(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147513
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】吸音材及び吸音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20231005BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G10K11/162
C08J9/04 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055051
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】三村 貴信
(72)【発明者】
【氏名】大塚 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森本 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢佑
【テーマコード(参考)】
4F074
5D061
【Fターム(参考)】
4F074AA56
4F074AA78
4F074AE04
4F074BA34
4F074CA12
4F074DA02
4F074DA07
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4F074DA57
5D061AA02
5D061AA22
5D061AA25
5D061DD11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】磁性フィラー等の強磁性体を備えていなくても、吸音性及び放熱性の観点から有利な吸音材を提供する。
【解決手段】吸音材1aは、母材10と、熱伝導性有機繊維20とを備えている。母材10は、有機ポリマーを含んでおり、連通孔12を有する。熱伝導性有機繊維20は、母材10の内部に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーを含み、連通孔を有する母材と、
前記母材の内部に配置された熱伝導性有機繊維と、を備えた、
吸音材。
【請求項2】
前記吸音材は、50%以上の連通孔率を有する、請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記吸音材は、1.0×106N・s・m-4以下の流れ抵抗を有し、
前記流れ抵抗は、ISO 9053-1:2018によって規定されたStatic airflow methodに従って決定される、
請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記吸音材は、0.5g/cm3以下の密度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項5】
前記有機ポリマーは、ポリウレタンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項6】
前記吸音材は、強磁性体を含んでいない、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項7】
前記吸音材は、複数の前記熱伝導性有機繊維を含み、
前記複数の前記熱伝導性有機繊維は、特定方向に沿って延びている、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項8】
前記熱伝導性有機繊維は、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール繊維である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項9】
前記熱伝導性有機繊維の周囲に重合性化合物及び発泡剤を含有する流動性組成物を供給して前記熱伝導性有機繊維同士の隙間を充填するとともに前記流動性組成物の一部を前記熱伝導性有機繊維に含浸させることと、
前記重合性化合物及び発泡剤が関与する反応によって前記流動性組成物を発泡させながら、有機ポリマーを含み、かつ、連通孔を有する母材を形成することと、を含む、
吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及び吸音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレタン発泡成形体に放熱性又は熱伝導性を付与する試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1~4には、発泡ウレタン樹脂原料と、磁性フィラーとが混合された混合材料を磁場中で発泡成形して、ウレタン発泡成形体を製造することが記載されている。例えば、特許文献1に記載のウレタン発泡成形体は、高い放熱性と所望の吸音特性との両方を備えている。このウレタン発泡成形体では、磁性フィラーは、球以外の形状をなし、互いに線接触および面接触の少なくとも一方により連接して配向している。磁性フィラーの熱伝導性が良好であるので、このウレタン発泡成形体の一端に加わった熱は、磁性フィラーを介して他端に伝達され、他端から速やかに放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-51148号公報
