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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147487
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】チャンネルファスナ取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/33 20060101AFI20231005BHJP
   G21C 19/07 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G21C3/33 510
G21C19/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055005
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591130319
【氏名又は名称】東京パワーテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592207256
【氏名又は名称】株式会社興洋
(74)【代理人】
【識別番号】100090228
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀信
(72)【発明者】
【氏名】府川 慶太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 拓史
(72)【発明者】
【氏名】高村 正和
(57)【要約】
【課題】燃料集合体の上部に装着されるチャンネルファスナを取り扱う装置において、ねじ回し工具を固定用ねじの位置に容易に位置決めできるようにする。
【解決手段】チャンネルファスナ取扱装置60は旋回装置68、旋回部70、ねじ操作回転軸部74、ねじ回し工具78、係合部材72を有する。旋回装置68は旋回モータ69により旋回部70を旋回軸AX1の周り方向に旋回駆動する。ねじ操作回転軸部74は一端側が旋回部70に回転可能に支持され、旋回軸AX1と同軸に配された回転軸AX2の周り方向にねじ回転モータ71により回転駆動される。ねじ回し工具78はねじ操作回転軸部74の他端部に連結されて回転軸AX2上に配置される。係合部材72は一端側が旋回部70に連結されて旋回する。係合部材72は他端側の旋回軸AX1を外れた箇所に、燃料ラックと燃料集合体との間の隙間に挿入されるガイド板82を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体の上部に装着されるチャンネルファスナを取り扱うチャンネルファスナ取扱装置において、
旋回モータを有する旋回装置と、
ねじ回転モータを有し前記旋回装置に連結されて前記旋回モータにより所定の旋回軸の周り方向に旋回駆動される旋回部と、
一端側が前記旋回部に回転可能に支持され、前記旋回軸と同軸に配された回転軸の周り方向に前記ねじ回転モータにより回転駆動されるねじ操作回転軸部と、
前記チャンネルファスナの固定用ねじのねじ頭部に嵌合可能に構成され、前記ねじ操作回転軸部の他端部に連結されて前記回転軸上に配置され、該ねじ操作回転軸部の回転動作に従動して該回転軸の周り方向に回転して、嵌合した前記ねじ頭部を回転駆動するねじ回し工具と、
一端側が前記旋回部に連結されて該旋回部の旋回動作に従動して旋回する係合部材とを具え、
前記係合部材は、他端側の前記旋回軸を外れた箇所に、燃料プール内の燃料ラックと該燃料ラックに収容された前記燃料集合体との間の隙間に挿入されるガイド板による係合部を有する
チャンネルファスナ取扱装置。
【請求項2】
前記係合部材は管状部材を有し、
前記ねじ操作回転軸部は前記管状部材の内部空間に該管状部材と同軸に配置されて該管状部材に対して前記回転軸の周り方向に回転可能に支持される
請求項1に記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【請求項3】
前記ねじ操作回転軸部の外周に該ねじ操作回転軸部の軸方向に移動可能に外装されたスリーブと、
前記スリーブに係合し該スリーブの前記軸方向の移動により操作されて前記ねじ回し工具と前記ねじ頭部との嵌合状態をロックしまたはアンロックするロック部材と、
前記管状部材に支持されて前記スリーブを該ねじ操作回転軸部の軸方向に可逆移動させるスリーブ駆動部と
を具える請求項2に記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【請求項4】
前記ねじ操作回転軸部の内部に前記回転軸に沿って形成された空洞と、
前記空洞に前記回転軸に沿った方向に移動可能に収容され、一端部が前記ねじ回し工具から突出して該ねじ回し工具に嵌合した前記固定用ねじの前記ねじ頭部に当接可能に配置される棒状の検出ロッドと、
前記旋回部または前記ねじ操作回転軸部に対する前記検出ロッドの、前記回転軸に沿った方向の位置を検出する位置センサと
を具える請求項1から3のいずれか1つに記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【請求項5】
前記ねじ操作回転軸部は前記旋回部に対し前記回転軸に沿った方向に移動可能に支持され、
前記ねじ操作回転軸部は、前記固定用ねじに掛かる該ねじ操作回転軸部の重量をキャンセルするバランスシリンダを介して前記旋回部に支持される請求項1から4のいずれか1つに記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【請求項6】
前記旋回装置の固定部に連結されて前記係合部材を前記旋回軸の周り方向に旋回可能に支持する補強フレームを具える請求項1から5のいずれか1つに記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【請求項7】
前記燃料集合体が燃料プール内の燃料ラックに収容され、前記ガイド板が前記燃料ラックと前記燃料集合体との間の前記隙間に挿入され、前記ねじ回し工具が前記ねじ頭部を回転駆動する状態において、前記旋回軸および前記回転軸は前記燃料プールの水面に対して垂直に配置され、前記旋回モータおよび前記ねじ回転モータは前記燃料プールの上方の水没しない位置に配置されるように構成されている請求項1から6のいずれか1つに記載のチャンネルファスナ取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料集合体の上部に装着されるチャンネルファスナを取り扱う装置に関し、動力を用いてチャンネルファスナの固定用ねじを回転駆動するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、沸騰水型原子炉において、燃料プール内の燃料ラックに収容された燃料集合体から、動力を用いてチャンネルファスナを取り外すチャンネルファスナ取扱装置が記載されている。この従来のチャンネルファスナ取扱装置について説明する。図15は特許文献1の図1を示す。このチャンネルファスナ取扱装置は、ホイスト9から装置本体10を吊り下げ、燃料プール内に沈めてチャンネルファスナ6の固定用ねじ7をねじ回転モータ25の駆動で操作するように構成されている。すなわち、装置本体10の下端部にはガイド10aが形成されている。装置本体10の側面には垂直駆動機構を構成するエアシリンダ14が装置本体10に対し旋回モータ13の駆動で、装置本体10内に位置する旋回軸11の回り方向に旋回可能に取り付けられている。エアシリンダ14のシャフト15にはファスナ挟持機構22が連結されている。ファスナ挟持機構22の下端部には固定用ねじ7を回転駆動するねじ回し工具27が配置されている。ねじ回し工具27はファスナ挟持機構22に具えられたねじ回転モータ25で回転駆動される。
【0003】
この従来のチャンネルファスナ取扱装置を用いたチャンネルファスナの取外し作業は次のようにして行われる。ホイスト9を操作して装置本体10を降下させて燃料プール内に沈める。装置本体10の下端部のガイド10aを燃料ラック5に貯蔵された燃料集合体2の上部のハンドル(取っ手)3に係合させて、装置本体10を燃料集合体2の上部に支持する。この状態で、旋回モータ13を駆動してエアシリンダ14を旋回軸11の回り方向に旋回させて、ファスナ挟持機構22のねじ回し工具27を固定用ねじ7の真上に位置決めする。エアシリンダ14を伸長方向に駆動してファスナ挟持機構22を降下させ、ねじ回し工具27を固定用ねじ7のねじ頭部に嵌合させる。ねじ回し工具27に配置された鋼球28で該嵌合状態をロックする。ファスナ挟持機構22内のねじ回転モータ25の駆動でねじ回し工具27を回転し固定用ねじ7を緩める。固定用ねじ7が燃料集合体2から外れたらエアシリンダ14を短縮方向に駆動してファスナ挟持機構22を上昇させて固定用ねじ7をチャンネルファスナ6ごと引き上げる。エアシリンダ14を旋回モータ13の駆動で旋回軸11の回り方向に旋回させてチャンネルファスナ受け30の真上に位置決めする。鋼球28による固定用ねじ7のロックを解除してチャンネルファスナ6をチャンネルファスナ受け30内に落下させて収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2563427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のチャンネルファスナ取扱装置によれば、ねじ回し工具27を固定用ねじ7に嵌合させるのに2段階の旋回操作が必要である。すなわち、はじめに、装置本体10をハンドル3の真上位置に位置決めしたら、例えばホイスト9のフックの回転により装置本体10を自身の軸周り方向に旋回させてガイド10aの係合溝(符号なし)をハンドル3に係合する向きに合わせる(第1段階の旋回)。ホイスト9を下降させてガイド10aの係合溝をハンドル3に係合させる。これで装置本体10は燃料集合体2の上部に支持される。続いて、旋回モータ13を駆動して、エアシリンダ14を旋回軸11の周り方向に旋回させてねじ回し工具27を固定用ねじ7の真上に位置決めする(第2段階の旋回)。この状態でエアシリンダ14を伸長方向に駆動してファスナ挟持機構22を下降させることにより、ねじ回し工具27を固定用ねじ7のねじ頭部に嵌合させる。また、福島第一原子力発電所3号機の使用済み燃料プール内に保管されていた燃料集合体のように、そのハンドルが、飛散落下した瓦礫によって変形している場合がある。このようにハンドルが変形している場合に、前記従来のチャンネルファスナ取扱装置ではガイド10aをハンドル3に係合させることができないため、チャンネルファスナ6を取り扱うことができなかった。また、前記従来のチャンネルファスナ取扱装置は装置本体10を燃料プール内に水没させて使用するので(特許文献1の図3参照)、旋回モータ13およびねじ回転モータ25について厳重な防水対策が必要であった。
【0006】
