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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147470
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】積層樹脂フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/20 A
B29C48/154
B29C48/08
B29C44/00 E
B29C67/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054978
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 康弘
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AA21
4F100AK03B
4F100AK07
4F100AK64
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13B
4F100DJ00
4F100DJ00A
4F100EH17
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EJ38
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JA04
4F100JA04B
4F100JA06
4F100JG04
4F100JG04C
4F100JL10
4F100JL10A
4F100JL10B
4F100JL16
4F100JL16B
4F100JN02
4F100JN02A
4F100JN02B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F207AA03
4F207AA50
4F207AB12
4F207AG01
4F207AG03
4F207AG20
4F207AH53
4F207AR12
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA11
4F207KB11
4F207KM15
4F214AA03
4F214AA50
4F214AB12
4F214AG01
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH53
4F214AR12
4F214AR20
4F214UA11
4F214UB02
(57)【要約】
【課題】再生プラスチック材料を用いた、高い隠蔽性を有する積層樹脂フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層樹脂フィルムは、隠蔽層を有する、積層樹脂フィルムであって、前記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、白色度が85%以上であり、不透明度が99%以上である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠蔽層を有する、積層樹脂フィルムであって、
前記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、
白色度が85%以上であり、不透明度が99%以上である、
積層樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料が、着色剤を含有する、請求項1に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項3】
前記隠蔽表面層の不透明度が、75%~100%である、
請求項1又は2に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項4】
前記隠蔽表面層が、多孔質構造を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項5】
前記隠蔽表面層が、延伸されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項6】
前記隠蔽表面層の空孔率が、1~70%である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項7】
前記隠蔽表面層が白色顔料を含有し、前記隠蔽表面層中の前記白色顔料の含有量が、0.1~5質量%である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項8】
前記隠蔽表面層の厚みが、10~300μmである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項9】
前記隠蔽コア層が、ポリオレフィン系樹脂を含有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項10】
前記隠蔽コア層が、145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂を含有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項11】
前記隠蔽コア層中の前記黒色顔料の含有量が、0.3~5質量%である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項12】
前記隠蔽表面層に接するように印刷層を更に有し、前記印刷層のJIS K6911:2006に準拠して測定した表面抵抗率が、1×10~9×1012Ωである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項13】
前記積層樹脂フィルムの全体の厚みに対する、前記隠蔽コア層の厚みの割合が、10~70%である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項14】
前記積層樹脂フィルムの不透明度に対する、幅方向での標準偏差が5%未満である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
【請求項15】
隠蔽層を有する積層樹脂フィルムの製造方法であって、
前記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、
前記隠蔽表面層及び前記隠蔽コア層を押出ラミネートによって形成する工程を含む、
積層樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙には、従来からの紙(天然パルプ抄造紙)に加えて、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム等の合成紙が用いられている。中でも、ポリオレフィンフィルムは、耐水性を有する印刷用紙として、天然パルプ抄造紙に代えて提案されている合成紙である(例えば、特許文献1参照)。これら合成紙は、ポスター用紙、包装紙、ラベル等の素材として有用である。
また、販売促進用の各種POP、ポスター、ステッカー等の幅広い用途には高い隠蔽性を有して印刷の裏抜けが少ない、白色印刷用の積層樹脂フィルムが提供されている。積層樹脂フィルムに高い隠蔽性を付与するために、例えば、フィルムを構成する樹脂材料に酸化チタン等の白色顔料を配合して白色層とし、カーボンブラック等の黒色顔料を配合して黒色層とし、これらを積層体として不透明度を高める技術が報告されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-118437号公報
【特許文献2】特開平11-091042号公報
【特許文献3】特開2003-326654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年の環境意識の高まりから、プラスチック廃棄物の減量化の要求があり、種々の分野においても、プラスチック廃棄物の再資源材料が望まれている。しかしながら、再資源材料である再生プラスチック材料は、色調や不純物含有量等にばらつきがある。このため、再生プラスチック材料のみを原料として樹脂フィルムを製造しようとしても、安定した不透明度を実現できず、高い隠蔽性を有する積層樹脂フィルムを得ることは困難であった。
【0005】
