとも一種
成分(E):炭素数4~12の炭化水素化合物
成分(F):帯電防止剤
条件(1):成分(E)の質量が、オレフィン重合用固体触媒、成分(D)、成分(E)及び成分(F)の質量の合計に対して、0.2質量%~10.0質量%である。
条件(2):成分(F)の質量が、オレフィン重合用固体触媒、成分(D)、成分(E)及び成分(F)の質量の合計に対して、200質量ppm~14,000質量ppmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合用固体触媒及び下記成分(D)により調製したオレフィン重合用触媒懸濁液と、
下記成分(E)及び成分(F)を含む混合物と、を混合し、
下記条件(1)及び条件(2)を満たすようにする、オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
前記成分(D):流動パラフィン、ミネラルオイル、及びポリブテンからなる群より選ばれる少なくとも一種
前記成分(E):炭素数4~12の炭化水素化合物
前記成分(F):帯電防止剤
条件(1):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(E)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、0.2質量%~10.0質量%である。
条件(2):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(F)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、200質量ppm~14,000質量ppmである。
【請求項2】
前記オレフィン重合用触媒懸濁液と前記混合物とは、重合反応器外で混合する、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項3】
前記成分(F)が、ポリスルホン共重合体、高分子ポリアミン、油溶性スルホン酸、第3級アミン、脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、及びポリアルキレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項4】
前記オレフィン重合用固体触媒が、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
前記成分(A):遷移金属原子を含むメタロセン化合物及びポストメタロセン化合物より選ばれる少なくとも一種
前記成分(B):成分(A)をカチオン性化合物させる化合物
前記成分(C):有機化合物担体及び/又は無機化合物担体
【請求項5】
前記成分(A)が、遷移金属原子を含むメタロセン化合物である、請求項4に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項6】
前記成分(A)は、遷移金属を含む架橋シクロペンタジエニル化合物である、請求項4に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項7】
前記成分(B)は、有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、及びボレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項4に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項8】
前記成分(C)は、無機化合物担体である、請求項4に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項9】
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、0.9質量%~10.0質量%である、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項10】
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.2質量%~10.0質量%である、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項11】
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.7質量%~10.0質量%である、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項12】
前記条件(2)における前記の成分(F)の質量が、600質量ppm~10,000質量ppmである、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項13】
前記条件(2)における前記の成分(F)の質量が、1,100質量ppm~10,000質量ppmである、請求項1又は請求項2に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【請求項14】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法により製造されたオレフィン重合用触媒スラリーの存在下、オレフィンを重合または共重合する、オレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法、及びオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多孔性金属酸化物、触媒及び帯電防止剤を含む重合触媒で、多孔性金属酸化物に対して帯電防止剤を5,000~50,000重量ppm添加する触媒が開示されている。
特許文献2には、帯電防止剤を含むメタロセン触媒によるオレフィン重合体の製造方法が開示されている。ファウリングや重合体同士の凝集を改善しつつ、高活性にオレフィン重合体を製造できる旨が記載されている。
特許文献3には、溶媒、担体、メタロセン化合物、表面改質剤(アルコキシル化第三級アミン等)を含む触媒の調製方法が開示されている。
特許文献4には、特定の構造を有する化合物を含有するオレフィン重合用固体触媒を用いたオレフィン重合体粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-538936号公報
【特許文献2】特開平10-60032号公報
【特許文献3】特表平10-507471号公報
【特許文献4】特開2014-159591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オレフィン重合体の製造においては、触媒スラリーの帯電を抑制するという課題、オイルスラリーの粘度を改善するという課題、及び重合チャンク発生を抑制するという課題がある。
しかし、特許文献1~4のいずれにおいても、これらの全ての課題が必ずしも十分に解決されているとは言えず、更なる改良が望まれていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、上述した課題を従来よりも高いレベルで解決するためになされたものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の条件で製造方法したオレフィン重合用触媒スラリーが、上述の課題を解決可能な良好な特性を示すことを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]
オレフィン重合用固体触媒及び下記成分(D)により調製したオレフィン重合用触媒懸濁液と、
下記成分(E)及び成分(F)を含む混合物と、を混合し、
下記条件(1)及び条件(2)を満たすようにする、オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
前記成分(D):流動パラフィン、ミネラルオイル、及びポリブテンからなる群より選ばれる少なくとも一種
前記成分(E):炭素数4~12の炭化水素化合物
前記成分(F):帯電防止剤
条件(1):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(E)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、0.2質量%~10.0質量%である。
条件(2):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(F)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、200質量ppm~14,000質量ppmである。
【0006】
[2]
前記オレフィン重合用触媒懸濁液と前記混合物とは、重合反応器外で混合する、[1]に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[3]
前記成分(F)が、ポリスルホン共重合体、高分子ポリアミン、油溶性スルホン酸、第3級アミン、脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、及びポリアルキレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【0007】
[4]
前記オレフィン重合用固体触媒が、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
前記成分(A):遷移金属原子を含むメタロセン化合物及びポストメタロセン化合物より選ばれる少なくとも一種
前記成分(B):成分(A)をカチオン性化合物させる化合物
前記成分(C):有機化合物担体及び/又は無機化合物担体
【0008】
[5]
前記成分(A)が、遷移金属原子を含むメタロセン化合物である、[4]に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[6]
前記成分(A)は、遷移金属を含む架橋シクロペンタジエニル化合物である、[4]又は[5]に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[7]
前記成分(B)は、有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、及びボレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、[4]から[6]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【0009】
[8]
前記成分(C)は、無機化合物担体である、[4]から[7]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[9]
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、0.9質量%~10.0質量%である、[1]から[8]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[10]
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.2質量%~10.0質量%である、[1]から[9]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【0010】
[11]
前記条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.7質量%~10.0質量%である、[1]から[10]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[12]
