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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147528
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20231005BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231005BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231005BHJP
   B22F 1/102 20220101ALN20231005BHJP
   B22F 1/054 20220101ALN20231005BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALN20231005BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H05K1/03 650
B22F7/08 E
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/78 Y
B22F1/102
B22F1/054
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055079
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西田 卓生
【テーマコード(参考)】
4K018
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018BA01
4K018BB05
4K018BC29
4K018HA08
4K018JA34
4K018KA32
5F047BA14
5F047BA15
5F047BA16
5F047BA52
5F047BA53
5F047BB03
5F047BB19
5F063AA18
5F063CA04
5F063CC32
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE16
5F063EE43
(57)【要約】
【課題】接合対象の部材同士の間に接合材料を介在させ、接合材料を焼成し、導電性接合部を形成することによって、これら部材同士が導電性接合部によって接合された接合体を製造するときに、部材の端部からの接合材料のはみ出しを抑制できるとともに、接合強度が十分に高い接合体を製造できる製造方法の提供。
【解決手段】第1部材9、フィルム状焼成材料1及び第2部材8がこの順に積層されて構成された第1積層体1011を作製し、第2部材8からのフィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lが220μm以下となるように、第1積層体1011に対して、前記積層方向において0.1MPa以上の圧力を加えながら、フィルム状焼成材料1を加熱して、第2積層体1012を作製し、第2積層体1012に対して、前記積層方向において3MPa以上の圧力を加えながら、加熱後のフィルム状焼成材料1’を焼成し、金属焼結層10を形成して、接合体101を作製する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合体の製造方法であって、
前記接合体は、第1部材と、金属焼結層と、第2部材とを備え、前記第1部材と、前記第2部材とが、前記金属焼結層によって接合されて構成されており、
前記製造方法は、前記第1部材と、前記金属焼結層を形成するためのフィルム状焼成材料と、前記第2部材と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層体を作製する工程(I)と、
前記第1積層体において、前記第1部材又は第2部材からの前記フィルム状焼成材料のはみ出し幅が220μm以下となるように、前記第1積層体に対して、前記第1部材と、前記フィルム状焼成材料と、前記第2部材と、の積層方向において、0.1MPa以上の圧力を加えながら、前記第1積層体中の前記フィルム状焼成材料を加熱することにより、第2積層体を作製する工程(II)と、
前記工程(II)の後に、前記第2積層体に対して、前記積層方向と同じ方向において、3MPa以上の圧力を加えながら、前記第2積層体中の前記フィルム状焼成材料を焼成し、前記金属焼結層を形成して、前記接合体を作製する工程(III)と、を有し、
厚さが345.5μmのシリコンチップと、厚さが0.5μmの銀膜と、前記フィルム状焼成材料の試験片と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された試験用積層体であって、前記シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが2mm×2mmであり、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられており、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面の全面を被覆しており、前記フィルム状焼成材料の試験片が前記シリコンチップと同等の大きさであり、かつ前記シリコンチップの外周から前記フィルム状焼成材料がはみ出していない試験用積層体を作製し、前記試験用積層体中の前記試験片の露出面全面を銅板に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置し、前記試験用積層体と前記銅板を300℃に加熱しながら、前記試験用積層体に対して、前記シリコンチップと、前記銀膜と、前記試験片と、の積層方向に、前記シリコンチップ側から3分間、10MPaの圧力を加えたとき、前記シリコンチップの外周からの前記試験片のはみ出し幅の最大値が、220μm超となる、接合体の製造方法。
【請求項2】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記フィルム状焼成材料と、を備えた支持シート付きフィルム状焼成材料を準備し、さらに、未分割部材を準備し、
前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シート付きフィルム状焼成材料において、前記フィルム状焼成材料は、前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面上に設けられており、
前記未分割部材は、その分割によって、前記第2部材となり、
前記支持シート付きフィルム状焼成材料中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記支持シート側とは反対側の面を、前記未分割部材に貼付することにより、前記支持シート付きフィルム状焼成材料と、前記未分割部材と、が積層されて構成された未分割積層体を作製し、前記未分割積層体中の前記未分割部材を分割して、前記第2部材を作製するとともに、前記フィルム状焼成材料を切断することにより、前記支持シート上において、前記第2部材と、前記第2部材の一方の面に設けられた、切断後の前記フィルム状焼成材料と、を備えたフィルム状焼成材料付き第2部材を作製し、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を前記支持シートから剥離した後、前記フィルム状焼成材料付き第2部材中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記第2部材側とは反対側の面を、前記第1部材に貼付することにより、前記工程(I)を行う、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、前記粘着剤層をエネルギー線の照射により硬化させてから、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を、前記粘着剤層の硬化物から剥離する、請求項2に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を有する接合部(導電性接合部)によって、部材同士を接合する手法としては、金属粒子とバインダーを含有する接合材料を、接合対象の部材同士の間に介在させ、これら部材と接合材料を加圧しながら加熱し、接合材料を焼成することによって、導電性接合部を形成する手法が知られている。この手法によれば、接合材料の焼成によって、バインダーが分解し、金属粒子同士が密着して導電性接合部を形成し、部材同士を結合することによって、部材同士を接合できる。
【0003】
このような部材同士を接合する手法は、例えば、電力用半導体素子(パワーデバイス)の製造に利用できる。電力用半導体素子は、高電圧・高電流下で使用されており、近年では、自動車、エアコン、コンピュータ等の高電圧・高電流化に伴い、これらに搭載される機会が多い。このような電力用半導体素子では、半導体素子からの熱の発生が問題となり易いが、導電性接合部が放熱性に優れることにより、半導体素子の周りにヒートシンクを設けなくても、十分な放熱が可能となる。
【0004】
導電性接合部によって、部材同士を接合する手法としては、例えば、銀ナノ粒子と、炭酸銀又は酸化銀と、結晶体を含むカルボン酸類と、を含む接合材料を用いて、接合対象の部材同士でこの接合材料を挟持し、これを、接合材料がその接合温度以上となるように加熱しながら加圧することによって、部材同士を接合する手法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-279649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、これら部材同士及び接合材料を加圧しながら、接合材料を焼成するときには、焼成時の加熱の過程で、軟化した接合材料が部材の端部からはみ出してしまうことがある、という問題点があった。このように軟化した接合材料がはみ出すと、最終的に形成される焼結部、すなわち導電性接合部の厚さが、目的とする値よりも薄くなったり、接合材料がはみ出した積層物の取り扱い性が悪くなってしまう。一方で、接合材料のはみ出し量を低減するために、加圧時の圧力を小さくすると、部材同士の接合強度が低下してしまうという問題点があった。そして、特許文献1で開示されている接合方法では、このような問題点を解決できない。
【0007】
本発明は、接合対象の部材同士の間に接合材料を介在させ、接合材料を焼成し、導電性接合部を形成することによって、これら部材同士が導電性接合部によって接合された接合体を製造するときに、部材の端部からの接合材料のはみ出しを抑制できるとともに、接合強度が十分に高い接合体を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1].接合体の製造方法であって、
前記接合体は、第1部材と、金属焼結層と、第2部材とを備え、前記第1部材と、前記第2部材とが、前記金属焼結層によって接合されて構成されており、
前記製造方法は、前記第1部材と、前記金属焼結層を形成するためのフィルム状焼成材料と、前記第2部材と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層体を作製する工程(I)と、
前記第1積層体において、前記第1部材又は第2部材からの前記フィルム状焼成材料のはみ出し幅が220μm以下となるように、前記第1積層体に対して、前記第1部材と、前記フィルム状焼成材料と、前記第2部材と、の積層方向において、0.1MPa以上の圧力を加えながら、前記第1積層体中の前記フィルム状焼成材料を加熱することにより、第2積層体を作製する工程(II)と、
前記工程(II)の後に、前記第2積層体に対して、前記積層方向と同じ方向において、3MPa以上の圧力を加えながら、前記第2積層体中の前記フィルム状焼成材料を焼成し、前記金属焼結層を形成して、前記接合体を作製する工程(III)と、を有し、
厚さが345.5μmのシリコンチップと、厚さが0.5μmの銀膜と、前記フィルム状焼成材料の試験片と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された試験用積層体であって、前記シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが2mm×2mmであり、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられており、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面の全面を被覆しており、前記フィルム状焼成材料の試験片が前記シリコンチップと同等の大きさであり、かつ前記シリコンチップの外周から前記フィルム状焼成材料がはみ出していない試験用積層体を作製し、前記試験用積層体中の前記試験片の露出面全面を銅板に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置し、前記試験用積層体と前記銅板を300℃に加熱しながら、前記試験用積層体に対して、前記シリコンチップと、前記銀膜と、前記試験片と、の積層方向に、前記シリコンチップ側から3分間、10MPaの圧力を加えたとき、前記シリコンチップの外周からの前記試験片のはみ出し幅の最大値が、220μm超となる、接合体の製造方法。
[2].支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記フィルム状焼成材料と、を備えた支持シート付きフィルム状焼成材料を準備し、さらに、未分割部材を準備し、
前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シート付きフィルム状焼成材料において、前記フィルム状焼成材料は、前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面上に設けられており、
前記未分割部材は、その分割によって、前記第2部材となり、