本発明は、再生プラスチック材料を用いた、高い隠蔽性を有する積層樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の層構成を備え、且つ特定の層中に再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。より具体的には、隠蔽層を有する積層樹脂フィルムであって、上記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、特定の白色度及び不透明度を有する積層樹脂フィルムであれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
(1)隠蔽層を有する、積層樹脂フィルムであって、
前記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、
白色度が85%以上であり、不透明度が99%以上である、
積層樹脂フィルム。
(2)前記ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料が、着色材を含有する、
(1)に記載の積層樹脂フィルム。
(3)前記隠蔽表面層の不透明度が、75%~100%である、
(2)に記載の積層樹脂フィルム。
(4)前記隠蔽表面層が、多孔質構造を有する、
(1)~(3)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(5)前記隠蔽表面層が、延伸されている、
(1)~(4)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(6)前記隠蔽表面層の空孔率が、1~70%である、
(1)~(5)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(7)前記隠蔽表面層が白色顔料を含有し、前記隠蔽表面層中の前記白色顔料の含有量が、0.1~5質量%である、
(1)~(6)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(8)前記隠蔽表面層の厚みが、10~300μmである、
(1)~(7)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(9)前記隠蔽コア層が、ポリオレフィン系樹脂を含有する、
(1)~(8)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(10)前記隠蔽コア層が、145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂を含有する、
(1)~(9)のいずれか一項に記載の積層樹脂フィルム。
(11)前記隠蔽コア層中の前記黒色顔料の含有量が、0.3~5質量%である、
(1)~(10)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(12)前記隠蔽表面層に接するように印刷層を更に有し、前記印刷層のJIS K6911:2006に準拠して測定した表面抵抗率が、1×10~9×1012Ωである、
(1)~(11)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(13)前記積層樹脂フィルムの全体の厚みに対する、前記隠蔽コア層の厚みの割合が、10~70%である、
(1)~(12)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(14)前記積層樹脂フィルムの不透明度に対する、幅方向での標準偏差が5%未満である、
(1)~(13)のいずれかに記載の積層樹脂フィルム。
(15)隠蔽層を有する積層樹脂フィルムの製造方法であって、
前記隠蔽層が、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有し、
前記隠蔽表面層及び前記隠蔽コア層を押出ラミネートによって形成する工程を含む、
積層樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再生プラスチック材料を用いた、高い隠蔽性を有する積層樹脂フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の積層樹脂フィルムの構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態の積層樹脂フィルムの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の積層樹脂フィルムについて詳細に説明する。以下の説明は本発明の一実施態様であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。「(共)重合体」の記載は、単独重合体と共重合体の両方を示す。
【0011】
[積層樹脂フィルム]
図1は、本発明の一実施形態の積層樹脂フィルムの構造を示す断面図である。
本発明の積層樹脂フィルム10は、隠蔽層1を備える。隠蔽層1は、隠蔽コア層2と、当該隠蔽コア層2の両面上にそれぞれ設けられた隠蔽表面層3a,3bとを有する。
【0012】
本発明の積層樹脂フィルムにおける隠蔽コア層は、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する。本発明の積層樹脂フィルムは、黒色層である隠蔽コア層の両面を白色層である隠蔽表面層が覆うように積層されているため、一方の面から見たときに他方の面の印刷が透けることがなく、両面印刷時の視認性も向上させることができ、高い隠蔽性を有する。本発明の積層樹脂フィルムは、白色度が85%以上であり、不透明度が99%以上である。
【0013】
<白色度>
本明細書において、「白色度」は、JIS L1015:1999に準拠し、ハンター型色差計を用いて測定されたL,a,b値から算出される値を意味する。なお、ハンター型色差計としては、例えば、スガ試験機社製のSMカラーメーター SM-Tを用いることができる。
本発明の積層樹脂フィルムの白色度は、85%以上であり、好ましくは87%以上であり、より好ましくは90%以上である。積層樹脂フィルムの白色度が85%以上であれば、高い隠蔽性を有する積層樹脂フィルムが得られ易い。また、積層樹脂フィルムに印刷された印刷内容の視認性が向上する傾向にある。白色度の上限は特になく100%であってもよく、99%以下、又は、98%以下であっても差し支えない。
【0014】
<不透明度>
本明細書において、「不透明度」は、JIS P8149:2000に規定されている「紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照明法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の積層樹脂フィルムの不透明度は、99%以上である。積層樹脂フィルムの不透明度が99%以上であれば、一方の面から見たときに他方の面の印刷が透けることがなく、印刷面に印刷された文字等の判読性が向上する傾向にある。また、着色再生プラスチック原料に含まれている着色物や夾雑物が透けて見えるのを抑制することができる。
以下、各層について説明する。
【0015】
(隠蔽層)
隠蔽層は、隠蔽表面層と、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料を含有する隠蔽コア層とを有する。隠蔽層は、積層樹脂フィルムの白色度及び不透明度を高め、積層樹脂フィルムに高い隠蔽性を付与する機能を有する。
【0016】
<隠蔽コア層>
隠蔽コア層は、積層樹脂フィルムの不透明度を高める機能を有する。また、隠蔽コア層は、隠蔽表面層よりも相対的に破断強度が強く、積層樹脂フィルムにコシ等の機械強度を付与する機能を有する。隠蔽コア層は、後述のポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料及び黒色顔料等の種々の成分の含有量を比較的自由に設計しても高い成形性が得られやすくなる観点から、無延伸層であることが好ましい。一方、隠蔽コア層は、より高い機械強度を得る観点からは、延伸層であることもできる。特に、隠蔽コア層がフィラーを含む延伸多孔質層である場合には、積層樹脂フィルムの不透明度をさらに高めることができる。
隠蔽コア層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。
【0017】
<<ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料>>
隠蔽コア層は、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料を含有する。
ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料とは、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含有する再生プラスチック原料をいう。
