(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147312
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粉体材料の焼成方法および粉体材料を焼成するための焼成用耐火袋
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20231005BHJP
F27B 9/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F27D3/12 E
F27B9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054728
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】井貝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小野田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智実
(72)【発明者】
【氏名】松永 健嗣
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA04
4K050BA16
4K050CD06
4K050CD13
4K050CD14
4K050CF06
4K050CF16
4K050CG04
4K050CG29
4K055AA06
4K055HA02
4K055HA13
4K055HA15
4K055HA21
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】焼成用耐火物の腐食を抑制する。
【解決手段】粉体材料Aの焼成方法は、粉体材料Aを、粉体材料Aを収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んだ焼成用耐火袋60に収容する工程と、焼成用耐火袋60に収容された粉体材料Aを焼成用耐火物50に載せて焼成する工程とを備えている。セラミック繊維は、アルミナ繊維であってもよい。焼成用耐火袋60は、開口64を有していてもよい。収容する工程は、開口64から粉体材料Aを投入することと、開口64を閉じることとを含んでいてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体材料を、前記粉体材料を収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んだ焼成用耐火袋に収容する工程と、
前記焼成用耐火袋に収容された前記粉体材料を焼成用耐火物に載せて焼成する工程と
を備える、
粉体材料の焼成方法。
【請求項2】
前記セラミック繊維は、アルミナ繊維である、請求項1に記載された焼成方法。
【請求項3】
前記焼成用耐火袋は、開口を有し、
前記収容する工程は、前記開口から前記粉体材料を投入することと、前記開口を閉じることとを含む、請求項1または2に記載された焼成方法。
【請求項4】
前記焼成用耐火袋は、前記開口を閉じるセラミック繊維の紐を有し、
前記収容する工程は、前記開口から前記粉体材料を投入した後に、前記紐によって前記開口を閉じることを含む、請求項3に記載された焼成方法。
【請求項5】
前記収容する工程は、前記焼成用耐火袋を前記焼成用耐火物に載せた状態で前記焼成用耐火袋に前記粉体材料を収容することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載された焼成方法。
【請求項6】
前記焼成用耐火物は、平板状である、請求項1~5のいずれか一項に記載された焼成方法。
【請求項7】
粉体材料を内部に収容する本体と、
前記本体の一部に設けられ、前記粉体材料を投入するための開口と
を備え、
前記本体は、前記粉体を収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含む、
粉体材料を焼成するための焼成用耐火袋。
【請求項8】
前記セラミック繊維は、アルミナ繊維である、請求項7に記載された焼成用耐火袋。
【請求項9】
前記開口を閉じるセラミック繊維の紐をさらに備える、請求項7または8に記載された焼成用耐火袋。
【請求項10】
前記本体は、前記焼成用耐火物に接する底部と、前記底部から延びる側部とを有し、前記開口は、前記側部のうち前記底部と反対側の端部に形成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載された焼成用耐火袋。
【請求項11】
前記本体は、第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有し、
前記開口は、前記第1面と前記第2面によって形成されている、請求項7または8に記載された焼成用耐火袋。
【請求項12】
