(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147421
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】気体組成物の製造方法、少なくとも二酸化炭素に由来する物質の製造方法及び固体吸着剤の再生方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20231005BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20231005BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20231005BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231005BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20231005BHJP
C07C 29/152 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01J20/18 B
B01J20/34 F
C01B32/50
C07C31/04
C07C29/152
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054904
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 敦史
(72)【発明者】
【氏名】國宗 利幸
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CA12
4D012CA20
4D012CB16
4D012CD01
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4D012CG01
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4G066AA61B
4G066AA62B
4G066BA07
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066DA02
4G066GA01
4G066GA08
4G066GA32
4G066GA33
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC07
4G146JC27
4G146JD02
4H006AA02
4H006AC41
4H006BD33
4H006BD51
4H006BE20
4H006BE41
4H006FE11
(57)【要約】
【課題】低いエネルギーで実施できる、気体組成物の製造方法等を提供する。
【解決手段】
二酸化炭素とガスとを含む気体組成物を製造する方法であって、
二酸化炭素が吸着された固体吸着剤にガスを接触させることにより当該二酸化炭素を脱離して前記気体組成物を得る脱離工程を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素とガスとを含む気体組成物を製造する方法であって、
二酸化炭素が吸着された固体吸着剤にガスを接触させることにより当該二酸化炭素を脱離して前記気体組成物を得る脱離工程を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
【請求項2】
吸着量W2と吸着量W1との差(W2-W1)が、10~500cm3/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱離工程の前に、第1の気体及び二酸化炭素を含む第1の気体混合物を前記固体吸着剤に接触させることにより、前記二酸化炭素を前記固体吸着剤に吸着させる吸着工程を更に有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の気体混合物における二酸化炭素の濃度が、5体積%以上100体積%未満であり、
前記第1の気体混合物における第1の気体の濃度が、0体積%超~95体積%以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記気体組成物における二酸化炭素の濃度が、0.1体積%以上100体積%未満であり、
前記気体組成物におけるガスの濃度が、0体積%超99.9体積%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体吸着剤が、ゼオライトである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライトが、GIS型ゼオライト又はFAU型ゼオライトである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガスが、水素、メタン、エタン、窒素、一酸化炭素、酸素、アンモニア、塩素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱離工程における温度が20~300℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記脱離工程における圧力が0.1~200kPaである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも二酸化炭素に由来する物質を製造する方法であって、