【特許文献2】特開2010-126677号公報
【特許文献3】特開2011-51166号公報
【特許文献4】特開2014-65159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4に記載の技術によれば、ウレタン発泡成形体に放熱性を付与するためには、発泡ウレタン樹脂原料及び磁性フィラー等の強磁性体を含む混合材料を磁場中で発泡成形させる必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、磁性フィラー等の強磁性体を備えていなくても、吸音性及び放熱性の観点から有利な吸音材を提供する。また、本発明は、そのような吸音材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
有機ポリマーを含み、連通孔を有する母材と、
前記母材の内部に配置された熱伝導性有機繊維と、を備えた、
吸音材を提供する。
【0008】
また、本発明は、
前記熱伝導性有機繊維の周囲に重合性化合物及び発泡剤を含有する流動性組成物を供給して前記熱伝導性有機繊維同士の隙間を充填するとともに前記流動性組成物の一部を前記熱伝導性有機繊維に含浸させることと、
前記重合性化合物及び発泡剤が関与する反応によって前記流動性組成物を発泡させながら、有機ポリマーを含み、かつ、連通孔を有する母材を形成することと、を含む、
吸音材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記の吸音材は、磁性フィラー等の強磁性体を備えていなくても、吸音性及び放熱性の観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る吸音材の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すII-II線を切断線とする吸音材の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る吸音材の製造方法の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る吸音材の製造方法の別の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、下記の説明は、本発明を例示的に説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1及び
図2に示す、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交している。
【0012】
図1及び
図2に示す通り、吸音材1aは、母材10と、熱伝導性有機繊維20とを備えている。母材10は、有機ポリマーを含んでおり、連通孔12を有する。熱伝導性有機繊維20は、母材10の内部に配置されている。母材10が連通孔12を有することにより、吸音材1aは所望の吸音性を発揮しやすい。加えて、吸音材1aは、熱伝導性有機繊維20を備えているので、磁性フィラー等の強磁性体を備えていなくても、所望の放熱性又は熱伝導性を有しやすい。
【0013】
発泡ウレタン樹脂原料と、磁性フィラーとが混合された混合材料を磁場中で発泡成形して得られたウレタン発泡成形体は、放熱性と吸音特性との両方を備えうる。このようなウレタン発泡成形体では、磁性フィラーが互いに点接触および面接触の少なくとも一方により連接して配向して伝熱路が形成されていると考えられる。磁性フィラー同士の接触により伝熱路を形成する場合、ウレタン発泡成形体が高い放熱性を有するためには、ウレタン発泡成形体において磁性フィラーが比較的大きな体積を占めている必要がある。なぜなら、ウレタン発泡成形体において、磁性フィラーの全部が伝熱路を形成するように配置されているわけではなく、伝熱路の形成に関与しない磁性フィラーも含まれうるからである。加えて、磁性フィラー同士の接触に伴う接触熱抵抗が不可避であることも放熱性の観点からは有利であるとは言い難い。磁性フィラーの密度は大きいので、ウレタン発泡成形体において磁性フィラーが比較的大きな体積を占めていると、ウレタン発泡成形体の密度も大きくなり、軽量化の観点から有利であるとは言い難い。また、磁場中での発泡成形において、磁性フィラーの線接触および面接触の少なくとも一方により磁性フィラーを互いに連接させて配向させることが可能な空間の大きさには限りがあると考えられる。このため、ウレタン発泡成形体の磁場の方向における寸法を大きくすることには限界があると理解される。
