(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147484
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】水硬性組成物の仕上げ時期推定方法、水硬性組成物の仕上げ時期推定システム、RFIDタグ搭載スペーサ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20231005BHJP
G01N 22/04 20060101ALI20231005BHJP
G01V 15/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N22/04 Z
G01V15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054997
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井坂 幸俊
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC03
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】非破壊で、かつ、ブリーディング水の影響をも考慮した仕上げ時期の推定が可能な水硬性組成物の仕上げ時期の推定方法及びシステムを提供する。
【解決手段】受信した電波信号の強度に応じた電力をLEDに対して供給するRFIDタグと、RFIDタグから供給される電力に応じた輝度又は色度の光を発するLEDとを水硬性組成物に埋設する工程(A)と、RFIDタグに対して電波信号を送信可能なリーダ又はリーダライタを水硬性組成物の外側の所定の位置に配置し、リーダ又はリーダライタからRFIDタグに対して電波信号を送信する工程(B)と、LEDの輝度、又はLEDから出射される光の色度に基づいて、水硬性組成物の仕上げ時期を推定する工程(C)とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後の水硬性組成物の仕上げ時期を推定する方法であって、
受信した電波信号の強度に応じた電力をLEDに対して供給するRFIDタグと、前記RFIDタグから供給される電力に応じた輝度又は色度の光を発する前記LEDとを前記水硬性組成物に埋設する工程(A)と、
前記水硬性組成物の外側の位置に配置されたリーダ又はリーダライタから前記RFIDタグに対して電波信号を送信する工程(B)と、
前記LEDから出射される光の輝度又は色度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定する工程(C)とを含むことを特徴とする水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項2】
前記工程(A)は、前記LEDの発光部が前記水硬性組成物の外側に露出するように、前記LED及び前記RFIDタグが配設されることを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項3】
前記工程(C)は、光度計によって測定された前記LEDの輝度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項4】
前記工程(C)は、色度計によって測定された前記LEDから出射される光の色度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項5】
前記LEDの輝度、又は前記LEDから出射される光に色度に基づいて、前記水硬性組成物の劣化状態を判定する工程(D)を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項6】
前記工程(A)は、前記RFIDタグと前記LEDとともに、前記RFIDタグと前記LEDとの間に接続された腐食センサを前記水硬性組成物に埋設する工程であることを特徴とする請求項5に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法。
【請求項7】
打設後の水硬性組成物の仕上げ時期を推定するシステムであって、
供給される電力に応じて出射する光の光学特性が変化するLEDと、
受信した電波信号の強度に応じた電力を前記LEDに対して供給するRFIDタグが搭載されたスペーサと、
前記RFIDタグに対して電波信号を送信可能なリーダ又はリーダライタと、
前記LEDから出射される光の光学特性を測定する測定器と、
前記LEDの前記光学特性と、前記水硬性組成物に含まれる水分量との相関データが格納された第一記憶部と、
前記測定器が出力した値と、前記第一記憶部に格納された相関データに基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定する演算部とを備えることを特徴とする水硬性組成物の仕上げ時期推定システム。
【請求項8】
前記LEDから出射される光の光学特性と、前記水硬性組成物の劣化状態の分類とが関連付けられたデータテーブルが格納された第二記憶部、及び前記測定器が出力した値と、前記第二記憶部に格納されたデータテーブルに基づいて、前記水硬性組成物の劣化状態を判定する判定部を備えることを特徴とする請求項7に記載の水硬性組成物の仕上げ時期推定システム。
【請求項9】
請求項7に記載のスペーサであって、
一端が前記スペーサの内側で前記RFIDタグと接続され、他端が前記スペーサの外側で前記LEDと接続される配線ケーブルを備えることを特徴とするRFIDタグ搭載スペーサ。
【請求項10】
請求項7に記載のスペーサであって、
発光部の少なくとも一部が前記スペーサの外表面から露出するように前記LEDが搭載されていることを特徴とするRFIDタグ搭載スペーサ。
【請求項11】
前記LEDは、前記スペーサの外表面に設けられた穴の中に配設されていることを特徴とする請求項10に記載のRFIDタグ搭載スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物の仕上げ時期を推定する方法及びシステムに関する。また、本発明は、水硬性組成物の仕上げ時期を推定するシステムに適用されるRFID搭載スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルの仕上げ時期を把握することは、コンクリート構造物の耐久性や品質確保の観点から、高い重要性を有している。