二酸化炭素が吸着された固体吸着材にガスを接触させて二酸化炭素を脱離し、当該二酸化炭素とガスとを含む気体組成物C1を得る脱離工程と、
前記気体組成物C1を用いて前記物質を含む組成物C2を得る合成工程と、
を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
【請求項12】
前記組成物C2から、前記ガスのうち未反応のガスを分離する分離工程と、
前記分離工程により得られた前記未反応のガスを前記脱離工程のガスとしてリサイクルするリサイクル工程と、
をさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二酸化炭素が吸着された固体吸着剤の再生方法であって、
前記固体吸着剤にガスを接触させて二酸化炭素を脱離する脱離工程を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体組成物の製造方法、少なくとも二酸化炭素に由来する物質の製造方法及び固体吸着剤の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、炭酸ガスの排出削減に向け、排気ガスなど二酸化炭素を含むガスからの二酸化炭素の分離、回収へのニーズも高まっており、二酸化炭素の分離技術開発が盛んに行われている。二酸化炭素の分離方法はいくつかあるが、その一つとして吸着剤を用いた分離方法がある。吸着剤には活性炭やゼオライトが用いられる。吸着剤を用いた分離方法には、ガスの吸着時の圧力より脱離時の圧力を下げ、高圧力時の吸着量と低圧力時の吸着量の差を利用してガスの分離を行う圧力スイング式吸着分離方法(PSA:Pressure Swing Adsorption)と、ガスの吸着時の温度より脱離時の温度を上げ、低温時の吸着量と高温時の吸着量の差を利用してガスの分離を行う温度スイング式吸着分離方法(TSA:Thermal Swing Adsorption)とがある。さらに、これらを組み合わせた圧力・温度スイング式吸着脱離法(PTSA:Pressure and Therml Swing Adsorption)がある。天然ガスの様な高圧のガスを分離精製する場合は、PSAでは吸着時に高圧で二酸化炭素を吸着、圧力を下げて吸着した二酸化炭素を脱離させ、分離回収することでエネルギー効率が高い回収方法となる。バイオガスや、発電所などの排気ガスのように、常圧に近いガスの場合は、予めコンプレッサーで圧力を高めてから吸着剤に吸着させ、圧力を下げて二酸化炭素を脱離させる、あるいは、吸着剤に吸着させてから真空ポンプで圧力を下げて、二酸化炭素を脱離させることができるが、圧縮ポンプあるいは真空ポンプの動力が必要となる。これらのガス分離はTSAでも行うことができる。発電所や製鉄所など、利用できる熱源がある場合はそれを脱離に用いることができるため、吸着剤からの脱離、再生に係るコストの低減が図れるが、利用可能な熱源が無ければ別途熱源が必要となる。ある温度で排気ガスと吸着剤を接触させた場合、その温度よりも吸着材を高温にすれば吸着したガスが脱離して分離回収ができる。高温にする方法は吸着剤を入れた容器を外部から加熱してもよいし、容器の内部にヒーターや熱交換器を入れて加熱してもよいし、吸着剤を入れた容器に高温のガスを流通させて加熱してもよい。高温に加熱したガスは、二酸化炭素を分離する場合は分離回収した二酸化炭素を加熱して流通させれば高純度の二酸化炭素を収集できる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用できるエネルギー源が無ければ、PSAはポンプの動力、TSAは熱が必要となり、大きなコストなる。そこで、例えばTSAでは特許文献1のように高熱伝導性のローターに吸着剤充填層を複数設けて連続的に吸着と脱離をさせ、そのローター式熱交換器を用いて熱の利用効率を上げ、エネルギーコストを下げる工夫がなされている。しかし、このような特殊な機器は設備のコストが高まるだけでなくガスのシール材などのメンテナンスが必要になる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低いエネルギーで実施できる、気体組成物の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量と、固体吸着剤による他のガスの吸着量との大小関係に着目することで、エネルギーコストを低減できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕
二酸化炭素とガスとを含む気体組成物を製造する方法であって、
二酸化炭素が吸着された固体吸着剤にガスを接触させることにより当該二酸化炭素を脱離して前記気体組成物を得る脱離工程を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
〔2〕
吸着量W2と吸着量W1との差(W2-W1)が、10~500cm3/gである、〔1〕に記載の方法。
〔3〕
前記脱離工程の前に、第1の気体及び二酸化炭素を含む第1の気体混合物を前記固体吸着剤に接触させることにより、前記二酸化炭素を前記固体吸着剤に吸着させる吸着工程を更に有する、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕
前記第1の気体混合物における二酸化炭素の濃度が、5体積%以上100体積%未満であり、
