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特開2023-147284情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147284
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20231004BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054388
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022053763
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『活力ある生涯のためのLast 5X イノベーション』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】515099908
【氏名又は名称】株式会社サイキンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 綾
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 夏子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 諭史
(72)【発明者】
【氏名】翠川 優希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康哲
(72)【発明者】
【氏名】城内 栄剛
(72)【発明者】
【氏名】明和 政子
(72)【発明者】
【氏名】松永 倫子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】乳幼児の腸内フローラの成長情報を提供する。
【解決手段】情報提供方法は、コンピュータに、乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程における標準範囲であって、下限と上限により表される標準範囲を記憶する記憶部から前記標準範囲を読み出し、特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得し、前記標準範囲が示された座標上に前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する、処理を実行させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程における標準範囲であって、下限と上限により表される標準範囲を記憶する記憶部から前記標準範囲を読み出し、
特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得し、前記標準範囲が示された座標上に前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する、
処理を実行させる情報提供方法。
【請求項2】
前記単位期間おきに前記腸内フローラ検査結果をプロットした前記成長情報に示された前記特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線について、前記単位期間おきの前記標準範囲により示される標準成長曲線に対する変化パターンを検出し、
前記成長情報について、検出した前記変化パターンに応じた評価を出力する請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項3】
前記変化パターンについて、前記標準成長曲線に対する前記成長曲線の傾きのパターン、前記標準範囲の上限又は下限に対するパターンを検出する請求項2に記載の情報提供方法。
【請求項4】
前記傾きのパターンについて、前記成長曲線が、前記標準成長曲線の傾きに対して水平に寄った場合、前記標準成長曲線の傾きと同等の場合、前記標準成長曲線の傾きに対して逆向きの傾きの場合を検出する請求項3に記載の情報提供方法。
【請求項5】
前記評価として、前記変化パターンに応じた前記腸内フローラの成長度合い、又は前記変化パターンに応じた分析であって、前記成長過程の段階に応じて異なる知見を示す分析を出力する請求項2に記載の情報提供方法。
【請求項6】
複数の前記腸内フローラの指標ごとに前記腸内フローラの成長過程における前記標準範囲が前記記憶部に記憶され、
複数の前記指標ごとに、前記腸内フローラ検査結果を求め、前記成長情報を出力する請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項7】
前記評価について、成人の腸内フローラの統計データ及び成人の相関関係データに含まれる提案を用いて、前記特定の乳幼児の前記腸内フローラ検査結果に対応する前記提案がある場合に、前記評価に、前記特定の乳幼児に対する提案を付加する、
請求項2に記載の情報提供方法。
【請求項8】
成人の腸内フローラの統計データ、及び前記成人の相関関係データを更に読み出し、
前記相関関係データは、生活習慣及び症状のそれぞれに対する、関連菌、提案、及び改善アドバイスを含み、
前記特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果と共に、当該特定の乳幼児の質問票データを取得し、
所定の菌名の辞書を用いて、前記特定の乳幼児に関連する前記成人の腸内フローラ指標を判定し、
判定された腸内フローラ指標と、前記相関関係データと、前記特定の乳幼児の質問票データとに基づいて、前記特定の乳幼児の質問票データから抽出した改善が必要な生活習慣又は症状について、前記関連菌を参照し、判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣又は症状を判定し、