前記第1面は、平面視において、前記第2面のうち前記開口を形成している部位に対してはみ出した部位を有し、前記はみ出した部位が折り返されることによって、前記開口が閉じられるように構成されている、請求項11に記載された焼成用耐火袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体材料の焼成方法および粉体材料を焼成するための焼成用耐火袋に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002-235987号公報には、内側層と、外側層と、中間層とから構成されている耐熱容器が開示されている。内側層には、高純度アルミナやジルコニアなどの耐腐食材料が用いられている。外側層には、チタン酸アルミニウムなどの耐熱材料が用いられている。中間層には、グラスウールやアルミナ綿などの緩衝材料が用いられている。かかる構成の耐熱性容器は、ヒートショックに十分に耐えることができ、また、十分な耐腐食性を有するとされている。
【0003】
特開平10-167840号公報には、アルミナ、ムライト、ジルコニア、シリカ、窒化珪素、炭化珪素から選択されるセラミックスの基板と、当該基板上にジルコニア粒子層とマグネシア粒子層がこの順で積層された焼成治具が開示されている。かかる構成の焼成治具は、アルミナと反応性が高いセラミックス製品の焼成に適しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-235987号公報
【特許文献2】特開平10-167840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉体材料を焼成炉で処理する際には、粉体材料は、焼成用耐火物に載置されて焼成されうる。粉体材料が焼成される際に、粉体材料と焼成用耐火物が反応することにより、焼成用耐火物が腐食しうる。本発明者は、焼成用耐火物の腐食を抑制したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される粉体材料の焼成方法は、粉体材料を、粉体材料を収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んだ焼成用耐火袋に収容する工程と、焼成用耐火袋に収容された粉体材料を焼成用耐火物に載せて焼成する工程とを備えている。
かかる焼成方法によると、焼成用耐火物の腐食が抑制される。
【0007】
セラミック繊維は、アルミナ繊維であってもよい。
焼成用耐火袋は、開口を有していてもよい。収容する工程は、開口から粉体材料を投入することと、開口を閉じることとを含んでいてもよい。
焼成用耐火袋は、開口を閉じるセラミック繊維の紐を有していてもよい。収容する工程は、開口から粉体材料を投入した後に、紐によって開口を閉じることを含んでいてもよい。
収容する工程は、焼成用耐火袋を焼成用耐火物に載せた状態で焼成用耐火袋に粉体材料を収容することを含んでいてもよい。
焼成用耐火物は、平板状であってもよい。
【0008】
ここで開示される焼成用耐火袋は、粉体材料を内部に収容する本体と、本体の一部に設けられ、粉体材料を投入するための開口とを備えている。本体は、粉体を収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んでいる。
かかる焼成用耐火袋を用いることによって、焼成用耐火物の腐食が抑制される。
【0009】
セラミック繊維は、アルミナ繊維であってもよい。
焼成用耐火袋は、開口を閉じるセラミック繊維の紐をさらに備えていてもよい。
本体は、焼成用耐火物に接する底部と、底部から延びる側部とを有していてもよい。開口は、側部のうち底部と反対側の端部に形成されていてもよい。
本体は、第1面と、第1面と対向する第2面とを有していてもよい。開口は、第1面と第2面によって形成されていてもよい。
第1面は、平面視において、第2面のうち開口を形成している部位に対してはみ出した部位を有していてもよい。はみ出した部位が折り返されることによって、開口が閉じられるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、粉体処理設備10を示す模式図である。
【
図2】
図2は、焼成用耐火袋60を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、焼成用耐火物55を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。図中の実線の矢印は、焼成用耐火物が搬送される方向を示している。図中の破線の矢印は、焼成用耐火袋に対して粉体材料を入れる方向を示している。なお、本明細書において数値範囲をA~B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、A以上B以下(Aを上回るがBを下回る範囲を含む)を意味するものである。以下では、一例として、粉体処理設備を用いて粉体材料を焼成する方法を説明する。
