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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147313
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】光量調整装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20231005BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20231005BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231005BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
G03B11/00
G02B5/00 A
H04N5/232
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054737
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】322002355
【氏名又は名称】株式会社システム・ツー・スリー
(71)【出願人】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 滋之
(72)【発明者】
【氏名】斎田 有宏
【テーマコード(参考)】
2H042
2H083
5C122
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA08
2H042AA11
2H042AA22
2H083AA05
2H083AA07
2H083AA19
2H083AA26
2H083AA33
2H083AA53
5C122EA02
5C122FB17
5C122FF07
5C122GE11
5C122HA75
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】減衰量を調整可能な可変型NDフィルタが経年劣化した場合であっても誤差を較正することによって、可変型NDフィルタがより長期間使用可能になる他、カメラ側からの情報を取得することなく可変型NDフィルタによる減光量の調整を自動制御することができる透過率調整装置を提供することを課題とする。
【解決手段】光の減光量を調整可能に構成された可変型のNDフィルタと、前記NDフィルタの減光量の設定操作を行う操作手段と、前記NDフィルタによる減光量を調整する調整手段と、入射光量を検出する入射光量センサと、出射光量を検出する出射光量センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記設定手段により操作された前記NDフィルタの減光量の設定値と、各光量センサにより検出された入射光量と出射光量とから算出された減光量の検出値との間に所定以上の誤差がある場合には、その誤差を調整する較正制御が実行可能に構成された。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の減光量を調整可能に構成された可変型のNDフィルタと、
前記NDフィルタの減光量の設定操作を行う操作手段と、
前記NDフィルタによる減光量を調整する調整手段と、
前記NDフィルタに入射する光量を検出する入射光量センサと、
前記NDフィルタから出射される光量を検出する出射光量センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記設定手段により操作された前記NDフィルタの減光量の設定値と、各光量センサにより検出された入射光量と出射光量とから算出された減光量の検出値との間に所定以上の誤差がある場合には、その誤差を調整する較正制御が実行可能に構成された
光量調整装置。
【請求項2】
光の減光量を調整可能に構成された可変型のNDフィルタと、
前記NDフィルタの減光量の設定操作を行う操作手段と、
前記NDフィルタによる減光量を調整する調整手段と、
前記NDフィルタから出射される光量を検出する出射光量センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記NDフィルタによって減光された出射光量が予め設定した設定光量となるように減衰量を調整する設定制御が実行可能に構成された
光量調整装置。
【請求項3】
前記NDフィルタは、前記操作手段によって設定可能な範囲よりも減光量が大きい範囲まで減光可能に形成された
