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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147333
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20231005BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60C15/06 Q
B60C15/06 B
B60C15/06 E
B60C15/00 M
B60C15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054767
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣重 智彦
(72)【発明者】
【氏名】立田 真大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】玉井 淳也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA44
3D131BA03
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC31
3D131CB12
3D131DA14
3D131DA17
3D131HA01
3D131HA33
3D131HA38
3D131KA06
(57)【要約】
【課題】耐転倒性を損なうことなく、カーカスの強度低下を抑えながら軽量化を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2は、一対のビード10と、カーカス12とを備える。それぞれのビード10のエイペックス40は、第一エイペックス42と、第二エイペックス44とを備える。カーカス12は1枚のカーカスプライ46で構成される。カーカスプライ46に含まれるカーカスコード48の総繊度は6000dtex以上9000dtex以下である。折り返し部46bは、第一エイペックス42と第二エイペックス44との間に位置する。基準位置PFにおける、第二エイペックス44の厚さが、2.5mm以上4.5mm以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、
前記トレッドの端に連なり、前記トレッドの径方向内側に位置する一対のサイドウォールと、
前記サイドウォールの径方向内側に位置する一対のビードと、
前記トレッド及び一対の前記サイドウォールの内側に位置し、一対の前記ビードのうちの第一のビードと、第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、
径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置するベルトと、
前記カーカスの内側に位置するインナーライナーと
を備え、
それぞれの前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備え、
前記エイペックスが、前記コアに積層される第一エイペックスと、前記第一エイペックスの径方向外側に位置する第二エイペックスとを備え、
前記カーカスが1枚のカーカスプライで構成され、
前記カーカスプライが、前記第一のビードのコアと前記第二のビードのコアとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記コアで折り返される一対の折り返し部とを備え、
前記カーカスプライが並列した複数のカーカスコードとこれらカーカスコードを覆うトッピングゴムとからなり、
前記カーカスコードの総繊度が6000dtex以上9000dtex以下であり、
それぞれの前記折り返し部の端が、タイヤの最大幅位置の径方向内側に位置し、
前記折り返し部が、前記第一エイペックスと前記第二エイペックスとの間に位置し、
前記最大幅位置よりも径方向内側において、前記カーカスの外側部分が最大の厚さを示す位置が、基準位置であり、
前記基準位置を通る前記カーカスの法線が、前記第二エイペックスと交差し、
前記基準位置における、前記第二エイペックスの厚さが、2.5mm以上4.5mm以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記第二エイペックスの複素弾性率の、前記第一エイペックスの複素弾性率に対する比が、1.0以上3.5以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第二エイペックスの内端から前記折り返し部の端までの径方向距離が、10mm以上40mm以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
ビードベースラインから前記第二エイペックスの外端までの径方向距離が、35mm以上55mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記カーカスと前記インナーライナーとの間に位置するインスレーションを備え、
前記インスレーションが、前記第一のビードと前記第二のビードとの間に位置し、
前記インスレーションと前記カーカスコードとの間に位置する前記トッピングゴムの厚さの、前記インスレーションの厚さに対する比が0.2以上0.6以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
周方向に並ぶ多数のディンプルがタイヤ外面に設けられており、
それぞれのディンプルから前記折り返し部の端までの最短距離が2mm以上10mm以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は乗用車に装着されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのカーカスは通常、2枚のカーカスプライで構成される。それぞれのカーカスプライは並列した多数のカーカスコードを含む。カーカスコードには通常、1100dtex/2又は1670dtex/2のコード構造を有するコードが用いられる。
軽量化に対する要求に応えるために、これまで2枚のカーカスプライで構成していたカーカスを1枚のカーカスプライで構成することが検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6753487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーカスを構成するカーカスプライの枚数を減らすと、カーカスの強度が低下する。強度低下を抑えながらタイヤの軽量化を達成するために、これまで使用してきたコードよりも太いコード、具体的には、6000~9000dtexの総繊度を有する大径コードをカーカスコードとして用いることが検討されている。
【0005】
カーカスプライはビードの周りで折り返される。カーカスコードとして大径コードを用いた場合、折り返し部の端に歪みが集中することが懸念される。
【0006】
