(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147341
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】防曇剤組成物、該組成物から形成される防曇膜を有する防曇性物品
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20231005BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231005BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20231005BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231005BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231005BHJP
C08J 7/054 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
C09K3/18 101
C09K3/00 R
C09D133/26
C09D7/61
C09D7/63
C08J7/054 CER
C08J7/054 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054781
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一輝
【テーマコード(参考)】
4F006
4H020
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA36
4F006AB24
4F006AB37
4F006AB39
4F006AB65
4F006AB69
4F006BA10
4F006CA04
4F006CA05
4H020AA04
4H020AA05
4H020AB02
4H020BA02
4J038CG171
4J038DG262
4J038GA03
4J038HA446
4J038KA04
4J038KA05
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、防曇性能に優れ、繰り返して水膜形成した際に発生した水垂れ跡が長期間乾燥条件下に曝されても白化し難い防曇剤組成物および該組成物から形成される防曇膜を有する防曇性物品を提供すること。
【解決手段】共重合体(A)と多官能ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とヒドロキシ酸化合物(D)を含有する防曇剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と多官能ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とヒドロキシ酸化合物(D)を含む防曇剤組成物であって、
前記共重合体(A)は、下記一般式(1)で表される単量体(A-1)と、
下記一般式(2)で表される単量体(A-2)と、
下記一般式(3)で表される単量体、および下記一般式(4)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A-3)と、
下記一般式(5)で表される単量体、および下記一般式(6)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A-4)を含む単量体混合物から得られる(メタ)アクリレート共重合体であることを特徴とする防曇剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、-C(CH
3)
2CH
2COCH
3、-C
2H
4N(CH
3)
2、または-C
3H
6N(CH
3)
2であり、R
3は水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)
【化2】
(一般式(2)中、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5は炭素数1~18の直鎖、分岐、または環状の炭化水素基である。)
【化3】
(一般式(3)中、R
6は水素原子またはメチル基であり、R
7は炭素数1~4の直鎖のアルキレン基であり、R
8はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【化4】
(一般式(4)中、R
9は水素原子またはメチル基であり、R
10はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【化5】
(一般式(5)中、R
11は水素原子またはメチル基であり、R
12は炭素数2~4の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または-C
2H
4(OCO(CH
2)
5)
n-であり、nは1~5である。)
【化6】
(一般式(6)中、R
13は水素原子またはメチル基であり、R
14は炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキレン基である。)
【請求項2】
コロイダルシリカ(E)を含有することを特徴とする請求項1に記載の防曇剤組成物。
【請求項3】
基材上に、請求項1または2に記載の防曇剤組成物から形成される防曇膜を有することを特徴とする防曇性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇剤組成物、該組成物から形成される防曇膜を有する防曇性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプなどの車両灯具において、灯室内に高湿度の空気が入り込み、外気や降雨などによってレンズが冷やされ、内面に水分が結露することによって曇りが生じることがある。その結果、車両灯の輝度が低下し、またレンズ面の美観が損なわれることにより、ユーザーの不快感を引き起こすことが問題となっている。このようなレンズの曇りを防ぐために、曇りが発生する部位(レンズ内側)に防曇剤を塗布して、防曇膜(乾燥塗膜、あるいは硬化塗膜)を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/217969号
【特許文献2】特開2020-164842号公報
【特許文献3】特開2018-145243号公報
【0004】
