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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147354
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】長距離信号伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20231005BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20231005BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20231005BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20231005BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W76/10 110
H04W84/18 110
H04W92/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054800
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 真晶
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕司
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA42
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、各無線基地局において容易な構成で同期を取る。
【解決手段】複数の無線基地局により構築された通信ネットワークを介して、フラッディングを用いて信号伝送を行うシステムであって、複数の無線基地局のそれぞれは、時分割されたタイムスロットのいずれか1つを特定するためのスロット番号が割り付けられており、送信すべきデータがある場合には、自身のタイマにより算出した周期が自身に割り付けられたスロット番号に対応するタイムスロットの周期と一致するタイミングで、送信すべきデータと自身に割り付けられているスロット番号とを含む情報を送信可能とするように送信タイミングが設定されており、他の無線基地局から情報を受信した場合には、情報に含まれているスロット番号に基づいて自身のタイマの時刻修正を実施することで送信タイミングの修正を実施する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号転送プロトコルとしてフラッディングを用いて複数の無線基地局により構築された通信ネットワークを介して信号伝送を行う長距離信号伝送システムであって、
前記複数の無線基地局のそれぞれは、
時分割されたタイムスロットのいずれか1つを特定するためのスロット番号が割り付けられており、送信すべきデータがある場合には、自身のタイマにより算出した周期が自身に割り付けられたスロット番号に対応するタイムスロットの周期と一致するタイミングで、前記送信すべきデータと自身に割り付けられているスロット番号とを含む情報を送信可能とするように送信タイミングが設定されており、
他の無線基地局から前記情報を受信した場合には、前記情報に含まれている前記スロット番号に基づいて前記自身のタイマの時刻修正を実施することで前記送信タイミングの修正を実施する
長距離信号伝送システム。
【請求項2】
前記複数の無線基地局のうち、所望の通信ルートに配置されたそれぞれの無線基地局は、スロット番号の順序に従って前記フラッディングを用いて前記信号伝送を順次実行できるように、前記通信ルートに沿ったシーケンシャルなスロット番号が割り付けられている
請求項1に記載の長距離信号伝送システム。
【請求項3】
前記複数の無線基地局のうち、前記フラッディングを用いて前記信号伝送を行う必要のない送信専用の無線基地局は、送信すべきデータがある場合には、前記タイムスロットに依存しない任意のタイミングで前記送信すべきデータを送信可能とするように前記送信タイミングが設定されている
請求項1または2に記載の長距離信号伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の無線基地局により構築された通信ネットワークを介して、信号転送プロトコルとしてフラッディングを用いて信号伝送を行う長距離信号伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局が複数配置された通信ネットワークにおいて信号伝送を行う際に、同時送信を利用したフラッディングというブロードキャスト方式が提案されている。同時送信を利用したフラッディング方式では、1つの無線基地局がデータ送信を行った際に、そのデータを受信した1以上の無線基地局が、同じデータをブロードキャスト的に送信することで、無線信号の同時送信を実現している。
【0003】
