(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147508
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】レーダーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20231005BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20231005BHJP
H01Q 3/04 20060101ALI20231005BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01S7/03 230
H01Q21/28
H01Q3/04
H01Q3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055042
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛治
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】西原 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】箭内 多聞
(72)【発明者】
【氏名】村田 真一
(72)【発明者】
【氏名】清田 春信
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA04
5J021AA10
5J021AA11
5J021DA04
5J021DB05
5J021HA04
5J070AD08
5J070AE02
5J070AE04
5J070AF05
5J070AG01
5J070AH31
5J070AH40
(57)【要約】
【課題】回転機構に搭載しやすいレーダーシステムを提供する。
【解決手段】本発明のレーダーシステムは、N個のアンテナ装置と、分配・合成器と送受信装置を有する。アンテナ装置は、アンテナ、送受弁別器、周波数変換部、アンテナ周波数弁別器を備える。送受信装置は、クロック発振器、送信部、送受周波数弁別器、A/D変換部を備える。周波数変換部は、受信RF信号をアンテナごとに異なる周波数の受信IF信号に変換し、アンテナ周波数弁別器へ出力する。分配・合成器は、送受周波数弁別器からの送信RF信号をN個に分配して、N個のアンテナ周波数弁別器に出力し、N個のアンテナ周波数弁別器からの受信IF信号を合成した信号である合成受信IF信号を送受周波数弁別器に出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個のアンテナ装置と、分配・合成器と送受信装置を有するレーダーシステムであって、
Nは2以上の整数であり、
N個の前記アンテナ装置と前記分配・合成器は、N個の前記アンテナ装置の指向角同士が重複しないように回転機構に配置され、
前記アンテナ装置は、アンテナ、送受弁別器、周波数変換部、アンテナ周波数弁別器を備え、
前記送受信装置は、クロック発振器、送信部、送受周波数弁別器、A/D変換部を備え、
前記送受弁別器は、前記アンテナ周波数弁別器からの送信RF信号を前記アンテナへ出力するとともに、前記アンテナからの受信RF信号を前記周波数変換部へ出力し、
前記周波数変換部は、受信RF信号をアンテナごとに異なる周波数の受信IF信号に変換し、前記アンテナ周波数弁別器へ出力し、
前記アンテナ周波数弁別器は、前記分配・合成器からの送信RF信号を前記送受弁別器へ出力するとともに、前記周波数変換部からの受信IF信号を前記分配・合成器へ出力し、
前記分配・合成器は、前記送受周波数弁別器からの送信RF信号をN個に分配して、N個の前記アンテナ周波数弁別器に出力し、N個の前記アンテナ周波数弁別器からの受信IF信号を合成した信号である合成受信IF信号を前記送受周波数弁別器に出力し、
前記クロック発振器は、前記送受信装置内の処理のためのクロック信号を生成し、
前記送信部は、送信RF信号を前記送受周波数弁別器へ出力し、
前記送受周波数弁別器は、前記送信部からの送信RF信号を前記分配・合成器へ出力するとともに、前記分配・合成器からの合成受信IF信号、もしくは合成受信IF信号をN個の前記アンテナ周波数弁別器からの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号を前記A/D変換部に出力し、