【0012】
〈粉体処理設備10〉
図1は、粉体処理設備10を示す模式図である。
図1に示されているように、粉体処理設備10は、搬送路20と、供給装置30と、焼成炉40とを備えている。粉体処理設備10では、粉体材料Aが焼成用耐火物50に載せられた状態で搬送路20上を搬送され、焼成される。この実施形態では、粉体材料Aは、リチウム複合金属酸化物である。
【0013】
〈焼成用耐火物50〉
焼成用耐火物50は、焼成炉40での加熱に耐えうる耐熱性を有する耐火物である。焼成用耐火物50の材質は、粉体材料Aの種類や焼成条件に応じて適宜選択される。焼成用耐火物50としては、例えば、ムライト・コーディライト、ムライト、アルミナ、スピネル・コーディライト、マグネシア、ジルコニア、炭化ケイ素、カーボン等から構成されているものが用いられうる。この実施形態では、焼成用耐火物50としては、サヤとも称される箱型の耐火物が用いられている。
【0014】
焼成用耐火物50は、底板52と、側板54とを備えている。底板52は、粉体材料Aが載せられる部位である。底板52は、平面視において略正方形の形状である。側板54は、粉体材料Aが載せられた際に、粉体材料Aを囲う部位である。側板54は、底板52の縁の各辺から上方に延びた略矩形の板である。なお、焼成用耐火物50の形状は特に限定されない。例えば、底板52の形状は、正方形に限定されず、矩形であってもよく、四角形以外の多角形であってもよく、円を含んだ楕円であってもよい。また、側板54の形状は特に限定されない。側板54は、例えば、上部に窪みが形成されていてもよい。
【0015】
〈搬送路20〉
搬送路20は、焼成用耐火物50が搬送される経路である。搬送路20は、粉体処理設備10内において、焼成用耐火物50を供給装置30および焼成炉40に向かって搬送する。この実施形態では、搬送路20は、搬送方向に沿って並べられた搬送ローラ20から構成されている。搬送ローラ20は、円筒形状のローラである。搬送ローラ20は、焼成用耐火物50を支持できるように高さを揃えられ、予め定められたピッチで並べられている。特に限定されないが、搬送ローラ20としては、例えば、セラミックローラや金属ローラ等が用いられる。搬送ローラ20は、図示しない軸受を介して回転可能に構成されている。搬送ローラ20は、搬送ローラ20の回転を駆動するモータ等の駆動装置や、隣接する搬送ローラ20を接続するスプロケット等によって回転駆動されるように構成されていてもよい。
【0016】
搬送路20は、粉体処理設備10の領域ごとに搬送速度を個別に設定可能に構成されていてもよい。例えば、この実施形態では、供給装置30が設けられている位置では、粉体材料Aが供給される間、搬送が停止されうる。供給装置30が設けられている位置では、搬送ローラ20の回転と停止が切り替え可能に構成されている。
【0017】
なお、搬送路20の構成は、上述した搬送ローラ20に限られない。搬送路20は、例えば、金属製のベルトコンベアであってもよい。搬送路20は、粉体処理設備10の領域ごとに異なる構成であってもよい。例えば、搬送路20には、搬送ローラの領域と、ベルトコンベアの領域との両方が設定されていてもよい。また、粉体処理設備10には、必ずしも搬送路20が設けられている必要はない。例えば、焼成用耐火物50は、リフト等の他の手段で設備間を運搬されてもよい。
【0018】
〈供給装置30〉
供給装置30は粉体材料Aを供給する装置である。詳細な図示は省略するが、供給装置30は、供給される粉体材料Aを収容するホッパーと、ホッパーに収容されている粉体材料Aを焼成用耐火物50に供給するフィーダーとを備えている。供給装置30からは、予め定められた量の粉体材料Aが供給される。粉体処理設備10には、焼成用耐火物50を振動させ、供給装置30から供給された粉体材料Aを均すための機構が設けられていてもよい。
【0019】
〈焼成炉40〉
焼成炉40は、粉体材料Aを搬送方向に沿って搬送しつつ、連続的に加熱処理する加熱炉である。この実施形態では、焼成炉40は、搬送ローラの回転によって被処理物を搬送しつつ加熱する、いわゆるローラハースキルン(RHK)である。焼成炉40は、トンネル状の炉体42を備えている。炉体42の内部には、搬入口40aから搬出口40bに向かって焼成用耐火物50が搬送される搬送空間が形成されている。炉体42内の搬送空間には、搬送ローラ20が通っている。搬入口40aおよび搬出口40bには、炉体42の内部と外部の雰囲気を区切る扉やシャッタや扉等が設けられていてもよい。
【0020】
搬送空間には、ヒータ44が設けられている。ヒータ44は、粉体材料Aを加熱するための装置である。ヒータ44は、搬送路20の上方および下方に設けられている。この実施形態では、ヒータ44として、セラミック製のヒータが用いられている。なお、ヒータ44は、セラミック製のヒータに限定されない。ヒータ44としては、加熱条件等に応じて種々のヒータが用いられうる。ヒータ44としては、例えば、金属シースヒータ等が用いられうる。また、ヒータ44の形状は特に限定されず、例えば、板状のパネルヒータ等が用いられてもよい。