この発明は、前記従来技術における問題点を解決可能にしたチャンネルファスナ取扱装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、燃料集合体の上部に装着されるチャンネルファスナを取り扱うチャンネルファスナ取扱装置において、旋回モータを有する旋回装置と、ねじ回転モータを有し前記旋回装置に連結されて前記旋回モータにより所定の旋回軸の周り方向に旋回駆動される旋回部と、一端側が前記旋回部に回転可能に支持され、前記旋回軸と同軸に配された回転軸の周り方向に前記ねじ回転モータにより回転駆動されるねじ操作回転軸部と、前記チャンネルファスナの固定用ねじのねじ頭部に嵌合可能に構成され、前記ねじ操作回転軸部の他端部に連結されて前記回転軸上に配置され、該ねじ操作回転軸部の回転動作に従動して該回転軸の周り方向に回転して、嵌合した前記ねじ頭部を回転駆動するねじ回し工具と、一端側が前記旋回部に連結されて該旋回部の旋回動作に従動して旋回する係合部材とを具え、前記係合部材は、他端側の前記旋回軸を外れた箇所に、燃料プール内の燃料ラックと該燃料ラックに収容された前記燃料集合体との間の隙間に挿入されるガイド板による係合部を有するものである。これによれば、旋回部の旋回軸とねじ操作回転軸部の回転軸が同軸に配置されかつ該回転軸上にねじ回し工具が配置されているので、ガイド板を燃料ラックと燃料集合体との間の隙間に挿入可能な姿勢に配置するために旋回部を旋回させても燃料集合体に対するねじ回し工具の位置は変動しない。つまり、旋回部の旋回に伴う燃料集合体に対するねじ回し工具の位置の変動がないので、ねじ回し工具を固定用ねじの位置に容易に位置決めすることができる。また、この発明によれば、ガイド板を燃料ラックと燃料集合体との間の隙間に挿入することにより燃料集合体に対するチャンネルファスナ取扱装置の位置決めを行うことができる。したがって、燃料集合体のハンドルを燃料集合体に対するチャンネルファスナ取扱装置の位置決めに利用しないので、この発明のチャンネルファスナ取扱装置はハンドルが変形した燃料集合体に対しても使用することができる。
【0008】
この発明において、前記係合部材は管状部材を有し、前記ねじ操作回転軸部は前記管状部材の内部空間に該管状部材と同軸に配置されて該管状部材に対して前記回転軸の周り方向に回転可能に支持されるものとすることができる。これによれば、ねじ操作回転軸部を係合部材の管状部材で回転可能に支持することができる。
【0009】
この発明は、前記ねじ操作回転軸部の外周に該ねじ操作回転軸部の軸方向に移動可能に外装されたスリーブと、前記スリーブに係合し該スリーブの前記軸方向の移動により操作されて前記ねじ回し工具と前記ねじ頭部との嵌合状態をロックしまたはアンロックするロック部材と、前記管状部材に支持されて前記スリーブを該ねじ操作回転軸部の軸方向に可逆移動させるスリーブ駆動部とを具えることができる。これによれば、ねじ操作回転軸部に外装されたスリーブをスリーブ駆動部でねじ操作回転軸部の軸方向に可逆移動させることによりロック部材を操作して、ねじ回し工具とねじ頭部との嵌合状態をロックしまたはアンロックすることができる。
【0010】
この発明は、前記ねじ操作回転軸部の内部に前記回転軸に沿って形成された空洞と、前記空洞に前記回転軸に沿った方向に移動可能に収容され、一端部が前記ねじ回し工具から突出して該ねじ回し工具に嵌合した前記固定用ねじの前記ねじ頭部に当接可能に配置される棒状の検出ロッドと、前記旋回部または前記ねじ操作回転軸部に対する前記検出ロッドの、前記回転軸に沿った方向の位置を検出する位置センサとを具えることができる。これによれば、検出ロッドと位置センサとにより、ねじ回し工具とねじ頭部との嵌合・非嵌合状態を検出することができる。
【0011】
この発明において、前記ねじ操作回転軸部は前記旋回部に対し前記回転軸に沿った方向に移動可能に支持され、前記ねじ操作回転軸部は、前記固定用ねじに掛かる該ねじ操作回転軸部の重量をキャンセルするバランスシリンダを介して前記旋回部に支持されているものとすることができる。これによれば、ねじ回し工具で固定用ねじを回転することに伴い必然的に生じる固定用ねじの軸方向の移動を、旋回部に対するねじ操作回転軸部の、回転軸に沿った方向に移動で吸収することができる。また、ねじ操作回転軸部に検出ロッドが組み込まれ、位置センサが旋回部に対する検出ロッドの、回転軸に沿った方向の位置を検出するように配置されている場合には、検出ロッドと位置センサとにより、ねじ回し工具とねじ頭部との嵌合・非嵌合状態および燃料集合体に対する固定用ねじの緩み(外れ)・締まり(非外れ)状態の両状態を検出することができる。また、バランスシリンダにより固定用ねじに掛かる該ねじ操作回転軸部の重量をキャンセルして、ねじ回し工具による固定用ねじの回転を軽い力で行うことができる。
【0012】
この発明は、前記旋回装置の固定部に連結されて前記係合部材を前記旋回軸の周り方向に旋回可能に支持する補強フレームを具えるものとすることができる。これによれば、係合部材を補強フレームで支持することができる。
【0013】
この発明は、前記ガイド板の周辺を撮影可能に前記係合部材に取り付けられたテレビカメラを具えるものとすることができる。これによれば、テレビカメラの映像を見ながらガイド板を燃料ラックと燃料集合体との間の隙間に挿入可能な姿勢に配置することができる。
【0014】
この発明は、前記燃料集合体が燃料プール内の燃料ラックに収容され、前記ガイド板が前記燃料ラックと前記燃料集合体との間の前記隙間に挿入され、前記ねじ回し工具が前記ねじ頭部を回転駆動する状態において、前記旋回軸および前記回転軸は前記燃料プールの水面に対して垂直に配置され、前記旋回モータおよび前記ねじ回転モータは前記燃料プールの上方の水没しない位置に配置されるように構成されているものとすることができる。これによれば、旋回モータおよび前記ねじ回転モータは燃料プールの上方の水没しない位置に配置されるので、厳重な防水対策を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】この発明の実施の形態に係るチャンネルファスナ取扱装置の全体構成を示す立面図(一部断面正面図)である。
図1B図1Aのチャンネルファスナ取扱装置の平面図である。
図1C図1のA-A矢視断面図である。
図1D図1のB-B矢視断面図である。
図2】原子炉建屋内において図1Aのチャンネルファスナ取扱装置を使用してチャンネルファスナの取外し作業を行うシステム構成の概要を示す模式立面図である。
図3A図1Aにおける旋回装置の概要構成を示す一部破断斜視図である。
図3B】同旋回装置の詳細構成を示す断面正面図である。
図3C】同旋回装置の詳細構成を示す平面図である。
図4A図1における旋回部の概要構成を示す一部破断斜視図である。
図4B】同旋回部の詳細構成を示す断面正面図である。
図4C】同旋回部の詳細構成を示す平面図である。
図4D】同旋回部の詳細構成を示す断面側面図である。
図5A図1における同軸集合部材の、軸部に存在する同軸集合部材分割部分の1つの構成を示す図で、部分的に回転軸を通る平面で切断して示した部分断面図である。
図5B図1における同軸集合部材分割部分どうしの連結構成を示す分解斜視図である。
図6A図1におけるヘッド部の概要構成を示す一部破断斜視図で、アンロック状態を示す。
図6B図1におけるヘッド部の概要構成を示す一部破断斜視図で、ロック状態を示す。
図6C図1におけるヘッド部の詳細構成を示す断面正面図である(燃料集合体に係合させた状態で示す。)。
図6D図6CのA-A矢視断面図である。
図6E図6CのB-B矢視断面図である。
図6F図6CのC-C矢視断面図である。
図6G図6CのD-D矢視断面図である。
図6H図6Cのヘッド部の先端部の拡大図である。
図7A図1のチャンネルファスナ取扱装置の組立て手順の工程(1)を示す図で、補強フレームトップと旋回装置の組付け工程を示す。(a)は平面図、(b)は断面正面図である。
図7B図1のチャンネルファスナ取扱装置の組立て手順の工程(2)を示す図で、旋回部の底部への旋回ガイド板の取り付け工程を示す。(a)は平面図、(b)は断面正面図である。
図7C図1のチャンネルファスナ取扱装置の組立て手順の工程(3)を示す正面図で、旋回装置68への旋回部70の取り付け工程を示す断面正面図である。
図7D図1のチャンネルファスナ取扱装置の組立て手順の工程(4)を示す正面図で、基部に軸部とヘッド部を連結して全体を完成する工程を示す。
図8図1のチャンネルファスナ取扱装置を用いたチャンネルファスナの取外し作業の制御系統(図2のシステム構成全体の制御系統)の概要を示すブロック図である。
図9A図1のチャンネルファスナ取扱装置を用いたチャンネルファスナの取外し作業のテストで使用した模擬燃料ラックと該模擬燃料ラックに貯蔵した模擬燃料集合体の上部構造を示す側面図である。
図9B図9Aに対応する平面図である。
図10A図9A図9Bのチャンネルファスナの構成を示す側面図である。
図10B図10Aに対応する平面図である。
図11図1のチャンネルファスナ取扱装置を有する図2のシステム構成および図8の制御系統を用いて図9A図9Bに示す配置からチャンネルファスナを取り外す一連の作業の全工程の一例を示すフローチャートである。
図12A図12A図12C図11のチャンネルファスナの取外し作業におけるチャンネルファスナ取扱装置のヘッド部の動作を示す断面正面図である。このうち、図12Aはガイド板がチャンネルファスナの上方に位置決めされた後、燃料集合体と燃料ラックとの間の隙間に挿入される前の状態を示す。
図12B図12Aに続く動作を示す断面正面図で、チャンネルファスナ取扱装置を下降させてガイド板を燃料集合体と燃料ラックとの間の隙間に挿入してねじ回し工具をねじ頭部に嵌合させた後、スリーブによるロック前の状態を示す。
図12C図12Bに続く動作を示す断面正面図で、エアーシリンダを伸長方向に駆動してスリーブを下方位置に移動させてねじ回し工具とねじ頭部の嵌合をロックさせた状態を示す。
図13図11のチャンネルファスナの取外し作業におけるファイバーセンサの動作を示す図で、ファイバーセンサとセンサドグの位置関係を示す。
図14図11の作業において、チャンネルファスナ取扱装置のヘッド部のねじ回し工具がチャンネルファスナの固定用ねじに嵌合し、該嵌合がロックされたときの状態を示す写真である。
図15】特許文献1に記載された従来のチャンネルファスナ取扱装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態を以下説明する。ここではこの発明によるチャンネルファスナ取扱装置をチャンネルファスナの取外し用途に使用する場合について説明する。
【0017】
《原子炉建屋内におけるチャンネルファスナ取扱装置の使用時の配置および同装置の概要構成の説明》