A/D変換部は、前記送受周波数分別器からの信号を、デジタル信号に変換する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項2】
請求項1記載のレーダーシステムであって、
前記送受信装置は、受信チャネル弁別器も備え、
前記送受周波数弁別器は、合成受信IF信号を前記A/D変換部に出力し、
前記A/D変換部は、前記合成受信IF信号を、合成デジタルIF信号に変換し、
前記受信チャネル弁別器は、合成デジタルIF信号を、前記アンテナ装置ごとのデジタルIF信号に分割する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項3】
請求項1記載のレーダーシステムであって、
前記送受信装置は、前記A/D変換部をN個備えており、
前記送受周波数弁別器は、合成受信IF信号をN個の前記アンテナ周波数弁別器からの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号のそれぞれを、対応する前記A/D変換部に出力し、
N個の前記A/D変換部は、前記アンテナ装置ごとのデジタルIF信号を出力する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項4】
請求項1記載のレーダーシステムであって、
前記送受信装置は、IFスイッチも備えており、
前記送受周波数弁別器は、合成受信IF信号をN個の前記アンテナ周波数弁別器からの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号を、前記IFスイッチに出力し、
前記IFスイッチは、N個の受信IF信号から1つの受信IF信号を選択して前記A/D変換部へ出力し、
前記A/D変換部は、入力された受信IF信号をデジタルIF信号に変換する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のレーダーシステムであって、
前記送受信装置は、基準発振器も備え、
前記周波数変換部は、前記基準発振器が生成した信号から受信RF信号を受信IF信号に変換するための信号を生成する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のレーダーシステムであって、
前記送受信装置は、アンテナ装置制御部、制御変調器も備え、
前記周波数変換部は、制御復調器も備え、
前記制御変調器と前記制御復調器は、前記送信RF信号に重畳して制御のための信号の送受信を行い、
前記アンテナ装置制御部は、前記アンテナ装置を制御する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項7】
請求項6記載のレーダーシステムであって、
前記アンテナ装置は、前記周波数変換部への受信RF信号を遮断する切替器も備え、
前記アンテナ装置制御部は、送信RF信号を出力するタイミングで、前記切替器が前記周波数変換部への受信RF信号を遮断するように制御する
ことを特徴とするレーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構にアンテナを搭載するレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーの最も基本的な形態は、水平方向に狭く垂直方向に比較的広い指向性をもつファンビームパターンのアンテナを機械駆動により水平方向に回転させる捜索レーダーである。この形態のレーダーは1組のアンテナ装置と送受信装置からなり、送信から受信までの時間とアンテナの指向角によって反射物の位置を特定するものである。簡素な構成であり、比較的安価に実現できることから船舶用レーダーなどで広く用いられる。
【0003】
近年、自動車への自動運転技術の導入が盛んである。自動車の自動運転では、ミリ波レーダーやステレオカメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)などの複数のセンサーを用いて周辺環境を認識することで運転操作を判断する(特許文献1など)。自動運転導入の機運は船舶でも例外ではない。ただし、自動車と船舶との違いに進路変更に要する時間があり、船舶の方が圧倒的に遅い。そのため、船舶の場合は、より広範な周辺環境を把握する必要がある。ミリ波レーダーではその最大探知距離に限りがあるため、船舶の自動航行には従来から用いられているX帯などの低い周波数が適している。また、自動運転ではより細密な周辺環境の把握、および突発的な事象への対応の観点から更新レート(測定結果を更新する頻度)は高い方が望ましい。測定結果の更新レートは一般的にはアンテナの回転速度に依存するので、レーダー用のアンテナの回転速度は高速であることが望ましい。複数のレーダーを異なる方向に用いることで回転速度を高くしない方法として、特許文献2のような技術がある。