折り返し部の端が最大幅位置の径方向内側に配置される、ローターンアップ構造のカーカスは、歪みの集中を抑制できる点で、折り返し部の端が最大幅位置の径方向外側に配置されるハイターンアップ構造のカーカスに比べて有利である。しかしローターンアップ構造のカーカスでは、断面二次モーメントが低下し、十分なコーナリングフォースが得られないことが想定される。この場合、旋回時に高い負荷が作用した場合に、タイヤが踏ん張ることができず、車両が転倒することが懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、耐転倒性を損なうことなく、カーカスの強度低下を抑えながら軽量化を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり、前記トレッドの径方向内側に位置する一対のサイドウォールと、前記サイドウォールの径方向内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び一対の前記サイドウォールの内側に位置し、一対の前記ビードのうちの第一のビードと、第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置するベルトと、前記カーカスの内側に位置するインナーライナーとを備える。それぞれの前記ビードは、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備える。前記エイペックスは、前記コアに積層される第一エイペックスと、前記第一エイペックスの径方向外側に位置する第二エイペックスとを備える。前記カーカスは1枚のカーカスプライで構成される。前記カーカスプライは、前記第一のビードのコアと前記第二のビードのコアとの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記コアで折り返される一対の折り返し部とを備える。前記カーカスプライは並列した複数のカーカスコードとこれらカーカスコードを覆うトッピングゴムとからなる。前記カーカスコードの総繊度は6000dtex以上9000dtex以下である。それぞれの前記折り返し部の端は、タイヤの最大幅位置の径方向内側に位置する。前記折り返し部は、前記第一エイペックスと前記第二エイペックスとの間に位置する。前記最大幅位置よりも径方向内側において、前記カーカスの外側部分が最大の厚さを示す位置が、基準位置であり、前記基準位置を通る前記カーカスの法線が、前記第二エイペックスと交差し、前記基準位置における、前記第二エイペックスの厚さが、2.5mm以上4.5mm以下である。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、前記第二エイペックスの複素弾性率の、前記第一エイペックスの複素弾性率に対する比は、1.0以上3.5以下である。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、前記第二エイペックスの内端から前記折り返し部の端までの径方向距離は、10mm以上40mm以下である。
【0011】
好ましくは、このタイヤでは、ビードベースラインから前記第二エイペックスの外端までの径方向距離は、35mm以上55mm以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤは、前記カーカスと前記インナーライナーとの間に位置するインスレーションを備える。前記インスレーションは、前記第一のビードと前記第二のビードとの間に位置する。前記インスレーションと前記カーカスコードとの間に位置する前記トッピングゴムの厚さの、前記インスレーションの厚さに対する比は0.2以上0.6以下である。
【0013】
好ましくは、このタイヤでは、周方向に並ぶ多数のディンプルがタイヤ外面に設けられており、それぞれのディンプルから前記折り返し部の端までの最短距離が2mm以上10mm以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐転倒性を損なうことなく、カーカスの強度低下を抑えながら軽量化を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の第一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3図1に示されたタイヤの一部を示す断面図である。
図4図4図1に示されたタイヤの変形例を示す断面図である。
図5図5図4に示されたタイヤのサイド面の一部を示す断面図である。
図6図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
タイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本開示において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0018】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0019】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面(以下、基準切断面)において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離は、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するようにセットされる。
【0020】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0021】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0022】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0023】
本開示において、ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる、未架橋状態の基材ゴムを含む組成物である。架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られる、ゴム組成物の架橋物である。架橋ゴムは基材ゴムの架橋物を含む。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
【0024】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の各要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0025】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータ((株)岩本製作所製の「VES」)を用いて下記の条件にて測定される。本開示における複素弾性率は、70℃での複素弾性率である。
初期歪み=10%
動歪み=2%
周波数=10Hz
変形モード=引張
温度=70℃
この測定では、試験片はタイヤからサンプリングされる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
【0026】
本開示において、有機繊維からなるコードの構成(コード構造)は、JIS L1017の「5.2 コード構造の表示方法」に準拠して表される。コードが、例えば、1400dtexの繊度を有する単糸(フィラメント)を2本撚り合わせて構成されている場合、このコードのコード構造は1400dtex/2で表される。このコードの総繊度(dtex)は、単糸の繊度(1400dtex)と、単糸の本数(2本)との積(1400×2=2800)で表される。
【0027】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。トレッド部とサイド部との境界部分は、バットレス部とも称される。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図1においてタイヤ2はリムR(正規リム)に組まれている。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
【0029】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0030】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端である。
図1において符号HSで示される長さはタイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。断面高さHS(タイヤ断面高さHSとも称される。)は、ビードベースラインから赤道PCまでの径方向距離である。