前記支持シート付きフィルム状焼成材料中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記支持シート側とは反対側の面を、前記未分割部材に貼付することにより、前記支持シート付きフィルム状焼成材料と、前記未分割部材と、が積層されて構成された未分割積層体を作製し、前記未分割積層体中の前記未分割部材を分割して、前記第2部材を作製するとともに、前記フィルム状焼成材料を切断することにより、前記支持シート上において、前記第2部材と、前記第2部材の一方の面に設けられた、切断後の前記フィルム状焼成材料と、を備えたフィルム状焼成材料付き第2部材を作製し、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を前記支持シートから剥離した後、前記フィルム状焼成材料付き第2部材中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記第2部材側とは反対側の面を、前記第1部材に貼付することにより、前記工程(I)を行う、[1]に記載の接合体の製造方法。
[3].前記粘着剤層がエネルギー線硬化性であり、前記粘着剤層をエネルギー線の照射により硬化させてから、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を、前記粘着剤層の硬化物から剥離する、[2]に記載の接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接合対象の部材同士の間に接合材料を介在させ、接合材料を焼成し、導電性接合部を形成することによって、これら部材同士が導電性接合部によって接合された接合体を製造するときに、部材の端部からの接合材料のはみ出しを抑制できるとともに、接合強度が十分に高い接合体を製造できる製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法で得られる接合体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法で得られた接合体の、せん断強度の測定方法を模式的に説明するための断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法で用いる、支持シート付きフィルム状焼成材料を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法における工程(I)のうち、支持シート付きフィルム状焼成材料を用いた場合の工程(I)の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◇接合体の製造方法
本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法において、前記接合体は、第1部材と、金属焼結層と、第2部材とを備え、前記第1部材と、前記第2部材とが、前記金属焼結層によって接合されて構成されており、前記製造方法は、前記第1部材と、前記金属焼結層を形成するためのフィルム状焼成材料と、前記第2部材と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層体を作製する工程(I)と、前記第1積層体において、前記第1部材又は第2部材からの前記フィルム状焼成材料のはみ出し幅が220μm以下となるように、前記第1積層体に対して、前記第1部材と、前記フィルム状焼成材料と、前記第2部材と、の積層方向において、0.1MPa以上の圧力を加えながら、前記第1積層体中の前記フィルム状焼成材料を加熱することにより、第2積層体を作製する工程(II)と、前記工程(II)の後に、前記第2積層体に対して、前記積層方向と同じ方向において、3MPa以上の圧力を加えながら、前記第2積層体中の前記フィルム状焼成材料を焼成し、前記金属焼結層を形成して、前記接合体を作製する工程(III)と、を有し、厚さが345.5μmのシリコンチップと、厚さが0.5μmの銀膜と、前記フィルム状焼成材料の試験片と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された試験用積層体であって、前記シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが2mm×2mmであり、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられており、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面の全面を被覆しており、前記フィルム状焼成材料の試験片が前記シリコンチップと同等の大きさであり、かつ前記シリコンチップの外周から前記フィルム状焼成材料がはみ出していない試験用積層体を作製し、前記試験用積層体中の前記試験片の露出面全面を銅板に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置し、前記試験用積層体と前記銅板を300℃に加熱しながら、前記試験用積層体に対して、前記シリコンチップと、前記銀膜と、前記試験片と、の積層方向に、前記シリコンチップ側から3分間、10MPaの圧力を加えたとき、前記シリコンチップの外周からの前記試験片のはみ出し幅の最大値が、220μm超となる。
【0012】
本実施形態の接合体の製造方法によれば、接合対象の前記第1部材と前記第2部材の間に、金属焼結層を形成するための前記フィルム状焼成材料を介在させ、これらの積層物、すなわち前記第1積層体を作製する前記工程(I)を行い、前記第1積層体を用いて前記工程(II)を行う。これにより、前記工程(II)においては、前記第1部材と前記第2部材の端部からのフィルム状焼成材料のはみ出しを抑制できる。その結果、前記工程(III)を行うことにより、工程(III)においては、前記第1部材と前記第2部材の端部からの金属焼結層のはみ出しを抑制できる。さらに、工程(II)においては、フィルム状焼成材料と第1部材との密着性が向上し、フィルム状焼成材料と第2部材との密着性が向上する。その結果、工程(III)を行うことにより、金属焼結層を介した前記第1部材と前記第2部材の接合強度が十分に高くなる。すなわち、得られた接合体においては、前記第1部材と前記第2部材の端部からの金属焼結層のはみ出しが抑制されるとともに、前記第1部材と前記第2部材の接合強度が十分に高くなる。
【0013】
本明細書においては、第1積層体又は第2積層体に対して加える「圧力」とは、特に断りのない限り、「第1部材と、フィルム状焼成材料と、第2部材と、の積層方向において加える圧力」を意味する。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0015】
<<接合体>>
まず、本実施形態の製造方法で得られる接合体について、説明する。
図1は、前記接合体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す接合体101は、第1部材9と、金属焼結層10と、第2部材8とを備え、第1部材9と、第2部材8とが、金属焼結層10によって接合されて構成されている。
【0016】
第1部材9は、金属焼結層10による接合対象となるものであれば、特に限定されない。
第1部材9として、より具体的には、例えば、基板等が挙げられる。
【0017】
第2部材8も、金属焼結層10による接合対象となるものであれば、特に限定されない。
第2部材8として、より具体的には、例えば、半導体チップ等の各種チップ等が挙げられる。
【0018】
第2部材8の金属焼結層10側の面(すなわち接合面)には、金属焼結層10との接合強度を高くするために、銀膜等の金属膜が設けられていてもよい。すなわち、第2部材8は、その一方の面に前記金属膜が設けられた複数層構造を有していてもよく、このような第2部材8が、その中の前記金属膜において金属焼結層10と接触し、第1部材9と接合されていてもよい。
【0019】
金属焼結層10は、焼結性金属粒子同士が溶融し、結合することで形成された焼結体で構成される。
金属焼結層10は、例えば、焼結性金属粒子と、25℃で固体であるバインダー成分と、を含有するフィルム状焼成材料を焼成することで、形成できる。
【0020】
第1部材9、第2部材8及び金属焼結層10は、いずれも1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0021】
本明細書においては、これら(第1部材9、第2部材8及び金属焼結層10)の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0022】
第1部材9の厚さは、目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
第1部材9の厚さは、例えば、100~2000μmであることが好ましく、200~1700μmであることがより好ましい。
ここで、「第1部材9の厚さ」とは、第1部材9全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1部材9の厚さとは、第1部材9を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0023】
本明細書において、「厚さ」は、第1部材の場合に限定されず、特に断りの無い限り、対象物において無作為に選出された5箇所で測定された厚さの平均値を意味し、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
【0024】
第2部材8の厚さは、目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
第2部材8の厚さは、例えば、100~1000μmであることが好ましく、200~600μmであることがより好ましい。
ここで、「第2部材8の厚さ」とは、第2部材8全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第2部材8の厚さとは、第2部材8を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。したがって、第2部材8が前記金属膜を備えている場合には、ここに示す第2部材8の厚さとは、金属膜も含めた合計の厚さである。
【0025】
第2部材8が前記金属膜を備えている場合、前記金属膜の厚さは、0.1~2μmであることが好ましく、0.2~1μmであることがより好ましい。
【0026】
金属焼結層10の厚さは、目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
金属焼結層10の厚さは、例えば、5~100μmであることが好ましく、14~38μmであることがより好ましい。このような厚さの金属焼結層10は、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からのはみ出しの抑制と、第1部材9と第2部材8の十分に高い接合強度(接合体101の十分に高い接合強度)と、の両方をより安定して実現できる。また、このような厚さの金属焼結層10を備えた接合体101は、例えば、電力用半導体素子(パワーデバイス)を構成するものとして、特に好適である。
ここで、「金属焼結層10の厚さ」とは、金属焼結層10全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる金属焼結層10の厚さとは、金属焼結層10を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0027】
接合体101において、第2部材8の端部からの金属焼結層10のはみ出し幅は、220μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、例えば、180μm以下、及び160μm以下のいずれかであってもよい。特に、金属焼結層10の厚さが上記の数値範囲(例えば、12~40μm)である場合に、このように金属焼結層10のはみ出しが抑制された接合体101が、容易に得られる。
金属焼結層10のはみ出し幅の下限値は0μmである(金属焼結層10は、はみ出さないこともある)。
なお、ここでは、金属焼結層10のはみ出し幅は、第2部材8の端部を基準として算出されるが、金属焼結層のはみ出し幅を算出するときの基準は、接合体の構造に応じて、適宜選択できる。例えば、第2部材の方が第1部材よりも大きい場合には、金属焼結層のはみ出し幅は、第1部材の端部を基準として算出されることもある。
【0028】
接合体101において、金属焼結層10のはみ出しが抑制されると、金属焼結層10の厚さが必要以上に薄くなることが避けられる。また、金属焼結層10を形成する前のフィルム状焼成材料がはみ出した積層物の取り扱い性が良好である。
【0029】
接合体101における、第1部材9と第2部材8の接合強度の程度は、例えば、接合体101のせん断強度を指標として判断できる。
【0030】
接合体101のせん断強度は、例えば、以下の方法で測定できる。
すなわち、常温下で、図2に示すように、接合体101のうち、金属焼結層10の外周(側面)10cと、第2部材8の外周(側面)8cと、の位置合わせされた部位に対して、同時に、第2部材8の一方の面(第1部材9側とは反対側の面)8aに対して平行な方向(ここでは、矢印P方向)に、200μm/sの速度で力を加える。この方向は、例えば、「第1部材9の第2部材8側の面9aに対して平行な方向」と同義である。前記部位に対して力を加えるときには、例えば、金属製でプレート状の押圧手段7を用い、この押圧手段7を介して、前記部位に対して力を加えることにより、容易かつより高精度に接合強度を測定できる。押圧手段7は、その第1部材9側の先端部を、第1部材9に接触させずに配置する。そして、金属焼結層10が破壊されるか、又は、金属焼結層10が第1部材9又は第2部材8から剥離する、までに加えられた力の最大値を測定し、その測定値を接合体101のせん断強度として採用できる。
【0031】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0032】