請求項1又は2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記NDフィルタは、透明体に光の透過率が連続的に変化するように光学膜をグラデーション印刷することにより形成された
請求項1乃至3の何れかに記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記出射光量センサに所定光量の光を取り入れるための基準光源を設けた
請求項1乃至4の何れかに記載の光量調整装置。
【請求項6】
前記NDフィルタが内装されるケース体に、撮影ユニットが着脱可能に取付けられる取付機構が設けられた
請求項1乃至5の何れかに記載の光量調整装置。
【請求項7】
前記取付機構は、前記撮影ユニットのレンズの前方に前記NDフィルタが配置されるように構成された
請求項6に記載の光量調整装置。
【請求項8】
前記取付機構は、前記撮影ユニットのカメラ本体とレンズとの間に前記NDフィルタが配置されるように構成された
請求項6に記載の光量調整装置。
【請求項9】
前記NDフィルタは、撮影ユニットを構成するカメラ本体に内装された
請求項1乃至5の何れかに記載の光量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影ユニットに取付けられることにより撮影ユニットが取入れる光量を調整することができる光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影ユニットに透過率を連続的に調整可能なNDフィルタを設けることにより、明るい屋外から暗い屋内へ移動した際や、暗い屋内から明るい屋外へ移動しながら継続的に撮影を行う場合に、撮影ユニットが取入れる光量を適宜調整することができるため、撮影される映像の品質を高く保つことができる特許文献1に記載の光量調整装置が従来公知である。
【0003】
上記文献によれば、レンズの円周方向に光透過率が連続して変化するように光学膜をグラデーション印刷によって形成したことにより、ターレット式のように光量を調整する際に瞬間的に暗くなることを防止して連続的に光量を調整できるものであるが、NDフィルタが長く使用されることによって経年劣化した場合に所望の性能が発揮されず、撮影される映像の品質に影響が出たり、取り換えによる手間とコストが増えたりする場合があるという課題があった。
【0004】
また、上記文献では、手動操作によって減光量の調整を行う場合には、撮影時に撮影環境の光量が変わった際にスムーズに減光量を調整することが困難な場合がある他、減光量を自動調整する場合には、光量調整装置にセットされるカメラから情報を取得する必要があるため、利用可能なカメラが限られて汎用性に欠けるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-243928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、減衰量を調整可能な可変型NDフィルタが経年劣化した場合であっても誤差を較正することによって、可変型NDフィルタがより長期間使用可能になる他、カメラ側からの情報を取得することなく可変型NDフィルタによる減光量の調整を自動制御することができる透過率調整装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、光の減光量を調整可能に構成された可変型のNDフィルタと、前記NDフィルタの減光量の設定操作を行う操作手段と、前記NDフィルタによる減光量を調整する調整手段と、前記NDフィルタに入射する光量を検出する入射光量センサと、前記NDフィルタから出射される光量を検出する出射光量センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記設定手段により操作された前記NDフィルタの減光量の設定値と、各光量センサにより検出された入射光量と出射光量とから算出された減光量の検出値との間に所定以上の誤差がある場合には、その誤差を調整する較正制御が実行可能に構成されたことを特徴としている。
【0008】
第2に、光の減光量を調整可能に構成された可変型のNDフィルタと、前記NDフィルタの減光量の設定操作を行う操作手段と、前記NDフィルタによる減光量を調整する調整手段と、前記NDフィルタから出射される光量を検出する出射光量センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記NDフィルタによって減光された出射光量が予め設定した設定光量となるように減衰量を調整する設定制御が実行可能に構成されたことを特徴としている。
【0009】