再生プラスチック原料は、プラスチック成形体を再生して得られる原料である。プラスチック成形体は市場に流通する製品であって、例えば押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形、又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法により得られるものである。再生プラスチック原料は、着色材が含有された着色再生プラスチック原料であってもよいし、着色材が含有されていない無着色再生プラスチック原料であってもよい。本発明の効果をより一層発揮させる観点からは、再生プラスチック原料としては、着色材が含有された着色再生プラスチック原料であることが好ましい。再生プラスチック原料として着色材が含有されている場合、着色材は特に限定されず、公知の顔料及び染料等であり得る。
フィルムが再生プラスチック原料を含むと、フィルムには再生プラスチック原料に由来する着色が生じ得る。しかし、再生プラスチック原料を普通に使用した樹脂フィルムは、再生プラスチック原料由来の着色を知覚し、白色度又及び不透明度が安定しないことが分かった。本発明によれば、隠蔽層を備え、特定の白色度及び不透明度を有することにより、再生プラスチック原料を含んでいても高い隠蔽性を有しつつ、再生プラスチック原料由来の着色を知覚しない、積層樹脂フィルムを得ることができる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の中でも、コスト面、耐水性、及び耐薬品性の観点からポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂としては、主なモノマーにプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とが併用されていてもよい。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば密度が0.940~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.934g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900~0.920g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、及びエチレン-環状オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0021】
隠蔽コア層中のポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料の含有量は、環境負荷を低減する観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がよりさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、同含有量は、不透明度ばらつきを低減する観点、層間強度低下抑制の観点、及び成形性の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。隠蔽コア層のプラスチック原料全体に対するポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料の含有量は、環境負荷低減の観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。一方、同含有量は、不透明度ばらつきを低減する観点、層間強度低下抑制の観点、及び成形性の観点から80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。隠蔽コア層が無延伸層である場合、ポリオレフィン系樹脂の再生プラスチック原料を高い含有量で含んだとしても、成形性の問題なく製造し易くなる。
【0022】
隠蔽コア層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリオレフィン系以外の熱可塑性樹脂を含有する再生プラスチック原料を含有していてもよい。再生プラスチック原料におけるポリオレフィン系以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上含有されていてもよい。
【0023】
<<黒色顔料>>
隠蔽コア層は、光吸収性に優れた黒色顔料を含有する。黒色顔料としては、例えばカーボンブラック、油煙、植物黒、骨炭、黒鉛、及び酸化物系黒色顔料等が挙げられる。これらのなかでも、特に隠蔽性に優れる観点から、黒色顔料としてはカーボンブラックを用いるのが好ましい。
【0024】
黒色顔料の平均粒子径は、顔料分散性、隠蔽性、印刷特性等の所望性能に応じて、適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば黒色顔料の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、同平均粒子径は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
黒色顔料の平均粒子径とは、黒色顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径のことをいう。
【0025】
隠蔽コア層中の黒色顔料の含有量は、十分な不透明度を得る観点から、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、隠蔽表面層との層間剥離を抑制させる観点から、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
また、隠蔽コア層中の黒色顔料の含有量は、不透明度ばらつきを抑える観点から、再生プラスチック原料100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、同含有量は、成形性の観点から、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることが好ましい。
【0026】
隠蔽コア層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、黒色顔料以外の有色顔料を含有していてもよい。有色顔料の具体的な例としては、公知の無機顔料及び有機顔料が挙げられる。なお、黒色顔料以外の有色顔料を含有する場合、隠蔽コア層中の顔料(黒色顔料以外の有色顔料を含む)の含有量は、隠蔽表面層との層間剥離を抑制させる観点から、再生プラスチック原料100質量部に対して5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。また、隠蔽コア層中の顔料の含有量は、不透明度ばらつきを抑える観点から、再生プラスチック原料100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましい。
【0027】
<<ポリオレフィン系樹脂>>
隠蔽コア層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、再生プラスチック原料以外にバージンプラスチック原料を含有することが好ましい。バージンプラスチック原料としては特に限定されないが、再生プラスチック原料との相溶性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、再生プラスチック原料で挙げたものと同一のものを用いることができる。
隠蔽コア層中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上がよりさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。一方、同含有量は、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0028】
<<145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂>>
また、隠蔽コア層は、145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。隠蔽コア層が再生プラスチック原料を含むと、当該隠蔽コア層と隣接する層との間で層間強度が低下する場合があるが、145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂を含有することにより層間強度の低下を抑制できる傾向がある。
145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、及びポリエチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
