(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147416
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】液体消費装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054896
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】田邉 裕磨
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿部 七海
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐士
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056EB20
2C056EB52
2C056KC02
2C056KC16
2C056KC22
(57)【要約】
【課題】液体容器の構造を簡易としつつ、液体容器の流路抵抗と液体タンクの流路抵抗とをそれぞれ設計することが容易な手段を提供する。
【解決手段】複合機10は、インクが貯留された上部貯留室32および下部貯留室33を有するインクカートリッジ30と、インクカートリッジ30が接続可能であり、気体室131および大気連通孔132を有するバッファタンク130と、インクカートリッジ30が接続可能であり、貯留室121、流出口128、および大気連通孔124を有するインクタンク103と、吐出ヘッド21と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留された第1貯留室を有する液体容器と、
上記液体容器が接続可能であり、接続された上記液体容器の上記第1貯留室と気体を流通可能な気体流路、当該気体流路と接続する気体室、および上記気体室と外部とを連通する第1大気連通部を有する気体タンクと、
上記液体容器が接続可能であり、接続された上記液体容器の上記第1貯留室と液体を流通可能な液体流路、当該液体流路と接続する第2貯留室、上記第2貯留室に貯留された液体を流出させる流出口、および上記第2貯留室を大気に連通させる第2大気連通部を有する液体タンクと、
上記液体タンクの上記流出口を通じて流出した液体を吐出する吐出ヘッドと、を備え、
上記液体容器と、上記気体タンクおよび上記液体タンクと、が接続された接続状態において、上記気体流路は、上記第1貯留室と上記気体室とを連通する液体消費装置。
【請求項2】
上記吐出ヘッドは、上記接続状態において液体を消費する請求項1に記載の液体消費装置。
【請求項3】
上記液体容器は、
鉛直方向と交差する第1向きに移動されることによって、上記気体タンクおよび上記液体タンクと接続され、
上記第1向きと反対の第2向きに移動されることによって、上記気体タンクおよび上記液体タンクから離脱される請求項1又は2に記載の液体消費装置。
【請求項4】
上記液体容器は、上記気体流路と接続される気体連通孔と、上記液体流路と接続される液体連通孔と、を有し、
上記気体連通孔は、上記液体連通孔よりも上記第1向きに位置する請求項3に記載の液体消費装置。
【請求項5】
上記液体容器は、上記第1向きに移動されることによって、上記気体連通孔が上記気体流路と接続された後に、上記液体連通孔が上記液体流路に接続されるものである請求項3または4に記載の液体消費装置。
【請求項6】
上記接続状態において、上記第1大気連通部が外部と連通する開口は、上記第1貯留室に貯留された液面よりも上方に位置する請求項1から5のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項7】
上記接続状態において、上記第2大気連通部が外部と連通する開口は、上記第1貯留室に貯留された液面よりも上方に位置する請求項1から6のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項8】
上記接続状態であって、上記液体容器が、上記気体タンクおよび上記液体タンクより上方に位置する転倒姿勢において、
上記第2大気連通部に通ずる開口は、上記第2貯留室の下側部分に位置する請求項7に記載の液体消費装置。
【請求項9】
上記吐出ヘッドは、上記液体容器と、上記気体タンクおよび上記液体タンクと、が接続されていない非接続状態において、液体を消費する請求項1に記載の液体消費装置。
【請求項10】
上記第1大気連通部の流路を閉塞し、大気の通過を許容する第1半透膜と、
上記第2大気連通部の流路を閉塞し、大気の通過を許容する第2半透膜と、を更に備えた請求項1から9のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項11】
上記第1半透膜の流路抵抗は、上記第2半透膜の流路抵抗よりも小さい請求項10に記載の液体消費装置。
【請求項12】
上記気体タンクおよび上記液体タンクは、一体の樹脂成型品である請求項1から11のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項13】
上記気体タンクおよび上記液体タンクは、それぞれ別体の樹脂成型品である請求項1から11のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項14】
上記液体タンクに貯留されている液体の液面が閾高さを超えたことを検出するセンサをさらに有する請求項1から13のいずれかに記載の液体消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器と、気体タンクおよび液体タンクとが接続される液体消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、液体吐出ヘッドに連通する液体貯留タンクと、液体を貯留して液体貯留タンクに着脱可能なカートリッジと、を有する液体供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の液体供給装置では、液体貯留タンクは大気連通部を通じて大気連通されている。液体貯留タンクに装着されたカートリッジは、第2接続部を通じて液体貯留タンクと気体連通されている。したがって、カートリッジは、液体貯留タンクの大気連通部を通じて大気連通される。特許文献1記載の液体供給装置では、1つの大気連通部により、液体貯留タンクとカートリッジとが大気連通されるので、液体貯留タンクへ気体が流入するときの流路抵抗と、カートリッジへ気体が流入するときの流路抵抗とに差を設けることが難しい。特に、大気連通部に半透膜が設けられると、半透膜による流路抵抗が主となるので、液体貯留タンクへ気体が流入するときの流路抵抗が、カートリッジへ気体が流入するときの流路抵抗よりも大きくなるように設計することが難しい。
【0005】
