(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147271
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】選択的透過性バリア層を有する膜電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20231004BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20231004BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20231004BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20231004BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20231004BHJP
C08J 5/22 20060101ALI20231004BHJP
H01M 8/02 20160101ALN20231004BHJP
H01M 8/1004 20160101ALN20231004BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231004BHJP
【FI】
C25B13/08 301
C25B9/23
C25B13/04 301
C25B9/21
C25B11/032
C08J5/22 CES
C08J5/22 CET
H01M8/02
H01M8/1004
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023051638
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】63/362,080
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523064398
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ネーデルラント・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・トチェット
(72)【発明者】
【氏名】リー・バーンズ
【テーマコード(参考)】
4F071
4K011
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA20X
4F071AA22X
4F071AA75
4F071AH02
4F071AH15
4F071FA05
4F071FB07
4K011AA12
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB16
4K021DB43
4K021DB53
5H126AA02
5H126GG18
5H126JJ00
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】MEAと、流体、分子、イオン等の移動を選択的に保持又は制御することを支援する選択的透過性バリア層とを含む、電気化学セルアセンブリを提供すること。
【解決手段】膜電極アセンブリ、及びスルホン化ポリマーを含む選択的透過性バリア層を含む電気化学セルが開示される。選択的透過性バリア層は、少なくとも1つの電極触媒層、例えば、アノード又はカソードに面して配置される。スルホン化ポリマー層は、分離又は後続の使用のために捕獲するために、流体及び/又は他の構成要素の電気化学セルアセンブリ内への又はその外への移動を制御することを支援する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルアセンブリ(100)であって、
少なくとも第1の成分及び第2の成分を含有する流体を、第1の構成要素及び第2の構成要素の少なくとも2つの構成要素に分解するための膜電極アセンブリ(101)であって、第1の電極触媒層(102)と、第2の電極触媒層(104)と、該第1及び第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜(110)とを含む、膜電極アセンブリと、
前記膜電極アセンブリの外部に配置され、前記第1又は第2の電極触媒層に離間して面しているバリア層(112)であって、該バリア層が選択的透過性スルホン化ポリマー膜を含み、該スルホン化ポリマーが、スルホン化ブロックコポリマー、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリスチレンスルホネート、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリケトン、スルホン化ポリ(アリーレンエーテル)、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択され、前記スルホン化ポリマーが、少なくとも0.5meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する、バリア層と
を含み、
前記バリア層が、該バリア層を前記第1又は第2の電極触媒層から分離するためのスペーサ層若しくはフレームによって支持されており、
前記バリア層が、前記第1及び第2の成分並びに前記第1及び第2の構成要素に対して選択的透過性であり、前記バリア層が、
5:1超の前記第1の成分と前記第2の成分との透過性比、
5:1超の前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との透過性比、及び
5:1超の前記第1又は第2の成分と前記第1又は第2の構成要素との透過性比
の少なくとも1つを有し、前記成分及び前記構成要素の少なくとも1つの流れを制限する、
電気化学セルアセンブリ。
【請求項2】
前記スルホン化ポリマー膜が、10~100mol%のスルホン化度を有する、請求項1に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項3】
前記スルホン化ポリマー膜が、0.75~3.0meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する、請求項1に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項4】
前記スルホン化ポリマー膜が、A-B-A、(A-B)n(A)、(A-B-A)n、(A-B-A)nX、(A-B)nX、A-D-B、A-B-D、A-D-B-D-A、A-B-D-B-A、(A-D-B)nA、(A-B-D)nA、(A-D-B)nX、(A-B-D)nX、(A-D-B-D-A)nX、(A-B-D-B-A)nX、又はこれらの混合物(式中、nは2~30の整数であり、Xはカップリング剤の残基である。)の一般構成を有するスチレン系ブロックコポリマー前駆体のスルホン化によって得られる、スルホン化スチレン系ブロックコポリマーであり、
各ブロックAが、パラ-メチルスチレン、パラ-エチルスチレン、パラ-n-プロピルスチレン、パラ-イソ-プロピルスチレン、パラ-n-ブチルスチレン、パラ-sec-ブチルスチレン、パラ-イソ-ブチルスチレン、パラ-t-ブチルスチレン、パラ-デシルスチレンの異性体、パラ-ドデシルスチレンの異性体、及びこれらの混合物からなる群から選択される、重合パラ置換スチレンモノマーに由来し、
各ブロックBが、非置換スチレン、オルト置換スチレン、メタ置換スチレン、アルファーメチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される重合ビニル芳香族モノマーに由来し、
各ブロックDが、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン、及びこれらの混合物からなる群から選択される重合共役ジエンモノマーに由来する、
請求項1に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項5】
前記イオン交換膜が、プロトン交換膜及びアニオン交換膜から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項6】
前記電気化学セルアセンブリが筐体(602、702)の外側に位置し、前記バリア層が、前記筐体と流体連通して配置されており、前記筐体から前記第1の電極触媒層への流体の流れを可能にし、少なくとも1種の構成要素の前記第1の電極触媒層から前記筐体への流れを制限している、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項7】
第2のバリア層(202、402)をさらに含み、前記バリア層、前記膜電極アセンブリ及び前記第2のバリア層が直列に配置され、前記第2のバリア層が、前記第2の電極触媒層に離間して面して配置されている、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項8】
前記膜電極アセンブリがガス拡散層(124、126)をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項9】
前記膜電極アセンブリに電圧を印加するように構成された電圧印加ユニットをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項10】
給湿、除湿、電気化学的変換、合成、CO2捕獲、ガススイートニング、電気分解装置、及び燃料電池用途のいずれかにおいて、流体の分離及び回収に使用される、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項11】
筐体(602、702)と、
請求項1~4のいずれかに記載の電気化学セルアセンブリ(100)と
を含む、流体分離アセンブリ(600、700)。
【請求項12】
除湿装置であり、前記電気化学セル内にバリア層を有さない流体分離アセンブリと比較して、前記筐体内の相対湿度を少なくとも10%低減し、かつ酸素(O2)含有量を5%超低減するためのものである、請求項11に記載の流体分離アセンブリ。
【請求項13】
電気化学セルアセンブリ(100)であって、
少なくとも第1の成分及び第2の成分を含有する流体を少なくとも2つの構成要素、第1の構成要素及び第2の構成要素に分解するための膜電極アセンブリ(101)であって、第1の電極触媒層(102)と、第2の電極触媒層(104)と、該第1及び第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜(110)とを含む、膜電極アセンブリと、
前記膜電極アセンブリの外部に配置されている第1のバリア層(112)及び第2のバリア層(202、402)であって、前記第1のバリア層が、前記膜電極アセンブリの前記第1の電極触媒層に離間して面しており、前記第2のバリア層が、前記膜電極アセンブリの前記第2の電極触媒層に離間して面している、第1のバリア層(112)及び第2のバリア層(202、402)と、
を含み、
前記第1のバリア層及び前記第2のバリア層の少なくとも一方が、スルホン化ポリマー膜を含み、該スルホン化ポリマーが、スルホン化ブロックコポリマー、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリスチレンスルホネート、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリケトン、スルホン化ポリ(アリーレンエーテル)、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択され、前記スルホン化ポリマーが、少なくとも0.5meq/gのイオン交換容量(IEC)を有し、