【0031】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端(以下、外端PW)である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
正規状態において得られる第一外端PWから第二外端PWまでの軸方向距離がタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。外端PWは最大幅位置とも称される。
【0032】
図1において符号PTで示される位置はタイヤ2のトゥである。トゥPTは、タイヤ2の外面(以下。タイヤ外面2G)と内面(以下、タイヤ内面2N)との境界である。
【0033】
図1において符号PDはタイヤ外面2G上の位置である。符号HDで示される長さは、赤道PCから位置PDまでの径方向距離である。このタイヤ2では、径方向距離HDはタイヤ断面高さHSの0.23倍である。符号PDで示される位置は、赤道PCからの径方向距離HDがタイヤ断面高さHSの0.23倍を示す位置である。
【0034】
詳述しないが、タイヤは、未加硫状態のタイヤ(以下、生タイヤ)をモールド内で加圧及び加熱することで得られる。モールドが割モールドである場合、このモールドは、トレッド部を形づけるトレッドリングと、サイド部を形づける一対のサイドプレートと、ビード部を形づける一対のビードリングとを備える。トレッドリングは、周方向に並ぶ複数のセグメントで構成される。
【0035】
前述の位置PDは、このタイヤ2のモールド(図示されず)のキャビティ面におけるセグメントとサイドプレートとの境界位置に対応する、タイヤ外面2G上の位置である。
本開示においては、位置PDはバットレス境界対応位置とも称される。
【0036】
図2は、図1のII-II線に沿った、タイヤ2(詳細には、サイド部)の断面を示す。図2の紙面において、右側がタイヤ外面2G側であり、左側がタイヤ内面2N側である。
図1においてII-II線は、バットレス境界対応位置PDを通るタイヤ内面2Nの法線である。図2は、バットレス境界対応位置PD付近におけるサイド部の断面を示す。
【0037】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のチェーファー18、インナーライナー20及びインスレーション22を備える。
【0038】
トレッド4は、トレッド面24において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を有する。トレッド4には溝26が刻まれる。
トレッド面24はタイヤ外面2Gの一部である。トレッド面24にはサイド面28が連なる。タイヤ外面2Gは、トレッド面24と、一対のサイド面28とを備える。
【0039】
トレッド4は、トレッド本体30と、一対のウィング32とを備える。
それぞれのウィング32はトレッド本体30の軸方向外側に位置する。ウィング32はトレッド本体30とサイドウォール6とを接合する。ウィング32は接着性が考慮された架橋ゴムからなる。
トレッド本体30は、キャップ部34と、ベース部36とを備える。キャップ部34はトレッド面24を含む。キャップ部34は路面と接地する。キャップ部34は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。ベース部36はキャップ部34の径方向内側に位置する。ベース部36はその全体が、キャップ部34に覆われる。ベース部36は低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0040】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0041】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8の外端8eは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
図1において符号PSで示される位置は、タイヤ2とリムRとの接触面の径方向外端に対応するタイヤ外面2G上の位置である。位置PSは接触面外端位置とも称される。
【0042】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10は、コア38と、エイペックス40とを備える。コア38は周方向にのびる。図示されないが、コア38はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス40はコア38の径方向外側に位置する。エイペックス40は全体として、径方向外向きに先細りである。エイペックス40の外端40eは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。エイペックス40の外端40eはビード10の外端10eである。ビード10はその全体が最大幅位置PWの径方向内側に位置する。
【0043】
エイペックス40は2つの要素で構成される。エイペックス40は第一エイペックス42と第二エイペックス44とを備える。
【0044】
第一エイペックス42はコア38の径方向外側に位置する。第一エイペックス42はコア38に積層される。第一エイペックス42は径方向外向きに先細りである。第一エイペックス42は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2の第一エイペックス42の複素弾性率E*1は10MPa以上100MPa以下である。
第一エイペックス42の長さは好ましくは5mm以上20mm以下である。第一エイペックス42の長さは、第一エイペックス42の底面の幅方向中心と外端42eとを結ぶ線分の長さで表される。
【0045】
第二エイペックス44は第一エイペックス42の径方向外側に位置する。第二エイペックス44はカーカス12とクリンチ8との間に位置する。第二エイペックス44は第一エイペックスを構成する架橋ゴムとは異なる架橋ゴムで構成される。
図1に示されるように、第二エイペックス44は、第一エイペックス42の外端42e付近において厚い。第二エイペックス44は、その厚い部分から、径方向外向きに先細りである。第二エイペックス44は、その厚い部分から、径方向内向きに先細りである。
第二エイペックス44の外端44seがエイペックス40の外端40eであり、ビード10の外端10eである。第二エイペックス44の内端44ueは接触面外端位置PSの径方向内側に位置する。第二エイペックス44の内端44ueは径方向において接触面外端位置PSとコア38との間に位置する。
【0046】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10のうちの第一のビード10と、第二のビード10との間を架け渡す。
【0047】
乗用車用タイヤのカーカスは通常、2枚のカーカスプライで構成される。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ46で構成される。カーカス12はタイヤ2の軽量化に貢献する。
【0048】
カーカスプライ46は、プライ本体46aと、一対の第一折り返し部46bとを備える。プライ本体46aは、第一のビード10のコア38と第二のビード10のコア38との間を架け渡す。それぞれの折り返し部46bは、プライ本体46aに連なり、それぞれのコア38で軸方向内側から外側に向かって折り返される。折り返し部46bの端46beは、最大幅位置PWの径方向内側に位置する。このタイヤ2のカーカス12は、ローターンアップ構造を有する。
【0049】
図2に示されるように、カーカスプライ46は並列した複数のカーカスコード48を含む。これらカーカスコード48はトッピングゴム50で覆われる。カーカスプライ46は複数のカーカスコード48とトッピングゴム50とからなる。