特許文献1では、特定の共重合体、多官能ブロックイソシアネート化合物、アニオン系界面活性剤、4級アンモニウム塩構造を有する界面活性剤、フッ素系ノニオン系界面活性剤、コロイダルシリカを含有する防曇剤組成物が開示されている。また、特許文献2では、特定の共重合体、界面活性剤、コロイダルシリカを含有する防曇剤組成物が開示されている。さらに、特許文献3では、特定の共重合体、架橋剤、界面活性剤、硬化触媒を含有する防曇塗料組成物が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された防曇膜は、防曇性能に優れ、水垂れ跡が発生し難く、かつ発生した水垂れ跡が高湿度環境下で経時的に薄くなる。また、上記の特許文献2に開示された防曇膜は、防曇性能、耐水性、透明性に優れ、かつ、ソルベントクラックの抑制に優れる。さらに、上記の特許文献3に開示された防曇膜は、高温条件下に曝されても水垂れ跡が発生し難く、外観変化を生じ難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
防曇膜に水分が接触して水膜形成により発生した水垂れが乾燥すると、水に溶解していた界面活性剤が析出して水垂れ跡となる。前記水垂れ跡発生過程が何度も繰り返されることで、車両灯具内面に多くの水垂れ跡が発生して外観不良となる。
【0007】
上記の特許文献1~3で開示された防曇膜は、繰り返して水膜形成した際に発生した水垂れ跡が長期間乾燥条件下に曝された場合に、水垂れ跡が白化して目立ちやすくなる懸念があった。
【0008】
以上のような事情を鑑み、本発明は、防曇性能に優れ、繰り返して水膜形成した際に発生した水垂れ跡が長期間乾燥条件下に曝されても白化し難い防曇剤組成物および該組成物から形成される防曇膜を有する防曇性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、共重合体(A)と多官能ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とヒドロキシ酸化合物(D)を含む防曇剤組成物であって、前記共重合体(A)は、下記一般式(1)で表される単量体(A-1)と、下記一般式(2)で表される単量体(A-2)と、下記一般式(3)で表される単量体、および下記一般式(4)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A-3)と、下記一般式(5)で表される単量体、および下記一般式(6)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A-4)を含む単量体混合物から得られる(メタ)アクリレート共重合体である防曇剤組成物、に関する。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、-C(CH
3)
2CH
2COCH
3、-C
2H
4N(CH
3)
2、または-C
3H
6N(CH
3)
2であり、R
3は水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)
【化2】
(一般式(2)中、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5は炭素数1~18の直鎖、分岐、または環状の炭化水素基である。)
【化3】
(一般式(3)中、R
6は水素原子またはメチル基であり、R
7は炭素数1~4の直鎖のアルキレン基であり、R
8はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【化4】
(一般式(4)中、R
9は水素原子またはメチル基であり、R
10はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【化5】
(一般式(5)中、R
11は水素原子またはメチル基であり、R
12は炭素数2~4の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または-C
2H
4(OCO(CH
2)
5)
n-であり、nは1~5である。)
【化6】
(一般式(6)中、R
13は水素原子またはメチル基であり、R
14は炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキレン基である。)
【0010】
また、本発明は、基材上に、前記防曇剤組成物から形成される防曇膜を有する防曇性物品、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防曇剤組成物、防曇膜および防曇性物品における効果の作用メカニズムの詳細は以下のように推測される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0012】
前記単量体(A-3)を含む共重合体(A)、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)で構成される塗膜に対し、前記界面活性剤(C)、前記ヒドロキシ酸化合物(D)を配合することで、前記単量体(A-3)のヘテロ環置換基と前記ヒドロキシ酸化合物(D)、および、前記界面活性剤(C)と前記ヒドロキシ酸化合物(D)、がそれぞれ相互作用し、塗膜中での前記界面活性剤(C)の分散性が向上し、凝集が抑制される。これにより、繰り返して水膜形成した際においても、発生した水垂れ跡に含まれる前記界面活性剤(C)が塗膜表面で凝集し難くなり、水垂れ跡が白化し難い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の防曇剤組成物は、共重合体(A)と多官能ブロックイソシアネート化合物(B)と界面活性剤(C)とヒドロキシ酸化合物(D)を含む。
【0014】
<共重合体(A)>
本発明の共重合体(A)は、以下の単量体(A-1)~(A-4)を、少なくとも含む単量体混合物から得られる(メタ)アクリレート共重合体である。
【0015】
<単量体(A-1)>
前記単量体(A-1)は、下記一般式(1)で表される単量体である。
【化7】
(一般式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、-C(CH
3)
2CH
2COCH
3、-C
2H
4N(CH
3)
2、または-C
3H
6N(CH
3)
2であり、R
3は水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)
【0016】
前記一般式(1)中、前記炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。前記一般式(1)中、防曇膜の防曇性能および基材に対する密着性を向上させる観点から、R1は水素原子であることが好ましく、R2およびR3は、独立して、直鎖もしくは分岐の炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることよりが好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0017】
前記単量体(A-1)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
<単量体(A-2)>