【0014】
一方、吸音材1aによれば、熱伝導性有機繊維20によって伝熱路が形成され、伝熱路の形成に関与しない熱伝導性有機繊維20が少なく、フィラー同士の接触熱抵抗も発生しない。このため、吸音材1aにおいて熱伝導性有機繊維20が占める体積が小さくても吸音材1aが所望の放熱性又は熱伝導性を有しやすい。加えて、熱伝導性有機繊維20の密度は小さいので、吸音材1aの密度が小さくなりやすい。さらに、吸音材1aの製造において磁場をかける必要がないので、様々な形状及び寸法を有する吸音材1aを製造しやすい。
【0015】
吸音材1aは、例えば、強磁性体を含んでいない。このような構成によれば、吸音材1aの密度がより小さくなりやすい。吸音材1aは、例えば、非磁性体のみによって構成されている。ニッケル、鉄、コバルト、及びそれら合金等の強磁性体は、金属元素を含んでおり、導電性を有する。吸音材1aが強磁性体を含んでいないと、吸音材1aが電気絶縁性を有しやすい。
【0016】
図1及び
図2に示す通り、吸音材1aは、例えば、複数の熱伝導性有機繊維20を含んでいる。吸音材1aにおける複数の熱伝導性有機繊維20の配置は特定の配置に限定されない。
図2に示す通り、吸音材1aにおいて複数の熱伝導性有機繊維20は、例えば、特定方向(Z軸方向)に沿って延びている。このような構成によれば、複数の熱伝導性有機繊維20によって特定方向に延びる伝熱路が形成され、吸音材1aが特定方向において吸音材1aが高い放熱性又は熱伝導性を有しやすい。
【0017】
図1に示す通り、特定方向に垂直な吸音材1aの平面又は断面を見たときに、複数の熱伝導性有機繊維20は、例えば、第一方向(Y軸方向)において等間隔で配置されている。複数の熱伝導性有機繊維20は、例えば、その平面又は断面において第一方向(Y軸方向)に交差する第二方向(X軸方向)において等間隔で配置されている。特定方向に垂直な吸音材1aの平面又は断面を見たときに、複数の熱伝導性有機繊維20は、正方形格子及び平行四辺形格子等の平面格子をなすように配置されていてもよい。平面格子は、2つの独立な方向へのそれぞれ一定距離の平行移動で不変な平面上の点の配列である。
【0018】
図2に示す通り、熱伝導性有機繊維20は、例えば、吸音材1aの特定方向における一端から他端まで延びている。このような構成によれば、吸音材1aが特定方向において所望の放熱性又は熱伝導性をより有しやすい。
【0019】
吸音材1aの形状は、特定の形状に限定されない。吸音材1aは、例えば、互いに平行な一対の面を有する形状である。吸音材1aは、直方体状であってもよいし、板状であってもよいし、棒状であってもよいし、ドーム状であってもよいし、球殻状であってもよいし、半球殻状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0020】
吸音材1aの体積に対する熱伝導性有機繊維20の体積の比は、特定の値に限定されない。その比は、例えば50%以下である。このように、吸音材1aにおける熱伝導性有機繊維20が高くなくても、吸音材1aが高い放熱性又は熱伝導性を有しやすい。吸音材1aの体積に対する熱伝導性有機繊維20の体積の比は、40%以下であってもよく、30%以下であってもよく、20%以下であってもよく、10%以下であってもよい。その比は、例えば0.5%以上であり、1%以上であってもよく、2%以上であってもよく、5%以上であってもよく、10%以上であってもよく、20%以上であってもよい。
【0021】
吸音材1aの流れ抵抗は、特定の値に限定されない。吸音材1aは、例えば、1.0×106N・s・m-4以下の流れ抵抗を有する。この場合、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。吸音材1aの流れ抵抗は、例えば、ISO 9053-1:2018によって規定されたStatic airflow methodに従って決定される。
【0022】
吸音材1aの流れ抵抗は、望ましくは2.0×106N・s・m-4以下であり、より望ましくは5.0×105N・s・m-4以下であり、さらに望ましくは1.0×105N・s・m-4以下である。吸音材1aの流れ抵抗は、例えば5.0×103N・s・m-4以上である。
【0023】
吸音材1aは、例えば、熱伝導性有機繊維20が延びている方向である特定方向(Z軸方向)において、上記の流れ抵抗を有しうる。この場合、吸音材1aは、特定方向において所望の吸音性及び所望の放熱性又は熱伝導性を発揮しやすい。
【0024】
吸音材1aの連通孔率は、特定の値に限定されない。連通孔率は、吸音材1aの体積に対する連通孔12の体積の比に相当する。吸音材1aは、例えば、50%以上の連通孔率を有する。この場合、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。吸音材1aの連通孔率は、例えば、米国材料試験協会規格(ASTM)D2856-94(1998)に準拠して、測定できる。
