(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147330
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】実験データ管理システム及び電子ラボノートシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054764
(22)【出願日】2022-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「データ駆動型分子設計を基点とする超複合材料の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌信
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康裕
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩子
(72)【発明者】
【氏名】原田 善之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の企業や学術機関のデータの共有など、より広域のデータの集積や活用を効率的に行う実験データ管理システム及び電子ラボノートシステムを提供する。
【解決手段】実験データ管理システムは、他機関実験データベース260に格納された材料開発に関係する実験データについて、自機関実験データベース160に格納された材料開発に関係する実験データについて、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベース320と、実験データベース160、260にアクセスして情報処理を行う実験データ共用化管理システム300と、を含む。実験データ共用化管理システム300は、材料名統一化データベース320に基づき、検索対象となる材料開発に関係する実験データについて、実験データベース160、260に格納された材料開発に関係する実験データを抽出して出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を格納する自機関実験データベースと、他機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を格納する他機関実験データベースとネットワークを介して接続される、実験データ管理システムであって、
前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、前記自機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベースと、
前記自機関実験データベースと少なくとも一か所の前記他機関実験データベースにアクセスして情報処理を行う実験データ共用化管理システムと、を含み、
前記実験データ共用化管理システムは、前記材料名統一化データベースに基づき、検索対象となる前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、前記自機関実験データベース又は、及び前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を抽出して出力する、
実験データ管理システム。
【請求項2】
前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について公開・限定公開(他機関含む)・又は非公開の指定をするキー情報を含み、
前記実験データ共用化管理システムは、公開又は限定公開に指定された個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について抽出対象に含める、
請求項1に記載の実験データ管理システム。
【請求項3】
前記実験データ共用化管理システムは、前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に関して、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、前記他機関実験データベースからの引用であることが認識できるように、識別情報がキー情報に含まれるように構成した、
請求項1又は2に記載の実験データ管理システム。
【請求項4】
前記実験データ共用化管理システムは、前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、キーバリュー形式でメタデータを管理するように構成した、
請求項1乃至3の何れかに記載の実験データ管理システム。
【請求項5】
前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に対し、実験者が認識できる実験番号と、サンプルを特定する識別子(UUID等)の両方を付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記実験番号または前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や測定データを抽出できるように構成した、
請求項1乃至4の何れかに記載の実験データ管理システム。
【請求項6】
さらに、実験条件を記述する用語および当該実験条件を記述する用語を前記実験データ共用化管理システムで用いる際の別名に、識別子を付与して統制する実験条件統一化テーブルを有し、
前記実験データ共用化管理システムは、前記材料開発に関係する実験データ情報として、前記実験条件統一化テーブルを参照して、キーバリュー形式でメタデータとして前記実験条件を記述する用語および別名として統制する、
請求項1乃至5に記載の実験データ管理システム。
【請求項7】
前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の合成後の実験データと、及び当該合成後の実験データが得られた合成条件に関連する情報に対する識別子が付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や合成後の実験データを抽出できるように構成した、
請求項5又は6に記載の実験データ管理システム。
【請求項8】
前記合成後の実験データには、個別材料毎の未反応物や副生成物が含まれる混合物に関する実験データ又は、及び重合度に関する実験データが含まれる、
請求項7に記載の実験データ管理システム。
【請求項9】
さらに、前記個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、前記実験で使用された試薬の量・種類・関連法規を一元的に参照するための試薬別関連法規参照テーブルを有する、
請求項5乃至8の何れかに記載の実験データ管理システム。
【請求項10】
自機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報が記録された電子ラボノートファイルと、他機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を記録された他機関電子ラボノートファイルとネットワークを介して接続される、電子ラボノートシステムであって、
前記他機関電子ラボノートファイルに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、前記自機関電子ラボノートファイルに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベースと、
前記自機関電子ラボノートファイルと少なくとも一か所の前記他機関電子ラボノートファイルにアクセスして情報処理を行う実験データ共用化管理システムと、を含み、
前記実験データ共用化管理システムは、前記材料名統一化データベースに基づき、検索対象となる前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、前記自機関電子ラボノートファイル又は、及び前記他機関電子ラボノートファイルに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を抽出して出力する、
電子ラボノートシステム。
【請求項11】
前記実験データ共用化管理システムは、前記自機関電子ラボノートファイルおよび前記他機関電子ラボノートファイルに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、キーバリュー形式でメタデータを管理するように構成した、
請求項10に記載の電子ラボノートシステム。
【請求項12】
前記自機関電子ラボノートファイルおよび前記他機関電子ラボノートファイルに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に対し、実験者が認識できる実験番号と、サンプルを特定する識別子(UUID等)の両方を付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記実験番号または前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や測定データを抽出できるように構成した、
請求項10又は11に記載の電子ラボノートシステム。
【請求項13】
さらに、実験条件を記述する用語および当該実験条件を記述する用語を前記実験データ共用化管理システムで用いる際の別名に、識別子を付与して統制する実験条件統一化テーブルを有し、
前記実験データ共用化管理システムは、前記材料開発に関係する実験データ情報として、前記実験条件統一化テーブルを参照して、キーバリュー形式でメタデータとして前記実験条件を記述する用語および別名として統制する、
請求項10乃至12の何れかに記載の電子ラボノートシステム。
【請求項14】
前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の合成後の実験データと、及び当該合成後の実験データが得られた合成条件に関連する情報に対する識別子が付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や合成後の実験データを抽出できるように構成した、
請求項12又は13に記載の電子ラボノートシステム。
【請求項15】
前記合成後の実験データには、個別材料毎の未反応物や副生成物が含まれる混合物に関する実験データ又は、及び重合度に関する実験データが含まれる、
請求項14に記載の電子ラボノートシステム。
【請求項16】
さらに、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、前記実験で使用された試薬の量・種類・関連法規を一元的に参照するための試薬別関連法規参照テーブルを有する、