前記単量体(A-2)は、下記一般式(2)で表される単量体である。
【化8】
(一般式(2)中、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5は炭素数1~18の直鎖、分岐、または環状の炭化水素基である。)
【0019】
前記一般式(2)中、前記炭素数1~18の直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-アミル基、i-アミル基、t-アミル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソボルニル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基などのアルキル基;オレイル基などのアルケニル基;フェニル基などのアリール基などが挙げられる。防曇膜と基材との密着性、耐水性を向上させ、防曇膜の防曇性能を向上させる観点から、前記炭素数3~16の分岐鎖、または環状の炭化水素基であることが好ましく、前記炭素数4~12の分岐鎖、または環状の炭化水素基であることがより好ましい。
【0020】
前記単量体(A-2)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
<単量体(A-3)>
前記単量体(A-3)は、下記一般式(3)で表される単量体、および下記一般式(4)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上である。
【化9】
(一般式(3)中、R
6は水素原子またはメチル基であり、R
7は炭素数1~4の直鎖のアルキレン基であり、R
8はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【化10】
(一般式(4)中、R
9は水素原子またはメチル基であり、R
10はヘテロ環状骨格を有する置換基である。)
【0022】
前記一般式(3)中、前記炭素数1~4の直鎖のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、前記ヘテロ環状骨格を有する置換基としては、例えば、エポキシ基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、オキソテトラヒドロフリル基、2-オキソ-1,3-ジオキソラニル基、メバロン酸ラクトン基、環状トリメチロールプロパンホルマール基などの含酸素ヘテロ環置換基;モルホリノ基などの含酸素かつ含窒素ヘテロ環置換基、N-スクシンイミジル基、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル基などの含窒素ヘテロ環置換基などが挙げられる。水垂れ跡白化を抑制させる観点から、前記ヘテロ環状骨格を有する置換基は含酸素ヘテロ環置換基であることが好ましい。
【0023】
前記一般式(4)中、前記ヘテロ環状骨格を有する置換基としては、例えば、エポキシ基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、オキソテトラヒドロフリル基、2-オキソ-1,3-ジオキソラニル基、メバロン酸ラクトン基、環状トリメチロールプロパンホルマール基などの含酸素ヘテロ環置換基;モルホリノ基などの含酸素かつ含窒素ヘテロ環置換基、N-スクシンイミジル基、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル基などの含窒素ヘテロ環置換基などが挙げられる。水垂れ跡白化を抑制させる観点から、前記ヘテロ環状骨格を有する置換基は含酸素ヘテロ環置換基であることが好ましい。
【0024】
前記単量体(A-3)として、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、オキソテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレ-ト、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ-トを用いることができる。より好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、オキソテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0025】
前記単量体(A-3)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
<単量体(A-4)>
前記単量体(A-4)は、下記一般式(5)で表される単量体、および下記一般式(6)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上である。
【化11】
(一般式(5)中、R
11は水素原子またはメチル基であり、R
12は炭素数2~4の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または-C
2H
4(OCO(CH
2)
5)
n-であり、nは1~5である。)
【化12】
(一般式(6)中、R
13は水素原子またはメチル基であり、R
14は炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキレン基である。)
【0027】
前記一般式(5)中、前記炭素数2~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、2-メチルメチレン基、ブチレン基、2-メチルプロピレン基、3-メチルプロピレン基、2,2-ジメチルメチレン基、2-エチルメチレン基などが挙げられる。防曇膜の耐水性と防曇持続性を向上させる観点から、R8は炭素数2~4の直鎖のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基、2-メチルメチレン基であることがより好ましく、エチレン基、プロピレン基であることがさらに好ましい。
【0028】
前記一般式(6)中、前記炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2-メチルメチレン基、ブチレン基、2-メチルプロピレン基、3-メチルプロピレン基、2,2-ジメチルメチレン基、2-エチルメチレン基などが挙げられる。防曇膜の耐水性と防曇持続性を向上させる観点から、R10は炭素数2~4の直鎖のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であることがより好ましく、メチレン基、エチレン基であることがさらに好ましい。
【0029】
前記単量体(A-4)として、好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを用いることができる。より好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを用いることができる。