図2は原子炉建屋40内におけるこの実施の形態に係るチャンネルファスナ取扱装置60の配置の概要を模式的に示す。原子炉建屋40内の床42の上には、燃料プール44(使用済み核燃料貯蔵プール)を挟んでその両側の位置にレール46,46が敷設されている。燃料プール44内には燃料ラック45が水没状態に設置されている。燃料ラック45には燃料集合体47が出し入れ可能に収納されている。レール46,46の上にはクレーン走行部48がモータ駆動でレール46,46に沿って図2の紙面に直交する方向に移動可能に配置されている。クレーン走行部48は、左右の脚50,50と、脚50,50の頂部間に水平に渡されたガーダ52を門形に組み付けた構成を有する。クレーン走行部48は脚50,50の下端部に取り付けられた車輪50a,50aでレール46,46の上に支持される。ガーダ52にはホイスト54がモータ駆動でガーダ52に沿って図2の紙面の左右方向に移動可能に配置されている。ホイスト本体部54aには、図示しない移動装置、巻上装置等が搭載されている。移動装置はホイスト本体部54aをモータ駆動でガーダ52に沿って移動させる。巻上装置からはワイヤロープ56が吊り下げられている。ワイヤロープ56にはフックブロック58が吊り下げられている。巻上装置はワイヤロープ56をモータ駆動で巻き上げ、巻き下げることにより、フックブロック58を昇降させる。フックブロック58にはフック58aが取り付けられている。フック58aにはチャンネルファスナ取扱装置60の頂部の吊環62が着脱自在に掛けられる。これによりチャンネルファスナ取扱装置60は、その長手方向を鉛直方向に延在させた姿勢でフック58aに着脱可能に吊り下げられる。
【0018】
チャンネルファスナ取扱装置60は、外形的には、上から順に、基部60A、軸部60B、ヘッド部60Cを同軸上に一列に配列して全体を一体に組み付けた構成を有する。チャンネルファスナ取扱装置60の長手方向(上下方向)の全長は、燃料ラック45内の燃料集合体47の上部に装着されたチャンネルファスナを操作するのに必要な長さに設定されており、例えば約10m程度である。
【0019】
基部60Aには旋回モータ、ねじ回転モータ等が搭載されている。ヘッド部60Cにはねじ回し工具、ガイド板、テレビカメラ等が配置されている。ねじ回し工具はチャンネルファスナの固定用ねじのねじ頭部に嵌合して該固定用ねじを回転させて、その回転方向に応じて該固定用ねじを燃料集合体47の上部に対し緩めまたは締める。ガイド板はねじ回し工具を固定用ねじの直ぐ上の位置に案内する作業に利用される。テレビカメラはこの案内作業を行う際に作業者が燃料集合体47に対するガイド板の位置を作業用モニタ(テレビモニタ)で確認するのに利用される。ガイド板はまた、チャンネルファスナ取扱装置60による作業時に、チャンネルファスナ取扱装置60を燃料集合体47に支持するのに利用される。
【0020】
軸部60Bには、外側から順にガイド管(係合部材)、ねじ操作回転軸部、検出ロッドの3本の軸部材(詳細は後述)を同軸に配置した同軸集合部材61が配置されている。ガイド管は旋回モータの駆動でその軸回り方向に回転され、その回転はガイド板(係合部)に伝達される。これにより、ガイド板は該軸回り方向に旋回して、燃料集合体47に対して旋回方向に位置決めされる。ねじ操作回転軸部はガイド管に挿通支持されて、ねじ回転モータの駆動でその軸回り方向に回転される。ねじ操作回転軸部の回転は、ねじ操作回転軸部の先端に同軸に連結配置されたねじ回し工具に伝達される。その結果、ねじ回し工具は該軸回り方向に回転されて、該ねじ回し工具に嵌合した固定用ねじを回転する。検出ロッドはねじ操作回転軸部に挿通支持されて、自重によりその下端部がねじ回し工具に所定量突出可能に(ねじ回し工具の凹所に出入り可能に)配置されている。検出ロッドは燃料集合体からチャンネルファスナを取り外す作業において、ねじ回し工具に対する固定用ねじの嵌合完了および燃料集合体に対する固定用ねじの外れ完了を検出する。
【0021】
軸部60Bは補強フレーム63を有する。補強フレーム63は同軸集合部材61に沿って四角柱状に組まれて配置され、同軸集合部材61を包囲して支持する。同軸集合部材61はその軸回り方向に旋回可能に補強フレーム63に支持される。補強フレーム63の頂部は基部60Aの補強フレームトップ65の底板65bに不動に連結されている。同軸集合部材61のガイド管は補強フレーム63に対し旋回可能、昇降不能である。同軸集合部材61のねじ操作回転軸部はガイド管に対し回転可能、昇降可能(ただし下降方向への抜け止めストッパあり)である。同軸集合部材61の検出ロッドはねじ操作回転軸部に対し昇降可能(ただし下降方向への抜け止めストッパあり)、回転可能(ただし回転不能でも問題ない)である。ガイド管の旋回軸AX1とねじ操作回転軸部の回転軸AX2は同軸に配置されている。
【0022】
チャンネルファスナ取扱装置60を使用して燃料集合体からチャンネルファスナを取り外す作業を行う際には、図2に示すように、ヘッド部60Cの全体と軸部60Bの長手方向の途中位置までの部分が燃料プール44内に水没し、基部60Aは水没しない。この実施の形態ではホイスト54のフック58aは鉛直軸回り方向に回転不能にフックブロック58に取り付けられている。またフックブロック58自身も鉛直軸回り方向に回転不能にホイスト本体部54aに吊り下げられている。したがって、チャンネルファスナ取扱装置60の頂部の吊環62も鉛直軸回り方向に回転不能にフック58aに掛けられている。吊環62に連結固定された補強フレームトップ65および補強フレーム63も鉛直軸回り方向に回転不能である。
【0023】
図2において、床42の上には制御盤64が設置されている。制御盤64からはチャンネルファスナ取扱装置60を駆動、制御するための電気ケーブル、信号ケーブル、エアーホース等の各種ケーブル・ホース類66が引き出され、チャンネルファスナ取扱装置60に導かれている。制御盤64は図示しない操作室に配置されたタッチパネル操作盤に接続されている。操作室にいる作業者がタッチパネル操作盤を操作することにより、制御盤64を介してチャンネルファスナ取扱装置60を遠隔操作することができる。クレーン走行部48、ホイスト54も操作室に配置された操作盤から遠隔操作することができる。
【0024】
図2の構成を使用して燃料集合体47のチャンネルファスナを取り外す操作は概略次のようにして行われる。ホイスト54のフック58aにチャンネルファスナ取扱装置60を吊り下げる。操作室にいる作業者が原子炉建屋40内の適宜の箇所並びにチャンネルファスナ取扱装置60のヘッド部60Cに配置されたテレビカメラの映像を見ながらクレーン走行部48を図2の紙面に直交する方向に移動し、ホイスト54を同紙面の左右方向に移動し、ホイスト54を巻き下げ駆動し、ヘッド部60Cを燃料ラック45内の操作対象の燃料集合体47の直ぐ上に位置決めする。ヘッド部60Cに配置されたテレビカメラの映像を見ながら同軸集合部材61を鉛直軸の周り方向に旋回させて、ヘッド部60Cのガイド板を燃料集合体47の所定位置(ここでは燃料集合体47と燃料ラック45の間の隙間のコーナー部)に係合可能な位置に位置決めする。ホイスト54をさらに巻き下げ駆動してガイド板を該隙間に差し込み、ヘッド部60Cのねじ回し工具を燃料集合体に装着されたチャンネルファスナの固定用ねじに嵌合させる。基部60A内のねじ回転モータの駆動でねじ回し工具を回転して固定用ねじを緩める。固定用ねじが燃料集合体47から外れたら、ホイスト54を巻き上げ駆動して固定用ねじをチャンネルファスナごと燃料集合体47から引き抜く。引き抜いたチャンネルファスナを所定の回収位置で回収ボックスに回収する。
【0025】
《チャンネルファスナ取扱装置全体の説明》
チャンネルファスナ取扱装置60の構成をより詳細に説明する。図1A図1Bはチャンネルファスナ取扱装置60の、装置全体を組み立てた状態での全体構成を示す。図1Aは立面図(一部断面正面図)、図1Bは平面図である。チャンネルファスナ取扱装置60の各部の構造部材は例えばステンレス等の金属部材で構成されている。図1Aにおいて、チャンネルファスナ取扱装置60は、前述のとおり、上から順に、基部60A、軸部60B、ヘッド部60Cを同軸上に一列に配列して全体を一体に組み付けた構成を有する。基部60Aは補強フレームトップ65を有する。補強フレームトップ65は同一径の円盤状の天板65aおよび底板65bを有し、これら天板65aと底板65bを旋回軸AX1の周り方向に等間隔に配置した4本のパイプ65cで相互に連結して籠状に構成されている。4本のパイプ65c相互間の開口は塞がれていない。なお、図1Aの正面図では、基部60Aに搭載された装置類を見やすくするために、便宜的に図1Bの平面図に対して4本のパイプ65cを旋回軸AX1の周り方向に45度回転させた位置に表示している。後述する図7A等についても同様である。底板65bの上には、4本のパイプ65cに内接して円筒状の旋回ガイド筒65dが固定されている。旋回ガイド筒65dは旋回部70の底部に取り付けられた円状の旋回ガイド板183の外周面に僅かなギャップで対面して、補強フレームトップ65の4本のパイプ65cで包囲された内部空間65eで旋回部70が円滑に旋回できるようにする(図1C参照)。基部60Aは、補強フレームトップ65の内部空間65eの上部に旋回装置68を配置し、下部に旋回部70を配置している。旋回部70は旋回装置68に吊り下げられて、旋回装置68に搭載された旋回モータ69の駆動で旋回装置68の固定部(補強フレームトップ65に連結固定される部分)に対し旋回軸AX1の周り方向に所定角度範囲で可逆旋回可能に配置されている。旋回部70の旋回ガイド板183は補強フレームトップ65の底板65bから浮いて配置されている。
【0026】
旋回部70からは同軸集合部材61が旋回軸AX1に沿って下方に引き出されている。同軸集合部材61は、外側から順にガイド管72(係合部材)、ねじ操作回転軸部74、検出ロッド76の3本の軸部材(詳細は後述)を同軸に配置した構成を有する。ガイド管72は大径の丸パイプ状の管状部材、ねじ操作回転軸部74は小径の丸パイプ状の管状部材でそれぞれ構成されている。検出ロッド76はさらに小径の丸パイプ状の管状部材の両端に短尺の丸棒部材を嵌め込み装着して構成されている。ただし、検出ロッド76は全体を棒状部材(例えば丸棒状部材)で構成することもできる。ガイド管72、ねじ操作回転軸部74、検出ロッド76は例えばステンレス等の金属部材で構成されている。同軸集合部材61は基部60Aから軸部60Bを経てヘッド部60Cに至るまで、燃料プール44内の燃料集合体47(図2)の上部に装着されたチャンネルファスナを操作するのに必要な長さ延在して配置されている。ガイド管72の上端部は基部60Aにおいて旋回部70の固定部102(旋回装置68に吊り下げられる構造部分)に連結固定されている。したがって、旋回装置68が駆動されると同軸集合部材61(ガイド管72、ねじ操作回転軸部74、検出ロッド76の全体)は旋回部70と一体となって旋回軸AX1の周り方向に旋回する。ねじ操作回転軸部74は上端部が旋回部70に回転可能に支持され、旋回部70に搭載されたねじ回転モータ71の駆動でガイド管72に対し回転軸AX2(旋回軸AX1と同軸)の周り方向に可逆回転(ただしここでは固定用ねじを緩める方向の回転のみ使用される)されて、ねじ操作回転軸部74の下端部(ヘッド部60Cに位置する)に同軸に連結固定されたねじ回し工具78(固定用ねじのねじ頭部に嵌合する凹所を有するソケット状の工具)を回転させる。また、ねじ操作回転軸部74は固定用ねじを緩める際に固定用ねじが軸方向へ移動する距離分を吸収できるようにガイド管72に対し回転軸AX2に沿った方向に移動できるように配置されている。検出ロッド76は、ねじ操作回転軸部74に対し回転軸AX2に沿った方向に移動可能に配置されている。すなわち、検出ロッド76は自重で下動してねじ回し工具78の凹所の所定位置まで進出し、ねじ回し工具78に嵌合する固定用ねじのねじ頭部の頂面に押されて上動して戻されてねじ回し工具78の凹所から押し出される。