前記第1の気体混合物における第1の気体の濃度が、0体積%超~95体積%以下である、〔3〕に記載の方法。
〔5〕
前記気体組成物における二酸化炭素の濃度が、0.1体積%以上100体積%未満であり、
前記気体組成物におけるガスの濃度が、0体積%超99.9体積%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕
前記固体吸着剤が、ゼオライトである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕
前記ゼオライトが、GIS型ゼオライト又はFAU型ゼオライトである、〔6〕に記載の方法。
〔8〕
前記ガスが、水素、メタン、エタン、窒素、一酸化炭素、酸素、アンモニア、塩素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕
前記脱離工程における温度が20~300℃である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕
前記脱離工程における圧力が0.1~200kPaである、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕
少なくとも二酸化炭素に由来する物質を製造する方法であって、
二酸化炭素が吸着された固体吸着材にガスを接触させて二酸化炭素を脱離し、当該二酸化炭素とガスとを含む気体組成物C1を得る脱離工程と、
前記気体組成物C1を用いて前記物質を含む組成物C2を得る合成工程と、
を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
〔12〕
前記組成物C2から、前記ガスのうち未反応のガスを分離する分離工程と、
前記分離工程により得られた前記未反応のガスを前記脱離工程のガスとしてリサイクルするリサイクル工程と、
をさらに有する、〔11〕に記載の方法。
〔13〕
二酸化炭素が吸着された固体吸着剤の再生方法であって、
前記固体吸着剤にガスを接触させて二酸化炭素を脱離する脱離工程を有し、
25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない、方法。
【0007】
本発明によれば、低いエネルギーで実施できる、気体組成物の製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る気体組成物の製造方法等を実施する際に使用し得る第1の製造装置を例示する図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る気体組成物の製造方法等を実施する際に使用し得る第2の製造装置を例示する図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る気体組成物の製造方法等を実施する際に使用し得る、第3の製造装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0010】
<気体組成物の製造方法>
本実施形態に係る気体組成物の製造方法(本明細書中、「第1の方法」ともいう。)は、二酸化炭素とガス(本明細書中、「ガスG1」ともいう。)とを含む気体組成物を製造する方法であって、二酸化炭素が吸着された固体吸着剤にガスG1を接触させることにより当該二酸化炭素を脱離して前記気体組成物を得る脱離工程を有し、25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない。第1の方法は、このように構成されているため、ガスG1との接触により二酸化炭素が吸着された固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させることができ、それにより、低いエネルギーで、固体吸着剤を再生しながら二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物を製造することができる。
【0011】
(脱離工程)
第1の方法は、二酸化炭素が吸着された固体吸着剤にガスG1を接触させることにより当該二酸化炭素を脱離して前記気体組成物を得る脱離工程を有する。ここで、25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスの吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ないため、二酸化炭素が吸着された固体吸着剤とガスとの接触によって二酸化炭素を容易に脱離させることができる。
吸着量W2と吸着量W1との差(W2-W1)は、二酸化炭素の脱離を容易にする観点から、好ましくは10~500cm3/gであり、より好ましくは30~400cm3/gであり、更に好ましくは50~300cm3/gである。
脱離工程における二酸化炭素が吸着された固体吸着剤とガスG1との接触は、固体吸着剤側を固相とし、ガスG1側を気相とする、気相接触であれば、特に限定されず、種々の要領で接触させることができる。
吸着量W1及び吸着量W2は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
【0012】