融点は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定することができる。
【0029】
隠蔽コア層中の145℃以下の融点を有するポリオレフィン系樹脂の含有量は、層間強度低下抑制の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
<<フィラー>>
隠蔽コア層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、黒色顔料とは異なるフィラーを含有していてもよい。フィラーを含有する場合、隠蔽コア層に使用できるフィラーとしては、公知の無機フィラー、又は有機フィラー等が挙げられる。なお、隠蔽コア層がフィラーを含有する場合、隠蔽コア層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、特に限定されないが、延伸成形の際に空孔が得られ易く、不透明化を達成し易い観点から、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、好適な機械的強度及び耐水性等が得られ易い観点から、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
<<その他の添加剤>>
隠蔽コア層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等の添加剤をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えばフィラーを分散させる目的で、通常0.01~4質量%の範囲内で使用することができる。
【0032】
隠蔽コア層は、無延伸フィルムであってもよいが、樹脂フィルム強度向上の観点から、少なくとも1軸方向に延伸されていることが好ましい。
【0033】
<<厚み>>
隠蔽コア層の厚さは、より多くの再生プラスチック原料を使用して環境貢献する観点及びより高い隠蔽性を得る観点から、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、150μm以上が特に好ましい。また、積層樹脂フィルムの重さが減り、取扱い性が向上しやすい観点から、隠蔽コア層の厚さは、500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましく、400μm以下がさらに好ましい。
【0034】
<隠蔽表面層>
隠蔽表面層は、積層樹脂フィルムの白色度及び不透明度を高める機能を有する。
隠蔽表面層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。
【0035】
<<熱可塑性樹脂>>
隠蔽表面層は、熱可塑性樹脂を含有する。隠蔽表面層に使用できる熱可塑性樹脂としては、隠蔽コア層の項目において挙げられた材料と同じであり、好ましい材料も隠蔽コア層と同じである。
【0036】
<<白色顔料>>
隠蔽表面層は、白色顔料を含有することが好ましい。白色顔料としては、各種公知のものを用いることができ、特に限定されない。白色顔料を含有することにより、白色度が高めることができ、また、積層樹脂フィルムの透視性も低減させることができる。白色印刷用途として求められる隠蔽性を考慮すると、白色顔料としては、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。これらのなかでも、酸化チタンは、高い隠蔽性を有し、白色度にも優れるため、特に好ましい。酸化チタンとしては、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれを用いてもよい。市販の各種製品としては、例えば、石原産業社製酸化チタン粒子(商品名:タイペーク)等が入手可能である。また、酸化チタンは、硫酸法と塩素法で一般的に製造されるが、白色度の観点から塩素法で製造された顔料の方が、白色度が高く優れているため好ましい。また、酸化チタンとして、アルミナ表面処理やシリカ表面処理が施された表面改質酸化チタンを用いることができる。
【0037】
白色顔料の平均粒子径は、顔料分散性、隠蔽性、印刷特性等の所望性能に応じて、適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、白色顔料の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、同平均粒子径は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
白色顔料の平均粒子径とは、白色顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径のことをいう。
【0038】
隠蔽表面層中の白色顔料の含有量は、白色度を高める観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、層間強度を高める観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
<<フィラー>>
隠蔽表面層は、内部に微細な空孔(発泡セルや空隙等)が多数形成された、多孔質構造を有する多孔質膜であることが好ましい。隠蔽表面層の空孔は、例えば発泡法、内部紙化法、又は溶剤抽出法等により形成することができる。また、隠蔽表面層の好ましい作製方法としては、内部紙化法が挙げられる。この内部紙化法では、熱可塑性樹脂と、空孔形成の核となるフィラーとを混合した樹脂組成物を公知の方法でフィルムを形成し、得られたフィルムを一軸又は二軸延伸することにより、内部に微細な空孔を多数形成する。これにより、隠蔽表面層を白色化、不透明化、及び軽量化させることができる。
【0040】
隠蔽表面層は、上述した多孔質構造を形成させる観点から、白色顔料とは異なるフィラーを含有することが好ましい。隠蔽表面層がフィラーを含有していれば、上述した内部紙化法により隠蔽表面層の白色度及び不透明度を高めることができる。
フィラーを含有する場合、隠蔽コア層に使用できるフィラーとしては、無機フィラー、又は有機フィラー等が挙げられる。
【0041】
無機フィラーとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、又はこれらを脂肪酸、高分子界面活性剤あるいは帯電防止剤等で表面処理した無機粒子等が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ又はタルクが、空孔の成形性が良く、安価なために好ましい。不透明度を高める観点からは、酸化チタン、酸化亜鉛又は硫酸バリウムが好ましい。
【0042】
有機フィラーとしては特に限定されないが、熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィンの単独重合体、又は環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の有機粒子が挙げられる。また、メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂の微粉末を用いてもよく、熱可塑性樹脂を架橋して不溶化することも好ましい。
樹脂の融点(℃)及びガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
【0043】
無機フィラー及び有機フィラーは、上記のなかから1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組合せる場合は無機フィラーと有機フィラーの組合せであってもよい。
【0044】
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、熱可塑性樹脂との混合の容易さの観点からは、大きいことが好ましい。また、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、延伸により内部に空孔を発生させて不透明性を向上させる場合に、延伸時のフィルム切れ又は隠蔽層の強度低下等のトラブルを発生させにくくする観点からは、小さいことが好ましい。具体的には、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。
【0045】
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、層の切断面を電子顕微鏡で観察し、粒子の少なくとも10個の最大径を測定したときの平均値を、溶融混練と分散により熱可塑性樹脂中に分散したときの平均分散粒子径として求めることができる。