このような同時送信を複数の無線基地局のそれぞれが複数回繰り返すことで、信号伝送システム全体にデータを伝達することが可能となる。このような通信方式を採用することで、通信経路に関するルーティング用の事前設定が不要にできる利点がある。
【0004】
また、複数の無線基地局のそれぞれに対してタイムスロットを割り当てることで、各無線基地局は、自身に割り当てられたタイムスロット内でのみ無線での信号送信を行うことで、複数の無線局の信号送信の干渉を防ぐ手法がある。
【0005】
タイムスロットを用いて通信を行う信号伝送システムにおいては、複数の無線基地局間で同期をとる必要がある。同期を取るための手法としては、同期パケットを用いる従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-177616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に係る従来技術では、特定の同期パケットを生成して送信する処理、および同期パケットを受信した際の同期回復処理を、タイムスロットを用いて通信を行う各無線基地局に実装する必要がある。
【0008】
従って、同期を実現するための構成が複雑であり、必要となる機能を実装するための手間および費用が発生することとなる。すなわち、同期を実現するための構成が複雑であることが、フラッディングを用いた信号伝送システムの導入のネックの一因となっていた。
【0009】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、各無線基地局において容易な構成で同期を取ることができる長距離信号伝送システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る長距離信号伝送システムは、信号転送プロトコルとしてフラッディングを用いて複数の無線基地局により構築された通信ネットワークを介して信号伝送を行う長距離信号伝送システムであって、複数の無線基地局のそれぞれは、時分割されたタイムスロットのいずれか1つを特定するためのスロット番号が割り付けられており、送信すべきデータがある場合には、自身のタイマにより算出した周期が自身に割り付けられたスロット番号に対応するタイムスロットの周期と一致するタイミングで、送信すべきデータと自身に割り付けられているスロット番号とを含む情報を送信可能とするように送信タイミングが設定されており、他の無線基地局から情報を受信した場合には、情報に含まれているスロット番号に基づいて自身のタイマの時刻修正を実施することで送信タイミングの修正を実施するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、各無線基地局において容易な構成で同期を取ることができる長距離信号伝送システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1における長距離信号伝送システムの全体構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおいて、フラッディングを用いてルール1およびルール2に従って信号伝送を行った場合の説明図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおいて実施されるフラッディングを用いた信号伝送の説明図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおける各無線基地局内の機能ブロック図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る各無線基地局で実施されるフラッディングを用いた信号伝送の一連処理を示したフローチャートである。
図6】本開示の実施の形態2における長距離信号伝送システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の長距離信号伝送システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。本開示に係る長距離信号伝送システムは、それぞれの無線基地局が、他の無線基地局から情報を受信したタイミングで、自身のタイマの時刻修正を実施する機能を有することを技術的特徴としており、この結果、フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、各無線基地局において容易な構成で同期を取ることができる効果を得ることができるものである。
【0014】
実施の形態1.
LPWA(Low Power Wide Area)無線の代表的な規格の1つであるLoRa準拠の無線モジュールを、遠隔地の異常検知(例えば、山奥の落橋監視)の情報伝達に利用したい要望がある。このためには、無線メッシュ網機能を付加して長距離伝送を行うことで広域をカバーできるようにする必要がある。
【0015】
