(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147476
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/56 20230101AFI20231005BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20231005BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20231005BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
H04N5/225 600
H04N5/225 800
H04N5/232 030
B60R1/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054986
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 繁
(72)【発明者】
【氏名】北島 大夢
(72)【発明者】
【氏名】香山 信三
(72)【発明者】
【氏名】小田川 明弘
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA14
5C122EA67
5C122FA18
5C122FH11
5C122GG26
5C122GG28
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できるようにする。
【解決手段】制御部40は、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターンを光源110に投光させ、第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを光源110に投光させる。第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が、第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有する。撮像部20は、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つのパターンについて撮像装置21によって撮像する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を有する撮像部と、
制御部と、
前記撮像装置が撮像した画像を処理する処理部と、
を備え、
前記制御部は、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターンを光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が、前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像部は、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像する画像処理装置。
【請求項2】
請求項1の画像処理装置において、
前記処理部は、前記撮像装置が撮像した画像に基づいて、前記撮像装置から撮像対象までの距離を算出する画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の画像処理装置において、
前記撮像装置は、互いに異なる位置に複数台が設けられ、
前記制御部は、それぞれの前記撮像装置に前記パターンを撮像させる画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記光源は、移動体に設けられている画像処理装置。
【請求項5】
請求項4の画像処理装置において、
前記移動体は、車両であり、
前記光源は、撮像対象上に前記パターンを投影することが可能であることを特徴とし、前記車両の車幅灯、後退灯、および前照灯の何れかである画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記パターンのそれぞれは、不規則な輝度分布を持つパターンである画像処理装置。
【請求項7】
請求項6の画像処理装置において、
前記光源が、互いに異なる位置に複数存在する場合において、
前記制御部は、所定の2つの前記光源に、互いに異なるパターンを投影させ、
前記制御部は、2つの前記光源の一方が投影中の期間と、他方の前記光源が投影中の期間とのそれぞれの期間において、前記撮像装置に撮像を行なわせる画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記光源が、互いに異なる位置に複数存在する場合において、
前記制御部は、互いに異なるタイミングで、2つの前記光源に投影させ、