前記評価に、判定された前記相関の高い生活習慣又は症状について、前記特定の乳幼児に対する提案及び前記改善アドバイスを付加する、請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
コンピュータに、
乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程における標準範囲であって、下限と上限により表される標準範囲を記憶する記憶部から前記標準範囲を読み出し、
特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得し、前記標準範囲が示された座標上に前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する、
処理を実行させる情報提供プログラム。
【請求項10】
乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程における標準範囲であって、下限と上限により表される標準範囲を記憶する記憶部から前記標準範囲を読み出し、
特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得する取得部と、
前記標準範囲が示された座標上に前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する成長情報生成部と、
を含む情報提供装置。
【請求項11】
コンピュータに、
特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得し、
予め定められた菌叢のタイプに基づいて、菌叢のタイプの成長過程を表すグラフの座標上に、指定した前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットし、次の単位期間の菌叢のタイプを予測した成長情報を出力する、
処理を実行させる情報提供方法。
【請求項12】
特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得する取得部と、
予め定められた菌叢のタイプに基づいて、菌叢のタイプの成長過程を表すグラフの座標上に、指定した前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットし、次の単位期間の菌叢のタイプを予測した成長情報を出力する成長情報生成部と、
を含む情報提供装置。
【請求項13】
判定部と、検出評価部とを更に含み、
前記判定部は、成人の相関関係データであって、生活習慣及び症状のそれぞれに対する、関連菌、提案、及び改善アドバイスを含む成人の相関関係データを記憶する記憶部から前記相関関係データを読み出し、前記乳幼児の腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣又は症状を判定し、
前記取得部は前記乳幼児の腸内フローラ検査結果と前記乳幼児の質問票データを取得し、
前記検出評価部は、前記判定部により判定された前記相関の高い生活習慣又は症状について、前記特定の乳幼児に対する提案及び前記改善アドバイスを付加する、請求項12に記載の情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内の腸内フローラに関する技術がある。
【0003】
例えば、乳児における健康関連状態を予防及び/又は処置するために、乳酸菌の菌株を妊娠中の母親に提供する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、プロバイオティック乳酸菌の菌株を妊娠中の母親に提供することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-515881号公報
【非特許文献1】厚生労働科学研究成果データベース "乳幼児の身体発育及び健康度に関する調査実施手法及び評価に関する研究",URL:https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、乳幼児の腸内フローラに対して事前に処置することが行われている。もっとも、乳幼児の腸内フローラは、生後0歳からおよそ6歳までは腸内フローラの菌組成が短期間で変化するという生態学的特性が存在する。そのため、このような腸内フローラの成長過程を検査し、情報提供することが求められる。
【0006】
本開示の課題は、乳幼児の腸内フローラの成長情報を提供できる情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の情報提供方法は、コンピュータに、乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程における標準範囲であって、下限と上限により表される標準範囲を記憶する記憶部から前記標準範囲を読み出し、特定の乳幼児の成長過程における所定の単位期間についての生体試料情報に基づき求められた当該特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得し、前記標準範囲が示された座標上に前記単位期間の前記腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の情報提供方法、情報提供プログラム、及び情報提供装置によれば、乳幼児の腸内フローラの成長情報を提供できる、という効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】腸内フローラの指標をアルファ多様性指数とした標準成長曲線の一例を示す図である。
図2】情報提供装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態(第2実施形態)の情報提供装置の構成を示すブロック図である。
