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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147523
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コンプライアンスユニット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20231005BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B25J17/02 G
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055071
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太平
【テーマコード(参考)】
3C707
3J701
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BT20
3C707CY13
3C707DS01
3C707HS14
3C707HT36
3C707MT07
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA53
3J701AA63
3J701AA72
3J701AA73
3J701BA35
3J701GA32
3J701GA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】テーブル部がスライド部に対して傾斜可能であり、傾斜について誤差を吸収することができるコンプライアンスユニットを提供する。
【解決手段】スライド部30を構成するスライドボデイ38と、テーブル部54を構成するベースプレート62との間に、複数の第1ボールを保持するリテーナ68が配置され、複数の第1ボールは、Z軸と一致するスライド部の軸線C1の周りに並び、スライド部を構成するボール受け板42とテーブル部を構成するボール受け板60との間でスライド部の軸線上に単一の第2ボール72が配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデイ部と、スライド部と、テーブル部とを備えるコンプライアンスユニットであって、
前記スライド部を構成するスライドボデイと、前記テーブル部を構成するベースプレートとの間に、複数の第1ボールを保持するリテーナが配置され、複数の前記第1ボールは、Z軸と一致する前記スライド部の軸線の周りに並び、前記スライド部を構成するボール受け板と前記テーブル部を構成するボール受け板との間で前記スライド部の軸線上に単一の第2ボールが配置され、前記テーブル部は、前記スライド部に対してXY平面内で移動可能であり、前記テーブル部は、前記スライド部に対して傾斜可能であるコンプライアンスユニット。
【請求項2】
請求項1記載のコンプライアンスユニットにおいて、
前記スライド部は、前記ボデイ部に対してZ方向に移動可能であり、複数のガイドボールを保持するリテーナが前記ボデイ部と前記スライドボデイとの間に配置されるコンプライアンスユニット。
【請求項3】
請求項2記載のコンプライアンスユニットにおいて、
前記ボデイ部と前記スライド部との間に圧力室が形成され、前記ボデイ部は、前記圧力室にエアを給排するための給排ポートを有するコンプライアンスユニット。
【請求項4】
請求項1記載のコンプライアンスユニットにおいて、
前記テーブル部を前記スライド部に対して原点位置に復帰させるとともに、前記テーブル部を前記スライド部に対して元の姿勢に戻す復帰機構を備えるコンプライアンスユニット。
【請求項5】
請求項4記載のコンプライアンスユニットにおいて、
前記復帰機構は、テーパ状のボール受け面を有するボール受け体と、前記ボール受け面に当接するリターンボールと、前記リターンボールを前記ボール受け面に向けて付勢するリターンスプリングとを含むコンプライアンスユニット。
【請求項6】
請求項5記載のコンプライアンスユニットにおいて、