脱離工程によって得られる、二酸化炭素とガスとを含む気体組成物は、後述する「少なくとも二酸化炭素に由来する物質の製造方法」において好ましく使用することができる。本実施形態において、気体組成物における二酸化炭素の濃度が、0.1体積%以上100体積%未満であり、かつ、気体組成物におけるガスの濃度が、0体積%超99.9体積%以下であることが好ましい。
【0013】
(吸着工程)
第1の方法は、脱離工程の前に、第1の気体及び二酸化炭素を含む第1の気体混合物を前記固体吸着剤に接触させることにより、前記二酸化炭素を前記固体吸着剤に吸着させる吸着工程を更に有するものであってもよい。かかる工程を実施することで、本実施形態における固体吸着剤に二酸化炭素を一時的に固定することができる。なお、本実施形態における「二酸化炭素が吸着された固体吸着剤」は、吸着工程を経て得られたものであっても、それ以外の工程を経て得られたものであってもよい。固体吸着剤に対する二酸化炭素の吸着態様としては、特に限定されないが、典型的には、物理吸着が挙げられる。
吸着工程における第1の気体混合物と固体吸着剤との接触は、固体吸着剤側を固相とし、第1の気体混合物側を気相とする、気相接触であれば、特に限定されず、種々の要領で接触させることができる。
【0014】
本実施形態における第1の気体混合物は、特に限定されず、二酸化炭素を含むものであればよい。第1の気体混合物に含まれる第1の気体としても、特に限定されないが、固体吸着剤や反応に用いる触媒の種類によっては、これらの少なくとも一方の被毒を防止する観点から、予め含有量を調整することが好ましい。
吸着工程において、第1の気体混合物における二酸化炭素の濃度が、5体積%以上100体積%未満であり、かつ、第1の気体混合物における第1の気体の濃度が、0体積%超~95体積%以下であることが好ましい。
第1の気体混合物における硫化水素等の硫黄化合物の含有量は、触媒被毒を未然に避ける観点から、0.05体積%未満であることが好ましい。また、第1の気体混合物における水の含有量は、二酸化炭素の吸着量を高める観点から、0.15体積%未満であることが好ましい。
【0015】
(固体吸着剤)
本実施形態における固体吸着剤としては、二酸化炭素を吸着できるものである限り、特に限定されず、種々公知の固体吸着剤を適用することができる。本実施形態における固体吸着剤としては、以下に限定されないが、例えば、活性炭やゼオライト等を用いることができる。本実施形態におけるガスG1の供給量を低減する観点からは、二酸化炭素の吸着量が比較的小さい活性炭が好ましく、1サイクルあたりの二酸化炭素回収量を増加させる観点からは、二酸化炭素の吸着量が比較的多いゼオライトが好ましい。
第1の気体混合物中に複数の不純物が含まれる場合、本実施形態における固体吸着剤としては、二酸化炭素の吸着選択率が高い方が好ましく、二酸化炭素の吸着選択率の高さから、FAU型ゼオライト、GIS型ゼオライトが好ましく、GIS型ゼオライトがより好ましい。なお、吸着選択率は、例えば、特許第6714789号明細書の実施例に記載の方法に基づいて評価することができる。
上述した活性炭やゼオライト等の固体吸着剤としては、市販品を用いてもよく、例えば特許第6714789号明細書や特開2020-014978号公報等に記載の公知のゼオライト等を使用してもよい。
本実施形態における固体吸着剤は、充填時の取り扱いやすさや第1の気体混合物及び/又はガスG1との接触時の圧力損失を低減する観点から、ペレット状等の形状を有する成形体ことが好ましい。もっとも、かかる成型体の形状は特に限定されず、筒状、俵状、球状、ハニカム状等の種々の形状を有するものを採用することができる。
本実施形態における固体吸着剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0016】
本実施形態においては、吸着工程の前に、固体吸着剤を脱水処理に供してもよい。脱水処理としては、第1の気体混合物の供給量(固体吸着剤の使用量)に応じて適宜調整すればよく、以下に限定されないが、例えば、80~375℃に加熱しながら真空下で2~24時間保持する等が挙げられる。脱水処理は、例えば、吸着工程の前に実施することで、吸着工程及び脱離工程をより効率的に実施できる傾向にあり、その場合、例えば吸着工程及び脱離工程を繰り返し実施しても高い製造効率を維持できる傾向にある。また、脱水処理は1回のみに限らず、吸着工程及び脱離工程において系内に水分が混入する場合等には、再度の脱水処理を適時に実施してもよい。
【0017】
(ガスG1)
本実施形態におけるガスG1は、固体吸着剤によるその吸着量W1が、当該固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ないものである限り、特に限定されない。固体吸着剤による吸着量が少ない観点からは、水素、メタン、エタン、窒素、一酸化炭素、酸素、アンモニア、塩素及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。固体吸着剤へのダメージが少ないという観点からは、水素、メタン、エタン、窒素、一酸化炭素、酸素がより好ましく、後述する「少なくとも二酸化炭素に由来する物質の製造方法」において有用な反応物を得やすいという観点から、水素がとりわけ好ましい。
本実施形態におけるガスは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本実施形態におけるガスの組成としては、特に限定されず、固体吸着剤の再生効率及び/又は脱離した二酸化炭素とガスとの反応効率を考慮し、適宜選択すればよい。
【0018】