請求項10乃至15の何れかに記載の電子ラボノートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実験データ管理システム及び電子ラボノートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1では、試料(サンプル)情報、実験手順、実験結果等の実験情報をデータベースに格納し、プロジェクトへの関与者が実験情報を共有できるようにしたシステムが提案されている。
特許文献2では、単一企業内の研究機関における研究開発に付随するデータ、例えば研究開発に関係する情報や装置の情報、利用履歴等の情報を格納し、研究開発を支援するシステムも提案されている。
特許文献3では、液体ハンドリング品質保証のためのシステム及び方法として、自動液体ハンドリングシステムの管理のためのプラットフォームシステムにおいて、電子ラボノート(ELN)、ラボ情報管理システム(LIMS)が提案されている。管理にはRFIDタグを用いデータベースとの照合がなされる。
特許文献4では、単一の研究機関内におけるバイオ分野に適した電子ラボノートや実験情報管理システムが提案されている。
他方で、非特許文献1では、語彙統制の取り組みが行われており、言葉の意味を説明したり、言語のつながりが持つ知識体系をあらわすことを例示している。W3C(World Wide Web Consortium)はマサチューセッツ工科大学コンピュータ科学研究所のTim Berners-Leeが、1994年10月に設立した団体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/208623号
【特許文献2】特開2020-052602号公報
【特許文献3】特表2019-521310号公報
【特許文献4】特許第6414876号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://www.w3.org/standards/semanticweb/ontology
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の実験支援システムは、個別の研究者あるいは特定の研究者の属するグループでの利用を想定しており、不特定多数の実験データを集約して利活用するための機能が備わっていない。例えば1つの測定データに注目したとき、その測定データを取得した試料の合成条件や所在といった背景情報は、研究者あるいは研究グループが所有しており、当該研究者以外のシステム利用者が参照することはできなかった。さらに、実験条件の記録に注目すると、その記載方法は研究者や研究グループ独自の表記に基づいており、同じ試薬が別の名前で表記されるなど、不特定多数のデータを集積することは困難であった。
また、実験系支援システムは、バイオ分野や製薬分野のような分野では、試薬のような高純度の化合物の合成や、特定の元素配置を有するタンパク質や核酸の合成を目的としている。しかし、例えば高分子合成系の分野では、例えば塗料や接着剤等の合成が行われている。そこで、高分子合成系の分野では、未反応物や副生成物が含まれる混合物が合成される場合であっても、目的とする塗料や接着剤等の使用用途に適した物性の物質が工業的に安定して合成されれば足り、このような工業的に安定して合成される製造プロセスが探索の結果、発見できれば充分という用途も存在している。そこで、有機合成実験における試料は、反応生成物と未反応物あるいは原料の集合体であり、特定の化学式等の名称によって表記することが困難であるため、既存の創薬等の分野における試薬名をID化したデータベースを直接適用することも困難であった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するもので、不特定多数の実験データを集約して利活用するため用途に適した、実験データ管理システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、例えば高分子合成系の分野のように、未反応物や副生成物が含まれる混合物が合成される場合であっても、目的とする塗料や接着剤等の使用用途に適した物性の物質が工業的に安定して合成されるような、製造プロセスの探索に適した、実験データ管理システムを提供することである。
また、本発明は、個別の研究者あるいは特定の研究者の属するグループ以外のシステム利用者でも、同じ試薬が別の名前で表記される場合でも、不特定多数のデータを集積するのに適した電子ラボノートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題に対し、以下の(1)、(2)の方策を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を為すに至った。
(1)試料の合成条件をシステムに登録する際、人間が認識可能な実験ノートIDおよび試料番号と、システムが一意に認識可能な識別子(UUIDなど)を発行し、実験に用いた試料の保存瓶に対して紐づけることにより、各種識別子(上記IDやUUID)を検索語として認識する実験データ集積システムから、不特定多数の試料の合成条件や実験データを参照できること、さらに
(2)試料の合成条件の記述には、代表名および別名、その説明が付与され、固有のIDを有する語彙を用いることで、機械可読かつ表現の統制された実験条件データを生成できるシステムを用いること。
【0008】
〔1〕本発明の実験データ管理システムは、例えば
図1、
図3に示すように、自機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を格納する自機関実験データベース160と、他機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を格納する他機関実験データベース260とネットワークを介して接続される、実験データ管理システムであって、
他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関実験データベース160に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベース320と、
自機関実験データベース160と少なくとも一か所の他機関実験データベース260にアクセスして情報処理を行う実験データ共用化管理システム300と、を含み、
実験データ共用化管理システム300は、材料名統一化データベース320に基づき、検索対象となる前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関実験データベース160又は、及び他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を抽出して出力する、ものである。
【0009】
〔2〕本発明の実験データ管理システム〔1〕において、好ましくは、
図3自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について公開・限定公開(他機関含む)・又は非公開の指定をするキー情報322を含み、
実験データ共用化管理システム300は、公開又は限定公開に指定された個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について抽出対象に含めるとよい。
〔3〕本発明の実験データ管理システム〔1〕又は〔2〕において、好ましくは、実験データ共用化管理システム300は、他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に関して、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、他機関実験データベース260からの引用であることが認識できるように、識別情報がキー情報324に含まれるように構成されるとよい。
【0010】
〔4〕本発明の実験データ管理システム〔1〕乃至〔3〕において、好ましくは、実験データ共用化管理システム300は、自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、キーバリュー形式でメタデータを管理するように構成されるとよい。
〔5〕本発明の実験データ管理システム〔1〕乃至〔4〕において、好ましくは、自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に対し、実験者が認識できる実験番号326と、サンプルを特定する識別子(UUID等)328の両方を付与してあり、
実験データ共用化管理システム300は、前記実験番号または前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や測定データを抽出できるように構成されるとよい。
〔6〕本発明の実験データ管理システム〔1〕乃至〔5〕において、好ましくは、さらに、実験条件を記述する用語および当該実験条件を記述する用語を実験データ共用化管理システム300で用いる際の別名に、識別子を付与して統制する実験条件統一化テーブル330を有し、実験データ共用化管理システム300は、前記材料開発に関係する実験データ情報として、前記実験条件統一化テーブルを参照して、キーバリュー形式でメタデータとして前記実験条件を記述する用語および別名として統制するように構成されるとよい。
〔7〕本発明の実験データ管理システム〔5〕又は〔6〕において、好ましくは、前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の合成後の実験データと、及び当該合成後の実験データが得られた合成条件に関連する情報に対する識別子が付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や合成後の実験データを抽出できるように構成されるとよい。
〔8〕本発明の実験データ管理システム〔7〕において、好ましくは、前記合成後の実験データには、個別材料毎の未反応物や副生成物が含まれる混合物に関する実験データ又は、及び重合度に関する実験データが含まれるとよい。
〔9〕本発明の実験データ管理システム〔5〕乃至〔8〕において、好ましくは、さらに、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、前記実験で使用された試薬の量・種類・関連法規を一元的に参照するための試薬別関連法規参照テーブル332を有するとよい。
【0011】
〔10〕本発明の電子ラボノートシステムは、例えば
図1、
図3に示すように、自機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報が記録された電子ラボノートファイル167と、他機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を記録された他機関電子ラボノートファイル267とネットワークを介して接続される、電子ラボノートシステムであって、