前記ボール受け体は、前記スライド部の前記ボール受け板に取り付けられ、前記リターンスプリングは、前記テーブル部に装着されるコンプライアンスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドによる自動組立において、ワークを柔軟に保持し、位置決め誤差を吸収するコンプライアンスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットハンドに保持されたワークに、外部からの作用に対する柔軟性を付与するため、コンプライアンスユニットが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円筒状のボデイ内にスライド要素を介して摺動部材を配置し、摺動部材の内側に平面スライド要素を介してテーブルを摺動自在に配置したコンプライアンスユニットが記載されている。摺動部材は、ボデイに対してZ方向に移動可能であり、テーブルは、摺動部材に対してXY平面内で移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-153489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記コンプライアンスユニットによれば、XY平面内の位置決め誤差およびZ方向の位置決め誤差を吸収可能である。しかしながら、テーブルは、X軸回りおよびY軸回りに回動できないので、傾斜について誤差を吸収することができない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボデイ部と、スライド部と、テーブル部とを備えるコンプライアンスユニットであって、スライド部を構成するスライドボデイと、テーブル部を構成するベースプレートとの間に、複数の第1ボールを保持するリテーナが配置され、複数の第1ボールは、Z軸と一致するスライド部の軸線の周りに並ぶ。スライド部を構成するボール受け板とテーブル部を構成するボール受け板との間でスライド部の軸線上に単一の第2ボールが配置される。テーブル部は、スライド部に対してXY平面内で移動可能であり、テーブル部は、スライド部に対して傾斜可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコンプライアンスユニットによれば、テーブル部がスライド部に対して傾斜可能であり、傾斜について誤差を吸収することができる。また、テーブル部をスライド部に対してXY平面内で移動可能とし、かつ、テーブル部をスライド部に対して傾斜可能とする構成をコンパクトに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンプライアンスユニットをX軸およびZ軸を含む平面で切断したときの断面図である。
図2図2は、図1のコンプライアンスユニットにエアを供給したときの断面図である。
図3図3は、図1のコンプライアンスユニットのテーブル部に押付力を付与したときの断面図である。
図4図4は、図1のコンプライアンスユニットがX方向の誤差を吸収したときの断面図である。
図5図5は、図1のコンプライアンスユニットが傾斜について誤差を吸収したときの断面図である。
図6図6は、図1のコンプライアンスユニットの外観図である。
図7図7は、Z軸を含みX軸を含まない平面で図1のコンプライアンスユニットを切断したときの断面図の一部である。
図8図8は、ボデイ部の規制ピンとテーブル本体の切欠溝との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るコンプライアンスユニット10は、ボデイ部12と、ボデイ部12に支持されるスライド部30と、スライド部30に支持されるテーブル部54とを含む。ボデイ部12は、図示しないロボットハンドに取り付けられる。ボデイ部12およびスライド部30の軸線C1は、Z軸と一致する。スライド部30は、ボデイ部12に対してZ方向に移動可能である。
【0011】
テーブル部54は、スライド部30に対してX方向およびY方向(紙面に垂直な方向)に移動可能であり、かつ、スライド部30の軸線C1(Z軸)周りに回転可能である。換言すれば、テーブル部54は、スライド部30に対して、XY平面内で移動可能である。また、テーブル部54は、スライド部30に対して傾斜可能である。換言すれば、テーブル部54は、X軸回りおよびY軸回りに回動可能である。以下、上下の方向に関する言葉を用いたときは、Z軸と平行な方向をいう。また、左右の方向に関する言葉を用いたときは、X軸と平行な方向をいう。
【0012】