【0046】
隠蔽表面層がフィラーを含有する場合、隠蔽表面層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、特に限定されないが、延伸成形の際に空孔が得られ易く、白色化及び不透明化を達成し易い観点から、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、好適な機械的強度が得られ易い観点から、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
<<その他の添加剤>>
隠蔽表面層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等の添加剤をさらに含有することができる。隠蔽表面層に使用できるその添加剤としては、隠蔽コア層の項目において挙げられた材料と同じであり、好ましい材料も隠蔽コア層と同じである。
【0048】
<<延伸フィルム>>
隠蔽表面層は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよいが、上述したように白色度を高める観点から、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
隠蔽表面層が多層構造である場合、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムを含むことが好ましく、内部に空孔を有する多孔質延伸フィルムを含むことがより好ましい。延伸フィルムを含む隠蔽表面層は、機械的強度が高く、厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れた積層樹脂フィルムを得ることができる。また、白色度を高めることができる。
隠蔽表面層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であってもよい。
【0049】
<<空孔率>>
隠蔽表面層が多孔質構造を有する場合、隠蔽表面層中の空孔の割合を表す空孔率は、白色度及び不透明度を高める観点から、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。機械的強度を維持する観点からは、同空孔率は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
空孔率の測定方法は、電子顕微鏡で観察した隠蔽表面層の断面の一定領域において、空孔が占める面積率より求めることができる。具体的には、隠蔽表面層の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて隠蔽表面層の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込む。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を行い、空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とすることができる。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、隠蔽表面層の空孔率とすることができる。
【0051】
なお、通常はフィラーの含有量が多いほど空孔率が高くなり、隠蔽表面層の白色度又は不透明度が高くなる。積層樹脂フィルムに求められる透明性又は白色度等に応じてフィラーの含有量又は空孔率を選択することができる。
【0052】
<<厚み>>
隠蔽表面層の厚さは、十分な隠蔽性を得る観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましい。また、積層樹脂フィルムの重さが減り、取扱い性が向上しやすいことから、隠蔽表面層の厚さは、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。
【0053】
(印刷層)
本発明の積層樹脂フィルムは、必要に応じて印刷層を更に有していてもよい。
図2は、本発明の一実施形態の積層樹脂フィルムの構造を示す断面図である。
図2に示すように、印刷層4a,4bは、隠蔽コア層2とは反対側の隠蔽表面層3a,3bの面上にそれぞれ設けられ得る。
【0054】
印刷層は、帯電防止機能を有し、ラベル部に帯電防止性能を付与することによって印刷工程でのトラブルを発生し難くしてハンドリング性を改善させる機能を有する。また、印刷層は、印刷インキとの密着性を向上させて、印刷適性を向上させる機能を有する。
印刷層は、帯電防止ポリマー、高分子バインダー等を含有する溶液を、後述する成形方法により薄膜状に成形したものであることが好ましい。
【0055】
印刷層は、帯電防止剤を含有することが好ましい。また、印刷層は、高分子バインダーと、顔料粒子とを含有することが好ましい。帯電防止剤の含有量は、その下限が、通常0.1質量%、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1質量%であり、同上限が、通常100質量%、より好ましくは70質量%、さらに好ましくは50質量%である。また、高分子バインダーの含有量は、その下限が、通常0質量%、好ましくは0.5質量%、より好ましくは50質量%であり、同上限が、通常99.9質量%、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99質量%である。また、顔料粒子の含有量は、その下限が、通常0質量%であり、同上限が、通常70質量%、好ましくは69.5質量%、より好ましくは49質量%である。より具体的には、印刷層は、帯電防止剤0.1~100質量%と、高分子バインダー0~99.9質量%と、顔料粒子0~70質量%とを含むことが好ましい。また、印刷層は、帯電防止剤0.5~70質量%と、高分子バインダー30~99.5質量%と、顔料粒子0~69.5質量%とを含むことがより好ましい。また、印刷層は、帯電防止剤1~50質量%と、高分子バインダー50~99質量%と顔料粒子0~49質量%を含むことがさらに好ましい。
【0056】
<帯電防止剤>
帯電防止剤は、印刷層に帯電防止性能を付与するために添加するものであり、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン、ソルビタンモノラウレート、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩等に代表される低分子量有機化合物系の帯電防止剤;ITO(インジウムドープド酸化錫)、ATO(アンチモンドープド酸化錫)、グラファイトウィスカ等に代表される導電性無機充填剤;ポリチオフェン、ポリピーロイル、ポリアニリン等の分子鎖内のパイ電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマー;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン等の非イオン性ポリマー系の帯電防止剤;ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体;アルキレンオキシド基及び/又は水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーに代表される帯電防止機能を有するポリマー等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
これら帯電防止剤はそれぞれ特性がある。例えば、低分子量有機化合物系の帯電防止剤は、環境湿度に帯電防止性能が大きく影響されやすい。一方、帯電防止機能を有するポリマーは、インキの密着性、転移性への影響も小さく、着色も殆ど無いことから本実施形態で使用する帯電防止剤として好ましいものである。
【0058】
これらの中でも、アルキレンオキシド基及び/又は水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーや、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体は帯電防止性能が良好であり、環境湿度の帯電防止性能への影響が小さいことから、本実施形態で使用する帯電防止剤としてより好ましいものである。
【0059】
アルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1万~100万の範囲内であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成した塗工層から同ポリマーが染み出し難くなるため、十分な耐水性が得られやすい傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやすいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすい傾向がある。