第3に、前記NDフィルタは、前記操作手段によって設定可能な範囲よりも減光量が大きい範囲まで減光可能に形成されたことを特徴としている。
【0010】
第4に、前記NDフィルタは、透明体に光の透過率が連続的に変化するように光学膜をグラデーション印刷することにより形成されたことを特徴としている。
【0011】
第5に、前記出射光量センサに所定光量の光を取り入れるための基準光源を設けたことを特徴としている。
【0012】
第6に、前記NDフィルタが内装されるケース体に、撮影ユニットが着脱可能に取付けられる取付機構が設けられたことを特徴としている。
【0013】
第7に、前記取付機構は、前記撮影ユニットのレンズの前方に前記NDフィルタが配置されるように構成されたことを特徴としている。
【0014】
第8に、前記取付機構は、前記撮影ユニットのカメラ本体とレンズとの間に前記NDフィルタが配置されるように構成されたことを特徴としている。
【0015】
第9に、前記NDフィルタは、撮影ユニットを構成するカメラ本体に内装されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
前記較正制御によれば、前記NDフィルタが日差しの強い環境での長期間の使用等によって褪色したことによって、前記設定手段による設置値通りの性能が発揮できなくなった場合であっても、製造時の設定値と実際の減光量との誤差を自動的に調整することによって前記NDフィルタを製造時のスペックと同じ性能で使用することができるため、NDフィルタの性能を維持した状態でより長期間に亘って使用することができる。
【0017】
前記設定制御によれば、前記出射光量センサによって検出される光量が予め設定された設定値となるように前記NDフィルタによる減光量を自動制御することができるため、例えば、屋内から屋外へ移動する場合等、撮影時の光量が急激に上昇する場面でも撮影される映像が明るすぎて見え難くなる事態を効率的に防止することができる他、屋外から屋内に移動する場合等、撮影時の光量が急激に減少する場合には、前記NDフィルタによる減光量を制御して(減らして)撮影される映像が暗くなることを防止することができる。また、当該構成を低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は、光量調整装置の使用態様を示した要部側断面図であり、(B)は、可変型NDフィルタの例を示した図である。
図2】光量調整装置に設けた光量センサを示した要部平断面図である。
図3】NDフィルタの製造時と褪色時の減光量(光学濃度)を示したグラフである。
図4】制御部のブロックである。
図5】較正制御を示したフロー図である。
図6】別実施例の光量調整装置に設けた光量センサを示した要部平断面図である。
図7】設定制御を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本実施形態に係る光量調整装置について説明する。図1(A)は、光量調整装置の使用態様を示した要部側断面図であり、図1(B)は、可変型NDフィルタの例を示した図であり、図2は、光量調整装置に設けた光量センサを示した要部平断面図であり、図3は、NDフィルタの製造時と褪色時の減光量(光学濃度)を示したグラフである。
【0020】
前記光量調整装置1は、減光量を無段階で調整することができる可変型のNDフィルタ(減光フィルタ、中性濃度フィルタ)2と、前記NDフィルタ2の減光量の設定操作を行う設定操作具(操作手段)5と、前記NDフィルタ2による減光量を調整(制御)する調整機構3と、前記NDフィルタ2に入射する入射光束の光量を検出する入射光量センサ4と、前記NDフィルタ2を通過して減光した出射光量を検出する出射光量センサ6と、バッテリ(電源)7と、制御部10とを備え、上記構成が内装される本体ケース(ケース体)8側に、カメラやテレビカメラ等からなる撮影ユニット9が着脱可能に構成されている(図1(A)参照)。
【0021】
また、前記光量調整装置1は、前記撮影ユニット9のレンズ9bの前方側に前記NDフィルタ2が配置されており(図1(A)参照)、前記NDフィルタ2を用いて前記撮影ユニット9に取込まれる光量を可視光線波長帯の全域に亘って均等に減光(減衰)することができるように構成されている。
【0022】
該構成によれば、前記光量調整装置1(NDフィルタ2)は、色彩に影響を与えることなく前記撮影ユニット9が取込む光の光量を減光することができるため、日光の強い環境で撮影される画像が白飛びすることなく高品質な画像・映像を撮影したり、絞りを開けて被写体深度を浅くして焦点の合っている場所以外をぼかしたり、シャッタースピードを遅くして長時間露出によって得られる特殊効果画像を撮影したりすることができる。以下、具体的な構成について説明する。
