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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147440
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】防音部材
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/13 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F02B77/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054930
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】富山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】大西 一義
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量化と、製造工程の簡略化とを両立することができる防音部材を提供する。
【解決手段】対象物を覆う防音部材1は、発泡樹脂で成形される吸音体10と、発泡樹脂で成形されるカバー体20と、を備える。吸音体10の周側面には、複数の勘合凹部が設けられる一方、カバー体20の側壁には、複数の勘合凸部が設けられており、複数の勘合凹部と、複数の勘合凸部との勘合により、吸音体10とカバー体20とが一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に凹部を有する対象物を覆う防音部材であって、
発泡樹脂からなる板状部材であって、前記防音部材の前記凹部に収容される凸部を有し、前記対象物の外面を覆う第一面と、前記第一面とは反対側の面である第二面と、前記第一面と前記第二面とを接続し、前記第二面側から見る場合、前記第一面が前記第二面の投影範囲内に収まるように傾斜する傾斜面とされている周側面と、を備える吸音体と、
発泡樹脂からなる凹状部材であって、前記吸音体の前記第二面を覆う底部と、前記底部の外縁から前記吸音体の前記第一面側に向かって前記吸音体の面方向の外側に傾斜するように立設され、前記吸音体の前記周側面を囲う側壁と、を備えるカバー体と、
を備え、
前記吸音体の前記周側面には、前記吸音体の面方向の外側に開口し、かつ、前記吸音体の厚さ方向に連通する勘合凹部が、周方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、
前記カバー体の前記側壁の内面には、前記吸音体の面方向の内側に突出し、かつ、前記吸音体の厚さ方向に連なる勘合凸部が、周方向における複数の前記勘合凹部に相対する位置に複数設けられている、防音部材。
【請求項2】
前記勘合凹部の内側面は、前記吸音体の厚さ方向に平行とされており、かつ、前記勘合凸部の外側面は、前記吸音体の厚さ方向に平行とされている、請求項1に記載の防音部材。
【請求項3】
前記吸音体は、矩形形状の板状部材であり、
前記勘合凹部は、前記吸音体の周方向において隣接する2つの前記周側面にそれぞれ設けられている、請求項1又は2の何れか1項に記載の防音部材。
【請求項4】
前記吸音体は、矩形形状の板状部材であり、
前記勘合凹部は、前記吸音体の面方向において互いに反対側に配置される2つの前記周側面にそれぞれ設けられている、請求項1又は2の何れか1項に記載の防音部材。
【請求項5】
前記吸音体は、前記吸音体の面方向において互いに反対側に配置される2つの前記勘合凸部の外側面間の長さが、前記吸音体の面方向において互いに反対側に配置される2つの前記勘合凹部の内側面間の長さに対して、小さく設定されている、請求項4に記載の防音部材。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂で構成するカバー本体の下面のうち1対のシリンダヘッドとの対向位置をウレタン発泡樹脂で覆ってなるウレタン吸音部と、カバー本体の下面のうちインテークマニホールドとの対向位置をPET製の不織布で覆ってなるPET吸音部とを備えたエンジンカバーが開示されている。ウレタン吸音部は、カバー本体の下面にウレタン発泡樹脂がモールド成形されて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-255190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のエンジンカバーは、カバー本体が合成樹脂で形成されているため、エンジンカバーのサイズに比例してカバー全体の重量が大きくなる。特に、大型のエンジンカバーの場合は、車両組付け時の作業負担が大きくなる。また、ウレタン吸音部は、カバー本体の下面にウレタン発泡樹脂がモールド成形されるため、カバー本体を製造する樹脂原料用の製造設備と、カバー本体にウレタン吸音部を発泡成形する発泡原料用の製造設備が必要となり、製造工程が煩雑となる。
