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特開2023-147403プロセスユニットおよび画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147403
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】プロセスユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20231005BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03G21/18 121
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054874
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】西山 武志
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2H171FA02
2H171FA03
2H171FA09
2H171FA11
2H171GA03
2H171GA13
2H171JA23
2H171JA27
2H171JA48
2H171JA52
2H171KA11
2H171KA23
2H171KA24
2H171KA25
2H171QA02
2H171QA08
2H171QA11
2H171QB03
2H200GA23
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200LA07
2H200LA24
2H200LA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構造で感光体ドラムに対して帯電ローラを離接できるプロセスユニットを提供する。
【解決手段】プロセスユニット60は、感光体ドラム36、帯電ローラおよびカム部材80を備える。カム部材は、帯電ローラの軸部68aに外嵌めされる装着部と、装着部の外側面よりも外方に突出する当接部84とを備える。そして、カム部材の当接部をドラム本体36aの外側面に当接させることで帯電ローラを離間状態に保持し、感光体ドラムの正回転に伴ってカム部材を従動回転させることでドラム本体に対する当接部の当接を解除して、帯電ローラを当接状態に切り替える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと前記感光体ドラムを帯電させる帯電ローラとを備えるプロセスユニットであって、
前記感光体ドラムのドラム本体の長手方向範囲内に収まる位置において、前記帯電ローラの軸部の両端部のそれぞれに回転可能に設けられたカム部材を備え、
前記帯電ローラは、前記感光体ドラムから離間する離間状態と当該感光体ドラムに当接する当接状態とに切り替え可能に設けられ、
前記カム部材は、
前記帯電ローラの軸部に外嵌めされる円環状の装着部、および
前記装着部の外側面よりも外方に突出する当接部を備え、
前記カム部材の前記当接部を前記ドラム本体の外側面に当接させることで前記帯電ローラを前記離間状態に保持すると共に、前記感光体ドラムの正回転に伴い、前記ドラム本体と前記当接部との摩擦力によって前記カム部材を正方向に従動回転させることで前記ドラム本体に対する前記当接部の当接を解除して、前記帯電ローラを前記離間状態から前記当接状態に切り替える、プロセスユニット。
【請求項2】
前記当接部の前記ドラム本体に対する当接面は、前記カム部材の他の部分よりも摩擦係数が大きい、請求項1記載のプロセスユニット。
【請求項3】
前記当接部の前記当接面は、弾性部材によって形成されている、請求項2記載のプロセスユニット。
【請求項4】
前記当接部は、前記帯電ローラの離接方向に弾性変形可能な板ばね形状を有しており、前記ドラム本体を前記帯電ローラから離れる方向に付勢する、請求項1から3のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項5】
前記カム部材は、当該カム部材を手動で回転させるための把持部を有する、請求項1から4のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項6】
前記カム部材は、前記帯電ローラが前記離間状態にあるときの当該カム部材の逆回転と、前記帯電ローラが前記当接状態にあるときの当該カム部材の正回転とを規制する第1規制部を有する、請求項1から5のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項7】
前記カム部材は、前記帯電ローラが前記当接状態にあるときの当該カム部材の逆回転を規制する第2規制部を有する、請求項1から6のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項8】
