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  • 特開-防災設備点検装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147353
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】防災設備点検装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20231005BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   G08B 17/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01M3/24 A
G08B17/00 K
G08B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054799
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光明
(72)【発明者】
【氏名】楡木 孝史
(72)【発明者】
【氏名】飯野 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
(72)【発明者】
【氏名】成島 豊
【テーマコード(参考)】
2G067
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB17
2G067CC04
2G067DD13
2G067DD24
2G067EE08
2G067EE11
5C085BA04
5C085BA19
5C085CA11
5C085CA15
5C085CA25
5C085EA41
5C085FA25
5G405AD02
5G405CA11
5G405CA22
5G405CA35
5G405CA53
5G405EA41
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】種々の設置環境において、容易な作業によってエアリークが発生した位置を特定することのできる防災設備点検装置を得る。
【解決手段】防災設備で用いられる配管または銅パイプのエアリークを点検する防災設備点検装置であって、点検対象である配管または銅パイプを含む点検領域を撮像した画像データを出力するとともに、点検領域内で音波を発生する音波源を検出して出力する検出部と、検出部で検出された音波源のうち、可変設定可能な所望の周波数レンジに属する音波源をエアリークが発生しているおそれのある候補領域として特定し、検出部から出力された画像データに対して候補領域を識別表示させるための合成画像を生成する演算処理部と、演算処理部で生成された合成画像を表示することで、点検領域内においてエアリークが発生したおそれのある候補領域を可視化表示する表示部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災設備で用いられる配管または銅パイプのエアリークを点検する防災設備点検装置であって、
点検対象である前記配管または前記銅パイプを含む点検領域を撮像した画像データを出力するとともに、前記点検領域内で音波を発生する音波源を検出して出力する検出部と、
前記検出部で検出された前記音波源のうち、可変設定可能な所望の周波数レンジに属する音波源をエアリークが発生しているおそれのある候補領域として特定し、前記検出部から出力された画像データに対して前記候補領域を識別表示させるための合成画像を生成する演算処理部と、
前記演算処理部で生成された前記合成画像を表示することで、前記点検領域内において前記エアリークが発生したおそれのある前記候補領域を可視化表示する表示部と
を備える防災設備点検装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記所望の周波数レンジとして15kHa~35kHzの周波数帯を用いて前記合成画像を生成する
請求項1に記載の防災設備点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防災設備で用いられる配管または銅パイプのエアリークの有無を点検する防災設備点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視環境における温度の上昇率が許容以上になることで火災の発生を感知する熱感知器がある。熱感知器としては、故障しにくく性能が安定している空気管式のものが広く使われている。空気管式熱感知器では、例えば、監視対象となる建物の天井部分に空気管を張り巡らせ、空気管内に封入されている空気の温度上昇を監視することで、火災が発生したか否かの判定が行われる。
【0003】
空気管は、施工時や使用環境あるいは長期にわたる使用の影響により、劣化あるいは損傷し、空気管に切断や穴が開いてしまうことが考えられる。穴が開いてしまった場合には、空気管内に封入されていた空気が穴から漏れてしまい、エアリークが発生するため、熱感知器が正常に動作しなくなる。
【0004】
そこで、熱感知器の性能を維持するために、空気管においてエアリークが発生している位置を特定することのできる従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、空気の代わりに反応ガスを空気管に送給し、布設されている空気管に沿ってガス感知器を使用した検査を実施し、ガス感知器に反応ガスによる反応があった位置をエアリークが発生した位置として特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-145107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
例えば、空気管が建物の天井部分に張り巡らされているような設置環境の場合には、空気管に沿ってガス感知器を用いた検査を行うために、高所作業を伴う必要がある。また、特許文献1に係る技術は、反応ガスを必要とする。従って、エアリークが発生した位置を特定するために、費用と手間が発生してしまう課題があった。
【0007】