前記条件(2)における前記の成分(F)の質量が、600質量ppm~10,000質量ppmである、[1]から[11]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
【0011】
[13]
前記条件(2)における前記の成分(F)の質量が、1,100質量ppm~10,000質量ppmである、[1]から[12]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法。
[14]
[1]から[13]のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたオレフィン重合用触媒スラリーの存在下、オレフィンを重合または共重合する、オレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示の製造方法によれば、オレフィン重合用触媒スラリー(「オレフィン重合用触媒懸濁液スラリー」、「オイルスラリー」とも言う。)の帯電が抑制される。さらに、オレフィン重合用触媒スラリーの粘度が改善され、重合チャンクの発生が抑制される。作用機序は、以下の様に推測される。すなわち、触媒粒子同士の静電反発が抑制されることにより、オレフィン重合用触媒スラリーの帯電抑制率が向上し、オレフィン重合用触媒スラリーの粘度が改善され、その相乗効果によりさらに重合チャンクの発生が抑制されると推定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0014】
1.オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法
オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法は、オレフィン重合用固体触媒及び下記成分(D)により調製したオレフィン重合用触媒懸濁液と、下記成分(E)及び成分(F)を含む混合物と、を混合し、
下記条件(1)及び条件(2)を満たすようにする。
前記成分(D):流動パラフィン、ミネラルオイル、及びポリブテンからなる群より選ばれる少なくとも一種
前記成分(E):炭素数4~12の炭化水素化合物
前記成分(F):帯電防止剤
条件(1):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(E)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、0.2質量%~10.0質量%である。
条件(2):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(F)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、200質量ppm~14,000質量ppmである。
【0015】
(1)オレフィン重合用固体触媒
オレフィン重合用固体触媒は、特に限定されない。オレフィン重合用固体触媒は2種以上を使用することもできる。
【0016】
オレフィン重合用固体触媒(以下、「オレフィン重合用触媒」ともいう。)としては、今日、様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成および重合条件や後処理条件の工夫の範囲内においてオレフィン重合体が準備可能であれば何ら制限されるものではない。オレフィン重合体の製造に好適な、工業レベルにおける経済性を満足する技術例として、以下に説明する遷移金属を含む具体的なオレフィン重合用触媒の例を挙げることができる。
【0017】
(1-1)メタロセン触媒
好適な重合触媒の例として、遷移金属原子を含むメタロセン化合物(以下、「メタロセン錯体」ともいう。)と助触媒成分からなるオレフィン重合触媒であるメタロセン触媒(例えば、「メタロセン触媒による次世代ポリマー工業化技術(上・下巻);1994年インターリサーチ(株)発行」等を参照されたい)は比較的安価で高活性かつ重合プロセス適性に優れ、更には分子量分布および共重合組成分布が狭いエチレン系重合体が得られることから使用される。
中でも、特開昭60-35007号公報等に記載されているようないわゆるメタロセン錯体とアルモキサンとを含んでなるオレフィン重合用の触媒系や、特開平8-34809号公報、特開平8-127613号公報、特開平11-193306号公報、特表2002-515522号公報、等に記載されているようなアルモキサン以外の助触媒成分を使用する触媒系が好適に使用される。メタロセン錯体としては中心金属が周期表4族であるTi、Zr、Hfのものがエチレン重合に対して高活性を示すので好適に使用される。これら中心金属の配位子の構造としては現在様々な構造のものが知られており、生成ポリエチレンの分子量、オレフィン共重合性等の重合性能が調べられており、例えば、特開平11-310612号公報にあるような、下記の一般式[1]、[2]、[3]もしくは[4]の構造分類ができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
[ここで、A1~A4は、共役五員環構造を有する配位子(同一化合物内においてA1~A4は同一でも異なっていてもよい)を、Q1は2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を、Z1、Z2はMと結合している窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を、Q2は共役五員環配位子の任意の位置とZ2を架橋する結合性基を、Mは周期表4族から選ばれる金属原子を、そしてXおよびYはMと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を、それぞれ示す。以上の詳細定義は該公報に従うものとする。]
【0023】
(1-2)ポストメタロセン触媒
重合触媒の例として、先述のメタロセン系遷移金属化合物以外の均一系金属錯体(非メタロセン錯体)を使用するオレフィン重合触媒である遷移金属原子を含むポストメタロセン化合物によるポストメタロセン触媒(以下、「ポストメタロセン錯体」ともいう。)(例えば、「ポリエチレン技術読本;2001年工業調査会(株)発行」、「均一系遷移金属触媒によるリビング重合;1999年アイピーシー(株)発行」、「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」等を参照されたい)が、比較的安価で活性に優れ、更には分子量分布および共重合組成分布が狭いエチレン系重合体が得られることから使用される。
中でも、特表平10-513489号公報、特表2002-521538号公報、特表2000-516295号公報、特表2000-514132号公報、Macromolecules,1996,p5241、JACS,1997,119,p3830、JACS,1999,121,p5798、Organometallics,1998,p3155等に開示されている少なくとも2個のN原子を有する配位子が該2個のN原子を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む四~八員環キレート構造を有する遷移金属のビスイミド化合物、イミノアミド化合物、ビスアミド化合物や、特開平6-136048号公報等に開示されている少なくとも2個のO原子またはS原子を有する配位子が該2個のO原子またはS原子を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のビスヒドロカルビルオキシ化合物、ビスヒドロカルビルチオ化合物や、特表2000-514132号公報、特表2003-535107号公報、特開2007-77395号公報等に開示されている少なくとも1個のN原子、S原子あるいはP原子とカルボキシル基(COO)を有する配位子が該N原子、S原子あるいはP原子とカルボキシル基を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のイミノカルボキシレート化合物、チオカルボキシレート化合物、ホスフィンカルボキシレート化合物や、特表2004-517933号公報等に開示されている少なくとも1個のP原子あるいはN原子とカルボニル基(CO)を有する配位子が該P原子あるいはN原子とカルボニル基を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のβ-ケト-ホスフィン化合物、β-ケト-イミド化合物、β-ケト-アミド化合物や、特開昭64-14217号公報、特表2004-517933号公報等に開示されている少なくとも1個のP原子あるいはN原子とO原子を有する配位子が該P原子あるいはN原子とO原子を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のγ-オキシ-ホスフィン化合物、γ-オキシ-イミド化合物、γ-オキシ-アミド化合物や、特開平6-184214号公報、特開平10-195090号公報、特表2002-521534号公報、特開2007-46032号公報、特開2007-77395号公報等に開示されている少なくとも1個のP原子とスルホン酸残基(SO3)を有する配位子が該P原子とスルホン酸残基を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のγ-スルホナト-ホスフィン化合物や、特開平11-315109号、Chemical Communications(2003),(18),2272-2273等に開示されている少なくともN原子とフェノキシ基を有する配位子が該N原子とフェノキシ基のO原子を通じて周期表第3~11族の遷移金属と結合することにより形成される該遷移金属を含む4~8員環キレート構造を有する遷移金属のフェノキシイミン化合物、フェノキシアミン化合物が好適に使用される。
これらの非メタロセン錯体としては、中心金属が周期表4族であるTi、Zr、HfやV、Cr、Fe、Co、Ni、Pdのものが高活性を示すのでより好適に使用され、中心金属がTi、Zr、Hf、Fe、Ni、Pdのものが更に好適に使用される。
【0024】
(1-3)オレフィン重合用固体触媒の好ましい例
本開示において、オレフィン重合用固体触媒は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むことが好ましい。
成分(A):遷移金属原子を含むメタロセン化合物及びポストメタロセン化合物より選ばれる少なくとも一種
成分(B):成分(A)をカチオン性化合物させる化合物
成分(C):有機化合物担体及び/又は無機化合物担体
【0025】
(1-3-1)成分(A)
メタロセン化合物として、上記「(1-1)メタロセン触媒」の欄で説明した一般式[1]、[2]、[3]、[4]のメタロセン化合物が例示される。
ポストメタロセン化合物として、上記「(1-2)ポストメタロセン触媒」の欄で説明した化合物が例示される。
成分(A)は、遷移金属原子を含むメタロセン化合物であることが好ましい。成分(A)は、遷移金属を含む架橋シクロペンタジエニル化合物であることが好ましい。
【0026】
メタロセン化合物の特に好適な例は、下記一般式(1)で示されるメタロセン化合物である。
【0027】
【0028】
一般式(1)において、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される遷移金属を示し、好ましくはZr又はHf、より好ましくはZrを示す。
【0029】