図4】特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の一例を示す図である。
図5】特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の2つ目の一例を示す図である。
図6】特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の3つ目の一例を示す図である。
図7】腸内フローラの指標をStreptococcusとした場合の標準成長曲線である。
図8】腸内フローラの指標をFaecalibacteriumとした場合の標準成長曲線である。
図9】情報提供装置による情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態の成長情報の出力態様のイメージであり、エンテロタイプの成長過程の一例である。
図11図11は、分類モデルの学習の元となる学習データにおけるサンプルの一例である。
図12図12は、ベータ多様性の指標及び月齢区分を5クラスでクラスタリングした散布図の一例である。
図13図13は、Laplace基準(LPLC)及びクラスタ数の関係を示す図である。
図14図14は、9クラスタとした場合の検体データの月齢別のクラスタのバブルチャートの一例を示す図である。
図15図15は、ベータ多様性の指標及び月齢区分を9クラスでクラスタリングした散布図の一例である。
図16図16は、クラスタごとの菌組成スコアを示すグラフ図である。
図17図17は、各クラスタの優勢菌を示すグラフ図である。
図18図18は、菌叢の指標であるアルファ多様性についてクラスタ間の違いを示した図である。
図19図19は、第3実施形態の情報提供装置の構成を示すブロック図である。
図20図20は、相関度に応じた症状に関する提案の一例である。
図21図21は、相関度に応じた生活習慣に関する提案の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
本開示の実施形態の概要を説明する。厚生労働省などが行っている生後の乳幼児の身体発育の研究において、LSM法を用いて平滑化された発育曲線が求められている(非特許文献1参照)。この発育曲線では身長、体重、頭囲の月齢当たりの推移が、母乳栄養値のパーセンテージごとに描かれている。
【0012】
一方、出願人らが行っている腸内フローラ分野の研究において、0歳~6歳程度までの乳幼児の期間では腸内フローラの菌組成が短期間で変化することがわかっている。また、乳幼児の期間は、月齢内の個体差が少なく、環境因子の影響よりも月齢因子の影響が大きい。本実施形態においては、このような乳幼児の腸内フローラの生態学的特性を利用し、乳幼児の腸内フローラの成長曲線やクラスタリングによるモデリングを試みることとした。
【0013】
以下、第1実施形態では、アルファ多様性の観点から標準範囲に腸内フローラ検査結果をプロットした成長過程を示す手法を説明し、第2実施形態では、アルファ多様性の一つの指標に限らず、ベータ多様性によりクラスタリングを行い、菌叢のタイプ(エンテロタイプ)の成長過程を示す手法を説明する。第3実施形態では、成人の提案(改善アドバイスを含む)を乳幼児向けに活用する手法を説明する。
【0014】
[第1実施形態]
本開示の第1実施形態の情報提供装置は、乳幼児の腸内フローラ成長過程における標準範囲が示されたグラフ(以下、単にグラフと記載する)の座標上に、腸内フローラ検査結果をプロットした成長情報を出力する。乳幼児の成長過程の単位期間は、月齢当たりの月単位で表される。月単位で標準範囲が定められる。なお、成長過程の単位期間は月単位に限らず、半月、二か月等の任意の単位でもよい。これにより本実施形態の情報提供装置は、特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線を示す成長情報の情報提供を可能とする。
【0015】
標準範囲は、ある腸内フローラの指標に関して、当該指標の成長過程の標準となる範囲である。標準範囲は、単位期間おきに腸内フローラの指標の上限と下限で表される情報であり、グラフの座標上では縦軸を腸内フローラの指標値、横軸を月単位の単位期間とする。グラフでは、標準範囲の月齢の推移により標準成長曲線が示される。標準範囲は、腸内フローラの指標ごとに設けることができ、腸内フローラの指標値がとり得る範囲は、腸内フローラの指標に応じて定められる。腸内フローラの指標は、例えば、多様性関連指標、短鎖脂肪酸産生指標、腸管免疫関連指標、口腔内細菌関連指標、及び下痢便秘関連指標が挙げられる。
【0016】
多様性関連指標としてアルファ多様性指数がある。図1は、腸内フローラの指標をアルファ多様性指数とした標準成長曲線の一例を示す図である。アルファ多様性指数の標準範囲は、縦軸の指標値を予測値とし、横軸の単位期間を月齢とする。標準範囲は、予測値のスコア分類を5、10、25、50、75、90、95までの段階で分け、5を最小、95を最大として定めた。標準成長曲線は、生後0ヵ月から72ヵ月までの単位期間おきの上限及び下限の標準範囲の推移により示される。他の指標については後述する。
【0017】
特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線は、単位期間おきに腸内フローラ検査結果の指標値をグラフの座標上にプロットすることで得られる。これにより、グラフ上で標準成長曲線と成長曲線とが対比できるようになる。以下で説明する例は、アルファ多様性指数の腸内フローラ検査結果を用いた場合とする。このように、標準範囲に基本属性の生年月日と腸内フローラ検査結果の組み合わせを当てはめるだけで、詳細な生活習慣アンケートの
取得作業を要さずとも、乳幼児の腸内フローラの成長曲線のモデルを容易に構築し、成長情報の提供が可能である。また、本実施形態では、成長情報について、変化パターンを検出し、変化パターンに応じた評価を出力する。