他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関電子ラボノートファイル167に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベース320と、
自機関電子ラボノートファイル167と少なくとも一か所の他機関電子ラボノートファイル267にアクセスして情報処理を行う実験データ共用化管理システム300と、を含み、
実験データ共用化管理システム300は、材料名統一化データベース320に基づき、検索対象となる前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関電子ラボノートファイル167又は、及び他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を抽出して出力する、ものである。
【0012】
〔11〕本発明の電子ラボノートシステム〔10〕において、好ましくは、実験データ共用化管理システム300は、自機関電子ラボノートファイル167および他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、キーバリュー形式でメタデータを管理するように構成されるとよい。
〔12〕本発明の電子ラボノートシステム〔10〕又は〔11〕において、好ましくは、自機関電子ラボノートファイル167および他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に対し、実験者が認識できる実験番号と、サンプルを特定する識別子(UUID等)の両方を付与してあり、実験データ共用化管理システム300は、前記実験番号または前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や測定データを抽出できるように構成されるとよい。
〔13〕本発明の電子ラボノートシステム〔10〕乃至〔12〕において、好ましくは、さらに、実験条件を記述する用語および当該実験条件を記述する用語を実験データ共用化管理システム300で用いる際の別名に、識別子を付与して統制する実験条件統一化テーブルを有し、実験データ共用化管理システム300は、前記材料開発に関係する実験データ情報として、前記実験条件統一化テーブルを参照して、キーバリュー形式でメタデータとして前記実験条件を記述する用語および別名として統制するように構成されているとよい。
〔14〕本発明の電子ラボノートシステム〔13〕において、好ましくは、前記自機関実験データベースおよび前記他機関実験データベースに格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の合成後の実験データと、及び当該合成後の実験データが得られた合成条件に関連する情報に対する識別子が付与してあり、
前記実験データ共用化管理システムは、前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や合成後の実験データを抽出できるように構成されるとよい。
〔15〕本発明の電子ラボノート管理システム〔14〕において、好ましくは、前記合成後の実験データには、個別材料毎の未反応物や副生成物が含まれる混合物に関する実験データ又は、及び重合度に関する実験データが含まれるとよい。
〔16〕本発明の電子ラボノートシステム〔10〕乃至〔15〕において、好ましくは、さらに、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、前記実験で使用された試薬の量・種類・関連法規を一元的に参照するための試薬別関連法規参照テーブルを有するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実験データ管理システムによれば、材料名統一化データベースを使用することにより、自機関と他機関との間で生ずる材料名の不統一の困難性を、同一又は対応する実験データであるか照合するための材料名統一化データベースを用いて吸収することで、不特定多数の試料の合成条件や実験データを参照でき、機械可読かつ表現の統制された実験条件データを生成できるので、不特定多数の実験データを効率的に集積・利活用することができる。
さらに本発明の実験データ管理システム〔5〕では、各種の識別子(IDやUUID)を検索語として認識する実験データ集積システムに適切なアクセス権を設定することにより、特定の研究プロジェクトの間でのデータ共有をはじめ、例えば日本国内の複数の研究機関、あるいは複数の企業や学術機関のデータの共有など、より広域のデータの集積や活用を効率的に行うことができる。
さらに本発明の実験データ管理システム〔7〕又は〔8〕では、未反応物や副生成物が含まれる混合物が合成される場合に、目的とする塗料や接着剤等の使用用途に適した物性の物質が工業的に安定して合成される製造プロセスが探索の用途に適しており、高分子合成系の分野に用いて好適である。
本発明の電子ラボノートシステムによれば、メタデータにおける語彙管理として、材料名統一化データベースに概念・用語を登録し、表記ゆれや別名の管理を行っているので、自機関ばかりでなく他機関も含めた、不特定多数の試料の合成条件や実験データを参照でき、機械可読かつ表現の統制された実験条件データを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の適用対象となる実験データ管理システムの概略を示すシステム構成図である。
【
図2】自機関実験管理サーバ140に実装されている各プログラム170~175の関係を示した概略図である。
【
図3】
図1に示す装置の実験データ共用化管理システムを、コンピュータを用いて構成する場合の例示的なコンピューティング装置を示すブロック図である。
【
図4】自動実験実施機器と自動実験制御システムの一例を説明するシステム構成図である。
【
図5】
図4に示す自動実験システムでのデータ処理の一例を説明する流れ図である。
【
図6A】自動実験システムで用いられる合成条件表の説明図で、実験プロセス表を示している。
【
図6B】実験プロセスで用いられる試薬の組成表を示している。
【
図6C】実験プロセスで用いられる開始剤・触媒・溶媒、計測機の組成表を示している。
【
図6D】自動実験実施機器向けの試薬の組成表を示している。
【
図6E】自動実験実施機器向けの開始剤・触媒・溶媒、計測機の組成表を示している。
【
図7A】自動実験実施機器で実施される合成条件表に従った実験プロセスの説明図で、合成工程を表している。
【
図7B】自動実験実施機器で実施される合成条件表に従った実験プロセスの説明図で、取り出し工程、保管サンプルの選定工程、サンプルの瓶詰め工程を表している。
【
図8A】サンプル保存瓶の保管庫への入出庫処理の説明図で、保管場所の決定工程と入庫工程を表している。
【
図8B】サンプル保存瓶の保管庫への入出庫処理の説明図で、他機関によるサンプル借用依頼工程と在庫検索工程を表している。
【
図9A】サンプル保存瓶の他機関への借用処理を行う場合の保管庫からの入出庫処理の説明図で、貸出処理工程を表している。
【
図9B】サンプル保存瓶の他機関への借用処理を行う場合の保管庫からの入出庫処理の説明図で、返却処理工程を表している。
【
図10】本発明の適用対象となる実験データ管理システムでの、各工程でのサンプル保管と測定データ蓄積の授受を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、第一の実施形態の実験系支援システムの概略図である。「実験系」とは、一つの目的とする結果を得るのに複数の異なる実験を行う系という意味である。典型的には、一連の実験プロトコルの各段階において検出又は測定等を行う場合が該当する。この実施形態では、実験系は、複数の異なる実験機器を使用することを前提としている。
実施形態の実験系支援システムでは、自機関向けの実験系支援システム100と、他機関向けの実験系支援システム200と、これらの実験系支援システムの間で情報の授受を行う外部ネットワーク280及び実験データ共用化管理システム300を有している。
【0016】
自機関向けの実験系支援システム100では、自機関実験室110、自機関実験機器111、112、113、クライアント端末としての自機関実験用携帯端末115、自機関閲覧用端末120、自機関内ネットワーク130、自機関実験管理サーバ140を有している。自機関実験管理サーバ140は、自機関実験管理用プロセッサ150、自機関実験データベース160、機器用ソフトウェア161、実験内容説明ファイル162、認証用DBファイル163、ラボノート管理用DBファイル164、実験系情報DBファイル165、ラボノートテンプレートファイル166、電子ラボノートファイル167、研究メンバ情報DBファイル168、認証プログラム170、メインプログラム171、実験系選択プログラム172、実験系実施プログラム173、ラボノート作成プログラム174、ラボノート閲覧プログラム175が実装されている。
【0017】
他機関向けの実験系支援システム200では、自機関実験室210、自機関実験機器211、212、213、クライアント端末としての自機関実験用携帯端末215、自機関閲覧用端末220、自機関内ネットワーク230、自機関実験管理サーバ240を有している。自機関実験管理サーバ240は、自機関実験管理用プロセッサ250、自機関実験データベース260、機器用ソフトウェア261、実験内容説明ファイル262、認証用DBファイル263、ラボノート管理用DBファイル264、実験系情報DBファイル265、ラボノートテンプレートファイル266、電子ラボノートファイル267、研究メンバ情報DBファイル268、認証プログラム270、メインプログラム271、実験系選択プログラム272、実験系実施プログラム273、ラボノート作成プログラム274、ラボノート閲覧プログラム275が実装されている。
なお、以下では、自機関向けの実験系支援システム100の詳細を説明するが、他機関向けの実験系支援システム200において同様の作用をする物には同様の符号を付して、説明を省略する。
【0018】
実験データ共用化管理システム300は、材料名統一化データベース320、公開キー情報322、他機関実験データベース引用キー情報324、認識用実験番号情報326、サンプル特定識別子情報328、実験条件統一化テーブル330、試薬別関連法規参照テーブル332を有している。実験データ共用化管理システム300の詳細は、後で
図3を参照して詳細に説明する。
【0019】
