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特開2023-147462プロトコル変換装置、方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147462
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】プロトコル変換装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/08 20220101AFI20231005BHJP
【FI】
H04L69/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054967
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】毛利 元一
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
(57)【要約】
【課題】SNMPに対応していないネットワーク設定監視装置からSNMPにしか対応していないネットワーク機器に対する状態情報の取得及び設定情報の投入を実現する。
【解決手段】変換装置1は相互に互換性の無い通信プロトコルの各情報モデルを相互に変換する。インタフェース101,102はRESTCONF/YANGやNETCONF/YANGに対応する。インタフェース103はSNMPのみに対応する。変換テーブル部109にはRESTCONF/YANGやNETCONF/YANGに対応する情報モデルとSNMPに対応する情報モデルとを相互に変換するための変換テーブルが登録されている。変換装置1はネットワーク設定監視装置からYANGモデルの監視情報取得要求を取得すると変換テーブルを参照してMIBモデルの監視情報取得要求に変換する。YANGモデルの機器設定投入要求を取得するとMIBモデルの機器設定投入要求に変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に互換性の無い通信プロトコルの各情報モデルを相互に変換するプロトコル変換装置において、
第1の通信プロトコルに対応した第1インタフェースと、
第2の通信プロトコルに対応した第2インタフェースと、
前記第1及び第2インタフェースの一方から取得した第1及び第2の通信プロトコルの一方に対応する情報モデルを他方の通信プロトコルに対応する情報モデルに変換するための変換テーブルを記憶した変換テーブル部と、
前記変換テーブルを参照して、前記通信プロトコルの一方に対応する情報モデルを他方に対応する情報モデルに変換する変換手段とを具備し、
前記通信プロトコルを変換した情報モデルを前記第1及び第2インタフェースの他方から送信することを特徴とするプロトコル変換装置。
【請求項2】
前記変換手段は、前記第1インタフェースに接続したネットワーク設定監視装置から第2インタフェースに接続したネットワーク機器に対する監視情報取得要求及びその応答に係る情報モデルを、前記変換テーブルを参照して変換した後に、それぞれ対応する宛先へ送信する監視情報収集手段を具備したことを特徴とする請求項1に記載のプロトコル変換装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記第1インタフェースに接続したネットワーク設定監視装置から第2インタフェースに接続したネットワーク機器に対する機器設定投入要求及びその応答に係る情報モデルを、前記変換テーブルを参照して変換した後に、それぞれ対応する宛先へ送信する機器設定投入手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のプロトコル変換装置。
【請求項4】
前記変換手段は、前記第2インタフェースに接続した各ネットワーク機器から、そのIPアドレス、情報モデルの変換を受け付けるポート番号および対応プロトコルに関する能力の情報を取得してデータベースに登録するネットワーク機器登録手段を更に具備し、
前記監視情報収集手段は、前記ネットワーク設定監視装置からポート番号指定を含む監視情報取得要求を取得すると、前記データベース上で当該ポート番号と対応付けられたIPアドレスにアクセスして監視情報を取得することを特徴とする請求項2に記載のプロトコル変換装置。
【請求項5】
前記変換手段は、前記第2インタフェースに接続した各ネットワーク機器から、そのIPアドレス、情報モデルの変換を受け付けるポート番号および対応プロトコルに関する能力の情報を取得してデータベースに登録するネットワーク機器登録手段を更に具備し、
前記機器設定投入手段は、前記ネットワーク設定監視装置からポート番号指定を含む機器設定投入要求を取得すると、前記データベース上で当該ポート番号と対応付けられたIPアドレスにアクセスして機器設定を投入することを特徴とする請求項3に記載のプロトコル変換装置。
【請求項6】
前記第1インタフェースに接続したネットワーク設定監視装置がNETCONF/YANG及びRESTCONF/YANGの少なくとも一方に対応し、前記第2インタフェースに接続したネットワーク機器がSNMP/MIBに対応することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のプロトコル変換装置。