【0004】
特許文献2の技術は、アンテナ装置と送受信装置の組み合わせを複数有するレーダーである。
図1に、1つのアンテナを回転機構に搭載したレーダーの例を示す。
図1(A)は、アンテナの平面図である。アンテナは、水平方向に回転している。
図1(B)はレーダーからの出力画面である。濃く塗られた部分が更新されている。
図2に、4つのアンテナを回転機構に搭載したレーダーの例を示す。
図2(A)は、アンテナの平面図である。アンテナは、水平方向に回転している。
図2(B)はレーダーからの出力画面である。濃く塗られた部分が更新されている。4つのアンテナを有しているので、回転速度が同じでも更新レートが高くなることが分かる。特許文献2は複数のアンテナを用いる例である。
図3は、アンテナ装置と送受信装置の組み合わせを複数有するレーダーの例を示している。
図3のレーダーシステムは、N個のアンテナ装置910
1,…,910
NとN個の送受信装置930
1,…,930
Nを有する。N個のアンテナ装置910
1,…,910
NとN個の送受信装置930
1,…,930
Nは、回転機構950に搭載される。送受信装置930
1,…,930
Nと外部との接続は、ロータリージョイント940を介して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-66240号公報
【特許文献2】特開平9-236656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の船舶用レーダーはミリ波と比べて周波数が低いことからアンテナ寸法が大きくなり、かつ機械駆動式であることから、アンテナの回転速度を高速にすることには限界がある。また、アンテナの指向角制御を電子走査式に変更することも考えられるが、装置規模が大きく、高価になってしまう。
【0007】
船舶用レーダーは世界中で広く使用されていることから入手性が良いため、船舶用途とは異なる利用も行われている。その一つとして今後利用が活発化するだろう小型飛翔体(ドローン)の運行監視がある。しかし一般的なドローンは軽量化が命題であり、機体材質・大きさともにレーダー断面積を小さくする方向に働くため探知が困難である。この対策として、アンテナの回転速度を下げてターゲットへの電波照射回数を増やし、積算効果で探知性能を向上する手段があるが、移動速度が速いターゲットの場合には追尾が困難になる。
図3に示す構成の場合、回転機構950にアンテナ装置910
1,…,910
Nと送受信装置930
1,…,930
Nの組み合わせを搭載する必要があり、装置規模が大きくなるという問題がある。また、外部と接続するための配線も多くなるため、ロータリージョイント940が大きくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、回転機構に搭載しやすいレーダーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーダーシステムは、N個のアンテナ装置と、分配・合成器と送受信装置を有する。Nは2以上の整数である。N個のアンテナ装置と分配・合成器は、N個のアンテナ装置の指向角同士が重複しないように回転機構に配置される。アンテナ装置は、アンテナ、送受弁別器、周波数変換部、アンテナ周波数弁別器を備える。送受信装置は、クロック発振器、送信部、送受周波数弁別器、A/D変換部を備える。送受弁別器は、アンテナ周波数弁別器からの送信RF信号をアンテナへ出力するとともに、アンテナからの受信RF信号を周波数変換部へ出力する。周波数変換部は、受信RF信号をアンテナごとに異なる周波数の受信IF信号に変換し、アンテナ周波数弁別器へ出力する。アンテナ周波数弁別器は、分配・合成器からの送信RF信号を送受弁別器へ出力するとともに、周波数変換部からの受信IF信号を分配・合成器へ出力する。分配・合成器は、送受周波数弁別器からの送信RF信号をN個に分配して、N個のアンテナ周波数弁別器に出力し、N個のアンテナ周波数弁別器からの受信IF信号を合成した信号である合成受信IF信号を送受周波数弁別器に出力する。クロック発振器は、送受信装置内の処理のためのクロック信号を生成する。送信部は、送信RF信号を送受周波数弁別器へ出力する。