実施形態の実験系支援システムでは、試料の調製を行う自機関実験室110には、図示を省略した1つの実験ベンチ上に各自機関実験機器111、112、113が設置されている。各自機関実験機器111、112、113は、試料の性質に応じた物理量を検出する検出部とその付属部分のみから成る小型のものが典型的であるが、比較的大型の共用試験設備を含んでいてもよい。付属部分とは、検出部に必要な電源を供給する回路や、検出部での測定値を出力する出力回路等である。この実施形態の実験系支援システムは、一例ではあるが、有機化合物の合成分野の実験系を支援するものとなっており、従って、自機関実験機器111、112、113は、吸光度計、蛍光光度計、化学発光測定器、比色計等である。多くの実験機器は、光を検出することで間接的に又は直接的に試料の性質を測定するものであり、検出部の主要部は光センサである場合が多いが、実施形態の実験系支援システムは、このような実験機器を使用する場合に限定されるものではない。尚、自機関実験機器111、112、113は、分光光度計のように分光特性を測定する機器である場合もあり、またNMRのような核磁気共鳴特性や磁気特性を測定する機器や、電子顕微鏡のように、比較的大型の共用試験設備の場合もありえる。
【0020】
図1に示すように、実施形態の実験系支援システムは、自機関実験管理サーバ140と、複数のクライアント端末115、120とを備えている。各クライアント端末115、120は、自機関内ネットワーク130を介して自機関実験管理サーバ140にアクセスが可能である。自機関内ネットワーク130は、システムが設置された環境にもよるが、研究施設が有する内部ネットワークの場合もあり、インターネットのような外部ネットワークの場合もある。
【0021】
この実施形態では、クライアント端末115は携帯型の端末であり、自機関実験室110内に持ち込まれることを想定している。以下、このクライアント端末115を実験用携帯端末と呼ぶ。自機関実験用携帯端末115としては、タブレットPCが想定されている。
また、クライアント端末120は、実験結果や実験の進捗状況を閲覧するための端末である。以下、このクライアント端末120を閲覧用端末と呼ぶ。自機関閲覧用端末120は、携帯型である必要はなく、デスクトップPCであっても良い。
図1では、自機関実験室110は一つのみ示されているが、実験系支援システムは複数の研究グループにおける実験系の実施を支援するものとなっており、自機関実験室110は複数である。従って、自機関実験用携帯端末115も複数であり、自機関閲覧用端末120も複数である。
また、1つの研究グループであっても研究員が複数であって、各研究員がそれぞれ個人ユースの実験ベンチ上にて実験を行う場合、各研究員は専用の自機関実験用携帯端末115を使用することになり、結果として自機関実験用携帯端末115は複数となる。この場合、自機関閲覧用端末120は、各研究員が使用する各自機関実験用携帯端末115に支援されて得た実験結果や実験の進捗状況を閲覧するので、単数であってもよい。
【0022】
自機関実験管理サーバ140は、大きく分けて二つの機能を果たすものとなっている。第一は、実験プロトコルを進めるに当たって必要な各自機関実験機器111、112、113との間の情報の送受信機能である。第二は、実験を記録したラボノートの管理機能である。二つの機能は密接に関連しており、全体として研究室における実験系の実施を効率化し、実験データの管理や実験の進捗状況のチェック等を容易にしている。
【0023】
具体的に説明すると、自機関実験管理サーバ140は、自機関実験管理用プロセッサ150と、ハードディスクのような自機関実験データベース160とを備えている。自機関実験データベース160には、各自機関実験機器111、112、113のためのソフトウェアである機器用ソフトウェア161が記憶されている。機器用ソフトウェア161は、種々のものを含み得る。典型的には、機器用ソフトウェア161は、実験機器における測定値に対して適用される検量線データであり得る。また、機器用ソフトウェア161は、実験機器を制御する制御プログラムであり得るし、実験機器に対して送られる動作用のデータ(例えば信号検出範囲を指定するデータ)であり得る。
このような機器用ソフトウェア161は、各自機関実験機器111、112、113について自機関実験データベース160に記憶されている。自機関実験データベース160には、自機関実験機器111、112、113毎にディレクトリが設けられており、自機関実験機器111、112、113毎に分けて記憶されている。尚、同じ実験機器でも、目的物質が異なる場合には検量線データも異なる。従って、機器用ソフトウェアは、自機関実験機器111、112、113が同じ場合であっても目的物質が異なる場合には別のディレクトリに記憶される。
【0024】
また、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160には、自機関実験室110で行われ得る各種実験について説明したファイル(以下、説明ファイル)162が設けられている。説明ファイル162は、一つの実験系全体のプロトコルを説明したファイルであったり、実験系を構成する各実験を説明したファイルであったり、各実験で使用される実験機器の説明であったりする。これら説明ファイル162は、HTML、PDF、各種文書ファイルの形式であり得る。
【0025】
自機関実験用携帯端末115は、自機関実験管理サーバ140につながる自機関内ネットワーク130に接続された状態となっている。自機関実験用携帯端末115は、自機関実験管理サーバ140に対するアクセス権限が与えられており、自機関実験管理サーバ140上のプログラムを実施したり、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160にある各種ファイルをダウンロードしたりすることができるようになっている。
【0026】
一方、自機関実験用携帯端末115は、各自機関実験機器111、112、113との間でも情報のやり取りをするようになっている。この実施形態では、自機関実験用携帯端末115は、各自機関実験機器111、112、113との間で赤外線通信やBluetooth(登録商標)のような近距離無線通信を行うようになっている。タブレットPCである自機関実験用携帯端末115は、この種の無線通信ユニットを標準で備えている。各自機関実験機器111、112、113は、無線通信ユニットを備えている場合もあるが、備えていない場合もある。備えていない場合には、後付けで装着される。即ち、自機関実験機器111、112、113は、USBのような汎用インターフェースを最低限備えており、外部の間で情報のやり取りが可能となっている。無線通信ユニットを標準で備えていない場合、外付け用の無線通信ユニットをUSBのような汎用ケーブルで接続し、無線通信可能とされる。
【0027】
各自機関実験機器111、112、113は、自機関実験用携帯端末115の周辺装置という位置付けとされる場合が多い。この場合、自機関実験用携帯端末115には、各実験機器用デバイスドライバが予めインストールされており、自機関実験用携帯端末115から制御信号を送って各自機関実験機器111、112、113の動作を制御したり、自機関実験用携帯端末115に対して各自機関実験機器111、112、113より測定データを送信したりすることが可能となっている。実験機器用デバイスドライバは、各自機関実験機器111、112、113のメーカーから提供される場合もあるが、自作される場合もある。例外的に、実験機器が自機関内ネットワーク130対応のものである場合、自機関内ネットワーク130上の一つの機器として(IPアドレスが付与されて)自機関実験用携帯端末115との間で情報のやりとりをする場合もある。
【0028】
一方、自機関実験管理サーバ140には、認証プログラム170、メインプログラム171、実験系選択プログラム172、実験系実施プログラム173、ラボノート作成プログラム174、ラボノート閲覧プログラム175等が実装されている。これらのプログラムは、自機関実験用携帯端末115から呼び出されて実施されるようになっている。以下、各プログラムについて説明する。
図2は、自機関実験管理サーバ140に実装されている各プログラム170~175の関係を示した概略図である。これらプログラム170~175は、自機関実験用携帯端末115により自機関実験管理サーバ140から自機関実験用携帯端末115にダウンロードされて実行されるプログラムであり、全体として実験系支援のアプリケーションソフトウェア(以下、実験系支援アプリ)を構成している。
【0029】
認証プログラム170は、自機関実験管理サーバ140にアクセスしていずれかのプログラムの実行する際に必要な認証を行うプログラムである。この実施形態では、誰が実験を行ったのか、また誰がラボノートの閲覧をしたか等を特定できるようにするため、認証プログラム170を自機関実験管理サーバ140に実装している。
認証用のユーザIDとパスワードは、実施形態の実験系支援システムが使用される研究室の研究員や指導監督を行う者(上司や指導教授等、以下、指導者と総称する)に対して予め発行されている。各ユーザIDと対応するパスワードは、研究員や指導者等の氏名とともにデータベース化された認証用DBファイル163に記録されており、認証用DBファイル163は、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160に記憶されている。尚、認証用DBファイル163には、ユーザの氏名を記録したフィールドを含んでおり、またユーザIDが指導者のものであるか、研究員のものであるかを識別するフィールドを含んでいる。
【0030】
メインプログラム171は、実験系選択画面を含む上記アプリケーションソフトウェア(実験系支援アプリ)が起動している際に常に実行されているプログラムであり、各種情報を自機関実験用携帯端末115から入力させたり、自機関実験管理サーバ140から取得した情報を自機関実験用携帯端末115に表示したりするためのウインドウ(以下、メインウインドウ)の表示等を行うプログラムである。
実験系選択プログラム172は、どの実験系を実施するのかを選択させるプログラムである。このプログラムには、実験系を選択させる画面を自機関実験用携帯端末115に表示する実験系選択画面表示モジュールや、選択された実験系についての実験系実施プログラム173を起動する各実施支援プログラム起動モジュール等が含まれている。
【0031】
また、実験系実施プログラム173は、実験機器を使用して検出や測定を行う実験実施モジュール、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160に記憶されている機器用ソフトウェア161を自機関実験管理サーバ140からダウンロードするための機器用ソフトDLモジュール、各実験で得られた結果を評価して次のステップに進んで良いかどうかを判断する評価モジュール、ラボノート作成プログラム起動モジュール等を含んでいる。尚、実験系実施プログラム173は、実験系毎に設けられており、実験系選択プログラム172内の選択された起動モジュールで起動されるものである。
【0032】
また、ラボノート作成プログラム174は、ラボノートテンプレートファイルに各情報を記録する記録モジュールや、作成された電子ラボノートファイル167を自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160に保存する保存モジュール等を有している。尚、ラボノート作成プログラム174は、実験系実施プログラム173から呼び出されて実施されるものであり、実験結果をラボノートとしてまとめ、保存するためのプログラムである。
