(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147310
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】カートン用注出口
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20231005BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D41/04 200
B65D47/36 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054725
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】船島 諒
(72)【発明者】
【氏名】南 健太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】上蓋のオーバーランを防止し、密封性の向上を図り、開封時、開閉時の操作性を向上させたカートン用注出口を提供する。
【解決手段】中栓基部5とTEバンド29の間にブリッジ破断手段を有し、中栓基部5と上蓋3の間にオーバーラン防止構造を有し、オーバーラン防止構造が、上蓋3の開口縁端面に設けた第1上蓋掛かり部3cとTEバンド脱落防止部8からなり、上蓋閉栓時に第1上蓋掛かり部3cが上蓋軸心周りでTEバンド脱落防止部8の中栓軸心周りの端面8aに当接し、TEバンド脱落防止部8が上蓋軸心周りにおいて上蓋を受け止める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートンに装着する中栓と、中栓に装着する上蓋および上蓋軸心周りに環状をなすTEバンドを備え、
中栓は、中栓軸心方向の一側のネジ筒と、他側の中栓基部と、中栓軸心方向に貫通する中栓開孔を有し、
中栓基部は、外側に中栓軸心周りに沿って間欠的に設けたTEバンド脱落防止部を有し、TEバンド脱落防止部がバンド内周面とバンド径方向で対向し、ネジ筒は、外周面に雄ネジ部を有し、
上蓋は、内周面に雌ネジ部を有し、雌ネジ部がネジ筒の雄ネジ部にネジ接合し、外周面にローレットを有し、
中栓開孔と上蓋の間に密封手段を有し、
TEバンドは、上蓋軸心方向で対向する上蓋の開口縁端面にブリッジを介して接続し、
中栓基部とTEバンドの間にブリッジ破断手段を有し、
中栓基部と上蓋の間にオーバーラン防止構造を有し、オーバーラン防止構造が、上蓋の開口縁端面に設けた上蓋掛かり部とTEバンド脱落防止部からなり、上蓋閉栓時に上蓋掛かり部が上蓋軸心周りでTEバンド脱落防止部の中栓軸心周りの端面に当接し、TEバンド脱落防止部が上蓋軸心周りにおいて上蓋を受け止めることを特徴とするカートン用注出口。
【請求項2】
TEバンド脱落防止部は、中栓基部の外側面から中栓軸心方向に立ち上がり、先端部が中栓径方向外側に突出して、ブリッジ破断後のTEバンドに掛かり合う形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のカートン用注出口。
【請求項3】
上蓋とTEバンドの間にストッパー構造を有し、ストッパー構造が、上蓋軸心方向で上蓋の開口縁端面に対向するTEバンドのバンド上面に設けた当たり止め部と、上蓋の開口縁端面に設けた第2上蓋掛かり部からなり、
製造工程において中栓に上蓋およびTEバンドを装着する時に第2上蓋掛かり部が上蓋軸心周りで当たり止め部に掛かり合って、ブリッジの破断を防止することを特徴とする請求項1または2に記載のカートン用注出口。
【請求項4】
ローレットが上蓋軸心周りに放射状に配置した複数の板状突起からなり、上蓋軸心周りにおいて板状突起の相互間が離隔して指掛かりを形成するとともに、各板状突起が上蓋の径方向外側に向けて伸びて上蓋最外径をなすことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のカートン用注出口。
【請求項5】
ブリッジ破断手段はラチェット構造であり、ラチェット構造が中栓基部の外側に設けた複数のラチェット爪とTEバンドのバンド内周面に設けた複数のラチェット歯からなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のカートン用注出口。
【請求項6】
TEバンドは、上蓋最外径より径方向外側にあるバンド外周面にカートンの仮保持部を有していることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のカートン用注出口。
【請求項7】