【0030】
前記単量体(A-4)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
共重合体(A)の水酸基価は、耐水性を向上させ、水垂れ跡を薄くさせる観点から、5mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく、40mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、160mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、90mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0032】
以下に、本発明の共重合体(A)を形成する単量体混合物中の各単量体成分の割合について説明する。
【0033】
前記単量体(A-1)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、30質量部以上80質量部以下であることが好ましい。前記単量体(A-1)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、防曇性能を向上させる観点から、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、そして、耐水性を向上させ、水垂れ跡を薄くさせる観点から、70質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
前記単量体(A-2)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、3質量部以上30質量部以下であることが好ましい。前記単量体(A-2)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、耐水性および密着性を向上させ、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、そして、防曇性能を向上させる観点から、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
前記単量体(A-3)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。前記単量体(A-3)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
前記単量体(A-4)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。前記単量体(A-3)は、前記単量体(A-1)、前記単量体(A-2)、前記単量体(A-3)、および前記単量体(A-4)の合計100質量部において、耐水性を向上させ、水垂れ跡を薄くさせる観点から、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0037】
前記単量体混合物中、前記単量体(A-1)~(A-4)の合計の割合は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
なお、前記単量体混合物には、前記単量体(A-1)~(A-4)以外のその他の単量体として、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの4級アンモニウム塩構造を含むビニル系単量体;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの芳香環アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボキシ基含有単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有ビニル系単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス〔(メタ)アクリルアミド〕などの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能ビニル系単量体;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を有するビニル系単量体などが使用できる。
【0039】
<共重合体(A)の製造方法>
本発明の共重合体(A)は、前記単量体混合物を共重合することにより得られる。共重合体の構造としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれの構造であってもよいが、防曇性をはじめとする防曇剤組成物の効果を向上させることができると共に、防曇剤組成物を容易に調製することができるという観点からランダム共重合体が好ましい。共重合体を得るための重合方法としては、ラジカル重合法、カチオン重合法、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法などの公知の各種重合方法が採用されるが、特に工業的な生産性の容易さ、多岐にわたる性能面より、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、通常の塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などが採用されるが、重合後にそのまま防曇剤組成物として使用することができる点で溶液重合法が好ましい。
【0040】
前記溶液重合法に用いる重合溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのアルコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤;水などが使用される。前記重合溶剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0041】
前記ラジカル重合開始剤は、一般的に使用される有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することができる。前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエートレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレートなどが挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルなどが挙げられる。前記ラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0042】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、前記単量体混合物100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。前記ラジカル重合開始剤は、反応容器中に滴下しながら重合を行うことが重合発熱を制御しやすくなる点で好ましい。重合反応を行う温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で好ましくは30~150℃、より好ましくは50~100℃である。