前記帯電ローラに対して離接可能に設けられるクリーニングローラを備え、
前記カム部材は、前記当接部と反対側の位置において前記装着部の外側面よりも外方に突出するように形成され、前記帯電ローラと前記クリーニングローラとを離接可能な第2の当接部を有する、請求項1から7のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項9】
前記帯電ローラが正回転したときには当該帯電ローラの回転を前記カム部材に伝達せず、前記帯電ローラが逆回転したときには当該帯電ローラの回転を前記カム部材に伝達しないワンウェイクラッチを備え、
前記帯電ローラが前記当接状態にあるとき、前記感光体ドラムを逆回転させることによって前記帯電ローラおよび前記カム部材を逆回転させて前記カム部材の前記当接部を前記ドラム本体の外側面に当接させることで、前記帯電ローラを前記当接状態から前記離間状態に切り替え可能である、請求項1から8のいずれかに記載のプロセスユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のプロセスユニットを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し、特にたとえば、感光体ドラムと感光体ドラムを帯電させる帯電ローラとを備える、プロセスユニットおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロセスユニット(感光体ユニット)の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のプロセスユニットは、感光体(感光体ドラム)と、感光体を帯電するための帯電ローラと、帯電ローラを感光体に向かう方向に付勢する第1の付勢手段とを備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられる。また、このプロセスユニットは、画像形成装置本体から入力された駆動力によって回転する回転部材と、離間部材と、離間部材が離間位置に位置している状態で離間部材を押圧して支持する支持部材と、支持部材を離間部材の回動軸線に向かう方向に付勢する第2の付勢手段とをさらに備える。離間部材は、回転部材に係合して回転部材から駆動力を受ける係合部を有し、かつ、係合部が回転部材に係合した状態で感光体と帯電ローラとを離間させた離間状態を保持する離間位置と、感光体と帯電ローラとの離間状態を解除して感光体と帯電ローラとを接触可能とする解除位置との間で回動可能であって、離間状態を解除するときに、第1の付勢手段によって帯電ローラの感光体に向かう方向への移動に伴って感光体に向かう方向に移動する。また、離間部材は、回転部材から駆動力を受けて離間部材が離間位置から解除位置に向かって回動する間に、回動軸線と、第2の付勢手段によって付勢されながら離間部材を押圧する支持部材との直線距離が増加するような形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-133776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、帯電ローラの軸に取り付けた離間部材と感光体ドラムの軸との双方に設けたギア(ギア歯)を用いて感光体ドラムと帯電ローラとを離接させるので、構造が複雑となり、コストも上がる。また、感光体ドラムのドラム本体の両側にギアを設けるための空間を確保する必要があるので、プロセスユニットが長手方向に大きくなってしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、プロセスユニットおよび画像形成装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、簡単な構造で、感光体ドラムに対して帯電ローラを離接できる、プロセスユニットおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、感光体ドラムと感光体ドラムを帯電させる帯電ローラとを備えるプロセスユニットであって、感光体ドラムのドラム本体の長手方向範囲内に収まる位置において、帯電ローラの軸部の両端部のそれぞれに回転可能に設けられたカム部材を備え、帯電ローラは、感光体ドラムから離間する離間状態と当該感光体ドラムに当接する当接状態とに切り替え可能に設けられ、カム部材は、帯電ローラの軸部に外嵌めされる円環状の装着部、および装着部の外側面よりも外方に突出する当接部を備え、カム部材の当接部をドラム本体の外側面に当接させることで帯電ローラを離間状態に保持すると共に、感光体ドラムの正回転に伴い、ドラム本体と当接部との摩擦力によってカム部材を正方向に従動回転させることでドラム本体に対する当接部の当接を解除して、帯電ローラを離間状態から当接状態に切り替える、プロセスユニットである。