【0005】
本発明は、軽量化と、製造工程の簡略化とを両立することができる防音部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、外面に凹部を有する対象物を覆う防音部材であって、発泡樹脂からなる板状部材であって、前記防音部材の前記凹部に収容される凸部を有し、前記対象物の外面を覆う第一面と、前記第一面とは反対側の面である第二面と、前記第一面と前記第二面とを接続し、前記第二面側から見る場合、前記第一面が前記第二面の投影範囲内に収まるように傾斜する傾斜面とされている周側面と、を備える吸音体と、発泡樹脂からなる凹状部材であって、前記吸音体の前記第二面を覆う底部と、前記底部の外縁から前記吸音体の前記第一面側に向かって前記吸音体の面方向の外側に傾斜するように立設され、前記吸音体の前記周側面を囲う側壁と、を備えるカバー体と、を備え、前記吸音体の前記周側面には、前記吸音体の面方向の外側に開口し、かつ、前記吸音体の厚さ方向に連通する勘合凹部が、周方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、前記カバー体の前記側壁の内面には、前記吸音体の面方向の内側に突出し、かつ、前記吸音体の厚さ方向に連なる勘合凸部が、周方向における複数の前記勘合凹部に相対する位置に複数設けられている、防音部材である。
【0007】
上記構成によれば、防音部材を構成する吸音体、および、カバー体は発泡樹脂で形成されるため、全体として軽量化することができる。また、防音部材が大型化する場合でも、車両などへの組む付け作業の負担を軽減することができる。
【0008】
上記構成によれば、防音部材を構成する吸音体の周側面には、吸音体の面方向の外側に開口し、かつ、吸音体がカバー体に収容される吸音体の厚さ方向に連通する勘合凹部が周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。また、防音部材を構成するカバー体の側壁の内面には、吸音体の面方向の内側に突出し、かつ、吸音体の厚さ方向に連なる勘合凸部が周方向において複数設けられている。これらの勘合凹部、および、勘合凸部は周方向において互いに相対する位置に設けられているため、組付け時の位置決めが容易となる。さらに、これらの勘合凹部、および、勘合凸部を互いに勘合させることで一体化できるため、簡易な方法で製造することができる。また、仕様によっては、同一の製造設備を使用し、金型や発泡原料を変更することで、吸音体、および、カバー体を製造し得るため、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】防音部材の斜視図である。
図2】吸音体の斜視図である。
図3】吸音体の平面図である。
図4図3の4-4の断面図である。
図5図3の5-5の断面図である。
図6】カバー体の斜視図である。
図7】カバー体の平面図である。
図8図7の8-8の断面図である。
図9図5の9-9の断面図である。
図10】防音部材1の平面図である。
図11図10の11-11の断面図である。
図12図10の12-12の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.防音部材1の全体構成)
防音部材1の一例の構成について、図1を参照して説明する。防音部材1は、対象物(不図示)を覆い、対象物から発生する音や振動の伝達を防止する。対象物は、例えば、車両の動力源であるモータ、エンジンや、インテークマニホールド、エアーコンプレッサ等である。
【0011】
防音部材1は、全体として、板状に形成されている。本実施例では、防音部材1は、平面視が略正方形である。防音部材1は、板状の吸音体10に、凹状のカバー体20が被せられて一体化されている。換言すると、防音部材1は、板状の吸音体10が、凹状のカバー体20内に収容され、吸音体10の一面を露出させた状態で一体化されている。なお、防音部材1は、対象物の形状や覆う範囲に応じて、任意の形状とすることができる。
【0012】
防音部材1には、例えば、対象物に設けられたピンなどの凸状係合部材(不図示)に係合されるグロメットなどの凹状係合部材(不図示)が設けられており、これらの係合部材の係合などにより、対象物に固定される。
【0013】
(2.防音部材1の構成部材)
防音部材1の構成部材について、図2図9を参照して説明する。防音部材1は、吸音体10、および、カバー体20を備えている。吸音体10は、対象物の外面に被せられ、主に、対象物から発生する音や振動の伝達を防止する部材である。カバー体20は、吸音体10を収容する部材である。カバー体20は、吸音体10の一面を露出した状態で覆い、吸音体10と共に対象物から発生する音や振動の伝達を防止する一方、飛散物から吸音体10を保護すると共に、防音部材1の意匠面を形成する。
