(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147488
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20231005BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20231005BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20231005BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01R19/00 N
H03F3/45
H03F3/34 210
G01R35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055006
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋
【テーマコード(参考)】
2G035
5J500
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC02
2G035AC16
2G035AD10
2G035AD20
2G035AD23
2G035AD27
2G035AD28
2G035AD56
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC13
5J500AC41
5J500AC81
5J500AC85
5J500AC98
5J500AF10
5J500AH10
5J500AH26
5J500AH42
5J500AK05
5J500AK11
5J500AK17
5J500AK27
5J500AK28
5J500AK33
5J500AK34
5J500AS15
5J500AT01
5J500AT07
5J500DN22
5J500DP01
(57)【要約】
【課題】適正に対象回路を校正する。
【解決手段】対象回路は、校正回路から供給されるデジタル値に応じて対象回路の特性を変化させる調整回路を有する。校正用動作は対象回路に対して複数の単位動作を繰り返し実行する評価動作を含む。校正回路は、各単位動作において、デジタル値を変化させながら対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときのデジタル値を校正候補値として導出する。複数の単位動作にて導出された複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、複数の校正候補値に基づく実校正値を用いて対象回路の特性を校正し、複数の校正候補値が所定条件を逸脱するとき、評価動作を再実行する又は所定のエラー信号を出力する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象回路と、前記対象回路に対する校正用動作を行うよう構成された校正回路と、を備え、
前記対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値に応じて前記対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路を有し、
前記校正用動作は、前記対象回路に対して複数の単位動作を繰り返し実行する評価動作を含み、
前記校正回路は、各単位動作において、前記デジタル値を変化させながら前記対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき前記対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値として導出し、
前記校正回路は、前記複数の単位動作にて導出された複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、前記複数の校正候補値に基づく実校正値を用いて前記対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する又は所定のエラー信号を出力する
、半導体装置。
【請求項2】
前記校正回路は、各単位動作において、バイナリサーチにより前記校正候補値を導出する
、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記デジタル値は、第1ビットから第mビットまでのmビット分のデジタル信号の値であり(mは2以上の整数)、第iビットは第(i+1)ビットの上位側ビットであり(iは(m-1)以下の自然数)、
各ビットは0又は1のバイナリ値を有し、
前記校正回路は、各単位動作において、前記第1ビットから前記第mビットに向けてビットごとに前記差の低減に適した前記バイナリ値を特定し、これによって前記校正候補値を導出する
、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記校正回路は、前記複数の校正候補値のばらつきに基づき前記所定条件の成否を判断する
、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の校正候補値における最小値と前記複数の校正候補値における最大値との差が規定値以下であるとき、前記所定条件が満たされ、前記校正回路は、前記複数の校正候補値の平均に基づき前記実校正値を設定する
、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記対象回路は増幅回路であって、
前記対象回路の特性は前記増幅回路のオフセット電圧であり、
前記校正回路は、各単位動作において、前記増幅回路のオフセット電圧を最小化させるときの前記デジタル値を前記校正候補値として導出する
、請求項1~5の何れかに記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の対象回路と、前記複数の対象回路に対する校正用動作を行うよう構成された校正回路と、を備え、
各対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値に応じて当該対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路を有し、
前記校正用動作は前記対象回路ごとに単位動作を実行する評価動作を含み、
前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、対応するデジタル値を変化させながら当該対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき当該対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値として導出し、
前記対象回路ごとの単位動作を経て前記複数の対象回路に対する複数の校正候補値が導出され、
前記校正回路は、前記複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、前記対象回路ごとに、対応する校正候補値を実校正値として用いて当該対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する又は所定のエラー信号を出力する
、半導体装置。
【請求項8】
前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、バイナリサーチにより前記校正候補値を導出する
、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
各対象回路において、前記デジタル値は、第1ビットから第mビットまでのmビット分のデジタル信号の値であり(mは2以上の整数)、第iビットは第(i+1)ビットの上位側ビットであり(iは(m-1)以下の自然数)、
各ビットは0又は1のバイナリ値を有し、
前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、前記第1ビットから前記第mビットに向けてビットごとに前記差の低減に適した前記バイナリ値を特定し、これによって前記校正候補値を導出する
、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記校正回路は、前記複数の校正候補値のばらつきに基づき前記所定条件の成否を判断する
、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数の校正候補値における最小値と前記複数の校正候補値における最大値との差が規定値以下であるとき、前記所定条件が満たされる
、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
各対象回路は増幅回路であって、
各対象回路の特性は各増幅回路のオフセット電圧であり、
前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、前記増幅回路のオフセット電圧を最小化させるときの前記デジタル値を前記校正候補値として導出する
、請求項7~11の何れかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象回路の特性を理想に近づけるべく、特性を調整するための回路を対象回路に設けておいて対象回路の特性を校正する、といったことが多くの半導体装置にて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象回路の特性を理想に近づけるための最適値の探索中にノイズ等が影響すると、不適正な値が誤って探索されることがある。不適正な値を対象回路に適用して校正を行うと、校正前よりも特性が悪くなることもあり得る。適正な校正を実現する技術の開発が期待される。
【0005】
本開示は、校正の適正化に寄与する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、対象回路と、前記対象回路に対する校正用動作を行うよう構成された校正回路と、を備え、前記対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値に応じて前記対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路を有し、前記校正用動作は、前記対象回路に対して複数の単位動作を繰り返し実行する評価動作を含み、前記校正回路は、各単位動作において、前記デジタル値を変化させながら前記対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき前記対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値として導出し、前記校正回路は、前記複数の単位動作にて導出された複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、前記複数の校正候補値に基づく実校正値を用いて前記対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する又は所定のエラー信号を出力する。
【0007】