X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~20の炭化水素基、酸素又は窒素を含む炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基置換アミノ基、及び、炭素数1~20のアルコキシ基からなる群より選択される置換基を示し、X1及びX2で示されるハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などが挙げられ、X1及びX2で示される炭素数1~20の炭化水素基は炭素数が1~7であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-
ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基及びベンジル基などが挙げられる。
【0030】
X1及びX2で示される酸素を含む炭素数1~20の炭化水素基は、炭素数が1~12であることが好ましく、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、i-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、i-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、アセチル基、1-オキソプロピル基、1-オキソ-n-ブチル基、2-メチル-1-オキソプロピル基、2,2-ジメチル-1-オキソ-プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-フリル基及び2-テトラヒドロフリル基などが挙げられる。
窒素を含む炭素数1~20の炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、例えば、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi-プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi-プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、メチルイミノ基、エチルイミノ基、1-(メチルイミノ)エチル基、1-(フェニルイミノ)エチル基、1-[(フェニルメチル)イミノ]エチル基などが挙げられる。
【0031】
X1及びX2で示される炭素数1~20の炭化水素基置換アミノ基は、炭素数が1~12であることが好ましく、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジi-プロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、ジi-ブチルアミノ基、ジt-ブチルアミノ基及びジフェニルアミノ基などが挙げられる。
X1及びX2で示される炭素数1~20のアルコキシ基は、炭素数が1~6であることが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。
【0032】
好ましいX1及びX2としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジi-プロピルアミノ基が挙げられ、これらの中でも、塩素原子、メチル基、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0033】
一般式(1)において、Qは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示し、好ましくは炭素原子又はケイ素原子を示し、より好ましくはケイ素原子を示す。
mは1又は2であり、好ましくは1である。mが2のとき、複数のQは同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を示し、mが2のとき、複数のR1は同一であっても異なっていてもよく、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。また、R1及びR2は、1又は複数のQを含んで結合し環を形成していてもよい。
【0035】
R1及びR2で示される炭素数1~10の炭化水素基は炭素数が1~6であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。
また、R1とR2は、結合しているQを含んで結合し環を形成している場合として、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロへキシリデン基、シラシクロブチル基、シラシクロペンチル基、シラシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0036】
好ましいR1及びR2としては、Qが炭素原子の場合、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、エチレン基、シクロブチリデン基が挙げられ、また、Qがケイ素原子の場
合、メチル基、エチル基、フェニル基、シラシクロブチル基が挙げられる。
【0037】
R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及び、R13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~50の炭化水素基、ケイ素数が1~6であり炭素数が1~50であるケイ素含有炭化水素基、炭素数1~50のハロゲン含有炭化水素基、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群より選択される元素を含む炭素数1~50の炭化水素基、並びに、炭素数1~50の炭化水素基置換シリル基からなる群より選択される置換基を示す。
R3~R6、及び、R10~R13で示されるハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0038】
R3~R6、及び、R10~R13で示される炭素数1~50の炭化水素基は、炭素数が1~20、特に1~9であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基などが挙げられる。
R3~R6、及び、R10~R13で示されるケイ素数が1~6であり炭素数が1~50であるケイ素含有炭化水素基は、ケイ素数が1~2であることが好ましく、炭素数が1~18、特に1~13であることが好ましい。例えば、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t-ブチルジメチルシリル)メチル基などが挙げられる。
【0039】
R3~R6、及び、R10~R13で示される炭素数1~50のハロゲン含有炭化水素基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、例えば、ブロモメチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、2-ブロモシクロペンチル基、2,3-ジブロモシクロペンチル基、2-ブロモ-3-ヨードシクロペンチル基、2,3-ジブロモシクロヘキシル基、2-クロロ-3-ヨードシクロヘキシル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基などが挙げられる。
【0040】
R3~R6、及び、R10~R13で示される窒素原子を含む炭素数1~50の炭化水素基は、炭素数が1~40、特に1~6であることが好ましく、例えば、ピロリル基、テトラヒドロピロリル基、2-メチルピロリル基などが挙げられる。
R3~R6、及び、R10~R13で示されるリン原子を含む炭素数1~50の炭化水素基は、炭素数が1~40、特に1~6であることが好ましく、例えば、フォスフォリル基、テトラヒドロフォスフォリル基、2-メチルフォスフォリル基などが挙げられる。
R3~R6、及び、R10~R13で示される酸素原子を含む炭素数1~50の炭化水素基は、炭素数が1~40、特に1~6であることが好ましく、例えば、フリル基、テトラヒドロフリル基、2-メチルフリル基などが挙げられる。
R3~R6、及び、R10~R13で示される硫黄原子を含む炭素数1~50の炭化水素基は、炭素数が1~40、特に1~6であることが好ましく、例えば、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、2-メチルチエニル基などが挙げられる。
R3~R6、及び、R10~R13で示される炭素数1~50の炭化水素基置換シリル基は、炭素数が1~40、特に1~18であることが好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリt-ブチルシリル基、ジt-ブチルメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0041】
R3~R6のうち、隣接する置換基は当該置換基が結合している共役5員環の炭素原子を含んで結合し環を形成していてもよい。R10~R13のうち、隣接する置換基は当該置換基が結合している共役5員環の炭素原子を含んで結合し環を形成していてもよい。
R3~R6、及び、R10~R13が環を形成しないメタセロン化合物の具体例を表1-1から表1-5に示すが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及び、R13のうち、隣接するいずれか1組の置換基のみが、これらの置換基が結合している共役5員環の炭素原子を含んで結合し環を形成していることが好ましい。
R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及び、R13のうち、隣接するいずれか1組のみが、これらの置換基が結合している共役5員環の炭素原子を含んで結合し環を形成している化合物の中でも、下記一般式(2)に示される架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物が特に好ましい。
また、下記一般式(2)に示される架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物はR11が水素原子ではないことが好ましく、R11が水素原子ではなく、R3~R6のうち何れか1つは水素原子ではないことが更に好ましい。
【0048】
【0049】
一般式(2)において、R14~R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素数が1~6であり炭素数が1~18であるケイ素含有炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、酸素又は硫黄を含む炭素数1~40の炭化水素基、及び、炭素数1~40の炭化水素基置換シリル基からなる群より選択される置換基を示す。ただし、R14~R17に含まれる炭素数の合計は96を超えない。
R14~R17で示される置換基の例は、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及び、R13で示した例と同様である。R14~R17のうち、隣接する置換基は当該置換基が結合している共役6員環の炭素原子を含んで結合し環を形成していてもよい。
また、R14は下記一般式(3)で示される置換アリール基であってもよい。なお、R14は下記一般式(3)で示される置換アリール基である場合には、R14とR15は当該置換基が結合している共役6員環の炭素原子を含んで結合し環を形成することは無い。
【0050】