【0008】
第1の発明によれば、帯電ローラの軸部にカム部材を設けるという簡単な構成で、感光体ドラムに対して帯電ローラを適切に離接できる。また、カム部材を感光体ドラムのドラム本体の長手方向範囲内に収まる位置に設けたので、プロセスユニットが長手方向に大型化することを防止できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に従属し、当接部のドラム本体に対する当接面は、カム部材の他の部分よりも摩擦係数が大きい。
【0010】
第2の発明によれば、帯電ローラが離間状態にあるときに、感光体ドラムの回転に伴ってカム部材をより確実に回転させることができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明に従属し、当接部の当接面は、弾性部材によって形成されている。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に従属し、当接部は、帯電ローラの離接方向に弾性変形可能な板ばね形状を有しており、ドラム本体を帯電ローラから離れる方向に付勢する。
【0013】
第4の発明によれば、仮にプロセスユニットに振動や衝撃が加わっても、その弾性によって振動等を吸収することができる。したがって、帯電ローラが離間状態にあるときに、カム部材の当接部がドラム本体に当接した状態を適切に保持できる。
【0014】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、カム部材は、当該カム部材を手動で回転させるための把持部を有する。
【0015】
第5の発明によれば、カム部材を手動で容易に回転させることができ、帯電ローラを離間状態と当接状態とに容易に切り替えることができる。
【0016】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に従属し、カム部材は、帯電ローラが離間状態にあるときの当該カム部材の逆回転と、帯電ローラが当接状態にあるときの当該カム部材の正回転とを規制する第1規制部を有する。
【0017】
第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明に従属し、カム部材は、帯電ローラが当接状態にあるときの当該カム部材の逆回転を規制する第2規制部を有する。
【0018】
第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明に従属し、帯電ローラに対して離接可能に設けられるクリーニングローラを備え、カム部材は、当接部と反対側の位置において装着部の外側面よりも外方に突出するように形成され、帯電ローラとクリーニングローラとを離接可能な第2の当接部を有する。
【0019】
第8の発明によれば、感光体ドラムに対して帯電ローラを離接させるのと同時に、帯電ローラに対してクリーニングローラを離接させることができる。
【0020】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明に従属し、帯電ローラが正回転したときには当該帯電ローラの回転をカム部材に伝達せず、帯電ローラが逆回転したときには当該帯電ローラの回転をカム部材に伝達しないワンウェイクラッチを備え、帯電ローラが当接状態にあるとき、感光体ドラムを逆回転させることによって帯電ローラおよびカム部材を逆回転させてカム部材の当接部をドラム本体の外側面に当接させることで、帯電ローラを当接状態から離間状態に切り替え可能である。
【0021】
第9の発明によれば、感光体ドラムを逆回転させることで、帯電ローラを当接状態から離間状態に自動で切り替えることができる。
【0022】
第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明に係るプロセスユニットを備える、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、帯電ローラの軸部にカム部材を設けるという簡単な構成で、感光体ドラムに対して帯電ローラを適切に離接できる。また、カム部材を感光体ドラムのドラム本体の長手方向範囲内に収まる位置に設けたので、プロセスユニットが長手方向に大型化することを防止できる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の第1実施例のプロセスユニットを備える画像形成装置の内部構造を概略的に示す図である。
図2】プロセスユニットを示す側面図である。
図3】プロセスユニットを示す底面図である。
図4】プロセスユニットを示す断面図である。
図5】プロセスユニットのカム部材周辺部を示す図である。
図6】カム部材を示す斜視図である。
図7】カム部材を示す正面図である。