前記制御部は、2つの前記光源の一方が投影中の期間と、他方の前記光源が投影中の期間とのそれぞれの期間において、前記撮像装置に撮像を行なわせる画像処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちの何れか1項の画像処理装置において、
撮影における異常を検知する検知部を備えた画像処理装置。
【請求項10】
請求項9の画像処理装置において、
前記撮像装置は、複数台が設けられ、
前記制御部は、前記検知部が異常を検知した場合に、異常が検知されていない前記撮像装置に前記パターンを撮像させる画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記パターンは、少なくとも前記処理部による処理対象の範囲において、前記撮像装置が有するセンサの1ピクセルが視認する範囲が整合している
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
光源を制御する制御ステップと、
対象物を撮像する撮像ステップと、
撮像装置が撮像した画像を処理する処理ステップと
を含み、
前記制御ステップでは、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターンを前記光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像ステップでは、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像する画像処理方法。
【請求項13】
光源を制御する制御部と、
対象物を撮像する撮像部と、
撮像装置が撮像した画像を処理する処理部と
としてコンピュータを機能させ、
前記制御部では、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターンを前記光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像部では、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の有無、該物体までの距離等の物体情報を検出するための技術として特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の例では、均一な輝度分布のパターン光と不均一な輝度分布のパターン光を交互に照射させて、視差計算を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の例では、均一な輝度分布のパターン光の照射時には、テキスチャレスな撮像対象(例えば障害物)の検出が困難である。
【0005】
本開示の目的は、配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、撮像装置を有する撮像部と、
制御部と、
前記撮像装置が撮像した画像を処理する処理部と、
を備え、
前記制御部は、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターンを光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が、前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像部は、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像する画像処理装置である。
【0007】
複数種類のパターンが、互いに異なるタイミングで光源によって投影される。それぞれのパターンは、明部と暗部の配置が他のパターンとは異なる領域を有している。そのため、本態様では、配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様の画像処理装置において、
前記処理部は、前記撮像装置が撮像した画像に基いて、前記撮像装置から撮像対象までの距離を算出する画像処理装置である。
【0009】
第2の態様では、処理部が、撮像装置から撮像対象までの距離を算出する。算出された距離は、画像処理装置を搭載した装置などで利用できる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様の画像処理装置において、
前記撮像装置は、互いに異なる位置に複数台が設けられ、
前記制御部は、それぞれの前記撮像装置に前記パターンを撮像させる画像処理装置である。
【0011】
第3の態様では、複数台の撮像装置が撮像した画像を、視差の算出などに利用できる。
【0012】
第4の態様は、第1から第3の態様のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記光源は、移動体に設けられている画像処理装置である。
【0013】
第4の態様では、移動体に搭載された画像処理装置において、移動体の光源における配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様の画像処理装置において、
前記移動体は、車両であり、