前記バリア層が、該バリア層を前記第1の電極触媒層から分離するためのスペーサ層若しくはフレームによって支持されており、
前記バリア層が、前記第1及び第2の成分並びに前記第1及び第2の構成要素に対して選択的透過性であり、前記バリア層が、
5:1超の前記第1の成分と前記第2の成分との透過性比、
5:1超の前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との透過性比、及び
5:1超の前記第1又は第2の成分と前記第1又は第2の構成要素との透過性比
の少なくとも1つを有し、前記成分及び前記構成要素の少なくとも1つの流れを制限する、
電気化学セルアセンブリ。
【請求項14】
前記スルホン化ポリマー膜が、10~100mol%のスルホン化度を有する、請求項13に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項15】
前記スルホン化ポリマー膜が、A-B-A、(A-B)n(A)、(A-B-A)n、(A-B-A)nX、(A-B)nX、A-D-B、A-B-D、A-D-B-D-A、A-B-D-B-A、(A-D-B)nA、(A-B-D)nA、(A-D-B)nX、(A-B-D)nX、(A-D-B-D-A)nX、(A-B-D-B-A)nX、又はこれらの混合物(式中、nは2~30の整数であり、Xはカップリング剤の残基である。)の一般構成を有するスチレン系ブロックコポリマー前駆体のスルホン化によって得られる、スルホン化スチレン系ブロックコポリマーであり、
各ブロックAが、パラ-メチルスチレン、パラ-エチルスチレン、パラ-n-プロピルスチレン、パラ-イソ-プロピルスチレン、パラ-n-ブチルスチレン、パラ-sec-ブチルスチレン、パラ-イソ-ブチルスチレン、パラ-t-ブチルスチレン、パラ-デシルスチレンの異性体、パラ-ドデシルスチレンの異性体、及びこれらの混合物からなる群から選択される、重合パラ置換スチレンモノマーに由来し、
各ブロックBが、非置換スチレン、オルト置換スチレン、メタ置換スチレン、アルファーメチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される重合ビニル芳香族モノマーに由来し、
各ブロックDが、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン、及びこれらの混合物からなる群から選択される重合共役ジエンモノマーに由来する、
請求項13に記載の電気化学セルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜電極アセンブリ(membrane electrode assembly)、及び流体の混合物からのある特定の流体の分離を促進するための選択的透過性バリア層を含む、電気化学セルアセンブリ(electrochemical cell assembly)に関する。
【背景技術】
【0002】
膜電極アセンブリ(「MEA」)は多くの用途、例えば、電気分解装置、固体高分子型燃料電池、水素/酸素空気燃料電池、直接メタノール型燃料電池等に使用されている。MEAの主要な機能は、電子供与反応(アノード)において遊離した電子の電子受容反応(カソード)へのフローを、効率的に制御することである。これは典型的に、プロトン、例えばH+のみを伝導する膜を使用することにより、カソード反応をアノード反応から分離することによって達成される。
【0003】
典型的な5層MEAは、プロトン交換膜(「PEM」)又はアニオン交換膜(「AEM」)、2層の触媒層、並びに任意選択的にガス拡散層、支持フレーム及び他の用途固有の成分から構成される。MEAは、通常は電力供給の使用を伴い、アノード及びカソードの間の電圧の印加によって機能することができるが、電極供給を伴わずに受動的MEAとして稼働することもできる。5層MEAの代替版は3層MEAであり、3層MEAは、PEM又はAEM、並びに両側のアノード及びカソードに適用された触媒層から構成される。
【0004】
加水分解反応において、MEAは、電子のフロー及び方向を制御するために使用され、H2Oを使用してH2及びO2を生成することができる(加水分解)か、H2及びO2からH2Oを生成することができる(燃料電池)かのいずれかである。加水分解に加えて、MEAを使用して他の化合物、例えば、二酸化炭素、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、塩化ナトリウム等を電気化学的に酸化することができる。MEAはまた、化合物、例えば、アンモニア、メタン、過酸化水素等を電気化学的に合成するために使用することもできる。
【0005】
先行技術のMEAでは、MEA中で分離した流体/イオンは、供給流又は他の発生源、例えば筐体に逆流することがあり、空間中の流体/イオンの量が増加するので望ましくないことがある。いくつかの例では、メタノール型燃料電池においてアノード及びカソードの間で起こるように、クロスオーバー汚染が起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、MEAと、流体、分子、イオン等の移動を選択的に保持又は制御することを支援する選択的透過性バリア層とを含む、電気化学セルアセンブリが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、電気化学セルアセンブリが開示される。電気化学セルアセンブリは、少なくとも第1の成分及び第2の成分を含有する流体を、第1の構成要素及び第2の構成要素の少なくとも2つの構成要素に分解するための膜電極アセンブリであって、バリア層を含む。膜電極アセンブリは、第1の電極触媒層(electrocatalyst layer)と、第2の電極触媒層と、第1及び第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜とを含む。バリア層は、膜電極アセンブリの外部にあり、膜電極アセンブリの第1又は第2の電極触媒層に離間して面している。バリア層はスルホン化ポリマー膜を含み、スルホン化ポリマーは、スルホン化ブロックコポリマー、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリスチレンスルホネート、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリケトン、スルホン化ポリ(アリーレンエーテル)、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択され、スルホン化ポリマーは、少なくとも0.5meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する。バリア層は、バリア層を第1又は第2の電極触媒層から分離するためのスペーサ層若しくは、フレームによって支持されている。バリア層は、第1及び第2の成分並びに第1及び第2の構成要素に対して選択的透過性であり、バリア層は、5:1超の第1の成分と第2の成分との透過性比、5:1超の第1の構成要素と第2の構成要素との透過性比、及び5:1超の第1又は第2の成分と第1又は第2の構成要素との透過性比の少なくとも1つを有し、成分及び構成要素の少なくとも1つの流れを制限する。
【0008】
一態様では、電気化学セルアセンブリが開示される。電気化学セルアセンブリは、少なくとも第1の成分及び第2の成分を含有する流体を、第1の構成要素及び第2の構成要素の少なくとも2つの構成要素に分解するための膜電極アセンブリであって、並びに第1及び第2のバリア層を含む。膜電極アセンブリは、第1の電極触媒層と、第2の電極触媒層と、第1及び第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜とを含む。第1のバリア層及び第2のバリア層は、膜電極アセンブリの外部にあり、膜電極アセンブリの第1又は第2の電極触媒層に離間して面している。バリア層はスルホン化ポリマー膜を含み、スルホン化ポリマーは、スルホン化ブロックコポリマー、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリスチレンスルホネート、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリケトン、スルホン化ポリ(アリーレンエーテル)、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択され、スルホン化ポリマーは、少なくとも0.5meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する。バリア層は、バリア層を第1又は第2の電極触媒層から分離するためのスペーサ層若しくはフレームによって支持されている。バリア層は、第1及び第2の成分並びに第1及び第2の構成要素に対して選択的透過性であり、バリア層は、5:1超の第1の成分と第2の成分との透過性比、5:1超の第1の構成要素と第2の構成要素との透過性比及び5:1超の第1又は第2の成分と第1又は第2の構成要素との透過性比の少なくとも1つを有し、成分及び構成要素の少なくとも1つの流れを制限する。
【0009】
筐体、及び筐体と流体連通するように配置され、流体を受け入れる又は筐体に提供するように適合させた電気化学セルアセンブリを含む、流体分離アセンブリ(fluid separation assembly)が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プロトン交換膜としてのイオン交換膜及びプロトン交換膜としてのバリア層を有する、膜電極アセンブリの模式図である。
【
図2】プロトン交換膜としてのイオン交換膜及び2つのバリア層を有する、膜電極アセンブリの模式図である。
【
図3】アニオン交換膜としてのイオン交換膜及びプロトン交換膜としてのバリア層を有する、膜電極アセンブリの模式図である。
【
図4】アニオン交換膜としてのイオン交換膜及び2つのバリア層を有する、膜電極アセンブリの模式図である。
【
図5】
図1の膜電極アセンブリを有する、筐体アセンブリの模式図である。
【
図6】
図1の膜電極アセンブリを有する、筐体アセンブリの模式図である。
【
図7】
図3の膜電極アセンブリを有する、筐体アセンブリの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
【0012】
「[A、B及びCなどの群]の少なくとも1つ」又は「[A、B及びCなどの群]のいずれか」は、群の単一のメンバー、群の1つ以上のメンバー又は群のメンバーの組み合わせを意味する。例えば、A、B及びCの少なくとも1つは、例えば、Aのみ、Bのみ若しくはCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC、又はA、B及びC、又はA、B及びCの一切の他のすべての組み合わせを含む。
【0013】
「X1、X2、X3、…、Xn及びこれらの混合物から選択される」は、群の単一のメンバー若しくは群の2つ以上のメンバー、例えば、X1、X2、X3、…Xn、又は群X1~Xnのいくつか若しくはすべてのメンバーが存在することを意味する。
【0014】
「A、B又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」を含むものとして解釈されるべきである。
【0015】