【0023】
前記NDフィルタ2は、図1(B)に示されるように、円盤状に形成された透明板の円周方向に光透過率(光学濃度)が連続的に変化するように光学膜をグラデーション状に形成(印刷)したグラデーションNDフィルタ(可変式NDフィルタ)である。該グラデーションNDフィルタ2は、前記本体ケース8側に形成された入射孔8aから入射した光(入射光束)を減光し、前記本体ケース8側に形成された出射孔8bから減光した光(出射光束)を出射することができるように構成されている(図1(A)、図2等参照)。
【0024】
また、該グラデーションNDフィルタ2は、前記本体ケース8の内部で回転可能に軸支されており、前記設定操作具5等によって、本体ケース8内の前記NDフィルタ2を軸回転させることによって、入射光束が通過する前記NDフィルタ上の範囲である通過エリアX(言い換えると、前記本体ケース8に形成された入射孔8a及び出射孔8bとラップする範囲)を無段階で調整することができる。
【0025】
該構成によれば、前記グラデーションNDフィルタ2は、図3に示されるように、回転位置を操作(制御)することによって、前記出射孔8bから前記撮影ユニット9に取込む出射光束の光量(前記NDフィルタ2の光学濃度)を無段階で調整することができる。
【0026】
ここで、光学濃度(OD:optical density)とは、NDフィルタ2を透過する入射光束(入射光線)の減衰率を示しており、OD=-log10T(λ)で計算することができる。すなわち、光学濃度の数字が大きくなれば入射光束の減衰率(減光量)は大きくなり、具体的には、光学濃度が0のとき、透過率100%となり、光学濃度が0.3のとき、透過率が50%となり、光学濃度が0.5のとき、透過率が32%となり、光学濃度が1のとき、透過率が10%(減衰率1/10)となる。
【0027】
図3に示した例の前記NDフィルタ2では、初期位置(0°)から1回転(360°)駆動する間に連続的に光学濃度が大きく(減衰率が大きく)なるように構成されており、具体的には、初期位置から減光開始位置(80°程度)までは光学濃度0(透過率100%)の遊びが設けられており、終端位置(290°程度)まで回転駆動されることによって光学濃度が約0.9(透過率12.5%)となるように構成されている。
【0028】
なお、前記NDフィルタ2は、一対の前記グラデーションNDフィルタ2を逆相となるように重ねて配置し、一方の前記グラデーションNDフィルタ2の中心を回転可能に軸支した構成としても良い(図示しない)。
【0029】
該構成によれば、所定の通過エリアXの全域で光学濃度が一定となるため、前記NDフィルタを回転作動させた際に、前記撮影ユニット9で撮影された画像(映像)の中で一方側が明るく、他方側が暗くなることを防止し、より良質な画像(映像)を撮影することができるようになる。
【0030】
ちなみに、前記NDフィルタ2は、光学濃度を(連続的に)調整可能なものであれば良く、上記の構成ように円盤状の透明板の円周方向に光学膜をグラデーション印刷したものには限られない。例えば、前記NDフィルタ2を、長方形状、又はシート状の透明体に光学体をグラデーション印刷したものとし、これを前記入射孔8aと前記出射孔8bとの間で動かす構成としても良い。
【0031】
前記調整機構3は、前記NDフィルタの外周を囲うように設けられるリング状の従動ギヤ11と、出力ギヤ12aを駆動させるモータ(アクチュエータ)12と、前記出力ギヤ12aと前記従動ギヤ11との間に設けられる減速機構(減速ギヤ)13とを有し、前記制御部10により前記モータ12の駆動を制御することにより、可変型の前記NDフィルタ2の回転位置を制御し、前記NDフィルタ2の減光量を無段階で調整操作(制御)することができるように構成されている(図1(A)参照)。
【0032】
なお、前記調整機構3は、前記NDフィルタ2の減光量を無段階に調整操作を制御できる構成であれば上記構成には限られない。例えば、前記減速機構を省略し、前記NDフィルタ2をモータ等の駆動手段で直接駆動する構成としても良いし、前記駆動手段として、超音波モータや駆動ベルトを用いる構成としても良い。
【0033】
前記入射光量センサ4は、前記本体ケース8に形成された前記入射孔8aの外側近傍に設けられた光量センサであって、前記NDフィルタ2に入射する光(入射光束)の光量を検出することができるように構成されている(図2参照)。該入射光量センサ4は、入射光束の光量を検出可能な構成であれば上記構成に限られない。
【0034】
