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特開2023-147485モータ駆動装置、モータシステム、および車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147485
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、モータシステム、および車両
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/12 20060101AFI20231005BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
H02P6/12
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055001
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝原 裕貴
【テーマコード(参考)】
5H501
5H560
【Fターム(参考)】
5H501AA05
5H501AA08
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC01
5H501DD04
5H501HA08
5H501HB07
5H501HB16
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL52
5H501MM02
5H501MM06
5H560AA01
5H560AA08
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA02
5H560DC12
5H560DC13
5H560EB01
5H560EC01
5H560JJ02
5H560TT07
5H560UA05
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】モータの駆動中にハーフブリッジを構成するトランジスタのショートあるいはオープンを検知することを可能とするモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置(1)は、第1~第3コイル(LU,LV,LW)を第1~第3ノード(Nu,Nv,Nw)に接続した状態で駆動制御部(11)がスイッチングを制御するモータ駆動状態において、第1~第3上側トランジスタ(Q1,Q3,Q5)のドレイン・ソース間電圧と、第1~第3下側トランジスタ(Q2,Q4,Q6)のドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのそれぞれに接続可能な第1~第3シャント抵抗(Ru,Rv,Rw)の両端間電圧と、のうち少なくともいずれかに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのうち少なくともいずれかに発生したショートとオープンの少なくとも一方を検知するように構成される異常検知部(12)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上側トランジスタと第1下側トランジスタを有し、前記第1上側トランジスタと前記第1下側トランジスタとが接続される第1ノードに、ブラシレスDCモータに含まれる第1コイルを接続可能である第1ハーフブリッジと、
第2上側トランジスタと第2下側トランジスタを有し、前記第2上側トランジスタと前記第2下側トランジスタとが接続される第2ノードに、前記ブラシレスDCモータに含まれる第2コイルを接続可能である第2ハーフブリッジと、
第3上側トランジスタと第3下側トランジスタを有し、前記第3上側トランジスタと前記第3下側トランジスタとが接続される第3ノードに、前記ブラシレスDCモータに含まれる第3コイルを接続可能である第3ハーフブリッジと、
を用いて前記ブラシレスDCモータを駆動するように構成されるモータ駆動装置であって、
前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのスイッチングを制御するように構成される駆動制御部と、
前記第1~第3コイルを前記第1~第3ノードに接続した状態で前記駆動制御部が前記スイッチングを制御するモータ駆動状態において、前記第1~第3上側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのそれぞれに接続可能な第1~第3シャント抵抗の両端間電圧と、のうち少なくともいずれかに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのうち少なくともいずれかに発生したショートとオープンの少なくとも一方を検知するように構成される異常検知部と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記異常検知部は、前記モータ駆動状態において、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタにおけるすべてのトランジスタに発生したショートおよびオープンを検知するように構成される、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記異常検知部は、前記第1~第3ハーフブリッジに流れる貫通電流の発生を検知することで、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成される、請求項1または請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記異常検知部は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第1閾値電圧を上回っていることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記異常検知部は、前記第1~第3シャント抵抗の両端間電圧が正の電圧である第2閾値電圧を上回っていることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記異常検知部は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに電流が流れず、オフ状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのボディダイオードに電流が流れることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記異常検知部は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第3閾値電圧を上回っていることと、オフ状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第4閾値電圧以下であることの少なくとも一方に基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記異常検知部は、前記第1~第3シャント抵抗の両端間電圧が負の電圧である第5閾値電圧以下であることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータ駆動装置と、