また、設置環境によっては、反応ガス自体を使用できない場合、あるいは空気管に沿ってガス感知器を用いた検査を行うこと自体が不可能な場合も考えられる。さらに、反応ガスを用いた検査を行うことのできる作業者は、限られてしまう。
【0008】
ここで、エアリークの発生位置を特定する課題は、空気管式熱感知器に限らず、配管または銅パイプを用いた防災設備の点検に共通する事項である。従って、配管または銅パイプを有する防災設備においては、種々の設置環境において、容易な作業によってエアリークが発生した位置を特定できる手法が強く望まれている。
【0009】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、種々の設置環境において、容易な作業によってエアリークが発生した位置を特定することのできる防災設備点検装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る防災設備点検装置は、防災設備で用いられる配管または銅パイプのエアリークを点検する防災設備点検装置であって、点検対象である配管または銅パイプを含む点検領域を撮像した画像データを出力するとともに、点検領域内で音波を発生する音波源を検出して出力する検出部と、検出部で検出された音波源のうち、可変設定可能な所望の周波数レンジに属する音波源をエアリークが発生しているおそれのある候補領域として特定し、検出部から出力された画像データに対して候補領域を識別表示させるための合成画像を生成する演算処理部と、演算処理部で生成された合成画像を表示することで、点検領域内においてエアリークが発生したおそれのある候補領域を可視化表示する表示部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、種々の設置環境において、容易な作業によってエアリークが発生した位置を特定することのできる防災設備点検装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る防災設備点検装置の機能ブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1において、空気管のエアリークに関する検証実験例を示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、配管ネジ部のエアリークに関する検証実験例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の防災設備点検装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。本開示は、点検対象である配管または銅パイプにおいて所定範囲の音波源を検出することでエアリークが発生しているおそれのある候補領域を特定して可視化表示することで、防災設備の点検作業を容易化することを特徴としている。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る防災設備点検装置の機能ブロック図である。本実施の形態1に係る防災設備点検装置10は、防災設備で用いられる配管または銅パイプのエアリークを点検するために用いられる装置であり、検出部11、演算処理部12、および表示部13を備えて構成されている。
【0015】
検出部11は、点検対象である配管または銅パイプを含む点検領域を撮像した画像データを出力するとともに、点検領域内で発生する音波源を検出して出力する。
【0016】
演算処理部12は、検出部11で検出された音波源のうち、可変設定可能な所望の周波数レンジに属する音波源をエアリークが発生しているおそれのある候補領域として特定する。そして、演算処理部12は、検出部11から出力された画像データに対して、特定した候補領域を識別表示させるための合成画像を生成する。
【0017】
さらに、演算処理部12は、生成した合成画像を表示部13に表示させることで、点検領域内においてエアリークが発生したおそれのある候補領域を可視化表示させることができる。
【0018】
次に、本実施の形態1における防災設備点検装置を用いて実施した検証実験例について説明する。なお、以下では、防災設備で用いられる配管または銅パイプとして、空気管と配管ネジ部の2つを具体例として検証実験を行った結果を説明する。
【0019】
図2は、本開示の実施の形態1において、空気管のエアリークに関する検証実験例を示した説明図である。図2(A)では、空気管内に0.1MPaおよび0.3MPaの圧力の空気が封入されている状況で、空気管の一部からエアリークを故意に発生させた状況において、本装置によって可視化が可能であった距離を、特定可能距離として示している。また、図2(A)では、圧力0.1MPaでエアリークを発生させた際に、人の耳で聞き取ることができた距離に関する検証結果についても、参考までに示している。言うまでもないが、図2(A)中に示した値は、空気管の亀裂あるいは穴の大きさによって変化する。
【0020】
圧力0.1MPaの場合には、エアリークを音として可聴するためには、エアリーク箇所から2~3mまで接近する必要があった。従って、空気管が監視対象である建物の天井に張り巡らされている場合などは、音を聞き取ることでエアリーク箇所を特定するには、手間がかかり、エアリークの発生箇所によっては、音を聞き取ること自体が困難になることが考えられる。
【0021】
これに対して、本実施の形態1に係る防災設備点検装置を用いることで、圧力0.1MPaの場合には、エアリーク箇所から20mの距離まで、可視化表示するための合成画像を生成することができた。また、圧力0.3MPaの場合には、エアリーク箇所から27mの距離まで、可視化表示するための合成画像を生成することができた。
【0022】
図2(B)は、空気管にエアリークが発生している際に、演算処理部12により生成された合成画像を表示部13上に可視化表示させた場合の一例を示している。点検作業員は、検出部11で検出可能な音波源のうち、エアリーク箇所を点検するための所望の周波数レンジを設定することで、設定した周波数レンジ内の候補領域を可視化することができ、エアリークが発生しているおそれのある箇所を容易に視認することができる。