本開示に係る他の半導体装置は、複数の対象回路と、前記複数の対象回路に対する校正用動作を行うよう構成された校正回路と、を備え、各対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値に応じて当該対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路を有し、前記校正用動作は前記対象回路ごとに単位動作を実行する評価動作を含み、前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、対応するデジタル値を変化させながら当該対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき当該対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値として導出し、前記対象回路ごとの単位動作を経て前記複数の対象回路に対する複数の校正候補値が導出され、前記校正回路は、前記複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、前記対象回路ごとに、対応する校正候補値を実校正値として用いて当該対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する又は所定のエラー信号を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、校正の適正化に寄与する半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るシステムの概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電流センサの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、オペアンプの概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、オペアンプにおける入力段の構成と、調整回路の構成と、を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、DACへ入力されるデジタル信号とDACから出力されるアナログ電圧との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、DACへ入力されるデジタル信号の構造を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、校正用動作のフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、校正用動作の変形フローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、単位動作のフローチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電流センサの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電流センサの構成を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、校正回路の構成図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、校正用動作のフローチャートである。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、校正用動作の変形フローチャートである。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、システムの全体構成図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、DC/DCコンバータを含む半導体装置の構成図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、発振回路を含む半導体装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“V
REF”によって参照される基準電圧は(
図3参照)、基準電圧V
REFと表記されることもあるし、電圧V
REFと略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0011】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0012】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0013】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0014】
図1に本開示の実施形態に係るシステムSYSの概略全体構成を示す。システムSYSは、半導体装置1及びMCU(Micro Controller Unit)2を備える。
【0015】
図2は半導体装置1の外観斜視図である。半導体装置1は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置1の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置1が形成される。尚、
図2に示される半導体装置1の外部端子の数及び半導体装置1の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0016】
以下の説明において、外部端子とは、特に記述無き限り、半導体装置1に設けられた外部端子を指す。半導体装置1に内蔵された端子を内部端子と称する。内部端子は、半導体装置1の筐体から露出していない端子であり、例えば半導体集積回路上の端子である。また、半導体装置1の外部に設けられた配線を外部配線と称する。MCU2は半導体装置1にとっての外部装置である。1以上の外部端子が1以上の外部配線を通じてMCU2に接続され、これによって半導体装置1及びMCU2間で必要な信号の送受信が可能となっている。
【0017】
図示されない電圧源から半導体装置1に対して1以上の電源電圧(正の直流電圧)が供給され、半導体装置1内の各回路は供給された電源電圧に基づいて駆動する。また特に図示しないが、外部端子の一種であるグランド端子はグランドに接続される。半導体装置1内の各回路はグランド電位を基準に動作できる。
【0018】
半導体装置1は記憶回路MMを有する。記憶回路MMはレジスタに分類されるメモリであって良い。記憶回路MMにおいて設定情報などが記憶され、半導体装置1は設定情報に応じた動作を行う。MCU2は、半導体装置1に対し所定のコマンドを送信することで、所望の設定情報を記憶回路MMに書き込むことができる。
【0019】
半導体装置1には、特性が校正されるべき対象回路が含まれており、校正用動作の実行を通じて対象回路の特性が校正される。以下の複数の実施例の中で、対象回路の具体例及び校正用動作の具体例等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0020】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図3に第1実施例に係る電流センサ100の構成を示す。第1実施例に係る半導体装置1は電流センサ100を有する。半導体装置1における半導体集積回路により電流センサ100が形成される。
【0021】
電流センサ100は、増幅回路10と、コンパレータ20と、ロジック回路30と、基準電圧設定回路40と、を備える。端子AINP、AINN、AOUT及びREFは半導体装置1に設けられる4つの外部端子である。但し、端子AINP、AINN、AOUT及びREFの内、任意の1以上の端子は内部端子であっても良い。端子AINP、AINN及びAOUTは電流センサ100の構成要素に含まれると解しても良いし、電流センサ100の構成要素に含まれずに電流センサ100に接続されると解しても良い。
【0022】
配線WRSは外部配線である。配線WRS上に流れる電流を記号“IS”にて表す。配線WRS上に直列にセンス抵抗RSNSが設けられる。センス抵抗RSNSの第1端は端子AINPに接続され、センス抵抗RSNSの第2端は端子AINNに接続されると共にグランドに接続される。電流ISはセンス抵抗RSNSを通じて流れる。このため、センス抵抗RSNSの両端間(従って端子AINP及びAINN間)に、電流ISの値とセンス抵抗RSNSの抵抗値との積にて表される電圧降下が発生する。
【0023】
電流センサ100は端子AINP及びAINN間の電圧ΔVに基づいて電流ISを検出し、検出結果を示す信号SOUTを端子AOUTから出力する。電圧ΔVは端子AINNの電位から見た端子AINPの電圧を表す。端子AOUTは外部配線である配線WRAOUTを通じてMCU2に接続される。つまり、信号SOUTが端子AOUTからMCU2に出力される。信号SOUTは増幅回路10の出力電圧VAを示すアナログ電圧信号であり、故に、端子AOUTにはアナログの出力電圧VAが加わる。但し、電流センサ100において、アナログの出力電圧VAをデジタル信号に変換したものをMCU2に出力する構成が採用されても良い。
【0024】
電流ISを検出するとは、詳細には、電流ISの大きさ及び向きを検出することを指す。電流ISの向きは電流ISの極性で表され、電流ISの極性には正と負がある。センス抵抗RSNSの第1端からセンス抵抗RSNSの第2端(グランド)に向けて流れる電流ISの極性が正であるとし、その逆向きの電流ISの極性が負であるとする。電流ISの大きさ及び向きに応じた電圧が出力電圧VAとなる。尚、電流ISの極性が正及び負の何れか一方に固定される場合にあっては、電流センサ100は電流ISの大きさ(電流ISの値)だけを検出するものであっても良い。
【0025】
端子REFにて電圧VREF_INの供給を受ける。電圧VREF_INは、半導体装置1の外部電圧源から供給される正の直流電圧である。基準電圧設定回路40は、端子REFに接続され、電圧VREF_INに基づき基準電圧VREFを設定して出力する。基準電圧設定回路40は、例えば、記憶回路MMに記憶された基準電圧設定情報に基づき、電圧VREF_INの1/2の電圧又は電圧VREF_INの1/4の電圧を、基準電圧VREFに設定する。但し、基準電圧VREFの値は任意であって良く、“VREF_IN=VREF”であっても構わない。
【0026】
増幅回路10は、オペアンプAMPと抵抗R1~R4とを備えて構成される差動増幅回路である。電圧ΔVは増幅回路10の入力電圧に相当する。オペアンプAMPは、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を備える。具体的には、抵抗R1の一端は端子AINNに接続され、抵抗R1の他端はオペアンプAMPの反転入力端子に接続される。抵抗R2の一端はオペアンプAMPの反転入力端子に接続され、抵抗R2の他端はオペアンプAMPの出力端子に接続される。抵抗R3の一端は端子AINPに接続され、抵抗R3の他端はオペアンプAMPの非反転入力端子に接続される。抵抗R4の一端はオペアンプAMPの非反転入力端子に接続される。抵抗R4の他端は基準電圧VREFが加わる配線に接続され、基準電圧VREFを受ける。オペアンプAMPの出力端子は増幅回路10の出力端子に相当し、オペアンプAMPの出力端子(従って増幅回路10の出力端子)は端子AOUTに接続される。オペアンプAMPの出力端子から電流ISに応じた電圧VAが出力される。