【0021】
炉体42は、搬送方向周りを全周に亘って断熱材によって構成されている。炉体42は、例えば、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードが重ねられて構成されうる。セラミックファイバーボードは、例えば、いわゆるバルクファイバーに無機フィラーと無機・有機結合材とが添加されて板状に成形された板材である。炉壁の厚さは、搬送空間の熱が十分に断熱される程度の所要の厚さに設定されている。
【0022】
なお、焼成炉40の構成は、上述したような連続焼成炉に限定されない。焼成炉40は、例えば、焼成炉40内の搬送路20として金属製のベルトコンベアが用いられている、いわゆるメッシュベルトキルン(MBK)であってもよい。焼成炉40は、例えば、焼成炉40内の搬送路20として搬送方向に沿って延びるレールが用いられている、いわゆるプッシャ式の連続焼成炉であってもよい。また、焼成炉40は、連続式の焼成炉に限定されず、粉体材料Aが内部に定置された状態で加熱処理が行われる、いわゆるバッチ式の焼成炉であってもよい。焼成炉40は、炉体42内の雰囲気が制御された雰囲気炉であってもよい。焼成炉40は、搬入口40aおよび搬出口40bが大気開放された大気炉であってもよい。焼成炉40では、粉体材料Aは、焼成用耐火袋60に収容された状態で焼成される。
【0023】
〈焼成用耐火袋60〉
焼成用耐火袋60は、粉体材料Aの焼成に用いる袋であり、粉体材料Aを内部に収容する。焼成時、焼成用耐火袋60は、内部に収容された粉体材料Aと、焼成用耐火物50との間に介在する。焼成用耐火袋60は、粉体を収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んでいる。焼成用耐火袋60は、セラミック繊維がシート状に編み込まれたセラミッククロスから構成されている。セラミック繊維は、アルミナおよびシリカを主成分とした無機繊維である。セラミック繊維としては、耐熱性、柔軟性、耐腐食性の観点から、アルミナ含有率が高いアルミナ繊維が好ましく用いられる。アルミナ繊維のアルミナ含有率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、90%以上であってもよい。セラミッククロスを構成するセラミック繊維の繊維径、セラミッククロスの厚み、セラミッククロスの織密度等は、粉体材料Aの種類や粒径等によって適宜選択されるとよい。例えば、収容される粉体材料Aが網目などの隙間から抜け出ないことや、雰囲気ガスの通気性などの条件を基に、セラミック繊維の繊維径、セラミッククロスの厚み、セラミッククロスの織密度や網目の大きさ等が選定されるとよい。
【0024】
図2は、焼成用耐火袋60を模式的に示す斜視図である。焼成用耐火袋60は、内部に粉体材料Aを収容可能に構成されている。焼成用耐火袋60は、例えば、セラミッククロスがセラミック繊維から構成された糸によって縫い合わされて袋の形状に形成されたものでありうる。
図2に示されているように、焼成用耐火袋60は、粉体材料Aを内部に収容する本体62と、粉体材料Aを投入するための開口64とを備えている。開口64は、本体62の一部に設けられている。
【0025】
この実施形態では、焼成用耐火袋60の本体62は、底部62aと、側部62bとを有している。底部62aは、焼成用耐火物50に接する部位である。また、底部62aには、本体62に収容された粉体材料Aが載せられる部位である。底部62aは、平面視において、角部にRが形成された略正方形の形状である。なお、底部62aの形状は特に限定されない。より多くの粉体材料Aを収容できるように、底部62aの形状は、底部62aが載せられる焼成用耐火物50の形状に応じて決められてもよい。
【0026】
側部62bは、底部62aから延びる部位である。側部62bは、収容される粉体材料Aが焼成用耐火袋60からこぼれないように、底部62aの縁の全周から延びている。換言すると、側部62bの一方の端部は、全周に亘って底部62aと繋がっている。側部62bの他方の端部(側部62bののうち底部62aと反対側の端部)は、開口64を形成している。
【0027】
この実施形態では、焼成用耐火袋60は、セラミック繊維の紐66を有している。紐66によって、焼成用耐火袋60が閉じられる。紐66は、セラミック繊維が撚り合わされて構成されている。粉体材料Aと接触した場合にも腐食されにくくする観点から、紐66は、セラミック繊維から構成されていることが好ましい。この実施形態では、開口64付近には、紐66を挿通させる挿通部66aが設けられている。挿通部66aでは、セラミッククロスが二重になっている。挿通部66aは、側部62bを構成する1枚のセラミッククロスが開口64で折り返されて形成されてもよい。また、挿通部66aは、側部62bを構成するセラミッククロスに、他のセラミッククロスが重ねて縫い合わされて形成されてもよい。挿通部66aは、挿通された紐66の出入口66bの間を除いて、開口64に沿って連続的に形成されている。なお、挿通部66aは、必ずしも連続的に形成されている必要はなく、間欠的に形成されていてもよい。