【0027】
図1Aにおいて、補強フレームトップ65の底板65bには補強フレーム63が連結固定されている。補強フレーム63は長手方向の複数の補強フレーム分割部分63-1乃至63-4に分割された構成を有し、ねじ・ナットで相互に連結・分解可能に構成されている。これに合わせて同軸集合部材61の、軸部60Bに存在する部分も長手方向の複数の同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4に分割された構成を有し、相互に連結・分解可能に構成されている。これにより、同軸集合部材61および補強フレーム63の現場への運搬と現場での組立てを容易にしている。なお、同軸集合部材61は基部60Aに存在する同軸集合部材分割部分61-0およびヘッド部60Cに存在する同軸集合部材分割部分61-5も有する。同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5は、ねじ操作回転軸部74どうしが例えばカプラ(プラグとソケットの嵌合で着脱自在に連結される連結金具)で相互に連結され(相互に回転不能に連結する)、ガイド管72どうしが例えばへルール継手(ガイド管72の端部のヘルールどうしを、間にヘルールガスケットを挟んでクランプバンドで締め付けて連結する継手)で連結される。カプラとへルール継手を使用することにより、現場での同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5どうしの連結が容易になる。なお、同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5の検出ロッド76どうしは連結されず、単に端面どうしを自重で突き合わせて配置される。
【0028】
各補強フレーム分割部分63-1乃至63-4は型棒材を四角柱状に組んだ構成を有する。各補強フレーム分割部分63-1乃至63-4の長手方向の途中位置には同軸集合部材支持プレート80が取り付けられている。同軸集合部材支持プレート80の正面構成を図1D図1AのB-B矢視位置の断面図)に示す。同軸集合部材支持プレート80は長方形状の2枚のプレート80-1,80-2を有し、プレート80-1,80-2の一辺どうしを相互に突き合わせて補強フレーム分割部分63-1乃至63-4にねじ止めすることで補強フレーム分割部分63-1乃至63-4に取り付けられる。同軸集合部材支持プレート80の中央部には丸穴80aが開設されている。丸穴80aには同軸集合部材61が旋回可能に挿通される。これにより、同軸集合部材61は補強フレーム63の軸に直交する方向の中央位置(補強フレーム63の中心軸上)に旋回可能に支持される。なお、同軸集合部材支持プレート80の丸穴80aの周方向の一部に、丸穴80aに繋がって形成された切欠き80bは、基部60Aとヘッド部60Cを繋ぐ信号ケーブル(後述するテレビカメラ84の映像信号、近接スイッチ175の検出信号等)やエアーホース(後述するエアーシリンダ171にエアーを供給するホース)を必要に応じて通すためのものである。なお、これら信号ケーブルやエアーホースは、切欠き80bに通すのに代えて、補強フレーム63にロックタイ(結束バンド)等で縛り付けて固定することもできる。また、補強フレーム63の長手方向の途中位置の側面に取り付けられた吊環88は、チャンネルファスナ取扱装置60を現場で横置きに組み立てた後に、チャンネルファスナ取扱装置60の頂部の吊環62にフック58aを掛けて、チャンネルファスナ取扱装置60をホイスト54で徐々に立ち上げながら吊り上げて燃料プール44に投入していく際に、この側面の吊環88にチェーンブロックを掛けてチャンネルファスナ取扱装置60の自重の一部を支持するために用意されたものである。
【0029】
図1Aにおいて、ヘッド部60Cには、同軸集合部材61の下端部に、ねじ回し工具78、ガイド板82(2枚)(係合部)、テレビカメラ84(水中カメラ、2台)等が配置されている。ねじ回し工具78はねじ操作回転軸部74の下端部に同軸に連結固定されている。2枚のガイド板82はガイド管72の下端部に、旋回軸AX1の軸方向から見て相互に直角に配置された姿勢で連結固定されている。各テレビカメラ84は各対応するガイド板82の斜め上方位置の、各対応するガイド板82およびその周辺を撮影できる位置に配置され、ブラケット状のマウント86を介してガイド管72に取り付けられている。後述するように、ガイド板82はねじ回し工具78を固定用ねじ213(図12A)の直上に位置決めするためのガイド(案内部材)としての機能を有する。また、ガイド板82は、燃料集合体47と燃料ラック45の間の隙間208に挿入された後は(図12B図12C)、チャンネルファスナ取扱装置60の下部を燃料集合体47の上部または燃料ラック45の上部に安定に支持した状態で作業を行えるようにするための支持部材としての機能を有する。
【0030】
《チャンネルファスナ取扱装置の各部の説明》
◎旋回装置68:
旋回装置68の構成を図3A図3Cに示す。図3Aは概要構成を示し、図3B図3Cは詳細構成を示す。図3Aにおいて、旋回装置68は補強フレームトップ65の天板65a(図1A)に固定される固定部90(構造部)を有する。ホイスト54のフック58a(図2)が掛けられる吊環62は固定部90の上面の中央に固定される。固定部90の下面には従動平歯車92がその回転軸を固定部90の中心軸(旋回軸AX1)に配置した姿勢で回転自在に支持されている。従動平歯車92の下面には、その回転軸上に旋回軸棒94が連結されている。旋回軸棒94の下端部には連結ブロック96が連結固定されている。連結ブロック96の下方に開口したスリット96aには後述する旋回部70のハンガー106の横板材106c(図4A)が差し込まれる。連結ブロック96のスリット96aを挟んで両側面間を貫通して形成された円形のキー穴96bおよび横板材106cのキー穴106d(図4A)には丸棒キー97が差し込まれる。これにより旋回装置68に旋回部70が連結される。
【0031】
図3Bにおいて、旋回装置68の固定部90の下面には旋回モータ69が固定されている。旋回モータ69にはここではギヤードモータが使われている。旋回モータ69の出力軸には駆動平歯車98が取り付けられている。駆動平歯車98は従動平歯車92に噛み合っている。これにより、旋回モータ69を駆動すると従動平歯車92を介して連結ブロック96が旋回軸AX1の軸回り方向に旋回する。この旋回範囲は2個のリミットスイッチ100により±60度に規制されている(図3C参照)。旋回範囲を規制しているのは、チャンネルファスナの取外し作業時において、チャンネルファスナ取扱装置60は全体として自由に旋回できないようにホイスト54に吊り下げられている(図2の状態)ためである。すなわち、燃料集合体47に対するチャンネルファスナ取扱装置60の位置決め時に、旋回角度を当初0度に設定しておけば燃料集合体47に対する2枚のガイド板82(図1A)の旋回方向の大まかな位置が定まるため、ガイド板82を限られた範囲で旋回できるようにしておけば(微調整できるようにしておけば)ガイド板82を燃料集合体47の上部の所定位置(燃料集合体47と燃料ラック45の間の隙間のコーナー部)に係合させることができる。
【0032】
◎旋回部70:
旋回部70の構成を図4A図4Dに示す。図4Aは概要構成を示し、図4B図4C図4Dは詳細構成を示す。図4Aにおいて、旋回部70の固定部102(構造部)はコモンベース104にハンガー106を取り付けた構造を有する。ハンガー106は、コモンベース104に固定された左右の縦板材106a、106bと、これら縦板材106a,106bの上部どうしの間に掛け渡されて固定された横板材106cを有する。横板材106cの長手方向の中央部の旋回軸AX1を通る位置には円形のキー穴106dが形成されている。横板材106cを旋回装置68(図3A)の連結ブロック96のスリット96aに差し込み、丸棒キー97をキー穴96bおよびキー穴106dを貫通して差し込むことにより旋回部70は旋回装置68に連結される。これにより、旋回部70は旋回装置68に駆動されて旋回軸AX1の回り方向に±60度の旋回角度範囲で旋回とされている。
【0033】
図4Bにおいて、ガイド管72は旋回軸AX1と同軸に配置されている。ガイド管72の上部はコモンベース104の中央部を貫通して、該貫通位置でコモンベース104に固定されている。ガイド管72にはねじ操作回転軸部74が軸周り方向に回転可能かつ軸に沿った方向に移動可能に挿通支持されている。ねじ操作回転軸部74の軸周り方向の回転によりチャンネルファスナ211(図10A図10B)の固定用ねじ213を回転する。固定用ねじ213を回転するのに伴い必然的に生じる固定用ねじの軸方向の移動は、旋回部70の固定部102に対するねじ操作回転軸部74の、回転軸AX2に沿った方向の移動により吸収される。ねじ操作回転軸部74の頂部には従動平歯車111がねじ操作回転軸部74と同軸に連結固定されている。ねじ操作回転軸部74の中心軸上に形成された空洞147には検出ロッド76が該中心軸に沿った方向に移動可能に挿通支持されている。検出ロッド76の上部は従動平歯車111を貫通し、その頂部にはセンサドグ113(図4A参照)が固定されている。コモンベース104には2対のファイバーセンサ115,117(図4A参照)が上下2段にわたり固定配置されている。すなわち、コモンベース104の上面にはセンサベース119が固定され(図4B図4D)、センサベース119には高いセンサマウント121と低いセンサマウント123(図4D)が固定されている。高いセンサマウント121と低いセンサマウント123にはファイバーセンサ115,117(図4A)がそれぞれ搭載されている。ファイバーセンサ115,117はセンサドグ113を挟んで発光部と受光部を対向させてそれぞれ配置されている。センサドグ113の上下方向の途中位置にはスリット113aが形成されている。ファイバーセンサ115,117の光路はセンサドグ113で遮断されるが、検出ロッド76の上下方向の移動に伴い検出ロッド76が上下方向に移動すると、スリット113がファイバーセンサ115,117に対面する上下2段の位置でファイバーセンサ115,117の光路がそれぞれ透過する。チャンネルファスナの取り外し作業において、ファイバーセンサ115,117の光路の遮断・透過を検出することにより、ねじ回し工具78が固定用ねじ213のねじ頭部213aに嵌合したことおよび燃料集合体47から固定用ねじが外れたことを検出する。この検出動作については後述する(図13)。