ボデイ部12は、円筒状のハウジング14と、矩形状のカバープレート16と、円盤状の圧力プレート22と、円環状のエンドプレート26とから構成される。カバープレート16は、ハウジング14の上部に固定される。圧力プレート22は、カバープレート16の下部中央に固定される。エンドプレート26は、ハウジング14の下部に固定される。カバープレート16は、下面に環状の凹部16aを有し、圧力プレート22は、上部に環状の嵌合部22aを備える。圧力プレート22の嵌合部22aは、カバープレート16の凹部16aの内周に嵌合する。
【0013】
スライド部30は、ボデイ部12の内部に収容される。スライド部30は、有底円筒状のシリンダボデイ32と、円筒状のスライドボデイ38と、円形のボール受け板42とから構成される。シリンダボデイ32の上面は、カバープレート16の凹部16aの底面に当接可能である。スライドボデイ38は、厚肉部38aと、厚肉部38aの上面から上方に延びる嵌合部38bと、厚肉部38aの下部から径方向内方に突出するフランジ部38cとを有する。スライドボデイ38の嵌合部38bは、シリンダボデイ32の外側に圧入され嵌合する。ボール受け板42は、シリンダボデイ32の下面とスライドボデイ38の厚肉部38aの上面との間で挟持される。
【0014】
ハウジング14の内周面とスライドボデイ38の外周面との間に、円筒状の第1リテーナ44が配置される。第1リテーナ44は、円周方向に並ぶ複数の上部ボール収容孔44aと、円周方向に並ぶ複数の下部ボール収容孔44bとを有する。上部ボール収容孔44aおよび下部ボール収容孔44bは、第1リテーナ44の壁面を径方向に貫通する。上部ボール収容孔44aおよび下部ボール収容孔44bにガイドボール46が配置され、第1リテーナ44は、複数のガイドボール46を保持する。ガイドボール46の直径は、第1リテーナ44の壁厚よりも僅かに大きい。
【0015】
ガイドボール46は、ハウジング14の内周面に当接するとともに、スライドボデイ38の外周面に当接する。第1リテーナ44を下方に付勢する複数の第1スプリング48が第1リテーナ44とカバープレート16との間に配置される。第1リテーナ44を上方に付勢する複数の第2スプリング50が第1リテーナ44とエンドプレート26との間に配置される。第1リテーナ44は、第1スプリング48および第2スプリング50の付勢力により、カバープレート16およびエンドプレート26からそれぞれ離間する位置に保持される。
【0016】
ガイドボール46がハウジング14の内周面およびスライドボデイ38の外周面を転動することによって、スライド部30は、ボデイ部12に対してZ方向に円滑に移動することができる。ガイドボール46がハウジング14の内周面およびスライドボデイ38の外周面を転動しながらスライド部30がボデイ部12に対して移動すると、第1リテーナ44も同じ方向に移動する。
【0017】
シリンダボデイ32の上面からスライドボデイ38の下面までの距離(スライド部30の高さ)は、カバープレート16の凹部16aの底面からエンドプレート26の上面までの距離(ボデイ部12の内部空間の高さ)よりもL1だけ短い。スライド部30に対するテーブル部54のZ方向の最大移動量は、L1に等しい。エンドプレート26とスライドボデイ38との間には、ボデイ部12に対してスライド部30を上方に付勢するスライド部付勢スプリング52が配置されている(図7参照)。
【0018】
圧力プレート22は、シリンダボデイ32の内側に入り込んでいる。筒状のパッキン36が圧力プレート22の外周に装着されている。パッキン36の上面は、カバープレート16の下面に密着し、パッキン36の外周面は、シリンダボデイ32の内周面に摺接する。外部から気密に保持される圧力室34が、圧力プレート22とシリンダボデイ32との間に形成される。
【0019】
カバープレート16は、図示しないエア供給源に接続される給排ポート18と、給排ポート18から延びるエア通路20を有する。カバープレート16のエア通路20の端部は、カバープレート16の下面に開口する。圧力プレート22は、上下方向に貫通するエア通路24を中央に有する。圧力プレート22のエア通路24は、上端においてカバープレート16のエア通路20に接続され、下端において圧力室34に接続される。
【0020】
カバープレート16の給排ポート18を通じて圧力室34にエアが供給されると、スライド部30が下方に付勢される。この付勢力は、スライド部付勢スプリング52の付勢力に対抗するほか、テーブル部54に作用する外力と対抗する。圧力室34に供給するエア圧を調整することにより、テーブル部54の押付力を制御することができ、所望のバッファ作用が得られる。
【0021】