【請求項7】
前記変換テーブル部が、
MIBモデルの状態項目、変換キー及びINDEXの関係を定義する第1の変換テーブルと、
YANGモデルの状態項目、変換キー及び主キーの関係を定義する第2の変換テーブルとを具備し、
前記変換手段は、
前記MIBモデルを前記第1の変換テーブルに適用して、状態項目データごとに変換キーが対応付けられた変換用実データに変換し、
前記変換用実データを前記第2の変換テーブルに適用してYANGモデルに変換することを特徴とする請求項6に記載のプロトコル変換装置。
【請求項8】
前記変換手段は、
前記YANGモデルを前記第2の変換テーブルに適用して状態項目データごとに変換キーが対応付けられた変換用実データに変換し、
前記変換用実データを前記第1の変換テーブルに適用してMIBモデルに変換することを特徴とする請求項7に記載のプロトコル変換装置。
【請求項9】
前記第1の変換テーブルが、状態項目、変換キー、INDEX及び状態遷移変換キーの関係を定義して前記変換用実データの変換キーが状態遷移変換キーに対応する状態を含み、
前記第2の変換テーブルが、YANGモデルの状態項目、変換キー、主キー及び状態遷移変換キーの関係を定義して前記変換用実データの変換キーが状態遷移変換キーに対応する状態を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のプロトコル変換装置。
【請求項10】
相互に互換性の無い通信プロトコルの各情報モデルをコンピュータが相互に変換するプロトコル変換方法において、
第1の通信プロトコルに対応した第1インタフェース及び第2の通信プロトコルに対応した第2インタフェースの一方から情報モデルを取得し、
前記取得した情報モデルを他方の通信プロトコルに対応する情報モデルに変換し、
前記通信プロトコルを変換した情報モデルを前記第1及び第2インタフェースの他方から送信することを特徴とするプロトコル変換方法。
【請求項11】
相互に互換性の無い通信プロトコルの各情報モデルを相互に変換するプロトコル変換プログラムにおいて、
第1の通信プロトコルに対応した第1インタフェース及び第2の通信プロトコルに対応した第2インタフェースの一方から情報モデルを取得する手順と、
前記取得した情報モデルを他方の通信プロトコルに対応する情報モデルに変換する手順と、
前記通信プロトコルを変換した情報モデルを前記第1及び第2インタフェースの他方から送信する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプロトコル変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトコル変換装置、方法及びプログラムに係り、特に、NETCONF/RESTCONFのみに対応したネットワーク設定監視装置などの運用システムにおいて、SNMPのみに対応しているネットワーク機器を取り扱うため、NETCONF/RESTCONFプロトコルインターフェースから入力された設定・監視情報取得依頼データをSNMPプロトコルに変換するプロトコル変換装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを利用したICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)システムは人々の生活やビジネスに欠かせないものになり、通信の需要がますます高まっている。この旺盛なICTシステム需要に対応するため、通信事業者は運用システムを用い、ネットワークの設定や監視の自動化を実現している。
【0003】
ネットワーク(NW)機器への設定情報やNW機器から取得できる状態情報は装置メーカや装置の機種によって異なるため、NW設定やNW機器の異常を分析するためには設定・監視装置に機種毎の分析プログラムやポリシーを実装する必要があった。
【0004】
特許文献1には、共通ネットワーク状態モデルをシステム上に定義し、NW機器毎に異なるネットワーク状態モデルにおいて監視部位毎に1つ以上の状態項目を共通ネットワーク状態モデルに紐付けすることで、装置メーカや装置毎に異なるNW機器の状態情報を共通化する技術が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、ネットワーク機器を対象とした設定管理プロトコルの標準化技術が開示されている。非特許文献2には、非特許文献1が開示する標準化技術を活用したマルチベンダ・マルチデバイス環境の運用自動化技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6927930号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IETF RFC6241 NETCONF (Network Configuration Protocol)、[online]、<https://tools.ietf.org/html/rfc6241>