【0051】
一般式(3)において、Y1は、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子を示す。
R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ケイ素数が1~6であり炭素数が1~18であるケイ素含有炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、及び炭素数1~20の炭化水素基置換シリル基からなる群より選択される置換基を示す。
R18~R22のうち、隣接する置換基は当該置換基が結合している環の原子を含んで結合し環を形成していてもよい。nは、0又は1であり、nが0の場合、Y1に置換基R18が存在しない。pは、0又は1であり、pが0の場合、R21とR21が結合する炭素原子は存在せず、R20が結合する炭素原子とR22が結合する炭素原子が直接結合している共役5員環構造を示す。
一般式(3)で示される置換アリール基の環状骨格としては、例えば、フェニル環やフリル環などが挙げられる。
【0052】
R12とR13が環を形成した一般式(1)メタセロン化合物である、一般式(2)で示される架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の具体例を表2-1及び表2-3に示すが、これらに限定されるものではない。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
(1-3-2)成分(B)
成分(B)としては、例えば、有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。さらに、成分(B)は、ボラン化合物やボレート化合物を、2種以上混合して使用することもできる。
以下に各成分について、詳細に説明する。
【0057】
(i)有機アルミニウムオキシ化合物
成分(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al-O-Al結合を有し、その結合数は通常1~100、好ましくは1~50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0058】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物がいずれも使用可能であり、2種以上混合して使用することもできる。
R6
tAlX3
3-t・・・式(4)
(一般式(4)中、R6は、炭素数1~18、好ましくは1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、X3は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
【0059】
一般式(4)で表される化合物の中でも、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。トリアルキルアルミニウムのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
【0060】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1~1.2/1、特に、0.5/1~1/1であることが好ましく、反応温度は、通常-70~100℃、好ましくは-20~20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分~24時間、好ましくは10分~5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0061】
(ii)ボラン化合物及びボレート化合物
また、成分(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o-トリル)ボラン、トリ(p-トリル)ボラン、トリ(m-トリル)ボラン、トリ(o-フルオロフェニル)ボラン、トリス(p-フルオロフェニル)ボラン、トリス(m-フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
【0062】
また、ボレート化合物を具体的に表すと、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o-トリル)ボレート、トリチルテトラ(p-トリル)ボレート、トリチルテトラ(m-トリル)ボレート、トリチルテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh4、NaB(o-CH3-Ph)4、NaB(p-CH3-Ph)4、NaB(m-CH3-Ph)4、NaB(o-F-Ph)4、NaB(p-F-Ph)4、NaB(m-F-Ph)4、NaB(3,5-F2-Ph)4、NaB(C6F5)4、NaB(2,6-(CF3)2-Ph)4、NaB(3,5-(CF3)2-Ph)4、NaB(C10F7)4、HBPh4・2ジエチルエーテル、HB(3,5-F2-Ph)4・2ジエチルエーテル、HB(C6F5)4・2ジエチルエーテル、HB(2,6-(CF3)2-Ph)4・2ジエチルエーテル、HB(3,5-(CF3)2-Ph)4・2ジエチルエーテル、HB(C10H7)4・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0063】
(1-3-3)成分(C)
成分(C)としての有機化合物担体は、特に限定されない。有機化合物担体としては、好ましくは炭素数2~10のα-オレフィン重合体、例えば(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキサン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ヘキセン-1共重合体、プロピレン-ジビニルベンゼン共重合体等、(2)芳香族不飽和炭化水素重合体、例えばポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等、および(3)極性基含有重合体、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が例示される。
【0064】
成分(C)としての無機化合物担体は、特に限定されない。無機化合物担体としては、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
【0065】
成分(C)に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0066】
金属酸化物としては、周期表1~14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、CaO、B2O3、TiO2、ZrO2、Fe2O3、Al2O3・MgO、Al2O3・CaO、Al2O3・SiO2、Al2O3・MgO・CaO、Al2O3・MgO・SiO2、Al2O3・CuO、Al2O3・Fe2O3、Al2O3・NiO、SiO2・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。
なお、本願において、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。
また、本開示において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
【0067】
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl2、CaCl2などが特に好適である。金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
【0068】
上述した無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物を用いることが好ましく、中でもシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)などの使用が好ましい。
【0069】
(1-3-4)成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有量比
成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有量比は特に限定されない。
オレフィン重合用固体触媒では、成分(A)中の遷移金属M 1molあたりの前記成分(B)の含有量を、100mol~12,500molの範囲が好ましい。成分(A)中の遷移金属M 1molあたりの前記成分(B)の含有量は、200mol~10,000molの範囲であることがより好ましく、250mol~5,000molの範囲であることがさらに好ましく、300mol~2,000molの範囲であることがさらに好ましく、330mol~1,700molの範囲であると特に好ましい。
また、オレフィン重合用固体触媒では、成分(C) 1gあたりの前記成分(B)の含有量を、3.0mmol~12.0mmolの範囲とすることが好ましい。成分(C) 1gあたりの前記成分(B)の含有量が6.0mmol~12.0mmolの範囲であると好ましく、7.5mmol~10.5mmolの範囲であるとより好ましい。
【0070】
(1-4)チーグラー触媒
エチレン系重合体等のオレフィン重合体の製造に好適なオレフィン重合用触媒の例として、遷移金属化合物と典型金属のアルキル化合物等の組み合わせからなるチーグラー・ナッタ触媒、とりわけマグネシウム化合物にチタニウム化合物を担持させた固体触媒成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせたいわゆるMg-Ti系チーグラー触媒(例えば、「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」、「出願系統図―オレフィン重合触媒の変遷―;1995年発明協会発行」等を参照されたい。)は安価で高活性かつ重合プロセス適性に優れることから好適である。
【0071】
中でも、特開昭54-142192号公報、特開昭54-148093号公報に記載されているような不活性担体物質担持Mg/Ti触媒、すなわち、例えば、無水MgCl2のテトラヒドロフラン溶液とTiCl3あるいはTiCl4の均一混合液を、あらかじめトリエチルアルミニウムで処理した多孔質シリカに含浸して乾燥乾固して得られる触媒や、特開昭63-117019号公報に記載されているような、有機アルミニウムの存在下でMg/Ti触媒にオレフィン予備重合を施して得られた触媒、例えば、MgCl2とTi(OnBu)4とメチルハイドロジエンポリシロキサンの反応で得られた固体成分にTiCl4とメチルハイドロジエンポリシロキサンの混合液を導入して得られた触媒をトリエチルアルミニウム存在下、エチレン予備重合して得られた予備重合触媒、等が挙げられる。また、特開昭60-195108号公報に記載されているようなマグネシウム・アルミニウム複合体と4価のチタン化合物とを反応させて得られた低原子価のチタン原子を含有する触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせたオレフィン重合用触媒、特開昭56-61406号公報等に記載されているようなマグネシウムエトキシド、トリn-ブトキシモノクロルチタン、n-ブタノールの均一混合物にエチルアルミニウムセスキク
ロライド等を滴下して得られる固体状触媒、特開2001-139635号公報等に記載されているようなマグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒、等が挙げられる。