前記光源は、撮像対象上に前記パターンを投影することが可能であることを特徴とし、前記車両の車幅灯、後退灯、および前照灯の何れかである画像処理装置である。
【0015】
第5の態様では、車両の燈火(光源)における配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【0016】
第6の態様は、第1から第5の態様のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記パターンのそれぞれは、不規則な輝度分布を持つパターンである画像処理装置である。
【0017】
第6の態様では、不規則な輝度分布を持つパターンによって、撮像対象が検出される。本態様は、夜間における障害物の検出、テキスチャレスな障害物の検出等に有用である。
【0018】
第7の態様は、第6の態様の画像処理装置において、
前記光源が、互いに異なる位置に複数存在する場合において、
前記制御部は、所定の2つの前記光源に、互いに異なるパターンを投影させ、
前記制御部は、2つの前記光源の一方が投影中の期間と、他方の前記光源が投影中の期間とのそれぞれの期間において、前記撮像装置に撮像を行なわせる画像処理装置である。
【0019】
第7の態様では、一方のパターン投影下の撮像で得られなかった情報を、他方のパターン投影下の撮像で得られる可能性がある。
【0020】
第8の態様は、第1から第7の態様のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記光源が、互いに異なる位置に複数存在する場合において、
前記制御部は、互いに異なるタイミングで、2つの前記光源に投影させ、
前記制御部は、2つの前記光源の一方が投影中の期間と、他方の前記光源が投影中の期間とのそれぞれの期間において、前記撮像装置に撮像を行なわせる画像処理装置である。
【0021】
第8の態様では、2つの光源の一方が投影している期間と他方の光源が投影している期間とのそれぞれの期間において、撮像が行なわれる。本態様では、複数種類の画像データを得ることができる。
【0022】
第9の態様は、第1から第8の態様のうちの何れか1項の画像処理装置において、
撮影における異常を検知する検知部を備えた画像処理装置である。
【0023】
第9の態様では、撮像装置の異常などの、撮影における異常が検知される。
【0024】
第10の態様は、第9の態様の画像処理装置において、
前記撮像装置は、複数台が設けられ、
前記制御部は、前記検知部が異常を検知した場合に、異常が検知されていない前記撮像装置に前記パターンを撮像させる画像処理装置である。
【0025】
第10の態様では、信頼性のある画像データのみを取得できる。
【0026】
第11の態様は、第1から第10の態様のうちの何れか1項の画像処理装置において、
前記パターンは、少なくとも前記処理部による処理対象の範囲において、前記撮像装置が有するセンサの1ピクセルが視認する範囲が整合している画像処理装置である。
【0027】
第11の態様では、より遠方の投光範囲における撮像対象の検知能力向上が見込まれる。
【0028】
第12の態様は、光源を制御する制御ステップと、
対象物を撮像する撮像ステップと、
撮像装置が撮像した画像を処理する処理ステップと
を含み、
前記制御ステップでは、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターン前記光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像ステップでは、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像する画像処理方法である。
【0029】
第12の態様では、配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【0030】
第13の態様は、光源を制御する制御部と、
対象物を撮像する撮像部と、
撮像装置が撮像した画像を処理する処理部と
としてコンピュータを機能させ、
前記制御部では、投光のパターンとして、第1タイミングにおいて第1パターン前記光源に投光させ、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第2パターンを前記光源に投光させ、
前記第1および第2パターンは、明部と暗部の配置が前記第1および第2タイミングと異なる第3タイミングで投光された第3パターンとは異なる領域を有しており、
前記撮像部では、互いに異なるタイミングで投光された少なくとも1つの前記パターンについて前記撮像装置によって撮像させる画像処理プログラムである。
【0031】
第13の態様では、配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、配光のムラを抑制しつつ、より確実に撮像対象を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】光源の発光パターン(ランダムドットパターン)の一例である。