【0025】
吸音材1aの連通孔率は、望ましくは60%以上であり、より望ましくは70%以上であり、さらに望ましくは80%以上であり、特に望ましくは90%以上である。吸音材1aの連通孔率は、例えば99%以下である。
【0026】
吸音材1aの密度は、特定の値に限定されない。吸音材1aは、例えば0.9g/cm3以下の密度を有する。本明細書において、吸音材1aの密度とは見掛け密度を意味する。吸音材1aの密度は、例えば、日本産業規格(JIS) K7222:2005に準拠して測定できる。
【0027】
吸音材1aの密度は、0.8g/cm3以下であってもよく、0.7g/cm3以下であってもよく、0.6g/cm3以下であってもよく、0.5g/cm3以下であってもよい。吸音材1aの密度は、例えば0.01g/cm3以上である。
【0028】
吸音材1aの平均吸音率は特定の値に限定されない。吸音材1aの平均吸音率は、例えば、0.4以上である。この場合、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。吸音材1aの平均吸音率は、吸音材1aから作製された試験体を用いて、日本産業規格(JIS) A 1405-2:2007に準拠して測定される、1000~5000Hzの周波数帯域での1/3オクターブバンドの中心値周波数1000、1250、1600、2000、2500、3150、4000、及び5000Hzにおける垂直入射の吸音率を平均したものである。試験体の厚みは、例えば20mmである。試験体の厚み方向に沿って熱伝導性有機繊維20が延びている。
【0029】
吸音材1aの平均吸音率は、望ましくは0.45以上であり、0.5以上であってもよく、0.55以上であってもよい。吸音材1aの平均吸音率は、例えば1未満であり、0.95以下であってもよく、0.9以下であってもよい。
【0030】
吸音材1aの熱伝導率λは、特定の値に限定されない。吸音材1aは、例えば0.4Wm-1K-1以上であり、望ましくは0.6Wm-1K-1以上であり、より望ましくは0.8Wm-1K-1以上である。吸音材1aの熱伝導率λは、例えば15Wm-1K-1以下である。吸音材1aの熱伝導率λは、例えば、特定方向(Z軸方向)における熱伝導率である。吸音材1aの熱伝導率λは、ASTM D5470-01(一方向熱流定常法)に準拠して、試験体1枚及び対称構成方式にて測定される。
【0031】
吸音材1aの特定方向(Z軸方向)における断面積1m2当たりの熱コンダクタンスkは、特定の値に限定されない。熱コンダクタンスkは、λ/Lである。Lは、特定方向における吸音材1aの寸法であり、例えば、20mmである。換言すると、熱コンダクタンスkは、吸音材1aから作製された、Lが20mmである試験体における断面積1m2当たりの熱コンダクタンスである。吸音材1aの熱コンダクタンスkは、例えば10WK-1m-2以上であり、望ましくは20WK-1m-2以上であり、より望ましくは30WK-1m-2以上である。吸音材1aの熱コンダクタンスkは、例えば、3000WK-1m-2以下である。
【0032】
吸音材1aの特定方向(Z軸方向)における体積抵抗率ρvは、特定の値に限定されない。吸音材1aの体積抵抗率ρvは、例えば1.0×1010Ω・cm以上である。この場合、吸音材1aが所望の電気絶縁性を有しやすい。吸音材1aにおいて、熱伝導性有機繊維20によって伝熱路が形成されている。吸音材1aの体積抵抗率ρvは、例えば、25℃における値である。吸音材1aの体積抵抗率ρvは、望ましくは2.0×1010Ω・cm以上であり、より望ましくは5.0×1010Ω・cm以上であり、さらに望ましくは1.0×1011Ω・cm以上である。吸音材1aの体積抵抗率ρvは、例えば1.0×1015Ω・cm以下である。
【0033】
吸音材1aにおいて、母材10は、例えば、連続構造を有し、熱伝導性有機繊維20同士の空間が母材10によって充填されている。
【0034】
母材10に含まれる有機ポリマーは、特定のポリマーに限定されない。母材10に含まれる有機ポリマーは、発泡により連通孔12を形成可能なポリマーである。母材10に含まれる有機ポリマーは、例えばポリウレタンである。この場合、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。母材10は、望ましくは軟質ポリウレタンフォームである。これにより、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。
【0035】
定常熱流法によって決定される熱伝導性繊維20の繊維軸方向における常温下での熱伝導率は、例えば、10W・m-1・K-1以上である。熱伝導性有機繊維20は、特定の繊維に限定されない。熱伝導性有機繊維20は、例えば、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維である。この場合、熱伝導性有機繊維20が高い熱伝導率を有しやすく、吸音材1aの特定方向における熱伝導率が高くなりやすく。このため、吸音材1aが所望の放熱性又は熱伝導性をより発揮しやすい。