例えば、液体吐出ヘッドにおいて大量の液体が吐出されると、液体貯留タンクおよびカートリッジから液体が流出する。液体貯留タンクから液体が流出する流量に対して、カートリッジから液体が流出する流量が小さければ、液体吐出ヘッドから液体が吐出されている間に、液体貯留タンクに貯留されている液体が減少して、カートリッジに液体が貯留されているにも拘わらず、液体貯留タンクの液体が無くなるおそれがある。他方、カートリッジに大気連通部を設けることとすると、カートリッジの構造が複雑となり、コストアップや、カートリッジをディスポーザブルにせざるを得ないことが生じ得る。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体容器の構造を簡易としつつ、液体容器の流路抵抗と液体タンクの流路抵抗とをそれぞれ設計することが容易な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る液体消費装置は、液体が貯留された第1貯留室を有する液体容器と、上記液体容器が接続可能であり、接続された上記液体容器の上記第1貯留室と気体を流通可能な気体流路、当該気体流路と接続する気体室、および上記気体室と外部とを連通する第1大気連通部を有する気体タンクと、上記液体容器が接続可能であり、接続された上記液体容器の上記第1貯留室と液体を流通可能な液体流路、当該液体流路と接続する第2貯留室、上記第2貯留室に貯留された液体を流出させる流出口、および上記第2貯留室を大気に連通させる第2大気連通部を有する液体タンクと、上記液体タンクの上記流出口を通じて流出した液体を吐出する吐出ヘッドと、を備える。上記液体容器と、上記気体タンクおよび上記液体タンクと、が接続された接続状態において、上記気体流路は、上記第1貯留室と上記気体室とを連通する。
【0008】
接続状態において、第1大気連通部から気体室、気体流路を通じて第1貯留室に気体が流入するので、この経路の流路抵抗を、第1貯留室から第2貯留室へ液体が流出するに最適に設定できる。他方、第2大気連通部の流路抵抗を、第2貯留室から流出口を通じて液体が流出するに最適に設定できる。また、液体容器に大気連通部が不要なので、液体容器の構造が簡易になる。
【0009】
(2) 上記吐出ヘッドは、上記接続状態において液体を消費するものであってもよい。
【0010】
(3) 上記液体容器は、鉛直方向と交差する第1向きに移動されることによって、上記気体タンクおよび上記液体タンクと接続され、上記第1向きと反対の第2向きに移動されることによって、上記気体タンクおよび上記液体タンクから離脱されてもよい。
【0011】
(4) 上記液体容器は、上記気体流路と接続される気体連通孔と、上記液体流路と接続される液体連通孔と、を有し、上記気体連通孔は、上記液体連通孔よりも上記第1向きに位置してもよい。
【0012】
(5) 上記液体容器は、上記第1向きに移動されることによって、上記気体連通孔が上記気体流路と接続された後に、上記液体連通孔が上記液体流路に接続されるものであってもよい。
【0013】
(6) 上記接続状態において、上記第1大気連通部が外部と連通する開口は、上記第1貯留室に貯留された液面よりも上方に位置してもよい。
【0014】
(7) 上記接続状態において、上記第2大気連通部が外部と連通する開口は、上記第1貯留室に貯留された液面よりも上方に位置してもよい。
【0015】
(8) 上記接続状態であって、上記液体容器が、上記気体タンクおよび上記液体タンクより上方に位置する転倒姿勢において、上記第2大気連通部に通ずる開口は、上記第2貯留室の下側部分に位置してもよい。
【0016】
転倒姿勢において第2大気連通部に通ずる開口が液体で塞がれることにより、第2貯留室が大気と連通されない状態となるので、第2貯留室から消費部へ液体が流出することが抑制される。
【0017】
(9) 上記吐出ヘッドは、上記液体容器と、上記気体タンクおよび上記液体タンクと、が接続されていない非接続状態において、液体を消費してもよい。
【0018】
(10) 上記液体消費装置は、上記第1大気連通部の流路を閉塞し、大気の通過を許容する第1半透膜と、上記第2大気連通部の流路を閉塞し、大気の通過を許容する第2半透膜と、を更に備えてもよい。
【0019】
(11) 上記第1半透膜の流路抵抗は、上記第2半透膜の流路抵抗よりも小さくてもよい。
【0020】
接続状態において、第1貯留室から第2貯留室への液体の流量を、第2貯留室から消費部への液体の流量よりも大きくすることができる。
【0021】
(12) 上記気体タンクおよび上記液体タンクは、一体の樹脂成型品であってもよい。
【0022】
(13) 上記気体タンクおよび上記液体タンクは、それぞれ別体の樹脂成型品であってもよい。
【0023】
(14) 上記液体消費装置は、上記液体タンクに貯留されている液体の液面が閾高さを超えたことを検出するセンサをさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、液体容器の構造を簡易としつつ、液体容器の流路抵抗と液体タンクの流路抵抗とをそれぞれ設計することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、複合機10の外観斜視図であって、(A)はカバー87が閉塞位置である状態、(B)はカバー87が開放位置である状態を示す。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、カートリッジ装着部110の開口112側の外観斜視図である。
【
図4】
図4は、カートリッジ装着部110の縦断面図である。
【
図5】
図5は、インクカートリッジ30の後方斜視図である。
【
図6】
図6は、インクカートリッジ30の縦断面図である。
【
図7】
図7は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態の縦断面図である。
【
図8】
図8は、転倒姿勢におけるインクカートリッジ30、インクタンク103、およびバッファタンク130を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るカートリッジ装着部110の縦断面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るカートリッジ装着部110の縦断面図である。
【
図11】
図11は、変形例によるインクカートリッジ30、インクタンク103、およびバッファタンク130を示す模式図である。
【
図12】
図12は、変形例によるインクカートリッジ50、インクタンク150、およびバッファタンク160を示す模式図である。
【
図13】
図13は、変形例によるボトル170、インクタンク180、およびバッファタンク190を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、複合機10が使用可能に水平面に設置された姿勢(
図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、複合機10の開口13が設けられている面を前面として前後方向8が定義され、複合機10を前面から見て左右方向9が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当する。前後方向8及び左右方向9は、直交している。
【0027】
[複合機10の全体構成]
複合機10は、
図1に示されるように、インクジェット記録方式でシート12(
図2参照)に画像を記録するプリンタ部11を下部に有している。また、複合機10は、ファクシミリ機能、スキャン機能、及びコピー機能などの各種の機能を有していてもよい。複合機10は、液体消費装置の一例である。プリンタ部11は、概ね直方体形状の筐体14を有している。筐体14の内部には、
図2に示されるように、給送トレイ15と、排出トレイ16と、給送ローラ23と、搬送ローラ対25と、排出ローラ対27と、記録部24と、プラテン26とが配置されている。
【0028】
[給送トレイ15、排出トレイ16、給送ローラ23]
図1及び
