(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014736
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】くつずりの構造及びくつずりの施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/70 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
E06B1/70 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118869
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011MA10
(57)【要約】
【課題】くつずりを上下反転させてくつずりのみに行うという煩雑なモルタル充填作業を不要とし、工期を短縮することができるくつずりの構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】長尺帯形状の上面15を有するくつずり本体37と、くつずり本体37の幅長よりも広い幅ではつって設けられる溝13と、上面15を表出状態で溝13に充填される充填剤19と、を有するとともに、溝底面21には固定部材23が立設され、くつずり本体37は、上面15の一対の長辺から垂下して充填剤19を通過させる充填剤導入部39を有する一対の側板部41を備えるとともに、上向きコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定され、このアンカー枠部25が固定部材23に固定されて上面15が床面11に対し略面一に表出して配置され、床面11と略面一となって溝13に充填される充填剤19に、上面15を除く側板部41の一部分と、アンカー枠部25とが埋入される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な帯形状の上面を有するくつずり本体と、前記くつずり本体の幅長よりも広い幅で床面をはつって設けられ前記くつずり本体が内側に配置される溝と、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝の底面には固定部材が立設され、
前記くつずり本体は、平板状に形成されるとともに、所定形状のアンカー枠部が下面に固定されてこのアンカー枠部が前記固定部材に固定され、前記上面が前記床面に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面と面一となって前記溝に充填された前記充填剤に、前記上面を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部とが埋入されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項2】
請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり本体は、前記板厚方向の側面と前記上面とが交わる角部が面取りされたR部を有することを特徴とするくつずりの構造。
【請求項3】
長尺な帯形状の上面を有するくつずり本体と、前記くつずり本体の幅長よりも広い幅で床面をはつって設けられ前記くつずり本体が内側に配置される溝と、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝の底面には固定部材が立設され、
前記くつずり本体は、前記上面の一対の長辺のそれぞれから溝内に垂下して少なくとも一方が前記充填剤を通過させる充填剤導入部を有する一対の側板部を備えるとともに、上向きに開くコ字状のアンカー枠部が下面に固定されてこのアンカー枠部が前記固定部材に固定され、前記上面が前記床面に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面と面一となって前記溝に充填された前記充填剤に、前記上面を除く前記側板部の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部とが埋入されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項4】
請求項3に記載のくつずりの構造であって、
前記一対の側板部の一方よりも他方が短く垂下し、これら一対の側板部の間には、前記下面と前記充填剤との間を埋める詰込み部材が設けられることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり本体には、前記下面から垂下して前記充填剤に埋入される複数の埋入部が、前記下面の長手方向に離間して設けられることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項6】
長尺な帯形状の上面を有するくつずり本体と、前記くつずり本体の幅長よりも広い幅で床面をはつって設けられ前記くつずり本体が内側に配置される溝と、前記くつずり本体の上面を表出状態で前記溝に充填される充填剤と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝の底面には固定部材が立設され、
前記くつずり本体は、前記上面の一対の長辺のそれぞれから垂下する一対の側板部を有し、前記一対の側板部の間には下向きに突出して前記固定部材に固定される固定用凸部が設けられ、前記一対の側板部の間と前記固定用凸部との間には詰込み部材が設けられ、前記上面が前記床面に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面と面一となって前記溝に充填された前記充填剤に、前記上面を除く前記側板部の側面における少なくとも一部分と、前記固定用凸部とが埋入されることを特徴とするくつずりの構造。
【請求項7】
床面をはつって溝を形成するはつり工程と、
前記溝の底面に固定部材を前記溝の延在方向で所定間隔に設ける固定部設置工程と、
離間した平行な一対の縦枠の上端同士が上枠で連結される三方枠における前記縦枠の下端同士を連結したくつずり本体を前記溝に配置する建て込み工程と、
前記くつずり本体の下面に設けたアンカー枠部を前記固定部材に固定する固定工程と、
前記溝に充填剤を充填して前記床面と面一となる前記充填剤に、前記上面を除く前記くつずり本体の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部とを埋入する充填工程と、
を含むことを特徴とするくつずりの施工方法。
【請求項8】
床面をはつって溝を形成するはつり工程と、
前記溝の底面に固定部材を前記溝の延在方向で所定間隔に設ける固定部設置工程と、
離間した平行な一対の縦枠の上端同士が上枠で連結される三方枠における前記縦枠の下端同士を連結したくつずり本体を前記溝に配置する建て込み工程と、
前記くつずり本体の下面に設けたアンカー枠部を前記固定部材に固定する固定工程と、
前記溝に充填剤を充填して前記床面と面一となる前記充填剤に、前記上面を除く前記くつずり本体の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部と、前記下面から垂下する埋入部とを埋入する充填工程と、
を含むことを特徴とするくつずりの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くつずりの構造及びくつずりの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省の建築工事標準仕様書によれば、コンクリート系下地に取り付ける鋼製建具のドア枠には、モルタルを充填するよう指示がされている。また、枠を建物躯体に固定してからではモルタルが充填できない場合には、予めモルタル充填を行ってから取付けるよう求めており、多くの建築現場で実施されている。特に建具を構成する沓摺は、床面と連続する部材となることから、沓摺の内部に空隙の無いようモルタルを充填しなければならない。例えば、特許文献1に開示される沓摺は、床面に、上面が開口される断面U字状の下地枠の底面を直接固定するとともに、この下地枠内にモルタルを充填し、モルタルの上面を、下面が開口されるコ字形状の沓摺本体により上方から覆い、下地枠の側面に沓摺本体の側面を固定してなる。これにより、沓摺内部にはモルタルが充填された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の沓摺の構造では、沓摺本体とは別体の下地枠を必要とし、この下地枠の固定状態を基準として沓摺が固定されることになり、建具として建物躯体を基準の組み付けとは異なるものとなる。沓摺は、建物躯体に固定される建具の下端を構成しながら、床面のレベルに合わせて固定されることから、床面をはつった後に、沓摺が配置され、沓摺とはつって形成された溝との間にモルタルが充填される構成が好ましい。鋼製建具である三方枠(ドア枠)の下端同士を連結したくつずり本体は、上記した通り下面が開口されるコ字形状であり、モルタル充填が困難となる。つまり、モルタルの流入時にコ字形状であるために回り込みが発生してしまい、沓摺の内側へのモルタル充填不良が発生するおそれがある。このため、この種の鋼製建具のドア枠では、建具工事により予めドア枠を上下反転し、モルタルが沓摺内側に流れ込みやすい状態とし、その後左官工事によりモルタル充填を行い、モルタルが硬化してから、再び建具工事により沓摺を下に向けドア枠の固定作業を行い、そして沓摺と床面との間のはつった個所にモルタルを充填する、という、業種が入り組む複雑な工程となっている。その結果、工期が長くなる問題があった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、くつずりを上下反転させてのくつずりのみに行うという煩雑なモルタル等充填剤の充填作業を不要とし、工期を短縮することができるくつずりの構造及びくつずりの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体17と、前記くつずり本体17の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられ前記くつずり本体17が内側に配置される溝13と、前記くつずり本体17の上面15を表出状態で前記溝13に充填される充填剤19と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝13の底面21には固定部材23が立設され、