【0034】
図4Bにおいて、コモンベース104の上面には旋回軸AX1を挟んで対称の位置に2台のバランスシリンダ108が固定されている。バランスシリンダ108は、チャンネルファスナの取外し作業時に固定用ねじ213に掛かるねじ操作回転軸部74の自重をキャンセルして、ねじ回し工具78による固定用ねじ213の回転を軽い力で行うことができるようにするものである。バランスシリンダ108はここではダイヤフラムシリンダで構成されている。従動平歯車111の下にはスラスト軸受125が同軸に配置されている。スラスト軸受125の上側の軌道盤は従動平歯車111の下面に連結されている。スラスト軸受125の下側の軌道盤はバランスシリンダ108のピストンロッド108aの先端に連結されている。これにより、従動平歯車111はバランスシリンダ108のピストンロッド108aの伸縮に応じて昇降可能にかつ旋回軸AX1の周り方向に旋回可能にバランスシリンダ108の上に支持される。従動平歯車111とねじ操作回転軸部74は相互に連結されているので、従動平歯車111の動作はそのままねじ操作回転軸部74に伝達され、従動平歯車111の昇降および回転に連動してねじ操作回転軸部74は昇降および回転する。
【0035】
図4A図4Bにおいて、コモンベース104の上面にはモータスタンド127が立設固定されている。モータスタンド127にはねじ回転モータ71が搭載されている。ねじ回転モータ71にはここではトルク制御サーボモータが使われている。ねじ回転モータ71の出力軸にはカップリング129を介して駆動平歯車131が連結されている。駆動平歯車131は従動平歯車111に噛み合っている。これにより、ねじ回転モータ71を駆動すると従動平歯車111に同軸に連結されたねじ操作回転軸部74が回転し、ねじ操作回転軸部74の下端部に同軸に連結されたねじ回し工具78が回転して、ねじ回し工具78に嵌合した固定用ねじ213が回転する。従動平歯車111の昇降位置にかかわらず駆動平歯車131と従動平歯車111の噛み合いが維持されるように、駆動平歯車131は軸方向の長さが従動平歯車111の軸方向の長さよりも長く形成されている(図4A図4D参照)。
【0036】
図4Bにおいて、コモンベース104には端子ボックス101、電磁弁103等が搭載されている。ハンガー106には減圧弁105(レギュレータ)、精密減圧弁200(精密レギュレータ)、積層信号灯(警告灯)107等が搭載されている。減圧弁105は後述するエアーシリンダ171に供給するエアーの圧力を調整するもの、電磁弁103は同エアーシリンダの駆動方向(伸長方向、短縮方向)を切り換えるためのものである。精密減圧弁200はバランスシリンダ108に供給するエアーの圧力を精密に調整して、固定用ねじ213に掛かるねじ操作回転軸部74の重量をキャンセルするものである。
【0037】
◎同軸集合部材61:
同軸集合部材61の、軸部60Bに存在する同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4の1つの構成を図5Aに示す。同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4は、外側から順にガイド管72、ねじ操作回転軸部74、検出ロッド76を同軸に配置した構成を有する。ガイド管72の軸方向の両端にはヘルール132が形成されている。軸方向に隣接するガイド管72はガスケットを挟んでヘルール132どうしを突き合わせ、クランプバンド134で締め付けることにより連結される。ガイド管72の内部空間72aの軸方向の両端部付近には、滑り軸受133が、滑り軸受押さえ135,137で移動不能に保持されている。ガイド管72の内部空間72aにはねじ操作回転軸部74が軸方向の両端部付近を滑り軸受133でそれぞれ摺動自在に支持された状態でガイド管72と同軸に挿通されている。ねじ操作回転軸部74は滑り軸受133での摺動により、ガイド管72に対し軸回り方向に回転可能でかつ軸に沿った方向に移動可能である。
【0038】
ねじ操作回転軸部74は、丸パイプ状の軸部本体74aと、軸部本体74aの両端部にそれぞれ溶接された丸棒部材74b,74cと、上側の丸棒部材74bの端部に連結されたカプラ139のソケット139a(雌部材)と、下側の丸棒部材74cの端部に連結されたカプラ139のプラグ139b(雄部材)を有する。カプラ139はここでは流体用カプラを流用している。軸方向に隣接する同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4どうしは、ソケット139aとプラグ139bの嵌合により、ワンタッチで連結・取外しをすることができる。ソケット139aとプラグ139bが嵌合した状態では、ソケット139aとプラグ139bの嵌合部にそれぞれ形成された同一径の半割丸パイプ形回り止め片143a(片側半円分)、143b(他側半円分)どうしの嵌合により、ソケット139aとプラグ139bは相互に回転できないようにされている。これにより、同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4は、カプラ139で連結された状態では、相互に回転不能に一体化され、ねじ回転モータ71の回転を同軸集合部材61の下端部のねじ回し工具78に確実に伝達できるようにされている。上側の丸棒部材74bの上部外周面には周方向の溝が形成され、この溝に抜け止めリング141が嵌め込み固定されている。抜け止めリング141は丸棒部材74bの大径部を形成し、同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4を連結前または分解後に単独で(非連結状態で)取り扱う際に、同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4を立てたときに抜け止めリング141が滑り軸受押さえ135に係止されてねじ操作回転軸部74がガイド管72から抜け落ちないようにする働きをする。
【0039】
丸棒部材74b,74cの中心軸上には丸穴145,146がそれぞれ形成されている。これにより、ねじ操作回転軸部74には、両端部間に連通する空洞147が形成されている。空洞147には検出ロッド76が挿通される。丸穴145,146の軸方向の途中位置には小径部145a,146aがそれぞれ形成され、検出ロッド76は小径部145a,146aで径方向に緩く支持される。これにより、検出ロッド76はねじ操作回転軸部74に対し軸に沿った方向に移動可能にかつ径方向に大きながたつきなく支持される。検出ロッド76の上端部には大径部76aが形成されている。大径部76aは、同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4を連結前または分解後に単独で(非連結状態で)取り扱う際に、同軸集合部材分割部分61-1乃至61-4を立てたときに大径部76aが小径部145aに係止されて検出ロッド76がねじ操作回転軸部74から抜け落ちないようにする働きをする。同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5の検出ロッド76はその自重により端部どうしで当接し、全検出ロッド76が一体となってねじ操作回転軸部74に対し昇降する。
【0040】
図5Bは同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5どうしの連結構造を連結前の状態で示す。ここでは同軸集合部材分割部分61-1,61-2どうしの連結構造を示すが他の同軸集合部材分割部分どうしの連結構造も同じである。軸方向に隣接するねじ操作回転軸部74,74はカプラ139のソケット139aとプラグ139bを嵌合させることによりワンタッチで相互に連結される。この連結後に、軸方向に隣接するガイド管72,72はガスケット149を間に挟んでヘルール132どうしを突き合わせ、クランプバンド134で締め付けることにより相互に連結される。
【0041】
◎ヘッド部60C:
ヘッド部60Cの構成を図6A図6Hに示す。図6A図6Bは概要構成を示し、図6C図6Hは詳細構成を示す。なお、図6A図6Hにおいては便宜的に近接スイッチ175の位置を適宜回転軸AX1の周り方向に回転した位置に示している場合がある。図6Aはアンロック状態(ねじ回し工具にねじ頭部が嵌合する前の状態、またはねじ回し工具にねじ頭部が嵌合した後該嵌合をロックする前の状態、ねじ頭部は図示せず)を示す。図6Bはロック状態(ねじ回し工具にねじ頭部が嵌合しかつ該嵌合をロックした状態、ねじ頭部は図示せず)を示す。図6Aにおいて、ガイド管72の下端部には2枚のガイド板82が垂下状態に固定配置されている。ガイド板82は例えばステンレス等による平板四角形状金属板で構成されている。ガイド板82の面は旋回軸AX1を外れた位置で旋回軸AX1に平行に配置されている。ガイド板82の上端部はブラケット状の吊り板151(支持板)を介してガイド管72の側面に固定されている。ガイド板82の下端部は自由端とされている。2枚のガイド板82どうしは旋回軸AX1の軸方向から見て面どうしが直交する姿勢で配置されている。これにより、2枚のガイド板82は燃料集合体と燃料ラックの間の隙間のコーナー部に上方から差し込むことができる(図6C図6Gの状態)。ガイド管72の側面には2台のテレビカメラ84が固定配置されている。すなわち、各テレビカメラ84は各対面する側のガイド板82の斜め上方位置の、ガイド板82およびその周辺を撮影できる位置に配置され、ブラケット状のマウント86を介してガイド管72に取り付けられている。テレビカメラ84は、ガイド板82を燃料集合体と燃料ラックの間の隙間のコーナー部に上方から差し込む作業を、ガイド板82と該隙間の位置関係を作業用モニタの映像で確認しながら行うのに利用される。また、該隙間に差し込んだ後は、ねじ回し作業を安定に行えるように、チャンネルファスナ取扱装置60の下部を燃料集合体の上部に支持するのに利用される。
【0042】
図6Hにおいて、ねじ操作回転軸部74の下端部にはねじ回し工具78がねじ操作回転軸部74と同軸に固定配置されている。ねじ回し工具78はねじ操作回転軸部74の下端の開口端部74dから外部空間(下方空間)に臨んで配置されている。ねじ回し工具78には下向きに開口する凹所77(ソケット)が形成されている。凹所77は奥側空間77aと入口側空間77bを有する。奥側空間77aにはチャンネルファスナ211(図10A図10B)の固定用ねじ213のねじ頭部213aが収容される。奥側空間77aの周壁面には縦方向に延在する嵌合突起78e(縦突起)が全周で6箇所等間隔に形成されている。嵌合突起78eは固定用ねじ213のねじ頭部213aの外壁面に形成された嵌合溝213d(縦溝、図10A図10B)に嵌合する。これにより、ねじ回し工具78で固定用ねじ213を回転することができる。入口側空間77bの側壁面にはロックボール79(ロック部材、図12A図12C)を収容する穴78bが周方向の複数箇所(3~4箇所)に等角度間隔で形成されている。ロックボール79は固定用ねじ213のロック溝213b(図10A図10B)に嵌合してねじ回し工具78とねじ頭部213aとの嵌合状態をロックする働きをする。