【0018】
図2は、情報提供装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、情報提供装置100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、予測プログラムが格納されている。
【0021】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0022】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0023】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能してもよい。
【0024】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0025】
情報提供装置100の各機能構成について説明する。図3は、本実施形態の情報提供装置100の構成を示すブロック図である。各機能構成は、CPU11がROM12又はストレージ14に記憶された情報提供プログラムを読み出し、RAM13に展開して実行することにより実現される。
【0026】
図3に示すように、情報提供装置100は機能的には、記憶部102と、取得部110と、成長情報生成部112と、検出評価部114と、出力部116とを含んで構成される。
【0027】
記憶部102には、腸内フローラの指標に関して成長過程の標準的な範囲を定めた標準範囲が格納されている。
【0028】
取得部110は、記憶部102から標準範囲を読み出す。また、取得部110は、指定された単位期間の特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得する。特定の乳幼児とは、腸内フローラの成長情報の検査対象とする乳幼児である。腸内フローラ検査結果は、単位期間ごとに、特定の乳幼児から採取した検便体などの生体試料情報に基づき求められている。取得部110は、外部の検査機関で予め求められた腸内フローラ検査結果を取得してもよいし、記憶部102に予め格納しておいた腸内フローラ検査結果を取得してもよい。なお、単位期間の指定は、生後から直近までの期間で、腸内フローラ検査結果が取得されている任意の期間を受け付ければよい。
【0029】
成長情報生成部112は、標準範囲が示されたグラフの座標上に指定した単位期間の腸内フローラ検査結果をプロットし、成長情報を生成する。例えば、腸内フローラ検査結果が生後1年3ヵ月目に得られている場合には、生後1年3ヵ月目にプロットした成長情報が生成される。成長情報は、単位期間おきに腸内フローラ検査結果をプロットすることで、特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線を示すことができる。単位期間おきのプロットは、複数の月単位で腸内フローラ検査結果が得られている場合に可能である。
【0030】
検出評価部114は、成長情報における腸内フローラの成長曲線について、標準成長曲線に対する変化パターンを検出し、変化パターンに応じた評価を行う。検出する変化パターンとしては、例えば、標準成長曲線に対する成長曲線の傾きのパターン、標準範囲の上限又は下限に対するパターンがある。傾きのパターンとしては、成長曲線が、標準成長曲線の傾きに対して水平に寄った場合、標準成長曲線の傾きと同等の場合、標準成長曲線の傾きに対して逆向きの傾きである場合などが検出できる。上限又は下限に対するパターンとしては、標準範囲内から範囲外へ上限又は下限を超えて推移する場合、標準範囲外から範囲内へ推移する場合などが検出できる。変化パターンに対する評価は、腸内フローラの成長度合いに関する評価であり、傾きのパターン及び上限又は下限に対するパターンを組み合わせてもよい。
【0031】
図4は、特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の一例を示す図である。標準範囲は、下限10%(L1)、上限90%(L2)により標準成長曲線が表される。また、実検体の検査結果(a1)~(a6)により成長曲線が示されている。
【0032】
図4の場合の検出、評価について説明する。(a1)から(a2)の推移について、標準成長曲線の標準範囲内から下限を下回って範囲外に推移する変化パターンを検出し、下限を下回って推移したことで「菌叢成長が遅い」と評価する。菌叢成長の早さについては、上限又は下限からどの程度離れているかに応じて、「早い」、「早め」、「遅め」、「遅い」などの評価を行えばよい。推移の(a4)から(a5)の推移について、標準成長曲線の範囲外から下限を上回って範囲内に推移する変化パターンを検出し、範囲外から範囲内に戻ったことで「菌叢成長が回復」と評価する。このように検出評価部114では、標準範囲の下限に対するパターンを検出し、評価することができる。また、これ以外にも傾きのパターンに応じた標準成長曲線に対する成長曲線の評価を行ってもよい。標準成長曲線の傾きに対して水平に寄った場合は「標準的な成長速度に対して少し成長が遅くなってきています」といった評価ができる。標準成長曲線の傾きと同等の場合は「標準的な成長速度です」といった評価ができる。標準成長曲線の傾きに対して逆向きの傾きである場合は「標準的な成長速度に対して成長が著しく遅くなってきています」といった評価ができる。なお、ここで挙げた評価は一例である。
【0033】
他の例についても説明する。図5は、特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の2つ目の一例を示す図である。図5には実検体の検査結果(b1)~(b7)により成長曲線が示されている。図6は、特定の乳幼児の腸内フローラの成長曲線の3つ目の一例を示す図である。図6には実検体の検査結果(c1)~(c5)により成長曲線が示されている。
【0034】