【0027】
ここでは、抵抗R1及びR3の抵抗値は互いに等しく、且つ、抵抗R2及びR4の抵抗値は互いに等しいものとする。後述のオフセット電圧がゼロであるとの仮定の下、電圧ΔVがゼロであれば“VA=VREF”となり、“ΔV>0”であれば“VA>VREF”となり、“ΔV<0”であれば“VA<VREF”となる。“ΔV>0”又は“ΔV<0”であるとき、電圧ΔVの絶対値の増大につれて電圧VAと基準電圧VREFとの差は増大する。
【0028】
尚、オペアンプAMPは半導体装置1内で生成されたアンプ用電源電圧VPAMPに基づいて駆動する。アンプ用電源電圧VPAMPは正の直流電圧であり、例えばバンドギャップリファレンスを用いて生成されて良い。また、増幅回路10の増幅率は可変であっても良い。例えば抵抗R1及びR3を可変抵抗にて構成しておき、各可変抵抗の抵抗値を変更することにより増幅回路10の増幅率を変更することができる。例えば、記憶回路MMに記憶された増幅率設定情報に基づき、増幅回路10の増幅率が設定されて良い。
【0029】
コンパレータ20は反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。コンパレータ20は、自身の非反転入力端子に加わる電圧と自身の反転入力端子に加わる電圧とを比較し、比較結果に応じた信号CMPを自身の出力端子から出力する。信号CMPはハイレベル又はローレベルを有する。コンパレータ20の反転入力端子は基準電圧VREFが加わる配線に接続され、基準電圧VREFを受ける。コンパレータ20の非反転入力端子はオペアンプAMPの出力電圧VAが加わる配線に接続され、出力電圧VAを受ける。このため、コンパレータ20は、“VA>VREF”が成立すれば(即ち電圧VAが基準電圧VREFよりも高ければ)ハイレベルの信号CMPを出力し、“VA<VREF”が成立すれば(即ち基準電圧VREFが電圧VAよりも高ければ)ローレベルの信号CMPを出力する。“VA=VREF”の成立時において信号CMPはハイレベル及びローレベルの何れかとなる。コンパレータ20の出力信号CMPはロジック回路30に供給される。
【0030】
ロジック回路30は、信号CMPに基づき増幅回路10のオフセット電圧を校正する機能を持つ。本実施例では、以下、増幅回路10のオフセット電圧を単にオフセット電圧と称する。オフセット電圧の校正はコンパレータ20及びロジック回路30を有する校正回路CRB1により実現される。オフセット電圧は電圧ΔVがゼロであるときの電圧VA及びVREF間の差である。増幅回路10にはオフセット電圧を調整するための調整回路が設けられており、ロジック回路30は調整回路の制御を通じてオフセット電圧を校正できる。ロジック回路30から調整回路に対してデジタル信号DACINが出力される。
【0031】
図4にオペアンプAMPの概略構成を示す。オペアンプAMPは入力段11及び出力段12を備える。入力段11は、オペアンプAMPの非反転入力端子及び反転入力端子に接続され、非反転入力端子及び反転入力端子間の電圧に応じた電圧V
A’を生成する。出力段12は、電圧V
A’に基づき電圧V
Aを生成してオペアンプAMPの出力端子から出力する。この際、イマジナリショートの作用により、出力段12は、オペアンプAMPの非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差がゼロに近づくよう、電圧V
Aを生成する。結果、増幅回路10において、入力電圧ΔVがゼロであるとき、オフセット電圧がゼロであるとすれば出力電圧V
Aは基準電圧V
ERFと等しくなる。
【0032】
図5に入力段11及び調整回路13の回路図を示す。調整回路13はオペアンプAMPに内蔵されると解されても良いし、オペアンプAMPに対して接続されると解されても良い。
図5の構成において、入力段11は、トランジスタ111及び112、定電流源113並びに抵抗114及び115を備える。調整回路13は、DAC131、定電流源132並びにトランジスタ133及び134を備える。トランジスタ111、112、133及び134はPチャネル型のMOSFETである。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0033】
トランジスタ111及び112により差動入力対が構成される。トランジスタ111及び112は互いに同一の構造及び同一の電気的特性を持つように形成される。トランジスタ133及び134についても互いに同一の構造及び同一の電気的特性を持つように形成されると良い。抵抗114及び115は互いに同じ抵抗値を持つように形成される。
【0034】
トランジスタ111及び112のソース同士は互いに接続される。定電流源113は、電源電圧V
PAMPが加わるノードからトランジスタ111及び112のソース同士が接続されるノードに向けて定電流I
CC1を供給する。トランジスタ111のゲート、トランジスタ112のゲートは、夫々、オペアンプAMPの非反転入力端子、反転入力端子に接続される。トランジスタ111のドレインは抵抗114の第1端に接続され、抵抗114の第2端はグランドに接続される。トランジスタ112のドレインは抵抗115の第1端に接続され、抵抗115の第2端はグランドに接続される。抵抗114の第1端の電位から見た抵抗115の第1端の電圧が電圧V
A’として出力段12(
図4参照)に供給される。
【0035】
トランジスタ133及び134のソース同士は互いに接続される。定電流源132は、電源電圧VPAMPが加わるノードからトランジスタ133及び134のソース同士が接続されるノードに向けて定電流ICC2を供給する。トランジスタ133のドレインはトランジスタ111のドレインに接続される。トランジスタ134のドレインはトランジスタ112のドレインに接続される。
【0036】
DAC131は、ロジック回路30から供給されたデジタル信号DACINをアナログ信号に変換して出力するデジタル/アナログ変換器である。DAC131から出力されるアナログ信号はアナログ電圧信号であり、当該アナログ電圧信号にて表されるアナログ電圧を記号“DACOUT”にて参照する。DAC131はデジタル信号DACINをアナログ電圧DACOUTに変換して出力する回路であると言える。DAC131はトランジスタ133のゲートに対しアナログ電圧DACOUTを供給する。トランジスタ134のゲートには所定のバイアス電圧Vbが印加される。例えば、アナログ電圧DACOUTの可変範囲における中心の電圧をバイアス電圧Vbに設定して良い。
【0037】
図5の回路動作について説明する。説明の便宜上、まず“I
CC2=0”であって且つトランジスタ111及び112が理想的に動作する場合を想定する。加えて、抵抗114及び115の抵抗値に差は無いと考える。この場合において、オペアンプAMPにおける非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差がゼロであればトランジスタ111及び112のドレイン電流値は同じとなって電圧V
A’は0Vとなる。オペアンプAMPにおいて非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差がゼロでない場合、当該電位差に応じてトランジスタ111及び112のドレイン電流値に差が生じ、結果、電圧V
A’は正又は負の電圧となる。このように、オペアンプAMPにおける非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差がゼロであるときに電圧V
A’が0Vとなることを目指してトランジスタ111及び112が形成される。但し、実際には、製造上のばらつき等に起因してトランジスタ111及び112の電気的特性にずれが生じ得る。結果、上記電位差がゼロであるときにおいてトランジスタ111及び112のドレイン電流値に差が生じ、“I
CC2=0”であるとの仮定の下、電圧V
A’は0Vとならないことがある。
【0038】
ドレイン電流値に関する上記の差を打ち消すように調整回路13が働く。即ち調整回路13の設置により、抵抗114にはトランジスタ111及び133のドレイン電流の合成電流が流れ、抵抗115にはトランジスタ112及び134のドレイン電流の合成電流が流れる。電圧DAC
OUTを調整することでトランジスタ133のドレイン電流は変化する。このため、増幅回路10への入力電圧ΔV(
図3参照)がゼロであるときに、電圧V
A’が0Vとなるように(即ち増幅回路10の出力電圧V
Aが基準電圧V
REFと一致するように)、電圧DAC
OUTを設定すればオフセット電圧はゼロとなる。
【0039】
図6にデジタル信号DAC
INとアナログ電圧DAC
OUTとの関係を示す。DAC131はmビットのデジタル/アナログ変換器である。
図7に示す如く、デジタル信号DAC
INは第1ビットから第mビットまでのmビット分のデジタル信号である。mは2以上の整数であれば任意である。例えば“m=10”である。デジタル信号DAC
INにおける第iビットをビットB[i]と称する。iは1以上且つm以下の任意の整数を表す。ビットB[i]はビットB[i+1]の上位側ビットであるとする(ここにおけるiは(m-1)以下の自然数を表す)。故に、デジタル信号DAC
INにおけるビットB[1]~ビットB[m]の内、ビットB[1]が最上位ビットであり、ビットB[m]が最下位ビットである。
【0040】
デジタル信号DACINにおける各ビットは0又は1のバイナリ値を有する。ビットB[i]が有するバイナリ値を記号“VAL[i]”にて表す。更に、mビット分のデジタル信号DACINの値をデジタル値D_VALと称する。10進数で考えた場合、デジタル値D_VALは、ビットB[1]に対応する10進数換算値(2m-1×VAL[1])と、ビットB[2]に対応する10進数換算値(2m-2×VAL[2])と、ビットB[3]に対応する10進数換算値(2m-3×VAL[3])と、・・・、ビットB[m]に対応する10進数換算値(20×VAL[m])と、の総和である。
【0041】
アナログ電圧DACOUTは、デジタル値D_VALと所定大きさを有する単位電圧との積で表され、デジタル値D_VALの増大に伴って線形的に増大する。デジタル値D_VALの変化を通じてアナログ電圧DACOUTが変化し、結果、トランジスタ133のドレイン電流の変化を通じてオフセット電圧が変化する。このように、調整回路13は、ロジック回路30から供給されるデジタル信号DACINに応じて(従ってデジタル値D_VALに応じて)増幅回路10のオフセット電圧を変化させる。デジタル値D_VALの変化量を増大させればトランジスタ133のドレイン電流の変化量も増大し、結果、オフセット電圧の変化量も増大する。
【0042】
校正回路CRB1は校正用動作OP1を行うことがきる。校正用動作OP1は、オフセット電圧を校正するために増幅回路10に対して実行される。例えば、MCU2からの所定の動作開始信号が半導体装置1にて受信されたことに応答して校正回路CRB1は校正用動作OP1を行う。或いは、半導体装置1に対する電源電圧の供給が開始されて半導体装置1が起動する際、MCU2からの信号に依らず、校正用動作OP1が行われるようにしても良い。何れにせよ、校正用動作OP1が行われる期間では電流ISがゼロに保たれるものとする。