【0036】
吸音材1aを製造する方法は特定の方法に限定されない。吸音材1aは、例えば、下記(I)及び(II)の工程を含む方法によって製造されうる。
(I)熱伝導性有機繊維20の周囲に重合性化合物及び発泡剤を含有する流動性組成物15を供給して熱伝導性有機繊維20同士の隙間を充填するとともに流動性組成物15の一部を熱伝導性有機繊維20に含浸させる。
(II)重合性化合物及び発泡剤が関与する反応によって流動性組成物15を発泡させながら、有機ポリマーを含み、かつ、連通孔12を有する母材10を形成する。
【0037】
(I)の工程において、熱伝導性有機繊維20の周囲に流動性組成物15が供給されて熱伝導性有機繊維20同士の隙間が充填されるので吸音材1aにおいて熱伝導性有機繊維20が所望の状態に配置されやすく、吸音材1aの放熱性又は熱伝導性の空間的なばらつきが発生しにくい。
【0038】
(I)の工程において、熱伝導性有機繊維20に流動性組成物15を含浸させることができるので、熱伝導性有機繊維20が母材10によって所望の強度で固定されやすい。(I)の工程において、望ましくは、熱伝導性有機繊維20が延びる方向に沿って流動性組成物15が供給される。これにより、熱伝導性有機繊維20の多くの部分に流動性組成物15を含浸させやすく、熱伝導性有機繊維20が母材10によって所望の強度でより固定されやすい。
【0039】
図3及び
図4は、吸音材1aの製造方法の一例を模式的に示す。
図3に示す通り、(I)の工程において、例えば、所定量の熱伝導性有機繊維20が巻き付けられた複数のフレーム25が所定間隔で配置される。各フレーム25は、一対の直線状かつ板状の水平部の一端同士が直線状かつ板状の接続部によって接続された構造を有している。各フレーム25において、一対の水平部に対して、所定量の熱伝導性有機繊維20が巻き付けられている。複数のフレーム25を所定間隔で配置する場合、フレーム25同士の間には、スペーサ(図示省略)が配置されうる。フレーム25同士の隙間に流動性組成物15が供給される。
【0040】
図4に示す通り、例えば、一対のプレート27同士の距離が一定となるように一対のプレート27が固定される。各プレート27には、例えば、等間隔で形成された複数の貫通孔を有する。プレート27同士の間にはスペーサ(図示省略)が配置されうる。一対のプレート27において互いに向かい合う一対の貫通孔の一方から他方に熱伝導性有機繊維20を通し、熱伝導性有機繊維20の向きを反転させて互いに向かい合う別の対の貫通孔の一方から他方に通す作業が繰り返される。これにより、熱伝導性有機繊維20を所定間隔で配置できる。プレート27同士の間に流動性組成物15が供給される。
【0041】
流動性組成物15における、重合性化合物及び発泡剤は特定の物質に限定されない。母材10に含まれる有機ポリマーがポリウレタンである場合、重合性化合物は、イソシアネート及びアルコールである。重合性化合物は、例えば多官能重合性化合物であり、例えばポリイソシアネート及びポリオールである。発泡剤は、例えば水である。
【0042】
重合性化合物であるポリイソシアネートは、特定のポリイソシアネートに限定されない。例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート指数(NCO INDEX)は特定の値に限定されない。イソシアネート指数は、ポリオール及び水等の活性水素化合物の水酸基当量に対するイソシアネートのイソシアネート基当量の比を100倍することによって決定される。ポリイソシアネートのイソシアネート指数は、望ましくは50~150であり、より望ましくは80~120である。この場合、母材10の成形がしやすく、吸音材1aが所望の吸音性をより発揮しやすい。
【0043】
ポリオールは、特定のポリオールに限定されない。ポリオールは、望ましくは、10~250の水酸基価及び2~6の平均官能基数を有し、より望ましくは、20~150の水酸基価及び2~4の平均官能基数を有する。ポリオールの水酸基価は、「JIS K 1557-1 プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法-第1部:水酸基価の求め方」に準拠して測定できる。ポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、及びアクリルポリオールである。重合性化合物は、望ましくは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。まず、実施例の評価方法について説明する。
【0045】
(流れ抵抗の測定)
各実施例及び各比較例に係るサンプルから、流れ抵抗を測定するための試験体を作製し、Mecanum社製のSIGMAを用いて、ISO 9053-1:2018によって規定されたStatic airflow methodに従って、試験体の流れ抵抗を決定した。結果を表1に示す。各実施例並びに比較例2及び3に係る各試験体において、空気の流れ方向に沿ってPBO繊維が延びていた。