図5の場合の検出、評価について説明する。(b2)から(b4)の推移について、標
準成長曲線の標準範囲内から下限を下回って範囲外に推移する変化パターンを検出し、下限をやや下回って推移したことで「菌叢成長が遅め」と評価する。(b3)から(b4)の推移について、標準成長曲線の範囲外から下限を上回って範囲内に推移する変化パターンを検出し、範囲外から範囲内に戻ったことで「菌叢成長が回復」と評価する。(b6)から(b7)の推移について、標準成長曲線の範囲内から下限を下回って範囲外に推移する変化パターンを検出し、下限をやや下回って推移したことで「菌叢成長が遅め」と評価する。
【0035】
図6の場合の検出、評価について説明する。(c1)から(c2)の推移について、標準成長曲線の標準範囲内から上限を上回って範囲外に推移する変化パターンを検出し、上限をやや上回って推移したことで「菌叢成長が早め」と評価する。(c2)から(c3)の推移について、標準成長曲線の標準範囲外から上限を下回って範囲内に推移したこと、及び水平に推移する変化パターンを検出し、範囲外から範囲内に戻ったことで「菌叢成長が標準に回復」と評価する。(c4)から(c5)の推移について、標準成長曲線の標準範囲内から上限を上回って範囲外に推移する変化パターンを検出し、上限を上回って推移したことで「菌叢成長が早い」と評価する。
【0036】
出力部116は、成長情報生成部112で得られた成長情報、及び検出評価部114で得られた評価を出力する。
【0037】
他の腸内フローラの指標についての一例を挙げる。図7は、腸内フローラの指標をStreptococcusとした場合の標準成長曲線である。この場合、下向きに推移する標準成長曲線となる。下向きに推移するため、変化パターンに対する評価がアルファ多様性指数の場合と逆になる。図8は、腸内フローラの指標をFaecalibacteriumとした場合の標準成長曲線である。この場合、水平方向に横に推移する標準成長曲線となる。
【0038】
(処理の流れ)
次に、情報提供装置100の作用について説明する。図9は、情報提供装置100による情報提供処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から情報提供プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、情報提供方法としての情報提供処理が行なわれる。CPU11が情報提供装置100の各部として機能することにより、以下の処理を実行させる。
【0039】
ステップS100において、CPU11は、記憶部102から標準範囲を読み出す。
【0040】
ステップS102において、CPU11は、指定された単位期間の特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得する。
【0041】
ステップS104において、CPU11は、標準範囲が示されたグラフの座標上に指定した単位期間の腸内フローラ検査結果をプロットし、成長情報を生成する。
【0042】
ステップS106において、CPU11は、成長情報における腸内フローラの成長曲線について、標準成長曲線に対する変化パターンを検出する。
【0043】
ステップS108において、CPU11は、変化パターンに応じた評価を行う。
【0044】
ステップS110において、CPU11は、ステップS104で得られた成長情報、及びステップS108で得られた評価を出力する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る情報提供装置100は、乳幼児の腸内フローラの成長情報を提供することができる。
【0046】
(変形例)
変形例について説明する。上述した実施形態では菌叢成長について評価を出力する場合を例としたが、菌叢成長に応じた提案を評価として出力するようにしてもよい。提案は、統計情報及び研究結果から導かれる内容としてもよい。例えば、生後の早い段階では屋外での活動が菌叢成長に効果的であることが研究結果から分かっている。そこで図4の(a1)から(a2)の推移について、「お外でたくさん遊びましょう」との提案を出力するようにできる。また、乳幼児の後半のように大人に近づくと、例えば、本出願人が既に特許第6824550号公報などにおいて提案しているように、緑黄色野菜の摂取が健全な菌叢維持に効果的であることが分かっている。そこで図4の(b6)から(b7)の推移について、「緑黄色野菜を多めに摂取しましょう」との提案を出力するようにできる。以下に説明する提案が、本開示の「変化パターンに応じた分析であって、成長過程の段階に応じて異なる知見を示す分析」の一例である。なお、成人に関する提案を用いて乳幼児の提案に活用する場合について、後述の第3実施形態で説明する。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態は、成長過程ごとに腸内フローラの組成を示すエンテロタイプをクラスタリングする手法である。第2実施形態では、第1実施形態の情報提供装置100と同様の構成の情報提供装置200とすることができるが、各部の処理態様が異なっている。以下、第2実施形態の各部について説明する。
【0048】
第1実施形態では、アルファ多様性を指標に用いた成長情報を出力していた。しかし、アルファ多様性を用いる場合、1つの指標だけの成長曲線を出力することに留まる。そのため、第2実施形態では、ベータ多様性を指標に用いてクラスタリングして学習したエンテロタイプの分類モデルを用いて、エンテロタイプの成長過程を示す成長情報を出力する。
【0049】