【0043】
図8に校正用動作OP1のフローチャートを示す。
図8において、jはロジック回路30にて管理及び更新される変数を表す。校正用動作OP1においては、まずステップS11にて変数jに“1”が設定される。続くステップS12では、増幅回路10に対して第j回目の単位動作が実行される。単位動作の詳細は後述されるが、単位動作にてロジック回路30により校正候補値が導出される。校正候補値はオフセット電圧を校正するためのデジタル値D_VALの候補に相当する。第j回目の単位動作にて導出される校正候補値を記号“D_A[j]”にて表す。
【0044】
ステップS12に続くステップS13において、ロジック回路30は“j=n”の成否を判定する。nは予め定められた任意の2以上の整数値を有する。例えば“n=3”である。“j=n”が成立している場合には(ステップS13のY)、ステップS15に進む。“j=n”が不成立の場合には(ステップS13のN)、ステップS14に進んで変数jに1を加算してからステップS12に戻る。これにより、ステップS15に進む段階では校正候補値D_A[1]~D_A[n]が導出済みとなる。校正用動作OP1は評価動作OP1aを含み、評価動作OP1aはステップS11~S14の各処理により構成される。評価動作OP1aでは増幅回路10に対して単位動作がn回繰り返し実行され、これによって校正候補値D_A[1]~D_A[n]が導出される。
【0045】
ステップS15において、ロジック回路30は校正候補値D_A[1]~D_A[n]に基づき所定の正常終了条件の成否を判断する(換言すれば校正候補値D_A[1]~D_A[n]が正常終了条件を満たすかを判定する)。第1実施例に係る正常終了条件は、校正候補値D_A[1]~D_A[n]のばらつきに依存して成否が分岐する条件である。故に、ロジック回路30は校正候補値D_A[1]~D_A[n]のばらつきに基づき正常終了条件の成否を判断する。
【0046】
より具体的には、ロジック回路30は、校正候補値D_A[1]~D_A[n]における最大値及び最小値を特定する。そして、特定した最大値及び最小値間の差が規定値VALTHA以下であるとき、ロジック回路30は正常終了条件が成立すると判断する(即ち校正候補値D_A[1]~D_A[n]が正常終了条件を満たすと判断する)。特定した最大値及び最小値間の差が規定値VALTHAを超えるとき、ロジック回路30は正常終了条件が不成立であると判断する。規定値VALTHAは所定の正の値(例えば2又は3)を有する。変形として、ロジック回路30は、校正候補値D_A[1]~D_A[n]の分散を導出し、導出した分散が規定値VALTHA以下であるときに正常終了条件が成立すると判断し、そうでないときに正常終了条件が不成立であると判断するようにしても良い。
【0047】
ステップS15において、正常終了条件が成立する場合には(ステップS15のY)ステップS16に進む。ステップS16において、ロジック回路30は、校正候補値D_A[1]~D_A[n]の平均に基づき実校正値D_Rを設定する。即ち、校正候補値D_A[1]~D_A[n]の平均値を実校正値D_Rに設定する。この際、校正候補値D_A[1]~D_A[n]の和が値“n”にて割り切れないのであれば、小数点以下の切捨て又は四捨五入を用いて校正候補値D_A[1]~D_A[n]の平均値が導出されれば良い。ステップS16に続くステップS17において、ロジック回路30は、実校正値D_Rをデジタル値D_VALとして有するデジタル信号DACINをDAC131に出力する。
【0048】
ステップS17の処理の完了をもって校正用動作OP1が完了し、オフセット電圧が校正済みとなる。ステップS17の処理後において、電圧DACOUTは、実校正値D_Rに対応する電圧(即ち実校正値D_RをDAC131にてアナログ電圧信号に変換することで得られた電圧)に維持され、オフセット電圧はゼロ又はゼロに十分に近い電圧となる。
【0049】
校正用動作OP1の実行期間において半導体装置1はスタンバイ状態にあり、校正用動作OP1の完了後に半導体装置1は実稼働状態に移行する。実稼働状態において、電流ISが配線WRSに流れ、実校正値D_Rを用いて校正済みの増幅回路10から電流ISに応じた電圧VAが出力される。そして、電圧VAを表す信号SOUTがMCU2に供給される。
【0050】
ステップS15において、正常終了条件が不成立の場合には(ステップS15のN)ステップS18に進む。尚、正常終了条件の不成立は、校正候補値D_A[1]~D_A[n]が正常終了条件を逸脱することと等価である。ステップS18において、ロジック回路30はステップS11~S14から成る評価動作OP1aにて導出された校正候補値D_A[1]~D_A[n]を破棄し、その後、ステップS11に戻る。このため、ステップS18に至った場合、評価動作OP1aが再実行され、再実行される評価動作OP1aの中で校正候補値D_A[1]~D_A[n]が改めて導出されることになる。
【0051】
尚、ステップS15において正常終了条件が不成立の場合、
図9に示す如く、ステップS18aに進むようにしても良い。ステップS18aにおいてロジック回路30はエラー処理を実行し、校正用動作OP1を終える。エラー処理は所定のエラー信号を半導体装置1からMCU2に出力する処理を含む。エラー信号は校正用動作OP1が正常に終了しなかった旨を指し示す。或いは、エラー信号は半導体装置1にて何らかの異常が検出された旨を指し示す。
図8のフローチャートを採用した上で、評価動作OP1aをL回繰り返しても正常終了条件が成立しない場合に限り、上記エラー処理を行うようにしても良い(Lは2以上の任意の整数)。
【0052】
校正用動作OP1にて特性が校正されるべき回路を対象回路と称した場合、校正回路CRB1は、各単位動作において、デジタル値D_VALを変化させながら対象回路の特性を評価し、評価結果に基づき対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときのデジタル値を校正候補値として導出する。本実施例に係る対象回路は増幅回路10であって、校正されるべき対象回路の特性はオフセット電圧であり、故に目標特性は目標電圧にて表される。ここにおける目標電圧は、オフセット電圧の目標値(理想のオフセット電圧)を表し、0Vである。即ち、本実施例に係る単位動作では、デジタル値D_VALを変化させながらオフセット電圧を評価して、評価結果に基づきオフセット電圧と目標電圧との差を最小化させるときのデジタル値D_VAL(換言すればオフセット電圧を最小化させるときのデジタル値D_VAL)を校正候補値として導出する。
【0053】
校正回路CRB1は、単位動作において、バイナリサーチにより実校正値の元となる校正候補値を導出する。バイナリサーチでは、デジタル信号DACINにおける最上位ビット(B[1])から最下位ビット(B[m])に向けてビットごとに、オフセット電圧の校正に適したバイナリ値が特定される。
【0054】
バイナリサーチの実行過程において、半導体装置1にノイズが混入するなどの理由により、理想的なバイナリ値が探索できないことがある。特に、比較的上位側のビットに対して校正用のバイナリ値を探索しているときにノイズの影響により不適正なバイナリ値が校正用の値として選択されることが考えられる。この場合において、その結果をそのまま用いてオフセット電圧の校正を行ったならば、オフセット電圧が校正前よりも増大することもあり得る。これを考慮し、本実施例では、単位動作を複数回実行し、各単位動作において校正用の値の候補(校正候補値)を導出する。そして、複数の校正候補値のばらつきが小さいときに、ノイズ等の影響を受けていない校正候補値が得られたと判断して、複数の校正候補値に基づき実際に使用する実校正値を設定する。これにより、ノイズ等の影響を受けにくい適正な校正が可能となる。
【0055】
図10に単位動作のフローチャートを示す。上述したように、バイナリサーチでは、デジタル信号DAC
INにおける最上位ビット(B[1])から最下位ビット(B[m])に向けてビットごとに、オフセット電圧の校正に適したバイナリ値が特定される。オフセット電圧の校正に適したバイナリ値をビットごとに特定すべく、ロジック回路30は、単位動作において、ビットB[1]~B[m]の夫々を、評価対象ビット、未評価ビット及び評価済ビットの何れかに分類する。
【0056】
評価対象ビットは、今回、適正なバイナリ値が評価及び設定されるビット(適正なバイナリ値が0及び1の何れであるのかが評価されるビット)である。評価済ビットは適正なバイナリ値が評価及び設定された後のビットである。未評価ビットは、適正なバイナリ値が評価及び設定される前のビットである。
【0057】
図10を参照して1つの単位動作を説明する。尚、単位動作の説明において参照される変数iは、ロジック回路30にて管理及び更新される変数である。単位動作では、まずステップS101において、ロジック回路30が最上位ビットであるビットB[1]を評価対象ビットに設定し、ビットB[2]~B[m]を未評価ビットに設定する。続くステップS102にて変数iに1が代入され、その後、ステップS103に進む。
【0058】
ステップS103において、ロジック回路30は、評価対象ビットのバイナリ値に“1”に設定し、且つ、全ての未評価ビットのバイナリ値に“0”を設定する。“i=1”のときに実行されるステップS103では、評価対象ビットであるビットB[1]のバイナリ値VAL[1]に“1”が設定され、且つ、未評価ビットであるビットB[2]~B[m]のバイナリ値VAL[2]~VAL[m]に全て“0”が設定されることになる。ステップS103の後、ステップS104に進む。
【0059】
ステップS104において、現在のバイナリ値VAL[1]~VAL[m]を有するデジタル信号DACINがロジック回路30からDAC131に出力される。そして、現在のバイナリ値VAL[1]~VAL[m]を有するデジタル信号DACINに対応する電圧DACOUTがDAC131から出力されている状態で、ロジック回路30はコンパレータ20の出力信号CMPを取得する。ステップS104に続くステップS105において、ロジック回路30は、取得された信号CMPがハイレベルであるかを確認する。取得された信号CMPがハイレベルであれば(ステップS105のY)、ステップS106に進む一方、取得された信号CMPがローレベルであれば(ステップS105のN)、ステップS107に進む。
【0060】
ハイレベルの信号CMPは、オフセット電圧のゼロの実現にとって、現在の電圧DACOUTが高すぎることを意味する。故に、信号CMPがハイレベルであるとき、ゼロのオフセット電圧を実現するためには、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]を“0”とすべきである。このため、ステップS106では、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]に“0”を設定する。ステップS106の後、ステップS108に進む。
【0061】