スライドボデイ38は、スライドボデイ38の下面から下方に突出する規制ピン28を備える。エンドプレート26は、スライドボデイ38の規制ピン28と対応する位置に規制孔26aを有する。スライドボデイ38の規制ピン28は、エンドプレート26の規制孔26aに係合する。これにより、ボデイ部12に対するスライド部30の回動が規制される。
【0022】
テーブル部54は、円盤状のテーブル本体56と、円形のボール受け板60と、円筒状のベースプレート62とから構成される。ボール受け板60は、テーブル本体56の上側中央に配置され、ベースプレート62は、ボール受け板60の上側に配置される。テーブル本体56、ボール受け板60およびベースプレート62は、ボルト66により一体的に連結される。ベースプレート62は、スライドボデイ38の内側に配置される。ベースプレート62は、大径部62aと、大径部62aから下方に延びる小径部62bと、大径部62aの上部から径方向外方に突出するフランジ部62cとを有する。
【0023】
ベースプレート62のフランジ部62cの外径は、スライドボデイ38の厚肉部38aの内径よりもL2だけ小さい。ベースプレート62のフランジ部62cの外周とスライドボデイ38の厚肉部38aの内周との間に隙間が形成されている。ベースプレート62の小径部62bの外径は、スライドボデイ38のフランジ部38cの内径よりもL2だけ小さい。ベースプレート62の小径部62bの外周とスライドボデイ38のフランジ部38cの内周との間に隙間が形成されている。スライド部30に対するテーブル部54のX方向およびY方向の最大移動量は、L2に等しい。
【0024】
ベースプレート62のフランジ部62cは、スライドボデイ38のフランジ部38cの上方に位置する。ベースプレート62のフランジ部62cとスライドボデイ38のフランジ部38cとの間に、環状の第2リテーナ68が配置される。第2リテーナ68は、円周方向に並ぶ複数のボール収容孔68aを有する。第2リテーナ68の各ボール収容孔68aに第1ボール70が配置され、複数の第1ボール70が第2リテーナ68に保持される。複数の第1ボール70は、スライド部30の軸線C1の周りに並ぶ。
【0025】
第1ボール70は、スライドボデイ38のフランジ部38cの上面に当接する。また、第1ボール70は、ベースプレート62のフランジ部62cの下面に当接可能である。第1ボール70がスライドボデイ38のフランジ部38cの上面およびベースプレート62のフランジ部62cの下面を転動することによって、テーブル部54は、スライド部30に対して、XY平面内で円滑に移動することができる。
【0026】
ベースプレート62の中央は、上下方向に貫通する第1孔部62dを有する。ベースプレート62の第1孔部62dに第2ボール72が収容される。すなわち、テーブル部54のボール受け板60とスライド部30のボール受け板42との間で、スライド部30の軸線C1上に単一の第2ボール72が配置される。第2ボール72の直径は、第1ボール70の直径に比べて数倍大きい。第2ボール72は、テーブル部54のボール受け板60の上面に当接する。また、第2ボール72は、ベースプレート62の第1孔部62dから上方に突出しており、スライド部30のボール受け板42の下面に当接可能である。
【0027】
テーブル部54は、テーブル部54の軸線C2がスライド部30の軸線C1と交差するように、姿勢を変えることができる。すなわち、テーブル部54は、スライド部30に対して傾斜することができる。テーブル部54に外力が作用した状態でテーブル部54がスライド部30に対して傾斜する場合、第2ボール72は、テーブル部54のボール受け板60およびスライド部30のボール受け板42と当接する。この場合、複数の第1ボール70は、その一部のみがベースプレート62のフランジ部62cに当接し、当該第1ボール70は、ベースプレート62のフランジ部62cとスライドボデイ38のフランジ部38cとの間で挟持される(図5参照)。
【0028】
ボデイ部12は、エンドプレート26の下面から下方に突出する規制ピン40を備える。テーブル本体56は、ボデイ部12の規制ピン40と対応する位置に切欠溝56aを有する。ボデイ部12の規制ピン40は、テーブル本体56の切欠溝56aに挿入され、規制ピン40の外周には所定の隙間が形成されている(図8参照)。このため、テーブル部54は、ボデイ部12およびスライド部30の軸線C1(Z軸)周りに所定角度回転可能である。
【0029】