接合体101のせん断強度は、35MPa以上であることが好ましく、45MPa以上であることがより好ましく、60MPa以上であることがさらに好ましく、例えば、75MPa以上、及び85MPa以上のいずれかであってもよい。
前記せん断強度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記せん断強度が130MPa以下である接合体101は、より容易に製造できる。
接合体101のせん断強度は、例えば、35~130MPa、45~130MPa、60~130MPa、75~130MPa、及び85~130MPaのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記せん断強度の一例である。
【0033】
本実施形態の製造方法で得られる接合体は、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、前記接合体は、第1部材と、金属焼結層と、第2部材と、のいずれにも該当しない、他の要素を備えていてもよい。
【0034】
<フィルム状焼成材料>
フィルム状焼成材料は、前記金属焼結層の形成材料である。
フィルム状焼成材料としては、例えば、焼結性金属粒子と、25℃で固体であるバインダー成分と、を含有するものが挙げられる。
【0035】
[焼結性金属粒子]
フィルム状焼成材料を前記焼結性金属粒子の融点以上の温度で加熱処理することで、焼結性金属粒子同士が溶融、結合して、金属焼結層(焼結体)を形成する。前記金属焼結層を形成することで、金属焼結層と、これに接して焼成された部材と、が焼結接合される。本実施形態においては、第1部材と第2部材が、金属焼結層によって接合される。
焼結性金属粒子は、後述する非焼結性金属粒子よりも焼結し易い。
【0036】
焼結性金属粒子の金属種としては、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、シリコン、パラジウム、白金、チタン、バリウムが挙げられる。焼結性金属粒子としては、これら金属種の金属の粒子、1種又は2種以上の前記金属の酸化物の粒子、1種又は2種以上の前記金属の合金の粒子等が挙げられる。2種以上の前記金属の酸化物としては、例えば、チタン酸バリウム等が挙げられる。
これらの中でも、好ましい焼結性金属粒子としては、銀粒子、酸化銀粒子が挙げられる。
【0037】
フィルム状焼成材料が含有する焼結性金属粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0038】
本明細書において、「焼結性金属粒子」とは、具体的には、粒子径が100nm以下の金属元素を含む粒子を意味する。
焼結性金属粒子の粒子径は、100nm以下で、かつ、上述の焼結性を発現可能であれば、特に限定されず、例えば、50nm以下、及び30nm以下のいずれかであってよい。このような粒子径の焼結性金属粒子は、焼結性がより高い。
【0039】
本明細書において、「金属粒子の粒子径」とは、電子顕微鏡で観察された金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径とする。すなわち、観察された金属粒子の像の形状が円である場合には、金属粒子の粒子径とは、前記円の直径である。観察された金属粒子の像の形状が円以外である場合には、金属粒子の粒子径とは、この像の面積と同じ面積の円の直径である。
【0040】
焼結性金属粒子においては、電子顕微鏡で観察された金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径が100nm以下の粒子に対して求めた粒子径の数平均が、例えば、0.1~95nm、0.3~50nm、及び0.5~30nmのいずれかであってよい。このとき、測定対象の金属粒子は、フィルム状焼成材料1枚あたり、無作為に選ばれた100個以上の金属粒子とする。例えば、測定対象の金属粒子は、フィルム状焼成材料1枚あたり、無作為に選ばれた100個の金属粒子であってもよい。
【0041】
本実施形態のフィルム状焼成材料は、粒子径100nm以下の金属粒子(すなわち、焼結性金属粒子)と、これに該当しない、粒子径が100nm超の金属粒子(本明細書においては、「非焼結性金属粒子」と称することがある)と、を含有していてもよい。
【0042】
本明細書において、「非焼結性金属粒子」とは、具体的には、粒子径が100nm超の金属元素を含む粒子を意味する。
【0043】
非焼結性金属粒子においては、電子顕微鏡で観察された金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径が100nm超の粒子に対して求めた粒子径の数平均が、例えば、150nm超50000nm以下、150~10000nm、及び180~5000nmのいずれかであってよい。このとき、測定対象の金属粒子は、フィルム状焼成材料1枚あたり、無作為に選ばれた100個以上の金属粒子とする。例えば、測定対象の金属粒子は、フィルム状焼成材料1枚あたり、無作為に選ばれた100個の金属粒子であってもよい。
【0044】
非焼結性金属粒子の金属種としては、上述の焼結性金属粒子の金属種として例示したものと同じものが挙げられる。
好ましい非焼結性金属粒子としては、銀粒子、銅粒子、銀酸化物粒子、銅酸化物粒子が挙げられる。
【0045】
フィルム状焼成材料が含有する非焼結性金属粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0046】
フィルム状焼成材料において、焼結性金属粒子の金属種と、非焼結性金属粒子の金属種と、は互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子として銀粒子を含有し、非焼結性金属粒子として銀粒子又は酸化銀粒子を含有していてもよい。また、例えば、フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子として銀粒子又は酸化銀粒子を含有し、非焼結性金属粒子として銅粒子又は酸化銅粒子を含有していてもよい。
【0047】
フィルム状焼成材料における、金属粒子の合計含有量(換言すると、焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子の合計含有量)に対する、焼結性金属粒子の含有量の割合は、例えば、10~100質量%、及び20~95質量%のいずれかであってもよい。
【0048】
フィルム状焼成材料において、焼結性金属粒子及び非焼結性金属粒子のいずれか一方又は両方は、その表面に、有機物が被覆されていてもよい。有機物の被覆を有する焼結性金属粒子及び非焼結性金属粒子は、バインダー成分との相溶性が向上し、粒子同士の凝集がより抑制され、より均一に分散可能である。
焼結性金属粒子又は非焼結性金属粒子の表面に有機物が被覆されている場合、焼結性金属粒子又は非焼結性金属粒子の質量としては、有機物を含んだ値を採用する。
【0049】
[バインダー成分]
前記バインダー成分は、25℃で固体であり、フィルム状焼成材料はバインダー成分を含有していることによって、フィルム状の形状を維持でき、さらに、粘着性を有する。
バインダー成分は、フィルム状焼成材料の焼成時(加熱処理時)に熱分解する熱分解性であってよい。
【0050】
本明細書において、「液体」とは、25℃の温度条件下で、B型粘度計を用いて粘度が測定可能な状態を意味する。「固体」とは、25℃の温度条件下で、B型粘度計を用いて粘度が測定不可能な状態を意味する。
【0051】
バインダー成分は、本発明の効果が得られる限り、特に限定されない。
好ましいバインダー成分としては、例えば、樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、セルロース誘導体の重合物等が挙げられ、アクリル系樹脂がより好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、1種の(メタ)アクリレート化合物の単独重合体;2種以上の(メタ)アクリレート化合物の共重合体;1種又は2種以上の(メタ)アクリレート化合物と、それ以外の1種又は2種以上の他の共重合性単量体と、の共重合体等が挙げられる。
【0052】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリレートと類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。
【0053】
前記アクリル系樹脂において、構成単位の全量(質量部)に対する、(メタ)アクリレート化合物から誘導された構成単位の量(質量部)の割合は、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソオクタデシル(メタ)アクリレート(イソステアリル(メタ)アクリレート)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、アルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリレート化合物は、アルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート又は2-エトキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであることがさらに好ましく、2-エチルヘキシルメタクリレートであることが特に好ましい。
【0056】
前記アクリル系樹脂は、メタクリレート化合物から誘導された構成単位を有することが好ましい。このようなアクリル系樹脂をバインダー成分として含有するフィルム状焼成材料は、比較的低温で焼成することができ、また、充分な接合強度を有する金属焼結層が容易に得られる。
【0057】
前記他の共重合性単量体は、前記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に限定されない。
前記他の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸(エテニル安息香酸)、マレイン酸、ビニルフタル酸(エテニルフタル酸)等の不飽和カルボン酸類(不飽和結合を有するカルボン酸);ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等のビニル基含有ラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0058】
バインダー成分である前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~1000000であることが好ましく、10000~800000であることがより好ましい。前記樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、フィルム状焼成材料の膜強度及び柔軟性がより高くなる。
【0059】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0060】
バインダー成分である前記樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~50℃であることが好ましく、-30~10℃であることがより好ましく、-20℃以上0℃未満であることがさらに好ましい。前記樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料の柔軟性がより高くなり、さらに、フィルム状焼成材料の被着体(第1部材、第2部材)に対する粘着力がより高くなる。前記樹脂のTgが前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料のフィルム形状の維持がより容易であり、後述する支持シート等からのフィルム状焼成材料の引き離しがより容易となる。
【0061】
バインダー成分である前記樹脂のガラス転移温度(Tg)は、Foxの式を用いて算出できる。本明細書中に記載されている樹脂のTgは、樹脂が前記バインダー成分であるか否かによらず、特に断りのない限り、Foxの式を用いて算出した値である。
前記Foxの式における各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、高分子データ・ハンドブック又は粘着ハンドブック等に記載されている値を使用できる。
【0062】
フィルム状焼成材料が含有するバインダー成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0063】
バインダー成分が、フィルム状焼成材料の焼成時(加熱処理時)に熱分解されたことは、例えば、焼成時のバインダー成分の質量減少により確認できる。
本実施形態においては、フィルム状焼成材料の焼成時に、バインダー成分のすべてが熱分解されてもよいし、バインダー成分の一部が熱分解されなくてもよい。
本実施形態においては、焼成前のバインダー成分の総量(質量部)に対する、焼成後のバインダー成分(換言すると金属焼結層)の量(質量部)の割合が、例えば、10質量%以下、5質量%以下、及び3質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。
【0064】
フィルム状焼成材料は、本発明の効果を損なわない範囲内において、焼結性金属粒子と、非焼結性金属粒子と、バインダー成分と、のいずれにも該当しないその他の成分を含有していてもよい。
【0065】
前記その他の成分としては、例えば、液体成分、溶媒、添加剤等が挙げられる。
【0066】
前記液体成分は、その沸点が300~450℃であり、かつ25℃で液体の成分である。フィルム状焼成材料は、このような液体成分を含有していることによって、後述する支持シートとの接着力が充分に高く、ダイシング適性に優れ、さらにその焼成時には、第1部材と第2部材との間からの液体成分の染み出しが抑制される。
【0067】
本明細書において「沸点」とは、常圧(101325Pa)下での沸点を意味する。
【0068】
前記溶媒は、その沸点が300℃未満であり、かつ25℃で液体の成分である。
前記溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