本実施形態におけるガスG1の圧力は特に限定されないが、加圧や減圧操作をせずに第1の方法を実施することが好ましく、具体的には0.1kPa以上200kPa以下であることが好ましい。
ガスG1の圧力は、低エネルギーで第1の方法を実施する観点からは、上述した範囲にあることが好ましいが、ガスG1と二酸化炭素から反応物を得る場合の反応を促進する観点及び/又は未反応のガスG1を再度分離してガスG1として再利用し得る観点から、加圧状態で脱離工程に用いることもできる。さらにガスG1を固体吸着剤に接触させた後、系内を真空にして、残留したガスG1を除去する及び/又は固体吸着剤における二酸化炭素の脱離を促進するといった操作を行ってもよい。このように、過度にならない範囲での加圧や減圧操作を考慮する場合、ガスG1の圧力は、1kPa以上180kPa以下であってもよく、1.5kPa以上150kPa以下であってもよい。
【0019】
本実施形態におけるガスG1の温度は特に限定されないが、昇温や降温操作をせずに第1の方法を実施することが好ましく、具体的には20℃以上300℃以下が好ましい。
ガスG1の温度は低エネルギーで第1の方法を実施する観点からは、上述した範囲にあることが好ましいが、ガスG1の温度が高温である方が、その熱エネルギーによって固体吸着剤からの二酸化炭素の脱離が促進される傾向にあるため好ましい。また、脱離した二酸化炭素とガスG1を反応させる場合は、反応温度まで昇温させる工程を軽微な操作で実施できることから高温の方が好ましい。一方で、高温のガスG1により固体吸着剤の温度が上がり過ぎると、二酸化炭素の吸着量が低減し、二酸化炭素の吸着分離効率が低下する傾向にあることから、ガスG1の温度は低い方が好ましい。このように、過度にならない範囲での昇温や降温操作を考慮する場合、ガスG1の温度は、35℃以上280℃以下であってもよく、45℃以上255℃以下であってもよい。
【0020】
(製造装置)
第1の方法を実施する上で、使用し得る製造装置としては、脱離工程を行うことができる構成である限り特に限定されず、例えば、ガス吸着装置やガス脱離装置として種々公知のものを適用することもできる。以下、
図1に示す装置(本明細書中、「第1の製造装置」ともいう。)を一例に挙げ、使用し得る装置の構成について説明する。
第1の装置において、任意に実施できる吸着工程のため、原料貯蔵タンク1に、第1の気体及び二酸化炭素を含む第1の気体混合物を貯蔵することができる。第1の気体混合物は、任意に、精製手段2を経て、除塵、除湿、脱硫及び/又は脱硝を行うことができる。
任意に実施できる吸着工程において、第1の気体混合物は、固体吸着剤を充填した容器4a及び4bの少なくとも一方に導入される。第1の気体混合物は、任意に、ポンプ3で加圧等して容器4a及び4bの少なくとも一方に導入されてもよい。第1の気体混合物から二酸化炭素の少なくとも一部が除去された第2の気体混合物は、必要に応じて処理ガス貯蔵タンク5に保管される。保管の必要が無ければ系外に排出してもよい。容器4a及び4bの少なくとも一方において、固体吸着剤に二酸化炭素が十分に吸着した後、気相中に残存する二酸化炭素が容器外に漏れる前に容器4a,4bの上流、下流のバルブを閉じる操作を行うこともできる。
脱離工程においては、ガスG1貯蔵タンク6に貯蔵されたガスG1を、二酸化炭素を吸着した固体吸着剤が充填されている容器4a及び4bの少なくとも一方に導入することで二酸化炭素を脱離させる。ガスG1は、任意に、ポンプ7で加圧等して容器4a及び4bの少なくとも一方に導入されてもよい。ガスG1を容器の中に導入することで、容器内の二酸化炭素の分圧が下がり、固体吸着剤から二酸化炭素が脱離する。脱離した二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物は、気体組成物貯蔵タンク8に貯蔵される。
第1の装置において、容器4a及び4bの一方で脱離工程を行うこともできる。この場合、脱離工程を行っている時に、脱離工程を行っていない方の容器における固体吸着剤に二酸化炭素を吸着させれば、1つの装置で吸着工程と脱離工程を同時に行うことができるため、より高い効率で二酸化炭素の吸着回収を実施できる傾向にある。一般的に、脱離工程の方が吸着工程よりも時間を要することから、容器をさらに複数増設して、より時間的な効率を上げることもできる。また、吸着の際には吸着熱が発生し、脱離の際には気化熱による冷却が起きることから、容器を熱交換器に接続し、伝熱させることで投入エネルギーを低減することもできる。また、ガスG1を過度にならない範囲(例えば前述した範囲)で加熱してから固体吸着剤を充填した容器に導入し、熱エネルギーにより二酸化炭素の脱離を促進させてもよい。このように、利用可能な排熱があった場合、コストを増加させることなく二酸化炭素分離効率を向上できる傾向にある。
【0021】
<二酸化炭素に由来する物質の製造方法>
本実施形態に係る二酸化炭素に由来する物質の製造方法(本明細書中、「第2の方法」ともいう。)は、少なくとも二酸化炭素に由来する物質(本明細書中、「物質A」ともいう。)を製造する方法であって、二酸化炭素が吸着された固体吸着材にガスG1を接触させて二酸化炭素を脱離し、当該二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物C1を得る脱離工程と、前記気体組成物C1を用いて前記物質を含む組成物C2を得る合成工程と、を有し、25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスG1の吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない。第2の方法は、このように構成されているため、低いエネルギーで物質Aを製造することができる。
