IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 礒崎 和彦の特許一覧

特開2023-147343不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム
<>
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図1
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図2
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図3
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図4
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図5
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図6
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図7
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図8
  • 特開-不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147343
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054783
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】522127047
【氏名又は名称】礒崎 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183988
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 泰帥
(72)【発明者】
【氏名】礒崎 和彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個別の空き家である不動産物件について、リノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援する工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法及び工事仕様決定支援プログラムを提供する。
【解決手段】不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルにおいて、工事仕様決定支援装置2は、不動産物件の目標賃料と目標利回りから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出部と、候補となる不動産物件のリノベーションにおける工事種別を抽出し、候補となる工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用算出するリノベーション工事費用算出部と、目標リノベーション費用とリノベーション工事費用を対比して、候補となる工事種別と工事数量を工事仕様として出力する工事仕様出力部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置であって、
前記不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出部と、
前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出部と、
前記目標リノベーション費用算出部で算出した目標リノベーション費用と前記リノベーション工事費用算出部で算出したリノベーション工事費用を対比して、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下であることを判定する判定部と、
前記判定部が、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下と判定した場合に、前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力部と、
を備えることを特徴とする工事仕様決定支援装置。
【請求項2】
前記不動産物件の現況についての情報を入力する現況入力部と、
前記現況入力部で入力された前記不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出するリノベーション工事候補抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の工事仕様決定支援装置。
【請求項3】
前記リノベーション工事候補抽出部は、与えられた条件に基づいた優先順位をつけて、前記不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の工事仕様決定支援装置。
【請求項4】
前記リノベーション工事候補抽出部は、前記与えられた条件が、前記リノベーション工事費用を最も低額とすることである、
ことを特徴とする請求項3に記載の工事仕様決定支援装置。
【請求項5】
前記リノベーション工事候補抽出部は、前記与えられた条件が、リノベーションを行った後の前記不動産物件が定められた質的基準をみたすことである、
ことを特徴とする請求項3に記載の工事仕様決定支援装置。
【請求項6】
前記リノベーション工事費用算出部は、同じ工事種別について複数の異なった工事単価の設定が可能であって、
前記リノベーション工事費用算出部で設定された複数の異なった工事単価の組み合わせごとに前記不動産物件のリノベーションにおける工事費用を算出して出力する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の工事仕様決定支援装置。
【請求項7】
不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援方法であって、