送受周波数弁別器は、送信部からの送信RF信号を分配・合成器へ出力するとともに、分配・合成器からの合成受信IF信号、もしくは合成受信IF信号をN個のアンテナ周波数弁別器からの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号をA/D変換部に出力する。A/D変換部は、送受周波数分別器からの信号を、デジタル信号に変換する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレーダーシステムによれば、アンテナ装置から送受信装置に送られる受信IF信号は、アンテナごとに異なる周波数である。したがって、送受信装置をアンテナ装置ごとに備える必要がないので、回転機構に送受信装置を搭載する必要がない。よって、回転機構に搭載しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】1つのアンテナを回転機構に搭載したレーダーの例を示す図。
【
図2】4つのアンテナを回転機構に搭載したレーダーの例を示す図。
【
図3】アンテナ装置と送受信装置の組み合わせを複数有するレーダーの例を示す図。
【
図4】本発明のレーダーシステムの構成例を示す図。
【
図7】実施例1のレーダーシステムの概要を説明するため図。
【
図8】実施例1変形例1の送受信装置の構成例を示す図。
【
図9】実施例1変形例2の送受信装置の構成例を示す図。
【
図10】実施例2のアンテナ装置の構成例を示す図。
【
図12】実施例3のアンテナ装置の構成例を示す図。
【
図14】実施例3の制御信号の伝送手法の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。以下の説明では、Nは2以上の整数、nは1以上N以下の整数とする。
【実施例0013】
図4に実施例1のレーダーシステムの構成例を示す。
図5は実施例1のアンテナ装置の構成例、
図6は実施例1の送受信装置の構成例である。
図7は実施例1のレーダーシステムの概要を説明するため図である。レーダーシステムは、N個のアンテナ装置100
1,…,100
Nと、分配・合成器300と送受信装置200を有する。N個のアンテナ装置100
1,…,100
Nと分配・合成器300は、N個のアンテナ装置100
1,…,100
Nの指向角同士が重複しないように回転機構950に配置される。分配・合成器300と送受信装置200との接続は、ロータリージョイント440を介して行われる。ロータリージョイント440にはRF信号の伝送用途として広く用いられている1芯の同軸タイプを想定する。回転機構950はN個のアンテナ装置100
1,…,100
Nと分配・合成器300を水平方向に回転させる。
【0014】
アンテナ装置100nは、アンテナ110n、送受弁別器120n、周波数変換部140n、アンテナ周波数弁別器130nを備える。送受信装置200は、クロック発振器240、送信部210、送受周波数弁別器220、A/D変換部230、受信チャネル弁別器250、電源部260を備える。
【0015】
アンテナ110nは、従来のレーダーと同様のアンテナを想定する。例えば、長手方向が水平方向に向いたアレーアンテナを用いればよい。長手方向が水平方向に向いたアレーアンテナであれば、水平方向に狭く垂直方向に比較的広い指向性をもつファンビームパターンにできる。したがって、アンテナ装置1001,…,100Nの指向角同士が重複しないように回転機構950に配置しやすい。
【0016】
送受弁別器120nは、アンテナ周波数弁別器130nからの送信RF信号をアンテナ110nへ出力するとともに、アンテナ110nからの受信RF信号を周波数変換部140nへ出力する。
【0017】
周波数変換部140nは、受信RF信号をアンテナ110nごとに異なる周波数の受信IF信号に変換し、アンテナ周波数弁別器130nへ出力する。周波数変換部140nは、周波数変換器141n、局部発振器142n、基準発振器143n、定電圧器144n、制御器145nを備えればよい。周波数変換器141nは、受信RF信号と局部発振器142nから入力される局部発振信号を乗算し、受信IF信号を出力する。なお、周波数変換器141nには、RF・IFの増幅器や帯域制限フィルタ等も含むものとする。局部発振器142nは、基準発振器143nからの基準信号を基に、制御器145nの制御に従って局部発振信号を周波数変換器141nへ出力する。基準発振器143nは定電圧器144nから入力される直流電源により駆動し、あらかじめ定まった基準信号を局部発振器142nへ出力する。