図8】カム部材を示す側面図である。
図9】帯電ローラが離間状態にあるときのカム部材周辺部を示す断面図である。
図10】帯電ローラが当接状態にあるときのカム部材周辺部を示す断面図である。
図11】この発明の第2実施例のプロセスユニットのカム部材周辺部を示す断面図である。
図12】この発明の第3実施例のプロセスユニットのカム部材周辺部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施例]
図1を参照して、この発明の第1実施例であるプロセスユニット60は、感光体ドラム36、クリーニングユニット38および帯電ユニット40などを一体化したものであり、画像形成装置10の装置本体12に対して着脱可能に設けられる。詳細は後述するように、プロセスユニット60は、カム部材80を備えており、帯電ユニット40が備える帯電ローラ68は、このカム部材80によって感光体ドラム36から離間する離間状態を保持可能である。
【0027】
なお、この明細書では、画像形成装置10を操作するユーザの立ち位置に対向する面、つまり図示しない操作ユニットが設けられる側の面を前面(正面)として画像形成装置10およびその構成部材の前後方向(奥行方向)を規定する。なお、操作ユニットは、図1の紙面の手前側に設けられている。また、画像形成装置10およびその構成部材の左右方向(横方向)は、前面側から画像形成装置10を見た状態を基準として規定する。
【0028】
先ず、画像形成装置10の構成について概略的に説明する。図1に示すように、画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有するモノクロ複合機であって、電子写真方式によって用紙(記録媒体)に対して単色の画像を形成する。画像形成装置10は、装置本体12およびその上方に配置される画像読取装置14を含む。
【0029】
画像読取装置14は、透明材によって形成される原稿載置台16を備える。原稿載置台16の上方には、ヒンジ等を介して原稿押えカバー18が開閉自在に取り付けられる。この原稿押えカバー18には、原稿載置トレイ20に載置された原稿を画像読取位置22に対して1枚ずつ自動的に給紙するADF24(自動原稿送り装置)が設けられる。また、原稿載置台16の前面側には、ユーザによる印刷開始指示などの入力操作を受け付ける操作ユニットが設けられる。操作ユニットには、タッチパネル付きのディスプレイおよび各種の操作ボタン等が設けられる。
【0030】
また、画像読取装置14には、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える画像読取部26が内蔵される。画像読取部26は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等が用いられる。
【0031】
装置本体12内には、CPUおよびメモリ等を含む制御部(図示せず)、および画像形成部30などが設けられる。制御部は、操作ユニットへの入力操作などに応じて、画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。
【0032】
画像形成部30は、露光ユニット32、現像ユニット34、感光体ドラム36、クリーニングユニット38、帯電ユニット40、転写ローラ42、定着ユニット44およびトナー補給装置46等を備え、給紙トレイ48等から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排紙トレイ50に排出する。用紙上に画像を形成するための画像データとしては、画像読取部26で読み取った画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0033】
感光体ドラム36は、表面に感光層が形成されたドラム本体36a(図2参照)を備える像担持体であって、前後方向に延びるように設けられる。帯電ユニット40は、帯電ローラ68およびクリーニングローラ70(図4参照)等を備え、感光体ドラム36(ドラム本体36a)の表面を所定の電位に帯電させる。クリーニングユニット38は、現像および画像転写後の感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去する。また、感光体ドラム36、クリーニングユニット38および帯電ユニット40は、一体化(カートリッジ化)されており、これらによってプロセスユニット60が構成される。プロセスユニット60は、装置本体12の前面側から着脱することが可能である。プロセスユニット60の具体的構成については後述する。
【0034】