図2に示されるように、筐体14の前面14Aで且つ左右方向9の概ね中央には、開口13が形成されている。給送トレイ15は、開口13を通じて前後方向8に挿抜される。給送トレイ15は、各々が積層された複数のシート12を支持する。排出トレイ16は、給送トレイ15の上方に配置されている。排出トレイ16は、記録部24及びプラテン26の間から排出ローラ対27によって排出されたシート12を支持する。給送ローラ23は、不図示のモータによって駆動されることによって、給送トレイ15に支持されたシート12を搬送路17へ給送する。
【0029】
[搬送路17]
図2に示されるように、搬送路17は、ガイド部材18、19、記録部24、プラテン26等によって形成される空間を指す。ガイド部材18、19と、記録部24及びプラテン26とは、それぞれがプリンタ部11の内部において所定間隔で対向する。搬送路17は、給送トレイ15の後端部から上方に延びつつUターンし、記録部24に対面する位置を経由して排出トレイ16に至る経路である。搬送向きは、
図2において一点鎖線の矢印で示されている。
【0030】
[搬送ローラ対25]
搬送ローラ対25は、記録部24より搬送向きの上流に配置されている。搬送ローラ対25は、互いに対向する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bを備える。搬送ローラ25Aは、不図示のモータによって駆動される。ピンチローラ25Bは、搬送ローラ25Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0031】
[排出ローラ対27]
排出ローラ対27は、記録部24より搬送向きの下流に配置されている。排出ローラ対27は、互いに対向する排出ローラ27A及び拍車27Bを備える。排出ローラ27Aは、不図示のモータによって駆動される。拍車27Bは、排出ローラ27Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する排出ローラ27A及び拍車27Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0032】
[記録部24、プラテン26]
図2に示されるように、記録部24及びプラテン26は、搬送向きにおける搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間に配置されている。より詳細には、記録部24及びプラテン26は、搬送ローラ対25より搬送向きの下流で、且つ排出ローラ対27より搬送向きの上流に配置されている。また、記録部24及びプラテン26は、上下方向7において互いに対向して配置されている。
【0033】
記録部24は、キャリッジ22と、キャリッジ22に搭載された吐出ヘッド21とを備える。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動力が伝達されて左右方向9に往復移動する。吐出ヘッド21の下面には、複数のノズル29が形成されている。吐出ヘッド21は、ピエゾ素子等の振動素子を振動させることによって、ノズル29からインク滴を吐出する。キャリッジ22が移動する過程において、プラテン26に支持されたシート12に対して吐出ヘッド21がインク滴を選択的に吐出することによって、シート12に画像が記録される。使用姿勢における吐出ヘッド21の下面は、カートリッジ装着部110(
図3参照)に装着されたインクカートリッジ30及びインクタンク103内のインクの液面より上下方向7において上方にある。また、使用姿勢における吐出ヘッド21は、カートリッジ装着部110よりも前後方向8の後方に位置する。
【0034】
キャリッジ22には、インクチューブ及びフレキシブルフラットケーブルが接続されている。インクチューブは、後述するカートリッジ装着部110(
図3参照)と吐出ヘッド21とを接続する。より詳細には、インクチューブは、カートリッジ装着部110に装着された各インクカートリッジ30(液体容器の一例)に貯留されたインク(液体の一例)を吐出ヘッド21に供給する。インクチューブは、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のチューブが束ねられたものである。フレキシブルフラットケーブルは、複合機10の動作を制御する制御基板と吐出ヘッド21とを電気的に接続する。
【0035】
[カバー87]
図1(B)に示されるように、筐体14の前面14Aで且つ左右方向9の右端部には、開口85が形成されている。筐体14は、開口85を閉塞させる閉塞位置(
図1(A)に示される位置)と、開口85を開放する開放位置(
図1(B)に示される位置)との間を回動可能なカバー87を有する。カバー87は、上下方向7における筐体14の下端近傍において、左右方向9に延びる回動軸線周りに回動可能に、筐体14によって支持されている。そして、開口85の奥に広がる筐体14内部の収容空間86には、カートリッジ装着部110が配置されている。
【0036】
[カートリッジ装着部110]
図3,4に示されるように、カートリッジ装着部110は、カートリッジケース101と、ロッド125と、ロック部129と、バッファタンク130(気体タンクの一例)と、インクタンク103(液体タンクの一例)と、回動部材145と、液面センサ55とを備えている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。ロッド125、バッファタンク130、インクタンク103、回動部材145、及び液面センサ55は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。なお、カートリッジ装着部110に収容可能なインクカートリッジ30の数は、4つに限定されない。なお、
図3においては、カートリッジ装着部110の左端に1個のインクカートリッジ30が装着されている。
【0037】
カートリッジケース101は、カートリッジ装着部110の筐体を構成する。カートリッジケース101は、インクカートリッジ30を収容する内部空間を有する箱形状である。カートリッジケース101は、前後方向8において奥壁と対向するカートリッジケース101の前端は、カートリッジケース101の内部空間を露出させる開口112となっている。さらに、開口112は、カバー87を開放位置に配置したときに、筐体14の開口85を通じて複合機10の外部に露出される。
【0038】
インクカートリッジ30は、筐体14の開口85及びカートリッジ装着部110の開口112を通じて、カートリッジ装着部110に対して、前後方向8の後方に向けて挿入され、前後方向8の前方に向けて抜去される。各インクカートリッジ30は、左右方向9に離間して底壁117に設けられた各ガイド溝109に、インクカートリッジ30の下端部が挿入されることによって、前後方向8へ案内される。カートリッジケース101には、内部空間を左右方向9に隣接する4つの空間に仕切る3つのプレート104が設けられている。プレート104によって仕切られた各空間に、異なる色のインクが貯留された4つのインクカートリッジ30が収容される。
【0039】
[ロック部129]
図3及び
図4に示されるように、ロック部129は、カートリッジケース101の天壁付近で且つ開口112付近において、カートリッジケース101の左右方向9に延出されている。ロック部129は、左右方向9に沿って延びる棒状の部材である。ロック部129は、例えば、金属の円柱である。ロック部129の左右方向9の両端は、カートリッジケース101の側壁に固定されている。ロック部129は、4つのインクカートリッジ30が収納可能な4つの空間に亘って左右方向9に延びている。
【0040】