前記出射光量センサ6は、前記本体ケース8に形成された前記出射孔8bの近傍に配置されており、前記NDフィルタ2を介して減光された状態で出射した光(出射光束)の光量を検出することができるように構成されている(図2参照)。
【0035】
具体的に説明すると、前記本体ケース8は、前記出射孔8bよりも前記入射孔8aが大きく形成されており、前記出射光量センサ6は、正面視で、前記入射孔8aの範囲内で且つ、前記出射孔8bとはラップしないリング状の設置可能部分に設置されることにより、出射光束の光量を検出できるように構成されている。なお、該出射光量センサ6は、出射光束の光量を検出可能な構成であれば上記構成に限られない。
【0036】
前記設定操作具5は、前記光量調整装置1に内装された可変式の前記NDフィルタ2の回転位置を操作することによって、前記NDフィルタ2を任意の設定値に設定操作可能に構成されている。
【0037】
前記設定操作具5は、具体的には、操作スイッチ(図1参照)やタッチパネル等によって設定操作を行うことで、前記制御部10を介して、前記調整機構(モータ12)を駆動させる構成としても良い。また、該設定操作具5は、前記NDフィルタ2の外周側の一部を前記本体ケース8の外側に突出させて使用者が直接手動で回転操作可能に構成しても良い。
【0038】
前記制御部10は、前記設定操作具5によって可変型の前記NDフィルタ2の減光量の設定操作がされた場合に、前記設定操作具5によって設定された前記NDフィルタ2の減光量の設定値と、前記入射光量センサ4で検出された入射光量と前記出射光量センサ6で検出された出射光量の差から算出された減光量の検出値との間に、所定以上の誤差が生じていることが確認された場合には、その誤差を較正する較正制御が実行可能に構成されている(図3参照)。
【0039】
該構成によれば、例えば、前記NDフィルタ2を長期間使用することによって、前記NDフィルタ2に印刷された光学膜が褪色すること等によって、製造時に設定された性能を発揮できなくなった場合であっても、前記NDフィルタ2の操作(回転)位置を調整して減光量を増やすことによって褪色による誤差を較正することができる。これにより、前記NDフィルタ2が劣化した場合であっても製造時と同等の性能を発揮することができるため、可変型の前記NDフィルタ2を長期間使用することが可能となり、コストをより低く抑えることができる。前記較正制御の具体的な内容については後述する。
【0040】
このとき、前記NDフィルタ2は、長期間の使用による褪色を考慮して、前記設定操作具により設定操作可能な減光範囲(光学濃度)よりも、減光量の大きい範囲まで減光可能な余剰範囲Aが設けられている(図3参照)。
【0041】
図3に基づいて具体的に説明すると、図示する前記NDフィルタ2は、前記設定操作具5によって終端位置まで操作された場合、製造時のスペックでは光学濃度が0.9程度となる一方で、前記NDフィルタ2を終端位置よりも大きく回転駆動させた余剰範囲A(290~360°)まで回転駆動させることにより光学濃度が1.2程度まで設定可能に構成されている。
【0042】
該構成によれば、前記制御部10による較正制御は、前記余剰範囲Aを利用することにより、前記NDフィルタ2を前記設定操作具5で終端側まで回転操作した位置よりも、減光させた余剰範囲Aまで調整操作することができるため、前記NDフィルタ2が褪色した場合であっても製造時と同様の範囲で減光量を操作(調整)することができるようになる(図3参照)。
【0043】
ちなみに、上述の光量調整装置1では、前記NDフィルタ2の後方に前記撮影ユニット9(のレンズ9b)が配置するように構成されているが、前記撮影ユニット9が前記NDフィルタ2によって減光した光を撮影可能な構成であれば良く、上記構成には限られない。例えば、前記撮影ユニット9のカメラ本体9aと、前記カメラ本体9aに取付けられるレンズ9bとの間に取付可能に構成し、前記本体ケース8側に前記レンズ9bを着脱可能とした構成でも良いし、前記光量調整装置1を、前記撮影ユニット9内に内装する構成であっても良い。
【0044】
次に、図4及び図5に基づき、前記制御部による較正制御について具体的に説明する。図4は、制御部のブロックである。前記制御部10は、CPUやRAM等を含み、且つプログラムの実行によって各種機能を実行可能に構成され、各種情報が記憶されるHDD、SSD又は、フラッシュメモリ等から構成された記憶部15が接続されている。なお、前記制御部10は、フラッシュメモリ等を含むワンチップマイコンによって構成しても良い。
【0045】
前記制御部10の入力側には、前記入射光量センサ4と、前記出射光量センサ6と、可変式の前記NDフィルタ2の減光量の設定操作を行う設定操作具5(具体的には、設定操作具5の操作状況を検出する前記設定位置検出センサ18)とが接続されている。