前記モータ駆動装置により駆動可能に構成されるブラシレスDCモータと、
を備える、モータシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のモータシステムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器にブラシレスDC(直流)モータが搭載されている。ブラシレスDCモータは、ブラシによる転流機構を有しないため、ロータの位置に応じて、コイルに供給する電流の向きを切り替える必要がある。3相のブラシレスDCモータは、U相、V相、W相のそれぞれに対応するハーフブリッジを有するモータ駆動装置により駆動される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-40404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータ駆動装置においては、ハーフブリッジを構成するトランジスタにショートあるいはオープンが生じる可能性があり、当該ショートあるいはオープンをモータの駆動中に検知する機能が要望されている。
【0005】
本開示は、モータの駆動中にハーフブリッジを構成するトランジスタのショートあるいはオープンを検知することを可能とするモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本開示に係るモータ駆動装置は、第1上側トランジスタと第1下側トランジスタを有し、前記第1上側トランジスタと前記第1下側トランジスタとが接続される第1ノードに、ブラシレスDCモータに含まれる第1コイルを接続可能である第1ハーフブリッジと、
第2上側トランジスタと第2下側トランジスタを有し、前記第2上側トランジスタと前記第2下側トランジスタとが接続される第2ノードに、前記ブラシレスDCモータに含まれる第2コイルを接続可能である第2ハーフブリッジと、
第3上側トランジスタと第3下側トランジスタを有し、前記第3上側トランジスタと前記第3下側トランジスタとが接続される第3ノードに、前記ブラシレスDCモータに含まれる第3コイルを接続可能である第3ハーフブリッジと、
を用いて前記ブラシレスDCモータを駆動するように構成されるモータ駆動装置であって、
前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのスイッチングを制御するように構成される駆動制御部と、
前記第1~第3コイルを前記第1~第3ノードに接続した状態で前記駆動制御部が前記スイッチングを制御するモータ駆動状態において、前記第1~第3上側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのそれぞれに接続可能な第1~第3シャント抵抗の両端間電圧と、のうち少なくともいずれかに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのうち少なくともいずれかに発生したショートとオープンの少なくとも一方を検知するように構成される異常検知部と、
を備える構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るモータ駆動装置によれば、モータの駆動中にハーフブリッジを構成するトランジスタのショートあるいはオープンを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係るモータシステムの構成を示す図である。
図2図2は、トランジスタのスイッチングにより発生する各相の駆動電圧の交流波形の一例を示す図である。
図3図3は、駆動制御部により実施可能なスイッチングパターンを示す表である。
図4A図4Aは、通常動作時にハーフブリッジおよびモータに流れる電流の経路を示す図である。
図4B図4Bは、通常動作時にハーフブリッジおよびモータに流れる電流の経路を示す図である。
図4C図4Cは、通常動作時にハーフブリッジおよびモータに流れる電流の経路を示す図である。
図5図5は、通常動作時における各スイッチングパターンの信号状態を示す表である。
図6A図6Aは、第1上側トランジスタ(U相上側トランジスタ)にショートが発生した場合の電流経路を示す図である。
図6B図6Bは、第1上側トランジスタにショートが発生した場合の電流経路を示す図である。
図6C図6Cは、第1上側トランジスタにショートが発生した場合の電流経路を示す図である。
図7図7は、第1上側トランジスタのショート発生時における各スイッチングパターンの信号状態を示す表である。
図8図8は、第1上側トランジスタ以外のトランジスタにおけるショートを検知可能なスイッチングパターンの一例を示している。
図9A図9Aは、第1上側トランジスタにオープンが発生した場合の電流経路を示す図である。
図9B図9Bは、第1上側トランジスタにオープンが発生した場合の電流経路を示す図である。
図9C図9Cは、第1上側トランジスタにオープンが発生した場合の電流経路を示す図である。
図10図10は、第1上側トランジスタのオープン発生時における各スイッチングパターンの信号状態を示す表である。
図11図11は、第1上側トランジスタ以外のトランジスタにおけるオープンを検知可能なスイッチングパターンの一例を示している。
図12図12は、モータシステムを搭載した車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<1.モータシステムの構成>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係るモータシステム10の構成を示す図である。図1に示すモータシステム10は、モータ駆動装置1と、ブラシレスDCモータ(以下、単にモータ)2と、を備える。モータ駆動装置1は、3相(U相、V相、W相)のモータ2を駆動するように構成される。
【0011】
モータ駆動装置1は、U相の第1ハーフブリッジ1uと、V相の第2ハーフブリッジ1vと、W相の第3ハーフブリッジ1wと、駆動制御部11と、異常検知部12と、第1上側コンパレータCUHと、第2上側コンパレータCVHと、第3上側コンパレータCWHと、第1下側コンパレータCUL、第2下側コンパレータCVLと、第3下側コンパレータCWLと、第1電流コンパレータCURと、第2電流コンパレータCVRと、第3電流コンパレータCWRと、を有し、これらの構成要素を集積化して構成される半導体IC(集積回路)である。