【0043】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、防曇膜に耐水性を付与する観点から、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、防曇剤組成物の塗装性およびハンドリング性を高める観点から、120,000以下が好ましく、110,000以下がより好ましい。
【0044】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC法にて求めることができる。サンプルは、試料をテトラヒドロフランに溶解して0.2質量%の溶液とし、0.5μmのメンブレンフィルターでろ過したものを用い、以下の条件にて測定することができる。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
分析装置:HLC‐8320GPC(東ソー社製)
カラム:KD-802.5(昭和電工社製)、KD-803(昭和電工社製)、KD-80M(昭和電工社製)の直列接続
カラムサイズ:8.0×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:示差屈折計
カラム温度:40℃
標準試料:ポリスチレン
【0045】
<多官能ブロックイソシアネート化合物(B)>
本発明の多官能ブロックイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものである。前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)は、少なくとも、前記共重合体(A)と架橋反応して硬化膜を形成するものであれば、特に限定されない。前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)は少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)において、前記イソシアネート基を1分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート基含有化合物;およびこれらジイソシアネート基含有化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体、アロファネート体などの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびこれらの誘導体が好ましい。
【0047】
また、前記ブロック化剤としては、例えば、ジエチルマロネート、3,5-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタム、フェノール、メチルエチルケトオキシム、アルコールなどの化合物が挙げられる。これらの中でも、低温硬化性が良好である観点から、ジエチルマロネートが好ましい。
【0048】
前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)としては、低温硬化性と低黄変性の観点から、ジエチルマロネートでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体またはビウレット体の使用が好ましい。
【0049】
前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)は、前記共重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下であることが好ましく、防曇膜の耐水性や耐湿性を向上させ、水垂れ跡を薄くさせる観点から、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、防曇膜の防曇性能や密着性を向上させ、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0050】
前記共重合体(A)と、前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)との使用割合は、前記多官能ブロックイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基と、前記共重合体(A)の水酸基の当量比(NCO/OH)が、0.1以上1.2以下であることが好ましく、防曇膜の耐水性や耐湿性を向上させ、水垂れ跡を薄くさせる観点から、0.2以上であることが好ましく、防曇膜の防曇性能や密着性を向上させ、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、0.8以下であることが好ましい。
【0051】
また、上記の架橋反応を促進させる観点から、触媒を使用してもよい。前記触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫脂肪酸塩などの金属有機化合物;テトラメチルブタンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5などの3級アミンなどが挙げられる。
【0052】
<界面活性剤(C)>
本発明の界面活性剤(C)は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどの脂肪酸アルカリ金属塩などの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどの高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンサルフェート塩;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素含有アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0054】
前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、エタノールアミン類、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノギ酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミドなどの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0055】