無線メッシュ網の広域化は、中継無線局数の増大、および無線局間距離の拡大という2つの機能を強化することで達成できる。このような観点から、火災検知システム、山奥の落橋監視システムなどの情報伝達を行う際に、複数の無線基地局により構築された通信ネットワークを介して、信号転送プロトコルとしてフラッディングを適用した長距離信号伝送システムを採用することが1つの解決策となる。
【0016】
このようなフラッディングを用いた長距離信号伝送システムを採用するに当たっては、通信ネットワーク内の各無線基地局において容易な構成で同期を取る技術を構築し、従来技術の課題を解決することが重要となる。
【0017】
そこで、以下の説明では、フラッディングを用いて信号伝送を行う長距離信号伝送システムを用いて、山奥等の落橋検出を行う場合を具体例として、詳細に説明する。なお、本開示の長距離信号伝送システムは、無線メッシュ網を利用した種々の用途に適用可能である。
【0018】
図1は、本開示の実施の形態1における長距離信号伝送システムの全体構成図である。図1では、市役所内に設けられた監視センタ1、3ヶ所のセンサネットワーク2、3、4、市内ネットワーク5により通信ネットワークが構築されている場合を例示している。
【0019】
監視センタ1は、1台の無線基地局10と監視PC(Personal Computer)40とを備えて構成されている。オペレータは、監視センタ1内において、監視PC40をモニタすることで、通信ネットワーク内の情報を集中監視することができる。
【0020】
センサネットワーク2、3のそれぞれは、1台の無線基地局10と2台の送信専用の無線基地局20とを備えて構成されている。
【0021】
センサネットワーク4は、1台の無線基地局10と5台の送信専用の無線基地局20と、落橋監視の対象となる橋梁に設置された複数のセンサ30とを備えて構成されている。また、市内ネットワーク5は、無線メッシュ網を構成するように配置された5台の無線基地局10を備えて構成されている。
【0022】
なお、図1に示した全体構成は一例に過ぎず、本開示の長距離信号伝送システムを適用する環境に応じて、ネットワーク、無線基地局、センサの台数、配置、および接続関係は、所望の構成に変更できる。なお、以下の説明では、データの送受信を行う無線基地局10を単に無線基地局10と記載し、送信専用の無線基地局20を単に無線基地局20と記載する。
【0023】
複数の無線基地局10および複数の無線基地局20により構築された通信ネットワークにおいて、複数の無線基地局10では、信号転送プロトコルとしてフラッディングを用いて信号伝送が行われる。フラッディングは、以下の単純な2つのルールだけで信号転送を行うプロトコルである。
【0024】
ルール1:無線基地局10は、他の無線基地局10あるいは無線基地局20から送信された信号を受信した場合には、自身の電波が届く範囲にある全ての無線基地局10に対して受信した信号を転送する。
ルール2:無線基地局10において同じ信号を異なるタイミングで再び受信した場合には、2度目の転送は実行しない。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおいて、フラッディングを用いてルール1およびルール2に従って信号伝送を行った場合の説明図である。図2では、3台の無線基地局10(1)~10(3)によってフラッディングを用いて信号伝送を行う場合を例示している。
【0026】
より具体的には、図2では、無線基地局10(1)を送信元基地局、無線基地局10(2)を中継基地局、無線基地局10(3)を送信先基地局とし、無線基地局10(1)から送信された信号がフラッディングによって、最終的に無線基地局10(3)に届く場合を例示している。
【0027】
図2中の[1]~[4]は、フラッディングを用いて信号伝送が行われるステップを意味している。各ステップでは、以下のような処理が順次行われることとなる。
ステップ[1]:無線基地局10(1)が、ルール1に従って、自身の電波が届く範囲にある全ての無線基地局10に対して信号を転送する。その結果、無線基地局10(1)から無線基地局10(2)に対して信号が伝送されることとなる。
【0028】
ステップ[2]:無線基地局10(2)が、ルール1に従って、自身の電波が届く範囲にある全ての無線基地局10に対して信号を転送する。その結果、無線基地局10(2)から無線基地局10(1)および無線基地局10(3)に対して信号が伝送されることとなる。従って、ステップ[1]、[2]を経て、無線基地局10(1)から送信された信号が、無線基地局10(3)に届くこととなり、本来の目的は達成される。
【0029】
ステップ[3]:無線基地局10(1)は、ルール2に従って、同じ信号の転送はしない。一方、無線基地局10(3)は、ルール1に従って、自身の電波が届く範囲にある全ての無線基地局10に対して信号を転送する。なお、「信号の宛先が自身の場合には受信したデータを受け取り、転送はしない」というルール3を設けていた場合には、無線基地局10(3)がこのルール3に従って転送を行わないようにすることができる。
【0030】
ステップ[4]:無線基地局10(2)は、ルール2に従って、先のステップ[1]と同じ信号をステップ[3]により受信したため、これ以上の転送は行わない。その結果、これ以上の転送が行われず、ネットワーク内の信号転送が終結することとなる。