【0012】
ただし、図1に示す構成に限らず、例えば、ハーブブリッジ1u,1v,1wにおける後述する各トランジスタQ1~Q6は、ICの外部に設けてもよい(すなわち、IC外部に外付け)。
【0013】
第1ハーフブリッジ1uは、第1上側トランジスタ(U相上側トランジスタ)Q1と、第1下側トランジスタ(U相下側トランジスタ)Q2と、第1シャント抵抗Ruと、を有する。第1上側トランジスタQ1および第1下側トランジスタQ2は、Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される。第1上側トランジスタQ1のドレインは、電源電圧VCCの印加端に接続される。第1上側トランジスタQ1のソースは、第1下側トランジスタQ2のドレインに接続される。第1下側トランジスタQ2のソースは、第1シャント抵抗Ruの一端に接続される。第1シャント抵抗Ruの他端は、グランド電位の印加端に接続される。
【0014】
第2ハーフブリッジ1vは、第2上側トランジスタ(V相上側トランジスタ)Q3と、第2下側トランジスタ(V相下側トランジスタ)Q4と、第2シャント抵抗Rvと、を有する。第2上側トランジスタQ3および第2下側トランジスタQ4は、Nチャネル型MOSFETにより構成される。第2上側トランジスタQ3のドレインは、電源電圧VCCの印加端に接続される。第2上側トランジスタQ3のソースは、第2下側トランジスタQ4のドレインに接続される。第2下側トランジスタQ4のソースは、第2シャント抵抗Rvの一端に接続される。第2シャント抵抗Rvの他端は、グランド電位の印加端に接続される。
【0015】
第3ハーフブリッジ1wは、第3上側トランジスタ(W相上側トランジスタ)Q5と、第3下側トランジスタ(W相下側トランジスタ)Q6と、第3シャント抵抗Rwと、を有する。第3上側トランジスタQ5および第3下側トランジスタQ6は、Nチャネル型MOSFETにより構成される。第3上側トランジスタQ5のドレインは、電源電圧VCCの印加端に接続される。第3上側トランジスタQ5のソースは、第3下側トランジスタQ6のドレインに接続される。第3下側トランジスタQ6のソースは、第3シャント抵抗Rwの一端に接続される。第3シャント抵抗Rwの他端は、グランド電位の印加端に接続される。
【0016】
シャント抵抗Ru,Rv,Rwは、電流を電圧信号に変換することで電流を検出するように構成される電流検出部である。
【0017】
モータ2は、U相の第1コイルLUと、V相の第2コイルLVと、W相の第3コイルLWと、を含むステータを有する。また、モータ2は、マグネットを含んで上記ステータに対して相対的に回転可能に構成されるロータ(図示せず)を有する。
【0018】
第1上側トランジスタQ1のソースと第1下側トランジスタQ2のドレインとが接続される第1ノードNuは、第1コイルLUの一端に接続される。第2上側トランジスタQ3のソースと第2下側トランジスタQ4のドレインとが接続される第2ノードNvは、第2コイルLVの一端に接続される。第3上側トランジスタQ5のソースと第3下側トランジスタQ6のドレインとが接続される第3ノードNwは、第3コイルLWの一端に接続される。コイルLU,LV,LWの他端同士は、接続される。これにより、モータ2では、いわゆるスター結線がなされている。
【0019】
駆動制御部11は、第1上側ゲート信号GUH,第2上側ゲート信号GVH,第3上側ゲート信号GWHをそれぞれ、第1上側トランジスタQ1,第2上側トランジスタQ3,第3上側トランジスタQ5の各ゲートに印加するように構成される。また、駆動制御部11は、第1下側ゲート信号GUL,第2下側ゲート信号GVL,第3下側ゲート信号GWLをそれぞれ、第1下側トランジスタQ2,第2下側トランジスタQ4,第3下側トランジスタQ6の各ゲートに印加するように構成される。
【0020】
各ゲート信号GUH等により、各トランジスタQ1等は、スイッチング駆動される。具体的には、各ゲート信号GUH等がハイレベルの場合、各トランジスタQ1等はオン状態となり、各ゲート信号GUH等がローレベルの場合、各トランジスタQ1等はオフ状態となる。
【0021】
モータシステム10には、モータ2におけるロータの回転位置を検出するように構成されるホールセンサなどの位置検出部(図示せず)が設けられる。なお、ホールセンサを有さないモータ2を使用してもよい。駆動制御部11は、上記位置検出部により検出されたロータの位置に基づき、各ゲート信号GUH等を生成する。
【0022】
第1ハーフブリッジ1uにおいては、ゲート信号GUH,GULによりトランジスタQ1,Q2がPWM(パルス幅変調)制御によるスイッチングをされることで、第1ノードNuに交流波形(正弦波波形)の駆動電圧Vuが生成される。第2ハーフブリッジ1vにおいては、ゲート信号GVH,GVLによりトランジスタQ3,Q4がPWM制御によるスイッチングをされることで、第2ノードNvに交流波形の駆動電圧Vvが生成される。第3ハーフブリッジ1wにおいては、ゲート信号GWH,GWLによりトランジスタQ5,Q6がPWM制御によるスイッチングをされることで、第3ノードNwに交流波形の駆動電圧Vwが生成される。これにより、モータ2におけるロータを回転駆動することができる。
【0023】
<2.異常検知機能に関する構成>
次に、モータ駆動装置1における異常検知機能に関する構成について説明する。上記異常検知機能は、具体的には、各トランジスタQ1~Q6のショートおよびオープンを検知する機能である。なお、ショートとは、トランジスタQ1~Q6のドレイン・ソース間のショートを意味する。また、オープンとは、トランジスタQ1~Q6における第1ノードNu,Nv,Nw側の断線によるオープンを意味する。具体的には、トランジスタ(FET)Q1~Q6のチップに接続されるボンディングワイヤの断線、または当該チップにおける配線の断線、あるいは、トランジスタQ1~Q6のパッケージに備えられて基板にはんだ付けされる端子の外れなどにより、上記オープンが発生しうる。
【0024】
第1上側コンパレータCUHの一方の入力端には、第1上側トランジスタQ1のドレイン電位Duhが印加され、他方の入力端には、第1上側トランジスタQ1のソース電位Suhを基準とした基準電圧Refuhが印加される。これにより、第1上側コンパレータCUHは、第1上側トランジスタQ1のドレイン・ソース間電圧(以下、Vds)を基準電圧Refuhと比較し、比較結果として第1上側コンパレータ出力CUHoutを出力する。
【0025】
第2上側コンパレータCVHの一方の入力端には、第2上側トランジスタQ3のドレイン電位Dvhが印加され、他方の入力端には、第2上側トランジスタQ3のソース電位Svhを基準とした基準電圧Refvhが印加される。これにより、第2上側コンパレータCVHは、第2上側トランジスタQ3のVdsを基準電圧Refvhと比較し、比較結果として第2上側コンパレータ出力CVHoutを出力する。
