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特開2023-147467テンションバランサ用監視装置及びこれを用いた架空線の監視方法
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  • 特開-テンションバランサ用監視装置及びこれを用いた架空線の監視方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147467
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】テンションバランサ用監視装置及びこれを用いた架空線の監視方法
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/28 20060101AFI20231005BHJP
   B60M 1/26 20060101ALI20231005BHJP
   H02G 7/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60M1/28 R
B60M1/26 B
H02G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054973
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】御代田 竜也
【テーマコード(参考)】
5G367
【Fターム(参考)】
5G367DA01
5G367DC02
(57)【要約】
【課題】 テンションバランサの可動部の変位量を遠隔で連続的に高い精度で検出し、電車用架空線の伸縮状態を把握するテンションバランサ用監視装置を提供する。
【解決手段】 一端が支柱Pに連結された外筒部材B1に対して、一端に架空線が連結されたロッドB3を出入り自在に挿入し、引き込む方向にばねで付勢し、架空線を所定の張力を保持しつつ引き留めるばね式のテンションバランサBのロッドB3の相対変位量をポテンショメータ2で検出し、この検出結果を無線送信機4で遠隔位置に伝達するようにテンションバランサ用監視装置1を構成する。ポテンショメータ2は外筒部材B1に固定し、先端部をロッドB3に固定したワイヤ7の巻き取りにより、ロッドB3の外筒部材B1に対する直線的相対変位を回転変位に変換し、回転変位に応じた内側部材と外筒部材B1との相対変位量に対応する電気的出力を発する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が支柱に連結された外筒部材と、一端に架空線が連結され、前記外筒部材に出入り自在に挿入された内側部材と、外筒部材から突出した内側部材を復帰させるように内側部材を付勢する蓄圧部材とを具備し、架空線を所定の張力を保持しつつ引き留めるテンションバランサの外筒部材に対する内側部材の相対変位量を遠隔位置で監視するためのテンションバランサ用監視装置において、
前記外筒部材又は内側部材の一方に固定され、先端部が外筒部材又は内側部材の他方に固定されるワイヤの巻き取りにより、内側部材と外筒部材との直線的相対変位を回転変位に変換し、回転変位に応じた内側部材と外筒部材との相対変位量に対応する電気出力を発するポテンショメータと、
このポテンショメータの出力を遠隔位置に伝達する無線送信機とを具備することを特徴とするテンションバランサ用監視装置。
【請求項2】
前記架空線の近傍の気温を検知して前記通信機により内側部材と外筒部材との直線的相対変位量と共に前記遠隔位置に伝達するための温度センサをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のテンションバランサ用監視装置。
【請求項3】
前記ポテンショメータを外筒部材に取り付けるための取付部材は、外筒部材の外周に巻き回され、締め付け固定される取付バンドと、
前記ポテンショメータを固定して前記取付バンドに固定する取付板とを具備することを特徴とする請求項1または2に記載のテンションバランサ用監視装置。
【請求項4】
前記ポテンショメータのワイヤを内側部材に係止するための取付枠は、架空線をロッドに連結する引手金具を上下に挟み込むように対向する一対の枠板と、
前記一対の枠板の対向する両端部間を締め込み固定するボルトと、
前記枠板の一方に延長方向にスライド自在に係合して、前記ワイヤを結合するための係止部材と、
前記係止部材を固定することにより位置決め固定される延出長さを調整可能なブラケットとを具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のテンションバランサ用監視装置。
【請求項5】