前記両性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの脂肪酸型両性イオン系界面活性剤;ジメチルアルキルスルホベタインのようなスルホン酸型両性イオン系界面活性剤;アルキル(またはアルケニル)ジメチルアミンオキシド、アルキル(またはアルケニル)ジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテルジメチルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシドなどのアミンオキシド系両性界面活性剤;アルキルグリシンなどのアミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0056】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノールなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル類;シュガーエステル類、セルロースエーテル類などが挙げられる。
【0057】
前記界面活性剤(C)は、比較的少量で良好な防曇性能が得られる観点から、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤の併用、またはアニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の併用が好ましい。
【0058】
前記界面活性剤(C)は、前記共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上12質量部以下であることが好ましい。前記界面活性剤(C)は、防曇膜の防曇性能を向上させる観点から、前記共重合体(A)100質量部に対して、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、そして、防曇膜の透明性を向上させ、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。
【0059】
<ヒドロキシ酸化合物(D)>
本発明のヒドロキシ酸化合物(D)としては、従来公知のものを全て使用することができ、例えば、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシ-2,2-ジアルキル酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、4-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などの脂肪族ヒドロキシ酸;サリチル酸、バニリン酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。前記ヒドロキシ酸化合物(D)は、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、融点が80℃以下である、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシイソ酪酸であることが好ましく、融点が30℃以下である、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸であることがさらに好ましい。前記ヒドロキシ酸化合物(D)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
前記ヒドロキシ酸化合物(D)は、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。前記ヒドロキシ酸化合物(D)は、水垂れ跡白化を抑制させる観点から、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.10質量部以上であることがさらに好ましく、そして、防曇性能を向上させる観点から、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
<コロイダルシリカ(E)>
本発明の防曇剤組成物は、繰り返して水膜形成した際に発生した水垂れ跡が長期間乾燥条件下に曝された場合に、水垂れ跡がより白化し難くなる観点から、コロイダルシリカ(E)を含むことができる。前記コロイダルシリカ(E)は、分散媒に分散したシリカの微粒子であり、公知のものを使用できる。前記コロイダルシリカ(E)は、防曇膜の透明性の観点から、その粒子径が、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、そして、密着性の観点から、その粒子径が、5nm以上であることが好ましい。なお、前記粒子径は、動的光散乱法によって測定されるキュムラント平均粒子径で示される。前記コロイダルシリカ(E)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0062】
前記分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールなどの多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶剤;ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;酢酸エチルなどのエステル系溶剤;トルエンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0063】
前記コロイダルシリカ(E)は、市販品として、例えば、水分散コロイダルシリカゾル(商品名:スノーテックスO、スノーテックスOS、スノーテックスO-40、スノーテックスOXS、など)、メタノール分散コロイダルシリカ(商品名:メタノールシリカゾル)、i-プロパノール分散コロイダルシリカ(商品名:IPA-ST)、エチレングリコール分散コロイダルシリカ(商品名:EG-ST)、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル分散コロイダルシリカ(商品名:NPC-ST-30)、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカ(商品名:PGM-ST)、ジメチルアセトアミド分散コロイダルシリカ(商品名:DMAC-ST)、メチルエチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:MEK-ST-40)、メチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:MIBK-ST)、酢酸エチル分散コロイダルシリカ(商品名:EAC-ST)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散コロイダルシリカ(商品名:PMA-ST)、トルエン分散コロイダルシリカ(商品名:TOL-ST)(以上、日産化学社製)などが挙げられる。前記コロイダルシリカ(E)は、防曇性能を向上させる観点から、水または親水性溶媒に分散されているものが好ましい。