【
図5】第1動作モードにおける制御部による制御を説明するタイミングチャートである。
【
図6】第1動作モードにおける、光源の投影の状態を説明する図である。
【
図7】第2動作モードにおける、光源の投影の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
《実施形態》
図1は、実施形態1の画像処理装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態では、画像処理装置1は、車両のような移動体に搭載される。
図1に示すように、画像処理装置1は、撮像部20、処理部30、制御部40、および検知部50を備えている。
【0035】
〈撮像部20〉
撮像部20は、2台の撮像装置(カメラ21)を備えている。以下では、カメラ21のように複数台ある構成要素を区別して説明する必要がある場合には、符号の後ろに接尾辞を付ける場合がある。例えば、カメラ21は、2台を識別する場合には、カメラ21-R、カメラ21-Lのように表記する。
【0036】
これらのカメラ21は、デジタルカメラである。カメラ21は、「撮像信号」が入力されると撮像を行なう。カメラ21は、撮像した画像をデジタルデータ(画像データ)として出力する。これらのカメラ21は、動画像を撮影する場合もあるし、静止画像を撮像する場合もある。カメラ21は、画像データを処理部30に出力する。
【0037】
カメラ21は、車両に搭載される。
図2は、カメラ21の搭載状態を例示する図である。
図2は、車両100の後部を上方から見た図である(車両100の前部は省略されている)。
【0038】
これらのカメラ21-R,Lは、車両100の室内に設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、カメラ21-Rは、リアウインドウに面し、且つ車両100の中心よりもやや右寄りの位置に取り付けられている。カメラ21-Lは、リアウインドウに面し、且つ車両100の中心よりもやや左寄りの位置に取り付けられている。カメラ21-R,Lは、一つの筐体に収めて車両100に取り付けてもよいし、それぞれ別の筐体に収めてもよい。
【0039】
カメラ21-R,Lは、車両100の後方を撮像する。カメラ21-Rの撮像範囲とカメラ21-Lの撮像範囲とには重複がある。
【0040】
〈処理部30〉
処理部30は、コンピュータとメモリとを備えている(何れも図示を省略)。メモリは、例えば半導体メモリである。処理部30では、前記コンピュータが所定のプログラムを実行することによって、2台のカメラ21が出力した画像データに対して処理を行なう。
【0041】
例えば、画像処理装置1では、カメラ21の撮像対象と、カメラ21との距離算出を行なう。撮像対象とは、例えば車両100の後方にある、物(例えば障害物)や路面の穴などである。
【0042】
図3は、距離計算の原理を説明する図である。
図3の例では、2台のカメラが用いられている。これらのカメラ間の距離は、Bであるとする。これらのカメラで同じ物体(撮像対象)を撮像すると、物体が結像する画像面上の位置(カメラが備える画像センサ上の位置)が互いに異なる。
図3の例では、物体が結像する画像面上の位置ずれ量は、Dである。一般的に、Dは視差とよばれる。
【0043】
図3から分るように、三角形1と三角形2は相似形である。したがって、物体とカメラとの距離Zは、次式によって算出できる。
【0044】
Z=B×F/D (式1)
式1において、Fは、カメラの焦点距離である。
【0045】
処理部30は、2台のカメラ21から送られた画像データから視差Dを求める。処理部30は、求めた視差D、カメラ間距離B(既知の値)、焦点距離F(既知の値)を式(1)に適用して、撮像対象とカメラとの距離Zを算出する。
【0046】
なお、一方のカメラに代えて、所定の画像を投影する投影機などを用いてもよい。投影機が投影する画像は、投影位置において撮像した画像と見なすことができる。したがって、カメラに代えて投影機を使う場合における視差Dは、投影する画像と、カメラによって投影された画像(投影された画像)の位置ずれである。
【0047】
つまり、「視差」とは、カメラで撮像されたオブジェクトの撮像画像上の位置と、当該オブジェクトを情報として含む画像(参照画像)における当該オブジェクトの位置とのずれである。参照画像は、オブジェクトを前記カメラとは別の視点で撮像した画像である場合もあるし、オブジェクトを前記カメラの撮像対象として投影するための、元画像または別の位置からの投影画像である場合や、後述の光源110-Lもしくは光源110-Rから後述の発光パターンが照射された当該オブジェクトの撮像画像である場合もある。
【0048】
〈制御部40〉
制御部40は、コンピュータとメモリとを備えている(何れも図示を省略)。メモリは、例えば半導体メモリである。メモリには、前記コンピュータを動作させるためのプログラム、データなどが格納される。制御部40のコンピュータとメモリは、処理部30のものと共用してもよいし、別個に設けてもよい。