【0033】
ラボノート作成プログラム174の記録モジュールは、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160からラボノートテンプレートファイル(以下、LNTファイルと略称する)166を読み出して開き、各データをLNTファイル166内の所定の位置に組み込んで電子ラボノートファイル167を作成するプログラムである。LNTファイル166は、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160に記憶されている。
実験系実施プログラム173は、各実験実施モジュールを実行した際、評価モジュールにおいてOKの評価がされた場合に、各実験データをメモリ変数に格納しておく。ラボノート作成プログラム174は、ログインの際に入力されたユーザID引数にして実行され、各実験データがメモリ変数から読み出されて渡される。
【0034】
ラボノート作成プログラム174の記録モジュールは、まず、LNTファイル166を自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160から読み出して開く。そして、各実験データをLNTファイル166内の所定の位置に組み込む。また、記録モジュールは、ユーザIDによって認証用DBファイル163を検索し、対応する氏名(ここでは実験系を行った研究員の氏名)を取得し、LNTファイル166内の所定の位置に組み込む。その上で、内容の確認とともに実験者のコメントの入力させるための画面(以下、コメント入力画面)をメインウインドウに表示するようプログラミングされている。
【0035】
また、ラボノート閲覧プログラム175は、自機関実験管理サーバ140に保存された電子ラボノート167の内容を研究員や指導者に閲覧させるためのプログラムである。特に指導者については、電子ラボノート167を閲覧することで、研究の進捗状況を確認したり、必要に応じて研究員に対して助言や指導を行ったりすることができる。以下、指導者が電子ラボノート167を閲覧する状況を例にして説明する。
【0036】
図1に示す自機関閲覧用端末120は、指導者が操作する端末となっている。自機関閲覧用端末120にも、自機関実験用携帯端末115と同様に実験系支援アプリがインストールされている。また、指導者についてもIDとパスワードが発行されており、自機関実験管理サーバ140に対するアクセス権が与えられている。
ラボノート閲覧プログラム175は、認証プログラム170にリンクしている。前述したように、実験系支援アプリのアイコンをタップすると、ログイン画面が表示され、ユーザIDとパスワードが正しく入力されて認証がされると、ユーザIDが保持され、初期画面が自機関閲覧用端末120に表示される。初期画面には、電子ラボノート167の閲覧を行うメニューのコマンドボタンが含まれており、このコマンドボタンがラボノート閲覧プログラム175の起動ボタンとなっている。
【0037】
実施形態の実験系支援システムでは、電子ラボノート167の閲覧については、指導者が閲覧する場合と、研究員が閲覧する場合とでは、異なった動作をするようになっている。即ち、指導者については自身が指導監督する各研究員が作成した電子ラボノート167を閲覧できるようになっている。また、研究員については、自身が作成した電子ラボノート167のみを閲覧できるようになっている。
このような動作を可能にするため、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160には、指導者と研究員との関係を登録したデータベースファイル(以下、メンバ情報DBファイル)168が記憶されている。
【0038】
尚、自機関実験管理サーバ140の自機関実験データベース160には、電子ラボノート167の管理のためのデータベースファイル(以下、ノート管理用DBファイル)164が記憶されている。
【0039】
図3は、
図1に示す装置の実験データ共用化管理システムをコンピュータを用いて構成する場合の例示的なコンピューティング装置300を示すブロック図である。
図1の実験データ共用化管理システム300は、コンピューティング装置300の全部または一部を使用して実施することができる。
非常に基本的な構成301では、コンピューティング装置300は通常、1つまたは複数のプロセッサ310とシステムメモリ302とを含む。メモリバス343は、プロセッサ310とシステムメモリ302との間の通信に使用され得る。
【0040】
所望の構成に応じて、プロセッサ310は、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ(μC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意のタイプのものであり得る。プロセッサ310は、レベル1キャッシュ311およびレベル2キャッシュ312などのもう1つのレベルのキャッシング、プロセッサコア313、およびレジスタ314を含むことができる。例示的なプロセッサコア313は、算術論理演算装置(ALU)、浮動小数点ユニット(FPU)、デジタル信号処理コア(DSPコア)、またはそれらの任意の組み合わせなどを含むことができる。例示的なメモリ制御部315もプロセッサ310と共に使用することができ、またはいくつかの実装形態では、メモリ制御部315はプロセッサ310の内部部分とすることができる。
【0041】
所望の構成に応じて、システムメモリ302は、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない任意のタイプのものとすることができる。システムメモリ302は、オペレーティングシステム303、認証プログラム370、合成条件抽出プログラム372、合成後物性データ抽出プログラム373、ラボノート作成プログラム374、ラボノート閲覧プログラム375を含み得る。
自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の合成後の実験データと、及び当該合成後の実験データが得られた合成条件に関連する情報に対する識別子が付与してある。自機関実験データベース160は、実験系情報DBファイル165や電子ラボノートファイル167と実験データが識別子を用いて共用化されていてもよい。また他機関実験データベース260は、実験系情報DBファイル265や電子ラボノートファイル267と実験データが識別子を用いて共用化されていてもよい。
合成条件抽出プログラム372は、自機関実験データベース160および他機関実験データベース260にアクセスして、実験データの識別子により個別材料毎の合成条件を抽出できるように構成してある。合成後物性データ抽出プログラム373は、自機関実験データベース160および他機関実験データベース260にアクセスして、実験データの識別子により個別材料毎の合成後の実験データを抽出できるように構成してある。
【0042】
認証プログラム370は、認証用DBファイル363、参加機関情報DBファイル369、研究メンバ情報DBファイル368を含み得る。ラボノート作成プログラム374は、ラボノートテンプレートファイル366、ラボノート管理用DBファイル364を含み得る。
ラボノート管理用DBファイル364では、例えば有機合成分野では、個別材料毎の未反応物や副生成物が含まれる混合物に関する実験データ又は、及び重合度に関する実験データが含まれる。バイオ分野では、特定の元素配置を有するタンパク質や核酸の合成を目的としているので、副生成物は別のサンプルと認識される。製薬分野や試薬合成のような分野では、高純度の化合物の合成を目的としているので、未反応物や副生成物は精製過程で除却される。
【0043】
コンピューティング装置300は、追加の特徴または機能性、および基本構成301と任意の必要な装置およびインターフェースとの間の通信を容易にするための追加のインターフェースを有することができる。例えば、バス/インターフェース制御部340を使用して、ストレージインターフェースバス341を介した基本構成301と1つまたは複数のデータ記憶装置345との間の通信を容易にすることができる。データ記憶装置345は、取り外し可能な記憶装置346、取り外しができない記憶装置347、またはそれらの組み合わせである。取り外し可能な記憶装置および取り外しができない記憶装置の例には、フレキシブルディスクドライブおよびハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置、コンパクトディスク(CD)ドライブまたはデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブなどの光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、テープドライブが含まれる。例示的なコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実施される揮発性および不揮発性、取り外し可能および固定の媒体を含み得る。
【0044】
システムメモリ302、取外し可能記憶装置346、および固定記憶装置347はすべてコンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置を含むがこれらに限定されない。所望の情報を格納するために使用され得、かつコンピューティング装置300によってアクセスされ得る任意のそのようなコンピュータ記憶媒体は、デバイス300の一部であり得る。
【0045】
また、コンピューティング装置300はバス/インターフェース制御部340を介して様々なインターフェース装置(例えば、出力インターフェース、周辺インターフェース、および通信インターフェース)から基本構成301への通信を容易にするためのインターフェースバス342を含むことができる。
出力デバイス360では、画像処理ユニット361および音声処理ユニット362が、1つまたは複数のAVポート363を介して表示装置391またはスピーカなどの様々な外部装置と通信するように構成され得る。
【0046】
例示的な周辺インターフェース355は、入力装置(例えば、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置など)のような外部装置と通信するように構成され得るシリアルインターフェース制御部356またはパラレルインターフェース制御部357を含む。周辺インターフェース355は、I/Oポート358を介して材料名統一化DB320、実験条件統一化テーブル330、試薬別関連法規参照テーブル332を格納した外部データベース機器と通信するように構成され得る。
【0047】