【0003】
例えば、床コンクリートの施工段階では、フレッシュコンクリートを打設した後、凝結が進行して一定程度の強度が発現した後に、フレッシュコンクリートの表面が均質となるように均す仕上げ作業(以下、単に「仕上げ作業」という。)が行われる。
【0004】
しかし、従来、フレッシュコンクリートに対する硬化が進行して所定の強度に達したか否か、すなわち、表面の仕上げ作業を実施する時期(以下、単に「仕上げ時期」という。)に至ったか否かの判定は、施工者の感覚によるところが大きく、施工者の習熟度によってバラつきが生じるという課題があった。そのため、施工者の習熟度に依存せずに表面仕上げ作業の時期を適切に判断し、コンクリートの強度発現状態を効率的に管理できる技術が求められている。
【0005】
コンクリートの仕上げ作業が可能な時期を推定する方法として、下記特許文献1には、打設されたコンクリート上に物体を自由落下させ、コンクリート表面に形成された凹みの大きさに基づいて、仕上げ作業が可能な時期を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されているような打設コンクリートの仕上げ時期を推定する方法は、簡単な手法ではあるが、打設コンクリートに凹みなどを生じさせてしまう微破壊な手法である。このため、当該方法では多くの場合、打設コンクリートに対して直接適用することが難しく、打設コンクリートと同じ材料のサンプルを準備して行う必要があった。
【0008】
また、当該方法は、コンクリート内部の水分量について定性的に評価することができない。このため、仕上げ作業後に発生する可能性があるブリーディング水の影響を考慮した仕上げ時期の推定が困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、非破壊で、かつ、ブリーディング水の影響をも考慮した仕上げ時期の推定が可能な水硬性組成物の仕上げ時期の推定方法及びシステムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該推定システムに適用可能なRFIDタグ搭載スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水硬性組成物の仕上げ時期推定方法は、
打設後の水硬性組成物の仕上げ時期を推定する方法であって、
受信した電波信号の強度に応じた電力をLEDに対して供給するRFIDタグと、前記RFIDタグから供給される電力に応じた輝度又は色度の光を発する前記LEDとを前記水硬性組成物に埋設する工程(A)と、
前記水硬性組成物の外側の所定の位置に配置された前記リーダ又はリーダライタから前記RFIDタグに対して電波信号を送信する工程(B)と、
前記LEDから出射される光の輝度又は色度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定する工程(C)とを含むことを特徴とする。
【0011】
本明細書において、「水硬性組成物」とは、少なくともセメント組成物と水を含む硬化性組成物であって、硬化前の形態及び硬化後の形態を包含する。本明細書において、「セメント組成物」とは、水、骨材及び減水剤を含まない、セメント含有粉末又はそれに由来する物(水を含む混練物中の上記粉末の由来物、又はその硬化物)を指す。水硬性組成物の例としては、コンクリート及びモルタルが挙げられる。
【0012】
本明細書において、「リーダ」とは、RFIDタグに電波を送信する機能と、RFIDタグから送信される電波信号を読み取る機能を備え、RFIDタグに対して情報の書き込み機能を備えない機器を指す。そして、「リーダライタ」とは、RFIDタグに電波を送信する機能と、RFIDタグから送信される電波信号を読み取る機能とともに、RFIDタグに対して情報の書き込み機能を備える機器を指す。以下では、煩雑さを避けるために、リーダ又はリーダライタという記載を、「リーダライタ等」と略記することがある。
【0013】
本明細書において、「電力を供給する」とは、「電圧を印加する」ことと、「電流を供給する」こととを含む概念である。「電圧を印加する」と「電流を供給する」は、具体的に駆動対象となる素子(例えば、LED)に応じて、適宜区別して用いられるが、説明の便宜上、いずれの場合をも含むことを意図して「電力を供給する」と記載することがある。
【0014】
本明細書において、「色度」とは、色相と彩度とに基づいて特定される、光の色に関するパラメータである。つまり、本明細書において、「光の色度に基づいて」とは、「光の色に基づいて」という意味とほぼ同義であり、例えば、作業者が点灯しているLEDを目視確認することで仕上げ時期を推定するような場合は、作業者がLEDから出射される色の違いを認識して仕上げ時期を推定することを指す。
【0015】
水硬性組成物の仕上げ時期に至ったか否かは、上述したように、水硬性組成物の硬化が進行して所定の強度に達したか否かで判断される。そして、水硬性組成物の強度と、水硬性組成物に含まれる水分量との間には、相関関係が存在する。つまり、水硬性組成物の仕上げ時期は、水硬性組成物に含まれる水分量を把握することで推定することができる。
【0016】
水は導電性であるため、電波を吸収する性質を示す。このため、水硬性組成物に埋設されたRFIDタグと水硬性組成物の表面との間に水分が存在すると、リーダライタ等とRFIDタグとの間における通信が妨害される。この妨害の程度は、水分量が多いほど、高くなる。言い換えれば、水硬性組成物に含まれる水分量、より厳密にいえば、RFIDタグとリーダライタとの間に存在する水硬性組成物に含まれる水分量が多いほど、リーダライタ等で受信できる電波信号の強度は小さくなる傾向を示す。
【0017】
そして、RFIDタグは、リーダライタ等から受信した電波信号の強度に応じた電力を供給する。つまり、LEDは、水硬性組成物に含まれる水分量に応じて、出射光の輝度が変化する。また、LEDの種類によっては、水硬性組成物に含まれる水分量に応じて、出射光の色度が変化する。したがって、一定の強度の電波信号をRFIDタグに対して送信した時の、LEDから出射される光の輝度又は色度を確認すれば、水硬性組成物に含まれる水分量を把握することができ、仕上げ時期を推定することができる。