第2実施形態の記憶部102には、エンテロタイプの分類モデルが格納されている。また、記憶部102には、エンテロタイプの特徴が格納される。分類モデルは、予めクラスタリング手法により学習されており、乳幼児の月齢当たりの腸内フローラの成長過程におけるエンテロタイプの出力及び予測が可能である。分類モデルを用いることで、エンテロタイプの成長過程を表すグラフの座標上へのプロットが可能である。エンテロタイプの成長過程は、月齢に対する菌叢の成長度合い(成熟度合い)で表される。単位期間ごとのエンテロタイプの成長過程がクラスタリングにより得られる。第2実施形態では、多様性関連指標としてベータ多様性を用い、菌叢の距離を考慮してクラスタリングする。なお、分類モデルは、成長情報生成部112により、乳幼児の腸内フローラ検査結果を学習データとして用いて、以下のクラスタリング手法により学習し、記憶部102に格納するようにしてもよい。
【0050】
図10は、第2実施形態の成長情報の出力態様のイメージであり、エンテロタイプの成長過程の一例である。本実施形態では、図10に示すように、縦軸は菌叢の類似度に応じたエンテロタイプ(菌叢のタイプ)であり、横軸は月齢である。グラフのプロットには成長度合いに応じたエンテロタイプが割り当てられる。図10では、月齢に応じて1ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月の区切りの単位期間ごとのエンテロタイプの成長過程(成長段階)が示される。成長段階ごとに類似度に応じたエンテロタイプが割り当てられる。腸内フローラ検査結果をその時点のエンテロタイプにプロットすることで、当該エンテロタイプから次の成長段階で移行が見込まれるエンテロタイプが予測できる。なお、区切りの単位期間は、分類モデルのクラスタから任意に設定できる。
【0051】
本実施形態の分類モデルの例を説明する。図11は、分類モデルの学習の元となる学習データにおけるサンプルの一例である。図11では、サンプル数N=1,073とし、生後5ヶ月~50ヶ月程度までの男児(1)・女児(2)の腸内フローラ検査結果(検体データ)を用いた。
【0052】
ベータ多様性の成熟度についてのクラスタリング手法は、DMM(Dirichlet multinomial mixtures)クラスタリングを用いる。DMMクラスタリングにより、月齢区分及びエンテロタイプ(DMMクラスタ)の推移を予測する。なお、検定にはペアワイズ検定(PERMANOVA)を用い、決定係数R2値に基づく数値的な評価を行う。以下では、5クラスタとする場合、9クラスタとする場合を例に挙げる。また、クラスタリング手法は、DMMクラスタリングに限らず、階層的クラスタリングや非階層的クラスタリング、その他モデルベースクラスタリングであってもよい。
【0053】
図12は、ベータ多様性の指標及び月齢区分を5クラスでクラスタリングした散布図の一例である。距離指標はBray-Curtisを用いている。横軸が第一成分、縦軸が第二成分である。クラスタは、0-9M(ヶ月)、10-17M、18-35M、36M以降~、母親(mother)、である。クラスタリングでは第一成分に沿って月齢区分が推移している。新生児寄りの区分の方が分離し易く散らばりも大きく、月齢が増すにつれて散らばりが小さくなっている。また、5:母親の検体データは群内での散らばりが大きくなっている。
【0054】
図13は、Laplace基準及びクラスタ数の関係を示す図である。Laplace基準は最適クラスタ数の基準となる統計量の推移である。DMMに基づく最適クラスタ数は、数千などサンプルサイズが大きいほど高値になりやすい。そのため本実施形態ではクラスタ数は9までとしている。
【0055】
図14は、9クラスタとした場合の検体データの月齢別のクラスタのバブルチャートの一例を示す図であり、DMMクラスタによるエンテロタイプの分類の結果である。所属率のrateに応じた描画サイズを月齢区分別に示している。クラスタ8、クラスタ3が0-9Mの所属率が高い。
【0056】
図15は、ベータ多様性の指標及び月齢区分を9クラスでクラスタリングした散布図の一例である。5クラスタ時のクラスタ3から分離した2クラスタのうち、最も幼児(0-9M)が多く属するクラスタ8が突出している。また、クラスタ9のみ別方向に突出する。
【0057】
図16は、クラスタごとの菌組成スコアを示すグラフ図である。菌組成の特徴として、クラスタ8、クラスタ9はBacteroidesが少ない。また、クラスタ8はBifidobacteriumが多い。
【0058】
図17は、各クラスタの優勢菌を示すグラフ図である。クラスタ8の優勢菌は、Veillonea、Bifidobacterium、Streptococcus、Enterococcus、E.Shigellaである。クラスタ3の優勢菌は、Erysipelatoclostridium、Bacteroides、Lachnoclostridium、Eggerthellaである。クラスタ9の優勢菌はPrevotellaである。以上のような優勢菌を元に、分類モデルは、成長過程を表すグラフの座標の単位期間について、成長度合いに応じたエンテロタイプを分類(プロット)するように学習できる。0-9Mであれば、エンテロタイプは、(Ba型:Bacteroides)、(Bi型:Bifidobacterium)、(EV型:Erysipelatoclostridium、Veillonea等)などである。
【0059】
図18は、菌叢の指標であるアルファ多様性についてクラスタ間の違いを示した図である。指標はそれぞれ(A)faith_pd、(B)Observed features、(C)Shannonである。
【0060】
分類モデルは、各クラスタの菌組成の特徴(優勢菌、アルファ多様性など)に基づき、成長過程ごとにエンテロタイプを細分類して、出力する。その出力結果をプロットすると、例えば図10となる。
【0061】
第2実施形態の成長情報生成部112及び検出評価部114について説明する。なお、上述した手法により学習された分類モデルが出力可能なエンテロタイプの分類が本開示の予め定められた菌叢のタイプの一例である。
【0062】