【0026】
第3上側コンパレータCWHの一方の入力端には、第3上側トランジスタQ5のドレイン電位Dwhが印加され、他方の入力端には、第3上側トランジスタQ5のソース電位Swhを基準とした基準電圧Refwhが印加される。これにより、第3上側コンパレータCWHは、第3上側トランジスタQ5のVdsを基準電圧Refwhと比較し、比較結果として第3上側コンパレータ出力CWHoutを出力する。
【0027】
基準電圧Refuh,Refvh,Refwhは、それぞれ所定の正の電圧(閾値電圧)であり、例えばRefuh=Refvh=Refwhである。
【0028】
第1下側コンパレータCULの一方の入力端には、第1下側トランジスタQ2のドレイン電位Dulが印加され、他方の入力端には、第1下側トランジスタQ2のソース電位Sulを基準とした基準電圧Refulが印加される。これにより、第1下側コンパレータCULは、第1下側トランジスタQ2のVdsを基準電圧Refulと比較し、比較結果として第1下側コンパレータ出力CULoutを出力する。
【0029】
第2下側コンパレータCVLの一方の入力端には、第2下側トランジスタQ4のドレイン電位Dvlが印加され、他方の入力端には、第2下側トランジスタQ4のソース電位Svlを基準とした基準電圧Refvlが印加される。これにより、第2下側コンパレータCVLは、第2下側トランジスタQ4のVdsを基準電圧Refvlと比較し、比較結果として第2下側コンパレータ出力CVLoutを出力する。
【0030】
第3下側コンパレータCWLの一方の入力端には、第3下側トランジスタQ6のドレイン電位Dwlが印加され、他方の入力端には、第3下側トランジスタQ6のソース電位Swlを基準とした基準電圧Refwlが印加される。これにより、第3下側コンパレータCWLは、第3下側トランジスタQ6のVdsを基準電圧Refwlと比較し、比較結果として第3下側コンパレータ出力CWLoutを出力する。
【0031】
基準電圧Reful,Refvl,Refwlは、それぞれ所定の正の電圧(閾値電圧)であり、例えばReful=Refvl=Refwlである。
【0032】
第1電流コンパレータCURの一方の入力端には、第1シャント抵抗Ruの上側電位INAPUが印加され、他方の入力端には、第1シャント抵抗Ruの下側電位INANUを基準とした基準電圧Refurlが印加される。これにより、第1電流コンパレータCURは、第1シャント抵抗Ruの両端間電圧を基準電圧Refurlと比較し、比較結果として第1電流コンパレータ出力CURoutを出力する。
【0033】
第2電流コンパレータCVRの一方の入力端には、第2シャント抵抗Rvの上側電位INAPVが印加され、他方の入力端には、第2シャント抵抗Rvの下側電位INANVを基準とした基準電圧Refvrlが印加される。これにより、第2電流コンパレータCVRは、第2シャント抵抗Rvの両端間電圧を基準電圧Refvrlと比較し、比較結果として第2電流コンパレータ出力CVRoutを出力する。
【0034】
第3電流コンパレータCWRの一方の入力端には、第3シャント抵抗Rwの上側電位INAPWが印加され、他方の入力端には、第3シャント抵抗Rwの下側電位INANWを基準とした基準電圧Refwrlが印加される。これにより、第3電流コンパレータCWRは、第3シャント抵抗Rwの両端間電圧を基準電圧Refwrlと比較し、比較結果として第3電流コンパレータ出力CWRoutを出力する。
【0035】
基準電圧Refur,Refvr,Refwrは、所定の正の電圧(閾値電圧)であり、例えばRefur=Refvr=Refwrである。また、基準電圧Refur,Refvr,Refwrは、通常動作時にシャント抵抗に電流が流れる場合と、シャント抵抗に貫通電流による過電流が流れる場合とを区別できるように設定される。
【0036】
異常検知部12は、第1上側コンパレータ出力CUHout、第1下側コンパレータ出力CULout、および第1電流コンパレータ出力CURoutに基づき、第1上側トランジスタQ1および第1下側トランジスタQ2の各ショートを検知する。
【0037】
異常検知部12は、第2上側コンパレータ出力CVHout、第2下側コンパレータ出力CVLout、および第2電流コンパレータ出力CVRoutに基づき、第2上側トランジスタQ3および第2下側トランジスタQ4の各ショートを検知する。
【0038】
異常検知部12は、第3上側コンパレータ出力CWHout、第3下側コンパレータ出力CWLout、および第3電流コンパレータ出力CWRoutに基づき、第3上側トランジスタQ5および第3下側トランジスタQ6の各ショートを検知する。
【0039】
異常検知部12は、第1上側コンパレータ出力CUHoutおよび第1下側コンパレータ出力CULoutに基づき、第1上側トランジスタQ1および第1下側トランジスタQ2の各オープンを検知する。
【0040】
異常検知部12は、第2上側コンパレータ出力CVHoutおよび第2下側コンパレータ出力CVLoutに基づき、第2上側トランジスタQ3および第2下側トランジスタQ4の各オープンを検知する。
【0041】
異常検知部12は、第3上側コンパレータ出力CWHoutおよび第3下側コンパレータ出力CWLoutに基づき、第3上側トランジスタQ5および第3下側トランジスタQ6の各オープンを検知する。
【0042】
なお、上記のようなショート検知およびオープン検知の詳細については、後述する。また、後述するように、異常検知部12は、どのトランジスタでショートまたはオープンが発生したかを特定することが可能となっている。
【0043】
駆動制御部11は、異常検知部12によるショート検知およびオープン検知に基づき保護動作を実施する。
【0044】
<3.スイッチングパターン>
【0045】
図2は、トランジスタQ1~Q6のスイッチングにより発生する各相の駆動電圧Vu,Vv,Vwの交流波形の一例を示す図である。図2に示すように、駆動電圧Vu,Vv,Vwは、位相がずらされる。
【0046】
また、図2には、交流波形の所定の期間Tにおける各トランジスタQ1~Q6のスイッチングパターンを示している。図2において図示される「UH,UL,VH,VL,WH,WL」は、トランジスタQ1~Q6のそれぞれのオンオフ状態を示しており、ハイレベルでオン状態、ローレベルでオフ状態に相当する。
【0047】
図2に示すように、各相における上側トランジスタQ1,Q3,Q5と下側トランジスタQ2,Q4,Q6は、相補的にスイッチングされる。ただし、上側トランジスタと下側トランジスタが同時にオフ状態とされる期間(デッドタイム)が設けられる。
【0048】
図2に示す期間Tにおいては、Vw<Vv<Vuであるため、各相のオンデューティ(上側トランジスタがオン状態となる期間の1周期に対する比率)は、DutyW<DutyV<DutyUとなる。