【0022】
(脱離工程)
第2の方法は、二酸化炭素が吸着された固体吸着材にガスG1を接触させて二酸化炭素を脱離し、当該二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物C1を得る脱離工程を有する。
ここでいう、固体吸着材、ガスG1及び気体組成物C1は、それぞれ、第1の方法における固体吸着材、ガスG1及び気体組成物に対応しており、第1の方法と同様である。すなわち、第2の方法における脱離工程は、第1の方法における脱離工程に対応している。
【0023】
(吸着工程)
第2の方法においても、脱離工程の前に、第1の気体及び二酸化炭素を含む第1の気体混合物を前記固体吸着剤に接触させることにより、前記二酸化炭素を前記固体吸着剤に吸着させる吸着工程を更に有するものであってもよい。その実施要領は、第1の方法と同様である。
【0024】
(合成工程)
第2の方法は、気体組成物C1を用いて物質Aを含む組成物C2を得る合成工程を有する。本実施形態においては、物質Aの合成を予め想定してガスG1を選択することで、物質Aの製造効率を高めることができる。
【0025】
二酸化炭素とガスG1との反応は特に限定されず、ガスG1の種類によって適宜決められる。ガスG1に水素を用いた場合はメタン、メタノール、ギ酸、ジメチルエーテルなどを生成できる。ガスG1にアンモニアを用いた場合は尿素などを生成できる。ガスG1にメタンを用いた場合は、エタノール、酢酸、ジメチルエーテルなどが生成できる。ガスG1に塩素を用いた場合はクロロホルムなどの塩化有機化合物が生成できる。ガスG1にフッ素を用いた場合はフッ化有機化合物が生成できる。反応に用いる触媒は、実施する反応に合わせ適当な触媒を用いることができる。
【0026】
(分離工程及びリサイクル工程)
第2の方法は、組成物C2から、ガスG1のうち未反応のガスG1を分離する分離工程を有していてもよい。分離手段としては、特に限定されないが、例えば、物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法、膜分離法、深冷分離法等を採用することができる。
第2の方法は、分離工程により得られた未反応のガスG1を脱離工程のガスG1としてリサイクルするリサイクル工程を有していてもよい。
第2の方法は、分離工程とリサイクル工程とを含むことにより、製造効率をより向上できる傾向にある。
【0027】
(製造装置)
第2の方法を実施する上で、使用し得る製造装置としては、脱離工程及び合成工程を行うことができる構成である限り特に限定されず、例えば、ガス吸着装置やガス脱離装置として種々公知のものと、化学物質の合成用の反応器として種々公知のものと、を適宜組み合わせて適用することもできる。以下、
図2に示す装置(本明細書中、「第2の製造装置」ともいう。)を一例に挙げ、使用し得る装置の構成について説明する。
第2の製造装置において、吸着工程と脱離工程とを実施するための構成に当たる原料貯蔵タンク11、精製手段12、ポンプ13、固体吸着剤を充填した容器14a,14b、処理ガス貯蔵タンク15、ガスG1貯蔵タンク16、ポンプ17及び気体組成物C1貯蔵タンク18は、それぞれ、
図1における原料タンク1、精製手段2、ポンプ3、固体吸着剤を充填した容器4a,4b、処理ガス貯蔵タンク5、ガスG1貯蔵タンク6、ポンプ7及び気体組成物貯蔵ガスタンク8に対応しており、
図1に係る説明と同様であるため、重複する説明は割愛する。
合成工程においては、気体組成物C1貯蔵タンク18に貯蔵されたガスG1及び二酸化炭素を含む気体組成物C1が反応器20に供給される。気体組成物C1は、任意に、ポンプ19により加圧等して反応器20に供給されてもよい。反応器20としては、特に限定されないが、例えば、固定床触媒反応装置、流動床触媒反応装置、移動層触媒反応装置、電解反応装置、メンブレンリアクター等を用いることができる。反応器に用いられる触媒は、ガスG1の種類及び/又は目的生成物である物質Aに基づいて適宜選択できる。反応器で生成した物質Aは精製手段21で精製、分離することができ、製品タンク22に貯蔵することができる。
【0028】
また、第2の方法が、分離工程及びリサイクル工程を含む場合、例えば、
図3に示す装置(本明細書中、「第3の製造装置」ともいう。)を用いて、実施することができる。
第3の製造装置において、吸着工程と脱離工程と合成工程とを実施するための構成に当たる原料貯蔵タンク31、精製手段32、ポンプ33、固体吸着剤を充填した容器34a,34b、処理ガス貯蔵タンク35、ガスG1貯蔵タンク36、ポンプ37、気体組成物C1貯蔵タンク38、ポンプ39、反応器40、精製手段41及び製品タンク42は、それぞれ、
図2における原料貯蔵タンク11、精製手段12、ポンプ13、固体吸着剤を充填した容器14a,14b、処理ガス貯蔵タンク15、ガスG1貯蔵タンク16、ポンプ17、気体組成物C1貯蔵タンク18、ポンプ19、反応器20、精製手段21及び製品タンク22に対応しており、
図2に係る説明と同様であるため、重複する説明は割愛する