【0018】
つまり、上記方法によれば、リーダライタ等からRFIDタグに対して電波を送信した際の、LEDから出射される光の輝度又は色度に基づいて、水硬性組成物に含まれる水分量を推定することができる。特に、RFIDタグを埋設した状態で水硬性組成物を打設すれば、リーダライタ等を水硬性組成物の打設面に近づけて電波信号を受信することのみで水硬性組成物に含まれる水分量を推定できるため、非破壊で水硬性組成物の仕上げ時期を推定することができる。
【0019】
そして、本発明の推定方法は、水硬性組成物に含まれる水分の影響による電波強度の変化に基づく推定方法であるため、水硬性組成物内におけるブリーディング水の影響をも考慮した仕上げ時期の推定が可能となる。
【0020】
なお、一般的に人の視覚は、輝度の変化よりも、色度(色)の変化を区別しやすい。このため、作業者がLEDから出射される光を視認して、水硬性組成物の仕上げ時期を推定する場合は、供給される電力に応じて出射される光の色度が変化するLEDを採用することが好ましい。
【0021】
上記推定方法において、
前記工程(A)は、前記LEDの発光部が前記水硬性組成物の外側に露出するように、前記LED及び前記RFIDタグが配設される工程であっても構わない。
【0022】
上記推定方法において、
前記工程(C)は、光度計によって測定された前記LEDの輝度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定する工程であっても構わない。
【0023】
また、上記推定方法において、
前記工程(C)は、色度計によって測定された前記LEDから出射される光の色度に基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を推定する工程であっても構わない。
【0024】
本明細書において、「露出する」とは、部材の一部が当該部材を覆っている物体から飛び出している状態のみならず、外側から視認可能となるように構成されている状態を意図して用いられる概念である。例えば、水硬性組成物の打設面やスペーサの外表面に穴が設けられて、その中にLEDが配設された構成、又は水硬性組成物やスペーサにLEDが埋設された構成において、LEDの発光部の少なくとも一部が水硬性組成物やスペーサの外側から視認可能となっている状態が含まれる。
【0025】
上記方法とすることで、人の目視確認では区別できない程のLEDの輝度や色度の僅かな変化を把握することができる。また、作業者による推定結果のバラつきが抑制される。つまり、精度よく、かつ、安定的に水硬性組成物の仕上げ時期を推定することができる。
【0026】
上記推定方法は、
前記LEDの輝度、又は前記LEDから出射される光に色度に基づいて、前記水硬性組成物の劣化状態を判定する工程(D)を含んでいても構わない。
【0027】
例えば、コンクリート構造体の供用段階では、硬化コンクリートは水分によって劣化が促進される。水の浸透は、塩化物イオン等の劣化因子を運ぶ役割を果たし、二酸化炭素による中性化後は水が浸入することによる鉄筋腐食が生じやすくなる。
【0028】
水硬性組成物内における金属製の部材の腐食は、水硬性組成物に埋設されたRFIDタグとLEDとを電気的に接続する配線においても生じ得る。このため、水硬性組成物内では、鉄筋腐食等のような劣化の進行とともに、LEDとRFIDタグとを接続する配線等の腐食が進行すると考えられる。このような腐食が進行すると、RFIDタグとLEDとを接続する配線は、徐々に電気抵抗値が高くなる、又は断線して通電しなくなる。この結果、配線が腐食していない状態と比較して、RFIDタグからLEDに対して供給される電力が低下し、LEDの輝度の低下、又はLEDから出射される光の色度が変化する、又はリーダライタ等から電波信号を送信してもLEDに電力が供給されず点灯しなくなる。
【0029】
したがって、上記方法とすることで、水硬性組成物の劣化状態を把握することができる。
【0030】
上記推定方法において、
前記工程(A)は、前記RFIDタグと前記LEDとともに、前記RFIDタグと前記LEDとの間に接続された腐食センサを前記水硬性組成物に埋設する工程であっても構わない。
【0031】
ここで、腐食センサとは、金属製の物体を劣化させる劣化因子を検知すると電気抵抗値が変化するセンサである。このような腐食センサとしては、例えば、銅や鉄等の金属材料からなる細い線材や箔材と、これらの線材や箔材の抵抗値を計測するセンサとを含んで構成される。
【0032】
本発明の水硬性組成物の仕上げ時期推定システムは、
打設後の水硬性組成物の仕上げ時期を推定するシステムであって、
供給される電力に応じて出射する光の光学特性が変化するLEDと、受信した電波信号の強度に応じた電力を前記LEDに対して供給するRFIDタグとが搭載されたスペーサと、
前記RFIDタグに対して電波信号を送信可能なリーダ又はリーダライタと、
前記LEDから出射される光の光学特性を測定する測定器と、
前記LEDの前記光学特性と、前記水硬性組成物に含まれる水分量との相関データが格納された第一記憶部と、
前記測定器が出力した値と、前記第一記憶部に格納された相関データに基づいて、前記水硬性組成物の仕上げ時期を演算処理によって推定する演算部とを備えることを特徴とする。
【0033】
上記推定システムは、
前記LEDから出射される光の光学特性と、前記水硬性組成物の劣化状態の分類とが関連付けられたデータテーブルが格納された第二記憶部、及び前記測定器が出力した値と、前記第二記憶部に格納されたデータテーブルに基づいて、前記水硬性組成物の劣化状態を判定する判定部を備えていても構わない。
【0034】
本明細書において、「光学特性」とは、輝度や色度、スペクトルにおける強度ピークといった、LEDから出射される光を分類するために用いられる特性(パラメータ)を指す意味で用いられる。
【0035】
また、本明細書において、「水硬性組成物の劣化状態」とは、ASR(アルカリシリカ反応)や硫酸塩劣化等による水硬性組成物自体の劣化の進行具合いや、水硬性組成物内における鉄筋の損傷、欠損、酸化の進行具合いをいう。劣化状態は、その進行具合い等に関して、予め定められた基準により「良好」、「不良」といったカテゴリーに分類される。
【0036】
上記推定システムにおいて、
前記スペーサは、前記LEDが内部に配置され、当該LEDの発光部が、前記水硬性組成物の打設面側に露出するように配置されていても構わない。