【0049】
ここで、図3は、駆動制御部11により実施可能なスイッチングパターンを示す表である。図3では、スイッチングパターンNo.(番号)ごとに各相のスイッチング状態の組み合わせを示す。図3において「H」は、上側トランジスタがオン状態、かつ下側トランジスタがオフ状態であることを示し、「L」は、上側トランジスタがオフ状態、かつ下側トランジスタがオン状態であることを示す。
【0050】
図2の期間Tにおいて実施されるスイッチングパターンは、図2に示すようにスイッチングパターンNo.3,4,7,8である。そして、スイッチングパターンは、No.4→No.3→No.8→No.3→No.4→No.7→No.4の順に実施される。なお、交流波形における期間Tと異なる期間では、図2に示すものとは別のスイッチングパターンNo.の組み合わせでスイッチングが行われる場合がある。
【0051】
<4.通常動作>
次に、図2に示すスイッチングパターンの遷移パターンが実施される場合に、ハーフブリッジ1u,1v,1wおよびモータ2に流れる電流について、図4A図4Cを用いて説明する。図4A図4Cには、流れる電流を太線の矢印で示している。
【0052】
なお、図4A図4Cにおいて上側トランジスタQ1,Q3,Q5に付記される「小」または「大」は、上側トランジスタQ1,Q3,Q5のVdsと基準電圧Refuh,Refvh,Refwhとの比較結果(上側コンパレータCUH,CVH,CWHの出力)を示す。「大」は、Vdsが基準電圧を上回った場合を示し、「小」は、Vdsが基準電圧以下である場合を示す。
【0053】
また、図4A図4Cにおいて下側トランジスタQ2,Q4,Q6に付記される「小」または「大」は、下側トランジスタQ2,Q4,Q6のVdsと基準電圧Reful,Refvl,Refwlとの比較結果(下側コンパレータCUL,CVL,CWLの出力)を示す。「大」は、Vdsが基準電圧を上回った場合を示し、「小」は、Vdsが基準電圧以下である場合を示す。
【0054】
また、図4A図4Cにおいてシャント抵抗Ru,Rv,Rwに付記される「小」または「大」は、シャント抵抗R1,R2,R3の両端間電圧と基準電圧Refurl,Refvrl,Refwrlとの比較結果(電流コンパレータCUR,CVR,CWRの出力)を示す。「大」は、両端間電圧が基準電圧を上回った場合を示し、「小」は、両端間電圧が基準電圧以下である場合を示す。
【0055】
まず、スイッチングパターンNo.4(図4A)の状態では、トランジスタQ1,Q4,Q6がオン状態、Q2,Q3,Q5がオフ状態である。Q4およびQ6のドレイン電位は、0V付近となる。Q2のドレイン電位が電源電圧VCC付近となり、コイルLUにはおおよそVCCが印加される。コイルLUに励磁電流が流れることにより、LUにエネルギーが蓄積される。
【0056】
次に、スイッチングパターンNo.4からNo.3への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ1,Q6がオン状態、Q2,Q3,Q4,Q5がオフ状態である。Q4がオフ状態となったことにより、コイルLUの励磁電流により励磁されていたコイルLVの作用で、Q3のボディダイオードに還流電流が流れる。この還流電流と、コイルLWの励磁電流により、コイルLUに励磁電流と還流電流が流れる。Q6のドレイン電位は、引き続き0V付近である。
【0057】
次に、スイッチングパターンNo.3の状態では、トランジスタQ1,Q3,Q6がオン状態、Q2,Q4,Q5がオフ状態である。Q3がオン状態となることで、Q3のボディダイオードに流れていた還流電流は、Q3のチャネルに流れ、同期整流動作となる。引き続き、コイルLUに励磁電流が流れる。Q6のドレイン電位は、引き続き0V付近である。
【0058】
次に、スイッチングパターンNo.3からNo.8への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ1,Q3がオン状態、Q2,Q4,Q5,Q6がオフ状態である。Q6がオフ状態となったことにより、コイルLUの励磁電流により励磁されていたコイルLWの作用で、Q5のボディダイオードに還流電流が流れる。これにより、コイルLV,LWが還流状態となり、この還流電流の合成電流によってコイルLUに流れる電流は保持される。
【0059】
次に、スイッチングパターンNo.8の状態(図4B)では、トランジスタQ1,Q3,Q5がオン状態、Q2,Q4,Q6がオフ状態である。Q5がオン状態となることで、Q5のボディダイオードに流れていた還流電流は、Q5のチャネルに流れ、同期整流動作となる。このとき、引き続きコイルLV,LWが還流状態となり、コイルLUに流れる電流は保持される。
【0060】
次に、スイッチングパターンNo.8からNo.3への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ1,Q3がオン状態、Q2,Q4,Q5,Q6がオフ状態である。Q5がオフ状態となることで、還流電流が再びQ5のボディダイオードに流れ、先述のNo.3からNo.8への遷移状態と同様の電流経路で還流電流が流れる。
【0061】
次に、スイッチングパターンNo.3の状態では、トランジスタQ1,Q3,Q6がオン状態、Q2,Q4,Q5がオフ状態である。再びQ6がオン状態となることで、Q6のドレイン電位は0V付近に低下する。Q6のドレイン電位が低下することで、再びコイルLUの両端間におよそ電源電圧VCCが印加される。先述したNo.3と同様の電流経路となり、コイルLUに励磁電流および還流電流が流れる。
【0062】
次に、スイッチングパターンNo.3からNo.4への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ1,Q6がオン状態、Q2,Q3,Q4,Q5がオフ状態である。再びQ3がオフ状態となることで、還流電流がQ3のボディダイオードに流れる。先述したNo.4からNo.3への遷移状態と同様の電流経路となり、引き続きコイルLUに励磁電流および還流電流が流れる。
【0063】
次に、スイッチングパターンNo.4の状態(図4C)では、トランジスタQ1,Q4,Q6がオン状態、Q2,Q3,Q5がオフ状態である。再びQ4がオン状態となることで、Q4のドレイン電位が0V付近に低下する。先述したNo.4と同様の電流経路となり、還流電流が流れなくなる。コイルLU,LV,LWは励磁状態となり、再び大きな励磁電流がコイルLUに流れ、LUにエネルギーが蓄積される。
【0064】
次に、スイッチングパターンNo.4からNo.7への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ4,Q6がオン状態、Q1,Q2,Q3,Q5がオフ状態である。Q1がオフ状態となることにより、コイルLUに流れていた励磁電流が流れなくなる。このとき、コイルLUはエネルギーを保持しているため、Q2のボディダイオードを介して還流電流が流れる。