【0014】
吸音体10は、図2に示すように、板状に形成され、一面(上面)には段差が設けられている。本実施例では、吸音体10は、図3に示すように、平面視が略正方形である。なお、吸音体10の形状は、平面視が、矩形、多角形、円形、楕円形など、任意の形状とすることができる。
【0015】
吸音体10は、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等を用いることができる。例えば、吸音性を高める観点から、アスカーC硬度が5~40度の発泡樹脂を用いるとよい。
【0016】
吸音体10は、第一面11(図2の上面)と、第一面11と反対側に位置する第二面13(図2の下面)と、第一面11と第二面13とを接続する周側面14と、を有する。第一面11が対象物を覆う被覆面とされる。
【0017】
第一面11は、対象物の被覆対象箇所の外面に応じた形状とされる。本実施例では、第一面11は、図2に示すように、略扇形状の平面部を残して中央領域から上方に隆起する第一凸部12aと、吸音体10の一側面側において第一凸部12aからさらに上方に隆起する第二凸部12bと、により構成される二段の凸部12を有する隆起形状とされている。なお、対象物である車両の駆動源であるモータなどは、複雑な外面形状を有し、外面に少なくとも凹部(不図示)を有する。第一面11は、対象物の外面形状(凹形状)に対応する少なくとも凸部12を有していればよく、凸部12の形状や範囲は、対象物の外面形状に応じて任意に設定される。
【0018】
第二面13は、図4図5に示すように、平面形状とされている。第二面13は、対象物の被覆面とは反対側の面であり、吸音体10は、カバー体20により吸音体10の第二面13側から被せられる。第二面13は、カバー体20内に収容され、後述するカバー体20の底部21と接触して、あるいは、底部21と僅かな隙間を持って配置される。
【0019】
周側面14は、図4に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図4の上下方向)の断面において、第二面13側から第一面11側に向かって内方に傾斜する傾斜面とされている。周側面14は、図4に示す断面と直交する断面(不図示)においても、同様に、第二面13側から第一面11側に向かって内方に傾斜する傾斜面とされている。換言すると、周側面14は、4つの側面が、第二面13側から見る場合、第一面11が第二面13の投影範囲内に収まる傾斜面とされている。
【0020】
なお、吸音体10は、上下の金型内に発泡樹脂材料を注入して発泡成形される。例えば、平形状の上型と、凹形状の下型が用いられる。ここで、吸音体10の第一面11は凸部12を有するため、凸部12の先端側に発泡樹脂を充填させる場合、底面に凸部12の形状に対応する凹部が設けられた下型が用いられる。成形後の脱形を容易にするため、下型の凹内面は傾斜面とされている。そのため、脱型後の吸音体10の周側面14は、下型の凹内面に対応した傾斜面とされる。
【0021】
周側面14には、図2図3に示すように、4つの側面の略中間部に、吸音体10の厚さ方向Lに連通する勘合凹部15がそれぞれ形成されている。本実施例では、勘合凹部15は、吸音体10の面方向外側に開口する平面視略半円形状とされている。ここで、上述したとおり、周側面14は、吸音体10の厚さ方向L(図4の上下方向)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって内方に傾斜する傾斜面とされているのに対して、各勘合凹部15の内側面は、図5に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図5の上下方向)の断面において、吸音体10の厚さ方向Lに沿った水平面とされている。換言すると、各勘合凹部15の内側面は吸音体10の厚さ方向Lの断面において、第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。
【0022】
なお、勘合凹部15は、例えば、上述した吸音体10の成形に用いる下型として、内側面に、勘合凹部15の形状に対応する凸部を備える下型を用いることで、成形することができる。
【0023】
カバー体20は、図6に示すように、凹形状に形成されている。カバー体20は、凹形状の底部21と、底部21の外縁から立設され、凹形状の側部を構成する側壁22と、を有する。本実施例では、カバー体20は、底部21と側壁22とが略同一な厚さで形成されている。カバー体20は、吸音体10の第二面13側から被せられ、底部21より、吸音体10の第二面13が覆われた状態で収容されるため、底部21は、吸音体10の第二面13に対応した形状とされる。なお、底部21の形状は、平面視が、矩形、多角形、円形、楕円形など、吸音体10の形状に任意の形状とすることができる。