【0060】
<高分子バインダー>
印刷層は、必要に応じて高分子バインダーを含んでいてもよい。高分子バインダーは、印刷層を設けるフィルム、或いは別のフィルムとの密着性を有し、かつ印刷インキとの密着性を向上させる目的から、適宜使用する。
【0061】
高分子バインダーの具体例としては、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、及びオキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリエチレンイミン、炭素数1~12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリ(エチレンイミン-尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、及びポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えて、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0062】
これらの高分子バインダーは、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの高分子バインダーは有機溶剤又は水に希釈又は分散した様態で用いることができる。これらの中でも、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタン等のウレタン樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレンイミン系重合体が、前述のイオン性ポリマー系の帯電防止機能を有するポリマーとの相性(相溶性)がよく、混溶して塗料とした際に安定しており、塗工しやすく好ましい。
【0063】
<架橋剤>
印刷層が高分子バインダーを含有する場合、高分子バインダーが架橋剤によって架橋されていることが好ましい。高分子バインダーの架橋により、印刷層表面の印刷部分における耐水擦過性が向上しやすい。
【0064】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができる。使用できる架橋剤としては、例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム等の金属系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物等のエピクロロヒドリン系架橋剤、オキサゾリン基含有ポリマー等のオキサゾリン系架橋剤等が挙げられる。印刷層表面の耐水擦過性の向上の観点からは、バインダーは、上記金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上によって架橋されていることが好ましい。
【0065】
<顔料粒子>
印刷層は、必要に応じて顔料粒子を含んでいてもよい。顔料粒子は、その吸油性による印刷インキの定着性向上、体質顔料として表面の風合いや光沢感向上、白色顔料として白色度向上、表面凹凸付与によるブロッキング防止性能向上、紫外線反射材として耐光性や耐候性向上、等の性能付与を考慮し適宜選択して使用できる。
【0066】
顔料粒子として、有機、無機の微細粉末が使用され、具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等を使用することができる。顔料粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下あり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。また、顔料粒子の粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。顔料分子の粒子径が上記の上限値以下であることにより、形成した印刷層からの顔料粒子の脱落、及びこれに伴う粉吹き減少を抑制することができる。また、顔料分子の粒子径が上記の下限値以上であることにより、印刷層表面に起伏を形成し、積層樹脂フィルムを重ねて保管した際のブロッキングを防止する傾向にある。顔料粒子の印刷層中への含有量は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、その下限が、好ましくは0質量%であり、同上限が、好ましくは70質量%、より好ましくは60質量%、さらに好ましくは45質量%である。より具体的には、顔料粒子の印刷層中への含有量は、好ましくは0~70質量%、より好ましくは0~60質量%、さらに好ましくは0~45質量%である。顔料粒子の含有量が上記範囲以下であることにより、バインダー樹脂量が十分となることで、印刷層の凝集力を向上させて、隠蔽表面層への接着力を改善することとともに、印刷インキの剥離を抑えることができる。
【0067】
<厚み>
印刷層の厚みは、帯電防止性能を安定して発揮させる観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。また、印刷層の厚みは、印刷層の自重が抑えられて、静電吸着力及び自己粘着力により自重を支えて被着体から剥がれ落ちることを防止する観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
【0068】
<表面抵抗率>
印刷層の表面抵抗率は、1×10-1Ω以上が好ましく、1×10Ω以上がより好ましく、1×10Ω以上がさらに好ましい。一方、同表面抵抗率は、9×1012Ω以下が好ましく、5×1012Ω以下がより好ましく、1×1012Ω以下がさらに好ましい。印刷層の表面抵抗率が上記範囲内であれば、印刷工程でロールへの貼り付きやフィルム同士のブロッキング等の発生を抑制することができる傾向がある。
印刷層の表面抵抗率は、JIS K6911:2006に準拠して測定される。
【0069】
(積層樹脂フィルムの特性)
<不透明度の幅方向でのばらつき>
本発明の積層樹脂フィルムは高い不透明度を有するが、その不透明度のばらつきが小さいことが好ましい。積層樹脂フィルムにおける不透明度に対する幅方向での標準偏差は、8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。不透明度に対する幅方向での標準偏差が8%以下であることにより、より高い隠蔽性を得ることができ、製造における歩留まり低下を抑制できる。一方、積層樹脂フィルムにおける不透明度に対する幅方向での標準偏差は、0.1%以上、0.2%以上、又は0.3%以上であることができる。
【0070】
<隠蔽表面層-隠蔽コア層間の層間強度>
本発明の積層樹脂フィルムにおける隠蔽表面層-隠蔽コア層間の層間強度は、1300gf/15mm以上が好ましく、1400gf/15mm以上がより好ましく、1500gf/15mm以上がさらに好ましい。層間強度が1300gf/15mm以上であれば、積層樹脂フィルムに印刷、印字、断裁等の二次加工を行う際に剥離しにくい。一方、隠蔽表面層-隠蔽コア層間の層間強度は、5000gf/15mm以下が好ましく、4000gf/15mm以下がより好ましく、3000gf/15mm以下がさらに好ましい。
【0071】
<厚み>
本発明の積層樹脂フィルムは、少なくとも隠蔽コア層及び隠蔽表面層を含むものであり、その全体厚みは20μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、160μm以上がさらに好ましい。一方、積層樹脂フィルムの全体厚みは、800μm以下が好ましく、650μm以上がより好ましく、550μm以下がさらに好ましい。
【0072】
本発明の積層樹脂フィルムの全層の厚みに対する隠蔽コア層の厚みの割合は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。厚みが10%以上であると、十分な機械的強度及び不透明度が得られる傾向がある。一方、積層樹脂フィルムの全層の厚みに対する印刷コア層の厚みの割合は、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
【0073】
本発明の積層樹脂フィルムの全層の厚みに対する隠蔽表面層の厚みの割合は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がさらに好ましい。厚みが10%以上であると、十分な白色度及び不透明度が得られる傾向がある。一方、積層樹脂フィルムの全層の厚みに対する隠蔽表面層の厚みの割合は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