前記不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出ステップと、
前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出ステップと、
前記目標リノベーション費用算出ステップで算出した目標リノベーション費用と前記リノベーション工事費用算出ステップで算出したリノベーション工事費用を対比して、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下であることを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下と判定した場合に、前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力ステップと、
を備えることを特徴とする工事仕様決定支援方法。
【請求項8】
不動産物件のリノベーションにおける工事仕様の決定をコンピュータに支援させる工事仕様決定支援プログラムであって、
前記不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出ステップと、
前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出ステップと、
前記目標リノベーション費用算出ステップで算出した目標リノベーション費用と前記リノベーション工事費用算出ステップで算出したリノベーション工事費用を対比して、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下であることを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、前記リノベーション工事費用が前記目標リノベーション費用以下と判定した場合に、前記不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする工事仕様決定支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産物件所有者との利用契約に基づいて事業者が不動産物件所有者に代わって不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルでの不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
賃貸や売買などの不動産取引において、事業計画や収支判断を支援するためのコンピューターシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不動産に関して過去に蓄積された実績データを活用することにより、集合住宅を建設して賃貸経営する事業計画の立案を支援する不動産事業計画支援装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不動産物件の売主と事業者がリノベーションによって生じる付加価値をシェアする取引スキームを実現するための不動産リノベーションの収支シミュレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-159351号公報
【特許文献2】特開2017-162316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、社会的な課題として、いわゆる空き家問題が顕在化している。不動産物件の老朽化が甚だしい、不動産物件所有者が遠方に居住しているなどの理由から、居住者が無く、管理も行き届かず、廃墟化している不動産物件が増加している。一方、別の社会的な課題として、高齢者や生活保護世帯など住宅の確保に困難を極める人が増加しているとの住宅確保要配慮者問題がある。この問題では、仮に住宅を確保できたとしても、狭い、極めて古い、耐震など安全性が不十分など、生活するに十分な住環境を確保が難しい住宅である場合も多いといった課題も併せ持つことが多い。
【0007】
このような社会的課題の解決を目指して、出願人は、図1に示す新たな事業スキームを考案した。図1に基づいて事業スキームを概説する。事業者は、空き家である不動産物件について、リノベーションのうえ、賃貸物件として利用料を支払う旨の利用契約を不動産物件所有者と締結する。ここで、リノベーションとは、既存の建物に大規模な工事を行うことで、住まいの性能を向上させたり、価値を高めたりすることをいい、既存の建物の老朽化した個所の部分的修繕や原状回復などを指すリフォームとは異なった概念である。空き家となっている不動産物件は、築年数が相当経過した古屋である場合が多いが、事業者がリノベーションにより空き家となっている古屋を価値ある不動産物件に再生して、賃貸物件として管理することで、いわゆる空き家問題を解決することができる。一方、リノベーションにより再生した不動産物件を事業者が住宅確保要配慮者に対して近隣の物件と比較して低額の賃料で提供する。さらに、空き家である不動産物件は一戸建てであることが多いことから生活するに十分な住環境を確保することも期待できる。このように、近隣の不動産物件と比較して低額の賃料で、生活するに十分な住環境を確保できる住宅を提供することにより、住宅確保要配慮者問題を解決することができる。
【0008】
ところで、出願人が考案した社会的課題の解決を目指した新たな事業スキームを実現し、継続していくためには、住宅確保要配慮者が支払う賃料を近隣の不動産物件と比較して低額に保ちつつ、事業者が一定の利回りを確保することが必要となる。賃料は、近隣の不動産物件の賃料相場と借主である住宅確保要配慮者の収入(例えば、生活保護法による居住地域や諸条件による受給額の決定など)から定めることができる。すなわち、対象となる空き家である不動産物件が決まれば、個別の不動産物件ごとに妥当な賃料を定めることができる。また、事業者の利回りは、出願人が考案した社会的課題の解決を目指した新たな事業スキームを実現し、継続していくための事業計画から定めることができる。
【0009】