【0046】
(連通孔率の測定)
島津製作所社製の乾式自動密度計アキュピックII 1340を用いて、各実施例及び各比較例に係るサンプルの連通孔率をASTM D2856-94(1998)に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0047】
(密度dの測定)
JIS K7222:2005に従って、各実施例及び各比較例に係るサンプルの見掛け密度を測定し、密度dを決定した。結果を表1に示す。
【0048】
(平均吸音率の測定)
各実施例及び各比較例に係るサンプルから、平均吸音率を測定するための試験体を作製した。試験体の厚みは20mmであった。各実施例並びに比較例2及び3に係る各試験体の厚み方向に沿ってPBO繊維が延びていた。
【0049】
日本音響エンジニアリング社製の垂直入射吸音率測定システムWinZacMTXの音響管の内部に試験体を配置し、JIS A 1405-2:2007に準拠して垂直入射吸音率を測定し、1000~5000Hzの周波数帯域での1/3オクターブバンドの中心値周波数1000、1250、1600、2000、2500、3150、4000、及び5000Hzにおける垂直入射の吸音率の算術平均を求め、平均吸音率を決定した。結果を表1に示す。
【0050】
(熱伝導率λの測定)
各実施例及び各比較例に係るサンプルから、熱伝導率λを測定するための試験片を作製した。各試験片は、板状であり、平面視で20mm平方の正方形状であり、3mmの厚みを有していた。各実施例及び比較例2及び3に係る試験片において、試験片の厚み方向に沿ってPBO繊維が延びていた。各試験片の両面に信越シリコーン社製のシリコーンオイルコンパウンドG-747を塗布して試験ブロックを作製した。シリコーンオイルコンパウンドの熱伝導率は、0.90W・m-1・K-1であった。
【0051】
レスカ社製の熱伝導率測定装置TCM 1001を用いて、ASTM D5470-01(一方向熱流定常法)に準拠して、試験体1枚及び対称構成方式において熱流計法に従って、各試験片の厚み方向における熱伝導率λを測定した。標準ロッドとして、加熱ブロック(80℃)を有する上部ロッド及び冷却ブロック(20℃)を有する下部ロッドを使用した。試験ブロックを無酸素銅製のブロックで挟み、さらに上部ロッドと下部ロッドとで試験ブロック及び無酸素銅製のブロックを挟み、試験片の厚み方向に熱を流した。
【0052】
試験片の上面及び下面の間の温度差ΔTSを下記式(1)及び(2)に従って決定した。式(1)及び(2)において、ΔTCは、無酸素銅製のブロックの上面及び下面の間の温度差である。加えて、q1は、上部ロッドの測温点における温度差とそれらの測定点間の距離とに基づく温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]であり、q2は、下部ロッドの測温点における温度差と測定点間の距離とに基づく温度勾配によって決定される熱流束[W/m2]である。tbは、無酸素銅製のブロックの厚みの和である。kbは、無酸素銅製のブロックの熱伝導率である。
ΔTS=ΔTC-(qS×tb)/kb 式(1)
qS=(q1+q2)/2 式(2)
【0053】
試験片の厚み方向における熱伝導率λ[W・m-1・K-1]を、下記式(3)に従って決定した。結果を表1に示す。式(3)において、tは、試験片の厚みである。
λ=qS×t/ΔTS 式(3)
【0054】
(熱コンダクタンス)
平均吸音率の測定に用いた試験体の特定方向(Z軸方向)における断面積1m2当たりの熱コンダクタンスkを、k=λ/Lの関係に基づいて求めた。Lは、試験体の厚みであり、20mmである。結果を表1に示す。
【0055】
(体積抵抗率)
実施例2に係るサンプルから、体積抵抗率を測定するための試験体を作製した。実施例2に係る試験体において、長さ方向に沿ってPBO繊維が延びていた。アジレント・テクノロジー社製のハイレジスタンスメータ及び試験体を用いて、国際電気標準会議(IEC) 62631-3-1に準拠して23℃の環境で実施例2に係るサンプルの体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(絶縁破壊強さ)
ヤマヨ試験機社製の絶縁破壊試験装置YST-243-100RHOを用いて、大気中23℃の条件下でIEC60243-1に準拠して、実施例2に係るサンプルから作製した試料の絶縁破壊強さを測定した。結果を表1に示す。
【0057】
<実施例1>
図3に示すような形状を有するフレームを準備し、一対の直線状かつ板状の水平部に対して、所定量の東洋紡社製のPBO繊維 Zylon HM1992を巻き付けた。Zylonは、東洋紡社の登録商標である。藤代他,低温工学,28巻,533頁(1993)に記載の定常熱流法によって決定されるPBO繊維の繊維軸方向における常温下での熱伝導率は、50W・m