前記くつずり本体17は、平板状に形成されるとともに、所定形状のアンカー枠部25が下面27に固定されてこのアンカー枠部25が前記固定部材23に固定され、前記上面15が前記床面11に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面11と面一となって前記溝13に充填された前記充填剤19に、前記上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部25とが埋入されることを特徴とする。
【0007】
このくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13に、くつずり本体17が配置される。溝13は、くつずり本体17の幅長よりも広い幅で形成され、くつずり本体17が内側に配置される。くつずり本体17は、溝13に沿って長尺な帯形状の上面15を表出する。くつずり本体17が配置される溝13には、充填剤19が充填される。溝13の底面21には、充填剤19の充填される前に、固定部材23が立設される。
このくつずりの構造では、くつずり本体17が、溝13に沿う方向に長い平板状に形成される。
くつずり本体17の長手方向に直交する方向の板幅は、溝幅よりも狭いので、くつずり本体17が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体17との間に、充填剤充填用開口35が空く。充填剤19は、この充填剤充填用開口35からくつずり本体17の下方に流し込まれる。
くつずり本体17は、所定形状、例えば上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定される。このアンカー枠部25は、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体17は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体17は、上面15が床面11に対し面一若しくは高く、例えば3mm程度表出して配置される。
充填剤充填用開口35から溝13に充填される充填剤19は、くつずり本体17の下面27に接して充填される。つまり、くつずり本体17の下面27と充填剤19とには、空隙が生じない。充填剤19は、床面11と面一となって溝13に充填されることにより、くつずり本体17の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25とを埋入する。
このくつずりの構造では、くつずり本体17が平板状となるので、充填剤19を、くつずり本体17の下面側へ流し込みやすくできる。くつずり本体17は、下面27へ充填剤19が流入し、固定部材23に固定されたアンカー枠部25が充填剤19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、充填剤19をくつずり本体17の下面27に隙間無く入れて、くつずり本体17の下面27と充填剤19とを固着することができる。
また、従来構造のようなくつずりを上下反転させてくつずりのみに行う煩雑な充填剤充填作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
さらに、アンカー枠部25を、くつずり本体17の長手方向と同方向に長い形状ではなく、小幅な板材などでコ字状などの所定の形状に形成した構造としたので、充填剤19の流れを妨げにくく、くつずり本体17の下面27と充填剤19との間に、空隙を発生しにくくしながら、くつずり本体17の固定強度を確保することができる。
【0008】
本発明の請求項2記載のくつずりの構造は、請求項1に記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり本体17は、前記板厚方向の側面と前記上面15とが交わる角部が面取りされたR部29を有することを特徴とする。
【0009】
このくつずりの構造では、平板状のくつずり本体17が、床面11をはつって形成した溝13に配置される。溝13には、床面11と面一となって充填剤19が充填される。充填剤19は、くつずり本体17の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分を埋入する。このため、くつずり本体17は、上面15が充填剤19の仕上げ面20と面一とならない仕様では、くつずり本体17の板厚方向の側面と上面15とが交わる角部が、段差となって充填剤19の仕上げ面20から上方へ突出する。この角部による段差は、例えば3mm程度のものとなるが、重量の大きい什器等が通過する際には、衝接することになる。この場合、くつずり本体17に捲れを生じさせることがある。くつずりの構造では、この角部が面取りによりR部29となることで、衝接時にくつずり本体17に作用する外力を緩和でき、くつずり本体17の捲れ等を抑制できる。また、歩行者が通過する際の躓きも生じにくくすることができる。
【0010】
本発明の請求項3記載のくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体37と、前記くつずり本体37の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられ前記くつずり本体37が内側に配置される溝13と、前記くつずり本体37の上面15を表出状態で前記溝13に充填される充填剤19と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝13の底面21には固定部材23が立設され、
前記くつずり本体37は、前記上面15の一対の長辺のそれぞれから溝内に垂下して少なくとも一方が前記充填剤19を通過させる充填剤導入部39を有する一対の側板部41を備えるとともに、上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定されてこのアンカー枠部25が前記固定部材23に固定され、前記上面15が前記床面11に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面11と面一となって前記溝13に充填された前記充填剤19に、前記上面15を除く前記側板部41の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部25とが埋入されることを特徴とする。
【0011】
このくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13に、くつずり本体37が配置される。溝13は、くつずり本体37の幅長よりも広い幅で形成され、くつずり本体37が内側に配置される。くつずり本体37は、溝13に沿って長尺な帯形状の上面15を表出する。くつずり本体37が配置される溝13には、充填剤19が充填される。溝13の底面21には、充填剤19の充填される前に、固定部材23が立設される。
このくつずりの構造では、くつずり本体37は、上面15の一対の長辺のそれぞれから溝13内に垂下する一対の側板部41を備える。一対の側板部41は、少なくとも一方が充填剤19を通過させる充填剤導入部39を有する。
くつずり本体37の長手方向に直交する方向の板幅は、溝幅よりも狭いので、くつずり本体37が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体37との間に、充填剤充填用開口35が空く。充填剤19は、この充填剤充填用開口35からくつずり本体37の下方に流し込まれる。
くつずり本体37は、上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定される。このアンカー枠部25は、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体37は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体37は、上面15が床面11に対し面一若しくは高く、例えば3mm程度表出して配置される。
充填剤充填用開口35から溝13に充填される充填剤19は、充填剤導入部39を通って、くつずり本体37の下面27に接して充填される。つまり、くつずり本体37の下面27と充填剤19とには、空隙が生じない。充填剤19は、床面11と面一となって溝13に充填されることにより、くつずり本体37の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25とを埋入する。
このくつずりの構造では、くつずり本体37が一対の側板部41を備え、少なくとも一方の側板部41が充填剤導入部39を有するので、充填剤19を、くつずり本体37の下面側へ充填剤導入部39を介して流し込みやすくできる。くつずり本体37は、下面27へ充填剤19が流入し、固定部材23に固定されたアンカー枠部25が充填剤19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、充填剤19をくつずり本体37の下面27に隙間無く入れて、くつずり本体37の下面27と充填剤19とを固着することができる。