「分子量」又は「MW」は、g/molにおける(別段の指示がない限り)、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのスチレン当量分子量を指す。MWは、ポリスチレン較正標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、例えば、ASTM 5296-19に従って行われる。GPC検出器は、紫外線検出器若しくは屈折率検出器又は組み合わせとすることができる。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を使用して較正される。このように較正されたGPCを使用して測定されるポリマーのMWが、スチレン当量分子量又は見かけの分子量である。ここで表されるMWは、GPC追跡のピークにおいて測定され、通例、スチレン当量「ピーク分子量」と称され、Mpと呼ばれる。
【0016】
「イオン交換膜」又は「IEM」は、ある特定の溶存イオンを輸送する一方で、他のイオン又はある特定の中性分子を阻止する半透膜を指す。そのため、イオン交換膜は、電気伝導性であり、電気分解プロセス中に一方の電極から他方の電極にイオンを移動させる。イオン交換膜の例としては、H+カチオンを輸送するプロトン交換膜及びOH-アニオンを輸送するアニオン交換膜が挙げられる。
【0017】
「筐体」は、分離、回収又は収集するべき流体を含む成分を含有し、電気化学セルから/へ流入及び流出する流れのための開口を有する、箱、容器などの狭い空間を指す。例示的な筐体としては、ヒュミドール、ワインセラー等が挙げられる。
【0018】
「流体(Fluid」」又は「流体(fluids)」は、液体、気体、又は応力若しくは外力の適用下で変形することができる他の材料である。
【0019】
「バリア層」は、ある特定の流体、分子又はイオンに対して選択的に透過性である一方で、他の流体、分子及び/又はイオンの通行を阻止する層又は構造を意味する。
【0020】
「透過性」は、材料を通して流体、分子及び/又はイオンを透過する、材料の能力を意味する。
【0021】
「選択的透過性」は、材料を通してある特定の流体、分子及び/又はイオンを透過する一方で、他のものの通行を阻止/抑制/限定する、材料の能力を意味する。
【0022】
「非透過性」(及び対応する形容詞「非透過性」)は、材料を通して流体又は構成要素(イオン、分子等)の通行を制限/阻止/限定する、又は非常に小さな相対量、0.5%未満、0.1%未満若しくは0.05%未満若しくは0.01%未満若しくは0.001%未満を流れさせる、若しくは事実上何も流れさせない、材料の能力を指す。
【0023】
「透過性比」は、2種の異なる流体、分子及び/又はイオンに対する材料の透過性を比較した比であり、例えば2種の流体、すなわち、透過性の流体、及び透過性でない又は非透過性である第2の流体に対するバリア層の透過性比である。
【0024】
「電極触媒層」は、電気伝導性要素として機能する層であり、銅、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、金、インジウム、銀、ニッケル、黄銅、鉄などの金属及び他の金属、又は任意の他の電気伝導性要素から作製することができ、電極触媒層が電力供給源、例えば電池の端子に接続されている場合、電気分解反応時に電極、すなわちアノード又はカソードとして動作する。電極触媒層は、金属自体とすることもでき、触媒によって被覆された電気伝導性材料とすることもできる。電極触媒層は、ガス拡散層を含むことができる。
【0025】
「ガス拡散層」又は「GDL」は、電極表面における、反応性の流体、分子及び/又はイオンの一様な拡散を増進し、外部電気回路への又は回路からの電子の輸送を促進する層である。GDLはまた、MEAアセンブリ技法に応じて、電極アセンブリにおける触媒含浸のための足場材料としても使用され得る。実施形態では、ガス拡散層は、炭素繊維をカーボンクロスに織り込むことによって、又は炭素繊維を一緒に圧縮してカーボンペーパーにすることによって作製された多孔質層であるが、多孔質の電気伝導性材料の形態、例えば、炭素繊維ペーパー、炭素繊維織布、炭素繊維布、金属又は合金のスクリーン、金属又は合金のネット及び金属化繊維布等であってもよい。
【0026】
「アノード」は、酸化反応が起こる電極であり、正電荷を有する。したがって、負に帯電したイオンは、電気分解反応中にアノードに向かって移動する。
【0027】
「カソード」は、還元反応が起こる電極であり、負電荷を有する。したがって、正に帯電したイオンは、電気分解反応中にカソードに向かって移動する。
【0028】
「構成要素」は、MEAにおいて処理/分離されたプロトン、電子又は流体の分子を指す。例えば、MEAにおいて、水は構成要素H2及びO2に分解される。
【0029】
「イオン交換容量」又はIECは、ポリマー中のイオン交換を担う全活性サイト又は官能基を指す。従来の酸塩基滴定法、例えば、International Journal of Hydrogen Energy、39巻、10号、2014年3月26日、5054~5062頁、「Determination of the ion exchange capacity of anion-selective membrane」を使用して、IECを決定することができる。IECは「当量」又はEWの逆数であり、EWは、1モルの交換性プロトンを提供するために必要なポリマーの重量である。
【0030】
本開示は、膜電極アセンブリ及び選択的透過性スルホン化ポリマーバリア層を含む、電気化学セルアセンブリに関する。スルホン化ポリマーバリア層は、膜電極アセンブリの電極触媒層の少なくとも1つに面して配置される。スルホン化ポリマーバリア層は、分離又は後続の使用のために捕獲するために、流体、分子及び/又はイオンのMEA内への又はMEA外への移動を制御することを支援する。
【0031】
選択的透過性バリア層
電気化学セルアセンブリは、下記のスルホン化ポリマーを含む、又はスルホン化ポリマーから本質的になる、又はスルホン化ポリマーからなる、バリア層を含む。バリア層は、電極触媒層がイオン交換膜との間に配置され、バリア層及び電極触媒層の間に間隙を規定するように、膜電極アセンブリの電極触媒層の少なくとも1つに面して配置される。
【0032】
実施形態では、バリア層は、少なくとも第1の成分及び第2の成分を含有する流体の供給流に対して選択的透過性であり、第1及び第2の成分の1つを、間隙及び第1の電極触媒層まで通過させる。
【0033】
実施形態では、バリア層はある特定の流体が、間隙及び第1の電極触媒層まで通過させることを可能にし、ここで、流体が構成要素、例えば第1の構成要素及び第2の構成要素に還元される/分離する。実施形態では、バリア層は、流体の第1及び第2の構成要素の少なくとも1つに対して非透過性であり、供給又は筐体への逆流を防止する。構成要素は、間隙を通って漏出することができ、又は貯蔵のために捕獲することができる。
【0034】
別の実施形態では、バリア層は、第2の電極触媒層に隣接しており、透過性の流体及び/又は構成要素を通過させる一方で、後に捕獲又は放出するために、バリア層に対して非透過性の流体及び/又は構成要素を捕捉する。
【0035】
実施形態では、バリア層は、供給流中の成分又はその構成要素に対して選択的透過性であり、1500:1超又は1000:1超又は500:1超又は250:1超又は100:1超又は20:1超又は15:1超又は10:1超又は5:1超の第1の成分と第2の成分との(又は第1の構成要素と第2の構成要素との)浸透性比を有し、これに対応して、1500:1超又は1000:1超又は500:1超又は250:1超又は100:1超又は20:1超又は15:1超又は10:1超又は5:1超の比に向けて、第1の成分のフローを第2の成分に対して(又は第1の構成要素のフローを第2の構成要素に対して)より多くする。
【0036】
実施形態では、電気化学セルアセンブリが1つのバリア層のみを含む場合、バリア層は、スルホン化ポリマー、例えばスルホン化ブロックコポリマーを含む、又はこれから本質的になる、又はこれからなる。実施形態では、電気化学セルアセンブリが1つ以上のバリア層を含む場合、バリア層の少なくとも1つは、スルホン化ポリマーを含む、又はスルホン化ポリマーから本質的になる、又はスルホン化ポリマーからなる。バリア層は、バリアの選択性及び透過性、並びに所望の分離及び/又は電気化学セルアセンブリの用途に応じて、MEAのいずれかの側に(第1の電極触媒層又は第2の電極触媒層に)配置することができる。
【0037】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリマーの好適な溶媒中溶液を調製し、次いで、スルホン化ポリマー溶液をキャストしてフィルムを形成することによって形成されたフィルムである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、スペーサ材料に直接キャストされる。
【0038】
スルホン化ポリマーフィルムは、フレームに結合させる又は組み込むことができる。スルホン化ポリマーフィルムは、接着剤、ねじ又は他の機械的手段によって、フレームの端部周辺の箇所に保持することができる。フレームは、熱的又は機械的に形成することができ、好ましくは、硬質、半硬質又は実質的に硬質である。ここで使用される場合、硬質、半硬質又は実質的に硬質なフレームは、自重のもとで形状を維持することができる材料又は構造を含むフレームである。好適なフレーム材料としては、繊維ガラス、アルミニウム、炭素、又はポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ピリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド系ポリマー性繊維、金属、合金、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース及びこれらの組み合わせをベースとする硬質ポリマーが挙げられる。
【0039】
実施形態では、バリアは、スルホン化ポリマー、及び織布又は不織布の多孔質スペーサ材料を含有する複合層を含む。多孔質スペーサ材料の例としては、リネン繊維、アクリル系繊維、ビニロン、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリアクリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ベンズアゾール繊維、ポリ(パラ-フェニレン)ベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、これらの混合物が挙げられる。実施形態では、多孔質スペーサ材料は、ポリエチレン/PET二成分不織布に熱的に結合された、微孔質ポリエチレンフィルムである。
【0040】
複合層は、スルホン化ポリマーの好適な溶媒中溶液を調製することによって、スルホン化ポリマーを多孔質スペーサ材料に塗布することによって形成することができるが、このとき、スルホン化ポリマー溶液を多孔質スペーサ材料にキャストして、キャスティングナイフを用いてフィルムの厚さを調整し、続いて乾燥させることによって形成することができる。実施形態では、スルホン化ポリマーは、多孔質スペーサ材料上でスルホン化ポリマーをスロットダイコーティング、ロール式ナイフコーティング、マイクログラビアコーティング、スプレーコーティング又はディップコーティングすることを含むが、これらに限定されない方法によって、多孔質スペーサ材料を被覆させる。複数の被覆を順次塗布することもできる。
【0041】
実施形態では、スルホン化ポリマーをキャストしてフィルムにする場合、フィルム厚さは、0.005~200μm若しくは0.005~100μm若しくは0.005~50μm若しくは0.005~25μm若しくは0.005~20μm若しくは0.01~15μm、0.01~10μm、又は0.001μm超若しくは0.005μm超、又は200μm未満若しくは100μm未満若しくは50μm未満若しくは40μm未満若しくは30μm未満若しくは25μm未満である。