ローレベルの信号CMPは、オフセット電圧のゼロの実現にとって、現在の電圧DACOUTが低すぎることを意味する。故に、信号CMPがローレベルであるとき、ゼロのオフセット電圧を実現するためには、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]を“1”とすべきである。このため、ステップS107では、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]を“1”に設定する。但し、ステップS103の段階でバイナリ値VAL[i]に“1”が設定されているので、ステップS107ではバイナリ値VAL[i]を“1”のまま維持すれば足る。ステップS107の後、ステップS108に進む。
【0062】
ステップS103~S107の処理は、評価対象ビットB[i]に関して、オフセット電圧の校正に適したバイナリ値(VAL[i])を特定する処理に相当する。オフセット電圧の校正に適したバイナリ値とは、“0”又は“1”の値の内、オフセット電圧と目標電圧(オフセット電圧の目標値;0V)との差の低減に適したバイナリ値である。目標電圧は0Vであるので、オフセット電圧と目標電圧との差の低減に適したバイナリ値は、オフセット電圧の低減に適したバイナリ値である。ステップS104で取得される信号CMPがハイレベルであるとき、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]に“0”を設定すれば、“1”を設定するよりも上記差は低減するので、“0”が上記差の低減に適する。逆に、ステップS104で取得される信号CMPがローレベルであるとき、評価対象ビットB[i]のバイナリ値VAL[i]に“1”を設定すれば、“0”を設定するよりも上記差は低減するので、“1”が上記差の低減に適する。後述の説明から明らかとなるよう、ステップS103~S107の処理はビットごとに実行される。このため、バイナリサーチによる単位動作では、デジタル信号DACINにおける最上位ビット(B[1])から最下位ビット(B[m])に向けてビットごとに、オフセット電圧と目標電圧(オフセット電圧の目標値;0V)との差の低減に適したバイナリ値が特定されることになる。
【0063】
ステップS108において、ロジック回路30は現在の評価対象ビットを評価済ビットに設定(分類)する。1回の単位動作において、一旦、評価済ビットに設定されたビットは、以後、評価済ビットのまま維持され、評価済ビットのバイナリ値は不変とされる。ステップS108の後、ステップS109に進む。
【0064】
ステップS109において、ロジック回路30は“i=m”の成否を判定する。“i=m”が成立している場合には(ステップS109のY)、ステップS114に進む。“i=m”が不成立の場合には(ステップS109のN)、ステップS110に進んで変数iに1を加算してからステップS111に進む。ステップS111において、ロジック回路30は“i<m”の成否を判定する。“i<m”が成立している場合には(ステップS111のY)、ステップS112に進む。“i<m”が不成立の場合には(ステップS111のN)、ステップS113に進む。
【0065】
ステップS112に進む段階では、2以上のビットが評価済ビットとなっていない。ステップS112において、ロジック回路30は、評価済ビットとなっていないビットの内、最も上位側のビットを評価対象ビットに設定し、且つ、他のビットを未評価ビットに設定する。即ち、ステップS112において、ロジック回路30は、ビットB[i]を評価対象ビットに設定し、且つ、ビットB[i+1]~B[m]を未評価ビットに設定する。ステップS112の後、ステップS103に戻って上述のステップS103以降の処理が実行される。
【0066】
例えば“i=2”のときに実行されるステップS103では、評価対象ビットであるビットB[2]のバイナリ値VAL[2]に“1”が設定され、且つ、未評価ビットであるビットB[3]~B[m]のバイナリ値VAL[3]~VAL[m]に全て“0”が設定される。“i=2”のとき、評価済ビットB[1]のバイナリ値VAL[1]は前回のステップS106又はS107にて設定された値を持つ。そして、“i=2”のとき、ステップS104及びS105の処理を経てステップS106又はS107によりビットB[2]のバイナリ値VAL[2]が“1”又は“0”に設定された上で、ステップS108にてビットB[2]が評価済ビットに設定される。変数iが3以上の場合も同様である。
【0067】
ステップS113に進む段階では、“i=m”であってビットB[1]~B[m-1]が評価済ビットに設定されており、ビットB[m]のみが評価済ビットに設定されていない。故に、ステップS113において、ロジック回路30はビットB[m]を評価対象ビットに設定する。ステップS113の後、ステップS103に戻って上述のステップS103以降の処理が実行される。“i=m”のときに実行されるステップS103では、評価対象ビットであるビットB[m]のバイナリ値VAL[m]に“1”が設定される。“i=m”のとき、未評価ビットに分類されるビットは存在しない。
【0068】
“i=m”のとき、評価済ビットB[1]~B[m-1]のバイナリ値VAL[1]~VAL[m-1]は、これまでに実行されたステップS106又はS107の処理にて設定された値を持つ。例えば “m=4”である場合において、“i=1”のときに1回目のステップS103~S105を経てステップS106に進むことで評価対象ビットB[1]に“0”が設定され、且つ、“i=2”のときに2回目のステップS103~S105を経てステップS107に進むことで評価対象ビットB[2]に“1”が設定され、且つ、“i=3”のときに3回目のステップS103~S105を経てステップS107に進むことで評価対象ビットB[3]に“1”が設定された場合を考える。この場合において、“i=m=4”となると、ステップS104にて、“(VAL[1],VAL[2],VAL[3],VAL[4])=(0,1,1,1)”を有するデジタル信号DACINがロジック回路30からDAC131に出力される。そして、“(VAL[1],VAL[2],VAL[3],VAL[4])=(0,1,1,1)”を有するデジタル信号DACINに対応する電圧DACOUTがDAC131から出力されている状態で、ロジック回路30はコンパレータ20の出力信号CMPを取得することになる。
【0069】
“i=m”のとき、ステップS104及びS105の処理を経てステップS106又はS107によりビットB[m]のバイナリ値VAL[m]が“1”又は“0”に設定された上で、ステップS108にてビットB[m]が評価済ビットに設定される。
【0070】
“i=m”のときにステップS109に至ることでステップS114に遷移する。ステップS114に至る段階では、ビットB[1]~B[m]が全て評価済ビットに設定されている。ステップS114において、ロジック回路30は、評価済ビットB[1]~B[m]のバイナリ値VAL[1]~VAL[m]にて示されるデジタル値D_VALを校正候補値に設定し、1回分の単位動作を終える。ステップS114にて設定される校正候補値が、
図8に示す校正用動作OP1における校正候補値D_A[j]に相当する。
図10に示す単位動作をn回繰り返し実行することにより、校正候補値D_A[1]~D_A[n]が得られる。
【0071】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。
図11に第2実施例に係る電流センサ200の構成を示す。第2実施例に係る半導体装置1は電流センサ200を有する。半導体装置1における半導体集積回路により電流センサ200が形成される。電流センサ200は、コンパレータ220、ロジック回路230及び基準電圧設定回路40を備える。端子REFは半導体装置1に設けられる外部端子である。第2実施例に係る基準電圧設定回路40は、第1実施例に係る基準電圧設定回路40と同じものであり、端子REFに供給された電圧V
REF_INに基づき基準電圧V
REFを設定及び出力する。
【0072】
第2実施例におけるシステムSYS(
図1参照)には、第1~第kブロックBLKが設けられる。kは2以上の任意の整数である。各ブロックBLKは互いに同じ構成を有する。各ブロックBLKは、増幅回路10と、端子AINP、AINN及びAOUTと、配線WR
S及びWR
AOUTと、センス抵抗R
SNSと、を有する。各配線WR
Sに流れる電流は記号“I
S”にて参照される。各ブロックBLKにおける増幅回路10は電流センサ200の構成要素であり、故に半導体装置1に設けられる。各ブロックBLKにおける端子AINP、AINN及びAOUTは、半導体装置1の外部端子である。各ブロックBLKにおける配線WR
S及びWR
AOUTは半導体装置1の外部に設けられた配線(即ち外部配線)である。各ブロックBLKにおけるセンス抵抗R
SNSは半導体装置1の外部に設けられた抵抗である。
【0073】
各ブロックBLKの増幅回路10は、第1実施例に係る増幅回路10と同じものであり、故に、第1実施例に係る増幅回路10と同じ構成を有し且つ同じ動作を行う。加えて、各ブロックBLKにおける増幅回路10と端子AINP、AINN及びAOUTと配線WRS及びWRAOUTとセンス抵抗RSNSとの接続関係は、第1実施例における増幅回路10と端子AINP、AINN及びAOUTと配線WRS及びWRAOUTとセンス抵抗RSNSとの接続関係と同じである。即ち、第1実施例における増幅回路10と端子AINP、AINN及びAOUTと配線WRS及びWRAOUTとセンス抵抗RSNSとから成る回路セットが、kセット分、第2実施例に係るシステムSYSに設けられる。上記回路セットに関して第1実施例で述べた事項は、矛盾無き限り、第2実施例の各ブロックBLKにおける回路セットに対しても適用される。
【0074】
電流センサ200は、ブロックBLKごとに端子AINP及びAINN間の電圧ΔVに基づいて電流ISを検出し、検出結果を示す信号SOUTを端子AOUTから出力する。各ブロックBLKにおいて電圧ΔVは端子AINNの電位から見た端子AINPの電圧を表す。各ブロックBLKにおいて端子AOUTは外部配線である配線WRAOUTを通じてMCU2に接続される。つまり、ブロックBLKごとに信号SOUTが端子AOUTからMCU2に出力される。各ブロックBLKにおいて信号SOUTは増幅回路10の出力電圧VAを示すアナログ電圧信号であり、故に、端子AOUTにはアナログの出力電圧VAが加わる。各ブロックBLKにおいて、電圧ΔVは増幅回路10の入力電圧に相当し、増幅回路10内のオペアンプAMPの出力端子から電流ISに応じた電圧VAが出力される。尚、電流センサ200において、アナログの出力電圧VAをデジタル信号に変換したものをMCU2に出力する構成が採用されても良い。
【0075】
以下、必要に応じ(
図12参照)、第pブロックBLKをブロックBLK[p]と表記する。ここにおけるpは1以上k以下の整数を表す。また、必要に応じ(
図12参照)、ブロックBLK[p]における増幅回路10、端子AINP、端子AINN、端子AOUT、配線WR
S、配線WR
AOUT、センス抵抗R
SNS、電流I
S、電圧ΔV、電圧V
A、信号SOUTを、夫々、増幅回路10[p]、端子AINP[p]、端子AINN[p]、端子AOUT[p]、配線WR
S[p]、配線WR
AOUT[p]、センス抵抗R
SNS[p]、電流I
S[p]、電圧ΔV[p]、電圧V
A[p]、信号SOUT[p]と表記する。
【0076】