-1・K
-1であった。このようにしてPBO繊維が巻き付けられた複数のフレームを準備し、それらを一定の間隔を設けて互いに平行に並べた。
【0058】
ポリオールa(三洋化成工業社製 サンニックスGP-3000R(グリセリンのPO付加物)、平均分子量:約3000、官能基数:3、水酸基価:約56)と、発泡剤である水と、日東化成社製の有機錫触媒 ネオスタンU-28、ダウ・東レ社製の整泡剤L-580を混合して撹拌した。混合物におけるポリオール、発泡剤、有機錫触媒、及び整泡剤の添加量は、それぞれ、100質量部、4.5質量部、0.15質量部、及び1.0質量部であった。その後、トルエンジイソシアネート(TDI)(東ソー社製 コロネートT-80(イソシアネート基の含有量:48.3質量%))を54.9質量部の分量でその混合物に加えて撹拌し、実施例1に係る流動性組成物を得た。実施例1に係る流動性組成物の発泡が始まる前に、互いに平行に並べられた複数のフレーム同士の間から実施例1に係る流動性組成物をPBO繊維が延びている方向に沿って供給してPBO繊維に流動性組成物を含浸させた。その後、発泡が完了するまで静置した。発泡完了後に得られた発泡体の余分な部分をトリミングして、ポリウレタン発泡体の内部にPBO繊維が特定方向に延びている実施例1に係るサンプルを得た。実施例1に係るサンプルにおいて、ポリウレタン発泡体は連通孔を有していた。なお、フレームはプラスチック製の箱中に設置し、流動性組成物はプラスチック製の箱中にて発泡、硬化させた。
【0059】
<実施例2>
3mmの直径及び5mmのピッチで貫通孔が形成された2枚の金属板を互いに平行に向かい合うように配置し、スペーサーを用いて2枚の金属板同士の距離が一定になるようにした。各金属板は平面視で100mm平方の正方形状であった。2枚の金属板において互いに向かい合う一対の貫通孔の一方から他方に東洋紡社製のPBO繊維 ZylonHM1992を通し、PBO繊維の向きを反転させて互いに向かい合う別の対の貫通孔の一方から他方に通す作業を繰り返した。このようにしてほぼ全ての貫通孔にPBO繊維を通して固定した。
【0060】
実施例1と同様にして、ポリオール、発泡剤、有機錫触媒、及び整泡剤の混合物を調製した。この混合物に、トルエンジイソシアネート(TDI)(東ソー社製 コロネートT-80)を51.8質量部の分量でその混合物に加えて撹拌し、実施例2に係る流動性組成物を得た。実施例1に係る流動性組成物の発泡が始まる前に、実施例2に係る流動性組成物を2枚の金属板に固定されたPBO繊維が延びている方向に沿って供給してPBO繊維に流動性組成物を含浸させた。その後、発泡が完了するまで静置した。発泡完了後に得られた発泡体の余分な部分をトリミングして、ポリウレタン発泡体の内部にPBO繊維が特定方向に延びている実施例2に係るサンプルを得た。実施例2に係るサンプルにおいて、ポリウレタン発泡体は連通孔を有していた。
【0061】
<実施例3>
実施例1と同様にして、PBO繊維が巻き付けられた複数のフレームを準備し、それらを一定の間隔を設けて互いに平行に並べた。
【0062】
ポリオールb(ペンタエリスリトールのPO/EO付加物、平均分子量:約8000、官能基数4、水酸基価:約28、EO含量:14質量%)と、架橋剤(トリエタノールアミン)と、セルオープナー(グリセリンのPO/EO付加物、平均分子量:約7000、官能基数:3、水酸基価:約24、EO含量:70質量%)と、発泡剤である水と、エボニックジャパン社製のアミン触媒DABCO 33LV及びアミン触媒dDABCO BL-19と、ダウ・東レ製の整泡剤SRX-274DLとを混合して撹拌した。混合物におけるポリオールb、架橋剤、セルオープナー、発泡剤、アミン触媒DABCO 33LV、アミン触媒dDABCO BL-19、及び整泡剤の添加量は、それぞれ、100質量部、4.0質量部、1.0質量部、4.5質量部、0.40質量部、0.07質量部、及び0.75質量部であった。その後、ポリイソシアネート(東ソー社製 CE-729(イソシアネート基の含有量:44.6重量%))を51.0質量部の分量でその混合物に加えて撹拌し、実施例3に係る流動性組成物を得た。実施例3に係る流動性組成物の発泡が始まる前に、互いに平行に並べられた複数のフレーム同士の間から実施例3に係る流動性組成物をPBO繊維が延びている方向に沿って供給してPBO繊維に流動性組成物を含浸させた。その後、発泡が完了するまで静置した。発泡完了後に得られた発泡体の余分な部分をトリミングして、ポリウレタン発泡体の内部にPBO繊維が特定方向に延びている実施例3に係るサンプルを得た。実施例3に係るサンプルにおいて、ポリウレタン発泡体は連通孔を有していた。なお、フレームは60℃に調整した金型中に設置し、流動性組成物は金型中に密閉した状態で発泡、硬化させた。
【0063】
<比較例1>
ポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製 サンニックスGP 3000R(グリセリンのPO付加物)、平均分子量:約3000、官能基数:3、水酸基価:56)と、発泡剤である水と、エボニックジャパン社製のアミン触媒DABCO 33LXと、日東化成社製の有機錫触媒 ネオスタンU-28、ダウ・東レ社製の整泡剤L-580を混合して撹拌し、混合物を得た。この混合物におけるポリオール、発泡剤、アミン触媒、有機錫触媒、及び整泡剤の添加量は、それぞれ、100質量部、4.5質量部、0.3質量部、0.3質量部、及び1.0質量部であった。その後、トルエンジイソシアネート(TDI)(東ソー社製 コロネートT-80)を51.9質量部の分量でその混合物に加えて撹拌し、比較例1に係る流動性組成物を得た。この流動性組成物において、硬化及び発泡の反応が始まった。反応完了後に得られた発泡体を切断して所定の大きさ及び形状を有する比較例1に係るサンプルを得た。比較例1に係るサンプルの発泡体は連通孔を有していた。
【0064】
<比較例2>
旭化成社製の低密度ポリエチレン サンテックF2270 と、松本油脂製薬社製の熱膨張性マイクロカプセル含有マスターバッチ MBF 260EVA50 とをドライブレンドした混合物を単軸押出機で溶融混錬し、混練物を得た。この混練物において、低密度ポリエチレンの含有量は90質量%であり、熱膨張性マイクロカプセル含有マスターバッチの含有量は10質量%であった。この混練物をTダイ成型によってフィルム化し、50μmの厚みを有する母材シートを得た。PBO繊維Zylon HM1992 を、母材シートの両面の大部分が覆われるように巻きつけ、巻回体を得た。巻回体の両面に一対の母材シートを重ねて積層体を得ること及びその積層体の両面の大部分が覆われるようにPBO繊維を巻き付けることを複数回繰り返して、複合体を得た。この複合体を加熱プレスすることで予備成型体を得た。加熱プレスにおいて、熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度未満に温度を調整し、熱膨張性マイクロカプセルが壊れないように圧力を調整した。予備成型体を所定の温度に加熱して熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張を促し、予備成型体における母材シートを発泡させた。これにより比較例2に係るサンプルを得た。このサンプルにおいて母材シートは、独立気泡を有するように発泡した。PBO繊維は、サンプルの厚み方向に沿って延びていた。PBO繊維は、サンプルの厚み方向における一端から他端まで延びていた。サンプルの全体積に対する、低密度ポリエチレンの体積、PBO繊維の体積、及び気泡の体積の割合は、それぞれ、16%、4%、及び80%であった。
【0065】
<比較例3>
住友化学社製のメタロセン系低密度ポリエチレン スミカセンEP CU7002と、永和化成工業社製の化学発泡剤ビニホール AC#93 とを、日本製鋼所社製の同方向回転二軸押出機 TEX30αを用いて溶融混錬し、混練物を得た。この同方向回転二軸押出機において、スクリュ径φは32mmであり、L/Dは53であった。また、混練物において、低密度ポリエチレンの含有量に対する化学発泡剤の含有量の比は、質量基準で6/100であった。この混練物を、単軸押出機を用いて溶融混錬し、Tダイ成型によって75μmの厚みを有する母材シートを得た。Tダイ成型において、化学発泡剤の発泡温度未満に温度を調整した。「スミカセン」は、住友化学社の登録商標である。加速電圧200kV及び線量50kGyの条件で母材シートに電子線を照射した。この母材シートを長方形状に切り出した。長方形状の母材シートの長辺と同じ長さを有するPBO繊維Zylon HM1992 を長辺と平行な方向に沿って母材シートの全面を覆うように配置した。PBO繊維の上に長方形状に切り出した別の母材シートを積層し、その上に長方形と同じ長さのPBO繊維を長辺と平行な方向に沿って母材シートの全面を覆うように並べるという操作を所定の回数繰り返して複合体を得た。この複合体を加熱プレスすることで予備成型体を得た。加熱プレスにおいて、化学発泡剤の発泡温度未満に温度を調整した。予備成型体を所定の温度に加熱して化学発泡剤の発泡を促し、予備成型体における母材シートを発泡させた。これにより、独立気泡を有する発泡成形体を得た。この発泡成形体をPBO繊維の繊維方向と直交する方向に切断して板状の比較例3に係るサンプルを得た。サンプルの全体積に対する、低密度ポリエチレンの体積、PBO繊維の体積、及び気泡の体積の割合は、それぞれ、41%、2%、及び57%であった。
【0066】
表1に示す通り、実施例に係るサンプルは、高い平均吸音率及び高い熱伝導率を有していた。一方、比較例1に係るサンプルは高い平均吸音率を有しているものの、高い熱伝導率を有しているとは言い難かった。比較例2及び3に係るサンプルは高い熱伝導率を有しているものの、高い平均吸音率を有しているとは言い難かった。
【0067】