ロック部129は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を、
図7に示される装着位置に保持するためのものである。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に装着された状態で、ロック部129に係合される。これにより、ロック部129は、後述するコイルバネ78,98がインクカートリッジ30を後方へ押す力に抗して、インクカートリッジ30を装着位置に保持する。
【0041】
[バッファタンク130]
図4に示されるように、バッファタンク130は、カートリッジケース101の奥壁の上方に位置する。カートリッジケース101の奥壁において、バッファタンク130は、後述する接続部107より上方に位置する。バッファタンク130は、カートリッジケース101と一体に成型された箱形状の容器である。バッファタンク130の内部空間が気体室131である。バッファタンク130は、上壁134を貫通して上方へ開口する大気連通孔132(第1大気連通部の一例)を有する。大気連通孔132の上端には第1半透膜133が貼り付けられている。第1半透膜133は大気連通孔132を閉塞している。第1半透膜133は、インクの通過を制限し、且つ大気の通過を許容する。
【0042】
[ロッド125]
図4に示されるように、ロッド125は、バッファタンク130の前壁135の下端部から前方へ突出している。カートリッジケース101の奥壁において、ロッド125は、後述する接続部107より上方に設けられている。ロッド125は筒形状であり、内部空間が気体室131と連通している。ロッド125の前端部は前方および上方へ向かって開口している。ロッド125は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、後述するインクカートリッジ30の大気連通口96を通じて大気バルブ室36に進入する。これにより、インクカートリッジ30のバルブ室36と気体室131とが連通し、ロッド125の内部空間は気体流路となる。
【0043】
[インクタンク103]
図4に示されるように、インクタンク103は、カートリッジケース101の後方に設けられている。インクタンク103は、インクタンク103を構成する壁のうち、少なくとも後述する液面センサ55に対面する領域は、液面センサ55から出力させる光を透過する透光性を有する。
【0044】
インクタンク103は、内部に貯留室121を有する箱形状である。貯留室121は、第2貯留室の一例である。貯留室121は、流出口128を通じて、インクチューブに連通されている。流出口128は、貯留室121の下端を区画する下壁付近に形成されている。流出口128は、接続部107より上下方向7の下方に位置する。これにより、貯留室121に貯留されたインクが、流出口128から流出して、インクチューブを通じて吐出ヘッド21へ供給される。
【0045】
貯留室121の後壁143の上端付近には大気連通孔124(第2大気連通部の一例)が形成されている。大気連通孔124は後壁143を貫通している。大気連通孔124は、液面センサ55が対面する領域より上方に位置する。大気連通孔124には、第2半透膜127が貼り付けられて閉塞されている。第2半透膜127は、インクの通過を制限し、且つ大気の通過を許容する。第2半透膜127の流路抵抗R2は、第1半透膜133の流路抵抗R1より大きい(R1<R2)。
【0046】
[接続部107]
図3及び
図4に示されるように、接続部107は、管状の樹脂からなるインクニードル102と、ガイド部105とを備えている。インクニードル102は、インクタンク103から前方へ突出している。インクニードル102の突出先端には、開口116が設けられている。また、インクニードル102の内部空間は、貯留室121に連通されている。さらに、インクニードル102は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34(
図7参照)に対応する位置に配置されている。インクタンク103の前壁142を貫通する貫通孔126によって、インクニードル102の内部空間と貯留室121とが連通される。インクニードル102の内部空間は、液体流路の一例である。
【0047】
ガイド部105は、インクニードル102の周囲に配置された円筒形状の部材である。ガイド部105は、インクタンク103から前方に突出し、その突出端に開口が設けられている。インクニードル102は、ガイド部105の中心に配置されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるとき、インク供給部34は、ガイド部105の内部に進入する。
【0048】
インクニードル102の内部空間には、バルブ114及びコイルバネ115が収容されている。バルブ114は、インクニードル102の内部空間において、開口116を閉塞させる閉位置と、開口116を開放する開位置との間を、前後方向8に沿って移動可能に構成されている。コイルバネ115は、バルブ114を閉位置に移動させる向き、すなわち前方に付勢している。閉位置のバルブ114の前端は、開口116よりも前方へ突出している。
【0049】
[回動部材145]
液室121には、回動部材145が位置している。回動部材145は、液室121内に配置された不図示の支持部材によって、矢印198、199の向きに回動可能に支持されている。回動部材145は、
図4の実線で示される位置および破線で示される位置の間を回動することができる。さらに、回動部材145は、不図示のストッパ(例えば、液室121の内壁)によって、実線の位置より矢印198の向きへの回動が規制される。回動部材145は、フロート146と、軸147と、アーム148と、被検出部149とを備える。
【0050】
フロート146は、液室121に貯留されるインクより比重が小さい材料で形成されている。軸147は、フロート146の右面および左面から左右方向9に突出している。左右方向9は、複合機10の使用状態において水平方向に沿っている。軸147は、支持部材に形成された不図示の孔に挿入されている。これにより、回動部材145は、軸147を中心として回動可能に支持部材によって支持される。アーム148は、フロート146から略上方へ延びている。被検出部149は、アーム148の突出先端部に位置している。被検出部149は、上下方向7および前後方向8に延びる板状の部材である。被検出部149は、液面センサ55の発光部から出力された光を遮光する材料又は色で形成されている。
【0051】
液室121内のインクの液面が境界位置P1以上のとき、浮力によって矢印198の向きに回動された回動部材145は、ストッパによって
図3の実線で示される検出位置に保持される。一方、インクの液面が境界位置P1未満のとき、回動部材145は、液面の降下に追従して矢印199の向きに回動される。これにより、被検出部149は、検出位置から外れた位置に移動する。すなわち、被検出部149は、液室121に貯留されたインクの量に対応する位置に移動する。
【0052】
境界位置P1は、上下方向7において、インクニードル102の軸中心と同じ高さであり、且つ後述するインク供給口71の中心と同じ高さにおいて、水平方向に延びる仮想線によって示される。しかしながら、境界位置P1は、上下方向7における流出口128より上方の位置であれば、前述の位置に限定されない。他の例として、境界位置P1は、インクニードル102の内部空間の上端や下端の高さでもよいし、インク供給口71の上端や下端の高さでもよい。
【0053】