電流センサ200は校正回路CRB2を備える。校正回路CRB2は、増幅回路10[1]~10[k]の夫々のオフセット電圧を校正する機能を持つ。増幅回路10[p]のオフセット電圧は、電圧ΔV[p]がゼロであるときの電圧VA[p]及びVREF間の差である。増幅回路10[p]のオフセット電圧がゼロであるとの仮定の下、電圧ΔV[p]がゼロであれば“VA[p]=VREF”となり、“ΔV[p]>0”であれば“VA[p]>VREF”となり、“ΔV[p]<0”であれば“VA[p]<VREF”となる。“ΔV[p]>0”又は“ΔV[p]<0”であるとき、電圧ΔV[p]の絶対値の増大につれて電圧VA[p]と基準電圧VREFとの差は増大する。
【0077】
各増幅回路10にはオフセット電圧を調整するための調整回路13(
図5参照)が設けられており、ロジック回路230は、増幅回路10ごとに調整回路13の制御を通じてオフセット電圧を校正できる。ロジック回路230から、ブロックBLKごとに、増幅回路10の調整回路13に対して(詳細には調整回路13内のDAC131に対して)デジタル信号DAC
INが出力される。ロジック回路230から増幅回路10[p]の調整回路13に対して出力されるデジタル信号DAC
INを特にデジタル信号DAC
IN[p]と表記する。
【0078】
ブロックBLKごとのデジタル信号DAC
INの構成は第1実施例で述べた通りである(
図7参照)。ブロックBLKごとに、調整回路13は、ロジック回路230から供給されるデジタル信号DAC
INに応じて(従ってデジタル値D_VALに応じて)増幅回路10のオフセット電圧を変化させる。各ブロックBLKにおいて、デジタル値D_VALの変化量を増大させればオフセット電圧の変化量も増大する。デジタル信号DAC
IN[p]におけるデジタル値D_VAL(
図6参照)を特にデジタル値D_VAL[p]と表記する。
【0079】
校正回路CRB2はロジック回路230と1以上のコンパレータ220を備える。校正回路CRB2に設けられるコンパレータ220の総数はk個未満でありうるが、ここでは、
図13に示す如く、校正回路CRB2にk個のコンパレータ220が設けられているものとする。k個のコンパレータ220を互いに区別する必要があるとき、k個のコンパレータ220をコンパレータ220[1]~220[k]と表記する。コンパレータ220[1]~220[k]は、夫々に第1実施例に係るコンパレータ20と同じものである。各コンパレータ220は、自身の非反転入力端子に加わる電圧と自身の反転入力端子に加わる電圧とを比較し、比較結果に応じた信号CMPを自身の出力端子から出力する。信号CMPはハイレベル又はローレベルを有する。コンパレータ220[p]から出力される信号CMPを特に信号CMP[p]と表記する。
【0080】
コンパレータ220[1]~220[k]の各反転入力端子は基準電圧VREFが加わる配線に接続され、基準電圧VREFを受ける。コンパレータ220[p]の非反転入力端子は増幅回路10[p]の出力電圧VA[p]が加わる配線に接続され、出力電圧VA[p]を受ける。このため、コンパレータ220[p]は、“VA[p]>VREF”が成立すれば(即ち電圧VA[p]が基準電圧VREFよりも高ければ)、ハイレベルの信号CMP[p]を出力し、“VA[p]<VREF”が成立すれば(即ち基準電圧VREFが電圧VA[p]よりも高ければ)、ローレベルの信号CMP[p]を出力する。“VA[p]=VREF”の成立時において信号CMP[p]はハイレベル及びローレベルの何れかとなる。各コンパレータ220の出力信号CMPはロジック回路230に供給される。
【0081】
校正回路CRB2は校正用動作OP2を行うことがきる。校正用動作OP2は、増幅回路10[1]~10[k]の各オフセット電圧を校正するために増幅回路10[1]~10[k]に対して実行される。例えば、MCU2からの所定の動作開始信号が半導体装置1にて受信されたことに応答して校正回路CRB2は校正用動作OP2を行う。或いは、半導体装置1に対する電源電圧の供給が開始されて半導体装置1が起動する際、MCU2からの信号に依らず、校正用動作OP2が行われるようにしても良い。何れにせよ、校正用動作OP2が行われる期間では電流IS[1]~IS[k]が全てゼロに保たれるものとする。
【0082】
図14に校正用動作OP2のフローチャートを示す。校正用動作OP2においては、まず、ステップS21にて評価動作OP2aが実行される。評価動作OP2aにおいて、増幅回路10[1]~10[k]に対して個別に単位動作が実行される。1つの増幅回路10に対して実行される単位動作は第1実施例で述べたものと同じであり、第1実施例で述べた単位動作に関する説明が第2実施例に適用される。この適用の際、第1実施例における記述“ロジック回路30”を“ロジック回路230”に読み替えれば良く、増幅回路10[p]に対する単位動作に第1実施例の説明文を適用する際、第1実施例の“コンパレータ20”及び“信号CMP”を夫々“コンパレータ220[p]”及び“信号CMP[p]”に読み替えれば良い。
【0083】
評価動作OP2aによりロジック回路230にて校正候補値D_B[1]~D_B[k]が導出される。校正候補値D_B[p]は、増幅回路10[p]のオフセット電圧を校正するためのデジタル値D_VAL[p]の候補に相当する。
図10の単位動作が増幅回路10[p]に対して実行される際、ステップS114にて設定される校正候補値が校正候補値D_B[p]である。
図10の単位動作が増幅回路10[1]~10[k]の夫々に対して実行されることで、校正候補値D_B[1]~D_B[k]が導出される。ステップS21の後、ステップS22に進む。
【0084】
尚、
図13の構成が採用される場合、増幅回路10[1]~10[k]に対する単位動作を同時に行う(即ち並行して行う)ことができる。第1実施例の評価動作OP1aでは、必要な校正候補値を全て得るためにn回の単位動作を順番に実行するだけの時間が必要である。これに対し、第2実施例の評価動作OP2aでは、単位動作の1回分の実行時間にて、必要な校正候補値を全て得ることができる。このため、第1実施例との比較において、校正にかかる時間を短縮可能である。
【0085】
ステップS22において、ロジック回路230は校正候補値D_B[1]~D_B[k]に基づき所定の正常終了条件の成否を判断する(換言すれば校正候補値D_B[1]~D_B[k]が正常終了条件を満たすかを判定する)。第2実施例に係る正常終了条件は、校正候補値D_B[1]~D_B[k]のばらつきに依存して成否が分岐する条件である。故に、ロジック回路230は校正候補値D_B[1]~D_B[k]のばらつきに基づき正常終了条件の成否を判断する。
【0086】
より具体的には、ロジック回路230は、校正候補値D_B[1]~D_B[k]における最大値及び最小値を特定する。そして、特定した最大値及び最小値間の差が規定値VALTHB以下であるとき、ロジック回路230は正常終了条件が成立すると判断する(即ち校正候補値D_B[1]~D_B[k]が正常終了条件を満たすと判断する)。一方、特定した最大値及び最小値間の差が規定値VALTHBを超えるとき、ロジック回路230は正常終了条件が不成立であると判断する。規定値VALTHBは所定の正の値(例えば2又は3)を有する。変形として、ロジック回路230は、校正候補値D_B[1]~D_B[k]の分散を導出し、導出した分散が規定値VALTHB以下であるときに正常終了条件が成立すると判断し、そうでないときに正常終了条件が不成立であると判断するようにしても良い。
【0087】
ステップS22において、正常終了条件が成立する場合には(ステップS22のY)ステップS23に進む。ステップS23において、ロジック回路230は、校正候補値D_B[1]~D_B[k]を、夫々、実校正値D_R[1]~D_R[k]に設定する。ステップS23に続くステップS24において、ロジック回路230は、増幅回路10ごとに、実校正値D_R[p]をデジタル値D_VAL[p]として有するデジタル信号DACIN[p]を増幅回路10[p]のDAC131に出力する。従って、実校正値D_R[1]をデジタル値D_VAL[1]として有するデジタル信号DACIN[1]が増幅回路10[1]のDAC131に出力され、実校正値D_R[2]をデジタル値D_VAL[2]として有するデジタル信号DACIN[2]が増幅回路10[2]のDAC131に出力される。増幅回路10[3]~10[k]についても同様である。
【0088】
ステップS24の処理の完了をもって校正用動作OP2が完了し、オフセット電圧が校正済みとなる。ステップS24の処理後において、増幅回路10ごとに、増幅回路10[p]内の電圧DACOUTは、実校正値D_R[p]に対応する電圧(即ち実校正値D_R[p]を増幅回路10[p]内のDAC131にてアナログ電圧信号に変換することで得られた電圧)に維持され、増幅回路10[p]のオフセット電圧はゼロ又はゼロに十分に近い電圧となる。
【0089】
校正用動作OP2の実行期間において半導体装置1はスタンバイ状態にあり、校正用動作OP2の完了後に半導体装置1は実稼働状態に移行する。実稼働状態において、ブロックBLKごとに、電流ISが配線WRSに流れ、実校正値D_Rを用いて校正済みの増幅回路10から電流ISに応じた電圧VAが出力される。そして、ブロックBLKごとに電圧VAを表す信号SOUTがMCU2に供給される。
【0090】
ステップS22において、正常終了条件が不成立の場合には(ステップS22のN)ステップS25に進む。尚、正常終了条件の不成立は、校正候補値D_B[1]~D_B[k]が正常終了条件を逸脱することと等価である。ステップS25において、ロジック回路230は評価動作OP2aにて導出された校正候補値D_B[1]~D_B[k]を破棄し、その後、ステップS21に戻る。このため、ステップS25に至った場合、評価動作OP2aが再実行され、再実行される評価動作OP2aの中で校正候補値D_B[1]~D_B[k]が改めて導出されることになる。
【0091】
尚、ステップS22において正常終了条件が不成立の場合、
図15に示す如く、ステップS25aに進むようにしても良い。ステップS25aにおいてロジック回路230はエラー処理を実行し、校正用動作OP2を終える。エラー処理は所定のエラー信号を半導体装置1からMCU2に出力する処理を含む。エラー信号は校正用動作OP2が正常に終了しなかった旨を指し示す。或いは、エラー信号は半導体装置1にて何らかの異常が検出された旨を指し示す。
図14のフローチャートを採用した上で、評価動作OP2aをL回繰り返しても正常終了条件が成立しない場合に限り、上記エラー処理を行うようにしても良い(Lは2以上の任意の整数)。
【0092】
校正用動作OP2にて特性が校正されるべき回路を対象回路と称した場合、校正回路CRB2は、対象回路ごとに、対応する単位動作において、デジタル値D_VALを変化させながら対象回路の特性を評価し、評価結果に基づき対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときのデジタル値を校正候補値として導出する。本実施例では、各々の増幅回路10が対象回路であり、校正されるべき対象回路の特性はオフセット電圧であり、故に目標特性は目標電圧にて表される。ここにおける目標電圧は、オフセット電圧の目標値(理想のオフセット電圧)を表し、0Vである。即ち、対象回路ごとに、対応する単位動作では、デジタル値D_VALを変化させながらオフセット電圧を評価して、評価結果に基づきオフセット電圧と目標電圧との差を最小化させるときのデジタル値D_VAL(換言すればオフセット電圧を最小化させるときのデジタル値D_VAL)を校正候補値として導出する。