【0046】
上記設定位置検出センサ18は、前記設定操作具5によって設定操作された前記NDフィルタ2の減光量の操作位置がわかればよく、前記設定操作具5の操作位置を検出する検出スイッチであっても良いし、前記設定操作具5によって操作される前記NDフィルタ2の回転位置を検出するポテンショメータであっても良い。
【0047】
前記制御部10の出力側には、前記モータ(アクチュエータ)12と、液晶パネルによる表示や、警報ブザー等からなる報知手段19とが接続されている。
【0048】
上記報知手段19は、前記較正制御によって、前記設定操作具5により設定された前記NDフィルタ2の減光量の設定値と、前記入射光量センサ4及び前記出射光量センサ6により検出された減光量の検出値との間に予め設定された閾値以上の誤差が検出され、その誤差を調整する較正処理が実行された場合には、その旨を使用者に報知することができるように構成されている。
【0049】
前記記憶部15は、前記光量調整装置1に内装された前記NDフィルタ2のスペックに関する情報、具体的には、操作位置(回転位置)と光学濃度の関係に関する情報の他、前記設定操作具5による操作状況、各光量センサ4,6によって検出された光量、前記入射光量センサ4と前記出射光量センサ6の検出値から算出された誤差、予め設定された誤差の閾値(許容値)等の情報、光量調整装置1に内装されている前記NDフィルタ2の褪色状況に関する情報等を格納することができる。
【0050】
図5は、較正制御のフロー図である。前記制御部10による較正制御が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、前記設定操作具5による前記NDフィルタ2の減光量の設定(変更)操作がされたか否かが検出され、前記NDフィルタ2の減光量の設定操作が検出された場合には、ステップS2に進む。なお、ステップS1において、減光量の設定操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0051】
ステップS2では、前記入射光量センサ4によって検出された入射光量と、前記出射光量センサ6によって検出された出射光量とに基づいて、実際に検出される減光量を算出し、ステップS3に進む。
【0052】
ステップS3では、前記設定操作具5に基づく前記NDフィルタ2の減光量の設定値と、ステップS2により算出された実際の減光量の検出値との差(誤差)が、予め設定された所定の閾値以上となっているか否かが検出され、前記の誤差が閾値以上であることが確認された場合には、ステップS4に進む。なお、ステップS3において、前記の誤差が閾値より小さい場合には、その後、リターンする。
【0053】
ステップS4では、前記モータ12の駆動を制御して、前記NDフィルタ2の回転位置を微調整(制御)することにより、前記NDフィルタ2の減光量の検出値が、前記NDフィルタ2の減光量の設定値と同じにする(或いは誤差が閾値より小さくする)較正処理を実行し(図3参照)、その後、リターンする。
【0054】
また、ステップS4では、前記報知手段19によって較正処理が実行されたことを使用者に報知しても良い。このとき、前記制御部10は、前記の誤差の大きさを報知可能としても良く、検出された誤差の大きさから、前記NDフィルタ2を使用可能な日数等の予測値を算出し、前記NDフィルタ2の交換を推奨する時期等を使用者に報知可能にする構成としても良い。
【0055】
上述の構成によれば、前記較正制御(処理)が実行されることにより、前記NDフィルタ2は、長期間使用されることによって前記NDフィルタ2上に印刷された光学膜が褪色した場合であっても、誤差を較正(調整)することができるため性能を落とすことなく長期間にわたって使用することができる。
【0056】
また、該構成によれば、前記NDフィルタ2がある程度褪色しても性能を落とすことなく利用することができるため、前記NDフィルタ2を形成する透明板の材料選択や、該透明板に印刷する光学膜の塗料選択の幅が大幅に広がる。言い換えると、前記NDフィルタ2として、ゴーストが出難く、質の高い画像を得ることができる一方で、褪色し易い素材等も選択することができるようになる。
【0057】
ちなみに、該構成によれば、前記光量調整装置1にセットされるカメラ側から情報を取得することなく、前記光量調整装置1内に設けた各光量センサ4,6によって、前記較正制御の実行を完結することができる。言い換えると、前記光量調整装置1は、光量等の情報を出力可能なカメラである必要はなく、どのようなカメラがセットされても同様の効果を得ることができるため、汎用性が高い。