【0050】
このタイヤ2のカーカスコード48は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。図示されないが、カーカスコード48は有機繊維からなる複数本のフィラメントを撚り合わせて構成される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリエチレンナフタレート繊維が例示される。このタイヤ2では、有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0051】
図2において、符号GDで示される長さはカーカスコード48の外径である。このタイヤ2では、カーカスコード48の外径GDは後述する総繊度によってコントロールされる。外径GDは好ましくは0.85mm以上1.05mm以下である。本開示において、外径GDは、JIS L1017に規定される「コードゲージ」によって表される。
【0052】
図示されないが、カーカスコード48は赤道面と交差する。カーカスコード48が赤道面に対してなす角度、すなわち交差角度は、70°以上90°以下である。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。サイド部において、カーカスコード48は略径方向にのびる。
【0053】
カーカスプライ46はプライ材料(図示されず)を用いて形成される。詳述しないが、プライ材料は、経糸としてのカーカスコード48と、この経糸に交わる緯糸とで織られた簾織物状のファブリックの両面をトッピングゴム50で被覆することで得られる。プライ材料においてカーカスコード48は、その断面中心がプライ材料の厚さ方向の中心に位置するように配置される。
【0054】
図2において符号Dで示される長さは、カーカスプライ46におけるカーカスコード48間の距離である。前述したように、このタイヤ2では、総繊度が6000~9000dtexの範囲にあるコードがカーカスコード48として用いられる。
【0055】
このタイヤ2では、カーカスプライ46におけるカーカスコード48間の距離Dの、カーカスコード48の外径GDに対する比(D/GD)は0.15以上0.45以下であるのが好ましい。
比(D/GD)が0.15以上に設定されることにより、カーカス12がタイヤ2の軽量化に効果的に貢献できる。この観点から、比(D/GD)は0.20以上がより好ましい。
比(D/GD)が0.45以下に設定されることにより、カーカス12の強度が適切に維持される。この観点から、比(D/GD)は0.40以下がより好ましい。
【0056】
図2において符号tcで示される長さは、カーカスプライ46の厚さである。カーカス12の強度及び質量への影響が考慮され、カーカスプライ46の厚さtcは設定される。このタイヤ2では、カーカスプライ46の厚さtcは好ましくは1.1mm以上1.4mm以下である。
【0057】
本開示において、カーカス12の外側部分とは、カーカス12の外面からタイヤ外面2Gまでの部分を意味する。カーカス12の外側部分の厚さは、カーカス12の外面からタイヤ外面2Gまでの距離で表される。この距離は、カーカス12の外面の法線に沿って計測される。
【0058】
図1において符号PFで示される位置は、最大幅位置PWよりも径方向内側において、カーカス12の外側部分が最大の厚さを示す位置である。本開示においては、この位置PFが基準位置である。
このタイヤ2では、基準位置PFは、径方向において最大幅位置PWとリムRとの間に位置する。この基準位置PFは径方向において第一エイペックス42の外端42eと第二エイペックス44の外端44seとの間に位置する。
【0059】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。ベルト14は、径方向において、トレッド4とカーカス12との間に位置する。前述の赤道面は、ベルト14の軸方向幅の中心においてベルト14と交差する。
このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の70%以上85%以下である。
【0060】
ベルト14は、第一層52と、第二層54とを備える。第一層52はプライ本体46aの径方向外側に位置し、プライ本体46aに積層される。第二層54は第一層52の径方向外側に位置し、第一層52に積層される。
【0061】
図1に示されるように、第二層54の端は第一層52の端の径方向内側に位置する。第二層54は第一層52よりも狭い。第二層54の端から第一層52の端までの長さは3mm以上10mm以下である。前述のベルト14の軸方向幅は、幅広の第一層52の軸方向幅で表される。
【0062】
図示されないが、第一層52及び第二層54はそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0063】
バンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16はベルト14に積層される。
バンド16の端16eはベルト14の端14eの軸方向外側に位置する。ベルト14の端14eからバンド16の端16eまでの長さは3mm以上7mm以下である。
図示されないが、バンド16は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。
バンドコードは有機繊維コードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0064】
バンド16は、フルバンド56と、一対のエッジバンド58とを備える。
フルバンド56はベルト14に積層される。フルバンド56はベルト14全体を覆う。フルバンド56のそれぞれの端56eはベルト14の端14eの軸方向外側に位置する。
一対のエッジバンド58は、赤道面を挟んで軸方向に離して配置される。それぞれのエッジバンド58はフルバンド56に積層される。エッジバンド58はフルバンド56の端56eの部分を覆う。
軽量化の観点から、このバンド16がフルバンド56のみで構成されてもよい。このバンド16が一対のエッジバンド58のみで構成されてもよい。
【0065】
それぞれのチェーファー18は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー18はリムRと接触する。このタイヤ2では、チェーファー18は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
図1に示されるように、チェーファー18の内端18ueはタイヤ内面2Nの一部を構成する。チェーファー18の外端18seは内端18ueよりも径方向外側に位置する。チェーファー18の外端18seは、折り返し部46bと第二エイペックス44との間に位置する。
【0066】
インナーライナー20は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0067】
図2に示されるように、インナーライナー20は、内側層60及び外側層62からなる2つの層で構成される。2つの層のうち、内側層60がタイヤ内面2Nを構成する。外側層62は、内側層60の外側に積層される。外側層62は、内側層60とカーカス12との間に位置する。
内側層60の厚さは0.3mm以上0.8mm以下である。外側層62の厚さは0.3mm以上0.8mm以下である。
【0068】
内側層60はゴム組成物の架橋物である。内側層60のためのゴム組成物(以下、第一ゴム組成物)は基材ゴムとしてブチル系ゴムを含む。第一ゴム組成物の基材ゴムの主成分はブチル系ゴムである。内側層60は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。
ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムが挙げられる。ハロゲン化ブチルゴムとしては、クロロブチルゴム及びブロモブチルゴムが挙げられる。