【0037】
また、本発明のRFIDタグ搭載スペーサは、
上記推定システムに適用されるスペーサであって、
一端が前記スペーサの内側で前記RFIDタグと接続され、他端が前記スペーサの外側で前記LEDと接続される配線ケーブルを備えることを特徴とする。
【0038】
また、本発明のRFIDタグ搭載スペーサは、
上記推定システムに適用されるスペーサであって、
発光部の少なくとも一部が前記スペーサの外表面から露出するように前記LEDが搭載されていても構わない。
【0039】
さらに、上記スペーサにおいて、
前記LEDは、前記スペーサの外表面に設けられた穴の中に配設されて、前記発光部の一部が前記スペーサの外表面から露出していても構わない。
【0040】
かかるスペーサによれば、フレッシュな状態の水硬性組成物にスペーサを埋設することのみで、容易に、水硬性組成物に埋設されるRFIDタグの深さ位置を所定値に設定することができる。これにより、推定処理の実行時にリーダライタ等の位置が変動した場合であっても、当該RFIDタグから反射された電波信号をリーダライタ等で受信することによって精度よく水硬性組成物の仕上げ時期を推定することが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、非破壊で、かつ、ブリーディング水の影響をも考慮した仕上げ時期の推定が可能な水硬性組成物の仕上げ時期の推定方法及びシステムが実現される。さらに、当該推定システムに適用可能なRFIDタグ内蔵スペーサが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】判定システムの一実施態様を模式的に示す図面である。
【
図2】鉄筋にスペーサが固定されている状態を模式的に示す図面である。
【
図3】
図1の作業者の手元周辺を拡大した図面である。
【
図4】水硬性組成物の仕上げ時期を推定している途中の状態を模式的に示す図面である。
【
図5】一実施形態におけるリーダの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図6】水硬性組成物の仕上げ時期の推定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】ネットワークシステムとして構成された推定システムを模式的に示す図面である。
【
図8A】打設後の水硬性組成物中の水分の分布状態を模式的に示す図面である。
【
図8B】打設後の水硬性組成物中の水分の分布状態を模式的に示す図面である。
【
図8C】打設後の水硬性組成物中の水分の分布状態を模式的に示す図面である。
【
図9】スペーサの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図10】別実施態様のスペーサを鉄筋に配設した状態を模式的に示す図面である。
【
図11A】水硬性組成物の仕上げ時期を推定している状態を示す図面である。
【
図11B】
図11Aに示す打設された水硬性組成物を、打設面と平行な方向から見たときの図面である。
【
図12】別実施形態におけるリーダの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の水硬性組成物の仕上げ時期の推定方法及びシステム、当該システムに適用可能なスペーサについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の個数は、実際の個数と必ずしも一致していない。
【0044】
[実施態様]
最初に、推定システム1の実施態様の一例について説明する。
図1は、推定システム1の一実施態様を模式的に示す図面であり、
図2は、水硬性組成物L1が打設される前の、鉄筋3にスペーサ10が固定されている状態を模式的に示す図面である。
図3は、
図1の作業者2の手元周辺を拡大した図面である。
図1は、水硬性組成物L1がアジテータ車一台から打設される範囲が一点鎖線によって区画されており、以下では、一つの区画A1について説明する。
【0045】
例えば、アジテータ車の4m3車の場合であれば、凡そ4m×4m×0.25mで水硬性組成物L1が打設され、隅角部、中心部に後述するスペーサ10が一個程度埋め込まれることが好ましい。
【0046】
図1に示すように、アジテータ車一台から打設された区画A1内においては、水硬性組成物L1の強度発現時期を確認する間隔や、リーダ11との通信における干渉等を考慮して、スペーサ10同士の離間距離が1m~6mの範囲内であることが好ましく、2m~5mの範囲内であることがより好ましい。
【0047】
また、本実施態様においては、スペーサ10が、水硬性組成物L1の打設面Lpからの深さが25mmの位置に埋設されているが、スペーサ10とリーダ11との通信距離や、後述されるスペーサ10が備えるLED10aが視認できるように埋設することを考慮して、深さが10mm~50mmの位置に埋設されることが好ましく、深さが20mm~40mmの位置に埋設されることがより好ましい。なお、RFIDタグ10b及びスペーサ10の埋設位置は上記位置には限定されず、少なくともRFIDタグ10bがリーダ11等と通信可能な距離であれば、配置される位置の深さは任意に設定することができる。
【0048】
なお、一般的にアジテータ車一台から打設された区画A1内であれば、ほぼ同時期に仕上げ処理や脱型が行えることが多いため、当該範囲内にスペーサ10が一個だけ埋設されるような態様であっても構わない。
【0049】
なお、スペーサ10は、水硬性組成物L1に埋め込まれており、実際には視認できないため、
図1及び
図3においては破線で図示されている。そして、打設された水硬性組成物L1には、外側からスペーサ10に搭載されたLED10aが視認できるように、LED10aが水硬性組成物L1の打設面Lpの外側に露出するように。
【0050】
作業者2は、水硬性組成物L1の、各スペーサ10が埋設された位置の打設面Lp近傍でリーダ11を操作し、各位置における水硬性組成物L1の仕上げ時期を順次推定していく。
【0051】
[システム構成]
次に、システム構成の詳細について説明する。
図1及び
図3に示すように、推定システム1は、水硬性組成物L1に埋設されたスペーサ10と、リーダ11とで構成される。スペーサ10は、