前記溶媒は、後述の焼成材料組成物の取り扱い性を向上させるという点において、好ましい成分である。
【0069】
前記添加剤は、特に限定されない。前記添加剤としては、例えば、分散剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等の当該分野で公知の各種添加剤が挙げられる。
【0070】
フィルム状焼成材料が含有する前記その他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0071】
フィルム状焼成材料における、フィルム状焼成材料の総質量に対する、前記その他の成分の含有量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0072】
後述する支持シート付きフィルム状焼成材料は、フィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の面に設けられた支持シートと、を備えている。
前記支持シート付きフィルム状焼成材料においては、前記フィルム状焼成材料の支持シートに対する粘着力(a2)が、前記フィルム状焼成材料のシリコンウエハに対する粘着力(a1)よりも小さく、かつ、前記粘着力(a1)が0.1N/25mm以上であり、前記粘着力(a2)が0.1~2N/25mm又は0.1~0.5N/25mmであることが好ましい。
【0073】
前記粘着力(a1)は、以下の方法で測定できる。
すなわち、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.02μmになるまでケミカルメカニカルポリッシュ処理したシリコンウエハ(例えば、科学技術研究所社製の、直径150mm、厚さ500μmのシリコンウエハ)を用意し、支持シート付きフィルム状焼成材料中のフィルム状焼成材料を、その温度を50℃とし、前記シリコンウエハの前記処理面に貼付する。次いで、フィルム状焼成材料から支持シートを剥離し、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(PETフィルム、厚さ12μm)を、フィルム状焼成材料の露出面に貼付し、強固に接着(裏打ち)する。次いで、このPETフィルムとフィルム状焼成材料の積層物を、幅25mm、長さ100mm以上の大きさに切断し、フィルム状焼成材料及びPETフィルムからなる積層物がシリコンウエハに貼付にされた積層体を得る。次いで、得られた積層体を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で20分間放置した後、万能型引張試験機(例えば、インストロン社製「5581型試験機」)を用いて、JIS Z0237:2000に準拠して、180°剥離試験を行う。より具体的には、シリコンウエハからPETフィルムが裏打ちされたフィルム状焼成材料をPETフィルムごと剥離速度300mm/minで剥離する。このとき、シリコンウエハ及びフィルム状焼成材料の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、PETフィルムが裏打ちされたフィルム状焼成材料をその長さ方向へ剥離する。そして、この180°剥離試験での荷重(剥離力)を測定し、その測定値を粘着力(a1)(N/25mm)として採用する。
【0074】
前記粘着力(a2)は、以下の方法で測定できる。
すなわち、支持シート付きフィルム状焼成材料を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で20分間放置した後、万能型引張試験機(例えば、インストロン社製「5581型試験機」)を用いて、JIS Z0237:2000に準拠して、180°剥離試験を行う。より具体的には、支持シート付きフィルム状焼成材料中のフィルム状焼成材料の露出面に、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(PETフィルム、厚さ12μm)を貼付し、支持シートから、PETフィルムが貼付されたフィルム状焼成材料をPETフィルムごと剥離速度300mm/minで剥離する。このとき、支持シート及びフィルム状焼成材料の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、フィルム状焼成材料をPETフィルムごと、その長さ方向へ剥離する。そして、この180°剥離試験での荷重(剥離力)を測定し、その測定値を粘着力(a2)(N/25mm)として採用する。
【0075】
ケミカルメカニカルポリッシュ処理したシリコンウエハに代えて、第1部材及び第2部材のいずれか一方を用いて、それ以外は上述の粘着力(a1)の測定方法と同じ方法で得られる、フィルム状焼成材料の、第1部材及び第2部材のいずれか一方に対する粘着力は、0.1N/25mm以上であることが好ましく、0.5N/25mm以上であることがより好ましく、1.0N/25mm以上であることがさらに好ましい。粘着力(a1)が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料のダイシング適性がより高くなる。また、第1部材と第2部材が焼成前のフィルム状焼成材料で仮固定されている状態で搬送される際に、第1部材又は第2部材の位置がずれるのを抑制できる。
【0076】
上述の粘着力(a2)は、0.1~0.5N/25mmであることが好ましく、0.2~0.5N/25mmであることがより好ましく、0.2~0.4N/25mmであることがさらに好ましい。粘着力(a2)が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料のダイシング適性がより高くなる。
粘着力(a2)が、粘着力(a1)よりも小さく、かつ前記上限値以下であることで、第1部材及び第2部材のいずれか一方を分割(例えば、ウエハの場合にはダイシング)により個片化して得られた分割物(例えば、ウエハの場合にはチップ)と、フィルム状焼成材料の切断物と、の積層物(例えば、ウエハの場合にはフィルム状焼成材料付きチップ)を、支持シートから剥離するときに、支持シートからフィルム状焼成材料が剥がれ易くなり、前記積層物をより容易に剥離できる。
【0077】
[フィルム状焼成材料の組成]
フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子、バインダー成分、及び前記その他の成分からなるものであってもよく、これら成分の合計含有量は、100質量%であってよい。
フィルム状焼成材料が非焼結性金属粒子を含む場合には、フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子、非焼結性金属粒子、バインダー成分、及び前記その他の成分からなるものであってもよく、これら成分の合計含有量は、100質量%であってよい。
【0078】
フィルム状焼成材料において、25℃で液体である成分以外の全ての成分(本明細書においては、「固形分」と称することがある)の合計含有量に対する、の含有量の割合は、15~98質量%であることが好ましく、15~95質量%であることがより好ましく、20~90質量%であることがさらに好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料において、バインダー成分の含有量を充分に確保できるので、フィルム形状をより安定して維持できる。前記割合が前記下限値以上であることで、焼成時に焼結性金属粒子同士、又は焼結性金属粒子と非焼結性金属粒子との融着がより進行し、接合体の接合強度がより高くなる。
【0079】
フィルム状焼成材料が非焼結性金属粒子を含有する場合、フィルム状焼成材料における、固形分の総含有量に対する、焼結性金属粒子及び非焼結性金属粒子の合計含有量の割合は、50~98質量%であることが好ましく、70~97質量%であることがより好ましく、80~95質量%であることがさらに好ましい。
【0080】
フィルム状焼成材料における、固形分の総含有量に対する、バインダー成分の含有量の割合は、2~50質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料において、焼結性金属粒子の含有量を充分に確保できるので、フィルム状焼成材料と第1部材又は第2部材との接合接着力がより向上する。前記割合が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料のフィルム形状をより安定して維持できる。
【0081】
フィルム状焼成材料において、[焼結性金属粒子の含有量(質量部)]:[バインダー成分の含有量(質量部)])の比率は、50:1~1:1であることが好ましく、35:1~2.5:1であることがより好ましく、20:1~4:1であることがさらに好ましい。
フィルム状焼成材料が非焼結性金属粒子を含有する場合には、[焼結性金属粒子及び非焼結性金属粒子の合計含有量(質量部)]:[バインダー成分の含有量(質量部)]の比率は、50:1~1:10であることが好ましく、35:1~1:4であることがより好ましく、20:1~1:2.5であることがさらに好ましい。
【0082】
フィルム状焼成材料において、フィルム状焼成材料の総質量に対する、後述の焼成材料組成物が含有する溶媒(比較的高沸点の溶媒も含む)の含有量の割合は、1質量%以下であることが好ましい。
【0083】
[フィルム状焼成材料の物性]
フィルム状焼成材料は、一定値以上の柔らかさを有する。
より具体的には、シリコンチップと、金属膜と、前記フィルム状焼成材料の試験片と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された試験用積層体であって、前記シリコンチップの平面形状が四角形であり、前記金属膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられており、前記金属膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面の全面を被覆しており、前記フィルム状焼成材料の試験片が前記シリコンチップと同等の大きさであり、かつ前記シリコンチップの外周から前記フィルム状焼成材料がはみ出していない試験用積層体を作製し、前記試験用積層体中の前記試験片の露出面全面を銅板に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置し、前記試験用積層体と前記銅板を300℃に加熱しながら、前記試験用積層体に対して、前記シリコンチップと、前記金属膜と、前記試験片と、の積層方向に、前記シリコンチップ側から3分間、10MPaの圧力を加えたとき、前記シリコンチップの外周からの前記試験片のはみ出し幅の最大値が、220μm超となる。
はみ出し幅の最大値がこのような範囲であることで、第1部材と第2部材の端部からの金属焼結層のはみ出しが抑制される効果と、第1部材と第2部材の接合強度が十分に高くなる効果が、バランスよく得られる。
ここで、フィルム状焼成材料の試験片がシリコンチップと同等の大きさである、とは、フィルム状焼成材料の試験片の、シリコンチップ側の面の面積が、シリコンチップの、フィルム状焼成材料の試験片側の面の面積に対して、同等である、ことを意味する。
また、金属膜は、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられているため、金属膜は、シリコンチップの外周から全くはみ出していないか、又ははみ出していても、はみ出し幅が極めて微小で無視し得る程度であり、実質的にはみ出していないと見做し得る程度である。
【0084】
前記試験用積層体においては、例えば、シリコンチップの厚さは、50~1000μmであってもよく、シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが1~3mm×1~3mmであってもよい。前記金属膜は銀膜であってもよい。前記金属膜の厚さは、例えば、0.2~2μmであってもよい。特に好ましい試験用積層体としては、例えば、シリコンチップの厚さが345.5μmであり、シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが2mm×2mmであり、前記金属膜が、厚さが0.5μmの銀膜であるものが挙げられる。
すなわち、本実施形態においては、厚さが345.5μmのシリコンチップと、厚さが0.5μmの銀膜と、前記フィルム状焼成材料の試験片と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された試験用積層体であって、前記シリコンチップの平面形状が四角形であり、かつその大きさが2mm×2mmであり、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面に、蒸着によって設けられており、前記銀膜が、前記シリコンチップの前記フィルム状焼成材料側の面の全面を被覆しており、前記フィルム状焼成材料の試験片が前記シリコンチップと同等の大きさであり、かつ前記シリコンチップの外周から前記フィルム状焼成材料がはみ出していない試験用積層体を作製し、前記試験用積層体中の前記試験片の露出面全面を銅板に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置し、前記試験用積層体と前記銅板を300℃に加熱しながら、前記試験用積層体に対して、前記シリコンチップと、前記銀膜と、前記試験片と、の積層方向に、前記シリコンチップ側から3分間、10MPaの圧力を加えたとき、前記シリコンチップの外周からの前記試験片のはみ出し幅の最大値が、220μm超となることが、特に好ましい。
【0085】
前記試験用積層体は、例えば、以下に示す方法で作製できる。