【0069】
本開示において、基材ゴムの主成分がブチル系ゴムであるとは、基材ゴムに含まれるブチル系ゴムの量が、基材ゴム全量の50質量%以上であることを意味する。
【0070】
良好な空気遮蔽性を有する内側層60が構成される観点から、基材ゴムに含まれるブチル系ゴムの量は、基材ゴム全量の70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。基材ゴムがブチル系ゴムであることが特に好ましい。
このタイヤ2では、インナーライナー20の内側層60のために一般的に用いられるゴム組成物が、第一ゴム組成物として用いられる。
【0071】
外側層62はゴム組成物の架橋物である。外側層62のためのゴム組成物(以下、第二ゴム組成物)は基材ゴムとして天然ゴムを含む。第二ゴム組成物の基材ゴムの主成分は天然ゴムである。第二ゴム組成物は、カーカス12及びインスレーション22、並びに内側層60との接着性が考慮されたゴム組成物である。このタイヤ2では、内側層60は外側層62を介してカーカス12及びインスレーション22に貼り合わされる。第二ゴム組成物の基材ゴムに、ブチル系ゴムは含まれない。
【0072】
本開示において、基材ゴムの主成分が天然ゴムであるとは、基材ゴムに含まれる天然ゴムの量が、基材ゴム全量の50質量%以上であることを意味する。
【0073】
良好な接着性を有する外側層62が構成される観点から、基材ゴムに含まれる天然ゴムの量は、基材ゴム全量の70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
このタイヤ2では、インナーライナー20の外側層62のために一般的に用いられるゴム組成物が、第二ゴム組成物として用いられる。
このタイヤ2では、外側層62の複素弾性率E*tは3.0MPa以上5.0MPa以下である。
【0074】
インスレーション22は、カーカス12とインナーライナー20との間に位置する。
インスレーション22の端22eは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。インスレーション22の端22eの位置が径方向において最大幅位置PWの位置と一致してもよい。インスレーション22の端22eが最大幅位置PWの径方向外側に位置してもよい。
インスレーション22は、カーカス12とインナーライナー20との間に位置し、第一のビード10と第二のビード10との間に位置する。
【0075】
前述したように、このタイヤ2のカーカスプライ46は並列した複数のカーカスコード48を含む。図2に示されるように、複数のカーカスコード48は間隔をあけて配置される。
【0076】
バットレス境界対応位置PDの付近においてインスレーション22は、インナーライナー20の外側層62に積層される。このインスレーション22にカーカスプライ46が積層される。外側層62とカーカスコード48との間には、インスレーション22とこのカーカスコード48を覆うトッピングゴム50とが位置する。
図2において符号tdで示される長さがインスレーション22の厚さである。符号taで示される長さがインスレーション22とカーカスコード48との間に位置するトッピングゴム50の厚さである。
インスレーション22の厚さtd及びトッピングゴム50の厚さtaは、バットレス境界対応位置PDを通るタイヤ内面2Nの法線に沿って計測される。
【0077】
前述したように、このタイヤ2では、軽量化の観点から、カーカス12は1枚のカーカスプライ46で構成される。
従来タイヤでは、カーカスは2枚のカーカスプライで構成される。このタイヤ2では、カーカス12を構成するカーカスプライ46の枚数が従来タイヤのそれに比べて減少する。カーカス12の強度が低下することが懸念される。
【0078】
このタイヤ2では、カーカスコード48に従来のコードよりも太いコードが用いられる。具体的には、総繊度が6000~9000dtexの範囲にあるコードがカーカスコード48として用いられる。このタイヤ2のカーカスコード48の総繊度は6000dtex以上9000dtex以下である。
カーカスコード48の総繊度が6000dtex以上であるので、カーカス12が1枚のカーカスプライ46で構成されているにもかかわらず、カーカス12が必要な強度を有する。言い換えれば、カーカス12の強度低下が抑えられる。
カーカスコード48の総繊度が9000dtex以下であるので、カーカスコード48によるタイヤ質量への影響が抑えられる。このカーカスコード48を含むカーカスプライ46はタイヤ2の軽量化に貢献できる。
【0079】
従来タイヤでは通常、カーカスプライはビードの周りで折り返される。カーカスコードとして大径コードを用いた場合、折り返し部の端に歪みが集中することが懸念される。
前述したように、このタイヤ2のカーカス12はローターンアップ構造を有する。折り返し部46bの端46beが最大幅位置PWの径方向内側に配置されるので、このカーカス12は、歪みの集中を抑制できる点で、折り返し部の端が最大幅位置の径方向外側に配置されるハイターンアップ構造のカーカスに比べて有利である。しかしこのカーカス12では、断面二次モーメントが低下し、十分なコーナリングフォースが得られないことが想定される。この場合、旋回時に高い負荷が作用した場合に、タイヤ2が踏ん張ることができず、車両が転倒することが懸念される。
【0080】
図3は、図1に示されたタイヤ2の断面の一部を示す。図3は、トレッド部の端部からビード部までの部分を示す。
このタイヤ2では、コア38と第一エイペックス42とは、プライ本体46aと折り返し部46bとの間に位置する。第一エイペックス42の径方向外側部分で、折り返し部46bはプライ本体46aに直接貼り合される。コア38及び第一エイペックス42はカーカスプライ46で囲まれる。第二エイペックス44は、折り返し部46bを介して第一エイペックス42の径方向外側に配置される。折り返し部46bは、第一エイペックス42と第二エイペックス44との間に位置する。
【0081】
このビード10の構成は、断面二次モーメントを上昇させる。カーカスコード48に従来よりも太いコードが用いられるので、このタイヤ2では、従来タイヤに比べて大きな断面二次モーメントが得られる。大きなコーナリングフォースが発生するので、旋回時に高い負荷が車両に作用しても車両は転倒しにくい。このタイヤ2では耐転倒性の向上が図られる。
【0082】
図3において、実線LFは基準位置PFを通るカーカス12の外面の法線である。このタイヤ2では、法線LFは第二エイペックス44と交差する。図3において、符号TSで示される長さは、法線LFと第二エイペックス44との交線の長さである。本開示においては、この長さTSが、基準位置PFにおける、第二エイペックス44の厚さである。
【0083】
このタイヤ22では、基準位置PFにおける第二エイペックス44の厚さTSは2.5mm以上4.5mm以下である。
厚さTSが2.5mm以上であるので、第二エイペックス44がコーナリングフォースの発生に効果的に貢献できる。このタイヤ2では良好な耐転倒性が得られる。この観点から、厚さTSは3.0mm以上であるのが好ましく、3.5mm以上であるのがより好ましい。
厚さTSが4.5mm以下であるので、第二エイペックス44による質量への影響が抑えられる。このタイヤ2では、軽量化が図られる。この観点から、厚さTSは4.0mm以下であるのが好ましい。
【0084】
さらにこのタイヤ2では、折り返し部46bの端46beは、プライ本体46aと第二エイペックス44との間に挟まれる。折り返し部46bの端46beが第二エイペックス44で覆われるので、折り返し部46bの端46beに歪が集中することを起因とする、損傷が発生しにくい。このタイヤ2では耐久性の低下が抑えられる。
【0085】
このタイヤ2では、1枚のカーカスプライ46で構成されたカーカス12がその機能を十分に発揮できる。
このタイヤ2は、耐転倒性を損なうことなく、カーカス12の強度低下を抑えながら軽量化を達成できる。