【0074】
(積層樹脂フィルムの製造方法)
積層樹脂フィルムにおける隠蔽コア層、又は隠蔽表面層(以下、「積層樹脂フィルムにおける隠蔽コア層、又は隠蔽表面層」を「積層樹脂フィルムにおける各層」ともいう)は、通常、上述した熱可塑性樹脂と層中に含まれる他の成分を混合した後、成形することにより得ることができる。成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて製造することができる。
【0075】
積層樹脂フィルムにおける各層は、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いて、フィルム状に成形することができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、積層樹脂フィルムにおける各層を成形してもよい。
【0076】
積層樹脂フィルムにおける各層は、それぞれ別に成形し、それら成形した層を積層することにより、積層樹脂フィルムの積層体を形成してもよい。あるいは、他の層と一緒にまとめて成形することにより積層体を得てもよい。積層方法としては、例えば共押出法、押出ラミネート法、及び塗布法等が挙げられる。
共押出法は、多層ダイスに基材層用の樹脂組成物と、感熱接着層用の樹脂組成物とを供給し、多層ダイス内で積層して押し出す。共押出法によれば、フィルム成形と並行して積層が行われる。
押出ラミネート法は、隠蔽コア層を先に成形し、これに溶融した隠蔽表面層用の樹脂組成物を積層し、冷却しながらロールでニップする。押出ラミネート法によれば、フィルム成形と積層とは別工程で行なわれる。
本発明の積層樹脂フィルムは、隠蔽表面層及び前記隠蔽コア層を押出ラミネートによって形成する工程を含むのが好ましい。
【0077】
<延伸>
上述したように積層樹脂フィルムにおける各層は、各々無延伸層であってもよいし、延伸層であってもよいが、隠蔽表面層は、延伸層であるのが好ましい。
【0078】
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、及びテンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押出成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0079】
隠蔽コア層と隠蔽表面層は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0080】
延伸を実施するときの延伸温度は、各層に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0081】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明度が向上しやすい。また、フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0082】
<表面処理>
隠蔽コア層は、隠蔽表面層との密着性を高める観点から、酸化処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。また、隠蔽表面層の表面は酸化処理が施されていてもよい。酸化処理により、表面の濡れ性を調整でき、印刷の滲みを抑制することができる傾向がある。
酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
【0083】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である一方、好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である一方、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0084】
印刷層を設ける場合の塗工手段としては、具体的には、グラビア塗工、メイヤーバー塗工、ロール塗工、ブレード塗工、サイズプレス塗工等の塗工手段を採用することができる。また、塗工量は一般的には0.01~20g/m、好ましくは0.1~15g/mにすることができる。
【実施例0085】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0086】
(再生プラスチックの作製)
紫外線硬化型フレキソインキ(商品名「UVフレキソCF」、T&K TOKA(株)製)を用いて、合成紙(商品名:FPG130、株式会社ユポ・コーポレーション製)上に60m/分の速度にて4色印刷を施した。次いでこれを紫外線照射器(メタルハライド灯、100W/cm、1灯、アイグラフィック(株)製)の下を60m/分の速度にて通過させて印刷面のインキを乾燥させて、フレキソ印刷物を得た。フレキソ印刷物からポリプロピレン成分を抽出、精製することにより、再生プラスチック原料である再生プラスチックを得た。得られた再生プラスチックには印刷インキ由来の着色成分を含んだ着色再生プラスチック原料であった。
【0087】
(樹脂組成物の調製)
<樹脂組成物(a)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)79.5質量部、二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR60、平均粒子径:0.2μm)0.5質量部、重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製、商品名:ソフトン1800、平均粒径1.2μm(測定方法:空気透過法))20.0質量部よりなる樹脂組成物(a)を調製した。
【0088】
<樹脂組成物(b)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)95.0質量部、二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR60、平均粒子径:0.2μm)5.0質量部よりなる樹脂組成物(b)を調製した。
【0089】
<樹脂組成物(c)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)99.5質量部、二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR60、平均粒子径:0.2μm)0.5質量部よりなる樹脂組成物(c)を調製した。
【0090】
<樹脂組成物(d)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)64.5質量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FW4B、MFR(230℃、2.16kg荷重):6.5g/10分、融点:140℃)30.0質量部、上記で作製した再生プラスチック5.0質量部、カーボンブラックマスターパッチ(越谷化成工業株式会社製、商品名:ROYAL BLACK 9031P、MFR(230℃、2.16kg荷重):1g/10分、顔料濃度:40%)0.5質量部よりなる樹脂組成物(d)を調製した。
【0091】
<樹脂組成物(e)~(h)>
プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、再生プラスチック、及びカーボンブラックマスターパッチの配合比率を表1に示すように変更した以外は、樹脂組成物(d)と同様にして各樹脂組成物(e)~(h)を調製した。
【0092】
<樹脂組成物(i)>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)49.0質量部、上記で作製した再生プラスチック50.0質量部、カーボンブラックマスターパッチ(越谷化成工業株式会社製、商品名:ROYAL BLACK 9031P、MFR(230℃、2.16kg荷重):1g/10分、顔料濃度:40%)1.0質量部よりなる樹脂組成物(i)を調製した。
【0093】
<樹脂組成物(j)>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)50.0質量部、上記で作製した再生プラスチック50.0質量部よりなる樹脂組成物(j)を調製した。
【0094】
樹脂組成物(a)~(j)の構成成分について、下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
(塗工液の調製)
<塗工液の調製例1>