成長情報生成部112は、分類モデルが出力するエンテロタイプの分類を用いて、エンテロタイプの成長過程を表すグラフの座標上に、指定した単位期間の腸内フローラ検査結果をプロットし、次の単位期間のエンテロタイプを予測した成長情報を生成する。よって、成長情報には、指定した単位期間のエンテロタイプ、及び次に予測されるエンテロタイプが含まれる。例えば、図10の例であれば、指定した単位期間が月齢1ヶ月、プロットされたエンテロタイプがBa型であれば、次の単位期間は12ヶ月であり、エンテロタイプがBi型と予測される。
【0063】
検出評価部114は、記憶部102のエンテロタイプの特徴を参照し、成長情報について、指定した単位期間にプロットされた当該エンテロタイプの特徴、次に予測されるエンテロタイプの特徴を付与し、評価を作成する。
【0064】
第2実施形態の情報提供装置200の作用は上記図9の処理を置き換えて実施すればよい。例えば、ステップS104では、CPU11は、成長情報生成部112として、分類モデルが出力するエンテロタイプの分類を用いて、エンテロタイプの成長過程を表すグラフの座標上に、指定した単位期間の腸内フローラ検査結果をプロットし、次の単位期間のエンテロタイプを予測した成長情報を生成する。ステップS106では、CPU11は、検出評価部114として、成長情報について、対応する記憶部102のエンテロタイプの特徴を取得する。ステップS108では、CPU11は、検出評価部114として、成長情報について、指定した単位期間にプロットされた当該エンテロタイプの特徴、次に予測されるエンテロタイプの特徴を付与し、評価を作成する。
【0065】
以上、第2実施形態の情報提供装置200によれば、多様な菌叢について菌叢の成熟度を評価し、乳幼児の腸内フローラの成長予測を可能とする。
【0066】
[第3実施形態]
第3実施形態は、成人の提案を乳幼児向けに活用する態様である。図19は、第3実施形態の情報提供装置の構成を示すブロック図である。第3実施形態は、判定部310を含む点が第1実施形態(第2実施形態)と異なっている。なお、以下は第1実施形態をベースに、成長情報の評価として、成人の提案を参照して出力する場合を説明するが、第2実施形態についても同様に適用できる。
【0067】
第3実施形態の記憶部102には、第1実施形態の標準範囲だけでなく、成人の腸内フローラの統計データ(A)、成人の質問票データ(B)、及び成人の相関関係データ(C)が格納されている。成人の質問票データには症状のデータ(B1)と、生活習慣のデータ(B2)とが含まれる。相関関係データには、症状のデータ(B1)と腸内フローラ(A)との症状に関する相関度(C1)、及び生活習慣のデータ(B2)と腸内フローラ(A)との生活習慣に関する相関度(C2)が含まれる。また、相関関係データ(C)の相関度(C1)及び相関度(C2)には、対応した成人への菌叢に応じた提案情報が含まれる。なお、成人の質問票データ(B)は、相関関係データ(C)を求めるために保存されているデータである。
【0068】
図20及び図21は、成人への菌叢に応じた提案情報の一例を示す図である。図20は、相関度に応じた症状に関する提案の一例である。症状と、症状に関連する関連菌(属)と、提案の改善アドバイスである改善ポイントが示されている。関連菌(属)「A:Actinomyces」では、症状「便秘」のリスクがあり、改善ポイントに「納豆の摂取」が挙げられる。関連菌(属)「C:Adlercreutzia」では、症状「便秘」のリスクがあり、改善ポイントに「欠食のない食生活」、「精白米、パン類の摂取」が挙げられる。関連菌(属)「E:Coprobacillus」では、症状「便秘」のリスクがあり、改善ポイントに「漬物類の摂取」が挙げられる。関連菌(属)「E:Coprobacillus」では、症状「肌質:混合肌」があり、改善ポイントに「漬物類の摂取」が挙げられる。関連菌(属)「V:Megamonas」では、症状「肌質:混合肌」があり、改善ポイントに「漬物類の摂取」、「低体重の適正化」が挙げられる。
【0069】
図21は、相関度に応じた生活習慣に関する提案の一例である。生活習慣の提案として「果物の摂取」に改善アドバイスの説明が含まれる。また、「この生活習慣で改善できる菌」が、生活習慣の関連菌として対応付けられている。改善アドバイスの説明は「果物には、腸内細菌のエサになる水溶性食物繊維や糖アルコールが含まれています。特に旬を迎えた果物は、栄養化が高い傾向にあります。1日1品の果物が理想的な習慣です。」の文章が一例である。「この生活習慣で改善できる菌」には、「アクティブ菌(ラクノスピラ)」、「酪酸産生菌(フィーカリバクテリウム)」、「アクティブ菌(ロゼブリア)」、「アクティブ菌(モノグロバス)」、「酪酸産生菌(クロストリジウム)」が示されている。また、生活習慣の提案としては、このほか、「運動」、「根菜の摂取」、「納豆の摂取」、「ヨーグルト・乳酸菌飲料の摂取」などが挙げられる。提案「運動」であれば、改善アドバイスは「適度な運動は、自律神経に良い影響を与え、排便に必要な筋肉作りにもつながります。データでは、週に60分以上運動している人ほど菌叢が安定傾向にあります」といった説明が一例となる。
【0070】
第3実施形態の取得部110は、単位期間の特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果を取得すると共に、乳幼児の生活習慣と悩み症状に関する乳幼児の質問票データを取得する。判定部310は、記憶部102から、上記成人の腸内フローラの統計データ(A)、及び相関関係データ(C)を読み出す。
【0071】
判定部310は、(1)乳幼児に関連する成人の腸内フローラ指標の判定、及び(2)判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣の判定、の処理を行う。また、判定部310は、取得した症状データに症状がある場合には、症状の判定を行う。
【0072】