【0072】
(1-5)フィリップス触媒
オレフィン重合用触媒の例として、フィリップス触媒が挙げられる。フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム元素の少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒である(例えば、M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volime 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.; M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH; M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker等を参照されたい)。フィリップス触媒はエチレン重合に対して高活性を示すので好適に使用される。
【0073】
(2)成分(D)
成分(D)は、流動パラフィン、ミネラルオイル、及びポリブテンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらは高粘稠性溶媒であり、触媒スラリー中の固体触媒成分の沈降が抑制される為に気相重合用の触媒スラリー媒体としてよく利用される。成分(D)の使用に際し、精製の有無は問わないが、精製するのであれば、例えば精製窒素によるバブリングやモレキュラーシーブによる不純物吸着が挙げられる。なお、精製方法についてはこれらに限定されるものではない。
【0074】
(3)成分(E)
成分(E)は、炭素数4~12の炭化水素化合物である。炭素数4~12の炭化水素化合物は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。炭素数4~12の炭化水素化合物としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン、及びキシレンからなる群より選択される1種以上が好ましい。より好ましくは、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン、及びキシレン、更に好ましくは、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、デカン及びトルエン、特に好ましくはヘキサン、イソヘキサン、ヘプタンである。
【0075】
(3)成分(F)
成分(F)は、帯電防止剤である。帯電防止剤は、特に限定されない。
帯電防止剤として、ポリスルホン共重合体、高分子ポリアミン、油溶性スルホン酸を例示できる。ポリスルホン共重合体、高分子ポリアミン、及び油溶性スルホン酸の混合物としては、例えば、STATSAFE(Innospec社製品)、Stadis(Innospec社製品)が具体例として挙げられる。
【0076】
帯電防止剤として、第3級アミン化合物を例示できる。第3級アミン化合物としては、例えば、下記一般式[IX]で表わされる第3級アミン化合物を挙げることができる。
【化8】
上記一般式[IX]中、R
dは水素原子又は1~50の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基であり、R
eは(CH
2)
xOH基(式中、xは1~50、好ましくは2~25の整数である)のようなヒドロキシアルキル基である。このような化合物の非限定例としては、C
18H
37N(CH
2CH
2OH)
2を有するケマミン(Kemamine)AS-990(テキサス、ヒューストンのウィトコ・ケミカル・コーポレーション(Witco Chemical Corporation)から入手可能)、C
12H
25N(CH
2CH
2OH)
2を有するケマミンAS-650(ウィトコから入手可能)及びICIスペシャリテイーズから入手可能なアトマー163、和光純薬から入手可能なポリオキシエチレン(10)ステアリルアミンエーテルを例示することができる。
【0077】
帯電防止剤として、脂肪族アミドを例示できる。脂肪族アミドは、特に限定されない。
脂肪族アミドの中でも高級脂肪族アミドが好適に用いられる。高級脂肪族アミドは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知の高級脂肪族アミドであれば何ら制限なく使用できる。高級脂肪族アミドとしては、例えば、一般式
(CmH2m+1CO)N(CH2CH2OH)2
で表されるアルキルジエタノールアミドが好ましく用いられる。上記一般式中(CmH2m+1)で表されるアルキル基の炭素原子数を示すmは、1~30、好ましくは6~20、より好ましくは8~18の範囲であることが望ましい。高級脂肪族アミドとして具体的には、例えばラウリルジエタノールアミド、セチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オクチルジエタノールアミド、ノニルジエタノールアミド、sec-ラウリルジエタノールアミドなどが挙げられる。これらのなかではラウリルジエタノールアミドが好ましい。
【0078】
帯電防止剤として、ポリアルキレンオキサイドを例示できる。ポリアルキレンオキサイドは、特に限定されない。ポリアルキレンオキサイドとして好適なものとしては、HO-(CH2CH2O)m-Hで表されるポリエチレンオキサイドおよびHO-{CH2CH(CH3)O}nHで表されるポリプロピレンオキサイドが挙げられる。上記ポリエチレンオキサイドの平均重合度を示すmは、2~30、好ましくは3~20、より好ましくは4~8の範囲であることが望ましく、ポリプロピレンオキサイドの平均重合度を示すnは、2~80、好ましくは3~50、より好ましくは4~40の範囲であることが望ましい。ポリアルキレンオキサイドとしては、上記のポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド以外に、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとがランダムに共重合したポリアルキレンオキサイドも好ましく用いられる。また、ポリアルキレンオキサイドとして好適なものとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、などの多価アルコール類にアルキレンオキサイドを付加して得られるポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、多価アルコール類の1官能基数に対してエチレンオキサイドが、2mol~30mol、好ましくは3mol~20mol、より好ましくは4mol~8mol付加するもの、または多価アルコール類の1官能基数に対してプロピレンオキサイドが、2mol~30mol、好ましくは3mol~20mol、より好ましくは4mol~8mol付加するものが望ましい。
【0079】
帯電防止剤として、ポリオキシアルキレングリコールを例示できる。ポリオキシアルキレングリコールは、特に限定されない。ポリオキシアルキレングリコールとしては、下記一般式(I)で表されるポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドブロックが好ましい。
【0080】
【化9】
上記一般式(I)中、(CH
2CH
2O)で表されるオキシエチレン単位の繰返し単位数を示すm及びpの合計(m+p)は、2~40、好ましくは4~20、更に好ましくは4~15の範囲である。繰り返し単位数の比(m/p)は0.1~10であり、0.5~5が好ましい。
一方、[CH
2CH(CH
3)O]で表されるオキシプロピレン単位の繰返し単位数を示すnは、2~50、好ましくは10~50、より好ましくは20~50の範囲である。
上記一般式(I)中、R1およびR2は、水素および炭化水素基からなる群から選ばれ、相互に同一でも異なっていてもよい。R1およびR2の少なくても一つが水素であることが好ましく、R1およびR2が共に水素であることが特に好ましい。なお、炭化水素基としては、炭素数1~20のものが使用可能であるが、これらの中で好ましくは、メチル基、エチル基およびプロピル基であり、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。
【0081】
(4)条件(1)
既述のように本開示のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法の条件(1)は、以下の通りである。
条件(1):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(E)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、0.2質量%~10.0質量%である。
条件(1)は、好ましくは下記条件(1.1)であり、より好ましくは下記条件(1.2)であり、更に好ましくは下記条件(1.3)である。
条件(1.1):条件(1)における前記成分(E)の質量が、0.9質量%~10.0質量%である。
条件(1.2):条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.2質量%~10.0質量%である。
条件(1.3):条件(1)における前記成分(E)の質量が、1.7質量%~10.0質量%である。
【0082】
(5)条件(2)
既述のように本開示のオレフィン重合用触媒スラリーの製造方法の条件(2)は、以下の通りである。
条件(2):オレフィン重合用触媒スラリー中に含まれる前記成分(F)の質量が、前記オレフィン重合用固体触媒、前記成分(D)、前記成分(E)及び前記成分(F)の質量の合計に対して、200質量ppm~14,000質量ppmである。
条件(2)は、好ましくは下記条件(2.1)であり、より好ましくは下記条件(2.2)ある。更に好ましくは下記条件(2.3)であり、特に好ましくは下記条件(2.4)である。
条件(2.1):条件(2)における前記の成分(F)の質量が、600質量ppm~10,000質量ppmである。
条件(2.2):条件(2)における前記の成分(F)の質量が、1,100質量ppm~10,000質量ppmである。
条件(2.3):条件(2)における前記の成分(F)の質量が、1,100質量ppm~7,000質量ppmである。
条件(2.4):条件(2)における前記の成分(F)の質量が、1,100質量ppm~5,000質量ppmである。
【0083】
本開示の作用効果について、説明する。
帯電防止剤を用いた触媒スラリーの帯電防止作用については、次のように推定される。すなわち、(1)帯電防止剤が触媒スラリーの溶媒中に分散することで、溶媒の導電性を上げることや(2)帯電防止剤が触媒スラリー中の固体触媒成分の表面を被覆することで、固体触媒成分の摩擦により発生する電荷(摩擦帯電)が除電されること、が帯電防止に繋がっていると推定される。このとき、触媒のスラリー化のための溶媒として、帯電防止剤が不溶若しくは難溶である流動パラフィン、ミネラルオイル、ポリブテンが使用されると、帯電防止剤はそのスラリー中では分散されずに偏在してしまい、上述(1)の触媒スラリーの導電性を充分に改善することが出来ないと考えられる。また、触媒スラリー中に偏在することで、上述(2)の固体触媒成分の表面を被覆することが出来ないため、摩擦帯電を除電することも出来ないと考えられる。本発明においては、帯電防止剤が易溶な溶媒であり、且つ流動パラフィン、ミネラルオイル、ポリブテンに対しても易溶である炭素数4~12の炭化水素化合物と帯電防止剤とを混合させた後に、この混合物を触媒懸濁液と混合することで、帯電防止剤が触媒スラリー中に分散され、固体触媒成分表面への被覆も可能となることから(上述(1)も(2)も達成されている)、帯電防止作用が発揮される為、触媒スラリーの帯電が抑制されると考えられる。