中栓開孔と上蓋の間の密封手段は、ネジ筒の内部に形成するノズル筒において中栓開孔をなすノズル口と、上蓋の内側天面に形成し、前記ノズル口に挿入するインナーリングからなることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のカートン用注出口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙等の素材からなるカートンに設けるカートン用注出口に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カートン用注出口には、例えば、特許文献1に記載するものがある。これは、液体用紙容器に取り付けられるもので、スパウトとキャップとからなるプラスチック樹脂製の口栓である。スパウトを構成する樹脂は、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつバイオマスポリエチレン樹脂を5重量%以上含む。
【0003】
スパウトには、外側面に外ネジ条が設けられ、内側面に開口部を封鎖する封鎖板と該封鎖板に連結した第1係合部が設けられている。封鎖板はスパウトの内側面と周状薄肉部を介して連結されている。キャップには、スパウトの外ネジ条と螺合する内ネジ条と、第1係合部と係合する第2係合部が設けられ、外ネジ条と内ネジ条が螺解されるときに、第1係合部と第2係合部が係合し、封鎖板がキャップと共に回動されて周状薄肉部が破断される。
【0004】
また、特許文献2に記載するものは、口栓本体とキャップとを備える注出口栓である。キャップのインナーリングは、外周面に第1の外径を有する第1の領域と第2の外径を有する第2の領域とを有する。口栓本体の側壁は、内周面に第1の内径を有する第1の領域と第2の内径を有する第2の領域とを有する。キャップが口栓本体に螺着された状態において、インナーリングの第1の領域と口栓本体の側壁の第1の領域とが全周にわたって密着し、インナーリングの第2の領域と口栓本体の側壁の第2の領域とが全周にわたって密着する。インナーリングの第1の領域と口栓本体の側壁の第1の領域とが密着した領域と、インナーリングの第2の領域と口栓本体の側壁の第2の領域とが密着した領域との間に空間を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-189641
【特許文献2】特開2019-34790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カートン用注出口は、注出用の開孔を有する中栓をカートンに装着し、中栓の開孔を塞ぐ上蓋を中栓にネジ接合する構造が一般的である。この構造において、上蓋を過剰に締めすぎてオーバーランすると、上蓋と中栓のネジの嵌合に不具合が生じ、シール性を確保できなくなり、密封性が損なわれる問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、上蓋のオーバーランを防止し、密封性の向上を図り、開封時、開閉時の操作性を向上させたカートン用注出口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るカートン用注出口は、カートンに装着する中栓と、中栓に装着する上蓋および上蓋軸心周りに環状をなすTEバンドを備え、中栓は、中栓軸心方向の一側のネジ筒と、他側の中栓基部と、中栓軸心方向に貫通する中栓開孔を有し、中栓基部は、外側に中栓軸心周りに沿って間欠的に設けたTEバンド脱落防止部を有し、TEバンド脱落防止部がバンド内周面とバンド径方向で対向し、ネジ筒は、外周面に雄ネジ部を有し、上蓋は、内周面に雌ネジ部を有し、雌ネジ部がネジ筒の雄ネジ部にネジ接合し、外周面にローレットを有し、中栓開孔と上蓋の間に密封手段を有し、TEバンドは、上蓋軸心方向で対向する上蓋の開口縁端面にブリッジを介して接続し、中栓基部とTEバンドの間にブリッジ破断手段を有し、中栓基部と上蓋の間にオーバーラン防止構造を有し、オーバーラン防止構造が、上蓋の開口縁端面に設けた上蓋掛かり部とTEバンド脱落防止部からなり、上蓋閉栓時に上蓋掛かり部が上蓋軸心周りでTEバンド脱落防止部の中栓軸心周りの端面に当接し、TEバンド脱落防止部が上蓋軸心周りにおいて上蓋を受け止めることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るカートン用注出口において、TEバンド脱落防止部は、中栓基部の外側面から中栓軸心方向に立ち上がり、先端部が中栓径方向外側に突出して、ブリッジ破断後のTEバンドに掛かり合う形状をなすことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るカートン用注出口において、上蓋とTEバンドの間にストッパー構造を有し、ストッパー構造が、上蓋軸心方向で上蓋の開口縁端面に対向するTEバンドのバンド上面に設けた当たり止め部と、上蓋の開口縁端面に設けた第2上蓋掛かり部からなり、製造工程において中栓に上蓋およびTEバンドを装着する時に第2上蓋掛かり部が上蓋軸心周りで当たり止め部に掛かり合って、ブリッジの破断を防止することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るカートン用注出口において、ローレットが上蓋軸心周りに放射状に配置した複数の板状突起からなり、上蓋軸心周りにおいて板状突起の相互間が離隔して指掛かりを形成するとともに、各板状突起が上蓋の径方向外側に向けて伸びて上蓋最外径をなすことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るカートン用注出口において、ブリッジ破断手段はラチェット構造であり、ラチェット構造が中栓基部の外側に設けた複数のラチェット爪とTEバンドのバンド内周面に設けた複数のラチェット歯からなることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るカートン用注出口において、TEバンドは、上蓋最外径より径方向外側にあるバンド外周面にカートンの仮保持部を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るカートン用注出口において、中栓開孔と上蓋の間の密封手段は、ネジ筒の内部に形成するノズル筒において中栓開孔をなすノズル口と、上蓋の内側天面に形成し、前記ノズル口に挿入するインナーリングからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成により、上蓋閉栓時に上蓋掛かり部がTEバンド脱落防止部の端面に当接して上蓋軸心周りにおいて上蓋を受け止めることで、上蓋と中栓とのネジ接合のオーバーランを防止するので、上蓋を過剰に締め過ぎることが無くなるとともに、使用者に最適な締め付け位置に達したことを知らせることで使用者の労力を軽減できる。結果としてネジ接合の不具合により密封性が損なわれることが無くなる。
【0016】
さらに、ブリッジ破断後のTEバンドの脱落を防止する目的のTEバンド脱落防止部を、オーバーラン防止構造の構成要素と兼用することで、簡素な構造においてオーバーラン防止構造を実現できる。
【0017】
また、ストッパー構造により、製造工程において中栓に上蓋を装着する時にブリッジへの負担を低減することができ、ブリッジを破断することなく、中栓に上蓋を装着することができる。
【0018】
ローレットの放射状の板状突起が、上蓋の上蓋最外径をなして指掛かりを形成することで、上蓋に加える軸心周りのトルクが増加し、開封時、開封後の開閉時の上蓋の脱着操作を容易に行える。
【0019】
ブリッジ破断手段をラチェット構造とすることにより、中栓に上蓋を装着する時にはブリッジへの負担を低減し、開封時にはブリッジの破断を容易に行うことができる。
【0020】
TEバンド外周面に仮保持部を形成することにより、TEバンドの直径を大きくすることができ、TEバンドの視認性が向上する。
【0021】
密封手段が、ネジ筒の内部に形成するノズル筒のノズル口と、ノズル口に挿入するインナーリングからなることで、開閉動作時にネジ筒が変形しても、ネジ筒の変形がノズル筒に及ばず、密封に影響が出ず、より確実に密封を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るカートン用注出口を示す断面図
【
図2】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す正面図
【
図3】同実施の形態に係る上蓋のカートン用注出口の開封後の上蓋を示す下方斜視図
【
図4】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す上面図
【
図5】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す上方斜視図
【
図6】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す下方斜視図
【
図7】同実施の形態に係るカートン用注出口の中栓を示す断面図
【
図8】同実施の形態に係るカートン用注出口の中栓を示す上方斜視図
【
図9】同実施の形態に係るカートン用注出口の中栓を示す正面図
【
図10】同実施の形態に係るカートン用注出口の中栓を示す上面図
【
図11】本発明の他の実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す上方斜視図
【
図12】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す下方斜視図
【
図13】本発明のさらに他の実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す上方斜視図
【
図14】同実施の形態に係るカートン用注出口の上蓋を示す下方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカートン用注出口の実施の形態を