露光ユニット32は、レーザダイオードおよびポリゴンミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、感光体ドラム36の左側に所定間隔をあけて配置される。露光ユニット32は、帯電された感光体ドラム36の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム36の表面に形成する。現像ユニット34は、現像槽および現像ローラ等を備え、感光体ドラム36の下側に配置される。現像ユニット34は、感光体ドラム36の表面にトナーを供給し、感光体ドラム36の表面に形成された静電潜像をトナーによって顕像化する(トナー像を形成する)。
【0035】
転写ローラ42は、感光体ドラム36の表面に形成されたトナー像を用紙に転写するための部材であって、感光体ドラム36を押圧するように設けられる。画像形成時には、転写ローラ42に所定の電圧が印加されることによって、感光体ドラム36と転写ローラ42との間に転写電界が形成される。そして、この転写電界の作用により、感光体ドラム36と転写ローラ42との間のニップ域(転写ニップ部)を用紙が通過する間に、感光体ドラム36の外周面に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0036】
定着ユニット44は、加熱ローラおよび加圧ローラ等を備え、プロセスユニット60および転写ローラ42の上方に配置される。加熱ローラは、内部に設けられた熱源によって所定の定着温度となるように加熱される。そして、加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ域(定着ニップ部)を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0037】
また、装置本体12内には、給紙トレイ48等から搬送される用紙をレジストローラ52、転写ニップ部および定着ニップ部を経由させて排紙トレイ50(排紙部)に送るための第1用紙搬送路L1が形成される。また、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット44を通過した後の用紙を、転写ニップ部の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路L1に戻すための第2用紙搬送路L2が形成される。この第1用紙搬送路L1および第2用紙搬送路L2には、用紙に対して補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラ54が適宜設けられる。
【0038】
次に、プロセスユニット60の構成について具体的に説明する。図2~4に示すように、プロセスユニット60は、感光体ドラム36、クリーニングユニット38および帯電ユニット40等を備え、これらはプロセスフレーム62によって所定の配置態様で一体的に保持される。
【0039】
感光体ドラム36は、導電性を有する円筒状の基体の表面に感光層が形成されたドラム本体36aを備える。基体の両端部には、フランジが嵌め込まれるようにして固定的に取り付けられ、このフランジの中心部を貫通するように金属製のドラム軸36bが設けられる。ドラム軸36bの両端部は、プロセスフレーム62に設けられるベアリングによって回転可能に支持される。また、図示は省略するが、ドラム軸36bの後端部には、カップリング部およびギア列などを介して駆動モータが連結される。ドラム本体36aは、このドラム軸36bの回転に伴って回転する。つまり、感光体ドラム36は、プロセスフレーム62によってドラム軸36b回りに回転可能に支持されており、駆動モータから伝達される駆動力によって回転する。
【0040】
クリーニングユニット38は、クリーニングブレード64および搬送部材66などを備える。クリーニングユニット38は、感光体ドラム36の表面に残留したトナー等の異物をクリーニングブレード64によって除去し、除去した異物を搬送部材66によって廃トナーボックスに送り込む。
【0041】
帯電ユニット40は、帯電ローラ68およびクリーニングローラ70等を備える。帯電ローラ68は、鉄などの金属によって形成される円柱状(丸棒状)の導電性支持体である軸部68aを備える。この軸部68aの外周面上には、両端部を残して、弾性層および抵抗層を含むローラ部68bが形成される。弾性層は、非帯電体としての感光体ドラム36に対する給電や、感光体ドラム36との良好な均一密着性を確保するために、適当な導電性と弾性とを有する材料によって形成される。抵抗層は、弾性層中に含有される軟化油や可塑剤などのブリードアウトを防止すると共に、帯電ローラ68全体の電気抵抗を調整するために設けられており、導電性または半導電性を有する材料によって形成される。
【0042】
帯電ローラ68のローラ部68bは、感光体ドラム36のドラム本体36aよりも少し小さい軸方向長さを有している。また、帯電ローラ68の軸部68aは、感光体ドラム36のドラム軸36bと平行に配置される。そして、帯電ローラ68は、ローラ部68bの外側面がドラム本体36aの外側面に所定圧で当接(接触)した状態で、感光体ドラム36の回転に伴って従動回転しながら、感光体ドラム36(ドラム本体36a)の表面を所定の電位に帯電させる。