【0086】
このタイヤ2では、第二エイペックス44の複素弾性率E*2の、第一エイペックス42の複素弾性率E*1に対する比(E*2/E*1)は1.0以上3.5以下であるのが好ましい。
比(E*2/E*1)が1.0以上に設定されることにより、断面二次モーメントが飛躍的に上昇する。このタイヤ2では、高いコーナリングフォースが発生するので、良好な耐転倒性が得られる。この観点から、比(E*2/E*1)は1.3以上であるのがより好ましい。
比(E*2/E*1)が3.5以下に設定されることにより、第二エイペックス44と第一エイペックス42との境界における歪みの発生が抑えられ、良好な耐久性が維持される。この観点から、比(E*2/E*1)は3.0以下であるのがより好ましい。
【0087】
図3において符号FSで示される長さは、第二エイペックス44の内端44ueから折り返し部46bの端46beまでの径方向距離である。符号BSで示される長さは、ビードベースラインから第二エイペックス44の外端44seまでの径方向距離である。
【0088】
このタイヤ2では、第二エイペックス44の内端44ueから折り返し部46bの端46beまでの径方向距離FSは10mm以上40mm以下であるのが好ましい。
径方向距離FSが10mm以上に設定されることにより、折り返し部46bの端46beが第二エイペックス44の内端44ueから適当な距離をあけて配置される。これにより、折り返し部46bの端46beに歪が集中することに起因する損傷の発生が抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から、径方向距離FSは20mm以上であるのがより好ましい。
径方向距離FSが40mm以下に設定されることにより、折り返し部46bの長さが適切に維持される。このタイヤ2では、折り返し部46bによる質量への影響が抑えられる。このタイヤ2では、軽量化が図られる。この観点から、径方向距離FSは30mm以下であるのがより好ましい。
【0089】
このタイヤ2では、ビードベースラインから第二エイペックス44の外端44seまでの径方向距離BSは35mm以上55mm以下であるのが好ましい。
径方向距離BSが35mm以下に設定されることにより、第二エイペックス44が断面二次モーメントの増大に貢献できる。このタイヤ2では、良好な耐転倒性が維持される。この観点から、径方向距離BSは40mm以上であるのがより好ましい。
径方向距離BSが55mm以下に設定されることにより、第二エイペックス44のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、第二エイペックス44における発熱が抑えられるので、低い転がり抵抗が維持される。この観点から、径方向距離BSは50mm以下であるのがより好ましい。
【0090】
タイヤの加硫工程では、生タイヤがその内側に位置するブラダーによってモールドに押し付けられる。このとき、インナーライナーがカーカスコード間に流れ込みことがある。この場合、タイヤ内面に糸目様の凹凸(オープンスレッドとも称される。)が発生する。
加硫工程では、トレッド部とサイド部との境界部分(以下、バットレス部)においてカーカスコードの間隔が拡がる傾向にある。
1枚のカーカスプライで構成したカーカスでは、2枚のカーカスプライで構成したカーカスのように、カーカスプライ同士が互いに拘束し合うことがない。バットレス部におけるカーカスコードの間隔は拡がりやすい。
特に、このタイヤ2では、前述したように、カーカスコード48が従来のカーカスコードに比べて太い上に、カーカス12が1枚のカーカスプライ46で構成される。
バットレス部においてカーカスコード48の間隔が拡がり、インナーライナー20の外側層62がカーカスコード48間に流れ込むことが懸念される。この場合、オープンスレッドが発生し、タイヤの外観品質が低下する。
【0091】
前述したように、このタイヤ2は、カーカス12とインナーライナー20との間に位置するインスレーション22を備え、このインスレーション22が第一のビード10と第二のビード10との間に位置する。特に、このタイヤ2では、カーカスコード48の間隔が拡がるバットレス部において、インスレーション22とカーカスコード48との間に位置するトッピングゴム50の厚さtaの、インスレーション22の厚さtdに対する比(ta/td)が0.6以下である。そのため、インスレーション22が外側層58のカーカスコード48間への流れ込みを抑える。インスレーション22はオープンスレッドの発生を抑えることに貢献する。このタイヤ2では、良好な外観品質が得られる。
さらにこのタイヤ2では、比(ta/td)が0.2以上であるので、インスレーション22による質量への影響が抑えられる。このタイヤ2では、外観品質を損なうことなく、カーカス12の強度低下を抑えながら軽量化が達成される。
このタイヤ2は、前述したように、耐転倒性に優れる。したがってこのタイヤ2は、外観品質及び耐転倒性を損なうことなく、カーカス12の強度低下を抑えながら軽量化を達成できる。この観点から、このタイヤ2は、カーカス12とインナーライナー20との間に位置するインスレーション22を備え、インスレーション22が、第一のビード10と第二のビード10との間に位置し、インスレーション22とカーカスコード48との間に位置するトッピングゴム50の厚さtaの、インスレーション22の厚さtdに対する比(ta/td)が0.2以上0.6以下であるのが好ましい。
【0092】
外観品質を損なうことなく、カーカス12の強度低下を抑えながら軽量化を達成できるタイヤ2が得られる観点から、比(ta/td)は0.3以上であるのがより好ましく、0.5以下であるのがより好ましい。
【0093】
インスレーション22が設けられていない従来タイヤでは、太いコードをカーカスコードとして用いる場合、オープンスレッドの発生を抑制するために、例えば、カーカスコードを経糸とするファブリックにおいて緯糸の拘束力を弱める等の調整が必要である。
これに対して、このタイヤ2では、カーカスコード48として太いコードを採用しているにもかかわらず、緯糸等の調整は不要である。言い換えれば、このタイヤ2では、軽量化に貢献できるカーカス12を得るために特別な工程を設ける必要はない。緯糸等の調整が不要な従来のタイヤと同様に、カーカス12が形成される。
このタイヤ2では、生産コストの増大を招くことなく、そして外観品質及び耐転倒性を損なうことなく、カーカス12の強度低下を抑えながら軽量化が達成される。
【0094】
このタイヤ2では、インスレーション22の複素弾性率E*rの、外側層62の複素弾性率E*tに対する比(E*r/E*t)は、1.0以上2.0以下であることが好ましい。
比(E*r/E*t)が1.0以上に設定されることにより、インスレーション22が外側層62のカーカスコード48間への流れ込みを抑える。このタイヤ2では、オープンスレッドの発生が効果的に抑えられる。この観点から、比(E*r/E*t)は1.3以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。
比(E*r/E*t)が2.0以下に設定されることにより、インスレーション22自体の発熱が抑えられる。このタイヤ2では、低い転がり抵抗が維持される。この観点から、比(E*r/E*t)は1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
【0095】
このタイヤ2では、インスレーション22の厚さtdは0.2mm以上0.8mm以下が好ましい。
厚さtdが0.2mm以上に設定されることにより、外側層62のカーカスコード48間への流れ込みの抑制にインスレーション22が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、オープンスレッドの発生がより効果的に抑えられる。この観点から、厚さtdは0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。