【0042】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、0.005~200μm若しくは0.005~100μm若しくは0.005~50μm若しくは0.005~25μm若しくは0.005~20μm若しくは0.01~15μm、0.01~10μm、又は0.001μm超若しくは0.005μm超、又は200μm未満若しくは100μm未満若しくは50μm未満若しくは40μm未満若しくは30μm未満若しくは25μm未満の厚さで、スペーサ材料を被覆させる。
【0043】
実施形態では、多孔質スペーサ材料又はフレームは、バリア層のスルホン化ポリマーを隣接する電極触媒層から、少なくとも0.3nm、又は0.5nm超若しくは1nm超、又は150μm未満若しくは125未満若しくは115μm未満の空間だけ隔てる。
【0044】
スルホン化ポリマー
バリア層は、スルホン化ポリマーを含む、スルホン化ポリマーから本質的になる、又はスルホン化ポリマーからなる。スルホン化ポリマーは、スルホネート基、例えば-SO3を、酸形態(例えば-SO3H、スルホン酸)又は塩形態(例えば-SO3Na)のいずれかで有するポリマーを指す。「スルホン化ポリマー」という用語は、スルホネート含有ポリマー、例えばポリスチレンスルホネートも含む。
【0045】
スルホン化ポリマーは、スルホン化ブロックコポリマー、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(例えばスルホン化テトラフルオロエチレン)、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリエステル、ポリスチレンスルホネート、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン、スルホン化ポリケトン、例えばポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリフェニレンエーテル及びこれらの混合物の群から選択される。
【0046】
スルホン化ポリマーは、十分に又は選択的にスルホン化されており、スルホン化されるモノマー単位又はブロックの数を基準として、10~100mol%のスルホン酸又はスルホネート塩官能基を含有するもの(スルホン化度)として特徴付けられる。実施形態では、スルホン化ポリマーは、少なくとも10mol%、又は15mol%超若しくは20mol%超若しくは25mol%超若しくは30mol%超若しくは40mol%超若しくは50mol%超若しくは60mol%超若しくは70mol%超若しくは80mol%超若しくは90mol%超若しくは99mol%超、又は10~100若しくは20~90若しくは3~80mol%のスルホン化度を有する。スルホン化度は、NMR又はイオン交換容量(IEC)によって計算することができる。実施形態では、スルホン化ポリマーは、少なくとも0.5、又は0.75超若しくは1.0超若しくは1.5超若しくは2.0超若しくは2.5超、又は5.0未満、又は0.5~3.5、0.75~3.0若しくは0.5~2.6meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する。
【0047】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)骨格を有する、スルホン化テトラフルオロエチレン;(2)クラスタ領域においてスルホン酸基で末端をなすビニルエーテル(例えば-O-CF2-CF-O-CF2-CF2-)の側鎖である。
【0048】
実施形態では、スルホン化ポリマーはポリスチレンスルホネートであり、例としては、20,000~1,000,000ダルトン、又は25,000ダルトン超若しくは40,000ダルトン超若しくは50,000ダルトン超若しくは75,000ダルトン超若しくは100,000ダルトン超若しくは400,000ダルトン超、又は200,000ダルトン未満若しくは800,000ダルトン未満、又は最大1,500,000ダルトンの分子量を有する、ポリスチレンスルホン酸カリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム及びポリスチレンスルホン酸カリウムのコポリマー(例えば、ポリスチレンスルホネートコポリマー)が挙げられる。ポリスチレンスルホネートポリマーは、架橋又は非架橋のいずれであってもよい。実施形態では、ポリスチレンスルホネートポリマーは、非架橋であり、水溶性である。
【0049】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、芳香族ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ジクロロジフェノキシスルホン、スルホン化置換ポリスルホンポリマー及びこれらの混合物の群から選択されるポリスルホンである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリエーテルスルホンコポリマーであり、これは、ヒドロキノン2-カリウムスルホネート(HPS)などのスルホネート塩、を含む反応物質を、他のモノマー、例えばビスフェノールA及び4-フルオロフェニルスルホンとともに作製することができる。ポリマーにおけるスルホン化度は、ポリマー骨格中のHPS単位の量によって制御することができる。
【0050】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリエーテルケトンである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)をスルホン化することによって得られる、スルホン化ポリエーテルケトンケトン(SPEKK)である。ポリエーテルケトンケトンは、ジフェニルエーテル及びベンゼンジカルボン酸誘導体を使用して製造することができる。スルホン化PEKKは、例えば、基材を被覆するため又はスプレー用途における後続の使用のために、アルコール及び/又は水溶性生成物として利用することができる。
【0051】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、ペンダントスルホン酸基を含有するスルホン化ポリ(アリーレンエーテル)コポリマーである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリフェニレンオキシドと通例称される、スルホン化ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)である。実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリ(4-フェノキシベンゾイル1,4-フェニレン)(S-PPBP)である。実施形態では、スルホン化ポリマーは、ポリマー反復当たり2~6つのペンダントスルホン酸基を有し、0.5meq(SO3H)/gポリマー~5.0meq(SO3H)/gポリマー、又は少なくとも6meq(SO3H)/gポリマーを有するものとして特徴付けられるスルホン化ポリフェニレンである。
【0052】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、アミンペンダント基として、化学的に結合したスルホネート基がポリマー骨格中の窒素原子に提供されたスルホン化ポリアミド、例えば、ナイロン-6及びナイロン-6,6などの脂肪族ポリアミド、部分的に芳香族のポリアミド及びポリアリールアミド、例えばポリ(フェニルジアミドテレフタレート)である。スルホン化ポリアミドは、ポリアミドのバルク全体にわたるスルホン化によって、20~最大100%のスルホン化レベルのアミド基を有することができる。実施形態では、スルホン化は、表面における高密度のスルホネート基、例えば、表面(表面の50nm以内)における10%超、20%超、30%超若しくは40%超、又は最大100%のスルホン化アミド基に限定される。
【0053】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、1グラムのポリオレフィン当たり少なくとも0.1meq、又は2meq超若しくは3meq超若しくは5meq超、又は0.1~6meqのスルホン酸を含有する、スルホン化ポリオレフィンである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化ポリエチレンである。スルホン化ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン-1,4-メチルペンテン-1、イソブチレン及びスチレンからなる群から選択されるオレフィン又はオレフィンの混合物の重合によって得られる固体ポリオレフィンのクロロスルホン化によって形成することができる。次いで、スルホニルクロリド基を、例えば、水酸化カリウムなどの水性塩基中で、又は水ジメチルスルホキシド(DMF)混合物中で加水分解して、スルホン酸基を形成することができる。実施形態では、スルホン化ポリオレフィンは、粉末、繊維、編み糸、織布、フィルム、プリフォーム等のいずれかの形態におけるポリオレフィン対象を、三酸化硫黄(SO3)、三酸化硫黄前駆体(例えばクロロスルホン酸、HSO3Cl)、二酸化硫黄(SO3)又はこれらの混合物を含有する液体に浸漬又は通過させることによって形成される。他の実施形態では、ポリオレフィン対象を、スルホン化ガス、例えばSO2若しくはSO3、又はガス状反応前駆体、又は高温においてガスSOx(x=1~4)を発生させるスルホン化添加剤に接触させる。
【0054】
スルホン化されるポリオレフィン前駆体は、例えば、ポリ-α-オレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、又は塩素化ポリオレフィン(例えば、ポリ塩化ビニル若しくはPVC)、又はポリジエン、例えば、ポリブタジエン(例えば、ポリ-1,3-ブタジエン若しくはポリ-1,2-ブタジエン)、ポリイソプレン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン若しくはビニルノルボルネン、又はこれらの均一若しくは不均一複合体若しくはそのコポリマー(例えば、EPDMゴム、すなわち、エチレンプロピレンジエンモノマー)であってもよい。実施形態では、ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から選択される。
【0055】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、優れた化学的安定性及び高い弾性特性を有するスルホン化ポリイミド、例えば、熱可塑性及び熱硬化性の両方の形態における芳香族ポリイミドである。スルホン化ポリイミドは、モノマー単位の一方がスルホン酸、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル基を含有する、二無水物とジアミンとの縮合重合によって調製することができる。ポリマーはまた、スルホン化剤、例えば、クロロスルホン酸、三酸化硫黄及び三酸化硫黄複合体を使用して、芳香族ポリイミド前駆体の直接スルホン化によって調製することもできる。
【0056】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、任意の形態、例えば、繊維、編み糸、織布、フィルム及びシート等の形態におけるポリエステル樹脂を、無水硫酸を含有する無水硫酸含有ガスによって、直接スルホン化することによって形成されたスルホン化ポリエステルである。