【0028】
〈粉体材料Aの焼成方法〉
上述した粉体処理設備10を用いて粉体材料Aが焼成される。ここで開示される粉体材料の焼成方法は、粉体材料Aを焼成用耐火袋60に収容する工程と、焼成用耐火袋60に収容された粉体材料Aを焼成用耐火物50に載せて焼成する工程とを備えている。この実施形態では、粉体材料Aを焼成用耐火袋60に収容する工程は、焼成用耐火袋60を焼成用耐火物50に載せた状態で焼成用耐火袋60に粉体材料Aを収容することを含んでいる。
【0029】
図1に示されているように、はじめに、焼成用耐火袋60が焼成用耐火物50にセットされた状態で、焼成用耐火物50が搬送路20に載せられる。この時、焼成用耐火袋60は、開口64が上方に向かって開かれた状態で、底部62aが焼成用耐火物50に配置されうる。ここでは、焼成用耐火袋60を焼成用耐火物50にセットしてから焼成用耐火物50を搬送路20に載せてもよく、焼成用耐火物50を搬送路20に載せた状態で焼成用耐火袋60を焼成用耐火物50にセットしてもよい。焼成用耐火袋60が載せられた焼成用耐火物50は、搬送路20上を搬送方向に沿って搬送される。
【0030】
〈粉体材料Aを焼成用耐火袋60に収容する工程〉
粉体材料Aを焼成用耐火袋60に収容する工程は、開口64から粉体材料Aを投入することと、開口64を閉じることとを含んでいる。供給装置30が設けられている位置まで焼成用耐火物50が搬送されると、焼成用耐火物50の搬送は、停止される。焼成用耐火物50は、例えば、供給装置30のフィーダーの直下の予め定められた位置で停止される。特に限定されないが、搬送路20には、供給装置30が設けられている位置まで焼成用耐火物50が搬送されたことを検知するセンサが設けられていてもよい。焼成用耐火物50が停止されると、供給装置30から粉体材料Aが供給される。搬送路20での焼成用耐火物50の搬送および停止、供給装置30からの粉体材料Aの供給等は、シーケンス制御によって実現されていてもよい。
【0031】
焼成用耐火袋60に粉体材料Aが供給されると、次いで、焼成用耐火袋60の開口64が閉じられる。この実施形態では、焼成用耐火袋60は、紐66が引かれることで挿通部66aが絞られて、開口64が閉じられる。粉体材料Aを焼成用耐火袋60から漏れにくくするために、紐66が結ばれてもよい。なお、開口64は、供給装置30によって粉体材料Aが供給された位置で閉じられてもよく、異なる位置まで搬送されてから閉じられてもよい。焼成用耐火袋60の開口64が閉じられると、焼成用耐火物50は、焼成炉40に向かって搬送される。
【0032】
なお、焼成用耐火袋60の開口64は、完全に閉じられる必要はない。例えば、焼成時に粉体材料Aから発生するガスを排気するために、開けられていてもよい。ガスを排気する量を調整するために、開口64の閉じ具合が調整されてもよい。紐66の引きを調整することによって、開口64の閉じ具合が調整されうる。このように、紐66が設けられていることによって、開口64が容易に閉じられうる。また、ガス排気のための開口量が容易に調整されうる。
【0033】
〈粉体材料Aを焼成する工程〉
粉体材料Aを焼成する工程では、焼成炉40で粉体材料Aが焼成される。焼成用耐火袋60に収容された粉体材料Aは、焼成用耐火物50に載せられた状態で搬入口40aから搬入される。粉体材料Aは、焼成炉40内で焼成される。粉体材料Aの焼成温度は特に限定されず、例えば、炉内温度は、500℃~1200℃程度に設定されうる。粉体材料Aがリチウム複合金属酸化物の場合は、炉内温度は、600℃~1100℃程度に設定されうる。粉体材料Aが焼成されると、焼成用耐火物50は、搬出口40bから搬出される。搬出された焼成用耐火袋60からは、焼成された粉体材料Aが取り出される。粉体材料Aが取り出された焼成用耐火袋60は、一度使用された後に廃棄されてもよく、劣化度に応じて再利用されてもよい。
【0034】
ところで、粉体材料を焼成用耐火物に載せて焼成する場合には、粉体材料と焼成用耐火物が反応することにより焼成用耐火物が腐食されうる。腐食された焼成用耐火物の廃棄には、スペースの制約がある場合があり、また、コストもかかる。
【0035】
上述した実施形態では、粉体材料Aの焼成方法は、粉体材料Aを、粉体材料Aが収容可能に編み込まれたセラミック繊維を含んだ焼成用耐火袋60に収容する工程と、焼成用耐火袋60に収容された粉体材料Aを焼成用耐火物50に載せて焼成する工程とを備えている。かかる製造方法によると、粉体材料Aと焼成用耐火物50が接触しない状態で粉体材料Aが焼成される。これによって、焼成用耐火物50の腐食が抑えられる。焼成用耐火袋60は、焼成用耐火物50と比較して廃棄する際のスペースが小さくてよく、また、安価である。このため、消耗品の廃棄も含めた、粉体材料Aの焼成にかかるコストを下げることができる。