【0031】
図1における通信ネットワークにおいても、図2で説明したように、ルール1、2に従ってフラッディングによる信号伝送を行うことで、監視センタ1内の無線基地局10は、センサネットワーク2~4内の無線基地局10から監視センタ1内の無線基地局10に向けて市内ネットワーク5を経由して送信された信号を受信することができる。
【0032】
フラッディングによる信号伝送を行う利点としては、以下の点が挙げられる。
利点1:ルール2に従うことで、信号がいつまでも往復することが無くなる。
利点2:送信先毎の転送相手を示すルーティングテーブルを整備する必要がないため、複数の無線基地局10を用いた長距離信号伝送システムの運用が容易となる。
【0033】
ただし、フラッディングによる信号伝送を行う留意点としては、以下の点が挙げられる。
留意点1:冗長な送信を行うため、電波の衝突、干渉が起こりやすく、電波の発信タイミングに関する制御が必要となる。
【0034】
この留意点の対策の一環として、特許文献1に係るシステムでは、複数の無線基地局10のそれぞれに対してタイムスロットを割り当てるとともに、同期をとる方式が採用されている。しかしながら、特許文献1のような方式では、図1に示したような我々が解決すべき課題に必要とする以上の、汎用的で高効率な送信を実現するための高精度な同期を目的としており、構成が複雑なため、その機能の実装にかかる手間および費用が不必要に高くなってしまう。
【0035】
そこで、本開示に係る長距離信号伝送システムでは、フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、各無線基地局10において容易な構成で同期を取ることができる方式を実現している。そこで、具体的な内容を図3図5を用いて詳述する。
【0036】
図3は、本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおいて実施されるフラッディングを用いた信号伝送の説明図である。図4は、本開示の実施の形態1に係る長距離信号伝送システムにおける各無線基地局10内の機能ブロック図である。また、図5は、本開示の実施の形態1に係る各無線基地局10で実施されるフラッディングを用いた信号伝送の一連処理を示したフローチャートである。
【0037】
図3においては、説明を簡略化するために、3台の無線基地局10(1)~10(3)によって通信ネットワークが構築され、フラッディングを用いた信号伝送が行われる場合を例示しているが、実際には、4台目以降の無線基地局10も存在し、無線メッシュ網が構築されることとなる。
【0038】
図3(A)では、無線基地局10(1)に対してID1が割り付けられ、無線基地局10(2)に対してID2が割り付けられ、無線基地局10(3)に対してID3が割り付けられ、相互に信号伝送する状態が示されている。
【0039】
なお、図3(A)では、ID1が割り付けられた無線基地局10(1)から送信される信号をSG1、ID2が割り付けられた無線基地局10(2)から送信される信号をSG2、ID3が割り付けられた無線基地局10(3)から送信される信号をSG3として記載している。
【0040】
ここで、ID1を有する無線基地局10(1)にはスロット番号としてSNo1が割り付けられ、ID2を有する無線基地局10(2)にはスロット番号としてSNo2が割り付けられ、ID3を有する無線基地局10(3)にはスロット番号としてSNo3が割り付けられているものとする。
【0041】
なお、IDは、長距離信号伝送システム内で個々の無線基地局10を識別するための固有の識別子であり、他の無線基地局と重複して割り付けられることはない。一方、SNoは、それぞれの無線基地局に対して送信を行うためのタイムスロットを規定するために割り付けられるスロット番号であり、他の無線基地局と重複して割り付けられることもあり得る。ただし、図3(A)では、3台の無線基地局のそれぞれに対して、3種類のスロット番号が重複しないように割り付けられている場合を例示している。
【0042】
図3(B)では、スロット番号SNo1~SNo3のそれぞれに時間幅ΔTのタイムスロットが、周期Tごとに1つ割り当てられている状態を模式的に示している。すなわち、各無線基地局10(1)~10(3)は、時分割されたタイムスロットのいずれか1つを特定するためのスロット番号SNoが割り付けられており、データ送信のタイミングが規定されている。
【0043】
具体的には、各無線基地局10(1)~10(3)は、送信すべきデータがある場合には、自身のタイマにより算出した周期が自身に割り付けられたスロット番号SNoに対応するタイムスロットの周期と一致するタイミングで、送信すべきデータと自身に割り付けられているスロット番号SNoとを含む情報を送信する。
【0044】
次に、図4の機能ブロック図、および図5のフローチャートに基づいて、各無線基地局10(1)~10(3)のそれぞれで実施されるフラッディングを用いた信号伝送の一連処理について説明する。なお、各無線基地局10(1)~10(3)は、同一構成を有しており、特に区別する必要がない場合には、無線基地局10として説明する。