また、本発明で開示される触媒スラリーの製造方法では、触媒スラリーの粘度上昇を抑制することができる。触媒スラリーは、スラリー中の固体触媒成分の凝集により、粘度上昇すると推定される。本発明で開示する方法では、炭素数4~12の炭化水素化合物および帯電防止剤の混合物を添加することで、固体触媒成分表面への帯電防止剤の被覆が可能となり、帯電凝集が防止されて、粘度上昇が抑制されると考えられる。さらに、触媒凝集を防止することにより、凝集した触媒に起因する重合チャンク発生も抑制されていると考えられる。なお、本発明において、触媒スラリーの帯電抑制、スラリー粘度上昇抑制、重合チャンク発生抑制が起きる理由としては、上記理由に限定されるものではない。上記の理由はあくまでも推定理由であって、これらの理由によらずに他の理由によって本発明の作用効果が奏されるとしても、上記理由によって本発明の権利範囲が限定的に解釈されることはないことを付言する。
【0084】
2.オレフィン重合体の製造方法
オレフィン重合用触媒スラリーの製造方法は、上述の製造方法により製造されたオレフィン重合用触媒スラリーの存在下、オレフィンを重合または共重合する。
コモノマーであるオレフィン類には、炭素数3~30、好ましくは3~8のものが包含され、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等が例示される。オレフィン類は、2種類以上のオレフィンをエチレンと共重合させることも可能である。共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。エチレンと他のオレフィンとを共重合させる場合、当該他のオレフィンの量は、全モノマーの90モル%以下の範囲で任意に選ぶことができるが、一般的には、40モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で選ばれる。もちろん、エチレンやオレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4-メチルスチレン、4-ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
【0085】
本開示において、重合反応は、本開示のオレフィン重合用触媒スラリーの存在下、好ましくはスラリー重合、又は気相重合にて、行うことができる。また、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。スラリー重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。また、気相重合の場合、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。本開示において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0~250℃、好ましくは20~110℃、更に好ましくは60~100℃である。また、圧力が常圧~10MPa、好ましくは常圧~4MPa、更に好ましくは0.5~2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分~10時間、好ましくは5分~5時間が採用され、連続プロセスにおいては平均滞留時間として1時間~50時間が採用され得る。さらに、滞留時間は1時間~20時間でもよく、1時間~15時間であってもよい。
重合様式としては、生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。
【0086】
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【0087】
[実施例]
【0088】
以下に、実施例を挙げて、本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例において使用した評価方法は、以下のとおりであり、以下の触媒合成工程及び重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、また、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
【0089】
1.オレフィン重合用固体触媒の合成
(1)オレフィン重合用固体触媒Aの合成
オレフィン重合用固体触媒A(以下、「固体触媒A」とも言う。)を以下の様にして合成した。
【0090】
(1-1)メタロセン化合物(C1)の合成
下記化学式に示すジメチルシリレン(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、以下の方法に従い合成した。なお、この化合物をメタロセン化合物C1とする(下記化学式参照)。メタロセン化合物C1は、成分(A)に対応する化合物である。
【0091】
【0092】
(1-1-1)1-メチル-7-(2-(5-メチル)-フリル)-インデンの合成
(1-1-1-a)2-ブロモフェニル-2-クロロエチルケトンの合成
100mlフラスコに、2-ブロモ安息香酸(5.30g、26.4mmol)と塩化チオニル25mlを加え、2時間還流した。反応後、過剰の塩化チオニルを減圧留去し得られた酸クロリド体5.50gを精製することなく次の反応に用いた。100mlフラスコに酸クロリド体(5.00g、22.7mmol)とジクロロメタン50mlを加え溶液とした後、さらに塩化アルミニウム(3.02g、22.7mmol)を加え、20℃でエチレンを4時間吹き込んだ。反応を4Nの塩酸でクエンチし、有機相と水相を分離した後、水相をメチル-t-ブチルエーテル50mlで3回洗浄し、有機相を集め水50mlで3回、飽和炭酸水素ナトリウム水100ml、続いて飽和食塩水100mlで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することで化合物3を4.80g(収率85%)得た。さらなる精製は行なわず次の反応に用いた。
【0093】
(1-1-1-b)7-ブロモ-1-インダノンの合成
100mlフラスコに塩化アルミニウム(7.40g、55.6mmol)と塩化ナトリウム(2.15g、37.1mmol)を加え、130℃に加熱した後、2-ブロモフェニル-2-クロロエチルケトン(4.60g、18.5mmol)をゆっくりと加え、混合物を160℃で1時間攪拌した。反応後、30℃に冷却し、氷水でクエンチした。濃塩酸でpH=5に調整した後、有機相と水相を分離し、水相をジクロロメタン100mlで3回洗浄し、有機相を集め水100ml、飽和食塩水100mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル=30/1)で精製し7-ブロモ-1-インダノン1.60g(収率33%)を得た。
【0094】
(1-1-1-c)7-(2-(5-メチル)-フリル)-1-インダノンの合成
100mlフラスコに2-メチルフラン(0.933g、11.4mmol)とTHF10mlを加え溶液とした後、-30℃でn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、4.70ml、11.4mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。別に準備した100mlフラスコに塩化亜鉛(1.55g、11.4mmol)とTHF10mlを加え、続いて0℃で上記反応溶液を加え、室温で1時間攪拌した。さらに別に準備した100mlフラスコにヨウ化銅(I)(90mg、0.473mmol)、Pd(dppf)Cl2(177mg、0.236mmol)、7-ブロモ-1-インダノン(2.00g、9.45mmol)とDMA10mlを加えた懸濁液に、上記反応物を加え、還流を15時間行なった。室温まで冷却し、水50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出を行なった。有機相を集め、水50mlで2回、飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル=20/1)で精製し7-(2-(5-メチル)-フリル)-1-インダノン0.70g(収率35%)を得た。
【0095】
(1-1-1-d)1-メチル-7-(2-(5-メチル)-フリル)-インデンの合成
100mlフラスコに7-(2-(5-メチル)-フリル)-1-インダノン(1.40g、6.59mmol)とTHF20mlを加え溶液とした後、-78℃でメチルリチウム/ジエチルエーテル溶液(1.6M、7.5ml、11.9mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液20mlでクエンチし、揮発成分を減圧留去した。残った溶液を酢酸エチル50mlで2回抽出し、有機相を集めて飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらなる精製は行なわず次の反応に用いた。100mlフラスコに上記粗生成物とトルエン30mlを加え溶液とした後、p-トルエンスルホン酸(62.0mg、0.330mmol)を加え、130℃で2時間攪拌した。攪拌中はディーンスタークトラップを用いて生成する水を除いた。室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlを加え、有機相を分離した。水相を酢酸エチル50mlで3回抽出した後、有機相を集め飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し1-メチル-7-(2-(5-メチル)-フリル)-インデン0.850g(収率61%)を得た。
【0096】
(1-1-2)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルクロロシランの合成
200mlフラスコに、テトラメチルシクロペンタジエン2.40g(19.6mmol)とTHF40mlを加え溶液とした後、-78℃に冷却してn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)12.0ml(30.0mmol)を加え、室温に戻して3時間攪拌した。別途用意した200mlフラスコにジメチルジクロロシラン5.00g(38.7mmol)とTHF20mlを加え、-78℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して12時間攪拌した。揮発物を減圧留去で除くことで黄色液体4.00gが得られた。得られた黄色液体は、さらなる精製は行なわずに次の反応に用いた。
【0097】
(1-1-3)(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