すなわち、まず、金属膜を備えたシリコンチップ(本明細書においては「金属膜付きシリコンチップ」と称することがある)の金属膜の露出面に、フィルム状焼成材料の一方の面を貼り合わせ、フィルム状焼成材料を積層する。このとき、フィルム状焼成材料として、その前記一方の面の面積が、金属膜の露出面の面積よりも大きいものを用いる。そして、金属膜の露出面の全面に、フィルム状焼成材料の前記一方の面を貼り合わせることにより、金属膜の外周の全域において、フィルム状焼成材料の余剰部分を生じさせる。次いで、フィルム状焼成材料の、この余剰部分を切断して除去する。余剰部分を除去したあとのフィルム状焼成材料を、本実施形態においては、試験片として取り扱う。このように金属膜付きシリコンチップにフィルム状焼成材料を貼り合わせるときと、フィルム状焼成材料の余剰部分を除去するときには、フィルム状焼成材料に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにして、フィルム状焼成材料の形状及び大きさが変化しないように調節することが好ましい。これにより、フィルム状焼成材料の試験片の外周(側面)と、金属膜付きシリコンチップの外周(側面)と、が位置合わせされ、これらの一方の外周(側面)が、他方の外周(側面)から突出していない状態となる。
以上により、同等の大きさの金属膜付きシリコンチップと、フィルム状焼成材料の試験片と、が積層され、さらに、これらの外周(側面)が位置合わせされているなど、金属膜付きシリコンチップの外周からフィルム状焼成材料の試験片がはみ出していない試験用積層体が得られる。
【0086】
試験用積層体における前記フィルム状焼成材料のはみ出し幅は、より具体的には、例えば、以下に示す方法で測定できる。
すなわち、まず、試験用積層体中のフィルム状焼成材料の試験片のうち、金属膜付きシリコンチップ側とは反対側の面(すなわち露出面)の全面を、銅板の一方の面に接触させて、試験用積層体を銅板上に載置する。このとき、銅板として、その前記一方の面の面積が、フィルム状焼成材料の試験片の前記反対側の面の面積よりも大きいものを用いる。このようにすることで、試験用積層体の外周(側面)の全域、すなわち、フィルム状焼成材料の試験片の外周(側面)と、シリコンチップの外周(側面)と、の全域から銅板が突出する。このとき、フィルム状焼成材料の試験片に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにして、フィルム状焼成材料の試験片の形状及び大きさが変化しないように調節することが好ましい。
次いで、試験用積層体と銅板を300℃に加熱しながら、試験用積層体に対して、金属膜付きシリコンチップと、前記フィルム状焼成材料の試験片と、の積層方向に、金属膜付きシリコンチップ側から180秒間、10MPaの圧力を加える。このとき、例えば、試験用積層体と銅板の積層物を、一対の加熱可能なプレートで挟持し、これらプレートで試験用積層体と銅板を一体に300℃で加熱してもよいし、試験用積層体と銅板の積層物を、300℃に温度調節した隔離環境下に置くことによって、試験用積層体と銅板を一体に300℃で加熱してもよい。そして、前記積層物をその銅板側で支持した状態で、前記積層物中の金属膜付きシリコンチップに対して、シリコンチップからフィルム状焼成材料の試験片に向かう方向に、前記積層物の外部から、10MPaの圧力を180秒間加える。
次いで、試験用積層体と銅板の上記の加熱と、試験用積層体に対する上記の加圧と、の両方を解除した後、室温下等の常温下で、金属膜付きシリコンチップの外周からの、フィルム状焼成材料の試験片のはみ出し幅を、金属膜付きシリコンチップの外周の全域で測定する。そして、その測定値のうちの最大値を求め、これを金属膜付きシリコンチップの外周からの、フィルム状焼成材料の試験片のはみ出し幅の最大値として採用する。
銅板の厚さは、例えば、1~5mmであることが好ましい。
【0087】
試験用積層体を用いて求められた前記はみ出し幅の最大値は、220μm超であり、例えば、235μm超であってもよい。一方、前記はみ出し幅の最大値は、500μm未満であることが好ましく、例えば、400μm未満であってもよい。前記はみ出し幅の最大値がこのような範囲であることで、第1部材と第2部材の端部からの金属焼結層のはみ出しが抑制される効果と、第1部材と第2部材の接合強度が十分に高くなる効果が、ともに高くなる。
前記はみ出し幅の最大値は、例えば、220μm超500μm未満、235μm超500μm未満、220μm超400μm未満、及び235μm超400μm未満のいずれかであってもよい。
【0088】
フィルム状焼成材料の柔らかさと、上述のシリコンチップの外周からのフィルム状焼成材料のはみ出し幅は、フィルム状焼成材料の含有成分(後述する焼成材料組成物の含有成分)を調節することで、調節できる。例えば、フィルム状焼成材料(焼成材料組成物)のバインダー成分の含有量を増大させることで、フィルム状焼成材料の柔らかさを向上させ、上述のフィルム状焼成材料のはみ出し幅を大きくできる。
【0089】
フィルム状焼成材料は、フィルム状であるため、厚さの安定性に優れる。
【0090】
フィルム状焼成材料の形状は、接合対象である第1部材又は第2部材の形状に合わせて適宜設定すればよく、特に限定されない。本明細書においては、「フィルム状焼成材料の形状」とは、特に断りのない限り、フィルム状焼成材料を、その第1部材又は第2部材への貼付面側の上方から見下ろして平面視したときの形状(すなわち平面形状)を意味する。
フィルム状焼成材料の形状は、例えば、円形又は矩形であることが好ましい。円形は、例えば、第2部材が半導体ウエハである場合に好適な形状である。この場合、フィルム状焼成材料と第2部材(半導体ウエハ)は、互いに同形状又は略同形状となる。矩形は、例えば、第2部材がチップである場合に好適な形状である。この場合、フィルム状焼成材料と第2部材(チップ)は、互いに同形状又は略同形状となる。
【0091】
フィルム状焼成材料の形状が円形である場合、円の面積は、例えば、3.5~1600cm、及び85~1400cmのいずれかであってよい。フィルム状焼成材料の形状が矩形である場合、矩形の面積は、例えば、0.01~25cm、及び0.25~9cmのいずれかであってよい。
【0092】
フィルム状焼成材料は、その少なくとも一方の面に支持シートが設けられた、支持シート付きフィルム状焼成材料を構成できる。
支持シート付きフィルム状焼成材料については、後ほど詳しく説明する。
【0093】
<フィルム状焼成材料の製造方法>
フィルム状焼成材料は、その構成材料を含有する焼成材料組成物を用いて形成できる。フィルム状焼成材料は、溶媒を含有していてもよい。
例えば、フィルム状焼成材料の形成対象面に、前記焼成材料組成物を塗工又は印刷し、必要に応じて溶媒を揮発させることで、目的とする部位にフィルム状焼成材料を形成できる。
フィルム状焼成材料の形成対象面としては、剥離フィルムの剥離処理面が挙げられる。
【0094】
焼成材料組成物が溶媒を含有する場合、焼成材料組成物が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0095】
焼成材料組成物を塗工する場合、前記溶媒としては、その沸点が200℃未満のものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、n-ヘキサン(沸点68℃)、酢酸エチル(沸点77℃)、2-ブタノン(別名:メチルエチルケトン、沸点80℃)、n-ヘプタン(沸点98℃)、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)、トルエン(沸点111℃)、アセチルアセトン(沸点138℃)、n-キシレン(沸点139℃)、ジメチルホルムアミド(沸点153℃)等が挙げられる。
【0096】
焼成材料組成物の塗工は、公知の方法で行えばよい。焼成材料組成物は、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター(登録商標)、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法で塗工できる。
【0097】
焼成材料組成物を印刷する場合、前記溶媒は、印刷後に揮発乾燥可能なものであればよく、その沸点が65~280℃のものが好ましい。このような比較的高沸点の溶媒としては、先に例示した、沸点が200℃未満の溶媒と、さらに、イソホロン(沸点215℃)、ブチルカルビトール(沸点230℃)、1-デカノール(沸点233℃)、ブチルカルビトールアセタート(沸点247℃)等が挙げられる。
溶媒の沸点が280℃以下であることで、印刷後の揮発乾燥で溶媒が揮発し易く、フィルム状焼成材料を目的とする形状で得られ易い。また、フィルム状焼成材料の焼成時に溶媒がフィルム状焼成材料の内部に残存し難くなり、フィルム状焼成材料の接合接着性がより高くなる。溶媒の沸点が65℃以上であることで、印刷時に溶媒の揮発が抑制され、フィルム状焼成材料の厚さの均一性がより高くなる。なかでも、溶媒の沸点が200~280℃である場合には、印刷時の溶媒の揮発による、焼成材料組成物の粘度の上昇がより抑制され、印刷適性がより高くなる。
【0098】
焼成材料組成物の印刷は、公知の方法で行えばよい。焼成材料組成物は、例えば、フレキソ印刷法等の凸版印刷法;グラビア印刷法等の凹版印刷法;オフセット印刷法等の平板印刷法;シルクスクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法等のスクリーン印刷法;インクジェットプリンタ等の各種プリンタを用いる印刷法等で印刷できる。
焼成材料組成物を印刷することにより、塗工する場合よりも、目的とする形状のフィルム状焼成材料を形成し易い。
【0099】
焼成材料組成物が溶媒を含有する場合、焼成材料組成物の総質量に対する、溶媒の含有量の割合は、5~60質量%であることが好ましく、例えば、5~30質量%、及び5~15質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、焼成材料組成物の塗工適性又は印刷適性がより高くなる。
【0100】
焼成材料組成物の乾燥条件は、特に限定されず、焼成材料組成物が溶媒を含有している場合には、加熱乾燥させることが好ましい。焼成材料組成物を加熱乾燥させる場合には、例えば、70~250℃又は80~180℃で、10秒間~15分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0101】
<支持シート付きフィルム状焼成材料>
本実施形態における支持シート付きフィルム状焼成材料は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記フィルム状焼成材料と、を備えている。
前記支持シートとしては、例えば、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材フィルムのみからなるもの等が挙げられる。
支持シートが、前記基材フィルム及び粘着剤層を備えたものである場合、前記支持シート付きフィルム状焼成材料において、前記フィルム状焼成材料は、前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面上に設けられている。
【0102】
支持シート付きフィルム状焼成材料は、例えば、分割によって第2部材を形成するための部材(本明細書においては、「未分割部材」と称することがある)を、分割するために用いることができ、例えば、未分割部材としてウエハを用いた場合には、このウエハをダイシングによってチップへと分割するためのダイシングシートとして利用できる。このとき、フィルム状焼成材料も、未分割部材とともに切断でき、ウエハをダイシングによってチップへと分割する場合には、ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた、切断後のフィルム状焼成材料と、を備えたフィルム状焼成材料付きチップを製造できる。
支持シート付きフィルム状焼成材料を用いることで、後述する接合体の製造方法における工程(I)で、第1積層体を作製できる。
【0103】
図3は、支持シート付きフィルム状焼成材料を模式的に示す断面図である。
ここに示す支持シート付きフィルム状焼成材料301は、支持シート2と、支持シート2の一方の面2a上に設けられたフィルム状焼成材料1と、を備えている。支持シート2は、基材フィルム21と、基材フィルム21の一方の面21a上に設けられた粘着剤層22と、を備えている。支持シート付きフィルム状焼成材料301において、フィルム状焼成材料1は、粘着剤層22の基材フィルム21側とは反対側の面22a上に設けられている。粘着剤層22の基材フィルム21側とは反対側の面22aは、支持シート2の一方の面2aと同じである。
【0104】
本実施形態の製造方法で用いる支持シート付きフィルム状焼成材料は、図3に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料は、基材フィルムと、粘着剤層と、フィルム状焼成材料と、のいずれにも該当しない、他の要素を備えていてもよい。例えば、図3に示す支持シート付きフィルム状焼成材料においては、粘着剤層が基材フィルムの一方の面に直接接触して設けられ、フィルム状焼成材料が粘着剤層の基材フィルム側とは反対側の面に直接接触して設けられているが、支持シート付きフィルム状焼成材料は、基材フィルムと粘着剤層との間、又は、粘着剤層とフィルム状焼成材料との間に、他の層(フィルム)を備えていてもよい。
また、図3に示す支持シート付きフィルム状焼成材料においては、基材フィルムの一方の面の全面上に粘着剤層が設けられているが、基材フィルムの一方の面の一部の領域上には、粘着剤層が設けられていなくてもよい。
【0105】
[基材フィルム]
基材フィルムの構成材料としては、樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE),エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、アイオノマー等が挙げられる。
また支持シートに対してより高い耐熱性が求められる場合には、前記樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン等が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、ここまでに挙げた樹脂を架橋したもの(架橋樹脂)、ここまでに挙げた樹脂の放射線照射又は放電等により得られる改質樹脂も挙げられる。