【0045】
図4に示したように、無線基地局10は、受信信号処理部11と、同期調整部12と、送信信号処理部13とを備えて構成されている。受信信号処理部11は、周囲に配置されている他の無線基地局10から送信された情報を受信する機能を有している。受信信号処理部11は、他の無線基地局10から送信されてくる情報を、送信元である他の無線基地局10に割り付けられたスロット番号SNoに対応したタイムスロットのタイミングで受信することとなる。
【0046】
同期調整部12は、受信信号処理部11によって他の無線基地局10から情報を受信した場合には、その情報に含まれているスロット番号SNoに基づいて、タイムスロット周期における現在の位置を示すタイマの時刻修正を実施する機能を備えている。この結果、同期調整部12は、情報の送信元である他の無線基地局10のタイマが有する時刻に、自身のタイマの時刻を合わせるように時刻修正を行うことで、他の無線基地局10のタイマと自身のタイマとの同期を取り、送信タイミングの修正を実施することができる。
【0047】
送信信号処理部13は、受信信号処理部11によって他の無線基地局10から情報を受信した場合には、ルール1、2に基づく転送条件が成立しているか否かを判断する。そして、送信信号処理部13は、転送条件が成立している場合には、送信すべきデータがあると判断する。
【0048】
さらに、送信信号処理部13は、自身のタイマの時刻が自身に割り付けられたスロット番号SNoに対応するタイムスロット内にあるタイミングで、送信すべきデータと自身に割り付けられているスロット番号SNoとを含む情報を転送することとなる。
【0049】
この転送処理において、送信信号処理部13は、他の無線基地局10から情報を受信したタイミングで、同期調整部12により時刻修正された自身のタイマを用いて、情報の転送を行うことができる。従って、図4の構成を備えた無線基地局10は、他の無線基地局10から情報を受信することで自身のタイマの時刻修正を行うことができ、結果的に、周囲の他の無線基地局10との同期を取ることが可能となる。
【0050】
なお、同期調整部12による時刻修正処理は、受信信号処理部11によって他の無線基地局10から情報を受信したタイミングで常に行ってもよいが、ある決められた時間帯にのみ時刻修正処理を行う、特定のスロット番号SNoによる情報を受信したタイミングでのみ時刻修正処理を行うなど、時刻修正処理の起動条件を設定することも可能である。
【0051】
次に、図5を用いて、本実施の形態1に係る各無線基地局10で実施されるフラッディングを用いた信号伝送の一連処理を整理すると、以下のようになる。まず、ステップ501において、無線基地局10内の受信信号処理部11は、受信処理を実施することで、周囲の他の無線基地局10から送信された情報を受信する。
【0052】
次に、ステップS502において、同期調整部12は、ステップ501において送信された情報を受信した場合には、他の無線基地局10のスロット番号SNoおよび情報を受信したタイミングに基づいて自身のタイマの時刻修正を実施する。
【0053】
次に、ステップS503において、送信信号処理部13は、ルール1、2に基づく転送条件が成立しているか否かを判断する。すなわち、送信信号処理部13は、ルール1が成立し、かつ、ルール2が成立していない場合には転送条件が成立したと判断し、その他の場合には転送条件が成立していないと判断する。送信信号処理部13は、ステップS503において転送条件が成立していないと判断した場合には、転送処理を実施せず、一連処理を終了する。
【0054】
一方、送信信号処理部13は、ステップS503において転送条件が成立したと判断した場合には、ステップS504に進み、ステップS502において時刻修正された自身のタイマに基づいて、自身に割り付けられたスロット番号SNoに対応するタイムスロットになるのを待つ。そして、自身に割り付けられたタイムスロットが訪れたタイミングで、ステップS501で受信したデータ(すなわち、送信すべきデータ)と自身に割り付けられているスロット番号SNoとを含む信号の送信処理を実行する。
【0055】
このように、フラッディングによる送信処理が行われるごとに、送信元の無線基地局10に割り付けられているスロット番号SNoが付加される。従って、スロット番号SNoを含む情報を受信した無線基地局10は、どのタイムスロットにより送信された情報であるかを特定でき、タイマの時刻修正を容易に実施することができる。
【0056】
以上のように、実施の形態1によれば、それぞれの無線基地局において、同期調整部の働きにより、タイムスロットを用いて転送処理を行う際に用いる自身のタイマの時刻修正を、容易に実施することができる。この結果、フラッディングを用いて長距離信号伝送を行う際に、無線ネットワーク内の各無線基地局において容易な構成で同期を取ることができる長距離信号伝送システムを実現することができる。
【0057】
実施の形態2.