第3の製造装置では、反応器40(合成工程)において組成物C2を得た後、ガスG1分離手段43で組成物C2に含まれ得る未反応のガスG1を分離し(分離工程)、分離された未反応のガスG1を、再びガスG1貯蔵タンク36に貯蔵されたガスG1に混合して脱離工程に利用する(リサイクル工程)。二酸化炭素を吸着した固体吸着剤から二酸化炭素を脱離する際、二酸化炭素の分圧が低い、すなわちガスG1の量が多い方がより脱離が進むため、二酸化炭素分離の効率が上がる傾向にある。一方で、ガスG1を多くすると、二酸化炭素とガスG1を反応させた場合にガスG1が余剰となるため、未反応のガスG1の量が増える傾向にある。未反応のガスG1を分離回収し、リサイクルすることでガスG1供給量に対応する原料コスト増加を抑制できる。また、二酸化炭素は安定な物質であり、より活性化しやすいガスG1の比率を高めた方が反応の転化率が上がりやすく、このような観点からも反応効率がより高まる傾向にある。
【0029】
<固体吸着剤の再生方法>
本実施形態に係る固体吸着剤の再生方法(本明細書中、「第3の方法」ともいう。)は、二酸化炭素が吸着された固体吸着剤の再生方法であって、前記固体吸着剤にガスG1を接触させて二酸化炭素を脱離する脱離工程を有し、25℃でのガス吸着等温線の測定における、前記固体吸着剤による前記ガスG1の吸着量W1が、前記固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2よりも少ない。第3の方法は、このように構成されているため、低いエネルギーで固体吸着剤を再生することができる。
【0030】
(脱離工程)
第3の方法は、固体吸着剤にガスG1を接触させて二酸化炭素を脱離する脱離工程を有する。ここでいう、固体吸着材及びガスG1は、それぞれ、第1の方法における固体吸着材及びガスG1に対応しており、第1の方法と同様である。すなわち、第3の方法における脱離工程は、第1の方法における脱離工程に対応している。
第3の方法を実施した結果として(脱離工程により)得られる二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物は、第2の方法における気体組成物C1に対応しており、したがってこれを第2の方法の合成工程に適用することもできる。
【実施例0031】
以下に実施例等を挙げて本実施形態を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本実施形態として実施することができ、かかる変更は本実施形態の所定の要件を満たす限りにおいて、本発明の範囲に包含される。
【0032】
〔製造装置〕
図1に示す製造装置を用い、二酸化炭素の吸着分離性能の評価を行った。原料貯蔵タンク1には第1の気体混合物として、二酸化炭素20体積%と窒素80体積%とを含む気体混合物を充填した。ガスG1貯蔵タンク6には、ガスG1として99.9体積%の水素ガスを充填した。精製手段2の位置には特に設置せず、精製は実施しなかった。また、ポンプ3,7の位置には、ポンプの代わりにガス流量をコントロールするためのマスフローを設置し、加圧等の操作は実施しなかった。
【0033】
〔ガス吸着等温線測定〕
固体吸着剤によるガスG1の吸着量W1と、固体吸着剤による二酸化炭素の吸着量W2とを測定するため、次のとおりガス吸着等温線測定を行った。
(1)固体吸着剤を試料とし、12mmセル(Micro Meritics社製)に0.2g入れた。
(2)上記(1)のセルに入れた試料をMicro Meritics社製ガス吸着測定装置「3-Flex」(商品名)に設置し、250℃、0.001mmHg以下で12時間加熱真空脱気処理した。
(3)上記(2)の処理後のセルに入れた試料を25℃の恒温循環水中に入れ、試料の温度が25±0.2℃になった後、液化炭酸ガス(住友精化株式会社製、純度99.9質量%以上)、水素ガス(太陽日酸株式会社製、純度99.99質量%以上)又は窒素ガス(太陽日酸株式会社製、純度99.9995質量%)を用いて絶対圧0.25~760mmHgまで測定した。なお、上記測定中、圧力を経時的に測定し、その圧力変動が0.001%/10sec以下となったときに飽和吸着量に達したものと判定した。このようにして得られた飽和吸着量を、吸着量W1又は吸着量W2とした。
【0034】
〔実施例1〕
水259.10gと水酸化ナトリウム(NaOH、和光純薬工業株式会社製)0.98gと、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2、和光純薬工業株式会社製)20.50gと水ガラス3号(キシダ化学製)310.4gを混合し、45分間撹拌することで混合ゲルを調製した。混合ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1000mLのステンレス製オートクレーブに仕込み、撹拌なしで110℃、2日間水熱合成し、生成物をろ過して120℃で乾燥した後、粉末状のゼオライトを得た。
得られたゼオライト1gを0.1Nの硝酸カリウム水溶液500mLに入れ、60℃で3時間、400rpmで撹拌した。生成物をろ過して120℃で乾燥した後、カチオンの一部がカリウムに交換された粉末状のゼオライトを得た。
XRDの測定により得られたゼオライトがGIS型ゼオライトであることを確認した。さらに、他のゼオライトや非晶質シリカアルミナなどに由来するピークが見られなかったことから、高純度のGIS型ゼオライトであると評価した。