このため、出願人が考案した社会的課題の解決を目指した新たな事業スキームの実現と継続のためには、個別の不動産物件ごとの妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まるようにリノベーションを行う必要がある。一方で、その事業目的から生活するに十分な住環境を担保することも大切である。さらに、必要なリノベーションの内容は対象となる空き家である不動産物件によって個別に異なる。よって、個別の空き家である不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援する技術が求められる。
【0010】
特許文献1に記載の発明は、集合住宅新築における支援技術であり、また、過去の統計データを用いるものであって個別具体的なリノベーションに適用することはできない。また、特許文献2に記載の発明は、不動産物件の販売予定額と物件評価額などからリノベーション後の収支をシミュレーションするものであって、リノベーション工事の仕様に関わるものではない。
【0011】
本発明は、社会的課題の解決を目指した新たなスキームである不動産物件所有者との利用契約に基づいて事業者が不動産物件所有者に代わって不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルを実現し、継続するために、個別の空き家である不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援する工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置であって、不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出部と、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出部と、目標リノベーション費用算出部で算出した目標リノベーション費用とリノベーション工事費用算出部で算出したリノベーション工事費用を対比して、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下であることを判定する判定部と、判定部が、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定した場合に、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力部を備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、個別の空き家である不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様を決定することができる。
【0014】
本発明の一態様である工事仕様決定支援装置は、不動産物件の現況についての情報を入力する現況入力部と、現況入力部で入力された不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出するリノベーション工事候補抽出部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、不動産物件の現況に基づいた工事種別の候補からリノベーション工事仕様の決定することができる。
【0016】
本発明の一態様である工事仕様決定支援装置は、リノベーション工事候補抽出部は、与えられた条件に基づいた優先順位をつけて、不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出することを特徴とする。
【0017】
これにより、与えられた条件に基づいて優先順位がつけられた工事種別の候補からリノベーション工事仕様の決定することができる。
【0018】
本発明の一態様である工事仕様決定支援装置は、リノベーション工事候補抽出部は、与えられた条件が、リノベーション工事費用を最も低額とすることであることを特徴とする。
【0019】
これにより、リノベーション工事費用を最も低額にするとの条件に基づいて優先順位がつけられた工事種別の候補からリノベーション工事仕様の決定することができる。
【0020】
本発明の一態様である工事仕様決定支援装置は、リノベーション工事候補抽出部は、与えられた条件が、リノベーションを行った後の不動産物件が定められた質的基準をみたすことであることを特徴とする。
【0021】
これにより、リノベーションを行った後の不動産物件が定められた質的基準をみたすとの条件に基づいて優先順位がつけられた工事種別の候補からリノベーション工事仕様の決定することができる。
【0022】
本発明の一態様である工事仕様決定支援装置は、リノベーション工事費用算出部は、同じ工事種別について複数の異なった工事単価の設定が可能であって、リノベーション工事費用算出部で設定された複数の異なった工事単価の組み合わせごとに不動産物件のリノベーションにおける工事費用を算出して出力することを特徴とする。
【0023】
これにより、同じ工事種別について異なった工事単価である複数の工事業者を比較してリノベーション工事仕様の決定することができる。
【0024】
本発明は、不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援方法であって、不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出ステップと、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出ステップと、目標リノベーション費用算出ステップで算出した目標リノベーション費用とリノベーション工事費用算出ステップで算出したリノベーション工事費用を対比して、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下であることを判定する判定ステップと、判定ステップが、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定した場合に、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力ステップを備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る工事仕様決定支援方法は、前述の本発明に係る工事仕様決定支援装置の各々の態様に対応する工事仕様決定支援方法とすることができる。