液室121に貯留されたインクの液面が境界位置P1以上のとき、液面センサ55の発光部から出力された光が被検出部149で遮られる。これにより、液面センサ55は、発光部からの光が受光部に到達しないので、ローレベル信号をコントローラへ出力する。一方、液室121に貯留されたインクの液面が境界位置P1未満のとき、液面センサ55は、発光部から出力された光が受光部に到達するので、ハイレベル信号をコントローラへ出力する。すなわち、コントローラは、液室121内のインクの液面が境界位置P1以上か否かを、液面センサ55から出力される信号によって検出することができる。
【0054】
[インクカートリッジ30]
インクカートリッジ30は、インクが貯留される容器である。
図5に示されるように、インクカートリッジ30は、筐体31と、インク供給部34と、凸部43と、操作部90と、を有する。インクカートリッジ30は、略直方体形状の筐体31を有する。筐体31は、上下方向7及び前後方向8それぞれに沿った寸法が、左右方向9に沿った寸法よりも大きい扁平形状である。なお、異なる色のインクが貯留されるインクカートリッジ30の外形形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。筐体31は、後壁40と、前壁41と、上壁39と、下壁42と、側壁37、38とで構成されている。
【0055】
後壁40は、第1後壁40Aと、第2後壁40Bと、第3後壁40Cとで構成される。第1後壁40Aは、第2後壁40Bより前後方向8の前方で且つ上下方向7の上方に位置する。第2後壁40Bは、第3後壁40Cより前後方向の後方で且つ上下方向7の上方に位置する。第3後壁40Cは、第1後壁40Aより前後方向8の前方で且つ上下方向7の下方に位置する。第1後壁40Aには、大気連通口96(気体連通孔の一例)が設けられている。大気連通口96は、後述されるインク供給口71よりも後方に位置する。第3後壁40Cには、インク供給部34が設けられている。
【0056】
図6に示されるように、インクカートリッジ30の筐体31は、基部48と、突部49とに大別される。基部48は、例えば、上壁39の前方側の一部、前壁41、下壁42、第3後壁40C、及び側壁37、38の前方側の一部で囲まれる部分を指す。突部49は、例えば、上壁39の後方側の一部、第1後壁40A、第2後壁40B、及び側壁37、38の後方側の一部で囲まれる部分を指す。
【0057】
突部49は、上下方向7における基部48の一部から後方に突出する。より詳細には、突部49は、上下方向7における基部48の上部から後方に突出する。基部48及び突部49の前後方向8の境界は、例えば、第1後壁40Aの延長線或いは第3後壁40Cの延長線であってもよいし、第1後壁40Aの下端及び第3後壁40Cの上端を結ぶ仮想線であってもよい。
【0058】
上壁39には、凸部43及び操作部90が設けられている。凸部43は、上壁39の外面から上方に突出し且つ前後方向8に延設されている。凸部43の前方を向く面は、ロック面62である。ロック面62は、上壁39よりも上方に位置している。ロック面62は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、ロック部129に当接する面である。ロック面62とロック部129とが当接することによって、インクカートリッジ30がコイルバネ78,98の付勢力に抗して装着位置に保持される。
【0059】
操作部90は、上壁39においてロック面62より前方に設けられている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、操作部90の操作面92が下方へ押されると、インクカートリッジ30が回動することによって、ロック面62がロック部129より下方へ移動する。その結果、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜可能となる。
【0060】
図6に示されるように、筐体31の内部空間には、上部貯留室32、下部貯留室33、インクバルブ室35、及び大気バルブ室36が形成されている。上部貯留室32、下部貯留室33、インクバルブ室35は、インクを貯留する。上部貯留室32、下部貯留室33、インクバルブ室35は、第1貯留室の一例である。大気バルブ室36は、上部貯留室32とバッファタンク130の気体室131との間において、大気を流通させる。
【0061】
上部貯留室32及び下部貯留室33は、筐体31の内部空間を仕切る隔壁45によって、上下方向7に隣接して配置されている。また、上部貯留室32及び下部貯留室33は、隔壁45に形成された貫通孔47によって連通されている。上部貯留室32の容積は、下部貯留室33及びインクバルブ室35より大きい。上部貯留室32は、基部48及び突部49に亘って形成されている。
【0062】
上部貯留室32及び大気バルブ室36は、筐体31の内部空間を仕切る隔壁44によって、上下方向7に隣接して配置されている。また、上部貯留室32及び大気バルブ室36は、隔壁44に形成された貫通孔46によって連通されている。下部貯留室33は、インクバルブ室35より前後方向8の前方に位置している。下部貯留室33及びインクバルブ室35は、貫通孔99によって連通されている。下部貯留室33及びインクバルブ室35の容積は、インクタンク103の貯留室121より小さい。
【0063】
大気バルブ室36は、上部貯留室32より上方に設けられた大気流路である。大気バルブ室36には、不図示のラビリンス通路或いは半透膜が設けられていてもよい。大気バルブ室36には、シール部材94、バルブ97及びコイルバネ98が収容されている。シール部材94は、貫通孔が形成された円盤形状の部材である。シール部材94の貫通孔は、大気連通口96と連通している。シール部材94は、大気連通口96周りの筐体31に密着して大気連通口96周りの気密を確保する。シール部材94の貫通孔の内径は、ロッド125の外形より若干小さい。バルブ97は、シール部材94の貫通孔を閉塞する閉位置と、貫通孔を開放する開位置との間を前後方向8に移動可能である。すなわち、バルブ97は、大気連通口96を閉塞する閉位置と開放する開位置との間を移動可能である。コイルバネ98は、バルブ97を閉位置に移動させる向き、すなわち後方に付勢している。
【0064】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程において、カートリッジ装着部110のロッド125(
図7参照)が大気連通口96およびシール部材94の貫通孔を通じて大気バルブ室36内に進入する。大気バルブ室36内に進入したロッド125は、閉位置のバルブ97をコイルバネ98の付勢力に抗して前方へ移動させる。バルブ97が開位置に移動することによって、ロッド125の内部空間を通じて、大気バルブ室36(気体層)と気体室131とが連通し、上部貯留室32が大気連通孔132を通じて大気開放される。
【0065】
大気連通口96は、インク供給口71よりも後方に位置しており、ロッド125の先端とインクニードル102の先端とが前後方向8において概ね同じ位置にあるので、インクニードル102がインク供給口71に挿入されてインクバルブ室35と連通する前に、ロッド125が大気連通口96に挿入されて大気バルブ室36と連通する。
【0066】