材料名統一化DB320は、公開キー情報322、他機関実験DBキー情報324、サンプル特定識別子情報328、認識用実験番号DB326を含みえる。材料名統一化DB320は、データ共有の原則であるFAIR原則に準拠したメタデータを用いている。FAIR原則とは、見つけ易さ(Findable)、アクセス性(Accessible)、相互通用性(Interoperable)、再利用性(Re-usable)の4個の英文表記での頭文字で表記されるものである。見つけ易さとは、一意なID、十分なメタデータ記述、検索可能、データのID明記を備えることをいう。アクセス性とは、標準プロトコルによるデータ入手、原データが利用不可能となったとしても、メタデータにはアクセスできることをいう。相互通用性とは、定形的で共有されるテイル記述であることをいい、使われている語彙もFAIR原則に準拠し、他のデータへの参照が可能であることをいう。再利用性とは、データ利用ライセンス明示、データ来歴、分野ごとのコミュニティの標準を充足することをいう。
【0048】
メタデータとは、データの荷札とも呼ばれるもので、書誌情報的メタデータ、管理・利用メタデータ、科学的メタデータが含まれる。書誌情報的メタデータは表題、作成者、作成日、作成場所等をいい、管理・利用メタデータは管理者・責任者とライセンス条項をいい、メタデータ相互間での共通性が高い。これに対して、科学的メタデータは対象の試料・物質、使った測定法・実験条件、使った計算手法、調べた特性、試料の合成条件等をいい、分野依存性が高い。
メタデータにおける語彙管理は、材料名統一化DB320に概念・用語を登録し、表記ゆれや別名の管理を行う。例えば、日本語ラベルで『ポリエチレン』は、英語主ラベルで”polyethlene”、英語副ラベルで”polyethene”、”poly(methylene)”、”polyethene”、化学式で(C2H4)nであり、これらは語彙識別子(ID)として例えばQ123を付与する。サンプル特定識別子情報328では、メタデータにおける語彙管理に準拠して記述される。
【0049】
実験データ共用化管理システム300は、自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、キーバリュー形式でメタデータを管理するように構成される。キーバリュー形式とは、キーとバリューの組み合わせで作られるシンプルなデータモデルが基本ある。バリューとキーは一対一で管理され、新しいバリューが増えるとキーが割り振られ、データが増えてゆく。単純な構造なので分割しやすく、キー管理するサーバがキーの位置を把握していれば、メンテナンスも可能である。
【0050】
自機関実験データベース160および他機関実験データベース260に格納された前記材料開発に関係する実験データ及び当該実験データに関連する情報には、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報に対し、実験者が認識できる実験番号326と、サンプルを特定する識別子(UUID等)328の両方を付与してある。実験データ共用化管理システム300では、前記実験番号または前記識別子により前記個別材料毎の合成条件や測定データを抽出できるように構成される。UUID(Universally Unique Identifier)とは、ソフトウェア上でオブジェクトを一意に識別するための識別子である。
【0051】
実験条件統一化テーブル330は、実験条件を記述する用語および当該実験条件を記述する用語を実験データ共用化管理システム300で用いる際の別名に、識別子を付与して統制する。識別子は、例えば実験者が認識できる実験番号326や、サンプルを特定する識別子(UUID等)328である。
試薬別関連法規参照テーブル332は、個別材料毎の実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報には、前記実験で使用された試薬の量・種類・関連法規を一元的に参照するためのものである。試薬別関連法規参照テーブル332は、法令の改訂の度に随時更新する必要があるため、この保守作業は四半期毎や各年度毎のように定期的に行われるとよい。
【0052】
例示的な通信装置380は、ネットワーク制御部381を含み、ネットワーク制御部381は、1つまたは複数の通信ポート382を介したネットワーク通信リンクを介して、自機関向けの実験系支援システム100と、1つまたは複数の他機関向けの実験系支援システム200のコンピューティング装置との通信を容易にするように構成されてもよい。
ネットワーク通信リンクは、通信媒体の一例であり得る。通信媒体は、通常、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または搬送波もしくは他の搬送機構などの変調データ信号内の他のデータによって具現化することができ、任意の情報配信媒体を含むことができる。「変調データ信号」は、信号内に情報を符号化するような方法で設定または変更されたその特性のうちの1つまたは複数を有する信号であり得る。限定ではなく例として、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接配線接続などの有線媒体、ならびに音響、無線周波数(RF)、マイクロ波、赤外線(IR)および他の無線媒体などの無線媒体を含み得る。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、記憶媒体と通信媒体の両方を含み得る。
【0053】
実験データ共用化管理システム300で用いるコンピューティング装置300は、携帯電話、パーソナルデータアシスタント(PDA)、パーソナルメディアプレーヤデバイス、ワイヤレスウェブウォッチデバイス、パーソナルコンピュータなどのスモールフォームファクタポータブル(またはモバイル)電子デバイス、上記の機能のいずれかを含むヘッドセットデバイス、特定用途向けデバイス、またはハイブリッドデバイスの一部として実装され得る。また、コンピューティング装置300は、ラップトップコンピュータ構成および非ラップトップコンピュータ構成の両方を含むパーソナルコンピュータとして実装され得る。
【0054】
図4は、自動実験実施機器と自動実験制御システムの一例を説明するシステム構成図である。自動実験実施機器410は、例えば有機化合物の合成分野の実験を実施するものであり、例えば分注機411と試験管412の群であるが、バイオ系や生体分析系、疾病管理用の内代謝機能の分析系でもよく、さらにコンビナトリアル技術のように、1つの試料基板の上に、2元あるいは3元の材料の組成を0%から100%まで変化させた薄膜を形成して最適な材料組成比率を探求するものでもよい。また、コンビナトリアル化学のように、類似構造を持つ化合物の集合体である化学ライブラリを合成し、活性を調べ、構造を解析する方法論に準拠していてもよい。
試験管412の群は、例えば4x7本程度の試験管よりなるものであるが、本数はこれに限定されない。分注機411は、有機化合物の合成分野の実験系に用いる原液を各試験管412に対して、予め定められた実験計画に準拠して注入する。各試験管412に注ぐ原液の種類や容積は、予め実験計画に定められている。
【0055】
自動実験制御システム420は、例えば自機関実験用携帯端末115と、自機関実験管理サーバ140の実験系選択プログラム172、実験系実施プログラム173、実験内容説明ファイル162が含まれている。自動実験制御システム420には、更に他機関実験用携帯端末215と、他機関実験管理サーバ240の実験系選択プログラム272、実験系実施プログラム273、実験内容説明ファイル262が含まれてもよい。
【0056】
図5は、
図4に示す自動実験システムでのデータ処理の一例を説明する流れ図である。
自動実験システムでのデータ処理では、実験の流れの系列(S500)、物の流れの系列(S504)、データの流れの系列(S506)があり、時系列に沿って情報の授受が行われている。なお、
図5に示す自動実験システムでのデータ処理の詳細は、
図7~
図9を用いて、更に詳細に説明している。
【0057】
最初に実験の計画(S510)にそって、自動実験実施機器410により対応する実験(S512)が行われる。この場合、自動実験制御システム420では、合成条件表を読込み(S516)、自動実験実施機器410では、この合成条件表に対応したサンプル合成が行われる(S514)。自動実験制御システム420では、サンプル合成されたサンプルに対して、サンプルIDが付与され、合成ロット番号や試料IDが付与される(S518)。付与されたサンプルIDとしては、例えばQRコード(登録商標)が作成されて、帳票シートに当該QRコードが印刷されて、該当する試験管に当該帳票シートを貼付する作業が、自動実験実施機器410によって行われる。
【0058】
次に合成されたサンプルに対する測定条件(S520)にそって、自動実験実施機器410によりサンプル合成されたサンプルに対する測定(S522)が行われる。自動実験制御システム420では、入庫前測定を行なうか否かの判断が行われ(S524)、Yesであれば自動実験実施機器410により、受け入れサンプルに対する所定の測定が行われる(S525)。自動実験制御システム420では、S525での測定用の測定条件が読み出される(S526)。
【0059】
合成されたサンプルに対する検品処理(S530)の後、合成されたサンプルが所定の保管庫に入庫して保管される(S532)。保管庫としては、所定の温度や雰囲気ガス・紫外線からの隔離等の保管条件に準拠した保管条件で、合成されたサンプルを有する試験管を保管できるものが好ましい。サンプル入庫処理(S534)は、自動実験実施機器410により行われるもので、S524でNoと判断された受け入れサンプルや、S525で所定の測定が行われた受け入れサンプルを保管庫に保管する入庫処理を行う。自動実験制御システム420では、受け入れサンプルに対する検品票や入庫票を用意し(S536)、受け入れサンプルが保管庫に保管されることに対応して在庫票が更新される(S538)。
【0060】
次に、受け入れサンプルに対する貸し出し等の試料の出庫処理(S540)が必要な場合として、例えば自動実験実施機器410により対応する外部測定(S542)が行われる場合がある。外部測定としては、例えばNMRのような核磁気共鳴特性を測定する機器や、電子顕微鏡のように比較的大型の共用試験設備の場合もありえる。
自動実験制御システム420では、受け入れサンプルに対する外部測定が必要か否かの判断が行われ(S544)、Yesであれば自動実験実施機器410により、出庫サンプルに対する所定の貸出処理や外部測定が行われる(S545)。自動実験制御システム420では、S545での外部測定の対象となる出庫サンプルに対する在庫引当票や出庫票が作成される(S546)。また、S545での外部測定の対象となる出庫サンプルに対する測定条件やメタデータが読み出される(S548)。