図1から
図10を参照して説明する。
(実施例1)
図1から
図10において、本発明に係るカートン用注出口は、スコアレスキャップをなし、紙等からなるカートン1に装着する中栓2と、中栓2に装着する上蓋3を備えており、
図1から
図10に示す開封前の状態において、上蓋3が後述するTEバンド29を、ブリッジ30を介して一体的に保持している。
【0024】
中栓2は、中栓軸心方向の一側がネジ筒4をなし、他側が中栓基部5をなし、ネジ筒4の内側にノズル筒6を有し、中栓軸心方向に貫通し、カートン1の内部を外部に連通させる中栓開孔7を有している。
【0025】
中栓基部5は、ネジ筒4に続く一側が環状の基盤部5aをなし、他側がカートン1に掛かり合うフランジ部5bをなし、基盤部5aの外周面に複数の、ここでは4つのラチェット爪5cを有している。複数のラチェット爪5cは、中栓軸心周りに等間隔で設けている。
【0026】
また、中栓基部5は、基盤部5aの外側面に中栓軸心周りに沿って間欠的に設けたTEバンド脱落防止部8を有している。ここでは、一対のTEバンド脱落防止部8を中栓軸心に対して対称の位置に、かつ各TEバンド脱落防止部8を中栓軸心周りに90度の範囲に設けており、一対のTEバンド脱落防止部8の間の欠落部が外部侵入水の排水路をなす。
【0027】
さらに、TEバンド脱落防止部8は、基盤部5aの外側面から中栓軸心方向に立ち上がり、バンド内周面29aとバンド径方向で対向し、先端部8bが中栓径方向外側に突出して、ブリッジ破断後のTEバンド29に掛かり合うアンダーカットの形状をなす。 また、TEバンド脱落防止部8は中栓軸心周りの端面8aがブリッジ破断後の上蓋閉栓時に後述する第1上蓋掛かり部3cに当接する。
【0028】
ネジ筒4は、外周面に雄ネジ部9を有し、ノズル筒6は、中栓開孔7をなすノズル口10を有しており、中栓基部側の外周にネジ筒4の内周面に続く接続部11を有している。
【0029】
上蓋3は、外周面に大型のローレット50を有している。ローレット50は上蓋軸心周りに放射状に配置した複数の、ここでは12枚の板状突起51からなり、上蓋軸心周りにおいて板状突起51の相互間が離隔して指掛かりを形成するとともに、各板状突起51が上蓋3の径方向外側に向けて鍔部3aの外周縁まで伸びて上蓋最外径をなし、上蓋3に加える軸心周りのトルクを増加させる入力部52をなす。
【0030】
また、上蓋3の鍔部3aは、開口縁に沿って上蓋軸心周りに環状をなし、鍔部3aの開口縁端面3bが上蓋軸心方向でTEバンド29のバンド上面29bに対向している。開口縁端面3bには、複数の、ここでは上蓋軸心に対して対称の位置に一対の第1上蓋掛かり部3cを設け、さらに上蓋軸心に対して対称の位置に第2上蓋掛かり部3dを設けており、第1上蓋掛かり部3cと第2上蓋掛かり部3dは上蓋軸心周りで90度に離隔している。
【0031】
第1上蓋掛かり部3cは、上蓋径方向内側に延びてTEバンド脱落防止部8の端面8aに当接可能な形状をなし、第2上蓋掛かり部3dは、後述するTEバンド29の当たり止め部29dに当接可能な形状をなす。
【0032】
さらに、上蓋3は、内周面にネジ筒4の雄ネジ部9にネジ接合する雌ネジ部12を有しており、内側天面にノズル口10に挿入する第1インナーリング13とネジ筒4の内側に挿入する第2インナーリング14を有している。上蓋3の雌ネジ部12は、ネジ山15を上蓋3軸心周りにおいて間欠的に形成しており、ネジ山15の欠落部が外部侵入水の排水路16をなす。
【0033】
第2インナーリング14は、上蓋3軸心方向において一側先端の端面17がノズル筒6の接続部11に当接し、一側先端の外周面19がネジ筒4の内周面20に当接して変形抑止部21を形成している。
【0034】
第1インナーリング13はノズル口10の内周面22に当接して最内側シール部23を形成している。第2インナーリング14は、一側先端の端面17がノズル筒6の接続部11に当接して中間シール部24を形成し、一側先端の外周面19がネジ筒4の内側面に当接して最外側シール部25を形成している。よって、上蓋3の外側と中栓2の内側との間には、多重のシール部からなる密封構造が存在する。
【0035】
また、密封手段が、ネジ筒4の内部に形成するノズル筒6のノズル口10と、ノズル口10に挿入する第1インナーリング13からなることで、開閉動作時にネジ筒4が変形しても、ネジ筒4の変形がノズル筒6に及ばず、密封に影響が出ず、より確実に密封を達成することができる。
【0036】
また、ノズル筒6は、尖がり状に突出する形状をなし、ノズル口10を形成する直筒部26と、接続部11から直筒26に続く円錐状の裾部27を有し、裾部27に径方向内側への変形が容易な薄肉の変形容易部28を有している。さらに、上蓋3は、開口側に中栓基部5の外周に嵌合する環状のTEバンド29を、ブリッジ30を介して保持している。
【0037】
