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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147357
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】炎検知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/12 20060101AFI20231005BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G08B17/12 A
G01J1/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054803
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩志
【テーマコード(参考)】
2G065
5C085
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065BA14
2G065BB27
2G065BB49
2G065BC16
2G065CA08
2G065DA06
5C085AA13
5C085CA08
5C085FA38
(57)【要約】
【課題】炎検出精度の向上を実現する炎検知器を得る。
【解決手段】炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域に分光感度を有する第1素子と、炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域に分光感度を有する第2素子と、第1素子および第2素子のそれぞれの検出結果から、炎と誤報源とを判別した上で炎の発生を検出する検出部とを備え、第1素子は、正面に炎があることを仮定してCO共鳴放射帯を透過するバンド幅として設計された光学フィルタを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域に分光感度を有する第1素子と、
炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域に分光感度を有する第2素子と、
前記第1素子および前記第2素子のそれぞれの検出結果から、前記炎と前記誤報源とを判別した上で炎の発生を検出する検出処理を実行する検出部と
を備え、
前記第1素子は、正面に炎があることを仮定して前記CO共鳴放射帯を透過するバンド幅として設計された光学フィルタを有する
炎検知器。
【請求項2】
前記光学フィルタは、4.20μm~4.65μmの波長領域を前記バンド幅とする
請求項1に記載の炎検知器。
【請求項3】
前記第1素子と前記第2素子とからなる一対の素子が搭載され、前記一対の素子の指向方向を移動可能な駆動機構
をさらに備え、
前記検出部は、前記駆動機構を所望の指向方向に移動させる位置決め制御を実行した後に、前記検出処理を実行する
請求項1または2に記載の炎検知器。
【請求項4】
前記第1素子と前記第2素子とからなる一対の素子を二対備えており、
前記検出部は、二対の素子によるそれぞれの検出結果を加算処理した結果に基づいて前記炎と前記誤報源とを判別した上で炎の発生を検出する
請求項1から3のいずれか1項に記載の炎検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誤報源と炎とを判別した上で炎の発生を検出する炎検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、トンネル内で発生する火災を検出するために使用される現行の炎検知器では、互いに異なる波長帯に検出感度を有する2つの素子によるそれぞれの検出結果を用いて、炎を検知している。
【0003】
より具体的には、近赤外線領域を検出するセンサとしてフォトダイオードを用い、中赤外線領域を検出するセンサとして焦電素子を用い、これらのセンサで検出した波長に応じて、検出対象の火災と、誤検出要因となる光源との判別を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-141559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
炎検知器を必要とする様々な現場状況に対応するためには、従来の炎検知器に対して、さらに炎検出精度の向上を図ることができる機能を強化することが望まれている。すなわち、2波長を検知する従来技術に対して、誤報源と炎とを判別した上でさらなる炎検出精度の向上を図ることが望まれている。
【0006】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、炎検出精度の向上を実現する炎検知器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る炎検知器は、炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域に分光感度を有する第1素子と、炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域に分光感度を有する第2素子と、第1素子および第2素子のそれぞれの検出結果から、炎と誤報源とを判別した上で炎の発生を検出する検出部とを備え、第1素子は、正面に炎があることを仮定してCO共鳴放射帯を透過するバンド幅として設計された光学フィルタを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、炎検出精度の向上を実現する炎検知器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1における炎検知器の構成図である。