また、従来構造のようなくつずりを上下反転させてくつずりのみに行う煩雑な充填剤充填作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
さらに、アンカー枠部25を、くつずり本体37の長手方向と同方向に長い形状ではなく、小幅な板材などでコ字状に形成した構造としたので、充填剤19の流れを妨げにくく、くつずり本体37の下面27と充填剤19との間に、空隙を発生しにくくしながら、くつずり本体37の固定強度を確保することができる。
これに加え、くつずり本体37には、上面15の一対の長辺のそれぞれから溝内に垂下する一対の側板部41を備えるので、平板状のくつずり本体37に比べ、側板部41が充填剤19に埋入されることで、くつずり本体37を捲れにくくできる。また、一対の側板により、くつずり本体37の強度、剛性を高めることができ、くつずり本体37が凹みにくくなる。
【0012】
本発明の請求項4記載のくつずりの構造は、請求項3に記載のくつずりの構造であって、
前記一対の側板部41の一方よりも他方が短く垂下し、これら一対の側板部41の間には、前記下面27と前記充填剤19との間を埋める詰込み部材43が設けられることを特徴とする。
【0013】
このくつずりの構造では、長短の2つの側板部41で、くつずり本体37の強度、剛性を保つことができる。また、他方の側板部41の垂下長を短くしたので、この側板部41と溝13の底面21との隙間が大きくなり、充填剤19が流れ込みやすくなる。さらに、詰込み部材43が、くつずり本体37の下面27に固定されることにより、くつずり本体37の上面板部の強度が得られ、上面15が凹みにくくなる。また、詰込み部材43が下面27に設けられることにより、くつずり本体37の下面27が実質的に充填剤19の仕上げ面20よりも下がることになり、つまり、充填剤19の流入の際の回り込みが発生せず、充填剤流入時に空隙が発生しにくくなる。
【0014】
本発明の請求項5記載のくつずりの構造は、請求項1~4のいずれか1つに記載のくつずりの構造であって、
前記くつずり本体17,37には、前記下面27から垂下して前記充填剤19に埋入される複数の埋入部45が、前記下面27の長手方向に離間して設けられることを特徴とする。
【0015】
このくつずりの構造では、くつずり本体17,37の下面27から、複数の埋入部45が垂下する。埋入部45は、くつずり本体17,37における下面27の長手方向に離間して複数が設けられる。これにより、下面27と一体となった埋入部45が充填剤19に埋入されることで、くつずり本体17,37と充填剤19との一体化が向上し、くつずり本体37の水平移動方向及び引き抜き方向に対する抗力(強度)が増し、くつずり本体37が捲れにくくなる。
【0016】
本発明の請求項6記載のくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体55と、前記くつずり本体55の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられ前記くつずり本体55が内側に配置される溝13と、前記くつずり本体55の上面15を表出状態で前記溝13に充填される充填剤19と、を有するくつずりの構造であって、
前記溝13の底面21には固定部材23が立設され、
前記くつずり本体55は、前記上面15の一対の長辺のそれぞれから垂下する一対の側板部41を有し、前記一対の側板部41の間には下向きに突出して前記固定部材23に固定される固定用凸部59が設けられ、前記一対の側板部41の間と前記固定用凸部59との間には詰込み部材43が設けられ、前記上面15が前記床面11に対し面一若しくは高く表出して配置され、前記床面11と面一となって前記溝13に充填された前記充填剤19に、前記上面15を除く前記側板部41の側面における少なくとも一部分と、前記固定用凸部59とが埋入されることを特徴とする。
【0017】
このくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13に、くつずり本体55が配置される。溝13は、くつずり本体55の幅長よりも広い幅で形成され、くつずり本体55が内側に配置される。くつずり本体55は、溝13に沿って長尺な帯形状の上面15を表出する。くつずり本体55が配置される溝13には、充填剤19が充填される。溝13の底面21には、充填剤19の充填される前に、固定部材23が立設される。
このくつずりの構造では、くつずり本体55は、上面15の一対の長辺のそれぞれから溝13内に垂下する一対の側板部41を有する。この側板部41は、短い垂下長で形成されているので、側板部41の下方は、充填剤導入部39となり、充填剤19を良好に通過させる。
くつずり本体55の長手方向に直交する方向の板幅は、溝幅よりも狭いので、くつずり本体55が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体55との間に、充填剤充填用開口35が空く。充填剤19は、この充填剤充填用開口35からくつずり本体55の下方に流し込まれる。
くつずり本体55は、一対の側板部41の間に、下向きに突出して固定部材23に固定される固定用凸部59が設けられる。一対の側板部41の間と固定用凸部59との間には詰込み部材43が設けられる。くつずり本体55は、固定用凸部59が、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体55は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体55は、上面15が床面11に対し面一若しくは高く、例えば3mm程度表出して配置される。
充填剤充填用開口35から溝13に充填される充填剤19は、側板部41の下方を通って、くつずり本体55の下面27に設けられた詰込み部材43に接して充填される。つまり、くつずり本体55の下面27と充填剤19とには、空隙が生じない。充填剤19は、床面11と面一となって溝13に充填されることにより、くつずり本体55の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、固定用凸部59とを埋入する。
このくつずりの構造では、くつずり本体55が、溝内に垂下する一対の側板部41を備えるので、充填剤19を、くつずり本体55の下面側へ流し込みやすくできる。くつずり本体55は、下面27へ充填剤19が流入し、固定部材23に固定された固定用凸部59が充填剤19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、充填剤19をくつずり本体55の下面27に隙間無く入れて、くつずり本体55の下面27と充填剤19とを固着することができる。
また、従来構造のようなくつずりを上下反転させてくつずりのみに行う煩雑な充填剤充填作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
さらに、固定用凸部59と詰込み部材43とによって、くつずり本体55の下面には下向きの凹部(へこみ)が形成されないので、充填剤19の流れを妨げにくく、くつずり本体55の下面27と充填剤19との間に、空隙を発生しにくくしながら、くつずり本体55の固定強度を確保することができる。
【0018】
本発明の請求項7記載のくつずりの施工方法は、床面11をはつって溝13を形成するはつり工程と、
前記溝13の底面21に固定部材23を前記溝13の延在方向で所定間隔に設ける固定部設置工程と、
離間した平行な一対の縦枠33の上端同士が上枠で連結される三方枠31における前記縦枠33の下端同士を連結したくつずり本体17を前記溝13に配置する建て込み工程と、
前記くつずり本体17の下面27に設けたアンカー枠部25を前記固定部材23に固定する固定工程と、
前記溝13に充填剤19を充填して前記床面11と面一となる前記充填剤19に、前記上面15を除く前記くつずり本体17の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部25とを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とする。
【0019】
このくつずりの施工方法では、くつずり本体17が、三方枠31における一対の縦枠33の下端同士を連結した状態で設けられる。この三方枠31が取り付けられる例えば建物躯体の開口部には、床面11がはつられることにより、くつずり本体17が配置可能となる溝13が予め設けられる。三方枠31が配置される前に、溝13の底面21には、固定部材23が予め立設される。すなわち、アンカー杭等が底面21から起立するように固定されて設けられる。
三方枠31に取り付けられたくつずり本体17の下面27には、複数のアンカー枠部25が、長手方向に所定の間隔で設けられている。
三方枠31は、くつずり本体17が、溝13の所定位置となるようにして、躯体に固定される。この際、くつずり本体17は、底面21に立設された固定部材23と溶接等により固定される。
三方枠31、くつずり本体17が所定位置に位置決めされて固定された状態で、溝13に充填剤19が充填される。充填剤19は、充填されることにより、くつずり本体17の下面27に密着する位置まで流入する。すなわち、下面27に設けられたアンカー枠部25を埋入する。また、充填剤19は、上面15を除くくつずり本体17の側面における少なくとも一部分も埋入し、床面11と面一となる仕上げ面20が仕上げられる。
このため、くつずりの施工方法では、三方枠31とともにくつずり本体を上下反転させて、くつずり本体に充填剤19を充填していた従来の作業が廃止される。三方枠31は、現場に搬入後に、建て込み工程、固定工程により溝13に設置が完了すれば、充填剤充填工程により充填剤19を充填して仕上げる左官工事のみで、簡素に施工が完結することになる。
【0020】
本発明の請求項8記載のくつずりの施工方法は、床面11をはつって溝13を形成するはつり工程と、