(1)について説明する。判定部310は、取得した乳幼児の腸内フローラ検査結果に基づいて、記憶部102の成人の腸内フローラの統計データを参照し、乳幼児で検出された菌名及び菌叢の指標と一致する菌名及び菌叢の指標を照合する。腸内フローラの統計データからは、菌叢の多様性などの菌叢の指標及び、ビフィドバクテリウム属、フィーカリバクテリウム属などの菌名などを参照できる。これらの参照できる菌名と菌叢の指標の情報について定めた基準が、所定の菌名と菌叢の指標の辞書として情報提供装置300にある菌叢辞書部117(図示せず)である。判定部310は、成人の腸内フローラの統計データの指標のうち、乳幼児の腸内フローラ検査結果に対応する腸内フローラ指標を判定結果とする。以上のように、判定部310は、菌叢辞書部117の所定の菌名と菌叢の指標の辞書を用いて、特定の乳幼児に関連する成人の腸内フローラ指標を判定する。
【0073】
(2)について説明する。判定部310は、判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣を判定する。判定部310は、乳幼児の質問票データから、改善が必要な生活習慣を抽出する。改善が必要な生活習慣とは、生活習慣の項目ごとに設定した基準を満たさない生活習慣の項目である。例えば、「運動」の生活習慣であれば、運動不足とされる時間を設定し、取得した乳幼児の質問票データにおいて運動時間が不足している場合に「運動」を改善が必要な生活習慣として抽出する。判定部310は、抽出した生活習慣について、生活習慣に関する相関度(B2)の生活習慣の関連菌を参照し、判定された腸内フローラ指標に、対応する菌名がある場合、当該生活習慣を判定結果とする。症状についても同様に、抽出した症状について、判定された腸内フローラ指標に、症状の関連菌を参照し、判定された腸内フローラ指標に、対応する菌名がある場合、当該症状を判定結果とする。以上のように、判定部310は、判定された関連する腸内フローラ指標と、相関関係データと、特定の乳幼児の質問票データとに基づいて処理を行う。判定部310は、特定の乳幼児の質問票データから抽出した生活習慣及び症状について、関連菌を参照し、判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣又は症状を判定する。乳幼児の質問票データの回答において改善が必要な項目があり、かつ、特定の乳幼児に関連する成人の腸内フローラ指標に対応する菌名があることが、本開示の特定の乳幼児の腸内フローラ検査結果に対応する提案がある場合の条件の一例である。
【0074】
成長情報生成部112の処理は、第1実施形態(第2実施形態)と同様である。
【0075】
検出評価部114は、第1実施形態の変化パターンの評価に加えて、当該評価に、判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣(又は症状)の提案及び当該提案の改善アドバイスを付加する。例えば、標準範囲外の腸内フローラ指標に対して、当該指標を改善することが、相関関係データからわかっている成人の生活習慣の提案及び改善アドバイスを適用する。また、実年齢(月齢)から離れているフローラタイプに対して、当該タイプを改善することが、相関関係データからわかっている成人の生活習慣の提案及び改善アドバイスを適用する。
【0076】
第3実施形態の情報提供装置300の作用は上記図9の処理を置き換え、必要な処理を挿入して実施すればよい。例えば、ステップS100の処理の前に、CPU11は、判定部310として、上記(1)乳幼児に関連する成人の腸内フローラ指標の判定、及び(2)判定された腸内フローラ指標と相関の高い生活習慣の判定、の処理を行えばよい。また、ステップS108において、CPU11は、検出評価部114として、変化パターンの評価に加えて、判定された腸内フローラ指標に関連する生活習慣の提案及び当該提案の改善アドバイスを評価に付加する。
【0077】
以上、第3実施形態の情報提供装置300によれば、成人の腸内フローラに関する情報を参照し、提案及び改善アドバイスに活用できる。
【0078】
また、従来の乳幼児の検査結果では、リスクや改善ポイントがわからず、対策が立てようがなかった。これに対して、本実施形態によれば、成人の検査結果で実現している腸内フローラと悩み症状、生活習慣間の相関関係データからリスクと改善アドバイスを導き出すことができる。また、子どもでも検査結果の評価から知見の発見が容易なように、改善アドバイスに提案内容を示すモチーフのイラストを挿入する工夫をして、行動変容を動機づけする。図21に示した例では、食材のイラストを挿入して、評価内容を理解しやすくしている。
【0079】
なお、本実施形態の技術は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0080】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した情報提供処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、並びに、GPU(Graphics Processing Unit)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報提供処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、複数のGPU、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0081】
また、上記実施形態では、情報提供プログラムがストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
100、200、300 情報提供装置
102 記憶部
110 取得部
112 成長情報生成部
114 検出評価部
116 出力部
310 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21