コンプライアンスユニット10は、テーブル部54をスライド部30に対して原点位置に復帰させるとともに、テーブル部54をスライド部30に対して元の姿勢に戻す復帰機構を備える。復帰機構は、リターンボール76と、ボール受け体78と、リターンスプリング80とを含む。
【0030】
ベースプレート62は、第1孔部62dの周囲において、上下方向に貫通する複数(例えば3つ)の第2孔部62eを有する。テーブル部54のボール受け板60は、ベースプレート62の第2孔部62eと対応する位置に孔部60aを有する。テーブル本体56は、ベースプレート62の第2孔部62eと対応する位置に孔部56bを有する。ベースプレート62の第2孔部62eおよびボール受け板60の孔部60aに亘って、スプリング挿入用のスリーブ64が装着されている。
【0031】
スリーブ64に挿入されるリターンスプリング80の下端は、テーブル本体56の孔部56bの下部に取り付けられたプラグ58に係止する。リターンスプリング80の上端は、ベースプレート62の第2孔部62eの上部に収容されるリターンボール76に当接する。ボール受け体78は、下方に拡がるテーパ状のボール受け面78aを有し、スライド部30のボール受け板42に取り付けられる。リターンスプリング80によって上方に付勢されるリターンボール76は、ボール受け板42のボール受け面78aに当接する。
【0032】
スライド部30の軸線C1と平行な向きに付勢される複数のリターンボール76は、ボール受け体78のテーパ状のボール受け面78aに当接する。このため、テーブル本体56に外力が作用しないとき、テーブル部54の軸線C2は、スライド部30の軸線C1と一致する。すなわち、テーブル部54がスライド部30に対してXY平面内の原点位置に保持され、かつ、テーブル部54がスライド部30に対して傾斜しない姿勢に保持される。
【0033】
テーブル部54がスライド部30に対してXY平面内の原点位置に保持されるのは、リターンボール76がテーパ状のボール受け面78aの頂点(中心)に当接しようとするからである。テーブル部54がスライド部30に対して傾斜しない姿勢に保持されるのは、テーブル部54がスライド部30に対して傾斜したままでは、複数のリターンスプリング80で相互に反発力が異なり、傾斜を是正しようとするモーメントが働くからである。
【0034】
リターンスプリング80は、プラグ58を介してテーブル本体56を下方に付勢する作用を奏する。テーブル本体56に外力が作用しない状態では、複数の第1ボール70は、リターンスプリング80の付勢力により、テーブル本体56と一体のベースプレート62のフランジ部62cとスライドボデイ38のフランジ部38cとの間で挟持される。なお、参照符号82で示されるのは、カバープレート16をハウジング14に取り付ける際の位置決めピンである。また、参照符号84で示されるのは、スライド部30のボール受け板42をスライドボデイ38に取り付ける際の位置決めピンである。
【0035】
本発明の実施形態に係るコンプライアンスユニット10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。圧力室34にエアが供給されず、かつ、テーブル部54に外力が作用していない状態を初期状態とする(図1参照)。
【0036】
上記初期状態において、シリンダボデイ32は、スライド部付勢スプリング52の付勢力により、カバープレート16の凹部16aの底面に当接している。すなわち、スライド部30は、ボデイ部12に対して上端まで移動している。また、復帰機構の作用により、テーブル部54の軸線C2は、スライド部30の軸線C1と一致している。また、複数の第1ボール70は、リターンスプリング80の付勢力により、ベースプレート62のフランジ部62cとスライドボデイ38のフランジ部38cとの間で挟持されている。このとき、第2ボール72は、スライド部30のボール受け板42に当接していない。
【0037】
上記初期状態から、圧力室34にエアが供給されると、スライド部30が下方に付勢される。図2に示されるように、スライド部30は、スライド部付勢スプリング52に抗して下端まで移動し、スライドボデイ38がエンドプレート26に当接する。スライド部30が下方に移動する際には、ガイドボール46がハウジング14の内周面およびスライドボデイ38の外周面を転動する。
【0038】