図2】本開示の実施の形態1において、入射角が相対強度に及ぼす影響を示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、一般的な炎検知器での監視距離と入射角との関係を示した図である。
図4】本開示の実施の形態1において、視野角を比較的狭い領域に限定した場合の検出精度の向上に関する説明図である。
図5】本開示の実施の形態1における炎および誤報源に関する波長に対する相対感度の特性をまとめた説明図である。
図6】本開示の実施の形態2における炎検知器の構成図である。
図7】本開示の実施の形態2において、二対の素子が実装された炎検知器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の炎検知器の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。本開示は、正面に炎があることを仮定して、炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域を透過させるために適した光学フィルタを用いることで、炎検出精度の向上を実現することを特徴としている。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における炎検知器の構成図である。本実施の形態1に係る炎検知器は、一対の素子10および検出部20を備えて構成されている。一対の素子10は、第1素子11および第2素子12を含んで構成されている。
【0012】
第1素子11は、炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域に分光感度を有する素子である。また、第2素子12は、炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域に分光感度を有する素子である。
【0013】
検出部20は、第1素子11および第2素子12のそれぞれの検出結果から、炎と誤報源とを判別した上で炎の発生を検出する。
【0014】
このような構成を備える炎検知器は、火災監視領域内に1台あるいは複数台設置されることとなる。一般的に、CO共鳴を利用する炎感知器では、1台当たりの火災監視エリアが、例えば視野角が+45°~-45°といった比較的広い範囲の領域として設定されている。すなわち、一対の素子10に対する入射角が+45°あるいは-45°といった斜めからの赤外線に対しても、炎検出を行うこととなる。
【0015】
図2は、本開示の実施の形態1において、入射角が相対強度に及ぼす影響を示した説明図である。縦軸は相対強度、横軸は波長を示している。図2中では、点線、実線1、実線2、の3種が示されており、各々、以下のような特性に相当する。
【0016】
点線:ヘプタン火災が発生した際の炎の波長領域を示したものであり、約4.3μm~4.4μmの波長帯に相対強度のピークを有している。
実線1:素子の正面の位置(入射角0°に相当)において炎が発生した際の、素子の相対強度を示したものである。
実線2:視野角の端の位置(入射角+45°に相当)において炎が発生した際の、素子の相対強度を示したものである。
【0017】
図2から明らかなように、素子への入射角が大きくなるに従って、波形が低波長側にシフトするとともに、相対強度も低下する傾向にある。相対強度が低下する原因は、斜め入射になることで、入射角をθとした場合に、光束が当たる面積がCOSθで減少するためである。
【0018】
また、第1の素子によって炎を高精度に検出するためには、炎に特有のCO共鳴放射帯を含む第1波長領域を透過させる光学フィルタを用いることとなる。しかしながら、このような光学フィルタは、干渉という原理によっているために、入射角に依存して光学薄膜内での光路長が変化して干渉条件が変わってしまう結果、入射角毎に分光透過率特性が異なってしまう。
【0019】
図3は、本開示の実施の形態1において、一般的な炎検知器での監視距離と入射角との関係を示した図である。例えば、15cm角ノルマルヘプタン火皿に関しては、入射角0°であれば25mの監視距離が達成できるが、入射角が45°になると監視距離が1/2となり、12.5mまで減少している。
【0020】
同様に、33cm角ノルマルヘプタン火皿に関しては、入射角0°であれば60mの監視距離が達成できるが、入射角が45°になると監視距離が1/2となり、30mまで減少している。
【0021】
すなわち、上述した図2の特性、および光学フィルタの特性を考慮すると、図3に示すように、入射角が大きくなればなるほど、監視距離が短くなり、検出感度の低下を招くこととなる。
【0022】
そこで、本実施の形態1における炎検知器では、炎検知器の正面近傍に監視範囲を限定し、従来と比較して視野角が比較的狭い領域での検出感度の向上を図っている点に特徴を有している。
【0023】
図4は、本開示の実施の形態1において、視野角を比較的狭い領域に限定した場合の検出精度の向上に関する説明図である。先の図2で示したように、視野角が0°の場合と比較して、視野角が45°の場合には、信号波形がシフトするとともに、信号強度も低下する。