【0093】
校正回路CRB2は、対象回路ごとに、対応する単位動作において、バイナリサーチにより実校正値の元となる校正候補値を導出する。バイナリサーチでは、デジタル信号DACINにおける最上位ビット(B[1])から最下位ビット(B[m])に向けてビットごとに、オフセット電圧の校正に適したバイナリ値が特定される。
【0094】
バイナリサーチの実行過程において、半導体装置1にノイズが混入するなどの理由により、理想的なバイナリ値が探索できないことがある。特に、比較的上位側のビットに対して校正用のバイナリ値を探索しているときにノイズの影響により不適正なバイナリ値が校正用の値として選択されることが考えられる。この場合において、その結果をそのまま用いてオフセット電圧の校正を行ったならば、オフセット電圧が校正前よりも増大することもあり得る。これを考慮し、本実施例では、同一の構成を持つ複数の対象回路(本実施例では増幅回路10[1]~10[k])に対して個別に単位動作を実行し、対象回路ごとに校正用の値の候補(校正候補値)を導出する。そして、複数の校正候補値のばらつきが小さいときに、ノイズ等の影響を受けていない校正候補値が得られたと判断して、得られた校正候補値を対象回路ごとに実校正値として利用する。これにより、ノイズ等の影響を受けにくい適正な校正が可能となる。
【0095】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例では第2実施例に適用可能な変形技術を説明する。
【0096】
第2実施例において、
図13の構成が採用される場合、上述したように、増幅回路10[1]~10[k]に対する単位動作を同時に行う(即ち並行して行う)ことができる。但し、増幅回路10[1]~10[k]の内、任意の2つの増幅回路に対する単位動作が互いに異なるタイミングで実行されても良い。
【0097】
第2実施例において、校正回路CRB2に設けられるコンパレータ220の総数をk未満としても良い。この場合、k個未満のコンパレータ220を、時分割で用いて、増幅回路10[1]~10[k]に対する単位動作を行うことができる。
【0098】
例えば、“k=4”である場合、校正回路CRB2に設けられるコンパレータ220をコンパレータ220[1]及び220[2]のみとしても良い。この場合、コンパレータ220[1]の非反転入力端子に電圧VA[1]及びVA[2]の何れか一方を選択的に入力するセレクタと、コンパレータ220[2]の非反転入力端子に電圧VA[3]及びVA[4]の何れか一方を選択的に入力するセレクタと、を校正回路CRB2に設けておく。そして、評価動作OP2aにおいて、増幅回路10[1]及び10[3]に対する単位動作を行った後に、増幅回路10[2]及び10[4]に対する単位動作を行えば良い。この際、増幅回路10[1]及び10[3]に対する単位動作が行われるときには、コンパレータ220[1]及び220[2]の非反転入力端子にそれぞれ電圧VA[1]及びVA[3]を入力し、増幅回路10[2]及び10[4]に対する単位動作が行われるときには、コンパレータ220[1]及び220[2]の非反転入力端子にそれぞれ電圧VA[2]及びVA[4]を入力すれば良い。
【0099】
或いは例えば、“k=3”である場合、校正回路CRB2に設けられるコンパレータ220をコンパレータ220[1]のみとしても良い。この場合、コンパレータ220[1]の非反転入力端子に電圧VA[1]~VA[3]の何れか1つを選択的に入力するセレクタを校正回路CRB2に設けておく。そして、評価動作OP2aにおいて、増幅回路10[1]に対する単位動作、増幅回路10[2]に対する単位動作、及び、増幅回路10[3]に対する単位動作を、順番に実行すれば良い。この際、増幅回路10[p]に対する単位動作が行われるときには、コンパレータ220[1]の非反転入力端子に電圧VA[p]を入力すれば良い(ここにおけるpは1以上3以下の整数)。
【0100】
第2実施例に係る電流センサ200に対し第1実施例に係る校正用動作OP1を行うことも可能である。この場合、増幅回路10[1]~10[k]に対して個別に校正用動作OP1を行えば良い。但し、電流センサ200の如く、同一の構成を有する複数の増幅回路10を校正するにあたっては、第2実施例に係る校正用動作OP2を用いた方が、校正に必要な時間を短縮できる可能性が高い。
【0101】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。電流センサ200を含む半導体装置1の例として、
図16にゲートドライバ1aを示す。第4実施例に係るシステムSYSは、モータ駆動システムであって、ゲートドライバ1a、MCU(Micro Controller Unit)2及びモータ3、を備える。ゲートドライバ1aにおいて“k=3”であり、増幅回路10[1]~10[3]を有する電流センサ200(
図12参照)がゲートドライバ1aに内蔵される。
【0102】
モータ3は、三相分のコイルL[1]~コイルL[3]を備えた三相ブラシレス直流モータである。モータ3は、ステータと永久磁石を備えたロータとを有し、ステータにコイルL[1]~L[3]が設けられる。ここではコイルL[1]~[3]がスター結線されているものとする。コイルL[1]~[3]はデルタ結線されていても良い。但し、コイルL[1]、L[2]、L[3]は、夫々、第1相、第2相、第3相のコイルである。第1相、第2相、第3相は、夫々、U相、V相、W相に相当する。
【0103】
システムSYSには、三相分のハーフブリッジ回路HB[1]~HB[3]、及び、三相分のセンス抵抗RSNS[1]~RSNS[3]が設けられる。ハーフブリッジ回路HB[1]、HB[2]及びHB[3]は、夫々に、パワー電源電圧VPWRが加わる電源配線とグランドとの間に設けられる。パワー電源電圧VPWRは所定の正の直流電圧である。ハーフブリッジ回路HB[1]、HB[2]及びHB[3]は、夫々に、互いに直列接続されたハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタから成る。ハーフブリッジ回路HB[1]~HB[3]における各トランジスタはNチャネル型のMOSFETとして構成される。
【0104】
各ハイサイドトランジスタのドレインにパワー電源電圧VPWRが加わる。ハーフブリッジ回路HB[p]において、ハイサイドトランジスタのソース及びローサイドトランジスタのドレインはノードND[p]にて共通接続される。ここにおけるpは1以上3以下の整数である。ハーフブリッジ回路HB[p]におけるローサイドトランジスタのソースはセンス抵抗RSNS[p]を介してグランドに接続される。ノードND[1]、ND[2]、ND[3]は、夫々、コイルL[1]の一端、コイルL[2]の一端、コイルL[3]の一端に接続される。コイルL[1]~L[3]の各他端は中性点NPにて互いに共通接続される。コイルL[1]、L[2]、L[3]に流れる電流は、夫々、センス抵抗RSNS[1]、RSNS[2]、RSNS[3]を通過する。このため、ゲートドライバ1a内の電流センサ200にて、コイルL[1]、L[2]及びL[3]に流れる電流を検出でき、その検出結果を示す信号SOUT[1]~SOUT[3]が端子AOUT[1]~AOUT[3]を通じてゲートドライバ1aからMCU2に出力される。
【0105】
MUC2は、信号SOUT[1]~SOUT[3]に基づき駆動制御信号を生成してゲートドライバ1aに供給することができる。ゲートドライバ1aは、供給された駆動制御信号に基づき、ハーフブリッジ回路HB[1]~HB[3]における計6つのトランジスタのゲートを駆動することで、計6つのトランジスタのオン、オフを制御する。結果、ハーフブリッジ回路HB[1]~HB[3]を通じてコイルL[1]~L[3]に電流が供給されてモータ3が駆動する。
【0106】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第5実施例では、上述の各事項に対する変形技術などを説明する。
【0107】
半導体装置1の例として第4実施例にてゲートドライバ1aを挙げたが、本開示に係る半導体装置1は、特性が校正されるべき対象回路と校正用動作を行う校正回路とを備えた任意の半導体装置であって良い。
【0108】
例えば、半導体装置1は、
図17に示すDC/DCコンバータ10b及び校正回路CRBbを備えた半導体装置であっても良い。DC/DCコンバータ10bは直流の入力電圧V
INを他の直流の出力電圧V
OUTに変換して出力する。DC/DCコンバータ10bにおいて、出力電圧V
OUTが所定の目標出力電圧V
TGと極力一致することが要求され、この要求を満たすためにDC/DCコンバータ10b内に調整回路13bが設けられる。
【0109】
DC/DCコンバータ10bにおいて、出力電圧VOUTに応じた帰還電圧がDC/DCコンバータ10b内で生成された参照電圧と一致するように帰還制御が行われる。ここで、帰還電圧は可変抵抗を含む分圧回路を用いて出力電圧VOUTのJ倍になるものとする。分圧回路内の可変抵抗は調整回路13bに設けられ、当該可変抵抗の抵抗値の変更によりJの値が変更される。調整回路13bの可変抵抗はデジタルポテンショメータであり、校正回路CRBbからのマルチビットのデジタル信号に基づき調整回路13bの可変抵抗の抵抗値が可変設定される。
【0110】
このようなDC/DCコンバータ10b及び校正回路13bを含む半導体装置に対し、第1実施例に係る校正用動作OP1を用いることができる。この際、特性が校正されるべき対象回路はDC/DCコンバータ10bであり、校正されるべき対象回路の特性は出力電圧VOUTであり、目標特性(対象回路の特性の目標)は目標出力電圧VTGにて表される。
【0111】
校正用動作OP1により、出力電圧VOUT及び目標出力電圧VTG間の差を低減(望ましくは最小化)するための校正を実現できる。半導体装置1内にDC/DCコンバータ10bが複数設けられる場合には、校正用動作OP2を利用することもできる。校正用動作OP1又はOP2において、出力電圧VOUTが目標出力電圧VTGと比べて高いか低いかは、バンドギャップリファレンス等を用いて生成された高精度の基準電圧と出力電圧VOUTとの比較により判断されれば良い。
【0112】
或いは例えば、半導体装置1は、
図18に示す発振回路10c及び校正回路CRBcを備えた半導体装置であっても良い。発振回路10cはクロック信号CLKを生成して出力する。クロック信号CLKは周波数f
CLKを有する矩形波信号である。発振回路10cにおいて、周波数f
CLKが所定の目標周波数f
TGと極力一致することが要求され、この要求を満たすために発振回路10c内に調整回路13cが設けられる。
【0113】