【0043】
図6Hにおいて、ねじ操作回転軸部74の開口端部74dの外周にはスリーブ153がねじ操作回転軸部74の軸方向に移動可能に外装されている。スリーブ153の上方位置でねじ操作回転軸部74の外周面には周方向の溝が形成され、この溝に係止リング154が嵌め込み固定されている。係止リング154はスリーブ153の上方への移動動作に対するストッパの働きをする。スリーブ153はその下端部でロックボール79を操作して前記アンロック状態と前記ロック状態の切り換えを行う(図12B図12C参照)。ガイド管72の下端の開口端部には軸受メタル155がガイド管72と同軸に配置され固定されている。スリーブ153は軸受メタル155に差し込まれて軸方向に摺動自在に軸受メタル155に支持されている。
【0044】
図6Aにおいて、ガイド管72の下部外周側にはスリーブ駆動装置157が装着されている。スリーブ駆動装置157はガイド管72に対しスリーブ153を軸方向に駆動して、スリーブ153をアンロック位置(上動位置)とロック位置(下動位置)に移動させる働きをする。スリーブ駆動装置157の作用部(係合棒169a,170a)が作用する箇所として、スリーブ153の上端部外周面にはレール153aが全周に延在して形成されている。スリーブ153よりも少し上の位置のねじ操作回転軸部74の外周面にはレール74eが全周に延在して形成されている。スリーブ駆動装置157の係合棒169a,170aの先端のガイドローラ169b,170bをレール153a、レール74eにそれぞれ係合させて係合棒169a,170aをガイド管72に対し昇降可能にするために、ガイド管72には係合棒169a,170aをガイド管72の内部空間72aに進入させる上下方向に長い長穴159,161が形成されている。
【0045】
スリーブ駆動装置157の構成を説明する。図6Aにおいて、スリーブ駆動装置157は平面形状がそれぞれ八角形の上下2段の環状部材169,170を有する。環状部材169,170はガイド管72を非接触に包囲してそれぞれ配置される(図6E図6F参照)。環状部材169はねじ操作回転軸部74と一体に上下動し、環状部材170はスリーブ153と一体に上下動する。環状部材169,170の支持構造を説明する。ガイド管72のフランジ163には、回転軸AX2を挟んで対角の位置に中空の2本のガイドポスト165が垂下状態に固定配置されている。ガイドポスト165の中空の内部には滑り軸受を介してガイドシャフト167が昇降自在に収容されている。
【0046】
ガイドシャフト167の下端部には環状部材169が連結されている。環状部材169の内周面には、回転軸AX2を挟んで対角の位置に2本の係合棒169aが互いに対向する向き(回転軸AX2に直交する向き)に突出して固定されている。係合棒169aの先端にはガイドローラー169bが係合棒169aの軸回り方向に回転自在に取り付けられている。ガイドローラー169bはガイド管72の長穴159に差し込まれてねじ操作回転軸部74のレール74eの内周側空間に緩く係合し、該内周側空間の底面または天井面に当接して、ねじ操作回転軸部74の中心軸AX2の周り方向の回転に従動して回転する。ガイド管72に対しねじ操作回転軸部74が昇降すると、レール74eに係合している係合棒169aを介して環状部材169も一緒に昇降する。
【0047】
環状部材169の下面には2本のガイドシャフト167の延長線上に2個のエアーシリンダ171が取り付けられている。エアーシリンダ171のピストンロッド171aの下端部には環状部材170が連結されている。環状部材170の内周面には、回転軸AX2を挟んで対角の位置に2本の係合棒170aが互いに対向する向き(回転軸AX2に直交する向き)に突出して固定されている。係合棒170aの先端にはガイドローラー170bが係合棒170aの軸回り方向に回転自在に取り付けられている。ガイドローラー170bはガイド管72の長穴161に差し込まれてスリーブ153のレール153aの内周側空間に緩く係合し、該内周側空間の底面または天井面に当接して、ねじ操作回転軸部74の中心軸AX2の周り方向の回転に伴うスリーブ153の同方向の回転に従動して回転する。エアーシリンダ171が伸縮すると、上側の環状部材169に対し環状部材170が昇降する。環状部材170が昇降すると、レール153aに係合している係合棒170aを介してスリーブ153も一緒に昇降する。
【0048】
エアーシリンダ171が短縮された状態(図6Aの状態)では、スリーブ153はねじ操作回転軸部74に対し上方に移動したアンロック位置に配置される。エアーシリンダ171が伸長された状態(図6Bの状態)では、スリーブ153はねじ操作回転軸部74に対し下方に移動したロック位置に配置される。また、スリーブ153がロック位置にある状態でねじ操作回転軸部74を回転させて固定用ねじ213を緩めていくと、固定用ねじ213の上昇に伴いねじ操作回転軸部74がガイド管72に対し上昇する。このとき、スリーブ153はロック位置にあるまま(エアーシリンダ171が伸長したまま)、環状部材169および環状部材170は一体となってねじ操作回転軸部74と一緒に上昇する。このときの環状部材169および環状部材170の上昇はガイドポスト165に対するガイドシャフト167の上昇で吸収される。
【0049】
図6Aにおいて、スリーブ駆動装置157には、スリーブ153がロック位置またはアンロック位置にある状態を検知するロック・アンロック検知装置173が配置されている。ロック・アンロック検知装置173は近接スイッチ175とセンサドグ177を有する。近接スイッチ175は環状部材169にセンサマウント174を介して取り付けられている。センサドグ177は長板状の金属片で構成される。センサドグ177の一端部(基端部)は環状部材169に固定された水平方向に延びるピン179に回転自在に支持されている。センサドグ177の他端部(自由端部)はセンサマウント174に形成された縦方向に延在する長穴174aに昇降自在に差し込まれている。センサドグ177の他端部は上方向に回転した位置で近接スイッチ175のセンシング面に対面する(図6B)。センサドグ177のピン179よりもさらに一端側寄りの位置には長穴177aが形成されている。長穴177aには環状部材170に取り付けられたピン181が長穴177aに沿って移動自在に差し込まれている。以上の構成により、エアーシリンダ171が短縮した位置(環状部材169と環状部材170の間が狭まった位置)ではセンサドグ177は下方に回動して近接スイッチ175のセンシング面から離れ(図6A)、アンロック状態が検知される。また、エアーシリンダ171が伸長した位置(環状部材169と環状部材170の間が拡がった位置)ではセンサドグ177は上方に回動して近接スイッチ175のセンシング面に対面し(図6B)、ロック状態が検知される。
【0050】
《チャンネルファスナ取扱装置の組立て手順の説明》
以上説明したチャンネルファスナ取扱装置60の組立て手順を説明する。組立て作業はチャンネルファスナ取扱装置60を使用する現場において行われる。
◎工程(1):補強フレームトップ65と旋回装置68の組付け(図7A
図7Aに示すように、補強フレームトップ65の天板65aに旋回装置68の固定部90をねじ止めすることにより、補強フレームトップ65に旋回装置68を取り付ける。
【0051】
◎工程(2):旋回部70の底部への旋回ガイド板の取り付け(図7B
補強フレームトップ65の4本のパイプ65cで包囲された内部空間65e(図7A(b))で旋回部70が円滑に旋回できるように、図7Bに示すように、旋回部70の底部に2枚の旋回ガイド板183をねじ止めする。2枚の旋回ガイド板183は直径が補強フレームトップ65の旋回ガイド筒65d(図7A(b))の内径よりも僅かに小さい金属円板を、図7B(a)に示すように旋回軸AX1と同軸に配置し、互いに平行で同一長さの2本の弦で3つの部分にカットし、その中央部分を取り除いた残りの2枚の部分として構成され配置される。中央部分を取り除いた箇所に残された空間には同軸集合部材61(61-0)が通される。
【0052】
◎工程(3):旋回装置68に旋回部70を組み付けて基部60Aを完成(図7C
図7Cに示すように、工程(1)で組み立てた旋回装置68に工程(2)で組み立てた旋回部70を取り付ける。この取り付けは、旋回部70を下方に突出する同軸集合部材61(61-0)を除けて嵩上げ台185に載せて、旋回装置68が取り付けられた補強フレームトップ65を上から旋回部70に被せ、旋回軸棒94の連結ブロック96に旋回部70のハンガー106を連結する。すなわち、ハンガー106の横板材106cを連結ブロック96のスリット96a(図3A)に差し込み、丸棒キー97(図3A)をキー穴96bおよびキー穴106dを貫通して差し込むことにより旋回部70は旋回装置68に連結される。これでチャンネルファスナ取扱装置60の基部60Aが完成する。
【0053】
◎工程(4):基部60Aに軸部60Bとヘッド部60Cを連結して全体を完成(図7D
図7Dに示すように、同軸集合部材分割部分61-0乃至61-5を連結しながら、補強フレームトップ65および補強フレーム分割部分63-1乃至63-4を連結する。これにより、基部60Aと軸部60Bとヘッド部60Cが連結されてチャンネルファスナ取扱装置60の組立てが完了する。工程(4)はチャンネルファスナ取扱装置60の各部を床上に横置き状態で行う。組立てが完了したら、ホイスト54(図2)のフック58aを基部60Aの頂部の吊環62に掛け、別途用意したチェーンブロックを補強フレーム63-3の側面の吊環88に掛けて、チャンネルファスナ取扱装置60全体をホイスト54とチェーンブロックで徐々に立ち上げながら吊り上げて燃料プール44(図2)に投入していく。燃料プール44への投入が完了したら、チャンネルファスナの取外し作業に移行する。
【0054】
《チャンネルファスナの取外し作業の制御系統の説明》
チャンネルファスナ取扱装置60を用いたチャンネルファスナの取外し作業の制御系統(図2のシステム構成全体の制御系統)の概要を図8に示す。タッチパネル操作盤187は操作室に配置されて作業者により操作される。タッチパネル操作盤187としては例えば三菱電機製GOT(グラフィックオペレーションターミナル、登録商標)を使用することができる。タッチパネル操作盤187には制御盤64(図2)、作業用モニタ189、データロガー190等が接続される。作業用モニタ189にはチャンネルファスナ取扱装置60のヘッド部60Cに配置されたテレビカメラ84の映像が表示される。作業者はこの映像を見て遠隔操作を行う。データロガー190には作業時の各種データが記録される。操作室にはタッチパネル操作盤187に隣接してクレーン操作盤180、ホイスト操作盤182も配置されている。作業者はクレーン操作盤180およびホイスト操作盤182によりクレーン走行部48およびホイスト54(図2)をそれぞれ遠隔操作する。作業者はクレーン走行部48およびホイスト54の動作を、原子炉建屋40内の適宜の箇所に配置されたテレビカメラで撮影されクレーン操作盤180およびホイスト操作盤182の近くに配置されたテレビモニタに表示される映像で確認することができる。