図2に示すように、組み上げられた鉄筋3の所定の位置に固定される。その後、スペーサ10は、鉄筋3とともに、水硬性組成物L1に埋設される。
【0052】
図4は、水硬性組成物L1の仕上げ時期を推定している途中の状態を模式的に示す図面であり、
図5は、本実施形態におけるリーダ11の構成を模式的に示すブロック図である。なお、スペーサ10内の構成は、実際には視認できないが、
図4においては、説明のためにスペーサ10の内部の構成が見えるように図示されている。
【0053】
図4に示すように、スペーサ10は、LED10aと、RFIDタグ10bと、腐食センサ21とを備える。スペーサ10は、水硬性組成物L1が打設される前の状態において取り付けられて、水硬性組成物L1の打設時に鉄筋3のかぶり厚を確保するために用いられ、典型的には、ブロック状のモルタル製の部材である。なお、本実施形態におけるスペーサ10は、例えば、セラミックス製のスペーサであっても構わない。
【0054】
本実施形態のリーダ11は、
図4に示すように、LED10aから出射される光を受光して、LED10aの輝度を測定する、光度計30が別モジュールとして搭載されたスマートフォンとした。LED10aの輝度は、LED10aから出射される光の光学特性の一つであり、光度計30は、LED10aの輝度を測定する測定器である。
【0055】
RFIDタグ10bは、アンテナ10cを備えており、リーダ11から送信される電波信号pwを受信すると、LED10aに供給する電流を生成する。ここで、RFIDタグ10bが生成する電流は、電波信号pwの強度が大きくなるほど電流値が大きくなる。
【0056】
LED10aは、
図4に示すように、スペーサ10の外表面10p上に配置されて、RFIDタグ10bと配線10dによって接続されており、RFIDタグ10bから電流が供給されることで点灯する。LED10aは、光度計30を用いて観測可能であれば赤外光を出射するLEDであっても構わないが、人が光を目視確認する場合は可視光を出射するLEDが採用される。なお、可視光を出射するLEDが採用される場合において、LEDが出射する光の色は任意である。
【0057】
腐食センサ21は、水硬性組成物L1内に存在する劣化因子を検知することで、電気抵抗値が変化する抵抗式センサである。腐食センサ21は、LED10aとRFIDタグ10bに対して、直列に接続されており、水硬性組成物L1内に存在する劣化因子の量が増加すると、抵抗値が増加する。これにより、RFIDタグ10bからLED10aに対して供給される電流の値が小さくなる。このような腐食センサ21としては、例えば銅や鉄等の金属材料からなる細い線材や箔材と、これらの線材や箔材の抵抗値を計測するセンサとを含んで構成される。
【0058】
ここで、劣化因子とは、例えば、上述したように、金属製の部材を腐食させる塩化物イオンが挙げられる。劣化因子は、水分とともに水硬性組成物L1及びスペーサ10内を徐々に浸透する。
【0059】
次に、スペーサ10に対して電波信号pwを送信する構成、及びLED10aの輝度に基づいて、水硬性組成物L1の仕上げ時期を推定するデータ処理について説明する。
【0060】
図5は、リーダ11の構成を模式的に示すブロック図である。
図5に示すように、リーダ11は、操作部11aと、アンテナ11bと、記憶部11cと、演算部11dと、判定部11eと、表示部11fとを備える。そして、本実施形態における記憶部11cには、第一記憶部11c1と第二記憶部11c2が含まれている。
【0061】
図6は、水硬性組成物L1の仕上げ時期の推定方法の一例を示すフローチャートである。上述した推定システム1によって、水硬性組成物L1の仕上げ時期を推定する方法及び劣化状態を判定する方法について、図面を参照しながら説明する。
【0062】
(ステップS1:スペーサ10の取り付け)
図2に示すように、鉄筋3の所定の位置に、スペーサ10が固定される(ステップS1)。なお、本実施形態におけるステップS1では、
図3に示すように、LED10aが水硬性組成物L1の打設面Lpの外側に露出するようにスペーサ10を埋設する。
【0063】
(ステップS2:水硬性組成物L1の打設)
ステップS1の後、水硬性組成物L1が打設され、スペーサ10が、水硬性組成物L1内に埋設される。ステップS1とステップS2とが、工程(A)に対応する。なお、スペーサ10が水硬性組成物L1内に埋設される際に、LED10aの発光部10a1が水硬性組成物L1の外側から視認可能となるように、打設面Lpに穴が設けられてもよく、又はLED10aの発光部10a1が水硬性組成物L1の打設面Lpから突出するように埋設されてもよい(
図11B参照)。
【0064】
(ステップS3:仕上げ時期の推定の開始)
ステップS2の後、仕上げ時期の推定を行うタイミングで、作業者2がリーダ11を準備して仕上げ時期の推定を開始する。
【0065】
(ステップS4:電波信号pwの送信)
図3に示すように、作業者2は、打設された水硬性組成物L1の、打設面Lpの上方の位置にリーダ11を配置し、操作部11aを操作する。作業者2が操作部11aにおいて操作を行うと、リーダ11が、アンテナ11bからRFIDタグ10bに対して電波信号pwを送信する。このステップS4が、工程(B)に対応する。
【0066】
なお、
図4では、操作部11aがリーダ11を構成するブロックの一つとして図示されているが、本実施形態におけるリーダ11の操作部11aは、スマートフォンのタッチパネルやボタンに相当する。
【0067】
(ステップS5:LED10aに対する電流供給)
RFIDタグ10bは、アンテナ10cが、リーダ11のアンテナ11bから送信された電波信号pwを受信すると、受信した電波信号pwの強度に応じた大きさの電流を生成し、LED10aに対して当該電流を供給する(ステップS5)。そして、LED10aは、供給された電流の大きさに応じた輝度で点灯する。
【0068】
(ステップS6:輝度の測定と輝度データの送信)
ステップS5の後、
図4に示すように、LED10aから出射された光を受光するように配置された光度計30が、LED10aの輝度を測定する。そして、光度計30は、取得した輝度のデータを、リーダ11の演算部11dと判定部11eに送信する(ステップS6)。
【0069】
(ステップS7:演算処理に依る水硬性組成物の仕上げ時期の推定)