【非特許文献2】Cisco社ホームページ<http://www.tail-f.com/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、NW設定・監視などの各運用システムがNETCONF(Network Configuration Protocol)やSNMP (Simple Network Management Protocol)などの複数の設定・監視プロトコルに対応する必要があるため、システムとNW機器との間におけるインタフェースが複雑化し、システムコストが増加する。
【0009】
非特許文献1,2は新しいプロトコルをNW機器に実装し、システム側のIF実装を簡易化することが可能であるが、SNMPにしか対応しない機器のように、新しいプロトコルへの対応が難しい古いNW機器を設定・監視することができない。
【0010】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、SNMPに対応していないネットワーク設定監視装置からSNMPにしか対応していないネットワーク機器に対する状態情報の取得及び機器設定情報の投入を実現するプロトコル変換装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、相互に互換性の無い通信プロトコルの各情報モデルを相互に変換するプロトコル変換装置において、第1の通信プロトコルに対応した第1インタフェースと、第2の通信プロトコルに対応した第2インタフェースと、前記第1及び第2インタフェースの一方から取得した第1及び第2の通信プロトコルの一方に対応する情報モデルを他方の通信プロトコルに対応する情報モデルに変換するための変換情報を記憶した変換テーブルと、前記変換テーブルを参照して、前記通信プロトコルの一方に対応する情報モデルを他方に対応する情報モデルに変換する変換手段とを具備し、通信プロトコルを変換した情報モデルを第1及び第2インタフェースの他方から送信するようにした点に特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SNMPに対応していない新式のネットワーク設定監視装置がSNMPにしか対応していない旧式のネットワーク機器を対象に、状態情報の取得及び設定情報の投入が可能になるので、新式のネットワーク設定監視装置から旧式のネットワーク機器を遠隔で制御できるようになる。また、ネットワーク設定監視装置が複数存在する場合でも各装置がSNMPに対応できるようにするための機能追加や設定が不要となるためにコスト削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用されるネットワークシステムの機能ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る変換装置の機能ブロック図である。
図3】MIBモデルに関して変換テーブル部に登録される変換情報(変換テーブル)の例を示した図である。
図4】MIBモデルで記述された状態情報とYANGモデルで記述された状態情報とのデータ構造上の違いを説明するための図である。
図5】YANGモデルに関して変換テーブル部に登録される変換情報(変換テーブル)の例を示した図である。
図6】監視情報収集部がMIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換してネットワーク設定監視装置へ返答する例を示した図である。
図7】機器設定投入部がYANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換してネットワーク機器に投入する例を示した図である。
図8】NW機器登録部によるNW機器登録の手順を示したシーケンスフローである。
図9】NW機器登録情報の例を示した図である。
図10】監視情報収集部がネットワーク機器から監視情報を収集する動作を示したシーケンスフローである。
図11A】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その1)である。
図11B】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その2)である。
図11C】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その3)である。
図11D】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その4)である。
図11E】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その5)である。
図11F】MIBモデルの監視情報をYANGモデルに変換する手順を説明するための図(その6)である。
図12】機器設定投入部がネットワーク機器に機器設定を投入する動作を示したシーケンスフローである。
図13A】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その1)である。
図13B】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その2)である。