制御器145nはソフトウェアを内蔵し、定電圧器144nから直流電源が入力されると自発的に所定の制御信号を局部発振器142nに送る。所定の制御信号とは、例えば局部発振器142nが出力する局部発振信号の周波数である。定電圧器144nはアンテナ周波数弁別器130nから供給される直流電力を、周波数変換器141n、局部発振器142n、基準発振器143n、制御器145nで必要な電源電圧にそれぞれ変換して出力する。必要な電源電圧がすべて等しい場合、定電圧器144nは省略してもよい。なお、局部発振信号の周波数は、N個のアンテナ装置1001,…,100Nでそれぞれ異なる値とし、N個の受信IF信号はそれぞれ異なる周波数である。こうすることで、各アンテナ装置100nからの受信信号を周波数によって識別することが可能になる。
【0018】
アンテナ周波数弁別器130nは、分配・合成器300からの送信RF信号を送受弁別器120nへ出力するとともに、周波数変換部140nからの受信IF信号を分配・合成器300へ出力する。また、アンテナ周波数弁別器130nは、分配・合成器300からの直流電力を周波数変換部140nの定電圧器144nに供給する。アンテナ周波数弁別器130nは、例えばRFハイパスフィルタとIFバンドパスフィルタ、および直流通過のインダクタなどで構成すればよい。こうすることで、アンテナ周波数弁別器130nと分配・合成器300の間の信号線を1つ(=1芯)とし、RF・IF・直流電源を重畳して伝送することが可能になる。
【0019】
分配・合成器300は、送受周波数弁別器220からの送信RF信号をN個に分配して、N個のアンテナ周波数弁別器1301,…,130Nに出力し、N個のアンテナ周波数弁別器1301,…,130Nからの受信IF信号を合成した信号である合成受信IF信号を送受周波数弁別器220に出力する。分配・合成器300は、直流からRF信号の周波数までをN個に分配する。分配・合成器300には、例えば抵抗分配・合成器を用いればよい。
【0020】
クロック発振器240は、送受信装置200内の処理のためのクロック信号を生成する。クロック発振器240は、N個の受信IF信号のうち最大の周波数の2倍以上のクロック信号を生成し、A/D変換部230へクロック信号を出力すればよい。送信部210が半導体増幅器を有する固体素子レーダーの場合、クロック信号は送信部210にも出力される。
【0021】
送信部210は、送信RF信号を送受周波数弁別器220へ出力する。送信部210は、従来の送受信装置の送信部と同じであり、送信RF信号を生成し、送受周波数弁別器220へ出力する。
【0022】
送受周波数弁別器220は、送信部210からの送信RF信号を分配・合成器300へ出力するとともに、分配・合成器300からの合成受信IF信号をA/D変換部230に出力する。送受周波数弁別器220は、アンテナ周波数弁別器130nと同じ機能を有する。
【0023】
A/D変換部230は、合成受信IF信号を、合成デジタルIF信号に変換し、受信チャネル弁別器250に出力する。A/D変換部230は、N個の受信IF信号のうち最大の周波数の2倍以上のクロック信号にて動作する。
【0024】
受信チャネル弁別器250は、合成デジタルIF信号を、アンテナ装置100nごとのデジタルIF信号に分割する。受信チャネル弁別器250は、N個の受信IF信号の周波数に対応したN個のバンドパスフィルタを有し、合成デジタルIF信号をN個のアンテナ装置1001,…,100Nに対応した信号に分割する。
【0025】
電源部260では、N個のアンテナ装置1001,…,100Nで使用する電力を生成し、送受周波数弁別器220、ロータリージョイント440、分配・合成器300を介して各アンテナ装置100nに電力を供給する。
【0026】
次に、
図7を参照しながら、アンテナ装置の数を2とした場合の動作を具体的に説明する。
図7は、アンテナ周波数弁別器130
1,130
2および送受周波数弁別器220の具体例を示している。送信部210で生成した送信RF信号は、送受周波数弁別器220、ロータリージョイント440を経由して分配・合成器300へ出力される。このときの送信RF信号の周波数を9410MHzとする。分配・合成器300は、送信RF信号を2分配して2つのアンテナ装置100
1,100
2に等しいレベルの送信RF信号を出力する。アンテナ装置100
nに入力された送信RF信号は、ともにアンテナ周波数弁別器130
n、送受弁別器120
nを経由してアンテナ110
nから空間へ放射される。アンテナ110