【0106】
基材フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0107】
基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、30~300μmであることが好ましく、例えば、50~200μmであってもよい。基材フィルムの厚さがこのような範囲であることで、基材フィルムにダイシングによる切り込みが行われても、基材フィルムが断裂し難い。また、支持シート付きフィルム状焼成材料は、充分な可撓性を有するため、第1部材又は第2部材に対して良好な貼付性を示す。
ここで、「基材フィルムの厚さ」とは、基材フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材フィルムの厚さとは、基材フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0108】
基材フィルムは、その表面が剥離剤により剥離処理されていても(剥離処理面を有していても)よい。前記剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系の剥離剤等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性を有する点で、特に好ましい前記剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系又はフッ素系の剥離剤が挙げられる。
【0109】
[粘着剤層]
粘着剤層は、例えば、弱粘着性であってもよいし、エネルギー線硬化性であってもよい。
【0110】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味する。
【0111】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、公知の種々の粘着剤(例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系等の汎用粘着剤;表面凹凸のある粘着剤;エネルギー線硬化性粘着剤;熱膨張成分含有粘着剤等)が挙げられる。
【0112】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、2~80μmであることがより好ましく、3~50μmであることがさらに好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0113】
支持シート付きフィルム状焼成材料の厚さは、1~500μmであることが好ましく、5~300μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましい。
【0114】
<支持シート付きフィルム状焼成材料の製造方法>
支持シート付きフィルム状焼成材料は、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。
例えば、基材フィルムの一方の面上に粘着剤層又はフィルム状焼成材料を積層する場合には、剥離フィルム上に、粘着剤層を構成するための成分及び溶媒を含有する粘着剤組成物、又はフィルム状焼成材料を構成するための成分及び溶媒を含有する焼成材料組成物を、塗工又は印刷し、必要に応じて乾燥により溶媒を揮発させて、フィルム状とすることで、剥離フィルム上に粘着剤層又はフィルム状焼成材料をあらかじめ形成する。そして、この形成済みの粘着剤層又はフィルム状焼成材料の前記剥離フィルム側とは反対側の露出面を、基材フィルムの一方の面と貼り合わせればよい。このとき、粘着剤組成物又は焼成材料組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工又は印刷することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0115】
例えば、基材フィルム上に積層されている粘着剤層の、基材フィルム側とは反対側の面上に、フィルム状焼成材料を積層する場合には、上述の方法で基材フィルム上に粘着剤層を積層する。そして、別途、剥離フィルム上に、フィルム状焼成材料を構成するための成分及び溶媒を含有する焼成材料組成物を、塗工又は印刷し、必要に応じて乾燥により溶媒を揮発させて、フィルム状とすることで、剥離フィルム上にフィルム状焼成材料をあらかじめ形成する。そして、この形成済みのフィルム状焼成材料の前記剥離フィルム側とは反対側の露出面を、基材フィルム上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせればよい。このとき、焼成材料組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工又は印刷することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0116】
<<接合体の製造方法>>
次に、本実施形態の接合体の製造方法について、説明する。
図4は、本実施形態の接合体の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。ここでは、図1に示す接合体101を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0117】
<<工程(I)>>
前記工程(I)においては、図4(a)に示すように、第1部材9と、金属焼結層10を形成するためのフィルム状焼成材料1と、第2部材8と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層体1011を作製する。そのためには、第1部材9と、フィルム状焼成材料1と、第2部材8と、をこの順に積層すればよい。
フィルム状焼成材料1としては、先に説明したものを用いることができる。
【0118】
第1積層体1011においては、第1部材9と第2部材8のうち小さい方、すなわち、第2部材8の外周からフィルム状焼成材料1がはみ出していないことが好ましい。このようにすることで、後述する第2積層体1012をより容易に得られる。
第1積層体1011においては、フィルム状焼成材料1の大きさが、第2部材8の大きさに対して同等以下である(フィルム状焼成材料1の第2部材8との接触面の面積が、第2部材8のフィルム状焼成材料1との接触面の面積に対して、同等以下である)ことが好ましく、例えば、フィルム状焼成材料1の第2部材8との接触面の面積は、第2部材8のフィルム状焼成材料1との接触面の面積に対して、80~100%、及び90~100%のいずれかであってもよい。このような場合、後述する接合体において、第2部材8の端部からの金属焼結層のはみ出しがより抑制され、第1部材9と第2部材8の接合強度がより高くなる。
本明細書において、大きさが同等であるとは、比較対象のもの同士が、全く同じ大きさであるか、又は、全く同じ大きさでなくても、大きさの差が無視し得る程度に微小であることを意味する。
【0119】
ここでは、第2部材が第1部材よりも小さい場合を示しているが、第1部材が第2部材よりも小さい場合には、第1積層体においては、第1部材の外周からフィルム状焼成材料がはみ出していないことが好ましく、フィルム状焼成材料の大きさが、第1部材の大きさに対して同等以下である(フィルム状焼成材料の第1部材との接触面の面積が、第1部材のフィルム状焼成材料との接触面の面積に対して、同等以下である)ことが好ましく、例えば、フィルム状焼成材料の第1部材との接触面の面積は、第1部材のフィルム状焼成材料との接触面の面積に対して、80~100%、及び90~100%のいずれかであってもよい。このような場合、上記と同様の効果が得られる。
【0120】
工程(I)は、例えば、上述の試験用積層体の作製の場合と同様の方法で行うことができる。
すなわち、第2部材8の一方の面に、フィルム状焼成材料1の一方の面を貼り合わせ、フィルム状焼成材料1を積層する。このとき、フィルム状焼成材料1として、その前記一方の面の面積が、第2部材8の前記一方の面の面積よりも大きいものを用いる。そして、第2部材8の前記一方の面の全面に、フィルム状焼成材料1の前記一方の面を貼り合わせることにより、第2部材8の外周の全域において、フィルム状焼成材料1の余剰部分を生じさせる。次いで、フィルム状焼成材料1の、この余剰部分を切断して除去する。このように第2部材8にフィルム状焼成材料1を貼り合わせるときと、フィルム状焼成材料1の余剰部分を除去するときには、フィルム状焼成材料1に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにして、フィルム状焼成材料1の形状及び大きさが変化しないように調節することが好ましい。これにより、フィルム状焼成材料1の外周(側面)と、第2部材8の外周(側面)と、が位置合わせされ、これらの一方の外周(側面)が、他方の外周(側面)から突出していない状態となる。
次いで、得られた積層物中のフィルム状焼成材料1のうち、第2部材8側とは反対側の面(すなわち露出面)の全面を、第1部材9の一方の面に接触させて、前記積層物を第1部材9上に載置する。このとき、第1部材9として、その前記一方の面の面積が、フィルム状焼成材料1の前記反対側の面の面積よりも大きいものを用いる。このようにすることで、前記積層物の外周(側面)の全域、すなわち、フィルム状焼成材料1の外周(側面)と、第2部材8の外周(側面)と、の全域から第1部材9が突出する。このときも、フィルム状焼成材料1に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにして、フィルム状焼成材料1の形状及び大きさが変化しないように調節することが好ましい。
以上により、図4(a)に示す第1積層体1011として、フィルム状焼成材料1の大きさが、第2部材8の大きさに対して同等であるものが得られる。
【0121】
工程(I)は、前記支持シート付きフィルム状焼成材料を用いて行うこともできる。
すなわち、本実施形態においては、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記フィルム状焼成材料と、を備えた支持シート付きフィルム状焼成材料を準備し、さらに、未分割部材を準備し、前記未分割部材は、その分割によって、前記第2部材となり、前記支持シート付きフィルム状焼成材料中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記支持シート側とは反対側の面を、前記未分割部材に貼付することにより、前記支持シート付きフィルム状焼成材料と、前記未分割部材と、が積層されて構成された未分割積層体を作製し、前記未分割積層体中の前記未分割部材を分割して、前記第2部材を作製するとともに、前記フィルム状焼成材料を切断することにより、前記支持シート上において、前記第2部材と、前記第2部材の一方の面に設けられた、切断後の前記フィルム状焼成材料と、を備えたフィルム状焼成材料付き第2部材を作製し、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を前記支持シートから剥離した後、前記フィルム状焼成材料付き第2部材中の前記フィルム状焼成材料のうち、前記第2部材側とは反対側の面を、前記第1部材に貼付することにより、前記工程(I)を行うことができる。
【0122】
そして、前記支持シートが、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シート付きフィルム状焼成材料として、前記フィルム状焼成材料が、前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面上に設けられているものを用いた場合には、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を、前記粘着剤層から剥離する。
さらに、前記粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、前記粘着剤層をエネルギー線の照射により硬化させてから、前記フィルム状焼成材料付き第2部材を、前記粘着剤層の硬化物から剥離する。
【0123】
図5は、支持シート付きフィルム状焼成材料を用いた場合の工程(I)の一例を、模式的に説明するための断面図である。ここでは、図3に示す支持シート付きフィルム状焼成材料301を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0124】
この場合、工程(I)においては、図5(a)に示すように、支持シート付きフィルム状焼成材料301中のフィルム状焼成材料1のうち、支持シート2側とは反対側の面1aを、未分割部材20に貼付することにより、支持シート付きフィルム状焼成材料301と、未分割部材20と、が積層されて構成された未分割積層体320を作製する。
【0125】
このとき、未分割部材20に貼付するときの支持シート付きフィルム状焼成材料301の温度(貼付温度)は、23~150℃であることが好ましく、23~100℃であることがより好ましい。
支持シート付きフィルム状焼成材料301を未分割部材20に貼付するときの速度(貼付速度)は、0.1~100mm/secであることが好ましく、1~20mm/secであることが好ましい。
支持シート付きフィルム状焼成材料301を未分割部材20に貼付するときに、支持シート付きフィルム状焼成材料301に加える圧力(貼付圧力は)は、0.1~1MPaであることが好ましい。
【0126】
次いで、未分割積層体320中の未分割部材20を分割して、複数個の第2部材8を作製するとともに、フィルム状焼成材料1を切断することにより、図5(b)に示すように、支持シート2上において、第2部材8と、第2部材8の一方の面(先に述べた一方の面とは反対側の面)8bに設けられた、切断後のフィルム状焼成材料(本明細書においては、単に「フィルム状焼成材料」と称することがある)1と、を備えた複数個のフィルム状焼成材料付き第2部材81を作製する。本明細書においては、複数個のフィルム状焼成材料付き第2部材81が支持シート2上に保持された構造体を、フィルム状焼成材料付き第2部材群と称し、ここでは符号321を付して示している。フィルム状焼成材料付き第2部材81は、その中のフィルム状焼成材料1によって、支持シート2中の粘着剤層22に接触して保持されている。