100mlフラスコに、1-メチル-7-(2-(5-メチル)-フリル)-インデン2.60g(12.4mmol)とTHF40mlを加え溶液とした後、-78℃に冷却してn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)5.2ml(13.0mmol)を加え、室温に戻して3時間攪拌した。別途用意した200mlフラスコに(1-2)で得られた未精製の黄色液体3.40g(15.8mmol)とTHF10mlを加え、-78℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して12時間攪拌した。反応物を氷水40mlにゆっくりと加え、酢酸エチル200mlで2回抽出した。得られた有機相を飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶液を減圧留去して、シリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し、(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランの黄色オイル1.40g(収率25%)を得た。
【0098】
(1-1-4)ジメチルシリレン(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(メタロセン化合物C1)の合成
200mlフラスコに、(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシラン2.20g(5.70mmol)、ジエチルエーテル30mlを加え、-78℃まで冷却した。ここにn-ブチルリチウム/n-ヘキサン溶液(2.5M)4.8ml(11.9mmol)を滴下し、室温に戻し3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン60mlを加え、-78℃まで冷却した。そこに、四塩化ジルコニウム1.40g(6.01mmol)を加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。反応液をろ過して得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、黄色粉末3.0gが得られた。この粉末をトルエン25mlで洗浄し、ジメチルシリレン(3-メチル-4-(2-(5-メチル)-フリル)-インデニル)(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの黄色粉末0.75g(収率26%)を得た。
1H-NMR値(CDCl3):δ0.94(s,3H),δ1.19(s,3H),δ1.90(s,3H),δ1.95(s,3H),δ1.98(s,3H),δ2.04(s,3H),δ2.28(s,3H),δ2.38(s,3H),δ5.52(s,1H),δ6.07(d,1H),δ6.38(d,1H),δ7.04(dd,1H),δ7.37(d,1H),δ7.45(d,1H)。
【0099】
(1-2)固体触媒Aの合成
窒素雰囲気下、1Lフラスコに480℃で6時間焼成したシリカ32.7gと脱水トルエン213mlの混合スラリー液を作成した。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下でメタロセン化合物C1を183mg入れ、脱水トルエン90mlで溶解した。室温でメタロセン化合物C1のトルエン溶液にアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液90mlを加え30分間撹拌した。先に作製したシリカ(成分(C)に対応する無機化合物担体)のトルエンスラリー液の入った1Lフラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、メタロセン化合物C1とメチルアルミノキサン(成分(B)に対応する化合物)の反応物のトルエン溶液を全量加え、温度を40℃に維持したまま1時間撹拌した。1時間後に撹拌を停止し、40℃に加熱したまま10分間静置した後、上澄みを除去した。ここへ脱水ヘキサン600mlを添加して5分間撹拌の後、10分間静置して上澄みを除去した。同様にして脱水ヘキサン700mlで再度触媒を洗浄後、ヘキサンを減圧留去することで固体触媒Aを得た。
【0100】
(2)オレフィン重合用固体触媒Bの合成
オレフィン重合用固体触媒B(以下、「固体触媒B」とも言う。)を以下の様にして合成した。
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラエトキシジルコニウム(Zr(OEt)4)22g及びインデン75g及びメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を3200ml添加し2時間攪拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m2/g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブロー及び減圧乾燥を行うことで固体触媒Bを得た。
【0101】
2.オレフィン重合用触媒スラリー帯電特性比較実験
(1)[実施例1]
(1-1)触媒スラリーの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス製スクリュー管瓶にヘキサンを1.69g、STATSAFE6000(Innospec社製)を324.7mg入れて振とう器で混合した。別途用意した、50mlガラス製スクリュー管瓶に固体触媒Aを7.72g入れ、窒素バブリングによって脱水処理をした流動パラフィン(モレスコ社製、商品名:モレスコホワイトP-120、平均分子量:365、密度:0.853g/cm3)を42.31g加え、振とう器で混合した後、ヘキサンとSTATSAFE6000の混合液を全量加え、振とう器で混合することで触媒スラリーを得た。
【0102】
(1-2)触媒スラリーの帯電量測定
片端にボールバルブ、もう一方の端に外径6mm、内径4mm、長さ10cmのSUS製配管を取り付けたボールバルブを取り付けた75mlSUS製シリンダーに、窒素雰囲気下、上記(1-1)触媒スラリーの調製で得られた触媒スラリーを6.27g加え、窒素で内圧を0.1MPaとした。窒素雰囲気下、シリンダーの配管が取り付けてある側のバルブを全開にすることで、シリンダー内の触媒スラリー全量を、クーロンメーター(春日電機社製、型式:NK-1001A)を備え付けたファラデーケージ(春日電機社製、型式:KQ-1400)に入れた時の帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0103】
【0104】
(2)[実施例2]
固体触媒Aを1.00g、流動パラフィンを5.45g、ヘキサンを0.26g、STATSAFE6000を34.4mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を4.98g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0105】
(3)[実施例3]
固体触媒Aを1.05g、流動パラフィンを5.78g、ヘキサンを0.21g、STATSAFE6000を28.3mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.47g使用した以外は実施例1と同様にスラリー触媒の帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0106】
(4)[実施例4]
固体触媒Aを1.14g、流動パラフィンを7.64g、ヘキサンを0.17g、STATSAFE6000を28.0mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を7.14g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0107】
(5)[実施例5]
固体触媒Aを11.13g、流動パラフィンを63.64g、ヘキサンを2.53g、STATSAFE6000を164.0mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.40g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0108】
(6)[実施例6]
固体触媒Aを1.11g、流動パラフィンを7.48g、ヘキサンを0.18g、STATSAFE6000を10.6mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.83g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0109】
(7)[実施例7]
固体触媒Aを1.11g、流動パラフィンを6.03g、ヘキサンを0.21g、STATSAFE6000を7.7mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.28g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0110】
(8)[実施例8]
固体触媒Aを1.00g、流動パラフィンを6.40g、ヘキサンを0.19g、STATSAFE6000を6.9mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.08g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0111】
(9)[実施例9]
固体触媒Aを1.20g、流動パラフィンを8.03g、ヘキサンを0.21g、STATSAFE6000を7.6mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を7.70g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0112】
(10)[実施例10]
固体触媒Aを1.13g、流動パラフィンを7.62g、ヘキサンを0.19g、STATSAFE6000を6.1mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を7.12g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0113】
(11)[比較例1]
固体触媒Aを1.00g、流動パラフィンを6.23g、ヘキサンを0.19g使用し、STATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.35g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0114】
(12)[実施例11]
固体触媒Aを5.56g、流動パラフィンを71.95g、ヘキサンを2.68g、STATSAFE6000を341.1mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.24g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0115】
(13)[実施例12]
固体触媒Aを5.42g、流動パラフィンを69.96g、ヘキサンを2.56g、STATSAFE6000を166.0mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.90g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0116】
(14)[比較例2]
固体触媒Aを5.28g、流動パラフィンを71.82g、ヘキサンを3.19g使用し、STATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.09g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0117】
(15)[実施例13]