【0023】
なお、エアリークを故意に発生させた箇所を、台車あるいは5mm厚のアクリル板で覆った状態で検証実験を行ったところ、台車の端、あるいはアクリル板の端において、エアリークが発生しているおそれのある箇所としての候補領域を特定できた。
【0024】
図3は、本開示の実施の形態1において、配管ネジ部のエアリークに関する検証実験例を示した説明図である。図3(A)では、空気管内に0.3MPa、0.8MPa、および1.0MPaの圧力の空気が封入されている状況で、配管ネジ部の一部からエアリークを故意に発生させた状況において、本装置によって可視化が可能であった距離を、特定可能距離として示している。また、図3(A)では、圧力0.3MPaおよび1.0MPaでエアリークを発生させた際に、人の耳で聞き取ることができた距離に関する検証結果についても、参考までに示している。言うまでもないが、図3(A)中に示した値は、配管の締め付け状態によって変化する。
【0025】
圧力0.3MPaの場合には、エアリークを音として可聴することは不可能であった。また、圧力1.0MPaの場合には、エアリークを音として可聴するためには、エアリーク箇所から5cmまで接近する必要があった。従って、配管ネジ部が点検対象である場合には、音を聞き取ることでエアリーク箇所を特定することが非常に困難になることが考えられる。
【0026】
これに対して、本実施の形態1に係る防災設備点検装置を用いることで、圧力0.3MPaの場合には、エアリーク箇所から0.3mの距離まで、可視化表示するための合成画像を生成することができた。また、圧力0.8MPaの場合には、エアリーク箇所から3.5mの距離まで、可視化表示するための合成画像を生成することができた。さらに、圧力1.0MPaの場合には、エアリーク箇所から4.3mの距離まで、可視化表示するための合成画像を生成することができた。
【0027】
図3(B)は、配管ネジ部にエアリークが発生している際に、演算処理部12により生成された合成画像を表示部13上に可視化表示させた場合の一例を示している。点検作業員は、検出部11で検出可能な音波源のうち、エアリーク箇所を点検するための所望の周波数レンジを設定することで、設定した周波数レンジ内の候補領域を可視化することができ、エアリークが発生しているおそれのある箇所を容易に視認することができる。
【0028】
以上のように、実施の形態1によれば、図1に示した構成を備えることで、エアリークが発生しているおそれのある候補領域を可視化表示させることが可能となる。また、検証実験を通じて、人の耳で音を聞き取ることができない、あるいは聞き取るためにはエアリーク箇所にかなり接近しなければならないエアリークが発生した場合にも、エアリークの発生箇所から離れた位置で、合成画像に基づいてエアリーク箇所を特定できることが検証できた。
【0029】
さらに、エアリーク箇所が何らかの障害物で覆われており、エアリーク箇所が直接画像データとしてとらえることができない場合であっても、障害物の端部から漏れる音波を検出することで、障害物の端部を、エアリークが発生しているおそれのある候補領域として可視化表示できることが検証できた。
【0030】
従って、点検作業員は、配管または銅パイプに近づくことなく、合成画像を視認することで、エアリークが発生しているおそれのある箇所、あるいはエアリークが発生しているおそれのある箇所の近傍を特定することができる。この結果、種々の設置環境において、容易な作業によってエアリークが発生した位置を特定することのできる防災設備点検装置を実現できる。
【0031】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、室内における検証実験例を説明した。これに対して、本実施の形態2では、実際に防災設備が配備されているお城において、屋外で行った検証実験について説明する。
【0032】
実際の防災設備は、お城の室内上部に空気管が張り巡らされている。本実施の形態2で説明する実証実験では、実際の空気管に穴を開けるのではなく、お城の屋外において、ダミーの空気管に対して空気を充填し、空気管漏れを再現し、同等の設置環境での可視化が可能か否かを実証した。
【0033】
お城に防災設備が配備されているような設置環境では、雑音として、以下のような要因が考えられる。
・多くの観光客の声・足音など
・鳥などのさえずり
・堀に流れ込む水の音
・観光客によるカメラのシャッター音
・屋外スピーカーから流れる放送音、BGMなど
【0034】
これらの雑音が存在する環境下で、ダミーの空気管によるエアリーク発生箇所の特定に関する検証実験を行ったところ、雑音と区別してエアリークの発生を音として可聴することは、エアリーク箇所に接近しても不可能であった。
【0035】
一方、エアリーク箇所から20m離れた地点において、本装置を適用したところ、雑音の影響を受けずに、合成画像に基づくエアリーク箇所の可視化が可能であることを実証できた。
【0036】
一般に、本願の検出対象であるエアリークに起因する音波の周波数は、雑音の周波数よりも高い。逆に言うと、エアリークに起因する音波の周波数は、音として可聴することが困難な15kHz以上が主流であり、本装置を用いることで、エアリークを雑音と識別することが可能となる。
【0037】
従って、候補領域を特定するための所望の周波数レンジとしては、雑音を検知しない周囲数帯域、望ましくは、15kHz~35kHzの周波数帯域を設定することで、雑音を除去した上で、エアリークが発生しているおそれのある候補領域を可視化表示させることが実証できた。
【0038】
以上のように、実施の形態2によれば、屋外の環境においても、本装置を用いることで、エアリークが発生しているおそれのある候補領域を可視化表示させることが可能となることを実証できた。特に、エアリークが発生しているおそれのある候補領域を抽出するための所望の周波数レンジとして、15kHz以上の周波数帯を設定することで、雑音の影響を受けることなしに、かつ、エアリークの発生箇所から離れた位置で、合成画像に基づいてエアリーク箇所を特定できることが検証できた。
【符号の説明】
【0039】
10 防災設備点検装置、11 検出部、12 演算処理部、13 表示部。
図1
図2
図3