前記溝13の底面21に固定部材23を前記溝13の延在方向で所定間隔に設ける固定部設置工程と、
離間した平行な一対の縦枠33の上端同士が上枠で連結される三方枠31における前記縦枠33の下端同士を連結したくつずり本体37を前記溝13に配置する建て込み工程と、
前記くつずり本体37の下面27に設けたアンカー枠部25を前記固定部材23に固定する固定工程と、
前記溝13に充填剤19を充填して前記床面11と面一となる前記充填剤19に、前記上面15を除く前記くつずり本体37の側面における少なくとも一部分と、前記アンカー枠部25と、前記下面27から垂下する埋入部45とを埋入する充填剤充填工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
このくつずりの施工方法では、上述のくつずりの施工方法と同様の工程を有する。すなわち、はつり工程と、固定部設置工程と、建て込み工程と、固定工程と、充填剤充填工程とを有する。この内、このくつずりの施工方法では、充填剤充填工程において、アンカー枠部25とともに、くつずり本体37の下面27から垂下して固定された埋入部45が、充填剤19に同時に、埋入される。このくつずりの施工方法は、アンカー枠部25に加え、埋入部45が充填剤19に埋入されるので、くつずり本体37をしっかりと充填剤19に固定したくつずりの構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る請求項1記載のくつずりの構造によれば、くつずりのみに行う充填剤充填作業を不要とし、すなわちくつずりを上下反転させて充填剤を充填する煩雑な作業を不要とし、充填剤がくつずりの下面に空隙を発生させずにしっかりと充填されることから、従来のような建具工事と左官工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになり、工期を短縮することができる。
【0023】
本発明に係る請求項2記載のくつずりの構造によれば、くつずり本体の角部がR部となることにより、充填剤仕上げ面から突出する上面がR部を介し、このR部による段部が滑らかとなり、躓きにくくできる。
【0024】
本発明に係る請求項3記載のくつずりの構造によれば、くつずりのみに行う充填剤充填作業を不要とし、すなわちくつずりを上下反転させて充填剤を充填する煩雑な作業を不要とし、充填剤が充填剤導入部を通ってくつずりの下面に接して充填し、この下面に空隙を発生させずにしっかりと充填されることから、従来のような建具工事と左官工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになり、工期を短縮することができる。これに加え、くつずり本体に側板部が設けられることにより、くつずり本体を捲れにくくできる。
【0025】
本発明に係る請求項4記載のくつずりの構造によれば、他方の側板部の垂下長を短くしたので、この側板部と溝の底面との隙間が大きくなり、充填剤の流れ込み(充填)不良を抑制できる。また、詰込み部材によりくつずり本体の強度が高まるとともに、くつずり本体の下面が詰込み部材によって下向きの凹部(へこみ)が形成されないので、充填剤の流れを妨げにくく、くつずり本体下面と充填剤との間に、空隙が発生じにくくなり、くつずり本体が凹み変形など生じることを抑制でき、くつずり本体の固定強度を確保することができる。
【0026】
本発明に係る請求項5記載のくつずりの構造によれば、くつずり本体に固定された埋入部が充填剤に埋め込まれることにより、くつずり本体の捲れを抑制できる。
【0027】
本発明に係る請求項6記載のくつずりの構造によれば、くつずり本体の長辺から垂下する側板部が、短い垂下長で形成されているので、くつずり本体と溝の底面との間に、大きな充填剤充填空間が開口され、充填剤の流れ込みを良好にできる。また、固定用凸部と詰込み部材とによって、くつずり本体の下面には下向きの凹部(へこみ)が形成されないので、充填剤の流れを妨げにくく、くつずり本体の下面と充填剤との間に、空隙を発生しにくくしながら、くつずり本体の固定強度を確保することができる。
【0028】
本発明に係る請求項7記載のくつずりの施工方法によれば、くつずり本体が固定された三方枠を上下ひっくり返して、くつずりのみに充填剤を充填し、充填剤固化後に、再び三方枠を上下ひっくり返して建て込むという従来行われていた作業が不要となる。これにより、左官工事と建具工事とが入り組まず、煩雑さが削減され、施工作業がスムーズになることから、工期を短縮できる。
【0029】
本発明に係る請求項8記載のくつずりの施工方法によれば、埋入部を充填剤に埋入させた捲れにくいくつずりの構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るくつずりの構造を溝の延在方向に直交方向で断面とした断面図である。
【
図3】第1実施形態の変形例1に係るくつずりの構造の要部斜視図である。
【
図4】第1実施形態の変形例2に係るくつずりの構造の要部斜視図である。
【
図5】第1実施形態の変形例3に係るくつずりの構造の要部断面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例4に係るくつずりの構造の要部断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例5に係るくつずりの構造の要部断面図である。
【
図8】第1実施形態の変形例6に係るくつずりの構造の要部断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るくつずりの構造を溝の延在方向に直交方向で断面とした断面図である。
【
図10】第2実施形態の変形例に係るくつずりの構造であって(a)は単体の固定用凸部が固定されたくつずり本体の断面図、(b)は2つの固定用凸部が固定されたくつずり本体の断面図である。
【
図11】第3実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図である。
【
図12】
図11に示したくつずりの構造における溝の延在方向に直交する方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図、
図2は、第1実施形態に係るくつずりの構造を溝13の延在方向に直交方向で断面とした断面図である。
第1実施形態に係るくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体37と、くつずり本体37の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられくつずり本体37が内側に配置される溝13と、くつずり本体37の上面15を表出状態で溝13に充填される充填剤19と、を有する。なお、充填剤19は、モルタルやコンクリート、或いはケミカルアンカー(登録商標)等の接着系アンカー等でもよいが、以下の各実施形態においては、充填剤19は、モルタル19として説明する。
【0032】
溝13の底面21には固定部材23が立設される。固定部材23は、強度を保ち仮固定できる部材、例えば鋼やセラミックなどを素材とした部材であり、例えばアンカー杭や鉄筋とされ、溝13を形成した後に底面21に対して垂直に打ち込まれるなどされて設けられる。
【0033】
本実施の形態において、くつずり本体37は、平滑な上面15の長手方向に沿う一対の長辺のそれぞれから垂下する一対の側板部41を備える。これら側板部41の少なくとも一方にモルタル19を通過させる充填剤導入部39を有する。本実施形態では、一対の側板部41の一方よりも他方が短く垂下して形成される。これにより、他方の側板部41と底面21との間には、充填剤導入部39が確保される。くつずり本体37は、材質としては、例えばスチールやステンレス、アルミニウム等が好適となる。
【0034】
くつずり本体37の下面27には、アンカー枠部25が固定、例えば溶接にて固定される。アンカー枠部25は、例えば鋼製である。鋼材としては、例えばスチールが好適となる。アンカー枠部25は、本実施形態では細幅な板材よりなり、その幅長が、くつずり本体37の長手方向の長さよりも十分に短い短尺な細幅に形成され、上向きに開くコ字状に形成される。そして、アンカー枠部25の対となる上端がくつずり本体37の下面27に固定される。アンカー枠部25は、くつずり本体37の長手方向に互いに離間して、複数個が固定される。各アンカー枠部25の間隔としては、くつずり本体37の長さに応じて設定されるが、例えばくつずり本体37の長さが900mm程度であれば、くつずり本体37の両端から各150mm程の位置と、これらの中間となる位置、すなわち300mm程の間隔となる位置の計3ヶ所に設けられる。
【0035】
このアンカー枠部25は、溝13の底面21に立設された上記の固定部材23に固定される。すなわち、この固定部材23の配置位置も、上記寸法の間隔位置とされる。アンカー枠部25と固定部材23との固定は、例えば溶接や螺合手段(ねじやボルト等)を用いた締結で行うことができる。なお、アンカー枠部25と固定部材23とは、正確な寸法位置でなくてもよく、アンカー枠部25が所定の幅長に形成されることで、その誤差を吸収可能となる。
【0036】
くつずり本体37は、
図2に示すように、固定部材23にアンカー枠部25が固定された状態で、上面15が床面11及びモルタル仕上げ面20に対し面一若しくは高く表出して配置される。本実施形態では、くつずり本体37の上面15が、床面11よりも3mm程度突出する。くつずりの構造では、床面11と面一となって溝13に充填されたモルタル19に、上面15を除く側板部41の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25とが埋入される。従って、くつずり本体37の上面15は、溝13に充填されたモルタル19の仕上げ面20から3mm程度突出する。