【0057】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、選択的にスルホン化された、負に帯電したアニオン性ブロックコポリマーである。「選択的にスルホン化された」という用語は、スルホン酸及び中和されたスルホン酸誘導体を含むものと定義される。スルホネート基は、金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩の形態であってもよい。
【0058】
用途及び所望の特性に応じて、スルホン化ポリマーは、改質(若しくは官能化)又は他の材料と複合体化することができる。実施形態では、スルホン化ポリマーは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属を含む様々な金属対イオンのいずれかによって中和され、スルホン酸基の少なくとも10%が中和されている。実施形態では、スルホン化ポリマーは、無機又は有機のカチオン性塩、例えば、リチウム、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム及びスルホニウム等をベースとするものによって中和されている。塩は、モノマー性、オリゴマー性又はポリマー性であってもよい。実施形態では、スルホン化ポリマーは、様々な第一級、第二級又は第三級アミン含有分子によって中和され、スルホン酸又はスルホネート官能基の10%超が中和されている。
【0059】
一実施形態では、参照により本明細書に組み込む、L.Ansaloni et al.、「Solvent-templated block ionomers for base- and acid-gas separations:effect of humidity on ammonia and carbon dioxide permeation」、Adv.Mater.Interf.4(2017)に開示されている通り、スルホン化ブロックコポリマーの透過性は、金属イオン、例えば、Na+、K+及びCa2+によって複合体化することによって調整され、超高透過性の場合、例えば、NH3の透過性は5000Barrerを超える。実施形態では、参照により本明細書に組み込む、Zhongde Dai,et al.、「Incorporation of an ionic liquid into a midblock-sulfonated multiblock polymer for CO2 capture」、Journal of Membrane Science、2019年6月に開示されている通り、スルホン化ブロックコポリマーは、イオン液体を組み込むことによって改質され、その結果、スルホン化ブロックコポリマーは、他のガスと較べて高いCO2溶解性及びCO2選択性を有する。
【0060】
実施形態では、スルホン酸又はスルホネート官能基は、有効量の140~10,000の分子量を有するポリオキシアルキレンアミンとの反応によって改質される。アミン含有中和剤は、単官能性又は多官能性;モノマー性、オリゴマー性又はポリマー性であってもよい。代替的実施形態では、スルホン化ポリマーは、代替的なアニオン性官能基、例えば、ホスホン酸、又はアクリル酸若しくはアルキルアクリル酸によって改質される。
【0061】
実施形態では、アミン含有ポリマーは、スルホン化ポリマーの改質のために使用され、コアセルベートと呼ばれる材料のクラスのメンバーを形成する。実施例では、中和剤はポリマー性アミン、例えば、ベンジルアミン官能基を含有するポリマーである。例としては、参照により本明細書に組み込むUS Patent 9,849,450に記載されている、4-ジメチルアミノスチレンのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。実施形態では、中和剤は、ビニルベンジルアミン官能基を含有するポリマー、例えば、臭素化-アミノ化戦略を介して、ポリ-p-メチルスチレン含有ブロックコポリマーから、又はアミン含有スチレン系モノマーの直接アニオン性重合によって合成されるポリマーから選択される。官能化のためのアミン官能基の例としては、限定するものではないが、p-ビニルベンジルジメチルアミン(BDMA)、p-ビニルベンジルピロリジン(VBPyr)、p-ビニルベンジル-ビス(2-メトキシエチル)アミン(VBDEM)、p-ビニルベンジルピペラジン(VBMPip)及びp-ビニルベンジルジフェニルアミン(VBDPA)が挙げられる。実施形態では、対応するリン含有ポリマーも、スルホン化ポリマーの官能化のために使用することができる。
【0062】
実施形態では、アミン官能基又はホスフィン官能基を含有するモノマー又はブロックは、酸又はプロトン供与体によって中和されて、第四級アンモニウム又はホスホニウム塩を作製することができる。他の実施形態では、第三級アミンを含有するスルホン化ポリマーは、ハロゲン化アルキルと反応して、官能基、例えば第四級化塩を形成する。一部の実施形態では、スルホン化ポリマーは、カチオン性官能基及びアニオン性官能基の両方を含有して、いわゆる双性イオン性ポリマーを形成することができる。
【0063】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、選択的にスルホン化された、負に帯電したアニオン性ブロックコポリマーであり、ここで、「選択的にスルホン化された」ものは、スルホン酸及び中和されたスルホン酸誘導体を含む。スルホネート基は、金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩の形態であってもよい。実施形態では、スルホン化ポリマーは、A-B-A、(A-B)n(A)、(A-B-A)n、(A-B-A)nX、(A-B)nX、A-D-B、A-B-D、A-D-B-D-A、A-B-D-B-A、(A-D-B)nA、(A-B-D)nA、(A-D-B)nX、(A-B-D)nX又はこれらの混合物(式中、実施形態ではnは0~30又は2~20の整数であり、X、はカップリング剤残基である。)の一般構成を有するスチレン系ブロックコポリマー前駆体のスルホン化によって得られる、スルホン化スチレン系ブロックコポリマーである。各A及びDブロックは、スルホン化に耐性のあるポリマーブロックである。各Bブロックは、スルホン化を受けやすい。複数のA、B又はDブロックを有する構成の場合、複数のAブロック、Bブロック又はDブロックは、同一であっても異なってもよい。
【0064】
実施形態では、Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3~18個の炭素原子のアルファオレフィン、(iv)1,3-シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35molパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル系エステル、(vii)メタクリル系エステル及び(viii)これらの混合物から選択される1つ以上のセグメントである。Aセグメントが1,3-シクロジエン又は共役ジエンのポリマーである場合、ブロックコポリマーの重合に続いて、ブロックコポリマーのスルホン化の前に、セグメントが水素化される。Aブロックはまた、最大15mol%のビニル芳香族モノマー、例えばBブロック中に存在するものを含有してもよい。
【0065】
実施形態では、Aブロックは、パラ-メチルスチレン、パラ-エチルスチレン、パラ-n-プロピルスチレン、パラ-イソ-プロピルスチレン、パラ-n-ブチルスチレン、パラ-sec-ブチルスチレン、パラ-イソ-ブチルスチレン、パラ-t-ブチルスチレン、パラ-デシルスチレンの異性体、パラ-ドデシルスチレンの異性体及び上記モノマーの混合物から選択される、パラ置換スチレンモノマーから選択される。パラ置換スチレンモノマーの例として、パラ-t-ブチルスチレン及びパラ-メチルスチレンが挙げられ、パラ-t-ブチルスチレンが最も好ましい。モノマーは、特定の供給源に応じて、モノマーの混合物であってもよい。実施形態では、パラ置換スチレンモノマーの総合的な純度は、少なくとも90%又は95%超又は98%超である。
【0066】
実施形態では、ブロックBは、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ-メチルスチレンモノマー、1,1-ジフェニルエチレンモノマー、1,2-ジフェニルエチレンモノマー及びこれらの混合物から選択される、1種以上の重合ビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。述べられたモノマー及びポリマーに加えて、実施形態では、Bブロックはまた、このようなモノマーと、20~80molパーセントのビニル含有量を有する1,3-ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択される共役ジエンとの水素化コポリマーを含む。水素化ジエンとのこれらのコポリマーは、ランダムコポリマー、テーパー状コポリマー、ブロックコポリマー又は制御分散コポリマーのいずれかとすることができる。ブロックBは、選択的にスルホン化されており、モノマー単位の数を基準として、10~100mol%のスルホン酸又はスルホン酸塩官能基を含有する。実施形態では、Bブロックにおけるスルホン化度は、10~95mol%若しくは15~80mol%若しくは20~70mol%若しくは25~60mol%、又は20mol%超若しくは50mol%超の範囲内である。
【0067】
Dブロックは、イソプレン、1,3-ブタジエン及びこれらの混合物から選択される共役ジエンの水素化ポリマー又はコポリマーを含む。他の例では、Dブロックは、1000超又は2000超又は4000超又は6000超の数平均分子量を有する、アクリレート、シリコーンポリマー又はイソブチレンのポリマーのいずれかである。
【0068】
カップリング剤Xは、ポリアルケニルカップリング剤、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド、ケイ素化合物、一価アルコールとカルボン酸とのエステル(例えば、安息香酸メチル及びアジピン酸ジメチル)並びにエポキシ化油を含む、当技術分野において公知のカップリング剤から選択される。
【0069】
スルホン化ポリマーの特性は多様であり得るが、スルホン化の量、スルホン酸基のスルホン酸塩への中和度を変動させること、及びスルホン化基の位置を制御することによって制御することができる。実施形態では、スルホン化ポリマーは、参照により組み込むUS Patent No.US8084546の通り、所望の水分散特性又は機械的特性、例えば、コポリマーの内側ブロック若しくは中央ブロックに付着した、又は外側ブロックにおけるスルホン酸官能基を有することのために、選択的にスルホン化されている。外側(硬質)ブロックがスルホン化されている場合、水に曝露すると、硬質ドメインの水和によって、これらのドメインが可塑化及び軟化し、分散又は溶解性が生じることがある。
【0070】
実施形態におけるスルホン化コポリマーは、参照により本明細書に組み込む、Patent Publication Nos.US9861941、US8263713、US8445631、US8012539、US8377514、US8377515、US7737224、US8383735、US7919565、US8003733、US8058353、US7981970、US8329827、US8084546、US8383735、US10202494及びUS10228168に開示されている通りである。
【0071】
実施形態では、スルホン化ブロックコポリマーは、一般構成A-B-(B-A)1~5(式中、各Aは、非エラストマー性スルホン化モノビニルアレーンポリマーブロックであり、各Bは、実質的に飽和のエラストマー性アルファオレフィンポリマーブロックである。)を有し、前記ブロックコポリマーは、全ポリマー中に少なくとも1重量%の硫黄、及び各モノビニルアレーン単位について、最大1つのスルホン化構成要素を提供するのに十分な程度にスルホン化されている。スルホン化ポリマーは、酸、アルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩の形態で使用することができる。