この状態で、テーブル本体56を図示しないワークに押し付けると、押付力の反力としての外力がテーブル本体56に作用する。このため、図3に示されるように、テーブル部54がスライド部30に対して上方に移動するとともに、スライド部30がボデイ部12に対して上方に移動する。スライド部30に対するテーブル部54の移動は、リターンスプリング80の圧縮を伴う。第2ボール72は、スライド部30のボール受け板42に当接する。ベースプレート62のフランジ部62cは、複数の第1ボール70から離間する。
【0039】
テーブル本体56に作用する外力がリターンボール76および第2ボール72を介してスライド部30に加わることで、スライド部30は、ボデイ部12に対して上方に移動する。このとき、テーブル本体56に作用する外力と、スライド部付勢スプリング52がテーブル部54を上方に付勢する力とを合わせた力は、圧力室34のエア圧がテーブル部54を下方に付勢する力と釣り合う。すなわち、圧力室34に供給されるエア圧に見合った押付力がテーブル部54に付与される。スライド部30がボデイ部12に対して上方に移動する際には、ガイドボール46がハウジング14の内周面およびスライドボデイ38の外周面を転動する。
【0040】
コンプライアンスユニット10は、テーブル部54に押付力が付与された状態で、XY平面内の誤差を吸収することができる。テーブル部54が右端まで移動し、X方向の誤差を最大に吸収した状態が図4に示されている。同図に示されるように、ベースプレート62のフランジ部62cの外周は、スライドボデイ38の厚肉部38aの内周に当接し、かつ、ベースプレート62の小径部62bの外周は、スライドボデイ38のフランジ部38cの内周に当接している。また、リターンボール76は、ボール受け面78aの頂点から外れた位置でボール受け面78aに当接している。
【0041】
テーブル部54に押付力が付与された状態で、テーブル部54が右方に移動する際には、第2ボール72がテーブル部54のボール受け板60の上面およびスライド部30のボール受け板42の下面を転動する。第2ボール72は、十分な大きさの直径を有しているので、1個だけで押付荷重を支えることができる。
【0042】
コンプライアンスユニット10は、テーブル部54に押付力が付与された状態で、テーブル部54の傾斜(ワークに対するテーブル部54の傾斜)について、誤差を吸収することができる。テーブル部54がY軸回りに回動して、テーブル部54の軸線C2がスライド部30の軸線C1に角度αで交差し、傾斜について誤差を吸収した状態が図5に示されている。
【0043】
図5に示されるように、第2ボール72は、テーブル部54のボール受け板60およびスライド部30のボール受け板42に当接している。複数の第1ボール70のうち左端に位置する第1ボール70のみが、ベースプレート62のフランジ部62cに当接し、ベースプレート62のフランジ部62cとスライドボデイ38のフランジ部38cとの間で挟持されている。それ以外の第1ボール70は、ベースプレート62のフランジ部62cから離間している。また、リターンボール76は、ボール受け面78aの頂点から少し外れた位置でボール受け面78aに当接している。
【0044】
コンプライアンスユニット10は、ボデイ部12に対するスライド部30の移動量と、スライド部30に対するテーブル部54の移動量とを合わせた量で、Z方向の誤差を吸収することもできる。また、コンプライアンスユニット10は、テーブル部54に押付力が付与された状態で、XY平面内の誤差を吸収し、かつ、テーブル部54の傾斜について誤差を吸収することもできる。
【0045】
本実施形態に係るコンプライアンスユニット10によれば、テーブル部54がスライド部30に対して傾斜可能であり、傾斜について誤差を吸収することができる。また、テーブル部54をスライド部30に対してXY平面内で移動可能とし、かつ、テーブル部54をスライド部30に対して傾斜可能とする構成をコンパクトに実現できる。
【0046】
本発明に係るコンプライアンスユニットは、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0047】
10…コンプライアンスユニット 12…ボデイ部
18…給排ポート 30…スライド部
34…圧力室 38…スライドボデイ
42、60…ボール受け板 44…第1リテーナ(リテーナ)
46…ガイドボール 54…テーブル部
62…ベースプレート 68…第2リテーナ(リテーナ)
70…第1ボール 72…第2ボール
76…リターンボール 78…ボール受け体
78a…ボール受け面 80…リターンスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8