【0043】
また、図示は省略するが、帯電ローラ68の軸部68aの両端部は、軸受によって回転可能に支持されている。この軸受は、感光体ドラム36の径方向に移動可能な状態でフレームに対して取り付けられる。すなわち、この軸受によって支持される帯電ローラ68は、感光体ドラム36の径方向に移動可能(離接可能)であり、感光体ドラム36から離間する離間状態と、感光体ドラム36に当接する当接状態とに切り替え可能に設けられている。さらに、軸受には、圧縮コイルばね等の付勢部材が設けられる。この付勢部材は、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を所定圧で当接させるための部材であって、軸受を介して帯電ローラ68を感光体ドラム36側に向かって付勢する。
【0044】
また、クリーニングローラ70は、感光体ドラム36と反対側の位置において、帯電ローラ68(ローラ部68b)の外周面と接触するように配置される。クリーニングローラ70は、円柱状の金属シャフトとその外周面上を覆う弾性発泡体(スポンジ層)とを備え、帯電ローラ68の外周面に付着したトナー等の異物を除去する。また、クリーニングローラ70は、帯電ローラ68に対して離接可能に設けられており、図示しない付勢部材によって帯電ローラ68に所定圧で当接される。
【0045】
このようなプロセスユニット60においては、画像形成装置10またはプロセスユニット60を出荷してから使用開始されるまでに長期間を要する場合がある。この期間中、感光体ドラム36と帯電ローラ68とを当接させたままだと、帯電ローラ68のブリードおよび変形などによる画質不良が発生する懸念がある。このため、画像形成装置10またはプロセスユニット60の出荷時には、感光体ドラム36と帯電ローラ68とを離間状態にしておき、使用開始と共に感光体ドラム36と帯電ローラ68とを当接状態にする機構をプロセスユニット60に設けておくことが考えられる。ただし、このような機構は、なるべく簡単な構造で実現できることが好ましい。
【0046】
そこで、この第1実施例では、以下に示すカム部材80をプロセスユニット60に設けることで、簡単な構造で、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を離間状態にしておくことができ、かつ、使用開始時には自動的に感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を当接状態にできるようにした。以下、具体的に説明する。
【0047】
図3および図5を参照して、帯電ローラ68の軸部68aの両端部(つまり感光体帯電領域であるローラ部68bの両側)のそれぞれには、カム部材80が回転可能に設けられる。このカム部材80は、感光体ドラム36のドラム本体36aの長手方向範囲内に収まる位置に設けられる。
【0048】
図6から図8に示すように、カム部材80は、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を離間状態にしておくためのスペーサとして用いられる部材であって、装着部82および当接部84などを有する。カム部材80を形成する材料は、特に限定されないが、当接部84を弾性変形させるため、また、感光体ドラム36の傷つきを防止するために合成樹脂またはゴム等の軟質材料によって形成されることが好ましい。
【0049】
装着部82は、帯電ローラ68の軸部68aに外嵌めされる部分であって、円環状(リング状)に形成される。この装着部82の厚さは、帯電ローラ68のローラ部68bの厚さよりも小さい大きさに設定される。
【0050】
当接部84は、感光体ドラム36のドラム本体36a(具体的には感光層)の外側面に当接することによって帯電ローラ68を離間状態に保持する部分であって、装着部82の外側面よりも外方に突出するように形成される。当接部84は、帯電ローラ68の離接方向に弾性変形可能な板ばね形状を有しており、ドラム本体36aを帯電ローラ68から離れる方向に付勢することが可能である。具体的には、当接部84は、装着部82の外側面から突出する突出部84aと、突出部84aの先端から屈曲して装着部82の外側面に沿って延びる湾曲板状の腕部84bとを有する。腕部84bは、その基端部を支点として帯電ローラ68の離接方向に変位可能であり、この腕部84bの先端部外側面がドラム本体36aに対する当接面84cとなる。このように当接部84を弾性変形可能に形成しておくことで、仮にプロセスユニット60に振動や衝撃が加わっても、その弾性によって振動等を吸収することができる。したがって、カム部材80の意図しない回転を防止でき、当接部84がドラム本体36aに当接した状態(つまり離間状態)を適切に保持できる。