【0065】
次に、スイッチングパターンNo.7の状態では、トランジスタQ2,Q4,Q6がオン状態、Q1,Q3,Q5がオフ状態である。Q2がオン状態となることで、Q2のボディダイオードに流れていた還流電流がQ2のチャネルに流れ、同期整流動作となる。引き続き、コイルLUは蓄積したエネルギーを放出し、還流電流が流れる。
【0066】
次に、スイッチングパターンNo.7からNo.4への遷移状態(デッドタイムを含む状態)では、トランジスタQ4,Q6がオン状態、Q1,Q2,Q3,Q5がオフ状態である。Q2がオフ状態となることで、再び還流電流がQ2のボディダイオードに流れる。引き続き、コイルLUは蓄積したエネルギーを放出し、還流電流が流れる。そして、スイッチングパターンNo.4に戻る(図4A)。
【0067】
図5には、上記で説明した通常動作のまとめを表に示す。図5においては、スイッチングパターンごとに、各相のシャント抵抗に流れる電流の状態、およびQ1のVds(VDSUH)、Q2のVds(VDSUL)、シャント抵抗Ruの両端間電圧(VRU)、Q3のVds(VDSVH)、Q4のVds(VDSVL)、シャント抵抗Rvの両端間電圧(VRV)、Q5のVds(VDSWH)、Q6のVds(VDSWL)、シャント抵抗Rwの両端間電圧(VRW)の各状態を示す。なお、図5において、U相、V相、W相それぞれについて“H”との記載は、上側トランジスタがオン状態、下側トランジスタがオフ状態を示し、“L”との記載は、上側トランジスタがオフ状態、下側トランジスタがオン状態を示し、“M”との記載は、上側トランジスタおよび下側トランジスタがともにオフ状態を示している。これは、後述する図7についても同様である。
【0068】
<5.ショート検知>
次に、図2に示す期間Tにおいてスイッチングが実施されるときに、第1上側トランジスタQ1(U相上側トランジスタ)のドレイン・ソース間にショートが発生した場合の動作について、図6A図6Cに示す。図6A図6Cの表記方法は、先述した図4A図4Cと同様である。図6A図6Cは、各スイッチングパターンにおいてQ1にショートが発生した場合の電流経路を示している。
【0069】
スイッチングパターンNo.4の状態、No.4からNo.3への遷移状態、No3の状態、No.3からNo.8への遷移状態(図6A)、No.8の状態、No.8からNo.3への遷移状態、No.3の状態、No.3からNo.4への遷移状態(図6B)、およびNo.4の状態(図6C)の各状態においては、Q1にショートが発生しても、通常動作時に状態に変化がないため、ショートを検知することはできない。
【0070】
スイッチングパターンNo.4からNo.7への遷移状態(図6C)では、Q1にショートが発生した場合、通常動作時にはQ1には電流が流れず、Q2のボディダイオードに電流が流れていた状態が、Q1に電流が流れ、Q2には電流が流れなくなる。そのため、Q1のVdsは「小」となり、Q2のVdsは「大」となり、通常動作時(図4C)(Q1のVds=「大」、Q2のVds=「小」)から状態が変化する。従って、Q1,Q2のVdsに基づきQ1のショートを検知することが可能である。
【0071】
なお、Q1,Q2いずれか一方のみのVdsに基づきQ1のショートを検知してもよい。また、通常動作時にはシャント抵抗Ruに逆流電流(図5)が流れていたものが、Q1のショートによってシャント抵抗Ruに電流が流れなくなる。従って、シャント抵抗Ruの両端間電圧を基準電圧と比較するコンパレータを別途設け、当該基準電圧を逆流と電流ゼロの状態とを区別するように設定してもよい(この場合、基準電圧は負電圧)。
【0072】
また、スイッチングパターンNo.7の状態(図6C)でQ1にショートが発生した場合、Q1,Q2およびシャント抵抗Ruを貫通電流(過電流)が流れる。これにより、オン状態であるQ2のVdsは「大」となり、通常動作時(図4C)(Q2のVds=「小」)から状態が変化する。従って、Q2のVdsに基づきQ1のショートを検知することができる。
【0073】
また、シャント抵抗Ruに過電流が流れるため、Ruの両端間電圧が「大」となり、通常動作時(図4C)(Ruの両端間電圧=「小」)から状態が変化する。従って、Ruの両端間電圧に基づきQ1のショートを検知することができる。
【0074】
なお、Q2のVdsとRuの両端間電圧の両方の状態に基づきQ1のショートを検知してもよいが、いずれか一方のみに基づきQ1のショートを検知してもよい。
【0075】
また、スイッチングパターンNo.7からNo.4への遷移状態(図6C)では、Q1にショートが発生した場合、通常動作時にはQ1には電流が流れず、Q2のボディダイオードに電流が流れていた状態が、Q1に電流が流れ、Q2には電流が流れなくなる。そのため、Q1のVdsは「小」となり、Q2のVdsは「大」となり、通常動作時(図4C)(Q1のVds=「大」、Q2のVds=「小」)から状態が変化する。従って、Q1,Q2のVdsに基づきQ1のショートを検知することが可能である。
【0076】
なお、Q1,Q2いずれか一方のみのVdsに基づきQ1のショートを検知してもよい。また、通常動作時にはシャント抵抗Ruに逆流電流が流れていたのがQ1のショートにより電流が流れなくなることをRuの両端間電圧に基づき検知してもよい。なお、Q1,Q2のVdsとRuの両端間電圧の3つの条件に基づき、Q1のショートを検知してもよい。これにより、誤検知を抑制できる。
【0077】
図7は、上記で説明したQ1にショートが発生した場合のまとめを表に示す。図7に太線枠で示す状態が通常動作時(図5)から変化したものであり、この状態変化に基づきQ1のショートを検知することができる。
【0078】
また、図8には、Q1以外のトランジスタQ2~Q6のショートを検知可能なスイッチングパターンの一例を示している。
【0079】
スイッチングパターンNo.4の状態で第2上側トランジスタQ3(V相上側トランジスタ)のショートが発生した場合、Q3、Q4およびシャント抵抗Rvを介して貫通電流が流れる。従って、オン状態のQ4のVdsが「大」であること、あるいはシャント抵抗Rvの両端間電圧が「大」となることに基づき、Q3のショートを検知することができる。
【0080】
スイッチングパターンNo.4の状態で第3上側トランジスタQ5(W相上側トランジスタ)のショートが発生した場合、Q5、Q6およびシャント抵抗Rwを介して貫通電流が流れる。従って、オン状態のQ6のVdsが「大」であること、あるいはシャント抵抗Rwの両端間電圧が「大」となることに基づき、Q5のショートを検知することができる。
【0081】
スイッチングパターンNo.4の状態で第1下側トランジスタQ2(U相下側トランジスタ)のショートが発生した場合、Q1、Q2およびシャント抵抗Ruを介して貫通電流が流れる。従って、オン状態のQ1のVdsが「大」であること、あるいはシャント抵抗Ruの両端間電圧が「大」となることに基づき、Q2のショートを検知することができる。