【0049】
制御部40では、前記コンピュータが所定のプログラムを実行することによって、撮像部20(カメラ21)、および光源110(ライト)を制御する。
【0050】
制御部40は、カメラ21の制御では、所定のタイミング(後述)で撮像信号をカメラ21送信し、カメラ21に撮像させる。制御部40は、光源110の制御では、所定のタイミング(後述)で光源110に投影(発光)させる。
【0051】
本実施形態では、2つの光源110が車両100の互いに異なる位置に設けられている(
図2参照)。より詳しくは、光源110-Rと光源110-Lとは、水平方向に所定距離だけ離れている。
図2に示すように、光源110-Rは車両100後部の右寄りに設けられ、光源110-Lは車両100後部の左寄りに設けられている。これらの光源110は、車両100の後方に向かって発光する。光源110は、いわゆる車幅灯である。
【0052】
これらの光源110は、発光信号が入力された期間に、発光を行なう。換言すると、発光信号は、発光期間を指示する信号である。
【0053】
光源110では、複数の発光ダイオード(LED)がアレイ状に設置されている。それぞれのLEDのオンオフは、光源110の外部から信号(LED制御信号)を入力することによって制御できる。
【0054】
発光させるLEDをLED制御信号によって選択することで、複数種のパターンでの投影を光源110に行なわせることができる。前記複数種のパターンのそれぞれは、所定の明るさを有する明部と、明部よりも暗い暗部との組み合わせで形成されたパターン(以下、明暗パターンとも呼ぶ)である。
【0055】
それぞれの明暗パターンは、明部と暗部の配置が他のパターンとは異なる領域を有している。なお、以下では、一つのパターン(1枚の画像)内の所定領域(1枚の画像の一部分)における明部と暗部の組み合わせをサブパターンと呼ぶ場合がある。
【0056】
制御部40は、光源110において発光させるLEDを適宜、選択する。これにより、制御部40は、光源110に複数種類のパターンを互いに異なるタイミングで投影させることができる。
【0057】
制御部40は、光源110によって投影されるパターンが、不規則な輝度分布を持つパターン(いわゆるランダムドットパターン)となるように、発光するLEDを選択する。なお、本実施形態における「不規則な輝度分布を持つパターン」とは、視差計算を行う場合の撮像画像と参照画像の比較に際し、比較領域内において、任意の位置における計算範囲と同じ大きさの撮像されたサブパターンが、他の位置で出現しないような分布を持つパターンである。
図4は、光源110の発光パターン(ランダムドットパターン)の一例である。
【0058】
本実施形態の制御部40は、発光パターンR1、発光パターンR2、発光パターンL1、および発光パターンL2の4種のパターンの何れかで光源110に投影させるものとする。発光パターンR1と発光パターンL1とは、互いに明暗のパターンが同一ではない。
【0059】
発光パターンR1と発光パターンR2とは、明暗のパターンが互いに逆である。つまり、発光パターンR1の所定の領域(Xとする)と、発光パターンR2において領域Xに相当する領域Yとを比べると、一方の領域で明部である箇所は、他方の領域では暗部である。換言すると、発光パターンR1と発光パターンR2とは、互いに異なるサブパターンを含んでいる。
【0060】
同様に、発光パターンL1と発光パターンL2とは、明暗のパターンが互いに逆である。換言すると、発光パターンL1と発光パターンL2とは、互いに異なるサブパターンを含んでいる。以下では、説明の便宜のため、2つのパターンで互いに対応する領域において、一方の領域が明部で他方の領域が暗部の関係にある場合、この2つのパターンを「相補対」と命名する。
【0061】
〈検知部50〉
検知部50は、撮像における異常を検知する。検知部50は、コンピュータとメモリとを備えている(何れも図示を省略)。メモリは、例えば半導体メモリである。メモリには、コンピュータを動作させるためのプログラム、データなどが格納される。検知部50のコンピュータとメモリは、処理部30や制御部40のものと共用してもよいし、別個に設けてもよい。
【0062】
検知部50は、カメラ21の故障等の異常を検知する。検知部50は、例えば、カメラ21から正常に画像データが出力されていない場合にカメラ21が異常(故障)であると判断する。検知部50は、カメラ21で撮像できない領域(いわゆるオクルージョン)が存在する場合にも、カメラ21が異常であると判断する。検知部50は、異常を検知した場合には、異常の種類を示す情報を、処理部30および制御部40に出力する。
【0063】
〈動作例〉
画像処理装置1は、カメラ21が2台とも正常に撮影可能な場合と、2台のカメラ21うちの1台において正常に撮像できない場合とで、動作のモードが異なる。以下では、カメラ21が2台とも正常撮影可能な場合における、画像処理装置1の動作モードを第1動作モードと呼ぶ。また、2台のカメラ21うちの1台において正常に撮像できない場合における、画像処理装置1の動作モードを第2動作モードと呼ぶ。