なお、熟成期間等の所定の保管満期条件が充足された場合や受け入れサンプルに対する譲渡等の試料の出庫処理(S540)の場合は、製造者の責任として、出荷製品に対する品質保証目的での外部測定(S542)が行われる場合がある。この場合は、出庫サンプルに対する返却は予定されていない為、次に説明する試料の返却処理は原則として不要である。
【0061】
試料の返却処理(S550)の場合は、貸し出された出庫サンプルが返却された場合に、再び保管庫に戻す処理を行うもので、返却サンプルが所定の保管庫に入庫して保管される(S552)。サンプル入庫処理(S554)は、自動実験実施機器410により行われるもので、S544でNoと判断された出庫サンプルや、S545で所定の外部測定が行われた出庫サンプルを保管庫に返却して、在庫処理を行う。自動実験制御システム420では、受け入れサンプルが保管庫に保管されることに対応して在庫票が更新される(S556)。
【0062】
図6は、自動実験システムで用いられる合成条件表の説明図で、(A)は実験プロセス表、(B)は実験プロセスで用いられる試薬の組成表、(C)は実験プロセスで用いられる開始剤・触媒・溶媒、計測機の組成表、(D)は自動実験実施機器向けの試薬の組成表、(E)は自動実験実施機器向けの開始剤・触媒・溶媒、計測機の組成表を示している。ここで、
図6(B)~(E)に各欄に示される下向き三角印『▼』は、EXCEL(登録商標)のプルダウン表示である。
実験プロセス表では、各実験プロセス(RUNx-i;i=1、…、8)での温度、時間、攪拌の条件を示している。
実験プロセスで用いられる試薬の組成表では、各実験プロセスにおける原料となる試薬(スチレン、MMA、NIPAM)の分子量と濃度並びに分注量が記載されている。ここで、MMAはメタクリル酸メチル(methyl methacrylate)であり、NIPAM(登録商標)はイソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide)である。
各実験プロセスにおける開始剤・触媒・溶媒としては、RAFT、AIBN、AAA、BBBが記載されている。RAFT剤は可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible Addition/Fragmentation Chain Transfer)重合の制御剤であり、AIBNはアゾビスイソブチロニトリル[azobis(isobutyronitrile)] であり、有機反応試剤の一種で、プラスチックやゴムの発泡剤や、ラジカル反応の開始剤として用いられる。AAAとBBBは任意の化学物質を指し示すもので、特定の化学物質を示す略語ではない。
【0063】
溶媒として、ジオキサン(Dioxane)が表記されている。ジオキサンは、有機溶媒として用いられる他、塩素系溶剤の安定化剤としても用いられる。重水を用いたNMRでは、化学シフトの内部基準物質としても用いられる。
計測機としては、GPC、NMR、DSC、密度計等が用いられる。GPCはゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)である。NMRは核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)である。DSCは示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)である。
自動実験実施機器向けの組成表では、研究者向けの実験プロセスで用いられる試薬の組成表の内容を、自動実験実施機器向けに表記を簡略化している。
【0064】
図7は、自動実験実施機器で実施される合成条件表に従った実験プロセスの説明図で、(A)は合成工程、(B)は取り出し工程、保管サンプルの選定工程、サンプルの瓶詰め工程を表している。
合成工程では、モノマーの分注工程、加熱工程、冷却工程が行われる。合成工程では、資料登録票701に基づいて、ロット番号票702を用いてロット番号が振り出される。
資料登録票701には、記入日、ユーザ識別番号、装置名、試料数の記入・登録欄が設けられている。ユーザ識別番号は、例えば実験担当者に割り当てられた識別番号が用いられる。装置名は、例えば誤記入を防止する為に、予め登録された自動実験実施機器の中から選択するプルダウン形式を採用すると良い。ロット番号票702には、合成体番号やユーザ識別番号が登録される。合成された試料に対しては、測定票703が発行される。測定票703には、測定名、測定日、合成条件、使用試薬等の合成条件表に従った実験プロセスと紐付ける情報が記入される。
モノマーの分注工程では、合成条件表に従って、分注機411により、有機化合物の合成分野の実験系に用いる原液を各試験管412に対して注入する。一回のモノマーの分注工程毎に、ロット番号が振り出される。
【0065】
取り出し工程では、合成されたサンプルを有する各試験管412が取り出される。各試験管412に対しては資料登録票701に従って、ロット番号が振り出され、ロット番号票702が作成されているので、各試験管412にロット番号票702を貼付するか、又は代替の識別可能な状態を確保する処理がなされる。
保管サンプルの選定工程は、検査工程とも類似するものであり、測定票703に従い、各試験管412内の合成されたサンプルの合否を判定する。サンプルの合否判定とは、目的物が合成されているか否か、或いは合成されたサンプルが所定の品質基準を充足しているか検査するものである。
サンプルの瓶詰め工程は梱包工程とも類似するものであり、各試験管412内の合成されたサンプルを保存用瓶に瓶詰めすると共に、検品票/入庫票705を各保存用瓶に貼付する。
【0066】
図8は、サンプル保存瓶の保管庫への入出庫処理の説明図で、(A)は保管場所の決定工程、入庫工程、(B)は他機関によるサンプル借用依頼工程、在庫検索工程を表している。
保管場所の決定工程では、入庫確認票801に基づいて、保管庫811の棚を割り当て、棚番割当票802を作成する。入庫確認票801は、検品票/入庫票705に準じたものである。棚番割当票802により、今回入庫するサンプル保存瓶が入庫される保管庫812内部の棚が予約される。
入庫工程では、在庫票803に基づき、今回入庫したサンプル保存瓶が保管庫813内部の予約済みの棚に置かれる。
【0067】
他機関によるサンプル借用依頼工程は、保管機関の立場からは出庫依頼に相当するもので、他機関によるサンプル借用依頼があると、借用依頼票804が作成される。
在庫検索工程は、保管機関の立場からは在庫引き当てに相当するもので、在庫検索票805を用いて他機関によるサンプル借用依頼がなされたサンプルが保管されたサンプル保存瓶の在庫検索をする。在庫票806では、サンプル保存瓶の在庫検索の結果が表示されており、出庫候補となるサンプル保存瓶の在庫状態が把握できる。
【0068】
図9は、サンプル保存瓶の他機関への借用処理を行う場合の保管庫からの入出庫処理の説明図で、(A)は貸出処理工程、(B)は返却処理工程を表している。
貸出処理工程では、出庫依頼票901に基づき保管庫911のサンプル保存瓶921を、他機関への貸出対象となるサンプル保存瓶として指定する。在庫票902では、他機関への貸出対象となるサンプル保存瓶921について貸出中に書き替える処理がなされる。貸出票903は、他機関913へ貸出対象となるサンプル保存瓶921についての貸出票である。他機関913では、借り受けたサンプル保存瓶921について、他機関独自の視点からの測定がなされる場合が多いから、この測定値は測定条件/メタデータDB933に登録される。
【0069】
返却処理工程では、貸出されたサンプル保存瓶924が他機関913から返却された場合に、入庫依頼票904が作成される。入庫依頼票904に従って、保管庫914の所定の棚の位置にサンプル保存瓶924が返却され保管される。在庫票905では、返却処理されたサンプル保存瓶924について、『貸出中』から『在庫』に書き替えられる。
他機関913で測定された測定条件/メタデータDB933の測定データは、返却されたサンプル保存瓶924についての測定値であるので、サンプル保存瓶924についての測定データとして、測定票906に追記される。
【0070】
図10は、本発明の適用対象となる実験データ管理システムでの、各工程でのサンプル保管と測定データ蓄積の授受を示す流れ図である。
実験データ管理システムでの各工程のサンプル保管と測定データ蓄積の授受の主体は、保管棚1010、プリンタ1020、研究者1030、実験装置1040、計測装置1050、RDEシステム(実験データ共用化管理システム)1060であるが、これに限定されるものではなく、例えば研究監督者や外部機関の実験データ管理システムを含めてもよい。
実験データ管理システムでの各工程は、実験条件・組成の計画とラボノート番号の記入工程1001、機械用のID発行工程1002、中間測定/測定装置の操作工程1003、測定データの確認/解析工程1004、サンプルの取得工程1005、追加確認/解析工程1006、保管品の確定/入庫棚の引き当て工程1007、QRコード(試料ID)と人間用の説明の貼付け工程1008、QR貼付梱包(瓶詰め)工程1008a、試料の入庫工程1009がある。
【0071】
実験条件・組成の計画とラボノート番号の記入工程1001では、研究者1030が実験条件表1001aのデータに従って、原料の種類と分注量1031を実験装置1040に指示する。すると、実験装置1040は試料の分注と条件セット1041を行う。研究者1030はラボノート作成1042を行い、ラボノート番号、実験内容、実験者、実験日、実験ラボノートに試料別条件を記録する。S1051では、測定データ・合成データと試料IDとの紐付けがなされて、RDEシステム1060に送られる。RDEシステム1060では、実験条件表1061として格納され、条件表CSV1061a、サンプルID1061bも実験条件表1061に併せて格納される。また試料別データセット1062が、各実験プロセス(RUNx-i;i=1、…、n)毎に作成される。
機械用のID発行工程1002では、RDEシステム1060から試料ID1052が発行される。
【0072】
中間測定/測定装置の操作工程1003では、サンプル合成中の中間測定が行われる。実験サンプルの抜き取り1043が行われて、GPC、NMR等の測定装置により中間測定が行われ、試料名と測定条件1033と紐付けられ、装置情報1044や生の測定データや解析データが研究者1030に送られる。
測定データの確認/解析工程1004では、研究者1030よりピーク等のデータの追加/解析1034が行われ、測定データ1054としてRDEシステム1060に送られる。測定データ1054は、装置情報、生データや加工データ、追加情報(分子量曲線等)である。分子量曲線は、例えばポリマーの重合反応の進行状態を示している。RDEシステム1060では、測定データ・計算データ1064は実験サンプル毎に作成される。
サンプルの取得工程1005では、合成物1045が、例えば試験管入りポリマー1035として研究者1030が合成体を取得する。