【0072】
実施形態では、スルホン化ブロックコポリマーは、ポリスチレン及びブタジエン又はイソプレンのスルホン化マルチブロック(2つ以上のブロックの)コポリマーであり、ブタジエン又はイソプレンセグメント(単数又は複数)においてスルホン化されている。実施形態では、スルホン化ブロックコポリマーは、骨格中にC=Cサイトを有する、スルホン化t-ブチルスチレン/イソプレンランダムコポリマーである。実施形態では、スルホン化ポリマーは、参照により組み込むUS 6,110,616に開示されているスルホン化SBR(スチレンブタジエンゴム)である。実施形態では、スルホン化ポリマーは、参照により組み込むUS 4,505,827に開示されている水分散性BABトリブロックであり、Bは、アルキル又は(スルホン化されると親水性になる)ポリ(t-ブチルスチレン)などの疎水性ブロックであり、Aは、スルホン化ポリ(ビニルトルエン)などの親水性ブロックである。実施形態では、スルホン化ブロックコポリマーは、少なくとも1つのアルケニルアレーンポリマーブロックA及び少なくとも1つの実質的に完全に水素化された共役ジエンポリマーブロックBを有し、スルホン性官能性ブロックの実質的にすべてが、アルケニルアレーンポリマーブロックAにグラフトされている、官能化され、選択的に水素化されたブロックコポリマーである(参照により組み込むUS5516831に開示されている)。実施形態では、スルホン化ポリマーは、参照により組み込むUS4,492,785に開示されている、水溶性ポリマー、t-ブチルスチレン/スチレンのスルホン化ジブロックポリマー又はt-ブチルスチレン-スチレン-t-ブチルスチレンのスルホン化トリブロックポリマーである。実施形態では、スルホン化ブロックコポリマーは、部分的に水素化されたブロックコポリマーである。
【0073】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、中間ブロックスルホン化トリブロックコポリマー又は中間ブロックスルホン化ペンタブロックコポリマー、すなわち例えば、ポリ(p-tert-ブチルスチレン-b-スチレンスルホネート-b-p-tert-ブチルスチレン)又はポリ[tert-ブチルスチレン-b-(エチレン-alt-プロピレン)-b-(スチレンスルホネート)-b-(エチレン-alt-プロピレン)-b-tert-ブチルスチレン]である。
【0074】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、モノマー単位の数を基準として40mol%超のスルホン酸又はスルホン酸塩官能基を含有する、スルホン化ブロックコポリマー、例えば、中間ブロックスルホン化ペンタブロックコポリマーである。
【0075】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、スルホン化のために利用可能な、又はスルホン化を受けやすいポリマー中のモノマー単位、例えばスチレンモノマーの数を基準として、15mol%超又は25mol%超又は30mol%超又は40mol%超又は60mol%超のスルホン酸又はスルホン酸塩官能基を含有する。
【0076】
バリア層又はプロトン電極膜として使用するためのスルホン化ポリマーは、優れた水蒸気透過率(MVTR)の特徴及び優れたイオン交換容量(IEC)を有する選択的透過性膜である。実施形態では、スルホン化ポリマーは、1日当たりのMVTRが100g/m2超又は500g/m2超又は1,000g/m2超というMVTRを有するものとして特徴付けられる。ASTM E-96B及びASTM F1249は、MVTRを測定するための標準的方法を指定しており、一般的な試験条件は、50℃の温度及び10%の相対湿度である。実施形態では、スルホン化ポリマーは、1日当たり5g/m2未満の通気性を有するものとして特徴付けられる。
【0077】
実施形態では、参照により本明細書に組み込む、2023年1月31日の出願日を有するU.S.Patent Application No.18/161,977に開示されている通り、湿潤状態特性を改善するために、スルホン化ポリマーは架橋されており、又はスルホン化ポリマー組成物は非スルホン化ポリマーをさらに含む。
【0078】
実施形態では、スルホン化ポリマーは、好ましいイオン交換容量及びプロトン伝導性、並びに可撓性及び材料強度の両方を提供するガラス転移温度、並びに水和した場合でさえ、良好な安定性及び膨潤特性を有するものとして特徴付けられる。
【0079】
膜電極アセンブリ(「MEA」):
電気化学セルアセンブリは、MEAをさらに含む。MEAは、イオン交換膜、並びにイオン交換膜の反対側に配置された一対の電極(アノード及びカソード)として、一対の電極触媒層を含む。電極触媒層の一方はアノード(第1の電極層)として作用し、他方の電極触媒層はカソード(第2の電極層)として作用する。実施形態では、アノード及びカソードは、触媒層によって被覆されている(したがって、「電極触媒」という用語である)。実施形態では、アノードが触媒によって被覆されており、ここで、金属又は合金、例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、スズ、イリジウム又はロジウムがカーボンブラックに支持されている触媒を含むが、これらに限定するものではない。実施形態では、カソードが触媒によって被覆されており、白金又はチタン等が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ又はカーボンナノホーン等に支持されている触媒を含むが、これらに限定するものではない。実施形態では、アノード、カソード又は両方が、触媒及びプロトン電極膜、例えばスルホン化ポリマーによって被覆されている。
【0080】
実施形態では、イオン交換膜は、カチオンに対して伝導性である一方で、アニオンに対して非伝導性である、プロトン交換膜(「PEM」)である。実施形態では、イオン交換膜は、アニオンに対して伝導性である一方で、カチオンに対して非伝導性である、アニオン交換膜(「AEM」)である。実施形態では、イオン交換膜は、第1の流体又はイオンに対して透過性であり、第2の流体又はイオンに対して非透過性である。
【0081】
実施形態では、MEAは、イオン交換膜及び電極触媒層の間に、GDLをさらに含む。GDLは、実施形態では、電極触媒層としても(又はガス拡散電極として)機能し、ここで、GDLは、イオン伝導層に面する側において、触媒層によって被覆されている。実施形態では、GDLは、PEM材料、例えばスルホン化ポリマーによってさらに被覆されている。
【0082】
実施形態では、電気化学セルアセンブリは、MEAが受動的である、すなわち、電圧印加システムを必要としないように構成される。
【0083】
電池、交流等の電力供給源(「電圧印加ユニット」)の使用によって、電圧をMEAに印加することもできる。実施形態では、透過物と反対側である供給物中に低濃度の透過性流体(バリア層の反対側における流体)がある場合に、電圧がMEAに印加され、例えば、アセンブリを通電する必要はなく、流動が受動的に起こり得る。例として、MEAが、筐体から水分濃度を低減するように設計される場合、筐体中の水分含有率が、筐体の外側の水分濃度よりも低いときに、MEAが通電される。
【0084】
実施形態では、電気化学セルは1つ以上のMEAを含み、MEAは直列に接続され、1つのMEAからの出口が第2のMEAに供給される。このような構成では、先行するMEAの出口における構成要素は、後続のMEAにおけるさらなる分離/処理のために、さらに分解すること又は別の供給流と組み合わせることができる。後続のMEAには、第1のバリア層と同一である又は異なる材料から作製されたバリア層を提供することができ、選択的透過性は、処理される供給流に依存する。
【0085】
イオン交換膜としてプロトン交換膜を有するMEA:
実施形態では、MEAは、第1の電極触媒層(アノード)及び第2の電極触媒層(カソード)の間に、イオン交換膜としてプロトン交換膜(「PEM」)を有する。バリア層は、第1の電極触媒層又は第2の電極触媒層に隣接することができる。
【0086】
イオン交換部材としてPEMを含むMEAでは、流体は、アノードにおいて分離又は分解され、例えば、水は水素イオン及び酸素ガスなどの構成要素に変換される。正に帯電したイオン、例えば水素イオンは、イオン交換膜を通ってカソードに移動し、水素イオンH2又はH+に変換され、これは、空気中に漏出する、又は捕捉して後の使用のために貯蔵することができる。バリア層が第1の電極触媒層(アノード)に隣接する実施形態では、アノードにおいて発生した酸素は、バリア層及びアノードの間の間隙に蓄積する。酸素は、バリア層が酸素に対して非透過性であるため、空気中に放出することができるか、後の使用のために捕捉して貯蔵することができるかのいずれかである。バリア層が第2の電極触媒層(カソード)に隣接する実施形態では、水素イオンがカソード及び第2のバリア層の間の間隙に蓄積して、カチオンを捕獲又は放出することが可能になる。
【0087】
実施形態では、筐体から除去する流体が湿気/水分である場合、流入管を通じて筐体から受け入れられた水分は、バリア層を通過して第1の電気化学セル(アノード)に達して、水素イオン及び酸素ガスに変換される。バリア層は、酸素ガスに対して非透過性であるため、酸素ガスの筐体に戻る通行を防止する。アノードにおいて発生した酸素ガスは、空気中に放出され、又はMEA及びバリア層の間の空間/間隙において収集され、後の使用のために迂回させる。さらに、アノードにおいて発生した水素イオンは、アノード及びカソードの間の電場の影響下、イオン交換膜を通ってカソードに移動する。カソードにおいて、水素イオンは水素ガスに変換される。発生した水素ガスは、流出管を通じて筐体の内側に移動する。
【0088】
PEM材料:
PEMは、ここで記載されるスルホン化ポリマーを含んでも、スルホン化ポリマーから本質的になっても、スルホン化ポリマーからなってもよい。実施形態では、PEMは、ペルフルオロスルホン酸系フッ素イオン交換樹脂、より詳細には、炭化水素系イオン交換膜のC-H結合をフッ素等によって置換することによって得られるペルフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFSポリマー)を含む。電気陰性度の高いフッ素原子を含むことによって、非常に高い化学的安定性、スルホン性基の高い乖離度及び高いイオン伝導度が可能になる。
【0089】
イオン交換膜としてアニオン交換膜を有するMEA:
実施形態では、MEAは、第1の電極触媒層(アノード)及び第2の電極触媒層(カソード)の間に、イオン交換膜としてアニオン交換膜(「AEM」)を有する。バリア層は、第1の電極層又は第2の電極層に隣接することができる。
【0090】
イオン交換部材としてAEMを含むMEAでは、流体、例えば水は、イオン、例えばヒドロキシルイオン及び水素に還元される。負に帯電したイオン、例えばヒドロキシルイオンは、イオン交換膜を通じて第2の電極触媒層(カソード)から第1の電極触媒層(アノード)に移動し、ここで、イオンを後の使用のために捕獲及び貯蔵すること、放出すること又は他のイオンと組み合わせた後、第2の流体、例えば水に変換することができる。バリア層が第1の電極触媒層(アノード)に隣接する実施形態では、負に帯電したイオンは、アノード及びバリア層の間の間隙に蓄積して、アニオンを捕獲又は放出することが可能になる。バリア層が第2の電極触媒層(カソード)に隣接する実施形態では、正に帯電したイオン、例えば水素は、バリア層及びカソードの間の間隙から収集し、空気中に放出又は後続の使用のために捕獲することができる。