図13C】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その3)である。
図13D】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その4)である。
図13E】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その5)である。
図13F】YANGモデルの機器設定情報をMIBモデルに変換する手順を説明するための図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるネットワークシステムの構成を示した機能ブロック図であり、ここでは本発明の説明に不要な構成の図示を省略している。
【0015】
本実施形態では、ネットワーク設定プロトコルとして現在主流のRESTCONF/YANGやNETCONF/YANGには対応するが従来のSNMPには対応しない新式のネットワーク設定監視システムから、SNMPには対応するがRESTCONF/YANGやNETCONF/YANGには対応しない旧式のネットワーク機器を制御する場合を例にして説明する。
【0016】
ネットワーク設定監視装置NcmはRESTCONF/YANGのみに対応し、APIとしてRESTCONFインタフェースのみを備える。ネットワーク設定装置NcはNETCONF/YANGのみに対応し、APIとしてNETCONFインタフェースのみを備える。ネットワーク監視装置NmはNETCONF/YANGのみに対応し、APIとしてNETCONFインタフェースのみを備える。
【0017】
ネットワーク機器NNtypeAはRESTCONF/YANGのみに対応し、RESTCONFインタフェースを備える。ネットワーク機器NNtypeBはSNMPのみに対応し、SNMP/agentインタフェースを備える。ネットワーク機器NNtypeCはNETCONF/YANGのみに対応し、NETCONFインタフェースを備える。
【0018】
これら新式の各ネットワーク設定監視/設定/監視装置Ncm,Nc,Nmは新式の各ネットワーク機器NNtypeA,NNtypeCとRESTCONFインタフェースを介して直接的に通信し、RESTCONF/YANGに対応しない旧式の各ネットワーク機器NNtypeBとは変換装置1を介して間接的に通信する。
【0019】
前記変換装置1は、RESTCONF,NETCONF及びSNMP Clientの各インタフェースを備え、新式のネットワーク設定監視/設定/監視装置Ncm,Nc,NmとはRESTCONF又はNETCONFの各インタフェースを介して通信し、旧式のネットワーク機器NNtypeBとはSNMP Clientを介して通信する。
【0020】
前記変換装置1は、ネットワーク設定監視/設定/監視装置Ncm,Nc,NmがYANG形式で記述した情報モデル(YANGモデル)をMIB形式の記述に変換し、SNMPのみに対応する旧式のネットワーク機器NNtypeBへ送信する。また、ネットワーク機器NNtypeBがMIB形式で記述した情報モデル(MIBモデル)をYANG形式の記述に変換し、RESTCONF又はNETCONFに対応する新式のネットワーク設定監視/設定/監視装置Ncm,Nc,Nmへ送信する。
【0021】
このような変換装置1は、CPU、ROM、RAM、バス、インタフェース等を備えた汎用のコンピュータやサーバに、以下に詳述する各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいはアプリケーションの一部をハードウェア化またはソフトウェア化した専用機や単能機としても構成できる。
【0022】
図2は、前記変換装置1の機能ブロック図であり、RESTCONFインタフェース101,NETCONFインタフェース102、SNMP Client103、ユーザインタフェース(UI)104,NW機器登録部105,NW機器登録情報データベース(DB)106、監視情報収集部107、機器設定投入部108及び変換テーブル部109を主要な構成とし、ここでも本発明の説明に不要な構成の図示を省略している。
【0023】
前記変換装置1には情報管理モデルの変換対象となるネットワーク機器NN(typeB)が予め登録され、登録されたネットワーク機器NNのみを対象に情報モデルの変換動作を行うことができる。初めにオペレータはUI104を通じてNW機器登録部105にアクセスし、変換対象となるネットワーク機器NN(typeB)の情報をNW機器登録情報としてNW機器登録情報DB106へ登録する。
【0024】
前記変換テーブル部109には、NETCONFやRESTCONFにおいて取り扱う情報モデルであるYANGモデルとSNMPにおいて取り扱う情報モデルであるMIBモデルとを相互に変換するための情報が予めテーブル形式で登録されている。図3,5は、変換テーブル部109に予め登録される変換テーブルの例を示した図であり、後に詳述するように、MIBモデル及びYANGモデルはこれらの変換テーブルを用いて相互に変換される。
【0025】