厚さtdが0.8mm以下に設定されることにより、インスレーション22による質量への影響が抑えられる。このインスレーション22はタイヤ2の軽量化に貢献できる。この観点から、厚さtdは0.7mm以下がより好ましく、0.6mm以下がさらに好ましい。
【0096】
図1に示されるように、このタイヤ2では、インスレーション22の端22eはエイペックス40の外端40eの径方向外側に位置する。
エイペックス40の外端40eの径方向内側部分では、カーカスプライ46にエイペックス40が積層される。前述したように、エイペックス40は、高い剛性を有する第一エイペックス42と、第一エイペックス42の剛性と同等以上の剛性を有する第二エイペックス44とで構成される。このタイヤ2では、エイペックス40が、加硫工程におけるカーカスコード48の動きを拘束する。このタイヤ2では、エイペックス40の外端40eの径方向内側部分にインスレーション22が設けられていなくても、オープンスレッドは発生しにくい。インスレーション22の端22eがエイペックス40の外端40eの径方向外側に位置することで、インスレーション22によるタイヤ2の質量への影響が効果的に抑制される。このタイヤ2は、良好な外観品質を維持しつつ、軽量化を達成できる。この観点から、インスレーション22の端22eはエイペックス40の外端40eの径方向外側に位置するのが好ましい。バットレス部におけるオープンスレッドの発生が効果的に抑えられる観点から、インスレーション22の端22eは最大幅位置PWの径方向内側に位置するのが好ましい。
【0097】
図1に示されるように、このタイヤ2のインスレーション22は、赤道面を挟んで軸方向に離して配置される一対のゴム層64で構成することができる。この場合、ゴム層64の内端64ueが前述のインスレーション22の端22eである。
このタイヤ2では、ゴム層64の内端64ueの径方向内側では、インナーライナー20の外側層62がカーカスプライ46に貼り合わされる。ゴム層64の内端64ueから外端64seまでの部分では、外側層62がゴム層64を介してカーカスプライ46に貼り合わされる。第一のゴム層64の外端64seと第二のゴム層64(図示されず)の外端64seとの間の部分では、外側層62がカーカスプライ46に貼り合わされる。
【0098】
このタイヤ2は、第一のゴム層64と第二のゴム層64との間に、第三のゴム層64を有さない。第一のゴム層64と第二のゴム層64との間に第三のゴム層64が存在しないインスレーション22はタイヤ2の軽量化に貢献できる。この観点から、インスレーション22は赤道面を挟んで軸方向に離して配置される一対のゴム層64からなるのが好ましい。
【0099】
第一のゴム層64の外端64seから第二のゴム層64の外端64seまでの領域では、カーカス12の径方向外側にベルト14が位置する。このベルト14が、加硫工程での形状変化によるカーカスコード48の動きを拘束する。このタイヤ2では、第一のゴム層64と第二のゴム層64との間にゴム層64が設けられていなくても、オープンスレッドは発生しにくい。このタイヤ2では、良好な外観品質を維持しながら、軽量化が達成される。
【0100】
このタイヤ2では、ゴム層64の外端64seはベルト14の端14eの軸方向内側に位置する。これにより、ゴム層64が、タイヤ2の中でも、薄い厚さで構成されるバットレス部における、オープンスレッドの発生を効果的に抑制する。このタイヤ2は、良好な外観品質を維持しつつ、軽量化を達成できる。この観点から、ゴム層64の外端64seはベルト14の端14eの軸方向内側に位置するのが好ましい。
【0101】
図3において符号Lbで示される長さは、ゴム層64の外端64seからベルト14の端14eまでの軸方向距離である。本開示において、ゴム層64の外端64seがベルト14の端14eの軸方向内側に位置する場合、軸方向距離Lbは正の数で表される。
【0102】
このタイヤ2では、軸方向距離Lbは10mm以上50mm以下であるのが好ましい。
軸方向距離Lbが10mm以上に設定されることにより、ゴム層64がバットレス部におけるオープンスレッドの発生を効果的に抑制できる。しかもゴム層64の外端64seがベルト14の端14eから離して配置されるので、ベルト14の端14eに歪みが集中することが抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から。軸方向距離Lbは20mm以上であるのがより好ましく、25mm以上であるのがさらに好ましい。
軸方向距離Lbが50mm以下に設定されることにより、一対のゴム層64で構成されたインスレーション22が軽量化に効果的に貢献できる。この観点から、軸方向距離Lbは40mm以下であるのがより好ましく、35mm以下であるのがさらに好ましい。
【0103】
図4は、図1に示されたタイヤ2の変形例(以下、タイヤ2a)を示す。図4は、タイヤ2aの子午線断面の一部を示す。図4において、符号PRで示される位置はリムRの径方向外端である。
【0104】
図4に示されたタイヤ2aでは、折り返し部46bの端46beは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。このタイヤ2aのカーカス12はローターンアップ構造を有する。
折り返し部46bの端46beはエイペックス40の外端40eの径方向内側に位置する。折り返し部46bの端46beはリムRの外端PRの径方向外側に位置する。
前述したように、カーカスコード48は従来のそれよりも太い。折り返し部46bの端46beには歪みが集中することが懸念される。
【0105】
図4に示されるように、このタイヤ2aでは、タイヤ外面2Gにディンプル66が設けられる。タイヤ外面2Gのうち、基準位置PFと接触面外端位置PSとの間の部分にディンプル66が設けられる。
【0106】
図5は、タイヤ2aのタイヤ外面2Gの一部を示す。図5は、ディンプル66が設けられている部分の展開図である。図5において左右方向はタイヤ2aの周方向である。上下方向はタイヤ2aの径方向である。
図5に示されるように、タイヤ外面2Gには、周方向に並ぶ多数のディンプル66が設けられる。これらディンプル66は等間隔に配置される。ディンプル66は矩形状である。ディンプル66は周方向に長く径方向に短い。
【0107】
タイヤ2aが走行しているとき、ディンプル66が風を切る。ディンプル66付近の空気の流れが乱される。これにより、ディンプル66付近の温度上昇が抑えられる。
【0108】
図4に示されるように、ディンプル66は折り返し部46bの端46beの近くに位置する。折り返し部46bの端46beに歪が集中しても、ディンプル66が放熱を促すので温度上昇が抑えられる。このタイヤ2aでは、良好な耐久性と、低い転がり抵抗とが維持される。この観点から、折り返し部46bの端46beがリムRの外端PRの径方向外側に位置する場合は、折り返し部46bの端46beの近くにディンプル66が設けられるのが好ましい。
【0109】
図4において符号DFで示される長さは、ディンプル66から折り返し部46bまでの最短距離である。
良好な耐久性と、低い転がり抵抗とが維持される観点から、最短距離DFは10mm以下であるのが好ましい。ディンプル66がその放熱効果を十分に発揮できる観点から、最短距離DFは2mm以上であるのが好ましい。
【0110】
図5において符号DLで示される長さはディンプル66の長さである。長さDLは、径方向におけるディンプル66の幅中心線に沿って計測される。符号DWで示される長さはディンプル66の幅である。幅DWは周方向におけるディンプル66の長さ中心線に沿って計測される。
【0111】
ディンプル66がその放熱効果を十分に発揮できる観点から、ディンプル66の長さDLは15mm以上であるのが好ましく、17mm以上であるのがより好ましい。この長さDLは30mm以下であるのが好ましく、23mm以下であるのがより好ましい。