インク供給部34は、第3後壁40Cから後方へ突出している。より詳細には、インク供給部34は、突部49の下端より下方において、基部48の後方を向く面に設けられるのが望ましい。インク供給部34は、円筒形状の部材である。インク供給部34の内部空間が、インクバルブ室35である。インク供給部34の突出先端は、インクカートリッジ30の外部に開口している。第2後壁40Bは、インク供給部34の先端よりさらに後方に位置している。インクバルブ室35には、シール部材76と、バルブ77と、コイルバネ78とが収容されている。
【0067】
シール部材76は、中央に貫通孔が形成された円盤形状の部材である。シール部材76の中央には、前後方向8に貫通したインク供給口71(液体連通孔の一例)が形成されている。インク供給口71の内径は、インクニードル102の外径より若干小さい。バルブ77は、インクバルブ室35内において、シール部材76と当接してインク供給口71を閉塞させる閉位置と、シール部材76から離間してインク供給口71を開放する開位置との間を、前後方向8に沿って移動可能に構成されている。コイルバネ78は、バルブ77を閉位置に移動させる向き、すなわち後方に付勢している。
【0068】
図7に示されるように、インクカートリッジ30は、前後方向8の後方(第1向きの一例)へ移動されることによってカートリッジ装着部110に装着され、前方(第2向きの一例)へ移動されることによってカートリッジ装着部110から離脱される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程において、カートリッジ装着部110のインクニードル102がインク供給口71を通じてインクバルブ室35に進入する。このとき、インクニードル102は、シール部材76を弾性変形しつつ、インク供給口71を画定する内周面に液密に接触する。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へさらに挿入されると、インクニードル102は、バルブ77をコイルバネ78の付勢力に抗して開位置へ移動させる。また、バルブ77は、インクニードル102の開口116から突出するバルブ114をコイルバネ115の付勢力に抗して開位置へ移動させる。
【0069】
図7に示されるように、インク供給口71が開放され、また、大気バルブ室36が気体室131の大気連通口132を通じて大気開放されることにより、インク供給部34のインクバルブ室35及びインクニードル102の内部空間の間において、インクが流通可能になる。その結果、接続されたインク供給部34及び接続部107を通じて、上部貯留室32及び下部貯留室33に貯留されたインクが水頭差によってインクタンク103の貯留室121へ流出する。貯留室121から流出口128を通じて吐出ヘッド21へ流れたインクは、インクカートリッジ30とインクタンク103およびバッファタンク130とが接続された接続状態において、ノズル29から吐出される。
【0070】
図1に示される複合機10の姿勢が使用姿勢であり、使用姿勢においてインクカートリッジ30およびインクタンク103は
図7に示される状態にある。複合機10は、使用姿勢にされて、画像記録などの各種動作が実行される。ここで、未使用の複合機10に、インクカートリッジ30が装着された動作が説明される。新品のインクカートリッジ30の上部貯留室32、下部貯留室33、及びインクバルブ室35には、貯留可能な最大量のインクが貯留されている。また、未使用の複合機10のインクタンク103の貯留室121には、インクが貯留されていない。貯留室121にインクが貯留されていないとは、未だインクカートリッジ30から貯留室121にインクが流入していない状態をいうものであり、例えば、複合機10の製造時における検査などにおいて一時的に貯留室121にインクが貯留され、その後に貯留室121からインクが除去されたときに、貯留室121に残存するインクなどは、貯留室121に貯留されているインクとはみなされないものとする。
【0071】
未使用の複合機10に、新品のインクカートリッジ30が装着された直後、すなわち、インクカートリッジ30からインクタンク103の貯留室121へ未だインクが流入していない状態において、インクカートリッジ30に貯留されたインクの液面の上下方向7の位置が、位置P2として
図7に2点鎖線で示されている。
【0072】
図7に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インク供給口71が開放され、また、大気バルブ室36が気体室131の大気連通口132を通じて大気開放されることにより、インク供給部34のインクバルブ室35及びインクニードル102の内部空間の間において、インクが流通可能になる。その結果、接続されたインク供給部34及び接続部107を通じて、上部貯留室32及び下部貯留室33に貯留されたインクが水頭差によってインクタンク103の貯留室121へ流出する。上部貯留室32及び下部貯留室33におけるインクの液面の高さと、貯留室121におけるインクの液面の高さとが同じ高さになると、すなわち水頭差が無くなると、上部貯留室32及び下部貯留室33と、貯留室121との間でのインクの移動が終了する。新品のインクカートリッジ30が未使用の複合機10に装着されて水頭差が無くなった所定状態の貯留室121のインクの液面の位置が、位置P3として
図7に2点鎖線で示されている。
【0073】
図7に示されるように、バッファタンク130の大気連通孔132は、インクカートリッジ30に貯留されたインクの液面の位置P2,P3のいずれよりも上方に位置する。インクタンク103の大気連通孔124は、インクカートリッジ30に貯留されたインクの液面の位置P2,P3のいずれよりも上方に位置する。したがって、
図7に示される状態において、第1半透膜133および第2半透膜127にインクが接触しない。
【0074】
新品のインクカートリッジ30が未使用の複合機10に装着され、貯留室121へインクが流入すると、貯留室121にインクが貯留されてインクの液面が上昇する。インクカートリッジ30においては、インクの流出に伴って、大気連通孔132を塞ぐ第1半透膜133を通過した空気が、気体室131、ロッド125の内部空間、大気バルブ室36を通じて上部貯留室32に流入する。インクタンク103においては、インクの流入に伴って、貯留室121の空気は、大気連通孔124を塞ぐ第2半透膜127を通過して外部へ流出する。
【0075】
図7に示される状態において、吐出ヘッド21からインクが排出されると、インクタンク103の貯留室121のインクは、流出口128から吐出ヘッド21へ流出する。貯留室121においては、インクの液面が下降し、インクが流出した容積に相当する容積の空気が、大気連通孔124及び第2半透膜127を通じて外部から貯留室121に流入する。
【0076】
また、インクカートリッジ30の上部貯留室32および下部貯留室33から、インクニードル102を通じて貯留室121へインクが流入する。上部貯留室32においては、インクの液面が下降し、インクが流出した容積に相当する容積の空気が、大気連通孔132および第1半透膜133を通じて、気体室131、大気バルブ室36へ流れ、上部貯留室32に流入する。第2半透膜127の流路抵抗R2は、第1半透膜133の流路抵抗R1より大きいので(R1<R2)、吐出ヘッド21からインクが排出されると、インクカートリッジ30の下部貯留室33に貯留されているインクが貯留室121を通じて流出口128から流出する流量より、貯留室121に貯留されているインクが流出口128から流出する流量が小さくなる。つまり、インクタンク103の貯留室121に貯留されているインクよりも、インクカートリッジ30の下部貯留室33に貯留されているインクが、流出口128から流出されやすくなる。
【0077】