【0026】
本発明は、不動産物件のリノベーションにおける工事仕様の決定をコンピュータに支援させる工事仕様決定支援プログラムであって、不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する目標リノベーション費用算出ステップと、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出するリノベーション工事費用算出ステップと、目標リノベーション費用算出ステップで算出した目標リノベーション費用とリノベーション工事費用算出ステップで算出したリノベーション工事費用を対比して、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下であることを判定する判定ステップと、判定ステップが、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定した場合に、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する工事仕様出力ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る工事仕様決定支援プログラムは、前述の本発明に係る工事仕様決定支援装置の各々の態様に対応する工事仕様決定支援プログラムとすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、社会的課題の解決を目指した新たなスキームである不動産物件所有者との利用契約に基づいて事業者が不動産物件所有者に代わって不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルを実現し、継続するために、個別の空き家である不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援するとの課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】社会的課題の解決を目指した新たなスキームである不動産物件所有者との利用契約に基づいて事業者が不動産物件所有者に代わって不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルを示す図である。
図2】工事仕様決定支援装置のブロック図である。
図3】工事仕様決定支援装置のハードウェア構成図である。
図4】工事仕様決定支援装置の各機能を通信ネットワークで接続されたサーバ装置とコンピュータ等で実現した構成を示す図である。
図5】工事仕様決定支援装置における処理の流れを示した図である。
図6】リレーショナルデータベースにおけるデータ項目の相互の関連を示す図である。
図7】工事仕様決定支援装置における現況入出力画面の例を示した図である。
図8】工事仕様決定支援装置におけるリノベーション工事候補抽出画面の例を示した図である。
図9】工事仕様決定支援装置におけるリノベーション工事費用算出画面の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、重複する説明は省略し、各図面において同一又は相当部分には同一の符号を付す。
【0031】
本発明は、図1に示す社会的課題の解決を目指した新たなスキームである不動産物件所有者との利用契約に基づいて事業者が不動産物件所有者に代わって不動産物件をリノベーションして賃貸するビジネスモデルを実現し、継続するために、個別の空き家である不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援する。
【0032】
本実施形態に係る不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラムは、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出することができる。また、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションにおける工事種別と工事数量を工事仕様として出力することができる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置のブロック図である。工事仕様決定支援装置2は、単独で装置として構成される形態のみならず、他の装置に組み込まれて使用される形態であってもよい。工事仕様決定支援装置2を組み込む他の装置は、例えば、スマートフォン、情報携帯端末、デジタルカメラ、ゲーム端末等の電化製品であってもよい。工事仕様決定支援装置2は、図3に示すように、物理的には、中央演算装置(CPU)301、入力装置302、出力装置303、主記憶装置(RAM/ROM)304、補助記憶装置305を含むコンピュータ3として構成される。
【0034】
工事仕様決定支援装置2の各機能は、図3に示す中央演算装置(CPU)301、主記憶装置(RAM/ROM)304等に、対象の不動産物件について妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定するようにコンピュータを機能させるプログラムを読み込ませることにより、中央演算装置(CPU)301の制御により入力装置302、出力装置303を動作させるとともに、主記憶装置(RAM/ROM)304、補助記憶装置305とデータの読み書きを行うことで実現される。
【0035】
工事仕様決定支援装置2の各機能は、図4に示す通信ネットワーク401で接続されたサーバ装置402とコンピュータ等403で実現されてもよい。通信ネットワーク401は、インターネットやLANなど通信が可能なネットワークであればよく、有線であるか無線であるかを問わない。また、コンピュータ等403とは、通信ネットワーク401に接続するコンピュータの他、通信ネットワーク401と接続してコンピュータと同等の機能を発揮できるスマートフォン、情報携帯端末、デジタルカメラ、ゲーム端末等の製品であってもよい。サーバ装置402が本発明に係る工事仕様決定支援装置として機能して、通信ネットワーク401で接続されたコンピュータ等403が本発明に係る工事仕様決定支援装置の入出力装置として機能するなどの態様をとることができる。