【0127】
未分割部材20の分割と、フィルム状焼成材料1の切断は、いずれも公知の方法で行うことができる。例えば、未分割部材20がウエハである場合には、未分割部材20の分割と、フィルム状焼成材料1の切断は、いずれもダイシングブレードを用いて行うことができる。
【0128】
次いで、図5(c)に示すように、フィルム状焼成材料付き第2部材群321において、フィルム状焼成材料付き第2部材81を支持シート2、より具体的には、支持シート2中の粘着剤層22から剥離する。
フィルム状焼成材料付き第2部材81の剥離は、公知の方法で行うことができ、例えば、半導体チップをピックアップする方法等を適用できる。
ここでは、真空コレット等の剥離手段6を用いて、フィルム状焼成材料付き第2部材81を矢印U方向に剥離する場合を示している。なお、ここでは、剥離手段6の断面表示を省略している。
【0129】
粘着剤層22がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層22をエネルギー線の照射により硬化させてから、フィルム状焼成材料付き第2部材81を、粘着剤層22の硬化物から剥離する。図5(c)においては、粘着剤層22の硬化物に符号22’を付している。粘着剤層の硬化物22’の粘着力は、粘着剤層22の粘着力よりも小さいため、このように粘着剤層22を硬化させてから、フィルム状焼成材料付き第2部材81を剥離することにより、より容易にフィルム状焼成材料付き第2部材81を剥離できる。
【0130】
次いで、フィルム状焼成材料付き第2部材81中のフィルム状焼成材料1のうち、第2部材8側とは反対側の面1bを、第1部材9に貼付する。
以上により、図4(a)に示す第1積層体1011が得られる。
【0131】
<<工程(II)>>
前記工程(II)においては、図4(b)に示すように、第1積層体1011において、第2部材8からのフィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lが220μm以下となるように、第1積層体1011に対して、第1部材9と、フィルム状焼成材料1と、第2部材8と、の積層方向(第1部材9から第2部材8へ向かう方向D、又は、第2部材8から第1部材9へ向かう方向D)において、0.1MPa以上の圧力を加えながら、第1積層体1011中のフィルム状焼成材料1を加熱する。これにより、図4(c)に示すように、第1部材9と、加熱後のフィルム状焼成材料1’と、第2部材8と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体1012を作製する。
【0132】
第2積層体1012中の加熱後のフィルム状焼成材料1’は、第1積層体1011中のフィルム状焼成材料1と同じである場合と、異なる場合とがある。いずれであるかは、フィルム状焼成材料1の組成に依存する。本明細書においては、「加熱後のフィルム状焼成材料」を単に「フィルム状焼成材料」と称することがある。
【0133】
工程(II)において、第1積層体1011に対して加える圧力は、0.1MPa以上であり、かつ、フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lが220μm以下となる圧力であれば、特に限定されない。前記圧力は、例えば、0.3MPa以上、及び0.5MPa以上のいずれかであってもよく、3MPa未満、2.9MPa以下、2.5MPa以下、2MPa以下、及び1.5MPa以下のいずれかであってもよい。
一実施形態において、前記圧力は、例えば、0.1MPa以上3MPa未満、0.1~2.9MPa、0.3~2.9MPa、0.5~2.5MPa、0.5~2MPa、及び0.5~1.5MPaのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記圧力の一例である。
工程(II)において、第1積層体1011に対して加える圧力が前記下限値以上であることで、第2積層体1012において、第1部材9とフィルム状焼成材料1’との密着性、及び、第2部材8とフィルム状焼成材料1’との密着性が向上する。その結果、後述する工程(III)によって、第1部材9と第2部材8との接合強度が高い接合体が得られる。
工程(II)において、第1積層体1011に対して加える圧力が前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料のはみ出し幅Lが、より小さくなる。
【0134】
工程(II)においては、第1積層体1011において、第2部材8の外周(側面)8cの全域において、第2部材8からのフィルム状焼成材料のはみ出し幅Lを220μm以下とする。
【0135】
工程(II)において、フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lと、フィルム状焼成材料1’のはみ出し幅は、いずれも、220μm以下であり、例えば、200μm以下、180μm以下、及び160μm以下のいずれかであってもよい。フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lとフィルム状焼成材料1’のはみ出し幅が小さいほど、後述する接合体101において、第2部材8の端部からの金属焼結層10のはみ出し幅が小さくなる。
フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lとフィルム状焼成材料1’のはみ出し幅の下限値は0μmである(フィルム状焼成材料1とフィルム状焼成材料1’は、はみ出さないこともある)が、通常は、0μm超であり、例えば、40μm以上、及び80μm以上のいずれかであってもよい。
一実施形態において、フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lと、フィルム状焼成材料1’のはみ出し幅は、例えば、0μm超200μm以下、40~180μm、及び80~160μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、フィルム状焼成材料1のはみ出し幅Lとフィルム状焼成材料1’のはみ出し幅の一例である。
【0136】
工程(II)においては、例えば、第1部材9側では第1積層体1011を支える(圧力を受け止める)だけにとどめて、第1積層体1011に対して、第1部材9側からは圧力を加えず、第2部材8側から圧力を加える(方向Dにおいて第2部材8に圧力を加える)ことができる。また、第2部材8側では第1積層体1011を支える(圧力を受け止める)だけにとどめて、第1積層体1011に対して、第2部材8側からは圧力を加えず、第1部材9側から圧力を加える(方向Dにおいて第1部材9に圧力を加える)ことができる。また、第1積層体1011に対して、第1部材9側と第2部材8側の両側から圧力を加える(方向Dにおいて第2部材8に圧力を加え、かつ、方向Dにおいて第1部材9に圧力を加える)ことができる。
【0137】
工程(II)においては、例えば、第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方の圧力を加える面(本明細書においては、「加圧面」と称することがある)に対して、圧力を加えるための加圧手段を接触させて、圧力を加えることができる。
このとき、加圧手段のいずれかの面を、第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方の加圧面に対して、面接触させてもよく、第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方の加圧面の全面に、加圧手段のいずれかの面を面接触させてもよい。このようにすることで、第1部材9及び第2部材8に対して、より均一に前記圧力を加えることができる。
【0138】
工程(II)においては、例えば、第1積層体1011中のフィルム状焼成材料1の温度が一定値となるまでは、第1積層体1011に対して圧力を加えず、フィルム状焼成材料1の温度が一定値(本明細書においては、この温度を「加圧開始温度」と称することがある)となってから、第1積層体1011に対して0.1MPa以上の圧力を加えてもよい。このようにすることで、後述する接合体において、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からの金属焼結層のはみ出しがより抑制され、第1部材9と第2部材8の接合強度がより高くなる。
【0139】
工程(II)においては、例えば、常温下に置かれているなど、加熱されていない状態の第1積層体1011を、加熱環境下に置くことにより、第1積層体1011の加熱を開始できる。この場合の加熱環境の温度(加熱温度)は、例えば、50℃以上、及び55℃以上のいずれかであってもよい。加熱環境の温度が前記下限値以上であることで、工程(II)をより効率的に行うことができる。
加熱環境の温度は、例えば、190℃以下、150℃以下、及び110℃以下のいずれかであってもよい。加熱環境の温度が前記上限値以下であることで、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からのフィルム状焼成材料1のはみ出しが、より抑制される。その結果、後述する接合体においても、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からの金属焼結層のはみ出しが、より抑制される。
加熱環境の温度は、例えば、50~190℃、50~150℃、及び50~110℃のいずれかであってもよいし、55~190℃、55~150℃、及び55~110℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、加熱環境の温度の一例である。
【0140】
工程(II)において、前記加圧開始温度は、フィルム状焼成材料1及びフィルム状焼成材料1’が、急速に焼成されない温度であることが好ましい。
加圧開始温度は、例えば、260℃以上、及び280℃以上のいずれかであってもよい。加圧開始温度が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料と第1部材との密着性がより向上する。その結果、後述する接合体の接合強度(第1部材9と第2部材8の接合強度)がより高くなる。
加圧開始温度は、例えば、330℃以下、及び310℃以下のいずれかであってもよい。加圧開始温度が前記上限値以下であることで、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からのフィルム状焼成材料1のはみ出しが、より抑制される。その結果、後述する接合体においても、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からの金属焼結層のはみ出しが、より抑制される。
加圧開始温度は、例えば、260~330℃、260~310℃、280~330℃、及び280~310℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、加圧開始温度の一例である。
【0141】
工程(II)において、第1積層体1011に対して0.1MPa以上の圧力を加えながら、第1積層体1011中のフィルム状焼成材料1を加熱する温度(フィルム状焼成材料1の加熱温度)としては、上記の加圧開始温度と同様の範囲の温度が挙げられる。例えば、フィルム状焼成材料1の加熱温度は、260~330℃、260~310℃、280~330℃、及び280~310℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、フィルム状焼成材料1の加熱温度の一例である。
【0142】
工程(II)において、フィルム状焼成材料1の加熱温度は、一定であってもよいし、変動してもよい。例えば、フィルム状焼成材料1の加熱温度は、上記の加圧開始温度と同じであってもよい。
【0143】
工程(II)において、第1積層体1011に対して0.1MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料1の加圧時間)は、フィルム状焼成材料1及びフィルム状焼成材料1’が、完全には焼成されない時間であることが好ましい。
フィルム状焼成材料1の加圧時間は、10秒間以上であることが好ましく、例えば、20秒間以上、及び40秒間以上のいずれかであってもよい。加圧時間が前記下限値以上であることで、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からのフィルム状焼成材料1のはみ出しが、より抑制される。その結果、後述する接合体においても、第1部材9と第2部材8の端部(実質的には第2部材8の端部)からの金属焼結層のはみ出しが、より抑制される。
フィルム状焼成材料1の加圧時間は、80秒間以下であることが好ましく、例えば、65秒間以下、50秒間以下、及び35秒間以下のいずれかであってもよい。加圧時間が前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料1及びフィルム状焼成材料1’が、全く焼成されないか、又は一部が焼成されるに過ぎず、完全には焼成されないことによって、後述する接合体の接合強度(第1部材9と第2部材8の接合強度)がより高くなる。
一実施形態において、フィルム状焼成材料1の加圧時間は、例えば、10~80秒間、20~80秒間、及び40~80秒間のいずれかであってもよいし、10~65秒間、10~50秒間、及び10~35秒間のいずれかであってもよいし、20~65秒間、及び40~50秒間のいずれかであってもよい。ただし、これらは、フィルム状焼成材料1の加圧時間の一例である。
【0144】
第2積層体1012において、フィルム状焼成材料1’は、全く焼成されていないか、又は一部が焼成されており、完全には焼成されていないことが好ましい。第2積層体1012をこのような状態とすることで、後述する接合体の接合強度(第1部材9と第2部材8の接合強度)がより高くなる。