【0082】
スイッチングパターンNo.1の状態(図3)で第2下側トランジスタQ4(V相下側トランジスタ)のショートが発生した場合、Q3、Q4およびシャント抵抗Rvを介して貫通電流が流れる。従って、オン状態のQ3のVdsが「大」であること、あるいはシャント抵抗Rvの両端間電圧が「大」となることに基づき、Q4のショートを検知することができる。
【0083】
スイッチングパターンNo.1の状態で第3下側トランジスタQ6(W相下側トランジスタ)のショートが発生した場合、Q5、Q6およびシャント抵抗Rwを介して貫通電流が流れる。従って、オン状態のQ5のVdsが「大」であること、あるいはシャント抵抗Rwの両端間電圧が「大」となることに基づき、Q6のショートを検知することができる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係るモータ駆動装置1によれば、モータ2をモータ駆動装置1に接続してモータ2を駆動させた状態において、各相上側・下側のすべてのトランジスタQ1~Q6のショートを検知することができる。
【0085】
<6.オープン検知>
次に、図2に示す期間Tにおいてスイッチングが実施されるときに、第1上側トランジスタQ1(U相上側トランジスタ)にオープン(Q1,Q2が接続される第1ノードNu側の断線)が発生した場合の動作について、図9A図9Cに示す。図9A図9Cの表記方法は、先述した図4A図4Cと同様である。図9A図9Cは、各スイッチングパターンにおいてQ1にオープンが発生した場合の電流経路を示している。
【0086】
スイッチングパターンNo.4の状態、No.4からNo.3への遷移状態、No3の状態、No.3からNo.8への遷移状態(図9A)、No.8の状態、No.8からNo.3への遷移状態、No.3の状態、No.3からNo.4への遷移状態(図9B)、およびNo.4の状態(図9C)の各状態においては、Q1にオープンが発生した場合、Q2のボディダイオードに還流電流が流れ、Q1のVdsが「大」となり、Q2のVdsが「小」となる。従って、通常動作時ではQ1のVdsが「小」となり、Q2のVdsが「大」となる状態から状態が変化するため、Q1のオープンを検知することができる。
【0087】
なお、Q1のVdsとQ2のVdsのいずれか一方のみに基づきQ1のオープンを検知してもよい。また、Q1にオープンが発生した場合、シャント抵抗Ruに逆流電流が流れ、通常動作時にはRuに電流が流れない状態から変化する。従って、シャント抵抗Ruの両端間電圧を基準電圧と比較するコンパレータを別途設け、当該基準電圧を逆流と電流ゼロの状態とを区別するように設定してもよい(この場合、基準電圧は負電圧)。なお、Q1,Q2のVdsとRuの両端間電圧の3つの条件に基づき、Q1のオープンを検知してもよい。これにより、誤検知を抑制できる。
【0088】
図10は、上記で説明したQ1にオープンが発生した場合のまとめを表に示す。図10に太線枠で示す状態が通常動作時(図5)から変化したものであり、この状態変化に基づきQ1のオープンを検知することができる。
【0089】
また、図11には、Q1以外のトランジスタQ2~Q6のオープンを検知可能なスイッチングパターンの一例を示している。
【0090】
スイッチングパターンNo.1の状態で第2上側トランジスタQ3(V相上側トランジスタ)のオープンが発生した場合、Q4のボディダイオードを還流電流が流れる。従って、Q3のVdsが「大」となり、Q4のVdsが「小」となることに基づき、Q3のオープンを検知することができる。なお、シャント抵抗Rvに逆流電流が流れることに基づき、Q3のオープンを検知することもできる。
【0091】
スイッチングパターンNo.1の状態で第3上側トランジスタQ5(W相上側トランジスタ)のオープンが発生した場合、Q6のボディダイオードを還流電流が流れる。従って、Q5のVdsが「大」となり、Q6のVdsが「小」となることに基づき、Q5のオープンを検知することができる。なお、シャント抵抗Rwに逆流電流が流れることに基づき、Q5のオープンを検知することもできる。
【0092】
スイッチングパターンNo.1の状態で第1下側トランジスタQ2(U相下側トランジスタ)のオープンが発生した場合、Q1のボディダイオードを還流電流が流れる。従って、Q1のVdsが「小」となり、Q2のVdsが「大」となることに基づき、Q2のオープンを検知することができる。なお、Q2にオープンが発生した場合、シャント抵抗Ruに電流が流れず、通常動作時にはRuに電流が流れる状態から変化する。従って、シャント抵抗Ruの両端間電圧を基準電圧と比較するコンパレータを別途設け、当該基準電圧を電流ゼロと通常電流の状態とを区別するように設定してもよい。
【0093】
スイッチングパターンNo.4の状態で第2下側トランジスタQ4(V相下側トランジスタ)のオープンが発生した場合、Q3のボディダイオードを還流電流が流れる。従って、Q3のVdsが「小」となり、Q4のVdsが「大」となることに基づき、Q4のオープンを検知することができる。また、シャント抵抗Rvに電流が流れないことに基づき、Q4のオープンを検知してもよい。
【0094】
スイッチングパターンNo.4の状態で第3下側トランジスタQ6(W相下側トランジスタ)のオープンが発生した場合、Q5のボディダイオードを還流電流が流れる。従って、Q5のVdsが「小」となり、Q6のVdsが「大」となることに基づき、Q6のオープンを検知することができる。また、シャント抵抗Rwに電流が流れないことに基づき、Q6のオープンを検知してもよい。
【0095】
以上のように、本実施形態に係るモータ駆動装置1によれば、モータ2をモータ駆動装置1に接続してモータ2を駆動させた状態において、各相上側・下側のすべてのトランジスタQ1~Q6のオープンを検知することができる。
【0096】
<7.車両への適用>
図12は、先述したモータシステム10を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。図12においては、モータ2の適用例として、車両Xに搭載される各種モータX11~X17を示している。
【0097】
X11は、電動パワーステアリング用モータである。X12は、電動オイルポンプ用モータである。X13は、ヘッドライト駆動用モータである。X14は、電動パーキングブレーキ用モータである。X15は、シート冷却ファン用モータである。X16は、ドア開閉用モータである。X17は、ドアロック用モータである。
【0098】
<8.その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0099】
<9.付記>
上記のように例えば、本開示の一態様に係るモータ駆動装置(1)は、