【0036】
図2に示すように、工事仕様決定支援装置2は、目標リノベーション費用算出部201、リノベーション工事費用算出部202、判定部203及び工事仕様出力部204を備える。また、工事仕様決定支援装置2は、さらに、現況入力部205及びリノベーション工事候補抽出部206を備えることができる。
【0037】
図2のブロック図に従って、工事仕様決定支援装置2の各ブロックの機能を説明する。なお、各ブロックの詳細な動作については後述する。
【0038】
目標リノベーション費用算出部201は、不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する。
【0039】
リノベーション工事費用算出部202は、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出する。
【0040】
判定部203は、目標リノベーション費用算出部201で算出した目標リノベーション費用とリノベーション工事費用算出部202で算出したリノベーション工事費用を対比して、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下であることを判定する。
【0041】
工事仕様出力部204は、判定部203が、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定した場合に、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を出力する。
【0042】
現況入力部205は、不動産物件の現況についての情報を入力する。
【0043】
リノベーション工事候補抽出部206は、現況入力部205で入力された不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出する。
【0044】
次に、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2の動作について説明する。説明理解の容易性を考慮して、工事仕様決定支援装置2が、目標リノベーション費用算出部201、リノベーション工事費用算出部202、判定部203、工事仕様出力部204に加えて、現況入力部205及びリノベーション工事候補抽出部206を備える場合を例にとって説明する。また、いわゆる空き家問題と住宅確保要配慮者問題といった社会的課題の解決を目指した図1で示す新たなスキームに工事仕様決定支援装置2を適用する好適な例をとって説明するが、これは本発明の適用を図1で示す新たなスキームのみに限るものではない。
【0045】
図5は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2における処理の流れを示した図である。図5に従って本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2の動作を説明する。
【0046】
まず、目標リノベーション費用算出部201が目標リノベーション費用算出処理(S501)を行う。目標リノベーション費用算出処理(S501)は、不動産物件の目標賃料と目標利回りとから目標リノベーション費用を算出する。ここで、目標賃料とは、当該不動産物件を賃貸する場合に目標として設定する賃料である。図1で示す新たなスキームにおいては、近隣の不動産物件の賃料相場と借主である住宅確保要配慮者の収入(例えば、生活保護法による居住地域や諸条件による受給額の決定など)から目標賃料を定めることができる。また、利回りとは、事業への投資金額が1年間で増えた程度を表す割合をいい、目標として設定する利回りを、ここでは目標利回りという。目標利回りは、図1で示す新たなスキームにおいては、当該事業スキームを実現し、継続していくための事業計画から定めることができる。また、目標リノベーション費用とは、不動産物件のリノベーションにかかる費用であって、目標賃料と目標利回りを得ることができる目標とするリノベーション費用をいう。
【0047】
ここで、不動産賃貸事業において、投資金額、年間賃料、利回りの関係は次の式(数1)で表される。不動産を買い取る場合、投資金額には、不動産物件取得にかかった費用、不動産登記などに必要な諸経費などが含まれる。リノベーション費用も投資金額に含まれる。
【0048】
【数1】
【0049】
一方、図1で示す新たなスキームにおいては、不動産物件所有者に利用料を支払うことから次の式(数2)で示す関係が成り立つ。また、不動産物件取得を伴わないため投資金額の多くをリノベーション費用が占めることになる。
【0050】
【数2】
【0051】
目標リノベーション費用算出処理(S501)は、図1で示す新たなスキームにおいては、不動産物件の目標賃料と目標利回りに加え、不動産物件所有者との間で定めた利用料から式(数2)に基づいて投資金額を算出する。目標賃料、目標利回り、利用料は、工事仕様決定支援装置2に外部から入力されてもよいし、工事仕様決定支援装置2にあらかじめ設定されていてもよい。
【0052】
次に、目標リノベーション費用算出処理(S501)は、あらかじめ定めた算出式に従って投資金額から目標リノベーション費用を算出する。例えば、投資金額に定めた値(例えば0.8)を乗じた金額を目標リノベーション費用とする、例えば、投資金額から定めた値(例えば100万円)を減じた金額を目標リノベーション費用とするなどである。
【0053】
なお、図1で示す新たなスキームを例にとって目標リノベーション費用算出処理(S501)について説明したが、式(数1)に基づいて目標リノベーション費用算出処理(S501)を行えば、利用料を定めず不動産を買い取る場合でも適用が可能である。
【0054】
以上が、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、目標リノベーション費用算出部201が行う目標リノベーション費用算出処理(S501)の説明である。
【0055】