【0037】
本実施形態のくつずりの構造は、一対の側板部41の一方よりも他方が短く形成されて垂下し、これら一対の側板部41の間には、下面27とモルタル19との間を埋める詰込み部材43が設けられる。詰込み部材43は、例えば鋼製の板材とすることができる。図では、2枚の板材を重ね、所定の厚みを得るよう構成しているが、短い側板部41の垂下長さに合わせ、この側板部41長さと同等の厚さ若しくはやや長めの厚さで設置する。
【0038】
さらに、本実施形態のくつずりの構造は、くつずり本体37に、下面27から垂下してモルタル19に埋入される複数の埋入部45が、下面27の長手方向に離間して設けられる。埋入部45は、詰込み部材43に溶接固定、或いは螺着固定したボルト或いはねじとすることができる。埋入部45は、ボルトとすることにより、ねじ山がモルタル19に埋入することになり、モルタル19に対する引き抜き強度を高めることができる。
【0039】
第1実施形態に係るくつずりの施工方法は、はつり工程と、固定部設置工程と、建て込み工程と、固定工程と、モルタル充填工程と、含む。
【0040】
はつり工程は、床面11をはつって溝13を形成する。溝13は、くつずり本体37の板幅よりも大きい溝幅で形成される。本実施形態では
図2に示すように、三方枠の縦枠33の幅長よりも大きい溝幅で形成される。溝13は、アンカー枠部25を収容して、くつずり本体37の上面15が床面11と面一若しくは3mm程度突出する深さで形成される。
【0041】
固定部設置工程は、底面21に固定部材23を溝13の延在方向で所定間隔に設ける。各個体部材23の間隔としては、躯体に組み込まれる三方枠31の幅長、すなわち、くつずり本体37の長さに応じて設定されるが、例えばくつずり本体37の長さが900mm程度であれば、くつずり本体37の両端から各150mm程の位置と、これらの中間となる位置、すなわち300mm程の間隔となる各位置、つまりアンカー枠部25の位置にそれぞれ対応する底面21の計3ヶ所に設けられる。固定部材23は、アンカー杭などであり、溝13の底面21に対して略垂直に打ち込むなどで固定される。
【0042】
建て込み工程は、三方枠31を溝13に建て込むことにより行う。三方枠31は、離間した平行な一対の縦枠33の上端同士が上枠(不図示)で連結されている。くつずり本体37は、この三方枠31における縦枠33の下端同士を連結した状態で設けられる。すなわち、三方枠31は、くつずり本体37が設けられることにより、四角枠(四方枠)となっている。建て込み工程は、このくつずり本体37の取り付けられた三方枠31を、くつずり本体37が溝13の所定位置に配置されるようにして建て込まれる。つまり、三方枠31及びくつずり本体37が、位置決めされた所定位置に躯体側へ固定される。
【0043】
固定工程は、くつずり本体37の下面27に設けたアンカー枠部25を、固定部材23に固定する。固定手段としては、溶接である。
なお、予め、くつずり本体37の下面27には、詰込み部材43が固定される。また、詰込み部材43には、埋入部45も固定される。これらの固定は、例えば溶接とすることができる。
【0044】
モルタル充填工程は、モルタル19が、床面11と面一となる仕上げ面20が形成されるように、くつずり本体37が配置された溝13に充填される。モルタル19は、くつずり本体37の上面15を除く、くつずり本体37の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25と、埋入部45とを埋入する。溝13に充填されたモルタル19は、くつずり本体37の下面27に設けられた詰込み部材43に密着した状態で硬化する。所定時間の養生により、モルタル19が固化することにより、モルタル19とくつずり本体37とが一体化し、くつずりの施工が完了する。
【0045】
次に、上記した第1実施形態の作用を説明する。
【0046】
このくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13の内側に、くつずり本体37が配置される。溝13は、くつずり本体37の幅長よりも広い幅とされる。くつずり本体37は、例えば鋼製であり、溝13の溝幅よりも狭い幅で溝13に沿って長尺な矩形帯状の上面15を有する。くつずり本体37が配置される溝13には、モルタル19が充填される。溝13の底面21には、モルタル19の充填される前に、固定部材23が立設される。
【0047】
このくつずりの構造では、くつずり本体37は、上面15の長手方向に沿う一対の長辺のそれぞれから溝内に垂下する一対の側板部41を備える。側板部41は、上面15から直角に折り曲げられるので、角部がR部29となり、躓きにくくなる。一対の側板部41は、少なくとも一方がモルタル19を通過させる充填剤導入部39を下方に有する。
【0048】
くつずり本体37の長手方向に直交する方向の板幅は、溝幅に対し狭いので、くつずり本体37が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体37との間に、モルタル充填用開口35が空く。モルタル19は、このモルタル充填用開口35からくつずり本体37の下方に流し込まれる。
【0049】
くつずり本体37は、上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定される。このアンカー枠部25は、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体37は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体37は、上面15が床面11に対し面一若しくは高く、例えば3mm程度表出して配置される。
【0050】
モルタル充填用開口35から溝13内に充填されるモルタル19は、充填剤導入部39を通って、くつずり本体37の下面27に接して充填される。つまり、くつずり本体37の下面には、モルタル19の流入時に回り込まなければならないような下向きのへこみ(凹部)が無く、くつずり本体37の下面27とモルタル19とには、空隙が生じることなくモルタル19が充填される。モルタル19は、床面11と面一となって仕上げ面20となり、溝13に充填されることにより、くつずり本体37の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25と埋入部45とを埋入する。
【0051】
このくつずりの構造では、くつずり本体37が一対の側板部41を備え、少なくとも一方の側板部41の下方がモルタル19が流れやすい空間となる充填剤導入部39を有するので、モルタル19を、くつずり本体37の下面側へ充填剤導入部39を介して流し込みやすくできる。くつずり本体37は、下面27へモルタル19が流入し、固定部材23に固定されたアンカー枠部25がモルタル19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、モルタル19をくつずり本体37の下面27に隙間無く入れて、空隙を発生させず、くつずり本体37の下面27とモルタル19とを固着することができる。
【0052】
また、従来構造のようなくつずりのみに行うモルタル充填作業、すなわち上下反転させてくつずり内にモルタルを充填させる作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、煩雑さを削減し、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
【0053】
さらに、アンカー枠部25が、くつずり本体37の長手方向に沿う長い長尺な形状ではなく所定個所に離間して配設される構成としたので、モルタル19の流れを妨げず、くつずり本体37の下面27とモルタル19との間に、空隙を発生しにくくしながら、モルタル19に埋まり、くつずり本体37の固定強度を確保することができる。
【0054】
これに加え、くつずり本体37には、上面15の長手方向に沿う一対の長辺のそれぞれから溝13内に垂下する一対の側板部41を備えるので、これら側板部41がモルタル19に埋入されることで、くつずり本体37を捲れにくくできる。また、一対の側板により、くつずり本体37の強度、剛性を高めることができ、くつずり本体37が変形しにくくなる。
【0055】
また、このくつずりの構造では、長短の2つの側板部41で、くつずり本体37の強度、剛性を保つことができる。他方の側板部41の垂下長を短くしたので、この側板部41と溝13の底面21との隙間が大きくなり、モルタル19が流れ込みやすくなる。さらに、詰込み部材43が、くつずり本体37の下面27に設けられることにより、くつずり本体37の強度が得られ、くつずり本体37の捩じれや撓みなどの変形を抑制し、また、上面15が凹みにくくなる。
【0056】
また、詰込み部材43が下面27に設けられることにより、くつずり本体37の下面27が実質的にモルタル19の仕上げ面20よりも下がることになり、モルタル流入時により空隙が発生しにくくなる。つまり、くつずり本体37の下面には、モルタル19の流入時に回り込まなければならないような下向きのへこみ(凹部)が無く、その結果、くつずり本体37の下面27に空隙が生じる等のモルタル19の流れ込み(充填)不良を抑制できる。また、詰込み部材43によりくつずり本体37の強度が高まるとともに、くつずり本体37とモルタル19との間に空隙が生じにくくなるので、くつずり本体37が凹み変形などを起こすことを抑制できる。
【0057】
このくつずりの構造では、くつずり本体37の下面27から、複数の埋入部45が垂下する。埋入部45は、くつずり本体37における下面27の長手方向に離間して複数が設けられる。これにより、下面27と一体となった埋入部45がモルタル19に埋入されることで、くつずり本体37の水平移動方向及び引き抜き方向に対する抗力(強度)が増し、くつずり本体37がより捲れにくくなる。