【0024】
しかしながら、視野角を0°近傍に限定することで、視野角の影響により生じるシフト現象を考慮する必要がない。さらに、図4に示すように、第1の素子に設ける光学フィルタに関しては、点線で示したヘプタン火災における炎の波長領域全体をカバーするようにバンド幅を広げた最適設計を図ることで、入射エネルギー量を増加させることができる。
【0025】
光学フィルタを最適設計できることで、本来検出すべきCO共鳴放射帯を含む第1波長領域を透過する入射エネルギー量を増加できるとともに、第1波長領域以外の波長の誤検出を抑制することができる。
【0026】
この結果、従来と比較して視野角が比較的狭い領域での検出感度の向上を図ることができる。なお、視野角を0°近傍に限定することで、監視範囲が狭くなることとなる。しかしながら、炎検知器の指向方向を移動させることができる駆動機構を設け、駆動機構に対して炎検知器を搭載し、複数の指向方向での監視を行うことで、監視範囲を広げることが可能である。
【0027】
具体的には、検出部20は、一対の素子10が搭載され、一対の素子10の指向方向を移動可能な駆動機構の位置決め制御を実行し、所望の指向方向に一対の素子10を移動させた後に、第1素子および第2素子の検出結果に基づいて炎の検出処理を実行することができる。
【0028】
なお、炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域を検出する第2素子について補足説明する。図5は、本開示の実施の形態1における炎および誤報源に関する波長に対する相対感度の特性をまとめた説明図である。図5において、「ヘプタン火災」は、炎として判別すべき検出対象であり、中波長帯において相対感度が高くなっている。
【0029】
一方、「100℃高温物体」は、長波長帯において相対感度が高くなっており、「太陽光」および「キセノンランプ」は、短波長帯において相対感度が高くなっている。すなわち、長波長帯および短波長帯のいずれか一方あるいは両方の波長帯が、炎と誤報源とを識別するために適した第2波長領域に相当する。
【0030】
従って、先の図4で示したように、第1波長領域を適切に透過させる光学フィルタを設計し、第1素子に適用することで、誤報源が有する波長帯はカットした上で、従来よりも、より高い相対感度で炎検出を実現できる。換言すると、第1素子11は、正面近傍に炎があることを仮定してCO共鳴放射帯を透過するバンド幅として、4.2μm~4.7μmの波長領域を第1波長領域とするように最適設計することができる。CO共鳴放射帯をすべて包含するように光学フィルタを設計することで、S/N比も改善される。
【0031】
以上のように、実施の形態1によれば、視野角を0°近傍に限定した上で、CO共鳴放射帯を透過する最適なバンド幅を有するように設計された光学フィルタを第1素子に設けている。この結果、視野角が大きくなることに伴って入射エネルギーが減少する影響を抑制し、かつ、適切なバンド幅を有する光学フィルタにより本来検出すべきCO共鳴放射帯を含む第1波長領域を透過する入射エネルギー量を増加させることができ、誤検出を抑制し、炎検出精度の向上を実現する炎検知器を得ることができる。
【0032】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、第1の素子と第2の素子とからなる一対の素子を用いて誤検出を抑制し、炎検出精度の向上を実現し、炎検知器の性能向上を図る手法について説明した。本実施の形態2では、炎検知器のさらなる性能向上を図る手法について説明する。
【0033】
図6は、本開示の実施の形態2における炎検知器の構成図である。本実施の形態2に係る炎検知器は、先の図1に示した実施の形態1に係る炎検知器と比較すると、一対の素子10を2つ備えている点がことなっている。ここで、一対の素子10aおよび一対の素子10bは、ともに、先の実施の形態1で説明した一対の素子10と同一構成を有しており、二対の素子10a、10bとして構成される。
【0034】
図7は、本開示の実施の形態2において、二対の素子10a、10bが実装された炎検知器を示した図である。第1の素子11a、11bが互いに対角線上に配置され、第2の素子12a、12bも互いに対角線上に配置されている。
【0035】
二対の素子10a、10bを用いることで、結果的には2回の検出結果を加算する効果を、1回の検出で得ることができる。標準偏差でS/N比を定義すると、K回(Kは2以上の整数)の測定結果を加算することで、S/N比は、√K倍に改善されることが期待できる。
【0036】
従って、本実施の形態2に係る検出部20は、二対の素子10a、10bによるそれぞれの検出結果を加算処理した結果に基づいて、1回の検出タイミングにおいて、炎と誤報源とを判別した上で炎の発生を高精度に検出することができる。
【0037】
以上のように、実施の形態2によれば、一対の素子をK個用いることで、一対の素子を用いた場合と比較して、同一の検出時間における検出信号のS/N比を√K倍に改善できる。この結果、誤検出を抑制し、炎検出精度のさらなる向上を実現する炎検知器を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 一対の素子、1111a、11b 第1素子、12、12a、12b 第2素子、20 検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7