次に、現況入力処理(S502)、リノベーション工事候補抽出処理(S503)、及び、リノベーション工事費用算出処理(S504)の説明に先立って、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2における現況入力処理(S502)で利用するデータベース(D507)、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で利用するデータベース(D508)、及び、リノベーション工事費用算出処理(S504)で利用するデータベース(D509)について説明する。図5に示す通り、これらデータベースはリレーショナルデータベースを構成する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2における現況入力処理(S502)で利用するデータベース(D507)、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で利用するデータベース(D508)、及び、リノベーション工事費用算出処理(S504)で利用するデータベース(D509)が構成するリレーショナルデータベースにおけるデータ項目の相互の関連を示す図である。図6に示す通り、各々のデータベースは特定のデータ項目で関連付けられており、これにより相互にデータ参照が可能である。また、同一データベースに格納されている各データ項目は定められた規則に基づいて関連付けられている。なお、それぞれのデータ項目については、後述する。
【0057】
図5に戻り、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、現況入力部205が行う現況入力処理(S502)について説明する。現況入力処理(S502)は、不動産物件の現況についての情報の工事仕様決定支援装置2への入力処理を行う。
【0058】
図7は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2における現況入出力画面の例を示した図である。図7に示す現況入出力画面は、現況入力部205が行う現況入力処理(S502)での入出力として機能する。なお、これは例示であって本発明に係る工事仕様決定支援装置における現況入力処理(S502)での入出力をこれに限るものではない。
【0059】
図7に示す本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2における現況入出力画面の例を用いて、現況入力処理(S502)について説明する。図7に示す現況入出力画面を介して、リノベーションを行う不動産物件の現況を工事仕様決定支援装置2に入力する。現況入出力画面は、工事区分701ごとに表示される。工事区分とは、リノベーションを行う不動産物件を間取り等によって区分分けしたものである。具体的には、和室、洋室、廊下などの間取りに関する区分の他に、基礎、屋根、外壁など躯体に関する区分もある。工事区分701の候補は、図6に示す通り、データベース(D507)に格納されている。工事区分701については、キーボート等の入力手段からの直接入力による選択としてもよいし、プルダウンメニュー等で候補から選択することとしてもよい。
【0060】
図7に示す現況入出力画面の工事個所702には、リノベーションを行う工事区分701における工事個所を入力する。工事個所702の候補は、図6に示す通り、データベース(D507)に格納されており、同じデータベース(D507)に格納されている工事区分701と関連付けられている。図7に示す例では、工事区分701は和室であるため、工事個所702として畳、壁、襖、天井など和室として想定される工事個所が関連付けられて選択することができる。一方、瓦や外壁など和室として想定されない工事個所は関連付けられていないために工事個所702として選択することができない。工事個所702についても、キーボート等の入力手段からの直接入力による選択としてもよいし、プルダウンメニュー等で候補から選択することとしてもよい。
【0061】
図7に示す現況入出力画面の現況入力703には、リノベーションを行う工事個所702における現況を入力する。現況入力703の候補は、図6に示す通り、データベース(D507)に格納されており、同じデータベース(D507)に格納されている工事個所702と関連付けられている。図7に示す例では、現況は損傷や汚れとして示され、程度として3段階(図7の例では、数字が大きい方が損傷や汚れの程度が大きい)で選択される。現況入力703へは個々の不動産物件の工事個所について現在の状況を選択して入力する。現況入力703についても、キーボート等の入力手段からの直接入力による選択としてもよいし、プルダウンメニュー等で候補から選択することとしてもよい。
【0062】
図7に示す現況入出力画面の工事数量704には、リノベーションを行う工事個所702における工事数量を入力する。工事数量704は、リノベーション工事費用の算出に用いられる。また、目標リノベ―ション費用算出処理(S501)で算出された目標リノベ―ション費用が705に表示される。リノベーション工事の内容検討の参考とするためであって、現況入力処理(S502)において必須ではない。
【0063】
次に、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、リノベーション工事候補抽出部206が行うリノベーション工事候補抽出処理(S503)について説明する。リノベーション工事候補抽出処理(S503)は、与えられた条件に基づいた優先順位をつけて、現況入力処理(S502)で入力された不動産物件の現況についての情報に基づいて不動産物件のリノベーションにおける工事の候補となる工事種別を抽出する。
【0064】
図8は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2におけるリノベーション工事候補抽出画面の例を示した図である。図8に示すリノベーション工事候補抽出画面は、リノベーション工事候補抽出部206が行うリノベーション工事候補抽出処理(S503)での入出力として機能する。なお、これは例示であって本発明に係る工事仕様決定支援装置におけるリノベーション工事候補抽出処理(S503)での入出力をこれに限るものではない。
【0065】