前記ポテンショメータにより検出した前記内側部材と外筒部材との相対変位量及び前記温度センサにより検出した気温から、架空線の実際の伸縮長さを架空線の温度から算出された架空線の伸縮長さと比較することにより、電車線又はテンションバランサの異常状態を判別することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のテンションバランサ用監視装置を用いた電車線用架空線の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊架線、補助吊架線及びトロリ線等の電車用の架空線に所定の張力を付与する架空線用テンションバランサに取り付けて架空線の伸縮量を遠隔位置で把握するためのテンションバランサ用監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電車に電力を供給する架空線の張力が変化すると、架空線とパンタグラフ等の集電装置との接触状態が変動して、電車への良好な電力供給を阻害する。そのため、例えば、特許文献1に記載の架空線に所定の張力を付与するばね式のテンションバランサを設けている。このテンションバランサは、構築物に結合される外筒内に、中筒及びロッドを内外三重式に組み込み、外筒、中筒間及び中筒、ロッド間に夫々ばねを介設し、ロッドの先端を電車線に接続するものである。予めロッドを所定寸法引き出して、ばねを圧縮させた状態で電車線に接続することにより、電車線に所定の張力を付与する。
従来、テンションバランサの可動部の変位量が所定範囲にある状態か否かを検出するテンションバランサが特許文献2に開示されている。このテンションバランサは、架空線が連結される連結ロッドの変位量の許容限界位置に第1送信機及び第2送信機を固定して、変位量が所定範囲にあれば検知用信号をそれぞれ送信するが、連結ロッドとそれぞれ一体的に変位するように第1ハンマー部及び第2ハンマー部を固定して、変位量の許容範囲を逸脱すると、第1送信機又は第2送信機に衝突して破壊することにより検知用信号の送信を停止することにより許容範囲の逸脱を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-207629号公報
【特許文献2】特開2009-179309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の特許文献2に記載のテンションバランサは、連結ロッドの変位が許容範囲を逸脱したことのみを示し、変位量を具体的な数値で精度高く示すことができない。また電波の送信停止をもって変位量の逸脱を判定するため、送信機器自体の故障と判別できないし、連結ロッドの変位が逸脱する都度新たに送信機を準備設置する必要があり、しかも許容範囲に応じた送信機とハンマー部の位置調整を精度高く行うのに時間を費やす煩わしい設置作業になる。
また、検知用信号を送信するのに送信機と遠隔地との間に中継機を設置する必要がある。
さらに、上記テンションバランサは、連結ロッドの変位が予め設定した許容範囲から逸脱したことのみを監視しているので、連結ロッドの変位が許容範囲にある限り、テンションバランサの機械的故障、電車線の流れ、電車線の損傷や抑制抵抗の発生等の異常があっても、正常な状態と誤判定されてしまう。この結果、テンションバランサや電車線の異常が見逃され、集電性能低下、離線によるスパーク、トロリ線局部摩耗、わたり箇所におけるパンタグラフの割り込み、電車線の断線などの不測の事態を招きかねない。
そこで本発明は、上記問題に鑑み、連続的に変位量を精度高く把握して、テンションバランサの状態の監視能力を向上させ、異常時であっても継続使用でき、またネットワークを簡易化し、さらに電車線及びテンションバランサの異常を検出でき、既設のテンションバランサに後付けできるテンションバランサ用監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、一端が支柱Pに連結された外筒部材B1と、一端に架空線が連結され、外筒部材B1に出入り自在に挿入された中筒B2及びロッドB3を備えた内側部材と、外筒部材B1から突出した内側部材を復帰させるように内側部材を付勢するばねのような蓄圧部材とを具備し、架空線を所定の張力を保持しつつ引き留めるテンションバランサBの外筒部材B1に対する内側部材の相対変位量を遠隔位置で確認するためのテンションバランサ用監視装置1を、外筒部材B1又は内側部材の一方に固定され、先端部が外筒部材B1又は内側部材の他方に固定されるワイヤ7の巻き取りにより、内側部材と外筒部材B1との直線的相対変位を回転変位に変換し、回転変位に応じた内側部材と外筒部材B1との相対変位量に対応する電気的出力を発するポテンショメータ2と、このポテンショメータ2の出力を遠隔位置に伝達する無線送信機4とを具備させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、テンションバランサの設置現場に赴くことなく、遠隔位置でのテンションバランサのストロークの変位量を数値化して精度高く連続的に確認できて、テンションバランサの状態の監視能力を向上させることができ、長大な電車線用架空線の伸縮状態の確認作業を容易に行うことができ、テンションバランサの保守面のコストを低減し、特に立ち入り困難な設置場所にあるテンションバランサの状態の確認に好都合である。さらに設置が容易で、既設のテンションバランサに後付けできるし、ネットワークを簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る変位量監視装置を取り付けたテンションバランサが設置された支柱の斜視図である。