同様の観点から、ディンプル66の幅DWは8.5mm以上であるのが好ましく、8.8mm以上であるのがより好ましい。この幅DWは12mm以下であるのが好ましく、9.2mm以下であるのがより好ましい。
【0112】
図6は、ディンプル66の断面を示す。図5のVI-VI線は、径方向におけるディンプル66の幅中心線を含む。図6において符号DDで示される長さは、ディンプル66の深さである。
【0113】
このタイヤ2aでは、ディンプル66がその放熱効果を十分に発揮できる観点から、ディンプル66の深さDDは1.5mm以上であるのが好ましく、1.8mm以上であるのがより好ましい。この深さDDは2.5mm以下であるのが好ましく、2.2mm以下であるのがより好ましい。
【0114】
以上説明したように、本発明によれば、耐転倒性を損なうことなく、カーカスの強度低下を抑えながら軽量化を達成できる、タイヤが得られる。
【実施例0115】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0116】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤの呼び=245/50R18)を得た。
【0117】
この実施例1では、ポリエチレンテレフタレート繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられた。このカーカスコードのコード構造は3300dtex/2(総繊度=6600dtex)であった。総繊度が6000dtex以上であることが、太いコードの欄に「Y」で示されている。カーカスプライ50mm幅に含まれるカーカスコードの本数は40本であった。
カーカスは1枚のカーカスプライで構成された。ローターンアップ構造のカーカスが採用されていることが、カーカス構造の欄に「L」で示されている。
基準位置PFにおける第二エイペックスの厚さTS、第二エイペックスの複素弾性率E*2の、第一エイペックスの複素弾性率E*1に対する比(E*2/E*1)、第二エイペックスの内端から折り返し部の端までの径方向距離FS、及び、ビードベースラインから第二エイペックスの外端までの径方向距離BSは、下記の表1に示される通りである。
この実施例1では、カーカスとインナーライナーとの間には、一対のゴム層からなるインスレーションが設けられた。
インスレーションとカーカスコードとの間に位置するトッピングゴムの厚さtaの、インスレーションの厚さtdに対する比(ta/td)は0.4であった。
ゴム層の外端からベルトの端までの軸方向距離Lbは30mmであった。
インスレーションの複素弾性率E*rの、外側層の複素弾性率E*tに対する比(E*r/E*t)が1.5であった。
【0118】
[比較例1]
比較例1は従来タイヤである。カーカスは2枚のカーカスプライで構成された。ハイターンアップ構造のカーカスが採用されていることが、カーカス構造の欄に「H」で示されている。カーカスコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維からなるコード(コード構造=1100dtex/2)であった。総繊度が6000dtex未満であることが、太いコードの欄に「N」で示されている。カーカスプライ50mm幅に含まれるカーカスコードの本数は48本であった。
この比較例1にインスレーションは用いられていない。
【0119】
[比較例2]
カーカスコードに、実施例1と同じコードを用いた他は比較例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。この比較例2では、カーカスプライ50mm幅に含まれるカーカスコードの本数は40本であった。
【0120】
[比較例3]
カーカスを1枚のカーカスプライで構成した他は比較例2と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0121】
[実施例2-7及び比較例5]
厚さTS、比(E*2/E*1)、径方向距離FS、及び、径方向距離BSを、下記の表1及び表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-7及び比較例5のタイヤを得た。
【0122】
[耐転倒性]
試作タイヤをリム(サイズ=8.0J)に組み、空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤをフラットベルト式走行試験機に装着した。5.15kNの縦荷重をタイヤに負荷し、タイヤのスリップ角を徐々に大きくしながら、このタイヤを10km/hの速度で走行させて、コーナリングフォースの最大値を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「耐転倒性」の欄に示されている。数値が大きいほど耐転倒性に優れる。
【0123】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=7.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。9.54kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、100km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「耐久性」の欄に示されている。数値が大きいほど耐久性に優れる。
【0124】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「質量」の欄に示されている。数値が大きいほど軽い。
【0125】
[耐ルース性能]
試作タイヤをリム(サイズ=7.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。14.4kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、60km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤのビード部に損傷が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「耐ルース性能」の欄に示されている。数値が大きいほど耐ルース性能に優れる。
【0126】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1-2の「RRC」の欄に示されている。数値が大きいほどタイヤの転がり抵抗は低い。
リム:7.5J
内圧:210kPa
縦荷重:6.28kN
【0127】
[総合性能]
各評価で得た指数の合計を算出した。その結果が下記表1-2の「総合」の欄に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
表1-2に示されているように、実施例では、耐転倒性を損なうことなく、カーカスの強度低下を抑えながら軽量化が達成されることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上説明された、軽量化のための技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0132】
2、2a・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
20・・・インナーライナー
22・・・インスレーション
38・・・コア
40・・・エイペックス
42・・・第一エイペックス
44・・・第二エイペックス
46・・・カーカスプライ
46a・・・プライ本体
46b・・・折り返し部
48・・・カーカスコード
50・・・トッピングゴム
60・・・内側層
62・・・外側層
64・・・ゴム層
66・・・ディンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6