nから放射され周辺の物体で反射した信号は、受信RF信号としてアンテナ110
nに入力され、送受弁別器120
nを介して周波数変換部140
nに入力される。周波数変換部140
nでは、受信RF信号を受信IF信号に周波数変換するが、局部発振器142
nから出力される局部発振信号の周波数を2個のアンテナ装置100
1,100
2でわずかに変えることで、各アンテナ装置100
nから出力される受信IF信号の周波数を変える。例えば、受信IF信号の周波数をそれぞれ30MHz、50MHzとする。周波数変換部140
nから出力された受信IF信号は、アンテナ周波数弁別器130
n、分配・合成器300、ロータリージョイント440、送受周波数弁別器220を経由してA/D変換部230へ出力される。ここでクロック発振器240のクロック信号の周波数を150MHzとすると、ナイキスト周波数は75MHzであり、2種類の周波数をもつ合成受信IF信号を受信することができる。A/D変換部230では、合成受信IF信号を合成デジタルIF信号に変換し、受信チャネル弁別器250内でデジタルIF信号をそれぞれ30MHz、50MHzのバンドパスフィルタに入力すれば、2つのアンテナ装置100
1,100
2における受信信号が個別に処理可能となり、2つのアンテナ装置100
1,100
2の測定結果を同時に得ることができる。
【0027】
実施例1のレーダーシステムによれば、アンテナ装置1001,…,100Nから送受信装置200に送られる受信IF信号は、アンテナごとに異なる周波数である。したがって、送受信装置200をアンテナ装置100nごとに備える必要がないので、回転機構950に送受信装置200を搭載する必要がない。よって、実施例1のレーダーシステムは、回転機構950に搭載しやすい。
[変形例1]
【0028】
図8に、実施例1変形例1の送受信装置の構成例を示す。送受信装置201は、クロック発振器240、送信部210、送受周波数弁別器221、A/D変換部231
1,…,231
N、電源部260を備える。送受周波数弁別器221は、合成受信IF信号をN個のアンテナ周波数弁別器130
1,…,130
Nからの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号のそれぞれを、対応するA/D変換部231
1,…,231
Nに出力する。A/D変換部231
nは、アンテナ装置100
nごとのデジタルIF信号を出力する。その他は、実施例1と同じである。
[変形例2]
【0029】
図9に、実施例1変形例2の送受信装置の構成例を示す。送受信装置202は、クロック発振器240、送信部210、送受周波数弁別器221、IFスイッチ280、A/D変換部230、電源部260を備える。送受周波数弁別器221は、合成受信IF信号をN個のアンテナ周波数弁別器130
1,…,130
Nからの受信IF信号に弁別したN個の受信IF信号を、IFスイッチ280に出力する。IFスイッチ280は、N個の受信IF信号から1つの受信IF信号を選択してA/D変換部230へ出力する。A/D変換部230は、入力された受信IF信号をデジタルIF信号に変換する。その他は、実施例1と同じである。
【0030】
なお、
図8,9の構成は受信IF信号の周波数を適切に選択することによって、クロック信号の周波数を低減することも可能である。例えば、受信IF信号の一方を30MHzのままとし、他方を125MHzとして前者をオーバーサンプリング、後者をアンダーサンプリングで処理すれば、クロック信号の周波数を75MHzに低減できる。加えてアンダーサンプリングの活用は、例えば、クロック信号の周波数を150MHzとした場合、受信IF周波数を30MHzと50MHz、180MHzと200MHzとして、前の2つの周波数をオーバーサンプリング、後の2つをアンダーサンプリングとするなど、受信IF信号の周波数の追加、つまり同時に測定を行うアンテナ装置の数Nの増加にも有用である。
基準発振器243は、送受信装置203内に配置されており、基準信号を生成する。送受周波数弁別器223は、送信部210からの送信RF信号とともに、基準発振器243からの基準信号も一緒に、アンテナ装置1031,…,103Nに送る。アンテナ周波数弁別器133nは、分配・合成器300からの送信RF信号を送受弁別器120nへ出力するとともに、周波数変換部150nからの受信IF信号を分配・合成器300へ出力する。また、アンテナ周波数弁別器133nは、分配・合成器300からの直流電力を周波数変換部150nの定電圧器144nに供給する。