【0024】
カバー体20は、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等を用いることができる。例えば、飛散物から吸音体10を保護する観点から、アスカーC硬度が40~95度の発泡樹脂を用いるとよい。なお、使用環境によっては、吸音体10と同等の硬度とすることもできる。
【0025】
側壁22は、図8に示すように、図8の上下方向(吸音体10の厚さ方向L)の断面において、底部21側から先端側に向かってカバー体20の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。換言すると、カバー体20に吸音体10が収容される場合、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。側壁22は、図8に示す断面と直交する断面においても、同様に、底部21側から先端側に向かって、吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。換言すると、カバー体20に吸音体10が収容される場合、側壁22は、4つの壁が、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。
【0026】
なお、カバー体20は、上下の金型内に発泡樹脂材料を注入して発泡成形される。ここで、カバー体20は凹状部材であるため、カバー体20の底部21に発泡樹脂を充填させる場合、例えば、凹形状の下型と、下型の凹部内に配置される上型が用いられる。成形後の脱形を容易にするため、下型の凹内面、および、上型の側面はそれぞれ傾斜面とされている。そのため、脱型後のカバー体20の側壁22は、下型の凹内面、および、上型の側面にそれぞれ対応した傾斜面とされる。
【0027】
側壁22の内面には、図6図7示すように、4つの壁の略中間部に、吸音体10の面方向の内側に突出し、吸音体10の厚さ方向L(図6の上下方向)に連なる勘合凸部23がそれぞれ形成されている。本実施例では、勘合凸部23は、平面視略半円形状とされている。勘合凸部23は、後述するように、吸音体10がカバー体20に収容される際に、吸音体10の勘合凹部15と勘合される。そのため、勘合凸部23は、吸音体10の勘合凹部15の凹内面の形状に対応する凸形状とされ、吸音体10の各勘合凹部15に相対する位置に形成される。
【0028】
ここで、前述したとおり、側壁22は、図8の上下方向(吸音体10の厚さ方向L)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされているのに対して、各勘合凸部23の外側面は、図9に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図9の上下方向)に沿った水平面とされている。なお、換言すると、各勘合凸部23の外側面は、吸音体10の厚さ方向Lの断面において、第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。
【0029】
なお、勘合凸部23は、上述したカバー体20の成形に用いる上型として、側面に、勘合凸部23の形状に対応する凹部を備える上型を用いることで、成形することができる。
【0030】
(3.防音部材1の一体化構成)
防音部材1の一体化構成について、図10図12を参照して説明する。防音部材1は、吸音体10にカバー体20が被せられて一体化される。吸音体10の第二面13側からカバー体20が被せられ、吸音体10の第一面11を露出させた状態で、吸音体10がカバー体20内に収容される。なお、カバー体20内に、吸音体10を第二面13側から挿入して一体化させてもよい。
【0031】
図10に示すように、吸音体10の周側面14に成形された4つの勘合凹部15に、カバー体20の側壁22に成形された4つ勘合凸部23が嵌め込まれて一体化されている。
【0032】
吸音体10の周側面14は、図11に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図11の上下方向)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、内方に傾斜する傾斜面とされている。一方、カバー体20の側壁22は、図11に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図11の上下方向)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。そのため、収容状態では、吸音体10の周側面14とカバー体20の側壁22とは、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、互いに間隔が大きくなるように収容される。