第1上側トランジスタ(Q1)と第1下側トランジスタ(Q2)を有し、前記第1上側トランジスタと前記第1下側トランジスタとが接続される第1ノード(Nu)に、ブラシレスDCモータ(2)に含まれる第1コイル(LU)を接続可能である第1ハーフブリッジ(1u)と、
第2上側トランジスタ(Q3)と第2下側トランジスタ(Q4)を有し、前記第2上側トランジスタと前記第2下側トランジスタとが接続される第2ノード(Nv)に、前記ブラシレスDCモータに含まれる第2コイル(LV)を接続可能である第2ハーフブリッジ(1v)と、
第3上側トランジスタ(Q5)と第3下側トランジスタ(Q6)を有し、前記第3上側トランジスタと前記第3下側トランジスタとが接続される第3ノード(Nw)に、前記ブラシレスDCモータに含まれる第3コイル(LW)を接続可能である第3ハーフブリッジ(1w)と、
を用いて前記ブラシレスDCモータを駆動するように構成されるモータ駆動装置であって、
前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのスイッチングを制御するように構成される駆動制御部(11)と、
前記第1~第3コイルを前記第1~第3ノードに接続した状態で前記駆動制御部が前記スイッチングを制御するモータ駆動状態において、前記第1~第3上側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧と、前記第1~第3下側トランジスタのそれぞれに接続可能な第1~第3シャント抵抗(Ru,Rv,Rw)の両端間電圧と、のうち少なくともいずれかに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのうち少なくともいずれかに発生したショートとオープンの少なくとも一方を検知するように構成される異常検知部(12)と、
を備える構成としている(第1の構成)。
【0100】
また、上記第1の構成において、前記異常検知部(12)は、前記モータ駆動状態において、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタにおけるすべてのトランジスタに発生したショートおよびオープンを検知するように構成されることとしてもよい(第2の構成)。
【0101】
また、上記第1の構成または第2の構成において、前記異常検知部(12)は、前記第1~第3ハーフブリッジに流れる貫通電流の発生を検知することで、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成されることとしてもよい(第3の構成)。
【0102】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記異常検知部(12)は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第1閾値電圧を上回っていることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成されることとしてもよい(第4の構成)。
【0103】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記異常検知部(12)は、前記第1~第3シャント抵抗の両端間電圧が正の電圧である第2閾値電圧を上回っていることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したショートを検知するように構成されることとしてもよい(第5の構成)。
【0104】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記異常検知部(12)は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに電流が流れず、オフ状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのボディダイオードに電流が流れることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成されることとしてもよい(第6の構成)。
【0105】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記異常検知部(12)は、オン状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第3閾値電圧を上回っていることと、オフ状態である前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタのドレイン・ソース間電圧が正の電圧である第4閾値電圧以下であることの少なくとも一方に基づき、前記第1~第3上側トランジスタおよび前記第1~第3下側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成されることとしてもよい(第7の構成)。
【0106】
また、上記第1から第7のいずれかの構成において、前記異常検知部(12)は、前記第1~第3シャント抵抗の両端間電圧が負の電圧である第5閾値電圧以下であることに基づき、前記第1~第3上側トランジスタに発生したオープンを検知するように構成されることとしてもよい(第8の構成)。
【0107】
また、本開示の一態様に係るモータシステム(10)は、上記第1から第8のいずれかの構成のモータ駆動装置(1)と、前記モータ駆動装置により駆動可能に構成されるブラシレスDCモータ(2)と、を備える(第9の構成)。
【0108】
また、本開示の一態様に係る車両(X)は、上記第9の構成のモータシステムを備える。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示は、例えば、車載用のモータシステムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 モータ駆動装置
1u 第1ハーフブリッジ
1v 第2ハーフブリッジ
1w 第3ハーフブリッジ
2 モータ
10 モータシステム
11 駆動制御部
12 異常検知部
CUH 第1上側コンパレータ
CUL 第1下側コンパレータ
CUR 第1電流コンパレータ
CVH 第2上側コンパレータ
CVL 第2下側コンパレータ
CVR 第2電流コンパレータ
CWH 第3上側コンパレータ
CWL 第3下側コンパレータ
CWR 第3電流コンパレータ
LU 第1コイル
LV 第2コイル
LW 第3コイル
Q1 第1上側トランジスタ
Q2 第1下側トランジスタ
Q3 第2上側トランジスタ
Q4 第2下側トランジスタ
Q5 第3上側トランジスタ
Q6 第3下側トランジスタ
Ru 第1シャント抵抗
Rv 第2シャント抵抗
Rw 第3シャント抵抗
X 車両
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12