【0058】
また、第1実施形態に係るくつずりの施工方法では、くつずり本体37が、三方枠31における一対の縦枠33の下端同士を連結した状態で設けられる。この三方枠31が取り付けられる例えば躯体の開口部には、床面11がはつられることにより、くつずり本体37が配置可能となる溝13が予め設けられる。三方枠31が配置される前に、溝13の底面21には、固定部材23が予め立設される。すなわち、アンカー杭が底面21から起立するように固定されて設けられる。
【0059】
三方枠31に取り付けられたくつずり本体37の下面27には、複数のアンカー枠部25が、長手方向に所定の間隔で設けられている。三方枠31は、くつずり本体37が、溝13の所定位置となるようにして、躯体に固定される。この際、くつずり本体37は、底面21に立設された固定部材23と溶接等により固定される。
【0060】
三方枠31、くつずり本体37が所定位置に位置決めされて固定された状態で、溝13にモルタル19が充填される。モルタル19は、充填されることにより、くつずり本体37の下面27に密着する位置まで流入する。すなわち、下面27に設けられたアンカー枠部25と、垂下して固定された埋入部45が、モルタル19に同時に埋入される。また、モルタル19は、上面15を除くくつずり本体37の側面における少なくとも一部分も埋入し、床面11と略面一となって仕上げられる。すなわち、アンカー枠部25に加え、埋入部45がモルタル19に埋入されるので、くつずり本体37をしっかりとモルタル19に固定したくつずりの構造を得ることができる。
【0061】
このため、くつずりの施工方法では、従来、三方枠31を上下反転させて、くつずり本体37にモルタル19を充填していた煩雑な作業が廃止でき、三方枠31は、現場に搬入後、建て込み工程、固定工程により溝13に設置が完了すれば、モルタル充填工程によりモルタル19を充填して仕上げる左官工事のみで、簡素に施工が完結することになる。
【0062】
次に、第1実施形態に係るくつずりの構造の変形例を説明する。
【0063】
図3は、第1実施形態の変形例1に係るくつずりの構造の要部斜視図である。
変形例1に係るくつずりの構造は、充填剤導入部39が、側板部41の下端を含んで切り欠いた切欠47で形成される。つまり、切欠47は、下方に開放した形状、略櫛歯状とされる。切欠47は、例えば矩形状で側板部41の上下方向に渡って形成される。なお、切欠47は、くつずり本体37の上面15にR部29が残る程度に、上面15から若干下がった位置から形成されることが好ましい。切欠47は、くつずり本体37の長手方向に所定間隔で複数形成される。また、一方の側板部41に形成される切欠47と、他方の側板部41に形成される切欠47とは、交互に配置、すなわちくつずり本体37を側方視したときに重ならないよう配置することが好ましい。これにより、モルタル19の充填時におけるモルタル19の流動に支障なくより良好とすることができる。
【0064】
この変形例1によれば、一対の側板部41を設けることで、くつずり本体37の剛性を確保しながら、切欠47によりモルタル19の良好な流入を可能とすることができ、モルタル充填時の空隙の発生をなくすことができる。また、一対の側板部41に形成される切欠47を交互に配置することにより、モルタル19の充填性を良好として、くつずり本体37の下面27にモルタル19を密着させることができる。さらに、一対の側板部41がモルタル19に埋まり、くつずり本体37の固着が両側で行われることとなり、捲れにくくなる。
なお、アンカー枠部25は、一対の側板部41間でくつずり本体37の下面27に固定される。
【0065】
図4は、第1実施形態の変形例2に係るくつずりの構造の要部斜視図である。
変形例2に係るくつずりの構造は、充填剤導入部39が、側板部41を切り欠いた貫通穴49で形成される。貫通穴49は、例えば矩形状で側板部41の上下方向中央部に形成される。貫通穴49は、くつずり本体37の長手方向に所定間隔で形成される。また、一方の側板部41に形成される貫通穴49と、他方の側板部41に形成される貫通穴49とは、交互に配置することが好ましい。
【0066】
この変形例2によれば、一対の側板部41を設けることで、くつずり本体37の剛性を確保しながら、貫通穴49によりモルタル19の流入を可能とすることができる。側板部41は、貫通穴49が上下方向中央に形成されるので、上述したほぼ上下に渡って形成される切欠47に比べ、側板部41の強度の低下を抑制できる。また、一対の側板部41に形成される貫通穴49を交互に配置することにより、モルタル19の充填性を良好として、くつずり本体37の下面27にモルタル19をしっかり密着させることができる。さらに、一対の側板部41がモルタル19に埋まり、くつずり本体37の固着が両側で行われることとなり、捲れにくくなる。
なお、この変形例2では、貫通穴49の上縁とくつずり本体37の下面27とに段差が生じる場合に、この段差を解消するために上述した実施形態の詰込み部材43と同様の部材を配置し固定することとすれば、モルタル19の流入をより良好とし、空隙の発生を防ぐことが可能となる。また、アンカー枠部25は、上記同様に、一対の側板部41間でくつずり本体37の下面27に固定される。
【0067】
図5は、第1実施形態の変形例3に係るくつずりの構造の要部断面図である。
変形例3に係るくつずりの構造は、一対の側板部41の一方よりも他方が短く垂下し、この短い他方の側板部41が180°折り返され、所謂ヘミング曲げとされて、折り返し部51となって下面27に重ねられる。くつずり本体37は、一方の側板部41と、この折り返し部51との間の下面27に、鋼製の詰込み部材43が固定される。この詰込み部材43は、例えば、折り返し部51と同一の厚みを有した鋼板等とされる。
【0068】
この変形例3によれば、くつずり本体37の剛性を保ちながら上面15側の厚みを小さく構成でき、且つ詰込み部材43にてさらに剛性を向上させ、より凹み変形を起こしにくくなる。また、側板部41が折り返し部51となることにより、モルタル19をくつずり本体37の下面27へより流入させやすくできる。
【0069】
図6は、第1実施形態の変形例4に係るくつずりの構造の要部断面図である。
変形例4に係るくつずりの構造は、一対の側板部41の一方よりも他方が短い長さで垂下する。くつずり本体37は、一方の側板部41と、この短い側板部41との間の下面27に、下側に凸曲面53を有する詰込み部材43が固定されている。詰込み部材43は、例えば鋼製であるが、素材は限定せず、好ましくは上面が平滑でくつずり本体下面27に密着し、下面が凸曲面53とされて中実であり、短い側板部41側の一側が垂下長と同一の厚みで端部が形成される。
【0070】
この変形例4によれば、詰込み部材43が下向き凸曲面53を有するので、モルタル19の充填時に、詰込み部材43とモルタル19との間に、空隙がより生じにくくなる。すなわち、くつずり本体37の下面に、モルタル19の流入時に回り込まなければならないような下向きのへこみ(凹部)が無く、その結果、くつずり本体37の下面27に空隙が生じる等のモルタル19の流れ込み(充填)不良を抑制できる。また、くつずり本体37を厚みのある構成とすることができるので、くつずり本体37の剛性を高め、より凹み変形を起こしにくくすることができる。
【0071】
図7は、第1実施形態の変形例5に係るくつずりの構造の要部断面図である。
変形例5に係るくつずりの構造は、一対の側板部41の一方よりも他方が短い長さで垂下する。くつずり本体37は、一方の側板部41と、この短い側板部41との間の下面27に、平板状に形成された詰込み部材43が固定される。詰込み部材43は、例えば鋼製とされ、複数枚の板材よりなり、短い側板部41の長さに対応する厚みに積層されて溶接などにて固定される。この詰込み部材43の下面には、逆L字形状のアングル材からなる埋入部45が固定される。この埋入部45は、基部となる上端が詰込み部材43に溶接などで固定される。埋入部45は、例えば幅長の小さい短冊状に形成され、好ましくはくつずり本体37の長手方向に所定間隔で複数設けられる。
【0072】
この変形例5によれば、詰込み部材43が下面27に設けられているので、モルタル19の充填時に、詰込み部材43とモルタル19との間に、空隙がより生じにくくなる。また、くつずり本体37の上面15の厚みが厚くなるので、くつずり本体37をより凹み変形を起こしにくくすることができる。これに加え、詰込み部材43の下面27に固定された埋入部45が、モルタル19に埋入されるので、モルタル19との一体化が向上し、くつずり本体37を捲れにくくできる。
【0073】
図8は、第1実施形態の変形例6に係るくつずりの構造の要部断面図である。
変形例6に係るくつずりの構造は、上記変形例5と同様に、一対の側板部41の一方よりも他方が短い長さで垂下する。また、くつずり本体37は、一方の側板部41と、この短い側板部41との間の下面27に、平板状に形成された詰込み部材43が固定されている。この詰込み部材43の下面には、コ字形或いはC字形のアングル材からなる埋入部45が固定される。この埋入部45は、基部となる上端が詰込み部材43に溶接などで固定される。埋入部45は、例えば幅長の小さい短冊状に形成され、好ましくはくつずり本体37の長手方向に所定間隔で複数設けられる。
【0074】
この変形例6によれば、詰込み部材43により、くつずり本体37の上面15の厚みが厚くなるので、くつずり本体37をより凹み変形を起こしにくくすることができる。これに加え、詰込み部材43の下面27に固定されたC形の埋入部45がモルタル19に埋入され、この埋入部45の下端となる先端46が屈曲していることから、くつずり本体37の引き抜き方向に対する抗力(強度)が増し、くつずり本体37をより捲れにくくできる。
【0075】
次に、第2実施形態を説明する。
【0076】
図9は、第2実施形態に係るくつずりの構造を溝13の延在方向に直交方向で断面とした断面図である。なお、第2実施形態において、