図8に示す本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2におけるリノベーション工事候補抽出画面の例を用いて、リノベーション工事候補抽出処理(S503)について説明する。図7の現況入出力画面で示される現況入力処理(S502)で入力された情報に基づいてリノベーション工事候補抽出処理(S503)では候補となる工事種別を抽出する。図6に示すように、現況入力処理(S502)で利用するデータベース(D507)とリノベーション工事候補抽出処理(S503)で利用するデータベース(D508)は、データ項目の工事個所と現況で相互に関連付けられている。これにより、リノベーション工事候補抽出処理(S503)では、工事個所702と現況入力703の情報から工事種別801の候補がデータベース(D508)から抽出される。具体的には、図8の例では、工事個所701畳について現況入力703で損傷の程度が1と軽微であることから工事種別801として表替が抽出されている。また、工事個所701天井について現況入力703で損傷の程度が3と重大であることから工事種別801として大工工事が抽出されている。
【0066】
工事個所702、現況入力703と関連づけられる工事種別801は、1対1の関連づけであってもよいし、1対多の関連づけであってもよい。1対多の関連づけである場合、リノベーション工事候補抽出処理(S503)では、与えられた条件に基づいた優先順位をつけて候補となる工事種別を抽出する。与えられた条件として、ひとつにはリノベーション工事費用を最も低額とすることができる。この場合、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で、工事候補抽出処理のための工事単価と工事種別相互の関連に基づいて工事費用の総額が最も低額となるように候補となる工事種別を抽出する。なお、工事種別相互の関連とは、例えばAとBの二つの工事種別は同時に行わなければならず一方のみを行わない選択はできないなど、工事候補を抽出する際に制限となる工事種別相互の関連をいう。工事種別相互の関連づけは、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で利用するデータベース(D508)において設定される。また、与えられた条件として、他にはリノベーションを行った後の不動産物件が定められた質的基準を満たすようにすることができる。この場合、例えば、リノベーションを行った後の現況について、現況入力703での評価基準において、損傷が認められず、かつ、汚れの程度は軽微(1以下)となることを条件としてリノベーション工事候補抽出処理(S503)で候補となる工事種別を抽出するなどと定める。なお、ここで示した条件、リノベーション工事費用を最も低額とする、リノベーションを行った後の不動産物件が定められた質的基準を満たすようにする、は各々例示であって、本発明に係る工事仕様決定支援装置において、この他の条件を採用することを妨げるものではない。
【0067】
本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、図8に示すリノベーション工事候補抽出画面の工事種別801について、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で抽出された候補から工事個所702、現況入力703と関連づけられた他の候補に変更することができる。この場合、優先順位802の表示も連動して変更される。変更された優先順位802が表示されることにより、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で抽出された候補から変更されたことが分かるとともに、優先順位が示されることでリノベーション工事仕様の検討の参考にできる。具体的には、図8の例では、工事個所701木部について現況入力703で汚れの程度が1と軽微であるにも拘わらず、工事種別801を塗装と変更したことによって優先順位802が連動して3に変更されている。なお、工事種別801の変更は、キーボート等の入力手段からの直接入力による選択としてもよいし、プルダウンメニュー等で候補から選択することとしてもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、リノベーション工事費用算出部202が行うリノベーション工事費用算出処理(S504)について説明する。リノベーション工事費用算出処理(S504)は、不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量と工事単価とからリノベーション工事費用を算出する。
【0069】
図9は、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2におけるリノベーション工事費用算出画面の例を示した図である。図8に示すリノベーション工事費用算出画面は、リノベーション工事費用算出部202が行うリノベーション工事費用算出処理(S504)での入出力として機能する。なお、これは例示であって本発明に係る工事仕様決定支援装置におけるリノベーション工事費用算出処理(S504)での入出力をこれに限るものではない。
【0070】
図9に示す本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2におけるリノベーション工事費用算出画面の例を用いて、リノベーション工事費用算出処理(S504)について説明する。図6に示すように、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で利用するデータベース(D508)とリノベーション工事費用算出処理(S504)で利用するデータベース(D509)は、データ項目の工事種別で相互に関連付けられている。これにより、リノベーション工事費用算出処理(S504)では、工事種別802の情報に関連付けられた工事業者の情報と工事単価の情報がデータベース(D508)から抽出される。リノベーション工事費用算出処理(S504)では、現況入力処理(S502)で入力された工事数量704の情報と、リノベーション工事候補抽出処理(S503)で候補として抽出されて検討のうえ変更された工事種別801の情報と、データベース(D508)から抽出された工事業者の情報と工事単価の情報から工事業者ごとの工事費用901を算出する。工事費用は、工事種別に対応する工事単価と工事数量を乗ずることで算出される。