【0051】
当接部84の腕部84bの厚さは、装着部82の厚さと足し合わせた厚さが帯電ローラ68のローラ部68bの厚さよりも大きくなるように設定される。これにより、長期間の圧接による経時変化、または振動や衝撃が加わったときの弾性変形によって当接部84が完全に潰れた状態(つまり腕部84bが装着部82に当接する状態)になっても、帯電ローラ68を離間状態に保持することができる。
【0052】
また、カム部材80は、カム部材80を手動で回転させるための矩形板状の把持部86を有する。把持部86は、当接部84の基端部外側面から突出するように形成される。ユーザは、この把持部86を把持してカム部材80を回転させることで、帯電ローラ68を離間状態と当接状態とに容易に切り替えることができる。また、この把持部86は、帯電ローラ68が離間状態にあるときのカム部材80の逆回転と、帯電ローラ68が当接状態にあるときのカム部材80の正回転とを規制する第1規制部としても機能する。
【0053】
さらに、カム部材80は、帯電ローラ68が当接状態にあるときのカム部材80の逆回転を規制する第2規制部88を有する。第2規制部88は、装着部82の径方向に弾性変形可能な板ばね形状を有しており、装着部82の外側面から突出する突出部88aと、突出部88aの先端から屈曲して装着部82の外側面に沿って延びる湾曲棒状の腕部88bとを有する。また、装着部82および当接部84には、この腕部88bと対応する位置に切欠き90が形成される。この切欠き90は、第2規制部88が径方向内側に弾性変形した際の入り込みを許容する。
【0054】
また、図示は省略するが、当接部84の当接面84cは、カム部材80の他の部分よりも摩擦係数(グリップ力)が大きくなるように形成することもできる。たとえば、ウレタンゴム等の弾性部材によって当接面84cを形成する(つまり腕部84bの先端部外側面に弾性部材を張り付ける)ことで、当接面84cの摩擦係数を大きくすることができる。或いは、当接面84cを粗面状に形成することで、当接面84cの摩擦係数を大きくすることもできる。これにより、当接面84cがドラム本体36aに当接した状態において、感光体ドラム36の回転に伴ってカム部材80をより確実に回転させることができる。
【0055】
続いて、図9および図10を参照して、このようなカム部材80を備えるプロセスユニット60の動作について説明する。図9に示すように、出荷時などには、カム部材80は、当接部84が感光体ドラム36のドラム本体36a(具体的には感光層)に当接する回転位置(離間保持位置)にて保持される。この状態では、当接部84がドラム本体36aを押すことで、帯電ローラ68は、付勢部材の付勢力に抗って感光体ドラム36から離れた離間状態で保持される。また、この離間状態では、把持部86(第1規制部)の先端部がドラム本体36aと当接することで、カム部材80の逆方向(図9および図10では反時計回り)の回転が規制される。
【0056】
また、画像形成装置10の使用が開始されて、感光体ドラム36が正方向(図9および図10では反時計回り)に回転されると、カム部材80は、当接部84の当接面84cとドラム本体36aとの摩擦力によって正方向(図9および図10では時計回り)に従動回転する。すると、図10に示すように、ドラム本体36aに対する当接部84の当接が解除され、帯電ローラ68は、付勢部材の付勢力によって感光体ドラム36に当接される。つまり、帯電ローラ68は、離間状態から当接状態に切り替えられる。この当接状態においては、感光体ドラム36と対向する位置には、カム部材80の装着部82の外側面(当接部84等が形成されない部分)が位置するので、カム部材80は、感光体ドラム36と当接しない。したがって、感光体ドラム36が回転しても、カム部材80は回転しない。
【0057】
また、この当接状態では、把持部86(第1規制部)の先端部がフレーム側に形成された第1係止部94によって係止されることで、カム部材80の正方向の回転が規制される。さらに、カム部材80の第2規制部88の先端部がフレーム側に形成された第2係止部96によって係止されることで、カム部材80の逆方向の回転が規制される。すなわち、帯電ローラ68が当接状態にあるときには、カム部材80は、感光体ドラム36と当接しない回転位置(非接触位置)に留まるように正逆双方向の回転が規制されるので、帯電ローラ68の当接状態が適切に保持される。
【0058】
なお、帯電ローラ68を当接状態から離間状態に切り替えたいときには、カム部材80の把持部86を把持してカム部材80を手動で逆方向に回転させるとよい。
【0059】
以上のように、この第1実施例によれば、帯電ローラ68の軸部68aにカム部材80を設けるという簡単な構成で、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を適切に離接できる。また、カム部材80を感光体ドラム36のドラム本体36aの長手方向範囲内に収まる位置に設けたので、プロセスユニット60が長手方向に大型化することを防止できる。