【0033】
一方、吸音体10の周側面14に形成された各勘合凹部15の内側面は、図12に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図12の上下方向)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。また、カバー体20の側壁22に形成された各勘合凸部23の外側面は、図12に示すように、吸音体10の厚さ方向L(図12の上下方向)の断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。そのため、収容状態では、各勘合凹部15の内側面と各勘合凸部23の外側面とは、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、互いに当接した状態で収容されている。
【0034】
本実施例では、収容前の状態では、吸音体10は、図12の破線で示すように、吸音体10の面方向において、互いに反対側に位置する2つの勘合凸部23の外側面間の長さが、吸音体10の面方向において、互いに反対側に位置する2つの勘合凹部15の内側面間の長さに対して、小さく設定されている。そのため、収容状態では、図12に示すように、吸音体10は、互いに反対側に位置する2つの勘合凸部23の間に、吸音体10の面方向(吸音体10の厚さ方向Lに直交する方向)に圧縮された状態で収容される。本構成により、カバー体20に対して吸音体10の圧縮反力が付与され、カバー体20に対する吸音体10の保持力が高められている。
【0035】
(4.防音部材1の効果)
防音部材1を構成する吸音体10、および、カバー体20は発泡樹脂で形成されるため、全体として軽量化することができる。よって、防音部材が大型化する場合でも、車両などへの組み付け作業の負担を軽減することができる。
【0036】
防音部材1を構成する吸音体10の周側面14には、吸音体10の面方向の外側に開口し、かつ、吸音体10がカバー体20に収容される吸音体10の厚さ方向Lに連通する勘合凹部15が周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。また、防音部材1を構成するカバー体20の側壁22の内面には、吸音体10の面方向の内側に突出し、かつ、吸音体10の厚さ方向Lに連なる勘合凸部23が周方向において複数設けられている。これらの勘合凹部15、および、勘合凸部23は周方向において互いに相対する位置に設けられているため、組付け時の位置決めが容易となる。さらに、これらの勘合凹部15、および、勘合凸部23を互いに勘合させることで一体化できるため、簡易な方法で製造することができる。また、仕様によっては、同一の製造設備を使用し、金型や発泡原料を変更することで、吸音体10、および、カバー体20を製造し得るため、製造工程を簡略化することができる。
【0037】
防音部材1は、外面に凹部を有する対象物を防音対象とするため、吸音体10の第一面11には、対象物の凹部に収容される凸部12を有する。凸部12を有する板状の吸音体10は、上述したとおり、成形時の原料充填や脱形性を考慮した金型構成により、吸音体10の周側面14は、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、内方に傾斜する傾斜面とされている。一方、凹状板部材であるカバー体20は、上述したとおり、成形時の原料充填や脱形性を考慮した金型構成により、カバー体20の側壁22は、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、吸音体10の面方向の外側に傾斜する傾斜面とされている。そのため、収容状態では、吸音体10の周側面14とカバー体20の側壁22とは、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、互いに間隔が大きくなり、吸音体10がカバー体20から脱落され易い構造とされる。
【0038】
ここで、防音部材1は、吸音体10の4つの周側面14に、吸音体10の面方向の外側に開口し、かつ、吸音体10の厚さ方向Lに連通する勘合凹部15がそれぞれ設けられている。また、カバー体20の側壁22の内面には、吸音体10の面方向の内側に突出し、かつ、吸音体10の厚さ方向Lに連なる勘合凸部23が、吸音体10の各勘合凹部15に相対する位置にそれぞれ設けられており、これらの勘合凹部15、および、勘合凸部23がそれぞれ勘合されて一体化されている。
【0039】