第4級窒素含有アクリル系樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:サフトマーST3200)20質量部(固形分換算、第2級アミノ基含有ポリマー水溶液(BASFジャパン株式会社製、商品名:ポリミンSK)40質量部(固形分換算)、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物(星光PMC株式会社製、商品名:WS4082)40質量部(固形分換算)を含む水溶液を、塗工液として調製した。
【0097】
【表2】
【0098】
(実施例1)
樹脂組成物(a)を押出機で220℃の温度で溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイ内に供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで、延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、さらに160℃まで加熱して熱処理を行った。その後、60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚さが80μmの二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シート表面をコロナ放電処理した後、調製例1で得られた塗工液を固形分0.050g/mとなるように片面に塗布及び乾燥して片面印刷層付き二軸延伸シートを得た。
次いで、樹脂組成物(d)を押出機で220℃の温度で溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイ内に供給しシート状に押し出し、軟化状態であるうちにこのシート状押出成形物の両面に上記片面印刷層付き二軸延伸シートの印刷層を有しない面をサーマルラミネートして厚さ410μm(各層厚さ:80/250/80μm、各層延伸数:二軸/無延伸/二軸)の実施例1の積層樹脂フィルムを得た。
得られた積層樹脂フィルムにおいて、樹脂組成物(a)を用いて形成された層が隠蔽表面層、樹脂組成物(d)を用いて形成された層が隠蔽コア層、塗工液を用いて形成された層が印刷層に相当する。
【0099】
(実施例2~4、6、8、9及び比較例1)
実施例1において、各層の樹脂組成物を下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4、6、8、9及び比較例1の積層樹脂フィルムを得た。
【0100】
(実施例5及び7)
隠蔽コア層の樹脂組成物及び厚みを下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5及び7の積層樹脂フィルムを得た。
【0101】
[評価]
(厚み)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムの全体厚みは、JIS K7130:1999に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG-01J)を用いて測定した。また、各実施例、比較例の積層樹脂フィルムにおける各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM-6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、積層樹脂フィルムの全体厚みに観察される各層厚み比率を乗算して求めた。
【0102】
(空孔率)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムにおける各層の空孔率(%)は、電子顕微鏡で観察した積層樹脂フィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めた。測定対象の積層樹脂フィルムの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象の印刷用紙の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて1000倍の拡大倍率において積層樹脂フィルムの空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。得られた画像データの画像処理を画像解析装置にて行い、各層間の境界を判別して各層の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めた。任意の10箇所の観察における測定値を平均して、各層の空孔率(%)とした。
【0103】
(不透明度)
JIS P8149:2000(「紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照明法」)に準拠し、厚さを測定した後の各実施例、比較例の積層樹脂フィルムごとにカラーメーター(商品名:SMカラーコンピューター、スガ試験機(株)製)で各1回測定し、全ての平均値を求め、不透明度とした。
【0104】
(不透明度の幅方向でのばらつき)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムについて、幅方向に50mm間隔で不透明度を測定し、それらの標準偏差を算出し、不透明度の幅方向でのばらつきとした。
【0105】
(白色度)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムの色相、すなわち、ハンター表色系の明度指数L及びクロマティクネス指数a、bを、ハンター型色差計(商品名「SMカラーメーター SM-T」、スガ試験機社製)を用いて測定した。白色度は、JIS L1015:1999に記載の方法に準拠して算出した。
【0106】
(隠蔽性)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムにおける隠蔽性を以下の基準で判定した。
○:白色度が85%以上であり、且つ不透明度が99%以上である。
×:白色度が85%未満であり、且つ不透明度が99%未満である。
【0107】
(隠蔽表面層-隠蔽コア層間の層間強度)
JIS Z 1707に準拠し、各実施例、比較例の積層樹脂フィルムの一端を隠蔽表面層と隠蔽コア層に剥離し、それぞれの層の一端を引っ張り試験機の両つかみ具に取り付け、試験速度300mm/分で引張応力を加え、完全に剥離するまでの最大応力を測定した。試験は2回行い、その平均値を求め、隠蔽表面層-隠蔽コア層間の層間強度とした。
【0108】
(印刷適性)
[フレキソ印刷物]
各実施例、比較例で得られた積層樹脂フィルムを小割スリット処理し、これの片面にフレキソ印刷機(商品名「TCL」、太陽機械製作所(株)社製)、および紫外線硬化型フレキソインキ(商品名「UVフレキソCF」、T&K TOKA(株)製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、商品名、製造元、販売会社名、使用方法、注意事項等の文字情報およびバーコードや意匠を含む図柄を、60m/分の速度にて4色印刷を施した。次いでこれを紫外線照射器(メタルハライド灯、100W/cm、1灯、アイグラフィック(株)製)の下を60m/分の速度にて通過させて印刷面のインキを乾燥させて、フレキソ印刷物を得た。
【0109】
<表面抵抗率>
各実施例、比較例で得られた積層樹脂フィルムをA4サイズに断裁し、これを温度10℃、相対湿度30%の条件下で、一週間静置した。次いで同サンプルの印刷層の表面の表面抵抗率を、温度10℃、相対湿度30%の条件下で、JIS K6911:2006に準拠し2重リング法の電極を用いて測定した。
【0110】
<インキ密着性>
各実施例、比較例の積層樹脂フィルムを用いたフレキソ印刷物をラベル形状に打抜き、これの印刷の上にセロハンテープ(ニチバン製、LP-18)を貼り、指で密着させた後に、基材の内部破壊が起きない速度で180度剥離を行い、印刷の剥がれを以下の基準で判定した。
○:印刷の剥がれは認められない。
△:印刷の剥がれが認められるが、剥離強度が高く、実用上問題ない。
×:印刷の剥がれが認められ、剥離強度が低く、実用に適さない。
【0111】
(環境貢献度)
各実施例、比較例の積層樹脂フィルム中で用いられたプラスチック材料のうち、再生プラスチックの質量百分率を算出した。
【0112】
【表3】
【0113】
表3に示すように、実施例1~9の積層樹脂フィルムは、高い白色度及び不透明度を有し、優れた隠蔽性、層間強度、及び印刷適性を兼ね備えるものであった。
一方、隠蔽コア層に黒色顔料を含有していない比較例1の積層樹脂フィルムは、不透明度が低く、高い隠蔽性を有するものではなかった。
【符号の説明】
【0114】
1 隠蔽層
2 隠蔽コア層
3a 隠蔽表面層
3b 隠蔽表面層
4a 印刷層
4b 印刷層
10 積層樹脂フィルム

図1
図2