【0055】
制御盤64には電源装置195、エアーコンプレッサ197が接続されている。制御盤64には、旋回装置68の旋回範囲を規定する2台のリミットスイッチ100の検出信号、固定用ねじ213にねじ回し工具78が嵌合したことおよび燃料集合体47から固定用ねじ213が外れたことを検出するファイバーセンサ115,117の検出信号、ねじ回転モータ71を構成するトルク制御サーボモータのトルク検出信号、スリーブ153のアンロック位置・ロック位置を検出する近接スイッチ175の検出信号、ガイド板82を燃料集合体と燃料ラックの間の隙間のコーナー部に上方から差し込む際にガイド板82と該隙間の位置関係を確認するためのテレビカメラ84の映像信号等が入力される。制御盤64からは、旋回モータ69の駆動電力、ねじ回転モータ71の駆動電力、スリーブ153をアンロック位置・ロック位置に駆動するエアーシリンダ171およびバランスシリンダ108の駆動エアー等が出力される。エアーシリンダ171の駆動エアーは減圧弁105(レギュレータ)および電磁弁103(エアー方向切換電磁弁)を介してエアーシリンダ171に供給される。バランスシリンダ108の駆動エアーは精密減圧弁200(精密レギュレータ)を介してバランスシリンダ108に供給される。制御盤64にはチャンネルファスナ取扱装置60の各部を制御する制御装置199が搭載されている。
【0056】
《チャンネルファスナの取外し作業の説明》
チャンネルファスナ取扱装置60によるチャンネルファスナの取外し作業を説明する。はじめに燃料ラックと燃料集合体の上部構造並びにチャンネルファスナの構成を説明する。図9A図9Bは燃料ラック45と燃料集合体47の上部構造を示す。ただし、ここでは、取外し作業のテストで使用した模擬燃料ラックと模擬燃料集合体を示している。燃料ラック45の1つの貯蔵空間45aには燃料集合体47が収容されている。燃料集合体47の頂部にはハンドル47aが取り付けられている。燃料集合体47の外殻を構成するチャンネルボックス47bの上端部のコーナー部にはチャンネルファスナ211が固定用ねじ213で取り付けられている。これにより、燃料集合体47は燃料ラック45の貯蔵空間45aの内壁面にチャンネルファスナ211の板ばね217を介して支持されている。この状態で燃料集合体47と燃料ラック45との間には2辺で隙間208が形成されている。チャンネルファスナの取外し作業において、チャンネルファスナ取扱装置60の下端部の2枚のガイド板82はこの2辺の隙間208にそれぞれ挿入される。
【0057】
チャンネルファスナ211の構成を図10に示す。チャンネルファスナ211は周知のように、ガード215に板ばね217を固定用ねじ213で組み付けた構成を有する。固定用ねじ213を燃料集合体47(図9A図9B)のチャンネルボックス47bの上部の三角コーナー板のねじ通し穴を通して燃料集合体47の上部タイプレートにねじ込むことにより、チャンネルファスナ211は、チャンネルボックス47bと燃料集合体47とを固定する。固定用ねじ213を緩めることによりチャンネルファスナ211はチャンネルボックス47bと燃料集合体47から取り外される。すなわち、固定用ねじ213を掴んで引き上げると、チャンネルファスナ211全体が一緒に引き上げられる。固定用ねじ213は上から順にねじ頭部213a、ロック溝213b、ねじ軸部213cを有する。ねじ頭部213aの外周面には工具(チャンネルファスナ取扱装置60のねじ回し工具78、図6H参照)の嵌合突起78eが嵌合する嵌合溝213d(縦溝)が全周で6箇所に等間隔で形成されている。ロック溝213bにはねじ回し工具78に配置されたロックボール(図12A図12C)が出入り自在に嵌合する。ねじ軸部213cにはチャンネルボックス47bのねじ穴にねじ込まれるねじ溝が形成されている。図10Aからわかるように、ねじ軸部213cはねじ溝が形成された箇所がその上側の小径の箇所に比べて大径に形成されている。したがって、チャンネルファスナ211単体について、固定用ねじ213を掴んで引き上げると、ガード215はこの小径箇所と大径箇所の段部にガード215が引っかかって固定用ねじ213から脱落しないため、チャンネルファスナ211全体が一緒に引き上げられる。
【0058】
この発明によるチャンネルファスナ取扱装置60を有する図2図8の配置およびシステム構成を用いて図9A図9Bに示す配置からチャンネルファスナ211を取り外す一連の作業の一例を図11を参照して説明する。はじめに図7A図7Dの手順に従ってチャンネルファスナ取扱装置60を横置きに組み立てる(S1)。チャンネルファスナ取扱装置60と制御盤64との間でエアー配管および電気配線を接続する(S2)。制御盤64にタッチパネル操作盤187、作業用モニタ189、タッチパネル操作盤187等を接続する(S3)。ホイスト54を操作してチャンネルファスナ取扱装置60を縦に起こす(S4)。クレーン走行部48およびホイスト54を移動させて操作対象の燃料集合体47の直ぐ上にホイスト54を位置決めした後、ホイスト54を操作してチャンネルファスナ取扱装置60を下降させる(S5)。作業用モニタ189に表示されるテレビカメラ84の映像により、燃料ラック45およびチャンネルファスナ211の位置を確認する(S6)。旋回モータ69を操作してガイド管72を旋回させる(S7)。ガイド管72の下端部の2枚のガイド板82が燃料集合体47と燃料ラック45との間の2辺の隙間208(図9B)に差し込める旋回位置に達したことを作業用モニタ189の映像で確認したら、旋回モータ69を停止させて、ガイド板82をその位置に位置決めする(S8)。このときの状態を図12Aに示す。エアーシリンダ171は短縮駆動されており、スリーブ153は係止リング154で係止されたアンロック位置にある。
【0059】
この状態からホイスト54を操作してチャンネルファスナ取扱装置60を下降させる。2枚のガイド板82が2辺の隙間208に入ったことを作業用モニタ189の映像で確認したら、ホイスト54を止めてチャンネルファスナ取扱装置60の下降を一旦停止させる(S9)。このとき、ねじ操作回転軸部74の下端部のねじ回し工具78はまだ固定用ねじ213に達していない。ねじ回転モータ71(トルク制御サーボモータ)のトルクおよび回転数を低い値に設定する(S10)。ねじ回転モータ71を設定された低トルクおよび低回転数で固定用ねじ213を緩める方向に起動するとともに(S11)、ホイスト54を徐々に下降させる(S12)。すると固定用ねじ213のねじ頭部213aの頂面に検出ロッド76の下端面76bが当接し、検出ロッド76を押し上げながらねじ頭部213aがねじ回し工具78の凹所77に進入してくる。そして固定用ねじ213の嵌合溝213dとねじ回し工具78の嵌合突起78eが一致する回転位置で固定用ねじ213のねじ頭部213aがねじ回し工具78の凹所77の奥側空間77aに嵌まり始める。このときガイド板82が反力方向に一瞬動くことが作業用モニタ189で確認できるので、作業者はその動きを見てねじ回転モータ71を一旦停止させる。この状態からホイスト54を微動下げ操作してチャンネルファスナ取扱装置60を僅かずつ下降させる。その下降に伴い、ねじ頭部213aがねじ回し工具78の凹所77の奥側空間77aに深く入り込んでいく。これに伴い、検出ロッド76はさらに押し上げられていく。ねじ頭部213aがねじ回し工具78の凹所77の奥側空間77aに十分に嵌まったことが検出ロッド76を介して旋回部70のファイバーセンサ115,117(図4A)で検知されると、タッチパネル操作盤187の着座確認ランプが点灯される。着座確認ランプが点灯したら、作業者はホイスト54の微動下げ操作を停止する(S13)。これでねじ回し工具78が固定用ねじ213のねじ頭部213aに嵌合した着座状態となり(図12Bの状態)、ねじ回し工具78で固定用ねじ213を回転できる状態となる。エアーシリンダ171は引き続き短縮駆動されており、スリーブ153は係止リング154で係止されたアンロック位置にある。
【0060】
着座確認ランプが点灯するとタッチパネル操作盤187に着座確認ボタンが表示される。作業者がそれに応答して該着座確認ボタンをオン操作すると(S14)、タッチパネル操作盤187にロック作動ボタンが表示される。作業者がそれに応答してロック作動ボタンをオン操作すると、エアーシリンダ171が伸長駆動される。その結果、スリーブ153は係止リング154を離れて下動しロックボール79に当接してロックボール79を内周側に移動させる。その結果、ロックボール79は固定用ねじ213のロック溝213bに嵌合してロック状態(ねじ回し工具78とねじ頭部213aとの嵌合が外れない状態)となる(S15)(図12Cの状態)。図14の写真はこのロック状態に至ったときのヘッド部60Cの周辺の様子を示す。ロック状態に至ったことは近接スイッチ175の検出信号で判定され、タッチパネル操作盤187のロック確認ランプの点灯で作業者に報知される。
【0061】
続いて、作業者による操作でバランスシリンダ108のエアーバルブを「加圧」に切り換える(S16)。これによりバランスシリンダ108が駆動されて、固定用ねじ213に掛かるねじ操作回転軸部74の自重が軽減されて、ねじ操作回転軸部74により固定用ねじ213を容易に回転できるようになる。次いで、タッチパネル操作盤187のねじ緩め指示ボタンをオン操作すると、ねじ回転モータ71がねじ緩め動作の回転数上限値および初期の低トルク指令値で起動される(S17)。その結果タッチパネル操作盤187に表示されるねじ回転モータ71の回転数を確認して、所望の回転数が得られるようにトルク指示値を上昇させていく(S18、S19)。固定用ねじ213が緩められ、固定用ねじ213が燃料集合体47から外されたことがファイバーセンサ115,117により検知されると、タッチパネル操作盤187のねじ緩み確認ランプが点灯し、作業者に報知される。ねじ緩み確認ランプが点灯するとタッチパネル操作盤187にねじ緩み確認ボタンが表示される。作業者がそれに応答して該ねじ緩み確認ボタンをオン操作する(S21)。
【0062】
その後、作業者がホイスト54を操作してチャンネルファスナ取扱装置60を上昇するとチャンネルファスナ211が燃料集合体47から引き抜かれる(S22)。作業者がホイスト54およびクレーン走行部48を移動操作して、抜き取ったチャンネルファスナ211を回収位置まで移送する(S23)。回収位置に到着したらタッチパネル操作盤187のアンロック作動ボタンをオン操作する。これにより、エアーシリンダ171が短縮駆動される。その結果、スリーブ153が上動してスリーブ153によるロックボール79への当接が解除され、ロックボール79が外周側に待避してロック状態が解除される(S24)。その結果、ねじ回し工具78とねじ頭部213aとの嵌合が外れ、チャンネルファスナ211は落下して回収ボックスに回収される。