このように、収容状態では、吸音体10の周側面14とカバー体20の側壁22とが、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、互いに間隔が大きくなり、吸音体10がカバー体20から脱落され易い構造を、これらの勘合凹部15、および、勘合凸部23のそれぞれ勘合により補うことで、取り扱いに支障のない程度に、吸音体10とカバー体20とを一体化させることができる。
【0040】
特に、本実施例の防音部材1では、吸音体10における各勘合凹部15の内側面が、吸音体10の厚さ方向Lの断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。また、カバー体20における各勘合凸部23の外側面が、吸音体10の厚さ方向Lの断面において、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって傾斜することなく、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされている。そのため、収容状態では、各勘合凹部15の内側面と各勘合凸部23の外側面とは、吸音体10の第二面13側から第一面11側に向かって、互いに当接した状態で収容されるため、カバー体20からの吸音体10の脱落をより効果的に防止することができる。
【0041】
(5.その他の実施例)
上記実施例は、技術的に矛盾しない範囲で、以下のように変更して実施することができる。
【0042】
上記実施例の防音部材1では、吸音体10における各勘合凹部15の内側面、および、カバー体20における各勘合凸部23の外側面は、吸音体10の厚さ方向Lの断面において、吸音体10の厚さ方向Lと平行とされているが、吸音体10における各勘合凹部15の内側面、および、カバー体20における各勘合凸部23の外側面は、吸音体10の厚さ方向Lの断面において、吸音体10の厚さ方向Lに対して傾斜する傾斜面としてもよい。例えば、上記実施例のように、吸音体10における互いに反対側に位置する周側面14の外面間の長さを、カバー体20における互いに反対側に位置する側壁22の内面間の長さに対して大きく設定したり、勘合凸部23の形状を勘合凹部15の形状に対して大きく設定するなど、収容状態において、勘合凸部23の外側面の一部が勘合凹部15の内側面の一部に当接されるように設定すればよい。
【0043】
上記実施例の防音部材1では、吸音体10、および、カバー体20に、それぞれ4つの勘合凹部15、および、4つの勘合凸部23を設ける構成とした。勘合凹部15、および、勘合凸部23は、少なくとも2つずつ設ければよい。例えば、吸音体10が平面視矩形形状である場合、吸音体10の4つの周側面14のうち、隣接する2つの周側面14にそれぞれ勘合凹部15を設ける一方、カバー体20の4つの側壁22のうち、各勘合凹部15に相対する2つの隣接する側壁22にそれぞれ勘合凸部23を設けることができる。また、吸音体10が平面視矩形形状である場合、吸音体10の4つの周側面14のうち、それぞれ反対側に配置される2つの周側面14にそれぞれ勘合凹部15を設ける一方、カバー体20の4つの側壁22のうち、各勘合凹部15に相対する位置であって、それぞれ反対側に配置される2つの側壁22にそれぞれ勘合凸部23を設けることができる。
【0044】
上記実施例の防音部材1では、吸音体10の周側面14に勘合凹部15を設ける一方、カバー体20の側壁22に勘合凸部23を設ける構成としたが、吸音体10の周側面14に勘合凸部(第二勘合凸部)を設ける一方、カバー体20の側壁22に勘合凹部(第二勘合凹部)を設ける構成としてもよい。この場合、上記実施例のカバー体20に対して、周壁22の厚みを大きくすることで、カバー体20の側壁22に第二勘合凹部を形成することができる。なお、第二勘合凸部、および、第二勘合凹部は、上述した勘合凸部23、および、勘合凹部15と同様の構造とされるが、第二勘合凹部は、周壁22の厚みに応じて、任意に設計することができ、第二勘合凸部は、第二勘合凹部に対応した形状とすればよい。
【0045】
上記実施例の防音部材1では、勘合凹部15を吸音体10の厚さ方向全体に連通されるように構成し、勘合凸部23を吸音体10の厚さ方向全体に連なるように構成したが、勘合凹部15、および、勘合凸部23を吸音体10の第二面13のみの領域に設けてもよい。また、勘合凹部15、および、勘合凸部23の形状は、平面視略半円形状に限らず、勘合可能な凹形状および凸形状であれば、任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1:防音部材、10:吸音体、11:第一面、12:凸部、13:第二面、14:周側面、15:勘合凹部、20:カバー体、21:底部、22:側壁、23:勘合凸部























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