【0064】
-第1動作モード-
図5は、第1動作モードにおける制御部40による制御を説明するタイミングチャートである。
図5において、「光開始信号」は、処理部30が制御部40に出力する信号である。光開始信号は、カメラ21および光源110の制御開始を制御部40に対して指示する信号である。
【0065】
「左側ライト発光信号」は、制御部40によって出力される。左側ライト発光信号は、車両100の左側の光源110-Lに対して発光を指示する信号(前述の発光信号)である。
【0066】
制御部40は、発光パターンを指定する信号(前述のLED制御信号)も光源110-Lに出力する。第1動作モードでは、光源110-Lには、発光パターンL1による発光、または発光パターンL2による発光が指定される。
【0067】
図5において、左側ライト発光信号(パルス)の上に、「L1」と記載されているタイミングで、制御部40は、発光パターンL1による発光を指示するLED制御信号を出力している。左側ライト発光信号(パルス)の上に、「L2」と記載されているタイミングで、制御部40は、発光パターンL2による発光を指示するLED制御信号を出力している。
【0068】
「右側ライト発光信号」は、制御部40によって出力される。右側ライト発光信号は、車両100の右側の光源(光源110-R)に対して発光を指示する信号(前述の発光信号)である。
【0069】
制御部40は、発光パターンを指定する信号(LED制御信号)も光源110-Rに出力する。第1動作モードでは、光源110-Rには、発光パターンR1による発光、または発光パターンR2による発光が指定される。
【0070】
図5において、右側ライト発光信号(パルス)の上に、「R1」と記載されているタイミングで、制御部40は、発光パターンR1による発光を指示するLED制御信号を出力している。右側ライト発光信号(パルス)の上に、「R2」と記載されているタイミングで、制御部40は、発光パターンR2による発光を指示するLED制御信号を出力している。
【0071】
「撮像終了信号」は、後述するステップ1からステップ4までの処理が完了したことを示す信号である。撮像終了信号は、制御部40が処理部30に出力する。
【0072】
図6は、第1動作モードにおける、光源110の投影(発光)の状態を説明する図である。
図5、
図6に示すように、画像処理装置1では、ステップ1~ステップ4の処理が繰り返して実行される。
【0073】
ステップ1では、制御部40は、左側ライト発光信号を光源110-Lに出力する。制御部40は、発光パターンL1を指示するLED制御信号も光源110-Lに出力する。これにより、光源110-Lは、左側ライト発光信号が出力されている期間(Δtとする)、発光パターンL1の投影を行なう。
【0074】
本実施形態では、Δtを10ms以下としている。こうすることで、光源110におけるフリッカーを人間が認識し難くなる。勿論、Δtの値は例示である。Δtは、人がフリッカーを感じ難い期間に定めればよい。
【0075】
ステップ1では、制御部40は、光源110-Lの投影中に、撮像信号をカメラ21-Rおよびカメラ21-Lに送信する。これにより、2台のカメラ21が発光パターンL1の投影下で撮像を行なう。2台のカメラ21は、画像データを処理部30に出力する。
【0076】
ステップ1において、処理部30は、2台のカメラ21から得た画像データを用いて視差Dを求める。処理部30は、視差Dを含む視差情報を用いて、カメラ21と、その撮像対象との距離Zを算出する。
【0077】
ステップ2は、ステップ1の終了直後に開始される。ステップ2では、制御部40は、右側ライト発光信号を光源110-Rに出力する。制御部40は、発光パターンR1を指示するLED制御信号も光源110-Rに出力する。これにより、光源110-Rは、右側ライト発光信号が出力されている期間(Δt)、発光パターンR1の投影を行なう。
【0078】
光源110-Rについても、Δtを10ms以下としている。こうすることで、光源110における発光は、フリッカーとして人間に認識され難くなる。勿論、光源110-Rに関するΔtの値も例示である。光源110-Rについても、Δtは、人がフリッカーを感じ難い期間に定めればよい。
【0079】
ステップ2では、制御部40は、光源110-Rの投影中に、撮像信号をカメラ21-Rおよびカメラ21-Lに送信する。これにより、2台のカメラ21が発光パターンR1の投影下で撮像を行なう。2台のカメラ21は、画像データを処理部30に出力する。
【0080】
ステップ2でも、処理部30は、2台のカメラ21から得た画像データを用いて視差Dを求める。処理部30は、視差Dを含む視差情報を用いて、カメラ21と、その撮像対象との距離Zを算出する。
【0081】
ステップ3は、ステップ2の終了直後に開始される。ステップ3では、ステップ1に対し、光源110-Lの発光パターンが異なっている。ステップ3では、制御部40は、発光パターンL2による発光を光源110-Lに対して指示する。すなわち、光源110-Lは、発光パターンL1と発光パターンL2を交互に発光する。