【0091】
実施形態では、筐体から除去される流体が湿気/水分である場合、バリア層は筐体の内側の水素含有量が増加せずに維持する水素ガスに対して非透過性である。バリア層に隣接して配置された第2の電極触媒層は、MEAのカソードを規定し、第1の電極触媒はアノードとして規定される。第2の電極触媒層において筐体から受け入れられた水は、ヒドロキシルイオン及び水素ガスに変換される。ヒドロキシルイオンはイオン交換膜を通って第1の電極触媒層に移動し、水及び酸素ガス、又は過酸化水素又は水酸化ナトリウム、又は他の酸化若しくは還元された流体に変換される。第2の電極触媒層(カソード)において発生した水素ガスは、カソード及びバリア層の間の間隙の内側に蓄積し、空気中に放出させることができるか、後の使用のために貯蔵することができるかのいずれかである。
【0092】
AEM材料:
AEMは、例えば、第四級アンモニウムポリスルホン(QAPA)及びベンジルトリメチルアンモニウムカチオン等を電解質として含むことによって、アニオン伝導性を有してもよい。実施形態では、AEM電解質は、炭化水素系樹脂、例えばスチレンブロックコポリマー、例えば、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ran-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)及び官能化ブロックコポリマーを含む。実施形態では、AEMはフッ素系樹脂を含む。
【0093】
ハイブリッドMEA:
膜電極アセンブリは、PEM及びAEMを含むことによって、ハイブリッドタイプMEAとして実施されてもよい。実施形態では、AEMは、PEMと接触してもよく、互いに部分的に又は完全に重なっていてもよい。実施形態では、PEM及びAEMは、エポキシ系接着剤などの接着剤を含む。
【0094】
電気化学セルアセンブリを使用するための方法
実施形態では、電気化学セルアセンブリは、バリア層の外側表面が筐体と流体連通して配置され(筐体に接続されたチューブ又は筐体の壁における開口を通じて)、間隙が、筐体の外側で、バリア層及びMEAの第1の電極触媒層の間に配置されるように、筐体の外側に位置する。
【0095】
実施形態では、電気化学セルアセンブリは、吸入管及び流出管を通じて、筐体と流体連通されている。吸入管は、筐体から電気化学セルに延びており、筐体の内側からバリア層の外側表面への流体のフローを可能にし、流出管は、MEAから空気中への構成要素のフロー、リザーバへの収集又は筐体への戻りを促進する。実施形態では、選択された流体又は構成要素の濾過/抽出を促進するために、複数のバリア層を使用してもよい。流出管はカソードを筐体、空気又は収集のための追加のリザーバに接続する。
【0096】
実施形態では、電気化学セルアセンブリは、筐体から電気化学セルアセンブリへの流体のフロー、及び電気化学セルアセンブリから筐体、リザーバ又は空気中への構成要素のフローを可能にするために、ポンプ又はファンを含んでもよい。
【0097】
用途:
MEAは、給湿又は除湿を含む加水分解、電気化学的変換及び合成、CO2捕獲、ガススイートニング、電気分解装置、燃料電池、例えば、水素、酸素、プロトン-電子、メタノール等に使用することができる。MEAを使用して、流体、分子及び/又はイオンを分離することができ、実施形態では、後の使用のための流体、分子及び/又はイオンの捕獲を可能にすることができる。実施形態では、MEAを使用して、筐体の内側の酸素含有量を増加させることなく、流体、例えばH2Oを筐体から除去することができる。実施形態では、酸素制御のためにバリア層を使用すること、例えば、給湿によって酸素を減少させること、又は水を加水分解し、プロセスにおける酸素を捕獲することによって酸素を増加させることができる。
【0098】
実施形態では、CO2の選択的除去及び後続の捕獲のために、バリア層は、ポリ[tert-ブチルスチレン-b-(エチレン-altプロピレン)-b-(スチレン-co-スチレンスルホネート)-b-(エチレン-alt-プロピレン)-b-tert-ブチルスチレンという式を有する、Kraton Corporation製のスルホン化ペンタブロックポリマーを含む。スルホン化ペンタブロックポリマーは、環境汚染を低減するために、選択的除去のためのシステム中でのバリア層の使用及び後続の混合ガス流からのCO2の捕獲に加えて、5000Barrerを超える超高NH3透過性、約1860の高NH3/N2透過性比、約100Barrerの中程度のCO2透過性及び約56のCO2/N2透過性比のために改質することができる。
【0099】
実施形態では、MEAは、MEAがイオン交換膜としてPEMを含む場合、水の水素への還元及び得られた水酸化物のナトリウムとの会合を通じて、塩化ナトリウムの水酸化ナトリウムへの反応に使用することができる。このような実施形態では、バリア層の機能は、バリア層が水酸化ナトリウムに対して非透過性であるため、(MEAのアノード側における)水素ガスの捕獲を可能にすることである。
【0100】
イオン交換膜がAEMである場合の用途についての実施形態では、MEAは第2のMEAと対となる。この構成によって、水酸化物イオンの酸化反応による過酸化水素の発生及び捕獲が可能になる。
【実施例0101】
以下の説明のための実施例は、非限定的であることが意図される。
【0102】
実施例において使用した成分としては、次のものが挙げられる。
【0103】
スルホン化ポリマーSPBC:表1における特性を有する、構造ポリ[tert-ブチルスチレン-b-(エチレン-alt-プロピレン)-b-(スチレン-co-スチレン-スルホネート)-b-(エチレン-alt-プロピレン)-tert-ブチルスチレン](tBS-EP-sPS-EP-tBS)のスルホン化ペンタブロックコポリマーが、実施例のいくつかのために使用される。
【0104】
【0105】
実施例1
スルホン化ポリマーのフィルムサンプルを、トルエン及び1-プロパノールの1:1混合物からキャストした。スルホン化ポリマーフィルムサンプルを、MOCONガス透過速度試験に供し、単一のガスの透過性を使用して、フィルムサンプルを通したN2、CO、O2、H2、CO2及びH2Oの透過速度を測定した。
【0106】
【0107】
実施例2
スルホン化ポリマーフィルムサンプルを、不織布スペーサとともに、選択的透過性バリア層としてMEA(16cm2電気分解装置)のアノード側に加えた。MEAは、再構築可能な燃料電池キット(H-TEC Education、製品コード1071042)の内側に組み立てた。MEAを、容器(2.3L筐体)の側面上の開口によって固定し、循環空気ポンプ(Yanmis 12V、5L/分ポンプキット、コード40151500)を使用して、空気を筐体から、選択的透過性スルホン化ポリマーバリア層の表面を越えてMEAを通過させ、空気を筐体に戻した。このプロセスにおいて、筐体の空気がスルホン化ポリマーバリア層を透過し、水分をバリア層及び電極触媒層の間に配置する。加水分解によって水が水素及び酸素に解離するにつれて、水素はMEAを通過する一方で、酸素はバリア層スペーサ内に捕捉されたままであり、水素フロー方向に対して垂直に抜ける。このアセンブリの目的は、プロセス中の容器の酸素濃度を上昇させることなく、容器を除湿することであった。選択的透過性バリア層を有しないMEAも、同様に試験した。結果は、それぞれ表3及び表4の通りである。
【0108】
【0109】
【0110】
膜電極アセンブリの様々な実施形態を示す図を参照する。
【0111】
図1は、本開示の実施形態による電気化学セルアセンブリ100を図示している。電気化学セルアセンブリ100は、電力供給源、例えば電池に接続された一対の電極106、108を規定する一対の電極触媒層102、104を含有し、電極触媒層102、104の対の間にイオン交換膜110が配置された、膜電極アセンブリ(MEA)101、及びMEA101の外層114として配置されたバリア層112を含む。示されている通り、電極触媒層の対、例えば、第1の電極触媒層102及び第2の電極触媒層104は、互いに離間して対面して配置されており、それぞれ、MEA101の第1の電極層106及び第2の電極層108を含む。図示された
図1の実施形態では、第1の電極層106及び第2の電極層108の間に好適な電位を印加することによって、第1の電極層106がMEA100のアノード120を規定する一方で、第2の電極層108がMEA101のカソード122を規定する。さらに、第1の電極触媒層102は、任意選択的に、イオン交換膜110及び第1の電極層106の間に配置された第1のGDL124を含んでもよく、第2の電極触媒層104は、任意選択的に、イオン交換膜110及び第2の電極層108の間に配置された第2のGDL126を含んでもよい。GDL124、126及び電極層106、108は別々の層として示され、企図されているが、GDL124、126がそれぞれの電極層106、108と一体化されていてもよいことが理解され得る。
【0112】
図1からわかるように、イオン交換膜110の第1の外表面は、第1のGDL124の内表面(すなわち、第1の電極触媒層102の内表面)と接触しており、イオン交換膜110の第2の外表面は、第2のGDL126の内表面(すなわち、第2の電極触媒層104の内表面)と接触している。図示された実施形態では、イオン交換膜110は、陽イオン、例えば水素イオンのフローを促進する一方で、陰イオン、例えば酸素のフローを阻止するPEM140である。水素イオンは、アノード120及びカソード122の間に発生した電場の影響下、アノード120からカソード122へ流れる。アノード120において、水が水素イオン及び酸素ガスに変換され、カソードにおいて、アノードから受け取られた水素イオンが水素ガスに変換される。
【0113】
追加的に、電気化学セルアセンブリ100のバリア層112(すなわち第1のバリア層)は、MEA101の第1の電極触媒層102の外表面142から離れて配置される。したがって、間隙144は、バリア層112及び第1の電極触媒層102(すなわちアノード120)の外表面142の間に規定される。実施形態では、バリア層112は、電気的に非伝導性であってもよい、スペーサ又はフレーム上に支持されている。一部の実施形態では、バリア層112は、不織布上に支持されている。スペーサは、第1の電極触媒層102の外表面142と接触して、バリア層112及びアノード120の間の間隙144を維持していてもよい。図示された実施形態では、バリア層112はスルホン化ポリマー150であり、第1の流体、例えば水に対して透過性であり、第2の流体、例えば酸素ガスに対して相対的に非透過性である。したがって、電気化学セルアセンブリ100を使用して、分離又は後続の使用のために捕獲するために、流体、分子及び/又はイオンのMEA101内への又はMEA101外への移動を制御することができる。実施形態では、電気化学セルアセンブリ100を使用して、当初の空間若しくは筐体の内側の対応するイオン含有量、例えば酸素ガスを増加させることなく、筐体の内側の流体、例えば水分の量を制御すること、及び/又は後に説明する通り、水分から対応するイオン、例えば酸素を捕獲することができる。実施形態では、筐体からバリア層112を通ってアノード120に流れる水分として、アノード120において、水が水素イオン及び酸素ガスに変換される。実施形態では、発生した酸素ガスは間隙144の内側に留まり、酸素ガスは空気中に排出されるか、後の使用のために収集及び貯蔵されるかのいずれかである一方で、水素イオンはPEM140を通ってカソード122に移動する。
【0114】