図4に示すように、MIBモデルで記述された状態情報とYANGモデルで記述された状態情報とはデータ構造が異なり、MIBモデルではifMameやifindexといった状態項目毎に少なくとも一つの部位(監視項目)が紐付く一方、YANGモデルでは部位毎に少なくとも1つの状態項目が紐付く。
【0026】
本実施形態では、このようなデータ構造の相違に着目し、ツリー構造で記述されたMIBファイル中のINDEXに基づいて特定オブジェクトにおける主キーを特定し、変数xとして定義する。また、通信機器データモデルでは、インタフェースやIPアドレスなどに1対1で紐づくデータが複数存在しているため、データ識別子として主キーを利用する。
【0027】
図3は、ネットワーク機器が持つ複数のインタフェースに紐づくデータにおいて、MIBモデルをYANGモデルに変換するための変換テーブル(第1の変換テーブル)の構築方法を示した図であり、ここではIF-MIBのデータモデルに注目して説明する。第1の変換テーブルは、MIBモデルの階層化された状態項目(OID)、変換キー、状態遷移変換キー及びINDEXの関係を定義する。
【0028】
IF-MIBのデータモデルにおいては、その仕様を定めたIF-MIB.txtファイルを参照し、ここではIfEntryオブジェクトのifindex(インタフェースのインデックス)が主キー(INDEX)として定義されている。そして、各インタフェースの状態項目が格納される固有のOIDにおいて、そのオブジェクトツリーのどの部分に主キーが記載されているかが変数xとして示される。図示の例では、ifindexがOID[1.3.4.1.2.1.2.2.1.1]の下層に記載されている。
【0029】
また、変数xを用いた固有のOID、すなわち状態項目に対して「変換キー」を定義し、YANGモデルにおけるどのデータと紐づくかを決定する。前記変換キーは状態項目に合わせて定義される。なお、状態遷移が数値として定義されている状態項目に対しては状態遷移変換キーが更に設定される。
【0030】
図5は、機器が持つ複数のインタフェースに紐づくデータにおいて、YANGモデルをMIBモデルに変換するための変換テーブル(第2の変換テーブル)の構築方法を示した図であり、YANGモデルの階層化された状態項目、変換キー、主キー及び状態遷移変換キーの関係が定義され、前記第1の変換テーブルの各状態項目に対応する状態項目には前記変換キーと同一の変換キーが設定される。
【0031】
MIBモデルの場合と同様にYANGファイルを参照し、ここではinterfaceオブジェクトのnameが主キーとして定義されている。また、MIBモデルの場合と同様に状態変移がいくつかの選択肢から得られる状態項目については状態遷移変換キーが設定される。本実施形態では、これらの変換テーブルにおいて同一の変換キーを有する状態情報を対応する状態情報に入力することで変換動作が実現される。
【0032】
図2へ戻り、RESTCONF/YANGにのみに対応した新式のネットワーク設定監視装置Ncm1は、RESTCONFインタフェースを通じて監視情報収集部107及び機器設定投入部108と協調動作することで、監視情報の収集依頼及びその結果取得、並びに機器設定の投入依頼及びその結果取得の各機能を実現する。
【0033】
NETCONF/YANGにのみ対応したネットワーク設定監視装置Ncm2は、NETCONFインタフェースを通じて監視情報収集部107及び機器設定投入部108と協調動作することで監視情報の収集依頼及びその結果取得、並びに機器設定の投入依頼及びその結果取得の各機能を実現する。
【0034】
前記監視情報収集部107は、新式の各ネットワーク設定監視装置NcmからRESTCONF GETやNETCONF GETなどの監視情報収集に係るコマンドを受けると変換テーブル部109を参照し、YANGモデルで記述される監視情報収集モデルをMIBモデルで記述される監視情報収集モデルに変換する。そして、コマンドの宛先として指定されているネットワーク機器NNtypeBへSNMP client経由で当該MIBモデルを送信する。
【0035】
前記監視情報収集部107は更に、図6に一例を示すように、旧式のネットワーク機器NNtypeBが応答したMIBモデルの監視情報をYANGモデルで記述されるxml,yamlあるいはjsonフォーマットなどの監視情報に変換し、要求したネットワーク設定監視装置Ncmへ返答する。
【0036】
機器設定投入部108は、新式の各ネットワーク設定監視装置NcmからRESTCONF DELETE,PUT,POST,NETCONF EDITなどの機器設定に係るコマンドを受信すると変換テーブル部109を参照し、図7に示すように、YANGモデルで記述される機器設定情報をMIBモデルで記述されるSNMPデータに変換する。そして、コマンドの宛先として指定されている旧式のネットワーク機器NNtypeBへSNMP client経由で送信することでMIBモデルの当該機器設定情報を投入する。
【0037】
このように、本実施形態ではSNMPにしか対応しない旧式のネットワーク装置に対して、SNMPに対応しない新式のネットワーク設定監視装置から、監視情報収集や機器設定の投入といった制御を遠隔で行うことが可能となるので、各ネットワーク設定監視装置の機能削減が可能となり、そのコスト削減が見込める。