【0082】
ステップ3では、2台のカメラ21は、発光パターンL2の投影下で、撮像を行なう。2台のカメラ21は、画像データを処理部30に出力する。ステップ3においても、視差情報を用いて、カメラ21と、その撮像対象との距離Zを算出する。
【0083】
ステップ4は、ステップ3の終了直後に開始される。ステップ4では、ステップ2に対し、光源110-Rの発光パターンが異なっている。ステップ4では、制御部40は、発光パターンR2による発光を光源110-Rに対して指示する。すなわち、光源110-Rは、発光パターンR1と発光パターンR2を交互に発光する。
【0084】
ステップ4では、2台のカメラ21は、発光パターンR2の投影下で、撮像を行なう。2台のカメラ21は、画像データを処理部30に出力する。ステップ4においても、視差情報を用いて、カメラ21と、その撮像対象との距離Zを算出する。
【0085】
ステップ1~4のそれぞれにおいて処理部30が算出した距離Zは、車両100において利用できる。例えば、車両100では、距離Zの値に応じて、情報がユーザに報知されたり、車両100の制御(例えばブレーキの作動)等が行なわれたりする。
【0086】
-第2動作モード-
画像処理装置1では、検知部50が撮像の異常(カメラ21の異常など)を検知した場合に、第2動作モードが実行される。ここでは、カメラ21-Lは正常に撮像ができるが、カメラ21-Rは正常な撮像ができないものと仮定する。
【0087】
検知部50は、カメラ21-Rの異常を検知したら、異常の種類を示す情報を、処理部30と制御部40に送信する。これにより、処理部30および制御部40において、第2動作モードでの実行が開始される。
【0088】
図7は、第2動作モードにおける、光源110の投影(発光)の状態を説明する図である。画像処理装置1では、
図7に示すステップ1~ステップ4の処理が繰り返して実行される。
【0089】
第2動作モードでは、制御部40は、正常な撮像ができないカメラ21-Rには撮像させない。第2モードでは、信頼性のある画像データのみが取得される。
【0090】
ステップ1では、制御部40は、光源110-Lに発光パターンL1で投影させる。制御部40は、光源110-Lの投影中に、撮像信号をカメラ21-Lに送信する。これにより、カメラ21-Lが光源110-Lの投影下で撮像を行なう。カメラ21-Lは、画像データを処理部30に出力する。
【0091】
ステップ2は、ステップ1の終了直後に開始される。ステップ2では、制御部40は、光源110-Rに発光パターンL1で投影させる。つまり、光源110-Rは、ステップ1の光源110-Lと同じパターンで投影する。第2動作モードでは、光源110-Lと光源110-Rが交互に発光する。
【0092】
制御部40は、光源110-Rの投影中に、撮像信号をカメラ21-Lに送信する。これにより、カメラ21-Lが光源110-Rの投影下で撮像を行なう。カメラ21-Lは、画像データを処理部30に出力する。
【0093】
処理部30は、ステップ1およびステップ2において画像データを受け取ると、両ステップ1で得た画像データおよびステップ2で得た画像データを基に、視差Dおよび距離Zを求める。
【0094】
ステップ3は、ステップ2の終了直後に開始される。ステップ3では、ステップ1に対して、光源110-Lの発光パターンが異なっている。ステップ3では、制御部40は、光源110-Lに発光パターンL2で投影させる。すなわち、第2動作モードでは、光源110-Lは、発光パターンL1,L2を交互に投影する。
【0095】
ステップ3において、カメラ21-Lは、制御部40に制御されて、光源110-Lの投影下で撮像を行なう。カメラ21-Lは、画像データを処理部30に出力する。
【0096】
ステップ4は、ステップ3の終了直後に開始される。ステップ4では、ステップ2に対して、光源110-Rの発光パターンが異なっている。ステップ4では、制御部40は、光源110-Rに発光パターンL2で投影させる。すなわち、光源110-Rは、発光パターンL1と発光パターンL2を交互に発光する。
【0097】
ステップ4において、カメラ21-Lは、制御部40に制御されて、光源110-Rの投影下で撮像を行なう。カメラ21-Lは、画像データを処理部30に出力する。
【0098】
処理部30は、ステップ2およびステップ3において画像データを受け取ると、両ステップ2で得た画像データおよびステップ3で得た画像データを基に、視差Dおよび距離Zを求める。
【0099】
ステップ2の終了時およびステップ4の終了時のそれぞれにおいて処理部30が算出した距離Zは、車両100において利用される。例えば、車両100では、距離Zの値に応じて、情報がユーザに報知されたり、車両100の制御(例えばブレーキの作動)等が行なわれたりする。
【0100】