【0063】
その後、作業者はデータロガー190の記録を保存しそのデータを確認する。さらに、ホイスト54を操作してチャンネルファスナ取扱装置60を燃料プール44から引き上げ(S26)、床上に横倒しに置き(S27)、必要に応じて分解して作業を終了する(S28)。
【0064】
《チャンネルファスナの取外し作業におけるヘッド部およびファイバーセンサの動作説明》
以上説明したチャンネルファスナの取外し作業におけるヘッド部およびファイバーセンサの動作を図12A図12Cおよび図13を参照して説明する。なお、図12A図12Cは、チャンネルファスナ211について燃料集合体47に取り付けられた状態での位置・姿勢を図示しているが、燃料集合体47の図示は省略している。
(1)ガイド板の位置決め完了後、隙間へ挿入前(図12A図13(a))
図12Aは、ガイド板82がチャンネルファスナ211の上方に位置決めされた後、燃料集合体47と燃料ラック45との間の隙間208に挿入される前の状態を示す。ガイド板82を隙間208に挿入可能な姿勢に前後・左右・旋回の各方向に位置決めした状態では、ねじ回し工具78はねじ頭部213aの直上位置に配置される。すなわち、そのような配置となるように2枚のガイド板82,82とねじ回し工具78との位置関係が設定されている。エアーシリンダ171は短縮位置にあり、スリーブ153は上昇したアンロック位置にある。検出ロッド76の下端面76bはねじ回し工具78の凹所77内に突出し、凹所77の開口端面と概ね同一高さの位置まで下降している。すなわち、各段の検出ロッド76は自重でねじ操作回転軸部74内を下降するが、検出ロッド76の上端部の大径部(図5Aの大径部76aに相当)がねじ操作回転軸部74の丸穴の小径部(図5Aの丸穴145の小径部145aに相当)で係止される位置で下降が停止されている。このときの最下段の検出ロッド76の下端面76bの位置がねじ回し工具78の凹所77の開口端面と概ね同一高さの位置となるように設定されている。上下に隣接する検出ロッド76の対向面(上段の下端面と下段の上端面)どうしはそれぞれ当接し、分割構造の検出ロッドは全体として1本に繋がった状態となっている。図13(a)はこのときのファイバーセンサ115,117とセンサドグ113の位置関係を示す。なお、ファイバーセンサ115,117は旋回部70の固定部102(コモンベース104に固定されたセンサベース119、図4A図4C参照)に搭載されているので、旋回部70の固定部102に対して上下に移動しない。これに対し、ねじ操作回転軸部74および検出ロッド76は旋回部70の固定部102に対して上下に移動する。また、検出ロッド76はねじ操作回転軸部74に対して上下に移動する。図13(a)の状態では、ファイバーセンサ115の光路はセンサドグ113で「遮断」、ファイバーセンサ117の光路はスリット113aで「透過」となっている。ファイバーセンサ115,117の検出信号は制御装置199(図8)内の判定回路(ロジック回路)に入力され、該検出信号の組合せによりねじ回し工具78がねじ頭部213aに嵌まっていないことが判定される。
【0065】
(2)ねじ回し工具がねじ頭部に嵌合後、ロック前(図12B図13(b))
図12Bは、図12Aの状態からホイスト54によりチャンネルファスナ取扱装置60を下降させてガイド板82を燃料集合体47と燃料ラック45との間の隙間208に挿入してねじ回し工具78をねじ頭部213aに嵌合させた後、スリーブ153によるロック前の状態を示す。ねじ頭部213aはねじ回し工具78の奥側空間77aに嵌まり込んでいる。エアーシリンダ171は短縮位置のままでスリーブ153は上方位置にあり、ロックボール79は固定用ねじ213のロック溝213bに嵌合していない。図13(b)はこのときのファイバーセンサ115,117とセンサドグ113の位置関係を示す。図13(a)の状態に比べて検出ロッド76がねじ頭部213aの頂面との当接により押し上げられるため、検出ロッド76は旋回部70の固定部102に対して上方に移動する(旋回部70の固定部102に対するねじ操作回転軸部74の高さは変動しない)。その結果、ファイバーセンサ115の光路はスリット113aで「透過」、ファイバーセンサ117の光路はセンサドグ113で「遮断」となる。ファイバーセンサ115,117の検出信号は制御装置199(図8)内の判定回路(ロジック回路)に入力され、該検出信号の組合せによりねじ回し工具78がねじ頭部213aに嵌まったことが判定される。
【0066】
(2)ロック後(図12C図13(b))
図12Cは、図12Bの状態からエアーシリンダ171を伸長方向に駆動してスリーブ153を下方位置に移動させた状態を示す。このとき、スリーブ153がロックボール79を内周側に移動させ固定用ねじ213のロック溝213bに嵌合させる。これでねじ回し工具78とねじ頭部213aの嵌合状態がロックされる。ファイバーセンサ115,117とセンサドグ113の位置関係は図13(b)の状態のまま変化しない。
【0067】
(4)固定用ねじの緩め完了(図13(c))
図12Bの状態からねじ回転モータ71を駆動して固定用ねじ213を緩めて燃料集合体47から外す。図13(c)は固定用ねじ213が燃料集合体47から外れたときのファイバーセンサ115,117とセンサドグ113の位置関係を示す。緩め動作ではねじ回し工具78がねじ頭部213aに嵌まったまま固定用ねじ213が燃料集合体47に対し上方に抜けていくので、図13(a)の状態に比べて検出ロッド76とねじ操作回転軸部74が一緒に上方に移動する。その結果、ファイバーセンサ115,117の光路はいずれもセンサドグ113で「遮断」となる。ファイバーセンサ115,117の検出信号は制御装置199(図8)内の判定回路(ロジック回路)に入力され、該検出信号の組合せにより固定用ねじ213が燃料集合体47から外れたことが判定される。
【0068】
なお、前記実施の形態ではこの発明によるチャンネルファスナ取扱装置をチャンネルファスナの取外し用途に使用した場合について説明したが、チャンネルファスナの取り付け用途にも使用できる。また、前記実施の形態では旋回モータおよびねじ回転モータ71として電動モータを使用したが、これに限らず油圧モータ、空圧モータ等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
2…燃料集合体、3…ハンドル、5…燃料ラック、6…チャンネルファスナ、7…固定用ねじ、9…ホイスト、10…装置本体、10a…ガイド、11…旋回軸、13…旋回モータ、14…エアシリンダ、15…シャフト、22…ファスナ挟持機構、25…ねじ回転モータ、27…ねじ回し工具、28…鋼球、30…チャンネルファスナ受け、40…原子炉建屋、42…床、44…燃料プール、45…燃料ラック、45a…貯蔵空間、46…レール、47…燃料集合体、47a…ハンドル、47b…チャンネルボックス、48…クレーン走行部、50…脚、50a…車輪、52…ガーダ、54…ホイスト、54a…本体部、56…ワイヤロープ、58…フックブロック、58a…フック、60…チャンネルファスナ取扱装置、60A…基部、60B…軸部、60C…ヘッド部、61…同軸集合部材、61-0乃至61-5…同軸集合部材分割部分、62…吊環、63…補強フレーム、63-1乃至63-4…補強フレーム分割部分、64…制御盤、65…補強フレームトップ、65a…天板、65b…底板、65c…パイプ、65d…旋回ガイド筒、65e…内部空間、66…各種ケーブル・ホース類、68…旋回装置、69…旋回モータ、70…旋回部、71…ねじ回転モータ、72…ガイド管(管状部材、係合部材)、72a…内部空間、74…ねじ操作回転軸部、74a…軸部本体、74b,74c…丸棒部材、74d…開口端部、74e…レール、76…検出ロッド、76a…大径部、76b…下端面、77…凹所、77a…奥側空間、77b…入口側空間、78…ねじ回し工具、78b…穴、78e…嵌合突起、79…ロックボール(ロック部材)、80…同軸集合部材支持プレート、80-1,80-2…プレート、80a…丸穴、80b…切欠き、82…ガイド板(係合部材の係合部)、84…テレビカメラ、86…マウント、88…吊環、90…固定部、92…従動平歯車、94…旋回軸棒、96…連結ブロック、96a…スリット、96b…キー穴、97…丸棒キー、98…駆動平歯車、100…リミットスイッチ、101…端子ボックス、102…固定部、103…電磁弁、104…コモンベース(固定部)、105…減圧弁、106…ハンガー、106a,106b…縦板材、106c…横板材、106d…キー穴、107…積層信号灯(警告灯)、108…バランスシリンダ、108a…ピストンロッド、111…従動平歯車、113…センサドグ、113a…スリット、115,117…ファイバーセンサ(位置センサ)、119…センサベース、121,123…センサマウント、125…スラスト軸受、127…モータスタンド、129…カップリング、131…駆動平歯車、132…ヘルール、133…滑り軸受、134…クランプバンド、135,137…滑り軸受押さえ、139…カプラ、139a…ソケット(雌部材)、139b…プラグ(雄部材)、141…抜け止めリング、143a…半割丸パイプ形回り止め片(片側半円分)、143b…半割丸パイプ形回り止め片(他側半円分)、145…丸穴、145a…小径部、146…丸穴、146a…小径部、147…空洞、149…ガスケット、151…吊り板、153…スリーブ、153a…レール、154…係止リング、155…軸受メタル、157…スリーブ駆動装置、159,161…長穴、163…フランジ、165…ガイドポスト、167…ガイドシャフト、169,170…環状部材、169a,170a…係合棒、169b,170b…ガイドローラー、171…エアーシリンダ(スリーブ駆動部)、171a…ピストンロッド、173…ロック・アンロック検知装置、174…センサマウント、174a…長穴、175…近接スイッチ、177…センサドグ、177a…長穴、179…ピン、180…クレーン操作盤、181…ピン、182…ホイスト操作盤、183…旋回ガイド板、185…嵩上げ台、187…タッチパネル操作盤、189…作業用モニタ、190…データロガー、191…クレーン走行制御装置、193…ホイスト制御装置、195…電源装置、197…エアーコンプレッサ、199…制御装置、200…精密減圧弁、208…隙間、211…チャンネルファスナ、213…固定用ねじ、213a…ねじ頭部、213b…ロック溝、213c…ねじ軸部、213d…嵌合溝、215…ガード、217…板ばね、AX1…旋回軸、AX2…回転軸
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15