演算部11dは、記憶部11cに含まれる第一記憶部11c1に格納されている相関データを読出し、当該相関データと、光度計30が測定したLED10aの輝度に基づく演算処理によって、水硬性組成物L1の推定される仕上げ時期を算出する。このステップS7が、工程(C)に対応する。なお、演算部11dは、例えば、CPUやMPUである。
【0070】
記憶部11cは、リーダ11に内蔵されたメモリであるが、リーダ11とは別体の外部機器としてのメモリ(例えば、フラッシュメモリやHDD等)であっても構わない。本実施形態における記憶部11cは、第一記憶部11c1と後述される第二記憶部11c2とを含む構成である。
【0071】
第一記憶部11c1は、予め取得された、LED10aの輝度と、水硬性組成物L1に含まれる水分量との相関データが格納されている。なお、本実施形態における相関データは、水硬性組成物にスペーサ10を埋設して作製されたサンプルによって得られたデータである。
【0072】
(ステップS8:推定したデータを表示部11fへ送信)
ステップS7の後、演算部11dは、推定した水硬性組成物L1の仕上げ時期に関するデータを表示部11fに送信する。
【0073】
表示部11fは、演算部11dが推定した水硬性組成物L1の仕上げ時期を表示する。なお、本実施形態における表示部11fは、スマートフォンのディスプレイであるが、外部機器としてリーダ11とは別に準備されたディスプレイであっても構わない。
【0074】
(ステップS9:演算処理に依る水硬性組成物の劣化状態の判定)
判定部11eは、光度計30からLED10aの輝度のデータが入力されると、第二記憶部11c2に格納されているデータテーブルを読出し、当該データテーブルと、光度計30が測定したLED10aの輝度に基づいて、水硬性組成物L1の劣化状態を判定する。このステップS9が、工程(D)に対応する。なお、判定部11eは、例えば、CPUやMPUであって、演算部11d及び判定部11eは、一つのCPUやMPUによって構成されていても構わない。
【0075】
第二記憶部11c2は、LED10aの輝度と、水硬性組成物L1の劣化状態の分類とが関連付けられたデータテーブルが格納されている。本実施形態におけるデータテーブルは、相関データの取得の際に用いたサンプルと同様にして作製した複数のサンプルを利用し、LED10aの輝度と、当該サンプルを破壊して、水硬性組成物L1や鉄筋3等の損傷や欠損の状態を確認し、「良好」と「不良」とを分類して得られたテーブルである。なお、本実施形態においては、破壊したサンプルにおいて配線10dに変色や変形が確認されなかったものを「良好」、変色や変形が確認されたものを「不良」とした。
【0076】
なお、第一記憶部11c1、第二記憶部11c2は、一つのメモリデバイス内において、メモリアドレスに基づいて区画された複数の格納領域によって区別されていてもよく、第一記憶部11c1を構成するメモリデバイスと、第二記憶部11c2を構成するメモリデバイスとでそれぞれ独立した構成されていても構わない。
【0077】
さらに、本実施形態の推定システム1は、リーダ11と、リーダ11とネットワーク接続されたサーバや生産管理用のPCによって構成されていても構わない。
図7は、ネットワークシステムとして構成された推定システム1を模式的に示す図面である。
図7に示す構成の推定システム1は、サーバ70が記憶部11cに相当し、水硬性組成物L1の生産工場(生コン工場)内における生産管理用のPC71及びディスプレイ72やオフィスビル内における生産管理用のPC73及びディスプレイ74等が演算部11d、判定部11e、表示部11fとして機能する。
【0078】
(ステップS10:仕上げ時期の推定結果と劣化状態の判定結果の表示)
ステップS8及びステップS10が完了した後、表示部11fは、演算部11dと判定部11eから送信されたそれぞれのデータに基づいて、推定される水硬性組成物L1の仕上げ時期と、水硬性組成物L1の劣化状態を表示する。
【0079】
以上の各ステップを実施することで、水硬性組成物L1の仕上げ時期が推定されるとともに、水硬性組成物L1の劣化状態が判定される。なお、上述した推定方法のうち、ステップS9及びステップS10による水硬性組成物L1の劣化状態の判定は、水硬性組成物L1を打設し、仕上げ作業が完了した後、長時間が経過した時点における水硬性組成物L1の劣化状態の判定に適用することができる。
【0080】
ここで、打設後の水硬性組成物L1中における水分Wtの分布状態について説明する。
図8A~
図8Cは、打設後の水硬性組成物L1中の水分Wtの分布状態を模式的に示す図面であり、
図8A、
図8B、
図8Cの順で打設後の時間経過による水分Wtの分布状態の変化を表している。なお、
図8A~
図8Cにおいては、説明のために、水分Wtが模式的に粒子状で図示されている。
【0081】
図8Aに示すように、打設直後の水硬性組成物L1は、全体にわたって水分Wtが分散している。
図8Aに示す状態においては、リーダ11とRFIDタグ10bとの間にも水分Wtが多量に存在するため、リーダ11からRFIDタグ10bに対して送信される電波信号pwが水分Wtによって妨害される。
【0082】
打設後、
図8Aの状態からある程度の時間が経過すると、水硬性組成物L1中に分散していた水分Wtは徐々に減少してくる。しかしながら、水硬性組成物L1に含まれるセメントや骨材等の材料が分離、沈降することによって、
図8Bに示すように、打設面Lp近傍に水分Wt(ブリーディング水)が発生する。この水分Wt(ブリーディング水)によって、リーダ11からRFIDタグ10bに対して電波信号pwが妨害される。なお、
図8Bに示すような、このブリーディング水が多く存在している状態は、水硬性組成物L1において仕上げ作業を行うための十分な強度が発現していない状態と考えられる。
【0083】
図8Bの状態からさらに時間が経過すると、
図8Cに示すように、水硬性組成物L1中の水分Wtはさらに減少する。
図8Cに示すように、水硬性組成物L1中の水分Wtが十分に減少すると、リーダ11からRFIDタグ10bに対して送信される電波信号pwの妨害が緩和される。つまり、LED10aがより高い輝度で点灯するようになる。
【0084】
なお、状態の違いを確認しやすいように、
図8A及び
図8Bの状態ではLED10aが消灯しており、
図8Cの状態ではLED10aが点灯しているように図示されている。しかしながら、実際には、
図8A及び
図8Bの状態では、