なお、第2モードでは、ステップ1,2で使用する発光パターンと、ステップ3,4で使用する発光パターンとは、互いに相補対をなす発光パターンであればよい。例えば、第2モードでは、発光パターンとして、発光パターンL1に代えて発光パターンR1を採用し、発光パターンL2に代えて発光パターンR2を採用してもよい。
【0101】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態では、相補対をなす発光パターンが、適宜、切り替えられる。この構成によって、本実施形態では、光源110の投影領域において、ある瞬間に暗部であった領域が、別の瞬間には明部となり得る。
【0102】
これにより、車両100では、配光のムラを抑制できる。例えば、光源に対する法規制によっては、所定の領域に高い輝度を維持しながら均一な配光が求められる場合がある。このような光源のアプリケーションも、画像処理装置1によれば、その規制に容易に対応できる。
【0103】
画像処理装置1では、撮像は、明暗パターン(ランダムドットパターン)の投影下で行なわれる。画像処理装置1は、夜間における障害物の検出、テキスチャレスな障害物の検出等に有用である。換言すると、画像処理装置1では、より確実に撮像対象を検出できる。
【0104】
明暗パターンの投影下で撮像された画像は、暗部に相当する部分の情報が抜け落ち場合がある。しかし、画像処理装置1では、例えば、第1動作モードのステップ1における発光パターンL1と、第1動作モードのステップ3における発光パターンL2とによって、抜け落ちた情報を補うことができる。発光パターンL1と発光パターンL2とは、相補対をなすからである。
【0105】
同様に、第1動作モードのステップ2における発光パターンR1と、ステップ4における発光パターンR2は、相補対をなす。そのため、発光パターンR1の下で撮像した画像データで抜け落ちた情報は、発光パターンR2の下で撮像した画像データで補うことができる。
【0106】
このように、画像処理装置1では、必要な情報の抜け落ちを抑制することが可能になる。
【0107】
《その他の実施形態》
光源110に投影させるパターン(発光パターンL1,L2など)には、輝度分布(明部と暗部の分布)に偏りを設けてもよい。また、相補対をなす2つのパターンは、明暗が互いに同一の箇所(領域)が含まれていてもよい。例えば、光源に対する法規制によっては、所定の領域に高い輝度の配光が求められる場合がある。このような光源のアプリケーションでは、高い輝度が求められる領域に、相補対をなす両方の発光パターンにおいて明部となる部分を含めることが考えられる。
【0108】
相補対をなすパターン(例えば発光パターンL1,L2)の発光順は、交互でなくてもよい。例えば、人がフリッカーを感じない期間内に、投光範囲の概ね全体において明部が生じるように、光源110に発光させればよい。
【0109】
明暗パターンの実現法は、例示の方法(発光するLEDの切替え)には限定されない。例えば、プロジェクター様式など、複数種類のパターン光を切り替えつつ発光可能な光源、または時間的に照射パターンが変化する光源であれば、方式は任意である。
【0110】
画像処理装置1で採用した発光パターンの数は例示である。更に多種の発光パターンで光源に発光させてもよい。
【0111】
明暗パターンとして投光する元画像の輪郭は、正方形には限定されない。例えば、光源上部で照射するパターンの元画像を光源下部で照射するパターンの元画像より狭くすることが考えられる。換言すると、パターン照射のための元画像として台形状の元画像を使用してもよい。
【0112】
台形状の元画像を用いると、投影先(例えば路面)において、正方形に近い範囲に投影させることができる。このように、元画像を適切に設定すれば、光源上部で照射するパターン、つまり、より遠方の投光範囲でも、使用したカメラ中のセンサの1ピクセルが視認する範囲に整合したパターン照射が可能となる。その結果、画像処理装置1では、より遠方の投光範囲における撮像対象の検知能力向上が見込まれる。
【0113】
発光パターンL1、発光パターンR1は、同一でもよい。
【0114】
光源110は、車幅灯には限定されない。光源110は、車両の後退灯、前照灯等でもよい。
【0115】
カメラ21の数および光源110の数は、例示である。例えば、画像処理装置1は、カメラ21が1台の装置として構成してもよい。画像処理装置1は、カメラ21が1台の場合には、第2動作モードにおける投影、撮像のみを実施すればよい。
【0116】
画像処理装置1の応用は、移動体には限定されない。例えば、画像処理装置1は、建物に配置してもよい。
【0117】
これらの他の実施形態においても、本実施形態の作用効果を発揮できる。また、本実施形態と他の実施形態や、他の実施形態同士は適宜組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したように、本開示は、画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 画像処理装置
21 カメラ(撮像装置)
30 処理部
40 制御部
50 検知部
100 車両(移動体)
110 光源
Z 距離