発振回路10cは発振用抵抗及び発振用容量を有して成る発振器であり、周波数fCLKは発振用抵抗の抵抗値及び発振用容量の静電容量値に依存する。ここで、発振用抵抗は調整回路13cに設けられた可変抵抗とされる。この場合、校正回路CRBcからのマルチビットのデジタル信号に基づき調整回路13cの可変抵抗の抵抗値が可変設定(変更)されることで、周波数fCLKが可変設定(変更)される。或いは、発振用容量は調整回路13cに設けられた可変容量とされる。この場合、校正回路CRBcからのマルチビットのデジタル信号に基づき調整回路13cの可変容量の静電容量値が可変設定(変更)されることで、周波数fCLKが可変設定(変更)される。
【0114】
このような発振回路10c及び校正回路13bを含む半導体装置に対し、第1実施例に係る校正用動作OP1を用いることができる。この際、特性が校正されるべき対象回路は発振回路10cであり、校正されるべき対象回路の特性は周波数fCLKであり、目標特性(対象回路の特性の目標)は目標周波数fTGにて表される。
【0115】
校正用動作OP1により、周波数fCLK及び目標周波数fTG間の差を低減(望ましくは最小化)するための校正を実現できる。半導体装置1内に発振回路10cが複数設けられる場合には、校正用動作OP2を利用することもできる。校正用動作OP1又はOP2において、周波数fCLKが目標周波数fTGと比べて高いか低いかは、周波数fCLKと基準クロック信号CLKREFの周波数との比較により判断されれば良い。基準クロック信号CLKREFは、目標周波数fTGを有する矩形波信号であって、校正回路CRBcの外部から校正回路CRBcに対して供給される。
【0116】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0117】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0118】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0119】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0120】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0121】
本開示の一側面に係る半導体装置は(
図1~
図9参照)、対象回路(10)と、前記対象回路に対する校正用動作(OP1)を行うよう構成された校正回路(CRB1)と、を備え、前記対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値(D_VAL)に応じて前記対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路(13)を有し、前記校正用動作は、前記対象回路に対して複数の単位動作を繰り返し実行する評価動作(OP1a)を含み、前記校正回路は、各単位動作において、前記デジタル値を変化させながら前記対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき前記対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値(D_A[j])として導出し、前記校正回路は、前記複数の単位動作にて導出された複数の校正候補値(D_A[1]~D_A[n])が所定条件を満たすとき、前記複数の校正候補値に基づく実校正値(D_R)を用いて前記対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する(
図8参照)又は所定のエラー信号を出力する(
図9参照)構成(第1の構成)である。
【0122】
ノイズ等の影響により適正な校正用の値が取得されないことがある。これを考慮し、第1の構成に係る半導体装置では、単位動作を複数回実行し、各単位動作において校正用の値の候補(校正候補値)を導出する。ノイズ等の影響が生じている場合、複数の校正候補値の中に、異常値が含まれると予想される。そこで、複数の校正候補値に基づき所定条件の成否を判断し、複数の校正候補値が所定条件を満たすときに複数の校正候補値に基づく実校正値を用いて前記対象回路の特性を校正する。これにより、ノイズ等の影響を受けにくい適正な校正が可能となる。
【0123】
上記第1の構成に係る半導体装置に係り、前記校正回路は、各単位動作において、バイナリサーチにより前記校正候補値を導出する構成(第2の構成)であっても良い。
【0124】
バイナリサーチにおいて上位側ビットに対する評価の過程でノイズ等の影響が生じると、求められる校正用の値と理想値との乖離が非常に大きくなるが、複数の校正候補値に基づき所定条件の成否を判断する方法を採用することで、ノイズ等の影響を受けた値で校正が行われることが回避される。
【0125】
上記第2の構成に係る半導体装置に係り、前記デジタル値は、第1ビットから第mビットまでのmビット分のデジタル信号(DACIN)の値であり(mは2以上の整数)、第iビットは第(i+1)ビットの上位側ビットであり(iは(m-1)以下の自然数)、各ビットは0又は1のバイナリ値を有し、前記校正回路は、各単位動作において、前記第1ビットから前記第mビットに向けてビットごとに前記差の低減に適した前記バイナリ値を特定し、これによって前記校正候補値を導出する構成(第3の構成)であっても良い。
【0126】
上記第1の構成に係る半導体装置に係り、前記校正回路は、前記複数の校正候補値のばらつきに基づき前記所定条件の成否を判断する構成(第4の構成)であっても良い。
【0127】
これにより例えば、ノイズ等の影響により複数の校正候補値の中に異常値が含まれるときに、所定条件が不成立であると判断することが可能となる。
【0128】
上記第4の構成に係る半導体装置に係り、前記複数の校正候補値における最小値と前記複数の校正候補値における最大値との差が規定値以下であるとき、前記所定条件が満たされ、前記校正回路は、前記複数の校正候補値の平均に基づき前記実校正値を設定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0129】
上記第1~第5の構成の何れかに係る半導体装置に係り、前記対象回路は増幅回路であって、前記対象回路の特性は前記増幅回路のオフセット電圧であり、前記校正回路は、各単位動作において、前記増幅回路のオフセット電圧を最小化させるときの前記デジタル値を前記校正候補値として導出する構成(第6の構成)であっても良い。
【0130】
本開示の他の一側面に係る半導体装置は(
図11~
図15参照)、複数の対象回路(10[1]~10[k])と、前記複数の対象回路に対する校正用動作(OP2)を行うよう構成された校正回路(CRB2)と、を備え、各対象回路は、前記校正回路から供給されるデジタル値(D_VAL[p])に応じて当該対象回路の特性を変化させるよう構成された調整回路(13)を有し、前記校正用動作は前記対象回路ごとに単位動作を実行する評価動作(OP2a)を含み、前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、対応するデジタル値を変化させながら当該対象回路の特性を評価して、評価結果に基づき当該対象回路の特性と目標特性との差を最小化させるときの前記デジタル値を校正候補値(D_B[p])として導出し、前記対象回路ごとの単位動作を経て前記複数の対象回路に対する複数の校正候補値(D_B[1]~D_B[k])が導出され、前記校正回路は、前記複数の校正候補値が所定条件を満たすとき、前記対象回路ごとに、対応する校正候補値を実校正値(D_R[p])として用いて当該対象回路の特性を校正し、前記複数の校正候補値が前記所定条件を逸脱するとき、前記評価動作を再実行する(
図14参照)又は所定のエラー信号を出力する(
図15参照)構成(第7の構成)である。
【0131】
ノイズ等の影響により適正な校正用の値が取得されないことがある。これを考慮し、第7の構成に係る半導体装置では、複数の対象回路の夫々に対して単位動作を実行し、対象回路ごとに校正用の値の候補(校正候補値)を導出する。ノイズ等の影響が生じている場合、複数の校正候補値の中に、異常値が含まれると予想される。そこで、複数の校正候補値に基づき所定条件の成否を判断し、複数の校正候補値が所定条件を満たすときに各校正候補値を各実校正値として用いて各対象回路の特性を校正する。これにより、ノイズ等の影響を受けにくい適正な校正が可能となる。
【0132】
上記第7の構成に係る半導体装置に係り、前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、バイナリサーチにより前記校正候補値を導出する構成(第8の構成)であっても良い。
【0133】
バイナリサーチにおいて上位側ビットに対する評価の過程でノイズ等の影響が生じると、求められる校正用の値と理想値との乖離が非常に大きくなるが、複数の校正候補値に基づき所定条件の成否を判断する方法を採用することで、ノイズ等の影響を受けた値で校正が行われることが回避される。
【0134】
上記第8の構成に係る半導体装置に係り、各対象回路において、前記デジタル値は、第1ビットから第mビットまでのmビット分のデジタル信号(DACIN)の値であり(mは2以上の整数)、第iビットは第(i+1)ビットの上位側ビットであり(iは(m-1)以下の自然数)、各ビットは0又は1のバイナリ値を有し、前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、前記第1ビットから前記第mビットに向けてビットごとに前記差の低減に適した前記バイナリ値を特定し、これによって前記校正候補値を導出する構成(第9の構成)であっても良い。
【0135】
上記第7の構成に係る半導体装置に係り、前記校正回路は、前記複数の校正候補値のばらつきに基づき前記所定条件の成否を判断する構成(第10の構成)であっても良い。
【0136】
これにより例えば、ノイズ等の影響により複数の校正候補値の中に異常値が含まれるときに、所定条件が不成立であると判断することが可能となる。
【0137】
上記第10の構成に係る半導体装置に係り、前記複数の校正候補値における最小値と前記複数の校正候補値における最大値との差が規定値以下であるとき、前記所定条件が満たされる構成(第11の構成)であっても良い。
【0138】
上記第7~第11の構成の何れかに係る半導体装置に係り、各対象回路は増幅回路であって、各対象回路の特性は各増幅回路のオフセット電圧であり、前記校正回路は、前記対象回路ごとに、対応する単位動作において、前記増幅回路のオフセット電圧を最小化させるときの前記デジタル値を前記校正候補値として導出する構成(第12の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0139】
SYS システム
1 半導体装置
2 MCU
MM 記憶回路
100、200 電流センサ
10、10[1]~10[k] 増幅回路
20、220、220[1]~220[k] コンパレータ
30、230 ロジック回路
40 基準電圧設定回路
AMP オペアンプ
RSNS、RSNS[1]~RSNS[k] センス抵抗
R1~R4 抵抗
CRB1、CRB2 校正回路
11 入力段
12 出力段
13 調整回路
111、112、133、134 トランジスタ
113、132 定電流源
114、115 抵抗
131 DAC
1a ゲートドライバ
3 モータ
L[1]~L[3] コイル
HB[1]~HB[3] ハーフブリッジ回路
10b DC/DCコンバータ
10c 発振回路
13b、13c 調整回路
CRBb、CRBc 校正回路