図2】本発明に係る変位量監視装置を取り付けたテンションバランサの斜視図である。
図3図2のテンションバランサの正面図である。
図4図2のテンションバランサの平面図である。
図5図2のテンションバランサの左側面図である。
図6】ポテンショメータの斜視図である。
図7図6のポテンショメータの正面図である。
図8図6のポテンショメータの側面図である。
図9】取付枠の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
図1において、テンションバランサ用監視装置1は、テンションバランサBの外筒部材B1に取り付けられるポテンショメータ2と、テンションバランサBを取り付けた支柱Pに設置されてテンションバランサBの周辺の気温を検知する温度センサ3と、支柱P上に設置されてポテンショメータ2及び温度センサ3に電気的に接続された送信機4と、支柱P上に設置されてポテンショメータ2、温度センサ3及び送信機4に電力を供給する太陽電池パネル5及びその制御装置6とを具備する。
【0009】
図2ないし図5において、テンションバランサBは、支柱P等の構築物に一端が連結される外筒部材B1内に、中筒B2及び内側部材としてのロッドB3を内側に向かって内外三重式に同軸に組み込まれ、外筒部材B1、中筒B2間及び中筒B2、ロッドB3間に図示しない蓄圧部材としてのばねが夫々介設され、ロッドB3の先端を架空線に接続するものである。テンションバランサBは予めロッドB3が取り付ける際の気温に応じて所定寸法引き出されて、ばねを圧縮させた状態で架空線に接続することにより、電車線に所定の張力を付与する。
【0010】
ポテンショメータ2は、一端側が引き出されたワイヤ7がロッドB3に架空線を引き留めるための引手金具B4に係止され、ばねにより常時引き込み方向に回転付勢されるように組み込まれた図示しない回転体にワイヤ7が巻き取られ、ロッドB3の外筒部材B1に対するストロークに応じてワイヤ7を繰り出し又は引き込む回転体の回転変位に対応するロッドB3の外筒部材B1に対する変位量を連続的に電圧出力するものである。
【0011】
ポテンショメータ2は、図6ないし図8に示すように、外筒部材B1のロッド突出側端部に取付バンド8で固定される。取付バンド8は、ポテンショメータ2が固定される取付板9の両端の屈曲片を貫通して、外筒部材B1の周囲に巻き回され留め具8aで締め込み固定される。
【0012】
ワイヤ7の先端は、基端がロッドB3に結合し、先端に図示しない架空線が接続される引手金具B4に取付枠10で固定される。取付枠10は、図9に示すように、引手金具B4を上下に挟み込むように対向する一対の枠板10a,10bと、枠板10a,10bの対向する両端部間を締め込み固定するボルト10c,ナット10dと、枠板10aの一端から延長方向にスライド自在に係合して、ワイヤ7を結合するための係止環10fが固定されることにより位置決め固定される延出長さを調整可能なブラケット10eとを具備する。
【0013】
送信機4は、図1に示すように、支柱Pに取り付けられて連続的にポテンショメータ2及び温度センサ3の電気信号を無線送信する。この送信機4から送出される信号は、遠隔位置の受信機に受信され、監視用サーバに変位量の数値データが取得されて、架空線の伸縮量が架空線の周囲の気温と共に記録されることにより、テンションバランサ及び電車線の状態が管理される。
【0014】
このテンションバランサ用監視装置1は、テンションバランサBによる架空線に所定の張力が付与されるため、温度変化により架空線が伸縮すると、テンションバランサBのロッドB3の変位によってポテンショメータ2のワイヤ7の繰り出し又は引き込みによる回転変位に応じた電圧出力が温度センサの電圧出力と共に送信機4に送られ、この電車線の伸縮量及び気温の数値データが送信機4により遠隔位置の受信機に無線送信され、テンションバランサBの設置現場に赴くことなく、遠隔位置においてテンションバランサBのロッドB3の変位と気温を取得し、監視用サーバにより記録して集中的に管理される。このように取得したロッドB3の変位量と気温から、ロッドB3の変位量に対応する架空線の実際の伸縮長さを電車線の温度と特定の比例関係にある正常な伸縮長さ(計算値)と比較することにより、架空線やテンションバランサの異常の有無を判定できる。また、架空線の両端に接続したテンションバランサBのロッドB3の変位量を比較することにより、架空線の流れの発生の有無を判定できる。従って、テンションバランサB及び架空線の保守作業を軽減し、特に立ち入り困難に設置されたテンションバランサB及び架空線の状態の確認作業に好都合である。
【符号の説明】
【0015】
1 テンションバランサ用監視装置
2 ポテンショメータ
3 温度センサ
4 送信機
5 太陽電池パネル
6 制御装置
7 ワイヤ
8 取付バンド
8a 留め具
9 取付板
10 取付枠
10a 枠板
10b 枠板
10c ボルト
10d ナット
10f 係止環
10e ブラケット
B テンションバランサ
B1 外筒部材
B2 中筒
B3 ロッド
B4 引手金具
P 支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9