図8CのLED10aが低い輝度で点灯している場合もある。
【0085】
上記推定システム1によれば、作業者2の経験や感覚によらず、定量的に水硬性組成物L1の仕上げ時期の推定と劣化状態の判定を行うことができる。
【0086】
また、上記判定システム及び上記判定方法は、作業者2がリーダ11を操作すると、すぐに水硬性組成物L1の推定される仕上げ時期と劣化状態が表示部11fに表示される。このため、作業者2は、任意のタイミングで、打設後の水硬性組成物L1の状態を即座に把握することができる。
【0087】
さらに、上記推定システム1の構成によれば、スペーサ10の回路や外装の劣化や破損が無い限り、仕上げ作業後から長時間が経過した後も、リーダ11から電波信号pwが送信されることで、水硬性組成物L1の劣化状態に確認に用いることができる。したがって、本実施形態の推定システム1は、長年にわたって水硬性組成物L1の維持管理に利用することができる。
【0088】
なお、本実施形態において、スペーサ10は、電磁誘導方式のRFIDタグ10bを備える構成として説明したが、電波方式等の別の方式のRFIDタグ10bが搭載されたスペーサ10を採用しても構わない。
【0089】
図9は、スペーサ10の一実施形態を示す模式的な図面である。スペーサ10は、スペーサ10の外表面10pにLED10aが配置される構成には限定されず、スペーサ10の外表面10pからLED10aの発光部10a1の一部が露出する構成としてもよい。より具体的な構成例として、
図9に示すように、スペーサ10は、外表面10pに穴10qが設けられており、LED10aが当該穴10q内に配置され、発光部10a1の一部が露出するように構成されている。
【0090】
このように、LED10aを配置する場合には、スペーサ10の外表面10pに穴10qを設け、穴10q内に配置されたLED10aの発光部10a1の先端部とスペーサ10の外表面10pとが面一になるように構成することが好ましい。そして、当該穴10qが、型枠に当接するようにスペーサ10を配置して、水硬性組成物L1を打設することが好ましい。このような構成と設置方法を採用することで、LED10aの発光部10a1が水硬性組成物L1の打設面Lpにおいて視認可能となり、かつ、スペーサ10を水硬性組成物L1に埋設した後、当該水硬性組成物のコテ等による均し作業を行う際に、LED10aが均し作業の障害となることがない。
【0091】
なお、水硬性組成物L1の打設面Lpや、スペーサ10の外表面10p上に設けられる穴は、例えば、水硬性組成物L1を打設する際、又はスペーサ10を作成する際に、筒状の部材でLEDを覆うことで形成されてもよく、ある程度の強度が発現した段階で切削によって形成されても構わない。また、水硬性組成物L1の打設面Lpや、スペーサ10の外表面10pに設けられた穴は、LED10aが徐々に水硬性組成物L1に埋没してしまわないように、LED10aが出射する光を透過する樹脂が充填されていても構わない。
【0092】
さらに、本実施形態において、リーダ11は、スマートフォンとして説明したが、例えば、PCや、RFIDタグ10b専用の通信端末等であっても構わない。また、光度計30は、リーダ11と有線又は無線で接続される、単独の装置であっても構わない。
【0093】
さらに、RFIDタグ10bは、リーダ11から送信される電波信号pwの強度に対して複数の閾値が設定されており、各閾値を跨いだところで、LED10aに供給する電力を切り替えるように構成されていても構わない。そして、RFIDタグ10bとのデータ通信には、リーダ11の代わりにRFIDタグ10bに対して、例えば、当該閾値と対応する電流値に関する設定データ信号を送信できるリーダライタが用いられても構わない。
【0094】
さらに、本実施形態の推定システム1において、人の視覚によってLED10aの輝度の変化が十分に見極められる場合は、光度計30、演算部11d、判定部11e等を備えていなくても構わない。当該構成のような場合は、例えば、作業者2がLED10aの明るさを直接見ることで確認して、水硬性組成物L1の仕上げ時期を推定し、劣化状態を判定する。
【0095】
劣化状態を判定する方法が別途準備されているような場合、推定システム1は、水硬性組成物L1の劣化状態を判定する機能を備えていなくても構わない。なお、このような場合、リーダ11は、第二記憶部11c2と、判定部11eとを備えていなくても構わない。
【0096】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0097】
〈1〉
図10は、別実施態様のスペーサ10を鉄筋3に配設した状態を模式的に示す図面である。
図11Aは、
図10に示す構成において、水硬性組成物L1を打設した後、水硬性組成物L1の仕上げ時期を推定している状態を示す図面であり、
図11Bは、
図11Aに示す打設された水硬性組成物L1を、打設面Lpと平行な方向から見たときの図面である。スペーサ10は、LED10aが内部に固定されていなくてもよく、
図10に示すように、LED10aがスペーサ10の外側に配置される構成であって、当該LED10aとRFIDタグ10bとを接続する配線ケーブル3dを備えていても構わない。なお、当該構成が採用される場合は、劣化状態の判定に用いられる腐食センサ21が、スペーサ10の内側と外側のいずれに配置されていても構わない。
【0098】
上記構成によれば、
図10に示すように、LED10aは、スペーサ10の配置位置によらず、水硬性組成物L1内の任意の場所に配設できる。つまり、水硬性組成物L1の強度や、建築物の構造上で邪魔になりにくい場所を選択して、LED10aの発光部10a1を配置することができる。
【0099】
なお、LED10aの発光部10a1は、水硬性組成物L1の打設面Lpに対して、飛び出していてもよく、引っ込んでいてもよく、面一であってもよい。より具体的には、LED10aは、発光部10a1が水硬性組成物L1の打設面Lpから飛び出すように配置されていてもよく、切削によって形成された穴の内部に配置されていても構わない。さらには、LED10aの発光部10a1の一部(例えば、先端部)が、水硬性組成物L1の打設面Lpと面一となるように配置されていても構わない。
【0100】