図2を参照すると、本開示の代替的な実施形態に従って、バリア層及びMEA101の外側表面の間の間隙において、流体及びその構成要素の両方を捕獲するのに好適な電気化学セルアセンブリ200が示されている。電気化学セルアセンブリ200は、電気化学セルアセンブリ100が外側層204として第2のバリア層202を含み、これが、MEA101のカソード122(すなわち第2の電極触媒層104)に面して配置され、間に第2の間隙206を規定するカソード122から離れていることを除いて、電気化学セルアセンブリ100と同様である。第2のバリア層202は、第1の流体に対して透過性であり、第2の流体に対して相対的に非透過性である、スルホン化ポリマー又は別の選択的透過性バリア層210とすることができる。第1のバリア層112と同様に、第2のバリア層202は、スペーサ又はフレーム上に支持されていてもよい。第2のバリア層202の存在に起因して、カソード122において発生した流体及び/又はその構成要素は、第2の電極触媒層104及び第2のバリア層202の間の第2の間隙206の内側に移動/蓄積する。第2の間隙206の内側に存在する流体及び/又はその構成要素は、後の使用のために貯蔵されてもよい。
【0115】
図3を参照すると、なおも別の実施形態による電気化学セルアセンブリ300が示されている。電気化学セルアセンブリ300は、MEA101のイオン交換膜110が、PEMの代わりにAEM302であることを除いて、電気化学セルアセンブリ100と同様である。AEM302は、陰イオン、例えばヒドロキシルイオンに対して透過性であり、陽イオン、例えば水素ガス/イオンに対して非透過性である。このような場合、カソード122に接触した第1の流体、例えば水は、好適な電位のもとで、対応する構成要素、例えば、ヒドロキシルイオン及び水素ガスに変換される。負に帯電したイオン、例えばヒドロキシルイオンは、アノード120及びカソード122の間に発生した電場の影響下、AEM302を通ってアノード120に移動する。負に帯電したイオンは、別の流体、例えば水に変換することができ、これはバリア層112を通って空気中に移動すること、筐体に移動して筐体の内側の含有量を増加させること、又は後続の使用のためにこれを捕獲することができる。アノードにおいて発生した他のイオン又はガスは、バリア層112がPEM150である場合、後続の捕獲又は後の使用のための貯蔵のために、間隙144に蓄積させることができる。
【0116】
図4を参照すると、実施形態による電気化学セルアセンブリ400が示されている。電気化学セルアセンブリ400は、MEA101が外側層404として第2のバリア層402を含み、これが、カソード122(すなわち第2の電極触媒層104)に面して配置され、間に第2の間隙406を規定するカソード122から離れていることを除いて、電気化学セルアセンブリ300と同様である。第2のバリア層402は、流体、例えば水に対して透過性であり、その構成要素、例えば水素ガス又は第2の流体に対して相対的に非透過性である、スルホン化ポリマー又は別の選択的透過性バリア層410とすることができる。第1のバリア層110と同様に、第2のバリア層402は、スペーサ又はフレーム上に支持されていてもよい。第2のバリア層402の存在に起因して、カソード122において発生した第2の流体、例えば水素ガスは、第2の電極触媒層104及び第2のバリア層402の間の第2の間隙406の内側に移動/蓄積する。第2の間隙406の内側に存在する第2の流体、例えば水素ガスは、後の使用のために貯蔵されてもよい。
【0117】
図5を参照すると、電気化学セルアセンブリ100を有する筐体アセンブリ600が開示されている。示される通り、筐体アセンブリ600は、貯蔵目的のために少なくとも1種の物品を受け入れるチャンバ604、及びチャンバ604へのアクセスを提供する開口608を規定する、筐体602を含む。さらに、電気化学セルアセンブリ100は、バリア層112(すなわちPEM150)が開口608を覆うように配置され、その結果、バリア層112の第1の表面610が、筐体602のチャンバ604の内部に面して配置され、第1の表面610の反対側に配置された第2の表面が、筐体602の外部に面して配置されるように、筐体602に装着され/取り付けられている。したがって、筐体602の内側に存在する流体は、バリア層112を通って、筐体602の外側にのみ移動することができる。電気化学セルアセンブリ100は、間隙144が筐体602の外側に配置されるように、筐体602に取り付けられ又は装着されている。したがって、MEA101のアノード120において発生した陰イオン(構成要素)は、バリア層112が前記陰イオンに対して非透過性である場合、間隙144に留まる。間隙144の内側に存在する陰イオン/ガス、例えば酸素ガスは、MEA101の端部に沿って規定された1つ以上の開口を通って空気中に排出され得るか、使用のために捕獲することができるかのいずれかである。この方法では、電気化学セルアセンブリ100によって、筐体602の内側の構成要素、例えば酸素の含有量を増加させることなく、筐体602の内側の流体、例えば水分を減少させることができる。
【0118】
図6を参照すると、電気化学セルアセンブリ100を有する筐体アセンブリ700が開示されている。筐体アセンブリ700は、1種以上の成分/物品を貯蔵するためのチャンバ704を規定する筐体702を含み、電気化学セルアセンブリ100は、流入管710及び流出管712を通じて、筐体702と流体連通されている。さらに、筐体アセンブリ700は、チャンバ704からMEA100への流体、例えば水分を含有する空気のフロー(すなわち流入空気)、及び電気化学セルアセンブリ100を出て流体管712を通じてチャンバ704へ向かう空気のフロー(すなわち流出空気)を可能にするために、吸入管710の出口に配置されたファン714を含んでもよい。ファン714は、流入管710の出口に配置されたように示されているが、ファン714が流入管710に沿った任意のところに配置されることが理解され得る。また、ファン714は、流出管712の入り口、流出管712の出口又は流出管712の全長に沿った任意の他の位置に設置されてもよい。流体、例えば水分は、チャンバ704から流入管710を通って流れ、バリア層112が流体、例えば水に対して透過性である場合、バリア層112(すなわちスルホン化ポリマー150)を通って電気化学セルアセンブリの間隙144に入る。バリア層112を通るとすぐに、流体、例えば水は、MEA101のアノード120に接触し、ここで、流体はその構成要素、例えば、水素イオン及び酸素ガスに変換される。バリア層112及びイオン交換膜110(すなわちPEM140)が両方とも、負に帯電した構成要素、例えば酸素ガスに対して相対的に非透過性である場合、負に帯電した構成要素、例えば酸素ガスは間隙144の内側に留まるのに対して、正に帯電した構成要素、例えば水素イオンは、MEA101のアノード120及びカソード122の間に印加された電場の影響下、PEM150を通過してカソード122に到達する。カソード122において、正に帯電した構成要素、例えば水素ガスが生じ、これは流出管712を通ってチャンバ704に移動する。電気化学セルアセンブリ100の間隙144の内側に存在する負に帯電した構成要素、例えば酸素ガスは、電気化学セルアセンブリ100の端部に沿って規定されている、電気化学セルアセンブリ100の1つ以上の排出開口を通じて空気中に排出される。この方法では、電気化学セルアセンブリ100によって、筐体702の内側の構成要素、例えば酸素の含有量を増加させることなく、筐体702の内側の流体、例えば水分の含有量を減少させることができる。
【0119】
図7を参照すると、電気化学セルアセンブリ300を有する筐体アセンブリ800が開示されている。電気化学セルアセンブリ300は、AEM302としてイオン交換膜110を含む。示される通り、筐体アセンブリ800は、貯蔵目的のために少なくとも1種の物品を受け入れるチャンバ804、及びチャンバ804へのアクセスを提供する開口808を規定する、筐体802を含む。さらに、電気化学セルアセンブリ300は、スルホン化ポリマー150であるバリア層112が開口808を覆うように配置され、その結果、バリア層112の第1の表面610が、筐体802のチャンバ804に面して配置されるように、筐体802に装着され/取り付けられている。電気化学セルアセンブリ300は、間隙144が筐体802の外側に配置されるように、筐体802に取り付けられ又は装着されている。実施形態では、アノード120において発生した負の構成要素、例えばヒドロキシルイオンは、バリア層112が負の構成要素、例えば酸素ガスに対して非透過性である場合、間隙144の内側に留まる一方で、アノードにおいて発生した流体、例えば水は、バリア層112及び開口808を通ってチャンバ804に入る。間隙144の内側に存在する負の構成要素は、電気化学セルアセンブリ300の端部に沿って規定された1つ以上の開口を通って空気中に排出され得るか、使用のために捕獲することができるかのいずれかである。実施形態では、電気化学セルアセンブリ300によって、筐体802の内側の酸素含有量を増加させることなく、筐体802の内側の水分含有量(すなわち湿度)を増加させることができる。
【0120】
実施形態では、筐体600又は700は、1種以上の物品を安全に貯蔵するための貯蔵箱であってもよい。例えば、筐体600又は700は、食品を貯蔵することに適合させた食品貯蔵箱であってもよい。MEA101を含有する電気化学セルアセンブリ100、200、300又は400を使用して、他の化合物、例えば二酸化炭素、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸等を電気化学的に酸化することができ、化合物、例えば、アンモニア、メタン等を電気化学的に合成することができる。実施形態では、MEA101を含有する電気化学セルアセンブリ100、200又は400は、酸素含有量を増加させることなく水分を除去し、筐体の内側に貯蔵されている食品の保存期間の増加を促進する。一部の実施形態では、筐体600及び700は、アンティーク物品の保存を促進する、電気化学セルアセンブリ100を有するアンティーク物品容器であってもよい。この方法では、電気化学セルアセンブリ100、200、300又は400は、湿度を制御するため、筐体の内側の酸素含有量を制御するため、筐体の内側の水素含有量を制御するため、酸素ガスを捕獲するため及び水素ガスを捕獲するため等に利用することができる。電気化学セルアセンブリ100、200又は300は、湿度及び酸素含有量の制御、化学処理、楽器、タバコ/大麻貯蔵のため、又は冷蔵庫の抽斗として使用することができる。
【0121】
ここで使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、用語に続く特定された要素又はステップを含むことを意味するが、一切のこのような要素又はステップは網羅的ではなく、一実施形態は、他の要素又はステップを含むことができる。「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、様々な態様を記載するためにここで使用されているが、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語は、本開示のより詳細な態様を提供するために、「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用されることがあり、また開示される。
【0122】
この明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。ここで使用される場合、単語「含む(include)」及びその文法的変形は非限定的であることが意図され、その結果、リスト中の項目の列挙は、リスト中の項目に代替する又は加えることができる他の同様の項目を除外するものではない。