【0073】
追加確認/解析工程1006では、サンプル合成後の測定が行われる。サンプル合成後の測定でのデータと物の流れは、上述のサンプル合成中の中間測定と同様である。実験サンプルの抜き取りが行われて、GPC、NMR、DSC等の測定装置により測定1056が行われ、合成されたサンプルが合格品か不合格品か判定が行われる。合格品の合成物は、例えば試験管入りポリマーから保存瓶に瓶詰めされる。
保管品の確定/入庫棚の引き当て工程1007では、合格品について、保管品の確定処理がなされ、入庫問合せ1036がなされ、保管棚1010の空いている棚を確認依頼がなされる。入庫棚の引き当て処理では、空き状況回答1037が研究者1030に対して通知される。
【0074】
QRコード(試料ID)と人間用の説明の貼付け工程1008では、試料固有ID1038や実験者名、電子ラボノート、実験説明等がプリンタ1020に送られる。プリンタ1020では、試料管理用シール1038aを印刷するので、研究者1030は合格品の合成物が瓶詰めされた瓶にQR貼付作業をし、梱包(瓶詰め)工程1008aを実施する。
S1058では、サンプル合成後の測定データ1058と試料IDとの紐付けがなされ、RDEシステム1060に送られる。
【0075】
試料の入庫工程1009では、合成体1039が保管棚1010に送られる。合成体1039はQRコード付きバイアル瓶に入れられたポリマーである。実験ラボノート1049については、RDEシステム1060に送られる。実験ラボノート1049では、実験ラボノートの詳細や、測定の有無や追加測定、入庫の有無や必要な追加情報の記入がなされる。RDEシステム1060では、試料別データセット1069が各実験プロセス(RUNx-i;i=1、…、n)毎に作成される。
S1059では、試料別のデータセットに履歴が追加される。
【0076】
次に、本発明の電子ラボノートシステムについて説明する。
本発明の電子ラボノートシステムは、実験データ管理システムのうち、特に電子ラボノートの作成や閲覧に特化したものである。そこで、本発明の電子ラボノートシステムでは、例えば
図1に示す実験データ管理システムのうち、電子ラボノートファイル167、他機関電子ラボノートファイル267、材料名統一化データベース320、及び実験データ共用化管理システム300を備えたものである。
電子ラボノートファイル167では、自機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報が記録される。他機関電子ラボノートファイル267では、他機関の材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報が記録される。
【0077】
材料名統一化データベース320は、他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関電子ラボノートファイル167に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、同一又は対応する実験データであるか照合するための語彙統一化のためのもので、メタデータを用いている。
実験データ共用化管理システム300は、自機関電子ラボノートファイル167と少なくとも一か所の他機関電子ラボノートファイル267にアクセスして情報処理を行うもので、材料名統一化データベース320に基づき、検索対象となる前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報について、自機関電子ラボノートファイル167又は、及び他機関電子ラボノートファイル267に格納された前記材料開発に関係する実験データ又は、及び当該実験データに関連する情報を抽出して出力する。
【0078】
なお、上記の実施の形態において、一つの実験系を構成する複数の実験は順次行われるものであったが、複数の実験が同時進行する場合もあり得る。例えば二つの試料を対象物とした実験系の場合、一方の試料についての実験と他方の試料についての実験とを同時進行で行って各々実験結果を得た後、双方の試料を反応させ、その後、反応後の試料について実験を行うような場合もあり得る。
【0079】
尚、ラボノート閲覧プログラム175については、指導者が電子ラボノート167の閲覧を行った記録を電子ラボノート167上に残すようにしても良い。即ち、ラボノート閲覧プログラム175は、指導者のユーザIDで電子ラボノート167の閲覧がされた際、指導者が電子ラボノート167をチェックした旨の記録を残すかどうかの選択をさせる画面を表示し、ここで記録を残す旨の選択がされた場合、指導者の印影又はサインのイメージをラボノートファイル167に貼り付けた上で保存するようプログラミングされる。
【0080】
また、電子ラボノートファイル167については、デジタル署名を付与した上で自機関実験管理サーバ140の記憶部121に記憶するようにしても良い。デジタル署名は、電子ラボノート167を作成した実験者のデジタル署名の場合もあるし、電子ラボノート167をチェックした指導者のデジタル署名の場合もあるし、双方の場合もある。さらに、タイムスタンプを設けて、各種工程が行われた日時や時刻を、実験データに紐付けて記録するようにしてもよい。
【0081】
尚、上記各実施形態において、電子ラボノートファイル167の作成と保存は、各実験の実施完了のたびに行われる場合もあり得る。この場合、ラボノート作成プログラムは、実験系実施プログラム173の一モジュールとされ、各実験実施モジュールの実行後に、評価モジュールによる評価結果とともに実験結果を電子LNTファイル167に記録し、電子ラボノートファイル167として保存される。このような電子ラボノートファイル167も自機関閲覧用端末120において指導者が閲覧できるので、実験系の進捗状況を途中でチェックしたり、実験のやり方について途中で助言したりすることができるようになる。
【0082】
また、電子ラボノートファイル167は改変不可の形式としてもよいが、電子ラボノートファイル167の内容自体は、誤記訂正等があり得るので、改変可能としてもよい。この場合、元のファイルは改変不可であり、内容を変更したものを別のファイルとして新しく作成するのがよい。このような訂正用のプログラムが自機関実験管理サーバ140に実装される。
【0083】
更に、上記説明では、主として高分子合成系の実験が例として説明されたが、実施形態の実験系支援システムは、バイオ分野や製薬分野のような他の分野の実験系についても利用できることは言うまでもない。また、高分子合成系の分野として、例えば塗料や接着剤等が存在している。高分子合成系の分野では、必ずしも試薬のような高純度の化合物の合成を目的とするものではなく、未反応物や副生成物が含まれる混合物が合成される場合であっても、目的とする塗料や接着剤等の使用用途に適した物性の物質が工業的に安定して合成されれば足り、このような工業的に安定して合成される製造プロセスが探索の結果、発見できれば充分という用途も存在している。
また、上記各実施形態では、実験系を構成する各実験の結果は数値データであるとして説明したが、実験結果は単に目的物質の存在が確認されたかどうかというような定性的な結果の場合もある。
さらに、各実施形態では、ラボノート作成プログラム174は自機関実験管理サーバ140に実装されていて自機関実験用携帯端末115が呼び出して実行したが、自機関実験用携帯端末115に予めインストールされていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の実験データ管理システムによれば、自機関ばかりでなく他機関も含めた、不特定多数の試料の合成条件や実験データを参照でき、機械可読かつ表現の統制された実験条件データを生成できるので、不特定多数の実験データを効率的に集積・利活用することがで、材料科学分野での新規材料の研究開発が促進される。
さらに本発明の実験データ管理システムによれば、各種の識別子(ユーザIDやUUID)を検索語として認識する実験データ集積システムに適切なアクセス権を設定することにより、特定の研究プロジェクトの間でのデータ共有をはじめ、例えば日本国内の複数の研究機関、あるいは複数の企業や学術機関のデータの共有など、より広域のデータの集積や活用を効率的に行うことができ、材料科学分野での新規材料の研究開発が促進される。
さらに本発明の実験データ管理システム〔7〕又は〔8〕では、未反応物や副生成物が含まれる混合物が合成される場合に、目的とする塗料や接着剤等の使用用途に適した物性の物質が工業的に安定して合成される製造プロセスが探索の用途に適しており、高分子合成系の分野に用いて好適である。
本発明の電子ラボノートシステムによれば、メタデータにおける語彙管理として、材料名統一化データベースに概念・用語を登録し、表記ゆれや別名の管理を行っているので、自機関ばかりでなく他機関も含めた、不特定多数の試料の合成条件や実験データを参照でき、機械可読かつ表現の統制された実験条件データを生成できるので、不特定多数の実験データを効率的に集積・利活用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 自機関向けの実験系支援システム
110 自機関実験室
111、112、113 自機関実験機器
115 自機関実験用携帯端末
120 自機関閲覧用端末
130 自機関内ネットワーク
140 自機関実験管理サーバ
150 自機関実験管理用プロセッサ
160 自機関実験データベース
161、261 実験機器用ソフトウェア
162、262 実験内容説明ファイル
163、263、363 認証用DBファイル
164、264、364 ラボノート管理用DBファイル
165、265 実験系情報DBファイル
166、266、366 ラボノートテンプレートファイル(LNTファイル)
167、267 電子ラボノートファイル
168、268、368 研究メンバ情報DBファイル
170、270、370 認証プログラム
171、271 メインプログラム
172、272 実験系選択プログラム
173、273 実験系実施プログラム
174、274、374 ラボノート作成プログラム
175、275、375 ラボノート閲覧プログラム
200 他機関向けの実験系支援システム
210 他機関実験室
211、212、213 他機関実験機器
215 他機関実験用携帯端末
220 他機関閲覧用端末
230 他機関内ネットワーク
240 他機関実験管理サーバ
250 他機関実験管理用プロセッサ
260 他機関実験データベース
280 外部ネットワーク
300 実験データ共用化管理システム
320 材料名統一化データベース
322 公開キー情報
324 他機関実験データベース引用キー情報
326 認識用実験番号情報
328 サンプル特定識別子情報
330 実験条件統一化テーブル
332 試薬別関連法規参照テーブル
369 参加機関情報DBファイル
372 合成条件抽出プログラム
373 合成後物性データ抽出プログラム