本実施の形態2では、本開示に係る長距離信号伝送システムにおいて、各無線基地局10に対して、通信効率を考慮してスロット番号SNoを割り付ける手法について説明する。
【0058】
図6は、本開示の実施の形態2における長距離信号伝送システムの全体構成図である。図6に示した全体構成は、先の実施の形態1における図1に示した全体構成と同じである。ただし、図6においては、先の図1に対して以下の内容が追記されている。
【0059】
・9台の無線基地局10を10(1)~10(9)として符号により識別可能としている。また、図6では、図示を省略しているが、9台の無線基地局10(1)~10(9)のそれぞれに対しては、固有の識別子としてID1~ID9が割り付けられており、IDにより識別可能となっている。
・無線基地局10(1)~10(9)のそれぞれに対して、4種類のスロット番号Sno1~SNo4のいずれか1つが割り付けられた状態を示している。
・所望の通信ルートとして第1のルート~第3のルートを太い矢印を用いて識別可能としている。
【0060】
本実施の形態2では、複数の無線基地局10のうち、所望の通信ルートとして第1のルートを最優先で規定する場合について説明する。第1のルートは、図6中に白抜きの太い矢印として記載されており、センサネットワーク4内でのセンサ30からの情報を、監視センタ1に迅速に伝えるための所望のルートとして設定されている。
【0061】
具体的には、第1のルートは、無線基地局10(4)→無線基地局10(6)→無線基地局10(9)→無線基地局10(1)を通過するルートとして規定されている。この第1のルートで、スロット番号SNoに従ったタイムスロットを利用して情報を順次、迅速に転送させるためには、情報の送信元から送信先に至る無線基地局10の順序に従ってスロット番号SNoの順序を割り付けることが適切である。
【0062】
そこで、図6では、第1のルートの情報の送信順序に従って、第1のルート上の4つの無線基地局10に対して以下のようなスロット番号SNoを割り付けることが考えられる。
無線基地局10(4):SNo1
無線基地局10(6):SNo2
無線基地局10(9):SNo3
無線基地局10(1):SNo4
【0063】
このようにスロット番号SNoの割り付けを行うことで、無線基地局10(6)は、SNo1のタイムスロットのタイミングで無線基地局10(4)からの情報を受信でき、その後、自身に割り付けられたスロット番号SNo2のタイムスロットのタイミングで直ちに情報を送信することができる。
【0064】
同様に、無線基地局10(9)は、スロット番号SNo2のタイムスロットのタイミングで無線基地局10(6)から情報を受信でき、その後、自身に割り付けられたスロット番号SNo3のタイムスロットのタイミングで直ちに情報を送信することができる。
【0065】
そして、最終的に、無線基地局10(1)は、スロット番号SNo3のタイムスロットのタイミングで無線基地局10(9)から情報を受信できる。この結果、監視センタ1内の監視PCは、送信元である無線基地局10(4)から送られた情報を、3タイムスロット分の時間が経過した後に迅速に取得することができる。
【0066】
なお、図6では、センサネットワーク4から監視センタ1への通信経路を第1のルートとして最優先で設定した後、図6中に縦ストライプの太い矢印として記載された第2のルートと、図6中にチェッカーマークの太い矢印として記載された第3のルートをさらに設定している。
【0067】
ここで、第2のルートは、センサネットワーク2から監視センタ1への通信経路に相当し、無線基地局10(2)→無線基地局10(7)→無線基地局10(1)を通過するルートとして規定されている。
【0068】
そして、第2のルート上の3つの無線基地局10に対して以下のようなスロット番号SNoを割り付けることが考えられる。
無線基地局10(2):SNo2
無線基地局10(7):SNo3
無線基地局10(1):SNo4
なお、無線基地局10(1)については、すでに第1のルートを設定する際に、スロット番号SNo4が割り付けられている。