【0064】
前記コロイダルシリカ(E)は、前記共重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましい。前記コロイダルシリカ(D)は、水垂れ跡を薄くさせ、白化を抑制させる観点から、前記共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以上であることがより好ましく、そして、透明性を向上させ、防曇性能を向上させる観点から、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明の防曇剤組成物は、さらに、希釈溶剤を含むことができる。
【0066】
前記希釈溶剤は、防曇剤組成物の塗装に適した固形分および粘度調整を目的として使用する。希釈溶剤としては、前記共重合体(A)の重合溶剤を用いることが好ましい。塗装方法により、塗装に適した固形分および粘度は異なるが、スプレーコート法の場合、前記共重合体(A)が防曇剤組成物中に、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0067】
本発明の防曇剤組成物には、その他の成分として、必要に応じ、レベリング剤、硬化触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの慣用の各種添加剤を配合することができる。前記その他の成分の添加量は、それぞれの添加剤につき慣用的な添加量で配合することができるが、通常、前記共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下である。
【0068】
<防曇性物品>
本発明の防曇性物品は、前記防曇剤組成物を、通常の塗料において行われる塗装方法により被塗装物に塗装し、加熱硬化することによって、被塗装物表面に防曇膜が形成されたものである。
【0069】
前記被塗装物としては、その種類は問わず、公知の樹脂基材が使用可能であるが、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0070】
前記被塗装物への塗装の際には、被塗装物に対する防曇剤組成物の濡れ性を高め、はじきを防止する目的で、塗装前における被塗装物表面の付着異物除去を行うことが好ましい。高圧エアやイオン化エアによる除塵、洗剤水溶液またはアルコール溶剤による超音波洗浄、アルコール溶剤などを使用したワイピング、紫外線とオゾンによる洗浄などが挙げられる。塗装方法としては、例えば、浸漬法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0071】
防曇膜の膜厚は、良好な防曇性と塗膜外観を得る観点から、0.5~10μm程度であることが好ましく、1~5μm程度であることがより好ましい。
【0072】
前記防曇性物品は、その用途は何ら限定されるものではないが、例えば、自動車の車両灯具に用いることができる。前記車両灯具としては、例えば、前照灯、補助前照灯、車幅灯、番号灯、尾灯、駐車灯、後退灯、方向指示灯、補助方向指示灯、非常点滅表示などが挙げられる。
【実施例0073】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
<共重合体(A)の製造>
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に、重合溶剤としてジアセトンアルコールを150質量部、酢酸n-ブチルを150質量部仕込み、窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱した。次いで、単量体(A-1)として、N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「DMAA」)を50質量部、単量体(A-2)としてイソボルニルアクリレート(東京化成社製)を10質量部、単量体(A-3)として環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#200、CTFA」)を25質量部、単量体(A-4)として2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成社製)を15質量部、ラジカル重合開始剤としてt-ヘキシルペルオキシピバレート(日油株式会社製、商品名「パーヘキシルPV」、有効成分70質量%)1.0質量部を混合した溶液を、2時間かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、80℃を保持したまま更に1時間攪拌した後、冷却して共重合体(A)の溶液を製造した。ガスクロマトグラフィーにて共重合体(A)の仕込み単量体の重合転化率を測定したところ、100%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて共重合体(A)の重量平均分子量を測定したところ、80,000であった。この共重合体(A)の溶液の固形分は25質量%であった。なお、共重合体(A)の水酸基価(理論値)は、65mgKOH/gである。
【0075】
<実施例1>
<防曇剤組成物の製造>
上記で得られた共重合体(A)100質量部含む溶液400質量部に、プロピレングリコールモノメチルエーテル600質量部を加えて、共重合体(A)希釈溶液の濃度を10.0質量%に調整した。次に、多官能ブロックイソシアネート化合物(B)としてマロン酸ジアルキルでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成社製、商品名「デュラネートMF-K60B」、有効成分60質量%)を20.0質量部相当、界面活性剤(C)としてジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日油社製、商品名「ラピゾールA80」、有効成分80質量%)を4.0質量部相当、および、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(東京化成社製、有効成分100質量%)を0.4質量部、ヒドロキシ酸化合物(D)として、DL-乳酸(関東化学社製、有効成分90質量%)を1.0質量部相当、レベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製、商品名「BYK-333」)を0.05質量部混合し、防曇剤組成物を製造した。
【0076】
<防曇性物品の作製>
25℃、30%RH雰囲気環境下で、上記で得られた防曇剤組成物を基材(ポリカーボネート板)上に、硬化後の塗膜の膜厚が2~4μm程度になるように、スプレー塗装法にて塗装を行い、120℃で20分間の加熱硬化を行い、防曇膜を有する防曇性物品(試験片)を作製した。
【0077】