【0060】
[第2実施例]
次に、図11を参照して、この発明の第2実施例であるプロセスユニット60について説明する。この第2実施例では、プロセスユニット60がワンウェイクラッチ100を備える点が上述の第1実施例と異なる。その他の部分については同様であるので、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0061】
図11に示すように、第2実施例では、プロセスユニット60は、帯電ローラ68が正回転(図11では時計回り)したときには、帯電ローラ68の回転をカム部材80に伝達せず、帯電ローラ68が逆回転(図11では反時計回り)したときには、帯電ローラ68の回転をカム部材80に伝達しないワンウェイクラッチ100を備える。簡単に説明すると、この第2実施例では、ラチェット式のワンウェイクラッチ100が用いられる。このワンウェイクラッチ100は、帯電ローラ68の軸部68aに取り付けられたギア部材と、カム部材80に取り付けられた爪部材とで構成される。ただし、ワンウェイクラッチ100は、ラチェット式のものに限定されず、スプラグ式などの他の方式のものを採用することもできる。
【0062】
このようなワンウェイクラッチ100を備えるプロセスユニット60では、感光体ドラム36を逆回転させることで、帯電ローラ68を当接状態から離間状態に切り替えることが可能である。すなわち、帯電ローラ68が当接状態にあるとき、感光体ドラム36を逆回転(図11では時計回り)させることによって、帯電ローラ68およびカム部材80を逆回転させる。そして、カム部材80の当接部84をドラム本体36aの外側面に当接させることで、帯電ローラ68を離間状態に切り替えることができる。
【0063】
この第2実施例においても、第1実施例と同様に、簡単な構成で、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を適切に離接できる。
【0064】
また、第2実施例によれば、感光体ドラム36を逆回転させることで、帯電ローラ68を当接状態から離間状態に自動で切り替えることができる。
【0065】
[第3実施例]
次に、図12を参照して、この発明の第3実施例であるプロセスユニット60について説明する。この第3実施例では、カム部材80の構成が上述の第1実施例と異なる。その他の部分については同様であるので、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0066】
図12に示すように、第3実施例では、カム部材80は、第2の当接部98をさらに有する。第2の当接部98は、当接部84と反対側の位置において、装着部82の外側面よりも外方に突出するように形成される。この第2の当接部98は、帯電ローラ68が離間状態にあるとき、クリーニングローラ70の外側面と当接することで、クリーニングローラ70を帯電ローラ68から離間する離間状態にする。また、帯電ローラ68が当接状態にあるときには、クリーニングローラ70の外側面に対する第2の当接部98の当接が解除されることで、クリーニングローラ70を帯電ローラ68と当接する当接状態にする。
【0067】
この第3実施例においても、第1実施例と同様に、簡単な構成で、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を適切に離接できる。
【0068】
また、第3実施例によれば、感光体ドラム36に対して帯電ローラ68を離接させるのと同時に、帯電ローラ68に対してクリーニングローラ70を離接させることができる。
【0069】
なお、本明細書中で挙げた、画像形成装置10の具体的な構成は、いずれも単なる一例であり、実際の製品の仕様に応じて適宜変更可能である。たとえば、画像形成装置は、必ずしも複合機である必要はなく、複写機、ファクシミリおよびプリンタ等のいずれか、またはこれらの少なくとも2つを組み合わせた複合機であってもよい。また、画像形成装置は、モノクロ機に限定されず、多色の画像を形成可能なカラー機であってもよい。
【0070】
また、上で挙げた具体的な部品形状および寸法などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 …画像形成装置
12 …装置本体
14 …画像読取装置
30 …画像形成部
36 …感光体ドラム
38 …クリーニングユニット
40 …帯電ユニット
60 …プロセスユニット
68 …帯電ローラ
70 …クリーニングローラ
80 …カム部材
82 …装着部
84 …当接部
86 …把持部(第1規制部)
88 …第2規制部
98 …第2の当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12