さらに、上述したような鉄筋3を腐食させるような劣化因子は、LED10aとRFIDタグ10bとを接続する配線ケーブル3dをも腐食させる場合がある。このため、腐食センサ21を設けずとも、配線ケーブル3dの腐食による抵抗値の増加、又は配線ケーブル3dの断線によってLED10aを介して、水硬性組成物L1の劣化状態を判定することができる。
【0101】
そこで、
図10に示すように、配線ケーブル3dを鉄筋3に沿うように、一定の範囲にわたって引き回すことで、スペーサ10を固定した部分のみならず、配線ケーブル3dを引き回した領域において水硬性組成物L1の劣化を確認することができる。つまり、スペーサ10が固定されていない部分において局所的に発生している水硬性組成物L1や鉄筋3における劣化状態を見落とすことが少なくなる。なお、
図10に示す構成において、鉄筋3に巻き付けられている配線ケーブル3dの途中に、一つ又は複数の腐食センサ21が接続されていても構わない。
【0102】
なお、上述した推定システム1の構成においては、RFIDタグ10bがスペーサ10に内設された構成、又はLED10aとRFIDタグ10bとがスペーサ10に内設される構成について述べたが、LED10a及びRFIDタグ10bは、スペーサ10以外の部材に内設、又は搭載されて、水硬性組成物L1内に埋設されてもよい。例えば、LED10aとRFIDタグ10bは、スペーサ機能を有さない樹脂外装で覆って、又は、コンクリートのひずみ等の因子を測定するための測定機器の通信部に併せて搭載し、水硬性組成物L1内に埋設させることも想定される。
【0103】
また、配線ケーブル3dの長さは任意であり、使用用途に応じて要求される長さが異なる場合がある。このため、配線ケーブル3dは、例えば、コイル状に巻回されて伸縮可能に構成されたケーブルであってもよい。また、スペーサ10は、配線ケーブル3dの少なくとも一部を収容するための収容空間が形成されていてもよく、外表面10p上に配線ケーブル3dを巻き付けるための巻付け用の突起やフック等を備えていても構わない。また、スペーサ10は、内側に配設されたRFIDタグ10bに対して配線ケーブル3dを抜き差しするための穴が設けられ、LED10a、RFIDタグ10b及び配線ケーブル3dの組み合わせが適宜変更可能となるように構成されていても構わない。
【0104】
上記のような構成の配線ケーブル3dが採用されることで、LED10aの配置位置に応じて、配線ケーブル3dの長さを容易に調整できる。また、配線ケーブル3dとLED10aとが変更可能な構成では、水硬性組成物Lを打設する場所の環境等に応じて、LED10aの種類や配線ケーブル3dの素材を選択、変更することができる。
【0105】
〈2〉 上述した各実施形態では、RFIDタグ10bが受信した電波信号pwの強度に応じた大きさの電流を生成し、RFIDタグ10bから供給される電流の大きさに応じてLED10aの輝度が変化する構成で説明されている。水硬性組成物L1の仕上げ時期の推定方法及びシステムは、RFIDタグ10bが受信した電波信号pwの強度に応じた大きさの電力がLED10aに供給するように構成され、RFIDタグ10bによって供給される電力の大きさに応じてLED10aが出射する光の色度が変化する構成であっても構わない。
【0106】
図12は、別実施形態におけるリーダ11のブロック図を模式的に示す図面である。上述したように、LED10aがRFIDタグ10bから印加される電圧の大きさに応じて光学特性の一つである色度が変化する素子である場合は、
図12に示すように、測定器として色度計40が利用される。
【0107】
そして、記憶部11cは、
図12に示すように、LED10aから出射される光の色度と、水硬性組成物L1に含まれる水分量との相関データが格納された第三記憶部11c3、及びLED10aから出射される光の色度と、水硬性組成物L1の劣化状態の分類とが関連付けられたデータテーブルが格納された第四記憶部11c4を備える。
【0108】
なお、第三記憶部11c3と第四記憶部11c4の構成は、第一記憶部11c1と第二記憶部11c2に関して上述したように、一つのメモリデバイスで構成されていてもよく、それぞれ独立したメモリデバイスで構成されていても構わない。
【0109】
演算部11dは、第三記憶部11c3に格納されている相関データを読出し、当該相関データと、色度計40が測定したLED10aから出射される光の色度に基づいて、水硬性組成物L1の推定される仕上げ時期を算出する。
【0110】
判定部11eは、第四記憶部11c4に格納されているデータテーブルを読出し、当該データテーブルと、色度計40が測定したLED10aから出射される光の色度に基づいて、水硬性組成物L1の劣化状態を判定する。
【0111】
劣化状態を判定する方法が別途準備されているような場合、推定システム1は、水硬性組成物L1の劣化状態を判定する機能を備えていなくても構わない。なお、このような場合、リーダ11は、第四記憶部11c4と、判定部11eとを備えていなくても構わない。
【0112】
〈3〉 推定システム1は、LED10aとRFIDタグ10bとの間に、応力が加わると抵抗値が変化する金属抵抗材料を用いた歪センサ(歪ゲージ)が接続されていても構わない。推定システム1は、歪センサが搭載されていることで、打設後から長時間が経過した段階の水硬性組成物L1内において発生したひび割れや膨張によって生じる、歪センサにかかる応力の変化を確認することができる。つまり、上記構成によれば、打設後から長時間経過した水硬性組成物L1について、非破壊検査が可能となる。なお、当該歪センサは、スペーサ10内に配設されていても構わない。
【0113】
〈4〉 上述した推定システム1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0114】
1 : 判定システム
2 : 作業者
3 : 鉄筋
3d : 配線ケーブル
10 : スペーサ
10a : LED
10a1 : 発光部
10b : RFIDタグ
10c : アンテナ
10d : 配線
11 : リーダ
11a : 操作部
11b : アンテナ
11c : 記憶部
11c1 : 第一記憶部
11c2 : 第二記憶部
11c3 : 第三記憶部
11c4 : 第四記憶部
11d : 演算部
11e : 判定部
11f : 表示部
21 : 腐食センサ
30 : 光度計
40 : 色度計
A1 : 区画
L1 : 水硬性組成物
Lp : 打設面
Lp1 : 穴
pw : 電波信号