【0038】
図8は、前記NW機器登録部105によるNW機器登録の手順を示したシーケンスフローであり、時刻t1では、オペレータがUI104からNW機器登録部105に対して、旧式のネットワーク機器NNtypeBの機器登録を依頼する。NW機器登録部105は、依頼を受けたネットワーク機器NNtypeBが対応しているMIBモデルを確認するために、時刻t2でネットワーク機器NNtypeBに対してSNMP pollingを送信する。
【0039】
登録対象のネットワーク機器NNtypeBは、前記SNMP pollingに応答して、時刻t3でSNMP状態情報をNW機器登録部105へ返信する。NW機器登録部105は、返信されたSNMP状態情報を時刻t4で分析処理し、当該ネットワーク機器NNtypeBが対応しているMIBモデルを確認する。
【0040】
時刻t5では、NW機器登録部105が分析結果をNW機器登録情報としてNW機器登録情報DB106に登録する。時刻t6では、NW機器登録情報DB106からNW機器登録部105へ登録完了が応答される。時刻t7では、NW機器登録部105からオペレータへ登録完了が通知される。
【0041】
図9は、NW機器登録情報の登録例を示した図であり、旧式のNW機器ごとに、そのノード名称(Node)、有効か否か(enable)を示すフラグ、SNMPインタフェースのIPアドレス、ネットワーク設定監視装置NcmからRESTCONF/NETCONFへの変換を受ける際の待受Port及び対応しているMIBモデルの能力(Capability)として、例えばif-mibやcisco-mibに対応しているか否かの情報が登録されている。
【0042】
図10は、前記監視情報収集部107が旧式のネットワーク機器NNtypeBから監視情報を収集する動作を示したシーケンスフローであり、時刻t21では、監視情報収集部107がネットワーク設定監視装置NcmからRESTCONFインタフェース又はNETCONFインタフェースを通じて、RESTCONF/NETCONFのポート指定を含む監視情報取得依頼を受領する。
【0043】
時刻t22では、監視情報収集部107がNW機器登録情報DB106に対して前記RESTCONF/NETCONFの待受ポートを送信する。時刻t23では、NW機器登録情報DB106が前記待受ポートに紐付いたIPアドレスを応答する。時刻t24では、監視情報収集部107が当該IPアドレスのネットワーク機器NNtypeBに対してSNMP poolingを送信する。時刻t25では、ネットワーク機器が当該SNMP poolingに対して、MIB形式で記述されたSNMP状態情報を応答する。
【0044】
監視情報収集部107は、前記MIB形式で記述されたSNMP状態情報を取得すると、時刻t26において変換テーブル108の前記ネットワーク機器NNtypeBに対応するYANGモデル変換テーブルを参照し、時刻t27において変換テーブル情報を取得する。時刻t28では、取得した変換テーブル情報を用いて前記SNMP状態情報をYANG形式のSNMP状態情報に変換し、時刻t29で宛先のネットワーク設定監視装置に送信する。
【0045】
なお、本処理は定常的に行われることが想定されるため、待受ポートからIPアドレスへの変換及び状態情報のモデル変換については、メモリ上にテーブルを持つことで処理を省略することもできる。
【0046】
次いで、図11A図11Fを参照して前記時刻t26~t28における変換処理の方法を説明する。監視情報収集部107は、図11Aに示すインタフェース監視情報を旧式のネットワーク機器NNtypeBからSNMPを用いて取得する。なお、前記インタフェース監視情報は同図(b)のようにツリー構造で表現される。
【0047】
監視情報収集部107は、取得したインタフェース監視情報がIF-MIBモデルに従ったデータであることを把握すると、当該IF-MIBモデルに対応する第1の変換テーブル(図11B)を参照してindexの有無を判断する。indexが存在する場合、すなわちネットワーク機器NNtypeBが複数のインタフェースを備えていればindexを特定した後で、図11Cに示すようにネットワーク機器NNtypeBのインタフェース監視情報を主キーであるindex毎に区分けする。
【0048】
次いで、index毎に区分けされたデータにおいて、当該MIBモデルに対応する第1の変換テーブル(図11B)を参照し、図11Dに示すようにラベル付けを行って変換用実データを生成する。ラベル付けでは、各状態項目データに状態項目が紐付けられている。状態遷移変換キーが存在する状態項目については変換キーに加えて状態遷移変換キーが紐付けられる。
【0049】
次いで、index毎にラベル付けされた変換用実データにおいて、図11Eの当該YANGモデルに対応する第2の変換テーブルを参照することで図11Fのjsonデータが生成される。本実施形態では、初めに図11Eの変換テーブルにおける主キー項目をx=1, x=2のようにSNMPデータのまとまり毎に確認する。ここではnameが主キーなので、x=1のnameに基づいて、index毎に区分けされたデータから同一の変換キーを探し出して対応するデータを読み出す。図示の例では、GigabitEthernet0/0/0/0が取得される。そして、この主キー毎に図11Eに従って図11Fのjsonデータを生成する。