TEバンド29は、上蓋最外径より径方向外側にあるバンド外周面29cにバンド径方向外側に突出してカートン1の表面側に掛かり合う複数の仮保持部32を有している。仮保持部32はバンド外周面29cに適当間隔で設けている。また、バンド上面29bに上蓋軸心方向に突出する複数の、ここでは一対の当たり止め部29dを設けており、当たり止め部29dはバンド軸心に対して対称の位置に設けている。また、バンド内周面29aに周方向に適当間隔で複数のラチェット歯29eを設けており、上蓋3の軸心周りの開栓方向においてラチェット歯29eが中栓基部5のラチェット爪5cに掛かり合うラチェット構造を構成する。
【0038】
上記構成の作用を説明する。本発明に係るカートン用注出口によれば、ラチェット歯29eとラチェット爪5cが掛かり合うラチェット構造がブリッジ破断手段をなすことで、開封時にはブリッジ30の破断を容易に行うことができる。
【0039】
また、中栓基部5と上蓋3の間に、上蓋3の開口縁端面3bに設けた第1上蓋掛かり部3cとTEバンド脱落防止部8からなるオーバーラン防止構造を有する。すなわち、上蓋閉栓時に第1上蓋掛かり部3cが上蓋軸心周りでTEバンド脱落防止部8の端面8aに当接し、TEバンド脱落防止部8が上蓋軸心周りにおいて上蓋3を受け止めることで、上蓋3と中栓2とのネジ接合のオーバーランを防止するので、上蓋3を過剰に締め過ぎることが無くなるとともに、使用者に最適な締め付け位置に達したことを知らせることで使用者の労力を軽減できる。結果としてネジ接合の不具合により密封性が損なわれることが無くなる。
【0040】
さらに、ブリッジ破断後のTEバンド29の脱落を防止する目的のTEバンド脱落防止部8を、オーバーラン防止構造の構成要素と兼用することで、簡素な構造においてオーバーラン防止構造を実現できる。
【0041】
また、上蓋3とTEバンド29の間に、TEバンド29の当たり止め部29dと上蓋3の第2上蓋掛かり部3dからなるストッパー構造を有する。すなわち、製造工程において中栓に上蓋3を装着する時に第2上蓋掛かり部3dが上蓋軸心周りで当たり止め部29dに掛かり合って、ブリッジ30の破断を防止する。
【0042】
また、ローレット50の放射状の板状突起51が、上蓋3の上蓋最外径をなして指掛かりを形成することで、上蓋3に加える軸心周りのトルクが増加し、開封時、開封後の開閉時の上蓋の脱着操作を容易に行える。
【0043】
さらに、第2インナーリング14の一側先端の外周面19がネジ筒6の内周面20に当接することで、上蓋3の締め付け時にネジ筒4に作用する径方向内側への力に対して第2インナーリング14がバックアップとして作用し、ネジ筒6の変形を抑止する。
【0044】
結果として、上蓋3の雌ネジ部12と中栓基部3の雄ネジ部9のネジ接合の不具合により密封性が損なわれることが無くなる。
【0045】
ノズル筒6が薄肉の変形容易部28を有することで、成形時にアンダーカットとなる雄ネジ部9を容易に離型させることができる。すなわち、ノズル筒6が薄肉の変形容易部28において変形することで、ネジ筒4の径方向内側への変形を許容し、離型時の雄ネジ9の損傷を防止できる。
【0046】
上蓋3の外側と中栓2の内側との間に、多重のシール部からなる密封構造を備えることで、密封性が向上する。
(実施例2)
実施例2は、
図11と
図12に示すように、上蓋3の鍔部3aの半径をローレット50の最外径よりも小さくすることで、板状突起51の相互間にTEバンド29のバンド上面29bを露出させ、TEバンド29の視認性が向上する。他の作用効果は、先の実施例1と同様であり、説明を省略する。
(実施例3)
実施例3は、
図13と
図14に示すように、上蓋3に形成するローレット50が8枚の板状突起51を備える構成を示すものである。実施例2と同様に、上蓋3の鍔部3aの半径をローレット50の最外径よりも小さくすることで、板状突起51の相互間にTEバンド29のバンド上面29bを露出させ、TEバンド29の視認性が向上する。他の作用効果は、先の実施例1と同様であり、説明を省略する。
【符号の説明】
【0047】
1 カートン
2 中栓
3 上蓋
3a 鍔部
3b 開口縁端面
3c 第1上蓋掛かり部
3d 第2上蓋掛かり部
4 ネジ筒
5 中栓基部
5a 基盤部
5b フランジ部
5c ラチェット爪
6 ノズル筒
7 中栓開孔
8 TEバンド脱落防止部
8a 端面
8b 先端部
9 雄ネジ部
10 ノズル口
11 接続部
12 雌ネジ部
13 第1インナーリング
14 第2インナーリング
15 ネジ山
16 排水路
17 端面
19 外周面
20 内周面
21 変形抑止部
22 内周面
23 最内側シール部
24 中間シール部
25 最外側シール部
26 直筒部
27 裾部
28 変形容易部
29 TEバンド
29a バンド内周面
29b バンド上面
29c バンド外周面
29d 当たり止め部
29e ラチェット歯
30 ブリッジ
32 仮保持部
50 ローレット
51 板状突起
52 入力部