固体触媒Aを1.46g、流動パラフィンを7.57g、ヘキサンを0.51g、STATSAFE6000を39.4mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を7.02g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0118】
(16)[実施例14]
固体触媒Aを1.25g、流動パラフィンを6.52g、ヘキサンを0.16g、STATSAFE6000を30.9mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.86g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0119】
(17)[実施例15]
固体触媒Aを1.23g、流動パラフィンを6.68g、ヘキサンを0.09g、STATSAFE6000を30.8mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を6.07g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0120】
(18)[比較例3]
固体触媒Aを1.27g、流動パラフィンを6.35g、STATSAFE6000を29.5mg使用し、ヘキサンを使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.77g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0121】
(19)[実施例16]
固体触媒Aを6.27g、流動パラフィンを35.31g、ヘキサンを1.51g、Pluronic L-121(ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)、Sigma-Aldrichi製)を10.0mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を8.71g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0122】
(20)[実施例17]
固体触媒Aを6.53g、流動パラフィンを37.31g、ヘキサンを1.59g、Pluronic L-121を300.0mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を7.40g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0123】
(21)[比較例4]
固体触媒Aを6.18g、流動パラフィンを34.40g、Pluronic L-121を240.0mg使用し、ヘキサンを使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を8.61g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0124】
(22)[比較例5]
固体触媒Aを1.07g、流動パラフィンを6.14g使用し、ヘキサンとSTATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を4.46g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0125】
(23)[実施例18]
固体触媒Bを1.02g、流動パラフィンを5.49g、ヘキサンを0.22g、STATSAFE6000を28.1mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.00g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0126】
(24)[実施例19]
固体触媒Bを1.05g、流動パラフィンを5.72g、ヘキサンを0.23g、STATSAFE6000を2.9mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.10g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0127】
(25)[比較例6]
固体触媒Bを1.01g、流動パラフィンを5.45g、ヘキサンを0.21g使用し、STATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を5.11g使用した以外は実施例1と同様に触媒スラリーの帯電量を測定した。帯電量測定結果を表3にまとめた。
【0128】
(26)オレフィン重合用触媒スラリーの帯電特性比較実験の結果
いずれの実施例も触媒スラリーの帯電が抑制された。比較例では、触媒スラリーの帯電は抑制されなかった。
【0129】
3.オレフィン重合用触媒スラリーの粘度比較実験
(1)[実施例20]
(1-1)触媒スラリーの調製
固体触媒Aを3.07g、流動パラフィンを16.58g、ヘキサンを0.62g、STATSAFE6000を82.4mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。
【0130】
(1-2)オレフィン重合用触媒スラリーの粘度測定
上記(1-1)触媒スラリーの調製で得られた触媒スラリーの粘度を下記の方法にて測定した。粘度測定結果を表4にまとめた。
粘度測定は、レオメータを用いた定常流測定方法で行った。測定方法を以下に説明する。
[測定条件]
測定は以下の方法で行った。
・装置:レオメータ、ティー・エイ・インスツルメント社製 ARES-G2
・治具:ティー・エイ・インスツルメント社製 50.0mm parallel plate
・治具のGap:1.0mm
・測定温度:25℃
・せん断速度:1.0~316.2/秒(低せん断速度から高せん断速度へ測定)
・Points per decade:4
・平衡化時間:5.0秒
・データ取り込み時間:5.0秒
測定直前に、試料である触媒スラリーはよく攪拌を行った。攪拌後の試料を、ピペットを用いて試料2.5mlを直径50mmのparallel plateに滴下し、治具のGapが1.02mmになるまで上部のparallel plateを下げて試料を潰した。治具からはみ出た試料をかき取り、治具のGapが1.00mmになるまで上部のparallel plateを下げて試料を潰した。その後、直ぐに測定を行った。 上記の条件で試料を取り付けた状態で5回繰り返し測定を行った。繰り返し測定時は高せん断速度の測定終了後、再度直ぐに低せん断速度から測定した。この測定について試料を付け替えて合計3回行った。5回繰り返し測定のうち2回目に測定した粘度の平均値をスラリー粘度と定義した。
【0131】
【0132】
(2)[実施例21]
固体触媒Aを3.01g、流動パラフィンを16.42g、ヘキサンを0.68g、STATSAFE6000を45.6mg使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を使用した以外は実施例20と同様に触媒スラリーの粘度を測定した。粘度測定結果を表4にまとめた。
【0133】
(3)[比較例7]
固体触媒Aを1.13g、流動パラフィンを5.94g、STATSAFE6000を29.1mg使用し、ヘキサンを使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を使用した以外は実施例20と同様に触媒スラリーの粘度を測定した。粘度測定結果を表4にまとめた。
【0134】
(4)[比較例8]
固体触媒Aを3.08g、流動パラフィンを16.49g、ヘキサンを0.59g使用し、STATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を使用した以外は実施例20と同様に触媒スラリーの粘度を測定した。粘度測定結果を表4にまとめた。
【0135】
(5)[比較例9]
固体触媒Aを3.00g、流動パラフィンを17.72g使用し、ヘキサンとSTATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。この触媒を使用した以外は実施例20と同様に触媒スラリーの粘度を測定した。粘度測定結果を表4にまとめた。
【0136】
(6)触媒スラリーの粘度測定の結果
各せん断速度において、実施例の触媒スラリーの粘度は、比較例の触媒スラリーの粘度に比べて低かった。
【0137】
4.オレフィン重合用触媒スラリーによる気相重合性能比較
(1)[実施例22]
(1-1)触媒スラリーの調製
固体触媒Aを26.9g、流動パラフィンを511.8g、ヘキサンを16.81g、STATSAFE6000を2.2g使用した以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。
【0138】
(1-2)エチレン・1-ヘキセン共重合体の製造
上記(1-1)触媒スラリーの調製で得られた触媒スラリーを用いてエチレン・1-ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度81℃、水素/エチレンモル比0.29%、ヘキセン/エチレンモル比2.10%、窒素濃度を40mol%、エチレン分圧を0.43MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ-(分散剤)1.8kg)に該触媒スラリーを3.1g/hrの速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、トリエチルアルミニウムのヘキサン稀釈溶液0.12mol/Lを14.5ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの重合速度は300g/hrとなった。重合結果を表5にまとめた。なお、表5において、C2分圧とは、エチレン分圧を意味する。
【0139】
【0140】
(2)[比較例10]
(2-1)触媒スラリーの調製
固体触媒Aを20.0g、流動パラフィンを400.9g使用し、ヘキサンとSTATSAFE6000を使用しなかった以外は、実施例1と同じ調製方法で触媒スラリーを得た。
【0141】
(2-2)エチレン・1-ヘキセン共重合体の製造
上記(2-1)触媒スラリーの調製で得られた比較例10のスラリー触媒を用いてエチレン・1-ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度81℃、水素/エチレンモル比0.35%、ヘキセン/エチレンモル比2.57%、窒素濃度を39mol%、エチレン分圧を0.44MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ-(分散剤)1.8kg)に該触媒スラリーを0.4g/hrの速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、トリエチルアルミニウムのヘキサン稀釈溶液0.06mol/Lを32.0ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの重合速度は278g/hrとなった。重合結果を表4にまとめた。なお、表5において、C2分圧とは、エチレン分圧を意味する。
【0142】
(3)触媒スラリーの気相重合性能比較の結果
実施例では、比較例よりも重合チャンクの発生が抑制されていた。
【0143】
5.実施例の効果
以上の実施例によれば、オレフィン重合用触媒スラリーの帯電が抑制された。さらに、このスラリーの粘度が改善され、重合チャンク発生が抑制された。
【0144】
本発明は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。