【0050】
図11Fでは、intefaceというlist(3行目)の配下に図11Dのx=1, x=2に対応するデータがそれぞれ括弧でまとめて格納される。監視情報収集部107は、このjsonデータを監視情報として新式のネットワーク設定監視装置Ncmへ時刻t29で応答する。
【0051】
図12は、前記機器設定投入部108が新式のネットワーク設定監視装置Ncmから旧式のネットワーク機器NNtypeBに対して機器設定を投入する動作を示したシーケンスフローである。
【0052】
時刻t41では、新式のネットワーク設定監視装置Ncmから機器設定投入部108へRESTCONFインタフェース又はNETCONFインタフェースを通じて、ポート指定で機器設定投入が依頼される。時刻t42では、機器設定投入部108がNW機器登録情報DB106に対して、RESTCONF/NETCONFの待受ポート番号が記述された変換要求を送信すると、NW機器登録情報DB106は、時刻t43で当該待受ポート番号と紐付いたIPアドレスを機器設定投入部108へ応答する。
【0053】
機器設定投入部108は、YANGモデルで記述されている機器設定をMIBモデルで定義される機器設定に変換するために、時刻t44で変換テーブル部109を参照し、時刻t45において対応する変換テーブル情報を取得する。時刻t46では、前記取得した変換テーブル情報を用いて機器設定の変換処理を実施する。
【0054】
次いで、図13A図13Fを参照して機器設定の変換処理方法を説明する。機器設定投入部108は、図13Aに示すインタフェース監視情報をネットワーク設定監視装置Ncmからnetconfやrestconfを用いて取得し、これがopenconfig-interfaceモデルに従ったデータであることを把握すると、当該YANGモデルに対応するYANGモデルテーブル(図13B)を参照して主キー(ここでは、name)の有無を判断する。主キーが存在する場合には、図13Cに示すように主キー毎にデータを区分けする。
【0055】
次いで、主キー毎に区分けされたデータにおいて、前記YANGモデルに対応する変換テーブル(図13B)を参照し、図13Dに示すようにラベル付けを行って変換用実データを生成する。ラベル付けでは、前記図11Dの変換用実データと同様に、各状態項目データに状態項目が紐付けられている。また、状態変移キーが存在する状態項目においては、状態遷移キーが更に紐付けられる。そして、主キー毎にラベル付された変換用実データにおいて、図13EのIF-MIBモデルに対応する第1の変換テーブルを参照することで、図13FのMIBモデルデータが生成される。
【0056】
生成の際には、主キー毎にSNMPデータが順番に記載される。変換テーブルにおいて定義される主キーフラグが付与された変換キー(例:ifindex)を基に状態項目データを記載するため、主キー毎に区分けされたデータから各変換キーに紐づくデータを探し出し、データを読み出す。例では、ifindex=1, 2毎に、IfEntryオブジェクトを書き出し、SNMPデータを生成する。
【0057】
機器設定投入部108は、以上のようにして生成したjsonデータの設定投入を、時刻t47でSNMP SET REQUESTによりネットワーク機器NNtypeBへ要求する。ネットワーク機器NNtypeBは、機器設定の投入を終えると時刻t48で応答信号を返信する。時刻t49では、機器設定投入部108から新式のネットワーク設定監視装置Ncmへ設定完了が通知される。
【0058】
なお、上記の実施形態ではIF-MIB及びopenconfig-interfaces.yangが変換対象である場合を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、他のMIBモデルやYANGモデルにも同様に適用できる。
【0059】
そして、上記の実施形態によれば、SNMPに対応していない新式のネットワーク設定監視装置がSNMPにしか対応していない旧式のネットワーク機器を対象に、状態情報の取得及び設定情報の投入が可能となり、新式のネットワーク設定監視装置から旧式のネットワーク機器を遠隔で制御できるようになるので、安価で良好なネットワーク環境を提供できるようになる。その結果、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、包括的で持続可能な産業化を推進する」や目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1…変換装置,101…RESTCONFインタフェース,102…NETCONFインタフェース,103…SNMP Client,104…ユーザインタフェース,105…NW機器登録部,106…NW機器登録情報データベース,107…監視情報収集部,108…機器設定投入部,109…変換テーブル部
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