上記で得られた試験片を用いて、下記の(1)~(4)の評価方法で得られた結果を表1に示す。
【0078】
<防曇性の評価>
<(1)スチーム防曇性>
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射10秒間の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価がB以上であれば実用上問題ない。
A:曇りが認められない。
B:曇りが認められるが、スチーム照射10秒以内に曇りが解消される。
C:スチーム照射10秒後、一部または全部に不均一な水膜が認められる。
【0079】
<(2)防曇持続性>
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続で10秒間照射した後、試験片を垂直に立てた状態で、水垂れを室温にて10~15分乾燥させた。これを30回繰り返した時の水膜を次の3段階で評価した。なお、評価がB以上であれば実用上問題ない。
A:均一な水膜である。
B:一部に不均一な水膜が認められる。
C:全体的に不均一な水膜が認められる。
【0080】
<(3)繰り返し水垂れ跡>
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続で10秒間照射した後、試験片を垂直に立てた状態で、水垂れを室温にて10~15分乾燥させた。これを30回繰り返して生じた水垂れ跡を20℃30%RH環境下で30日間静置した後の水垂れ跡の白化度合いを、目視によって次の4段階で評価した。なお、評価がC以上であれば実用上問題ない。
A:水垂れ跡が全く白化していない。
B:水垂れ跡がほとんど白化していない。
C:水垂れ跡が少し白化している。
D:水垂れ跡が全体的に白化している。
【0081】
<(4)密着性>
JIS K 5400 8.5.1に準拠して塗膜の剥離の有無を目視によって次の3段階で評価した。なお、評価がB以上であれば実用上問題ない。
A:全く剥離が認められない。
B:一部に剥離が認められる。
C:全て剥離している。
【0082】
<実施例2~26、比較例1~2>
<防曇剤組成物の製造および防曇性物品の作製>
各実施例および比較例において、実施例1の原料を、表1および表2に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、実施例2~26、および比較例1~2の防曇剤組成物を製造した。更に、実施例1と同様な操作にて、実施例2~26、および比較例1~2の防曇膜を有する防曇性物品(試験片)を作製した。
【0083】
上記で得られた試験片を用いて、上記の(1)~(4)の評価方法で得られた結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
表1および表2中、単量体(A-1)~(A-4)として、
DMAAは、N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「DMAA」);
DEAAは、N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「DEAA」);
CHAは、シクロヘキシルアクリレート(東京化成社製);
EHMAは、2-エチルヘキシルメタクリレート(東京化成社製);
IBOAは、イソボルニルアクリレート(東京化成社製);
GMAは、グリシジルメタクリレート(東京化成社製);
THFMAは、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(東京化成社製);
CTFAは、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#200、CTFA」);
FA711MMは、ペンタメチルピペリジルメタクリレ-ト(昭和電工マテリアルズ社製、商品名「FA-711MM」);
HEMAは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成社製);
HEAAは、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「HEAA」)を示す。
【0087】
表1および表2中、多官能ブロックイソシアネート化合物(B)として、
デュラネートMF-K60Bは、マロン酸ジアルキルでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成社製、有効成分60質量%、NCO量6.5質量%);
デュラネートWM44-L70Gは、マロン酸ジアルキルでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成社製、有効成分70質量%、NCO量5.3質量%)を示す。
【0088】
表1および表2中、界面活性剤(C)として、
ラピゾールは、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日油社製、商品名「ラピゾールA-80」、有効成分80質量%);
ペレックスTRは、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製、商品名「ペレックスTR」、有効成分70質量%);
DTABは、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成社製、有効成分100質量%);
TBABは、テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成社製、有効成分100質量%);
BL-SFは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(日油社製、商品名「ニッサンアノンBL-SF」、有効成分35.5質量%);
LSB-Rは、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(川研ファインケミカル社製、商品名「ソフタゾリンLSB-R」、有効成分29質量%);
A-LMは、ラウリルジメチルアミンオキシド(日油社製、商品名「ユニセーフA-LM」、有効成分35質量%)を示す。
【0089】
表1および表2中、ヒドロキシ酸化合物(D)として、
DL-乳酸は、DL-2-ヒドロキシプロピオン酸(関東化学社製、有効成分90質量%);
グリコール酸は、ヒドロキシ酢酸(東京化成社製、有効成分100質量%)を示す。
【0090】
表1および表2中、コロイダルシリカ(E)として、
ST-OSは、水分散コロイダルシリカゾル(日産化学社製、有効成分20質量%、粒径9nm);
ST-Oは、水分散コロイダルシリカゾル(日産化学社製、有効成分20質量%、粒径12nm)を示す。
【0091】
表1および表2中、レベリング剤として、
BYK333は、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製、有効成分100質量%)を示す。