【0058】
次に、図6及び図7に基づき、光量調整装置の別実施例について説明する。図6は、別実施例の光量調整装置に設けた光量センサを示した要部平断面図である。図6に基づき、上述の光量調整装置と異なる点について説明する。
【0059】
前記光量調整装置1は、可変型の前記NDフィルタ2と、前記NDフィルタ2から出射される出射光量が予め設定された光量である設定値を設定するための図示しない設定操作具(設定操作具)と、前記調整機構3と、前記出射光量センサ6と、バッテリ7と、前記制御部10とを備えている。すなわち、前記光量調整装置1は、上述の例と異なり、光量センサとして、前記入射光量センサ4が省略されており、前記NDフィルタ2により減光された出射光束の光量を検出する前記出射光量センサ6のみが設けられている。
【0060】
前記制御部10は、前記NDフィルタ2から出射される出射光量が、前記設定操作具によって予め設定された光量である設定値(或いは設定値を基準した所定の閾値内)となるように前記NDフィルタの減光量を自動的に制御する設定制御が実行可能に構成されている。(図6等参照)。
【0061】
図7は、設定制御を示したフロー図である。前記制御部による設定制御が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、前記設定操作具によって、前記NDフィルタ2の制御によって調整される出射光量の設定値の設定(変更)操作がされたか否かが検出され、出射光量の設定値の設定操作が検出された場合には、ステップS12に進む。なお、ステップS11において、出射光量の設定値の設定操作が検出されなかった場合には、その後、リターンする
【0062】
ステップS12では、前記出射光量センサ6によって出射光量を検出し、ステップS13に進む。
【0063】
ステップS13では、前記出射光量センサ6によって検出された出射光量が、前記設定操作具に基いて設定された出射光量の設定値となっているか否かが検出され、前記出射光量センサ6によって検出された出射光量が設定値であることが確認された場合には、ステップS14に進む。なお、ステップS13において、前記出射光量センサ6によって検出された出射光量が、設定値でなかった(或いは閾値内でなかった)場合には、その後、リターンする。
【0064】
ステップS14では、前記出射光量センサ6によって検出された光量に基づいて前記モータ12の駆動を制御して、前記NDフィルタ2の回転位置を調整する(減光量(光学濃度)を大きくしたり小さくしたりする)ことにより、前記出射光量センサ6で検出される出射光量を設定値にする設定処理を実行し、その後、リターンする。また、ステップS14では、前記報知手段19によって設定処理が実行されたことを使用者に報知しても良い。
【0065】
上述の設定制御によれば、前記NDフィルタ2の操作位置(回転位置)を自動制御することによって、前記出射光量センサ6により検出される光量が、前記設定操作具によって設定された設定値となるように、NDフィルタ2の減光量の設定を自動的に変更することができる。
【0066】
該構成によれば、前記撮影ユニット9による撮影中に急に明るいところに出た場合には、前記NDフィルタ2による減光量を自動的に制御して(増やして)撮影される映像が明るくなりすぎる(白飛びする)ことをスムーズに防止することができる他、撮影中に暗いところに出た場合には、前記NDフィルタによる減光量を制御して(減らして)撮影される映像が暗くなることをスムーズに防止することができる。
【0067】
次に、光量調整装置の別実施例2について説明する。前記光量調整装置1は、図示しない基準光源を設け、前記出射光量センサ6(及び入射光量センサ4)で検出される光量を調整することができるように構成としても良い。前記基準光源は、予め設定された光量を発するように構成されており、光量を任意に調整できるようにしても良い。
【0068】
該構成によれば、前記光量調整装置1(前記制御部10)は、前記基準光源による光量と、前記出射光量センサ6で検出される光量とに基づいて、前記NDフィルタ2の減衰量を簡易且つ正確に測ることができる。このため、前記較正制御(設定制御)をより精度良く実行することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 NDフィルタ
4 入射光量センサ
5 設定操作具(操作手段)
6 出射光量センサ
8 ケース体(ケース体)
9 撮影ユニット
9a カメラ本体
9b レンズ
10 制御部
12 モータ(アクチュエータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7