図8に示されるように、インクカートリッジ30がインクタンク103およびバッファタンク130に接続された接続状態において、インクカートリッジ30がインクタンク103およびバッファタンク130よりも上方に位置する転倒姿勢になることがある。転倒姿勢においては、複合機10の後面が下方となり前面が上方となっている。転倒姿勢において、上部貯留室32および下部貯留室33には、大気連通孔132および第1半透膜133を通じて外部の空気が流入可能である。
【0078】
転倒姿勢のインクタンク103においては、大気連通孔124及び第2半透膜127がインクタンク103の後壁144に位置するので、第2半透膜127が貯留室121のインクに接触して、第2半透膜127を貯留室121の空気が通過することができない。したがって、インクカートリッジ30の下部貯留室33からインクタンク103の貯留室121へインクが継続して流入することがない。
【0079】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、接続状態において、大気連通孔132を塞ぐ第1半透膜133を通過した空気が、気体室131、ロッド125の内部空間、大気バルブ室36を通じて上部貯留室32に流入するので、この経路の流路抵抗を、上部貯留室32および下部貯留室33第から貯留室121へインクが流出するに最適に設定できる。他方、大気連通孔124を塞ぐ第2半透膜127を通過した空気が貯留室121へ流入するので、この経路の流路抵抗を、貯留室121から流出口128を通じてインクが流出するに最適に設定できる。また、インクカートリッジ30に大気連通部が不要なので、インクカートリッジ30の構造が簡易になる。
【0080】
また、転倒姿勢において、大気連通孔124を塞ぐ第2半透膜127がインクで塞がれることにより、貯留室121が大気と連通されない状態となるので、貯留室121から吐出ヘッド21へインクが流出することが抑制される。
【0081】
大気連通口96は、インク供給口71よりも後方に位置しており、インクニードル102がインク供給口71に挿入されてインクバルブ室35と連通する前に、ロッド125が大気連通口96に挿入されて大気バルブ室36と連通するので、インクカートリッジ30の上部貯留室32の気体層が大気圧となってから、インクニードル102とインクバルブ室35とが連通する。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された際に、インクカートリッジ30からインクが急激に流出したり、インクタンク103からインクカートリッジ30へインクが急激に流出したりすることが抑制される。
【0082】
また、第2半透膜127の流路抵抗R2は、第1半透膜133の流路抵抗R1より大きい(R1<R2)。吐出ヘッド21からインクが吐出されるに伴って、インクタンク103に貯留されているインクとインクカートリッジ30に貯留されているインクとが減少する。流路抵抗R2が流路抵抗R1より大きいので、インクカートリッジ30と比べて、インクタンク103へ外部から空気が入りにくい。その結果、インクカートリッジ30においてインクの液面が下がりやすい。つまり、吐出ヘッド21へ流出するインク量において、インクカートリッジ30に貯留されていたインクの割合が、インクタンク103に貯留されていたインクの割合よりも大きくなる。したがって、写真印刷やメンテナンス処理において吐出ヘッド21から大量のインクが排出されるときに、インクカートリッジ30の液面に比べてインクタンク103の液面が下がりにくい。したがって、インクカートリッジ30の液面が境界位置P1よりも高いにも拘わらず、インクタンク103の液面が境界位置P1よりも低くなって、液面センサ55がハイレベル信号を出力することが抑制され、液面センサ55による残量検知の精度がよい。また、画像記録が終了したときには、インクタンク103の液面よりもインクカートリッジ30の液面が低くなるので、画像記録が終了した後に、インクカートリッジ30からインクタンク103にインクが流れ込んで、インクタンク103においてインクの液面が上昇することがない。
【0083】
また、インクカートリッジ30の液面がインクタンク103の液面よりも低くなるので、インクタンク103の液面が境界位置P1に到達する前に、インクタンク103の下部貯留室33が空となる。その後、吐出ヘッド21からインクが吐出されると、第1半透膜133および第2半透膜127を通じて、インクタンク103の貯留室121へ外部の空気が進入する。流路抵抗R2が流路抵抗R1より大きいので、インクカートリッジ30を通じてインクタンク103の貯留室121へ流入しやすい。これにより、インクカートリッジ30においてインクが残りにくくなり、インクの使い切りがよくなる。
【0084】
なお、前述された実施形態では、境界位置P1は、境界位置P1は、上下方向7において、インクニードル102の軸中心と同じ高さであり、且つインク供給口71の中心と同じ高さであった。しかしながら、境界位置P1は、上下方向7においてインクニードル102の軸中心よりも上方であってもよいし、下方であってもよい。
【0085】
図9に示されるように、境界位置P1が上下方向7においてインクニードル102の軸中心よりも上方にあると、境界位置P1においてインクカートリッジ30からインクタンク103へ気体が流れ込むおそれが少ない。これにより、回動部材145に気泡が付着して、境界位置P1において回動部材145の回動が阻害されるおそれが少ない。
【0086】
図10に示されるように、境界位置P1が上下方向7においてインクニードル102の軸中心よりも下方にあると、インクタンク103の液面が境界位置P1へ到達する前に、インクカートリッジ30の下部貯留室33が空となり、その後の時間経過によって、下部貯留室33や上部貯留室32に残存するインクや気泡がインクタンク103へ流れ込むので、インクタンク103の液面が境界位置P1に到達する前に、インクカートリッジ30内のインクがインクタンク103へ完全に移動しきる。
【0087】
なお、前述された実施形態では、貯留室121に回動部材145が位置しており、液面センサ55は、回動部材145の被検出部149を検出したが、回動部材145に代えて、他の公知の構成が採用されてもよい、例えば、インクタンク103の後壁143の境界位置P1に、インクが接触しているか否かによって異なる反射率を有するプリズムが設けられ、プリズムからの反射光を液面センサ55が検出してもよい。また、回動部材145に代えて、貯留室121に挿入された2本の電極棒がインクと接触するか否かによる導電の変化が検出されてもよい。
【0088】
また、前述された実施形態においては、大気連通孔124はインクタンク103の後壁143に設けられているが、後壁143に代えて上壁や側壁に設けられてもよい。上壁や側壁においては、インクタンク103の前後方向8の中央よりも後ろ側(転倒姿勢における下側)に大気連通孔124が位置することが好ましい。
【0089】
また、第1半透膜133および第2半透膜127に代えて、空気を透過する発泡性樹脂などにより大気連通孔124,132が塞がれてもよい。
【0090】
なお、大気連通口96を開放するための構成は、前述の例に限定されない。他の例として、大気連通口96を封止する弾性部材が、針形状のロッド125によって貫通されてもよい。
【0091】
また、前述された実施形態のように、インクタンク103とバッファタンク130とは、それぞれが別体の樹脂製品であってもよいし、インクタンク103およびバッファタンク130が一体の樹脂成型品であってもよい。一体の樹脂製品であるとき、