得られたGIS型ゼオライトのCO2、CH4、N2及びH2の吸着等温線を測定すると、25℃、760mmHgでの吸着量はそれぞれ、CO2:64.2cm3/g、CH4:0.9cm3/g、N2:0.8cm3/g、H2:0.1cm3/gであった。このK交換GIS型ゼオライトを直径8mm、高さ4mmの円柱状に圧縮成型したもの固体吸着剤とした。圧縮成形しても各ガスの吸着量は変わらず、CO2の吸着量W2は64.2cm3/gであった。ガスG1に用いる水素の吸着量W1は0.1cm3/gであり、W2>W1であった。
【0035】
(前処理工程)
容器4aには、上述の固体吸着剤を51.2g充填した。固体吸着剤は使用前に250℃に加熱しながら真空ポンプで真空引きして3時間保持、脱水処理してから用いた。
(吸着工程)
前述した第1の気体混合物(二酸化炭素を20体積%含む)を、圧力は常圧から+2kPa、500cc/分の流速で30分間、固体吸着剤を充填した容器4aに流通させ、処理ガス貯蔵タンク5で二酸化炭素吸着後の気体混合物を回収した。回収した気体混合物の組成は窒素が100体積%であり、二酸化炭素は検出されなかった。
(脱離工程)
第1の気体混合物の流通を停止した後、バルブを切り替え、ガスG1としての水素を、圧力は常圧から+2kPa、200cc/分で容器4aに30分間流通させ、水素と固体吸着剤から脱離した二酸化炭素とを含む気体組成物を気体組成物貯蔵タンク8で回収した。回収した二酸化炭素は762ccであった。回収した気体組成物の組成は二酸化炭素11.2体積%、水素88.7体積%であり、窒素は検出されなかった。この回収ガスは二酸化炭素と水素の混合ガスであり、触媒を用いて反応させることでメタノールなどの有価物を得ることができる反応原料ガスとして用いることができると評価された。また、吸着剤から二酸化炭素を脱離させるための再生投入エネルギーとしては、水素ガスを流通させただけであり、加熱や真空引き等をしていないため、ゼロと評価した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1と同じ装置を用い、二酸化炭素の回収を行った。容器4aには固体吸着剤として、東ソー製のFAU型ゼオライト13Xを50.8g充填した。用いたFAU型ゼオライト13Xは直径1.2mm、長さ5から10mmの円柱状であった。W2は124cm3/gであり、ガスG1に用いる水素の吸着量W1は0.2cm3/gであり、W2>W1であった。前処理工程、吸着工程及び脱離工程を実施例1と同じ条件で行った。吸着工程において、二酸化炭素吸着後の気体混合物の組成は窒素が100体積%であり、二酸化炭素は検出されなかった。脱離工程において固体吸着剤から脱離した二酸化炭素の量は1757ccであり、回収した気体組成物の組成は二酸化炭素22.5体積%、水素76.3体積%であり、窒素は1.2体積%であった。固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させるための再生投入エネルギーは実施例1と同様に水素ガスを流通させただけであり、加熱や真空引き等をしていないため、実施例1と同じくゼロと評価した。
【0037】
〔比較例1〕
脱離工程を実施する構成を除き、実施例1と同じ装置を用い、固体吸着剤は実施例1と同じ固体吸着剤を同量用い、二酸化炭素回収を行った。前処理工程及び吸着工程は実施例1と同じ条件で行った。処理ガス貯蔵タンク5で二酸化炭素吸着後の気体混合物を回収した。回収した気体混合物の組成は窒素が100体積%であり、二酸化炭素は検出されなかった。
脱離工程は、第1の気体混合物の流通を停止した後、バルブを切り替え、容器4aと気体組成物貯蔵タンク8のみが接続されている状態とした。容器4aをヒーターと断熱材で覆い固体吸着剤及び容器4aを加熱できる状態にし、100Wの一定の出力で5分間加熱した。この時、気体組成物貯蔵タンク8で固体吸着剤から脱離した二酸化炭素を回収した。回収した二酸化炭素は767ccであった。回収した気体組成物の組成は二酸化炭素98.8体積%、窒素1.2体積%であった。この気体組成物に、水素を混合すれば、二酸化炭素と水素の混合ガスとなり、触媒を用いて反応させることでメタノールなどの有価物を得ることができる反応原料ガスとして用いることができると評価された。また、固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させるための再生投入エネルギーは8.33Whであり、二酸化炭素1g当たり、5.55Wh/gのエネルギーを要すると評価された。
【0038】
〔比較例2〕
脱離工程を実施する構成を除き、実施例1と同じ装置を用い、固体吸着剤は実施例2と同じ固体吸着剤を同量用い、二酸化炭素回収を行った。前処理工程及び吸着工程は実施例1と同じ条件で行った。処理ガス貯蔵タンク5で二酸化炭素吸着後の気体混合物を回収した。回収した気体混合物の組成は窒素が100体積%であり、二酸化炭素は検出されなかった。
脱離工程は、比較例1と同じ条件(同じ装置構成)で行った。脱離工程により回収された二酸化炭素は1762ccであった。固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させるための再生投入エネルギーは8.33Whであり、二酸化炭素1g当たり、2.41Wh/gのエネルギーを要すると評価された。
本発明によれば、高いエネルギー効率で固体吸着剤から二酸化炭素を分離できる。また、分離した二酸化炭素とガスG1とを含む気体組成物を反応に供することで、対応する生成物を得ることができる。