【0071】
データベース(D508)には、複数の工事業者について工事単価をデータとして持つことができる。これにより、同じ工事種別について複数の異なった工事単価の設定が可能であって、リノベーション工事費用算出処理(S504)では、設定された複数の異なった工事単価の組み合わせごとに不動産物件のリノベーションにおける工事費用を算出して出力することができる。
【0072】
図9に示すリノベーション工事費用算出画面の例では、工事業者各社(A社、B社、C社)の工事区分701についての工事費用の小計を902に、不動産物件のリノベーション全体にかかる工事費用の総計を903に表示する。
【0073】
以上が、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、現況入力部205が行う現況入力処理(S502)、リノベーション工事候補抽出部206が行うリノベーション工事候補抽出処理(S503)、及び、リノベーション工事費用算出部202が行うリノベーション工事費用算出処理(S504)の説明である。
【0074】
図5に戻り、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、判定部203が行う判定処理(S505)は、目標リノベーション費用算出処理(S501)で算出した目標リノベーション費用とリノベーション工事費用算出処理(S504)で算出したリノベーション工事費用を対比して、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下であることを判定する。具体的には、図9の例では、目標リノベーション費用705と工事費用(総計)903の対比を行う。この例では、判定処理(S505)において、B社とC社について、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定される。
【0075】
本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2において、工事仕様出力部204が行う工事仕様出力処理(S506)は、判定処理(S505)においてリノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定された場合に不動産物件のリノベーションにおける工事種別と工事数量を含む工事仕様を出力する。具体的には、図9の例では、判定処理(S505)において、B社とC社について、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定されたため、この2社について工事仕様を出力する。工事仕様の様式は、例えば図9に示す様式である。なお、工事種別と工事数量を含む工事内容が明確に示されるものであれば様式は図9に限られない。
【0076】
また、図9の例では、判定処理(S505)において、A社について、リノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下と判定されないため、工事仕様出力処理(S506)で工事仕様を出力されないが、本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2においては、図9に示すリノベーション工事費用算出画面の例においてリノベーション工事費用が目標リノベーション費用以下となるように工事種別801を再検討のうえ変更することができる。
【0077】
以上が、図5に従った本実施形態に係る工事仕様決定支援装置2の動作説明である。
【0078】
次に、コンピュータを工事仕様決定支援装置として機能させるための工事仕様決定支援プログラムについて説明する。コンピュータの構成は、図3に示す通りである。
【0079】
工事仕様決定支援プログラムは、メインモジュール、入出力モジュール及び演算処理モジュールを備える。メインモジュールは、処理を統括的に制御する部分である。入出力モジュールは、入力情報をコンピュータに取得させ、算出した工事仕様の情報をコンピュータに出力させる。演算処理モジュールは、目標リノベーション費用算出モジュール、リノベーション工事費用算出モジュール、判定モジュール、工事仕様出力モジュール、現況入力モジュール及びリノベーション工事候補抽出モジュールを備える。メインモジュール、入力モジュール及び演算処理モジュールを実行させることにより実現される機能は、目標リノベーション費用算出部201、リノベーション工事費用算出部202、判定部203、工事仕様出力部204、工事仕様出力部205及びリノベーション工事候補抽出部206の機能とそれぞれ同様である。
【0080】
工事仕様決定支援プログラムは、例えば、ROM等の記憶媒体又は半導体メモリによって提供される。また、工事仕様決定支援プログラムは、ネットワークを介して提供されてもよい。
【0081】
以上、本実施形態に係る不動産物件のリノベーションにおける工事仕様決定支援装置、工事仕様決定支援方法、工事仕様決定支援プログラムによれば、不動産物件について、妥当な賃料の設定と事業者の利回りの確保を前提として、リノベーションにかけることができる費用を算出し、その費用に収まり、かつ、生活するに十分な住環境を担保するリノベーションを行うためのリノベーション工事仕様の決定を支援することができる。
【符号の説明】
【0082】
2 工事仕様決定支援装置
201 目標リノベーション費用算出部
202 リノベーション工事費用算出部
203 判定部
204 工事仕様出力部
205 工事仕様出力部
206 リノベーション工事候補抽出部
3 コンピュータ
301 中央演算装置(CPU)
302 入力装置
303 出力装置
304 主記憶装置(RAM/ROM)
305 補助記憶装置
401 通信ネットワーク
402 サーバ装置
403 コンピュータ等
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9