【0069】
このような第2のルートを設定することで、監視センタ1内の監視PCは、送信元である無線基地局10(2)から送られた情報を、2タイムスロット分の時間が経過した後に迅速に取得することができる。
【0070】
同様に、第3のルートは、センサネットワーク3から監視センタ1への通信経路に相当し、無線基地局10(3)→無線基地局10(9)→無線基地局10(1)を通過するルートとして規定されている。
【0071】
そして、第3のルート上の3つの無線基地局10に対して以下のようなスロット番号SNoを割り付けることが考えられる。
無線基地局10(3):SNo2
無線基地局10(9):SNo3
無線基地局10(1):SNo4
なお、無線基地局10(9)、10(1)については、すでに第1のルートを設定する際に、それぞれスロット番号SNo3、スロット番号SNo4が割り付けられている。
【0072】
このような第3のルートを設定することで、監視センタ1内の監視PCは、送信元である無線基地局10(3)から送られた情報を、2タイムスロット分の時間が経過した後に迅速に取得することができる。
【0073】
なお、図6のようにスロット番号SNoを割り付けた場合には、例えば無線基地局10(7)は、ともにスロット番号SNo2が割り付けられている無線基地局10(2)と無線基地局10(6)の両方から同時に情報が送信された際に、それぞれの送信信号が互いに干渉するおそれがある。
【0074】
ただし、無線基地局10(2)と無線基地局10(6)は、常時、スロット番号SNo2に割り当てられたタイムスロットのタイミングで情報を送信しているわけではなく、送信すべきデータは、頻繁にあるわけではない。また、たとえ干渉が発生したとしても、メッシュ状に構築された他のルートを経由して情報を受信する、あるいは情報を再送することで、干渉の問題を解消することができる。
【0075】
以上のように、実施の形態2によれば、複数の無線基地局のうち、所望の通信ルートに配置されたそれぞれの無線基地局に対して、スロット番号SNoの順序に従ってフラッディングを用いて信号伝送を順次実行できるように、所望の通信ルートに沿ったシーケンシャルなスロット番号SNoを割り付けている。この結果、所望のルートを経由して迅速に情報を転送させることができる。
【0076】
なお、スロット番号SNoは、上述したように、所望の通信ルートに沿ったシーケンシャルな割り付けを行うこともできるが、各無線基地局10において、自身に固有に割り付けられたIDから、スロット番号SNoを自動的に割り付けることも可能である。例えば、図6に示した9台の無線基地局10(1)~10(9)のそれぞれにID1~ID9が割り付けられており、タイムスロットとして4種類のスロット番号Sno1~SNo4を用いる場合には、IDの数字を4で割った余りによって、各無線基地局10に対するスロット番号SNoを自動割り付けすることも可能である。
【0077】
また、実施の形態1、2では、送信専用の無線基地局20に関する送信タイミングについては特に説明しなかったため、補足説明する。送信専用の無線基地局20は、フラッディングを用いて信号伝送を行う必要のない無線基地局に相当する。また、送信専用の無線基地局20は、例えばセンサ30による検出結果を送信すべき情報として任意のタイミングで受信することが考えられる。従って、送信専用の無線基地局20は、送信すべき情報がある場合には、迅速な送信の観点から、ただちにその情報を送信することが適切である。
【0078】
そこで、送信専用の無線基地局20については、送信すべきデータがある場合には、タイムスロットに依存しない任意のタイミングで、送信すべきデータを送信可能とするように送信タイミングを設定しておくことが考えられる。
【符号の説明】
【0079】
1 監視センタ、2~4 センサネットワーク、5 市内ネットワーク、10 無線基地局、20 送信専用の無線基地局、30 センサ、40 監視PC。
図1
図2
図3
図4
図5
図6