図1~
図8に示した部材及び部位と同一または同等の部材及び部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第2実施形態に係るくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体55と、くつずり本体55の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられくつずり本体55が内側に配置される溝13と、くつずり本体55の上面15を表出状態で溝13に充填されるモルタル19と、を有する
【0077】
溝13の底面21には固定部材23が立設される。固定部材23は、例えばアンカー杭や鉄筋とされ、溝13を形成した後に底面21に対して垂直に打ち込まれるなどされて設けられる。
【0078】
くつずり本体55は、例えば鋼製とされ、上面15の一対の長辺のそれぞれから垂下する一対の側板部41を有する。各側板部41は、垂下方向の長さが十分に短い垂下長で形成されている。この側板部41は、
図9に示すように上面15に対して直交する垂下方向へ折曲形成される例の他、例えば180°折り返され、所謂ヘミング曲げとされて、
図10(b)に示すような折り返し代の短い折り返し部51となる構成としてもよい。つまり、上面15の縁部を肉厚構造とした補強縁部となる。
【0079】
一対の側板部41の間には、下向きに突出する固定用凸部59が設けられる。この固定用凸部59は固定部材23に固定される。固定用凸部59は、例えばL字形や山形のアングル材を用いて構成することができる。なお、この固定用凸部59とくつずり本体55との間には、平板状の詰込み部材43が挟入されてもよい。
【0080】
本実施形態において、固定用凸部59は、
図9に示すように、一対のアングル材のそれぞれ一方の縦片部を背合わせしてT字形に固定される構造とされる。T字形の固定用凸部59は、水平な一対の上片部61が詰込み部材43に固定される。したがって、背合わせされた一対の縦片部が、固定用凸部59となってくつずり本体55の幅方向中央から垂下する。また一対の上片部61による幅長は、一対の側板部41の間隔長さに設定され、詰込み部材43とともに、この側板部41間を埋める。この固定用凸部59は、固定部材23に溶接固定される。本実施形態では、一対の側板部41が短く垂下して形成される。これにより側板部41と底面21との間には、大きく開口する充填剤導入部39が、固定用凸部59の両側に確保される。
【0081】
図10(a)は単体の固定用凸部59が固定されたくつずり本体55の断面図、(b)は2つの固定用凸部59が固定されたくつずり本体55の断面図である。
なお、L型或いは山形の固定用凸部59は、
図10(a)に示すように、1つのアングル材であってもよい。この場合、上片部61が詰込み部材43を兼ねる構成としてもよく、固定用凸部59と側板部41との間の下面27には詰込み部材43が設けられる。
また、くつずり本体55は、
図10(b)に示すように、一対の側板部41が180°折り返され、所謂ヘミング曲げされて、下面27に重ねられてもよい。このくつずり本体55は、この一対の折り返し部51の間で、下面27に、上記
図9の形状のT字形の固定用凸部59が固定される。この場合、くつずり本体55は、詰込み部材43が省略されてもよい。
【0082】
このくつずりの構造では、床面11と面一となって溝13に充填されたモルタル19に、くつずり本体55の上面15を除く側板部41の側面における少なくとも一部分と、固定用凸部59とが埋入される。
【0083】
次に、上記した第2実施形態の作用を説明する。
【0084】
このくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13に、くつずり本体55が配置される。くつずり本体55は、溝13の溝幅よりも狭い幅で溝13に沿って長い矩形状の上面15を有する。くつずり本体55が配置される溝13には、モルタル19が充填される。溝13の底面21には、モルタル19の充填される前に、固定部材23が立設される。
【0085】
このくつずりの構造では、くつずり本体55が、上面15の一対の長辺のそれぞれから垂下する一対の側板部41を有する。この側板部41は、垂下方向の距離が十分に小さいので、側板部41の下方は、充填剤導入部39となり、モルタル19を良好に通過させる。
【0086】
くつずり本体55の長手方向に直交する方向の板幅は、溝幅よりも狭いので、くつずり本体55が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体55との間に、モルタル充填用開口35が空く。モルタル19は、このモルタル充填用開口35からくつずり本体55の下方に流し込まれる。
【0087】
くつずり本体55は、一対の側板部41の間に、下向きに突出して固定部材23に固定される固定用凸部59が設けられる。一対の側板部41の間と固定用凸部59との間には詰込み部材43が設けられる。くつずり本体55は、固定用凸部59が、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体55は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体55は、上面15が床面11及び仕上げ面20に対し面一若しくは高く、例えば3mm程度表出して配置される。
【0088】
モルタル充填用開口35から溝13に充填されるモルタル19は、側板部41の下方を通って、くつずり本体55の下面27に設けられた詰込み部材43に接して充填される。つまり、くつずり本体55の下面27とモルタル19とには、空隙が生じない。モルタル19は、床面11と面一となって溝13に充填されることにより、くつずり本体55の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、固定用凸部59とを埋入する。
【0089】
このくつずりの構造では、くつずり本体55が、溝13内に垂下する一対の側板部41を備えるとともに、この側板部41間に詰込み部材43と上片部61とが設けられるので、くつずり本体55の下面には、モルタル19の流入時に回り込まなければならないような下向きのへこみ(凹部)が無く、その結果、くつずり本体55の下面に空隙が生じる等のモルタル19の流れ込み(充填)不良を抑制できる。つまり、モルタル19を、くつずり本体55の下面側へ流し込みやすくできる。くつずり本体55は、下面27へモルタル19が流入し、固定部材23に固定された固定用凸部59がモルタル19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、モルタル19をくつずり本体55の下面27に隙間無く流入させて、くつずり本体55の下面27とモルタル19とを固着することができる。
【0090】
また、従来構造のようなくつずりのみに行うモルタル充填作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
【0091】
さらに、固定用凸部59が、くつずり本体17の下面に1枚構造で突出するので、くつずり本体55の両側からモルタル19を流入させる場合に、モルタル19の流れを妨げることがなく、くつずり本体55の下面27とモルタル19との間に、空隙を発生しにくくしながら、固定用凸部59を埋入し、くつずり本体55の固定強度を確保することができる。また、くつずり本体55の長辺から垂下する側板部41が、略板厚と同程度の距離に短縮されているので、くつずり本体55と溝13の底面21との間に、大きなモルタル充填空間が開口され、モルタル19の流れ込みを良好にできる。
【0092】
次に、第3実施形態を説明する。
図11は、第3実施形態に係るくつずりの構造を表す斜視図、
図12は、
図11に示したくつずりの構造における溝の延在方向に直交する方向の断面図である。なお、第3実施形態において、
図1~
図10に示した部材及び部位と同一または同等の部材及び部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0093】
第3実施形態に係るくつずりの構造は、長尺な帯形状の上面15を有するくつずり本体17と、くつずり本体17の幅長よりも広い幅で床面11をはつって設けられくつずり本体17が内側に配置される溝13と、くつずり本体17の上面15を表出状態で溝13に充填されるモルタル19と、を有する。溝13の底面21には固定部材23が立設される。
【0094】
第3実施形態に係るくつずりの構造において、くつずり本体17は、平板状に形成される。すなわち、上述して各実施形態で示した側板部41が無い。くつずり本体17は、材質としては、例えばスチールやステンレス、アルミニウム等が好適となる。
くつずり本体17は、上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定される。アンカー枠部25は、例えば鋼製である。鋼材としては、例えばスチールが好適となる。アンカー枠部25は、くつずり本体17の長手方向に直交してくつずり本体17に設けられる。アンカー枠部25は、細幅な短冊板状の部材を折曲して構成され、その幅長は、くつずり本体17の長手方向の長さよりも十分に短い短尺な細幅に形成され、くつずり本体17の長手方向に互いに離間して、複数個が固定される。各アンカー枠部25の間隔としては、くつずり本体17の長さに応じて設定されるが、例えばくつずり本体17が900mm程度であれば、くつずり本体17の両端から各150mm程の位置と、これらの中間となる位置、すなわち300mm程の間隔となる位置の3ヶ所に設けられる。このアンカー枠部25は、溝13の底面21に立設された固定部材23に固定される。すなわち、この固定部材23の配置位置も、上記寸法の間隔位置とされる。アンカー枠部25と固定部材23との固定は、例えば溶接や螺合手段(ねじやボルト等)を用いた締結で行うことができる。