【0036】
なお、焼成用耐火袋60は、焼成条件に応じた構成にされうる。例えば、焼成用耐火物50と粉体材料Aの間に介在する底部62aには、焼成用耐火物50と粉体材料Aを接触しにくくするために、織密度が高いセラミッククロスが用いられていてもよい。焼成時に発生するガスを排気しやすくするため、側部62bには、織密度が低いセラミッククロスが用いられていてもよい。側部62bにおいても、部位ごとに異なるセラミッククロスが用いられていてもよい。例えば、底部62a側の下部と開口64側の上部とでは、上部に織密度が低いセラミッククロスが用いられていてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、焼成用耐火袋60は、開口64を有しており、収容する工程は、開口64から粉体材料Aを投入することと、開口64を閉じることとを含んでいる。開口64が閉じられることによって、粉体材料Aがこぼれにくくなる。また、粉体材料Aが炉内に散逸しにくくなる。その結果、焼成用耐火物50や焼成炉40の炉内設備が腐食されにくくなる。
【0038】
上述した実施形態では、焼成用耐火袋60の本体62は、焼成用耐火物50に接する底部62aと、底部62aから延びる側部62bとを有している。開口64は、側部62bのうち底部62aと反対側の端部に形成されている。かかる焼成用耐火袋60は、多量の粉体材料Aを収容できるため、焼成効率が向上しうる。また、多量の粉体材料Aを焼成する場合にも、底部62aと側部62bが焼成用耐火物50と粉体材料Aの間に介在するため、焼成用耐火物50が腐食されにくい。
【0039】
上述した実施形態では、焼成用耐火物50としては、サヤとも称される箱型の耐火物が用いられている。しかしながら、焼成用耐火物の形状は、かかる形態に限定されない。
図3は、焼成用耐火物55を示す模式図である。
図3では、焼成用耐火物55に粉体材料Aが収容される工程が模式的に示されている。
図3に示されているように、焼成用耐火物55は、平板状である。かかる焼成用耐火物55は、セッターとも称される。焼成用耐火物55の形状は特に限定されない。
【0040】
ところで、平板状の焼成用耐火物は、箱型の焼成用耐火物と比較して収納スペースが狭くてもよく、かつ、安価である。しかしながら、平板状の焼成用耐火物を用いて粉体材料を焼成する場合、粉体材料の量は、焼成用耐火物からこぼれない程度の量に限られる。このため、側板を有する箱型の焼成用耐火物を用いて焼成する場合と比較して一度に焼成できる粉体材料の量が限られる。上述した焼成用耐火袋60を用いて粉体材料Aを焼成する場合には、
図3に示されているように、粉体材料Aが焼成用耐火袋60に収容されていることによって、粉体材料Aが焼成用耐火物55からこぼれにくくなっている。このため、平板状の焼成用耐火物55を用いた場合にも一度に多くの量の粉体材料Aを焼成することができ、また、焼成用耐火物55や焼成炉40の炉内設備の腐食が抑制されうる。
【0041】
上述した実施形態では、焼成用耐火袋60は、底部62aと、側部62bを有している。しかしながら、焼成用耐火袋の形状は、様々に変形、変更されてもよい。
図4および
図5は、焼成用耐火袋70の模式図である。
図4に示されているように、焼成用耐火袋70は、本体72と、粉体材料Aを投入するための開口74とを備えている。本体72は、第1面72aと、第2面72bとを有している。開口74は、第1面72aと、第2面72bによって形成されている。第1面72aと第2面72bは、それぞれ略矩形のセラミッククロスから構成されており、互いに対向している。第2面72bの縁は、開口74を除いて第1面72aと繋がっている。この実施形態では、第2面72bのうち3辺は、第1面72aと繋がっている。残りの1辺は、第1面72aとは繋がっておらず、開口74を形成している。
【0042】
第1面72aは、平面視において、第2面72bのうち開口74を形成している部位72b1に対してはみ出した部位72a1を有している。
図5に示されているように、開口74は、第2面72bのうち開口74を形成している部位72b1と対応する部位72a2において、はみ出した部位72a1が折り返されることによって閉じられるように構成されている。かかる焼成用耐火袋70では、容易に開口74が閉じられうる。
【0043】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10 粉体処理設備
20 搬送路(搬送ローラ)
30 供給装置
40 焼成炉
50 焼成用耐火物
52 底板
54 側板
55 焼成用耐火物
60 焼成用耐火袋
62 本体
62a 底部
62b 側部
64 開口
66 紐
66a 挿通部
66b 出入口
70 焼成用耐火袋
72 本体
72a 第1面
72b 第2面
74 開口
A 粉体材料