図11に示されるように、大気連通孔124,132のいずれもが上壁に形成されて、1枚の半透膜136により塞がれてもよい。
【0092】
また、インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に対して前後方向8に移動されることによって装着または脱離されたが、
図12に示されるように、上下方向7に移動されることによって、カートリッジ装着部110に装着または脱離されるインクカートリッジ50(液体容器の一例)であってもよい。
【0093】
図12に示されるように、インクカートリッジ50は、筐体51の内部空間が隔壁52により貯留室53(第1貯留室の一例)と気体室54との区画されている。隔壁52の上端付近には貫通孔56が形成されている。貫通孔56は、貯留室53と気体室54とを空気が流通可能に連通している。
【0094】
筐体51の下面には、接続部57,58が設けられている。詳細は図示されていないが、接続部57は、インク供給部34と同様の構成であり、貯留室53のインクが流出可能な開口がバルブによって開閉される。接続部58は、大気バルブ室36と同様の構成であり、気体室54に連通する開口がバルブによって開閉される。
【0095】
インクタンク150(気体タンクの一例)は、側方からみてL字形状の容器である。インクタンク150の上壁には大気連通孔151(第2大気連通部の一例)が開口しており、大気連通孔151は第2半透膜152により塞がれている。インクタンク150の内部空間は貯留室153(第2貯留室の一例)であり、インクが貯留可能である。インクタンク150の面154から上方へインクニードル155が延びている。インクニードル155の内部空間(液体流路の一例)は貯留室53と連通している。インクニードル155は、インクカートリッジ50の接続部57に挿入可能である。貯留室153には、吐出ヘッド21へインクを流出するための流出口156が形成されている。
【0096】
バッファタンク160(気体タンクの一例)は、インクタンク150の前方に位置する。バッファタンク160は箱形状の容器であり、内部空間が気体室161である。バッファタンク160の上壁には大気連通孔162(第1大気連通部の一例)が開口しており、大気連通孔162は第1半透膜163により塞がれている。バッファタンク160の上壁から上方へロッド164が延びている。ロッド164は筒形状であり、内部空間(気体流路の一例)が気体室161と連通している。ロッド164は、インクカートリッジ50の接続部58に挿入可能である。
【0097】
図12に示されるように、インクカートリッジ50は、インクタンク150およびバッファタンク160に対して、上下方向7の下方へ移動されることによってインクタンク150およびバッファタンク160に接続される。インクカートリッジ50が下方へ移動される過程において、インクニードル155がインクカートリッジ50の接続部57に挿入される。また、ロッド164がインクカートリッジ50の接続部58に挿入される。これにより、インクカートリッジ50の貯留室53が気体室54,161および大気連通孔162を通じて大気連通される。したがって、水頭差により、インクカートリッジ50の貯留室53に貯留されたインクが、インクニードル155を通じてインクタンク150の貯留室153へ流出する。
【0098】
また、
図13に示されるように、インクカートリッジ30に代えて、ボトル170(液体容器の一例)がインクタンク180(液体タンクの一例)およびバッファタンク190(気体タンクの一例)に接続可能であってもよい。
【0099】
図13に示されるように、ボトル170は、筐体171の内部空間が隔壁172により貯留室173(第1貯留室の一例)と気体室174との区画されている。隔壁172の上端付近には貫通孔175が形成されている。貫通孔175は、貯留室173と気体室174とを空気が流通可能に連通している。
【0100】
筐体171の下面には、接続部176,177が設けられている。詳細は図示されていないが、接続部176は、インク供給部34と同様の構成であり、貯留室173のインクが流出可能な開口がバルブによって開閉される。接続部177は、大気バルブ室36と同様の構成であり、気体室174に連通する開口がバルブによって開閉される。
【0101】
インクタンク180は、側方からみてL字形状の容器である。インクタンク180の上壁には大気連通孔181(第2大気連通部の一例)が開口しており、大気連通孔181は第2半透膜182により塞がれている。インクタンク180の内部空間は貯留室183(第2貯留室の一例)であり、インクが貯留可能である。インクタンク180の上面から上方へインクニードル185が延びている。インクニードル185の内部空間(液体流路の一例)は貯留室183と連通している。インクニードル185は、ボトル170の接続部176に挿入可能である。貯留室183には、吐出ヘッド21へインクを流出するための流出口186が形成されている。
【0102】
バッファタンク190は、インクタンク180の後方かつ上方に位置する。バッファタンク190は箱形状の容器であり、内部空間が気体室191である。バッファタンク190の後壁には大気連通孔192(第1大気連通部の一例)が開口しており、大気連通孔192は第1半透膜193により塞がれている。バッファタンク190の上壁から上方へロッド194が延びている。ロッド194は筒形状であり、内部空間(気体流路の一例)が気体室191と連通している。ロッド194は、ボトル170の接続部177に挿入可能である。
【0103】
図13に示されるように、ボトル170は、インクタンク180およびバッファタンク190に対して、上下方向7の下方へ移動されることによってインクタンク180およびバッファタンク190に接続される。ボトル170は、インクタンク180の貯留室183へインクを補充するためのものであり、常にインクタンク180およびバッファタンク190に接続されるものではない。したがって、吐出ヘッド21は、ボトル170がインクタンク180およびバッファタンク190に接続されていない非接続状態において、貯留室183から流出するインクを吐出する。
【0104】
ボトル170が下方へ移動される過程において、インクニードル185がボトル170の接続部176に挿入される。また、ロッド194がボトル170の接続部177に挿入される。これにより、ボトル170の貯留室173が気体室174,191および大気連通孔192を通じて大気連通される。したがって、水頭差により、ボトル170の貯留室173に貯留されたインクが、インクニードル185を通じてインクタンク180の貯留室183へ流出する。
【符号の説明】
【0105】
10・・・複合機(液体消費装置)
21・・・吐出ヘッド
30,50・・・インクカートリッジ(液体容器)
32・・・上部貯留室(第1貯留室)
33・・・下部貯留室(第1貯留室)
71・・・インク供給口(液体連通孔)
96・・・大気連通口(気体連通孔)
127・・・第2半透膜
130,160,190・・・バッファタンク(気体タンク)
131,161,191・・・気体室
132,162,192・・・大気連通孔(第1大気連通部)
133・・・第1半透膜
103,150,180・・・インクタンク(液体タンク)
121,153,183・・・貯留室(第2貯留室)
128,156,186・・・流出口
124,151,181・・・大気連通孔(第2大気連通部)
152・・・第2半透膜
163・・・第1半透膜
170・・・ボトル(液体容器)
173・・・貯留室(第1貯留室)
182・・・第2半透膜
193・・・第1半透膜