【0095】
第3実施形態のくつずりの構造は、くつずり本体17の上面15が床面11に対し面一若しくは高く表出して配置される。このくつずりの構造では、床面11と面一となって溝13に充填されたモルタル19に上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25とが埋入される。
【0096】
くつずり本体17は、板厚方向の側面と上面15とが交わる角部が面取りされたR部29を有することが好ましい。くつずり本体17の床面11からの突出高さは、3mm程度なる。従って、R部29は、半径3mm程度とすることができる。
【0097】
第3実施形態に係るくつずりの施工方法は、はつり工程と、固定部設置工程と、建て込み工程と、固定工程と、モルタル充填工程と、含み、第1,第2実施形態に係るくつずりの施工方法とほぼ同一である。
【0098】
はつり工程は、床面11をはつって溝13を形成する。溝13は、くつずり本体17の板幅よりも大きい溝幅、好ましくは
図12に示すように、三方枠を構成する縦枠33の幅長よりも大きい溝幅とされる。溝13は、アンカー枠部25を収容して、くつずり本体17の上面15が床面11と面一若しくは3mm程度突出する深さで形成される。
【0099】
固定部設置工程は、底面21に固定部材23を溝13の延在方向で所定間隔、例えば300mm間隔等、くつずり本体17の長さに応じ、且つアンカー枠部25の配置位置に対応させて設ける。
【0100】
建て込み工程は、三方枠を溝13に建て込むことにより行う。三方枠は、離間した平行な一対の縦枠33の上端同士が上枠(不図示)で連結されている。くつずり本体17は、この三方枠における縦枠33の下端同士を連結した状態で設けられる。すなわち、三方枠は、くつずり本体17が設けられることにより、四角枠(四方枠)となっている。建て込み工程は、このくつずり本体17の取り付けられた三方枠を、くつずり本体17が溝13の所定位置に配置されるようにして建て込まれる。つまり、三方枠及びくつずり本体17が、位置決めされた所定位置に建て込まれて、躯体側に固定される。
【0101】
固定工程は、くつずり本体17の下面27に設けたアンカー枠部25を、固定部材23に固定する。固定手段は、例えば溶接である。
【0102】
モルタル充填工程は、モルタル19が、床面11と面一となる仕上げ面20が形成されるように、くつずり本体17が配置された溝13に充填される。モルタル19は、くつずり本体17の上面15を除く、くつずり本体17の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25、埋入部45とを埋入する。溝13に充填されたモルタル19は、くつずり本体17の下面27に密着した状態で硬化させる。所定時間の養生により、モルタル19が固化することにより、モルタル19とくつずり本体17とが一体化し、くつずりの施工が完了する。
【0103】
次に、上記した第3実施形態の作用を説明する。
【0104】
この第3実施形態に係るくつずりの構造では、床面11をはつって形成した溝13に、くつずり本体17が配置される。溝13は、くつずり本体17の幅長よりも広い幅とされる。くつずり本体17は、材質としては、例えばスチールやステンレス、アルミニウム等であり、溝13の溝幅よりも狭い幅で溝13に沿って長尺な矩形帯状の上面15を有する。くつずり本体17が配置される溝13には、モルタル19が充填される。溝13の底面21には、モルタル19の充填される前に、固定部材23が立設される。
【0105】
くつずり本体17の長手方向に直交する方向の板幅は、溝13の溝幅よりも狭いので、くつずり本体17が配置された溝13には、溝開口とくつずり本体17との間に、モルタル充填用開口35が空く。モルタル19は、くつずり本体17の両側のモルタル充填用開口35からくつずり本体17の下方に流し込まれる。
【0106】
くつずり本体17は、上向きに開くコ字状のアンカー枠部25が下面27に固定される。このアンカー枠部25は、底面21に立設された固定部材23に、溶接等により固定される。従って、くつずり本体17は、この状態で、溝13及び床面11との相対位置が定まって位置決めされる。位置決めされたくつずり本体17は、上面15が床面11に対し面一若しくは高く(例えば3mm程度)表出して配置される。
【0107】
モルタル充填用開口35から溝13に充填されるモルタル19は、充填剤導入部39を通って、くつずり本体17の下面27に接して充填される。つまり、くつずり本体17の下面には、モルタル19の流入時に回り込まなければならないような下向きのへこみ(凹部)が無く、平滑なくつずり本体17の下面27とモルタル19とには、空隙が生じることなくモルタル19が充填される。モルタル19は、床面11と面一となって仕上げ面20となり、溝13に充填されることにより、くつずり本体17の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分と、アンカー枠部25と埋入部45とを埋入する。
【0108】
このくつずりの構造では、くつずり本体17が平板状であるので、モルタル19を、くつずり本体17の下面側へスムーズに流し込みやすくできる。くつずり本体17は、下面27へモルタル19が流入し、固定部材23に固定されたアンカー枠部25と埋入部45とがモルタル19に埋設されるので、躯体にしっかり高強度で固定される。これにより、モルタル19をくつずり本体17の下面27に隙間無く入れて、くつずり本体17の下面27とモルタル19とを固着することができる。
【0109】
また、従来構造のようなくつずりのみに行うモルタル充填作業を不要にできる。そのため、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになるので、工期の短縮が可能となる。
【0110】
さらに、アンカー枠部25が、くつずり本体17の長手方向に所定個所に離間して複数設けられるので、モルタル19の流れを妨げにくく、くつずり本体17の下面27とモルタル19との間に、空隙を発生しにくくしながら、くつずり本体17の固定強度を確保することができる。
【0111】
このくつずりの構造では、平板状のくつずり本体17が、床面11をはつって形成した溝13に配置される。溝13には、床面11と面一となってモルタル19が充填される。モルタル19は、くつずり本体17の上面15を除く板厚方向の側面における少なくとも一部分を埋入する。このため、くつずり本体17は、上面15がモルタル19の仕上げ面20と面一とならずに、くつずり本体17の板厚方向の側面と上面15とが交わる角部が、段差となってモルタル19の仕上げ面20から上方へ突出する。この角部による段差は、例えば3mm程度のものとなるが、重量の大きい什器等が通過する際には、衝接することになる。この場合、くつずり本体17に捲れを生じさせることがある。くつずりの構造では、この角部が面取りによりR部29となることで、衝接時にくつずり本体17に作用する外力を緩和でき、くつずり本体17の捲れ等を抑制できる。また、歩行者が通過する際に引っ掛かりにくくなる。その結果、くつずり本体17は、モルタル仕上げ面20から突出する上面15がR部29を介し、このR部29による段部が滑らかとなり、躓きにくくできる。
【0112】
また、第3実施形態に係るくつずりの施工方法では、くつずり本体17が、三方枠における一対の縦枠33の下端同士を連結した状態で設けられる。この三方枠が取り付けられる例えば躯体の開口部には、床面11がはつられることにより、くつずり本体17が配置可能となる溝13が予め設けられる。三方枠が配置される前に、溝13の底面21には、固定部材23が予め立設される。すなわち、アンカー杭等が底面21から起立するように固定されて設けられる。
【0113】
三方枠に取り付けられたくつずり本体17の下面27には、複数のアンカー枠部25が、長手方向に所定の間隔で設けられている。三方枠は、くつずり本体17が、溝13の所定位置となるようにして、躯体に固定される。この際、くつずり本体17は、底面21に立設された固定部材23と溶接等により固定される。
【0114】
三方枠、くつずり本体17が所定位置に位置決めされて固定された状態で、溝13にモルタル19が充填される。モルタル19は、充填されることにより、くつずり本体17の下面27に密着する位置まで流入する。すなわち、下面27に設けられたアンカー枠部25と埋入部45とを埋入する。また、モルタル19は、上面15を除くくつずり本体17の側面における少なくとも一部分も埋入し、床面11と略面一となって仕上げられる。
【0115】
このため、くつずりの施工方法では、従来、三方枠を上下反転させて、くつずり本体にモルタル19を充填していた煩雑な作業が廃止でき。三方枠は、現場に搬入後、建て込み工程、固定工程により溝13に設置が完了すれば、モルタル充填工程によりモルタル19を充填して仕上げる左官工事のみで、簡素に施工が完結することになる。
【0116】
従って、本実施形態に係るくつずりの構造によれば、くつずりを上下反転させくつずりのみに行うモルタル充填作業を不要とし、工期を短縮することができる。
【0117】
また、本実施形態に係るくつずりの施工方法によれば、くつずり本体17(37,55)が固定された三方枠を上下ひっくり返して、くつずりのみにモルタル19を充填し、モルタル固化後に、再び三方枠を上下ひっくり返して建て込む煩雑な作業が不要となる。これにより、左官工事と建具工事とが入り組まず、施工作業がスムーズになることから、工期を短縮できる。
【符号の説明】
【0118】
11…床面
13…溝
15…上面
17,37,55…くつずり本体
19…充填剤(モルタル)
21…底面
23…固定部材
25…アンカー枠部
27…下面
29…R部
33…縦枠
39…充填剤導入部
41…側板部
43…詰込み部材
45…埋入部
59…固定用凸部