フィルム状焼成材料1’の焼成の程度は、例えば、加熱前(工程(II)を行う前)のフィルム状焼成材料1の質量と、加熱後(工程(II)を行った後)のフィルム状焼成材料1’の質量と、の差の大きさによって、判定できる。前記差が大きいほど、フィルム状焼成材料1’の焼成が進んでいると判定できる。
【0145】
工程(II)において、第1積層体1011(フィルム状焼成材料1)を加熱して、その温度を調節するときも含めて、温度を調節する場合には、温度調節手段を第1積層体1011に接触させて配置するか、又は、第1積層体1011には接触させずに、第1積層体1011の近傍に配置して、前記温度調節手段の温度条件を調節することによって、第1積層体1011の温度を調節できる。
例えば、第1積層体1011を挟むようにして、一対の温度調節手段を配置し、第1積層体1011(フィルム状焼成材料1)の温度を調節することが好ましく、第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方に、温度調節手段を接触させて、第1積層体1011(フィルム状焼成材料1)の温度を調節してもよいし、第1部材9及び第2部材8の両方に、温度調節手段を接触させずに、第1積層体1011(フィルム状焼成材料1)の温度を調節してもよい。
【0146】
工程(II)においては、前記加圧手段と前記温度調節手段が一体となった構成を有する加圧温度調節手段を用いて、第1積層体1011に対する加圧と、第1積層体1011の温度調節と、のいずれか一方又は両方を行ってもよい。例えば、加圧温度調節手段のいずれかの面を、第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方の加圧面に対して、好ましくは面接触させ、より好ましくは第1部材9及び第2部材8のいずれか一方又は両方の加圧面の全面に、加圧温度調節手段のいずれかの面を面接触させて、第1積層体1011に対する加圧と、第1積層体1011の温度調節と、をともに行うことにより、より効率的に工程(II)を行ことができる。
【0147】
工程(II)において、第1積層体1011を、その温度が加圧開始温度となるまで加熱するときの昇温速度は、特に限定されないが、25~100℃/secであることが好ましく、35~65℃/secであることがより好ましい。前記昇温速度がこのような範囲であることで、効率的に接合強度が十分に高い接合体が得られる。
【0148】
工程(II)において、前記昇温速度は、一定であってもよいし、変動してもよい。
【0149】
工程(II)は、例えば、大気;窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス;水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガス(還元力を有するガス);のいずれかの雰囲気下で行うことができる。
なかでも、工程(II)は、前記バインダー成分がより低温で熱分解されることから、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0150】
<<工程(III)>>
前記工程(III)においては、第2積層体1012に対して、前記積層方向(第1積層体1011における、第1部材9と、フィルム状焼成材料1と、第2部材8と、の積層方向)と同じ方向において、3MPa以上の圧力を加えながら、第2積層体1012中のフィルム状焼成材料1’を焼成し、金属焼結層10を形成して、図4(d)に示すように、接合体101を作製する。工程(III)を行うことにより、目的とする接合体101が得られる。
ここで、第2積層体1012に対して、3MPa以上の圧力を加える方向は、換言すると、第2積層体1012における、第1部材9と、フィルム状焼成材料1’と、第2部材8と、の積層方向である。
【0151】
工程(III)において、第2積層体1012に対して加える前記圧力は、3MPa以上であり、例えば、8MPa以上、及び13MPa以上のいずれかであってもよい。第2積層体1012に対して加える前記圧力が前記下限値以上であることで、接合体101の接合強度(第1部材9と第2部材8の接合強度)が高くなる。
第2積層体1012に対して加える前記圧力の上限値は、特に限定されない。例えば、過剰な圧力となることが抑制される点では、第2積層体1012に対して加える前記圧力は、25MPa以下であることが好ましい。
一実施形態において、第2積層体1012に対して加える前記圧力は、例えば、3~25MPa、8~25MPa、及び13~25MPaのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記圧力の一例である。
【0152】
工程(III)において、第2積層体1012に対して3MPa以上の圧力を加えながら、第2積層体1012中のフィルム状焼成材料1’を焼成する温度(フィルム状焼成材料1’の焼成温度)としては、上記の工程(II)における、加圧開始温度、及びフィルム状焼成材料1の加熱温度、と同様の範囲の温度が挙げられる。例えば、フィルム状焼成材料1’の焼成温度は、260~330℃、260~310℃、280~330℃、及び280~310℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、フィルム状焼成材料1’の焼成温度の一例である。
【0153】
工程(III)において、フィルム状焼成材料1’の焼成温度は、一定であってもよいし、変動してもよい。フィルム状焼成材料1’の焼成温度は、例えば、工程(II)における、加圧開始温度、又は加圧開始温度以外のフィルム状焼成材料1の加熱温度、と同じであってもよい。そして、工程(II)における加圧開始温度と、工程(II)における加圧開始温度以外(換言すると、加圧開始時以降)のフィルム状焼成材料1の加熱温度と、工程(III)におけるフィルム状焼成材料1’の焼成温度は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同じであってもよい。
【0154】
工程(III)において、第2積層体1012に対して、3MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料1’の加圧時間)は、フィルム状焼成材料1’が十分に焼成される時間であるば、特に限定されない。
フィルム状焼成材料1’の加圧時間は、120秒間以上であることが好ましく、例えば、180秒間以上、240秒間以上、及び300秒間以上のいずれかであってもよい。加圧時間が前記下限値以上であることで、接合体101の接合強度(第1部材9と第2部材8の接合強度)がより高くなる。
フィルム状焼成材料1’の加圧時間の上限値は、特に限定されない。例えば、時間が過剰に長くなることが抑制される点では、フィルム状焼成材料1’の加圧時間は、720秒間以下であることが好ましい。
一実施形態において、フィルム状焼成材料1’の加圧時間は、例えば、120~720秒間、180~720秒間、240~720秒間、及び300~720秒間のいずれかであってもよい。ただし、これらは、フィルム状焼成材料1’の加圧時間の一例である。
【0155】
工程(III)における、第2積層体1012に対する圧力の加え方は、工程(II)における、第1積層体1011に対する圧力の加え方と同様である。
【0156】
工程(III)は、例えば、大気;窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス;水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガス(還元力を有するガス);のいずれかの雰囲気下で行うことができる。
なかでも、工程(III)は、前記バインダー成分がより低温で熱分解されることから、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0157】
<<他の工程>>
本実施形態の接合体の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲内において、工程(I)と、工程(II)と、工程(III)と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類、前記他の工程の数、及び前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
ただし、本実施形態の製造方法は、工程(I)と工程(II)との間、並びに、工程(II)と工程(III)との間には、前記他の工程を有しない(換言すると、工程(I)、工程(II)及び(III)は連続して行う)ことが好ましい。
【0158】
<接合体の製造方法の一例>
本実施形態の好ましい接合体の製造方法の一例としては、工程(II)において、第1積層体に対して加える0.1MPa以上の圧力と、0.1MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)とが、上述のいずれかの数値範囲であり、かつ、工程(III)において、第2積層体に対して加える3MPa以上の圧力と、3MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)とが、上述のいずれかの数値範囲である製造方法が挙げられる。
より具体的には、好ましい接合体の製造方法の一例としては、
(ii-1) 工程(II)において、第1積層体に対して加える0.1MPa以上の圧力が、0.1MPa以上、0.3MPa以上、及び0.5MPa以上のいずれかであり、かつ、3MPa未満、2.9MPa以下、2.5MPa以下、2MPa以下、及び1.5MPa以下のいずれかであり、
(ii-2) 工程(II)において、0.1MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)が、10秒間以上、20秒間以上、及び40秒間以上のいずれかであり、かつ、80秒間以下、65秒間以下、50秒間以下、及び35秒間以下のいずれかであり、
(iii-1) 工程(III)において、第2積層体に対して加える3MPa以上の圧力が、3MPa以上、8MPa以上、及び13MPa以上のいずれかであり、
(iii-2) 工程(III)において、3MPa以上の圧力を加える時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)が、120秒間以上、180秒間以上、240秒間以上、及び300秒間以上のいずれかである、
製造方法が挙げられる。ただし、好ましい接合体の製造方法は、これに限定されない。
【実施例0159】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0160】
<<焼成材料組成物の製造原料>>
実施例及び比較例で用いた焼成材料組成物の製造原料を、以下に示す。
[焼結性金属粒子内包ペースト]
・銀ナノペースト(1)(応用ナノ粒子研究所社製「アルコナノ銀ペーストANP-1」、アルコール誘導体で被覆された銀ナノ粒子、金属含有量70質量%以上、平均粒径100nm以下の銀粒子(焼結性金属粒子)60質量%以上)
[バインダー成分]
・アクリル重合体(1)(2-エチルヘキシルメタクリレート重合体、重量平均分子量280000、Tg:-10℃)
なお、アクリル重合体(1)は、メチルエチルケトンを分散媒(溶媒)とする、その濃度が54.5質量%である分散物(三菱ケミカル社製「L-0818」)として用いた。
【0161】
[実施例1]
<<焼成材料組成物の製造>>
銀ナノペースト(1)(87.7質量部)及びアクリル重合体(1)(12.3質量部)を混合することで、焼成材料組成物を得た。ここに示すアクリル重合体(1)の配合量(12.3質量部)は、溶媒成分を除いたアクリル重合体(1)自体の量(固形分量)である。
【0162】
<<フィルム状焼成材料の製造>>
幅が230mmの剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の片面(剥離処理面)に、上記で得られた焼成材料組成物を印刷し、印刷層を形成した。このとき、印刷層の平面形状を、大きさが10mm×10mmの四角形状とした。そして、印刷層を150℃で10分間乾燥させることで、厚さが60μmのフィルム状焼成材料を得た。
【0163】
<<フィルム状焼成材料の評価>>
大きさが2mm×2mm、厚さが345.5μmで、平面形状が四角形状であり、一方の面が銀膜(厚さ0.5μm)で被覆されている、合計の厚さが350μmの銀膜付きシリコンチップ(以下、「銀膜付きシリコンチップ」と称する)を用意した。この銀膜付きシリコンチップ中の銀膜は、蒸着によって設けられていた。
前記銀膜付きシリコンチップ中の銀膜の露出面に、上記で得られたフィルム状焼成材料の一方の面を貼り合わせ、フィルム状焼成材料を積層した。このとき、前記銀膜の外周の全域において、フィルム状焼成材料の余剰部分を生じさせた。そして、フィルム状焼成材料の、この余剰部分を切断して除去することにより、同じ大きさ(2mm×2mm)の銀膜付きシリコンチップと、フィルム状焼成材料の試験片と、が積層されている(換言すると、銀膜付きシリコンチップの外周からフィルム状焼成材料の試験片がはみ出していない)試験用積層体を得た。
さらに、この試験用積層体中のフィルム状焼成材料の試験片のうち、銀膜付きシリコンチップ側とは反対側の面(すなわち露出面)の全面を、銅板(厚さ1.5mm)の一方の面に接触させて、前記試験用積層体を前記銅板上に載置した。すなわち、このとき、試験用積層体の外周の全域から前記銅板を突出させた。
【0164】
ここまでの、フィルム状焼成材料の銀膜付きシリコンチップへの貼り合わせから、試験用積層体の銅板上への載置までの間では、フィルム状焼成材料とその試験片に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにし、フィルム状焼成材料とその試験片の、形状及び大きさが変化しないようにした。
【0165】
次いで、試験用積層体と銅板を300℃に加熱しながら、試験用積層体に対して、銀膜付きシリコンチップと、前記フィルム状焼成材料の試験片と、の積層方向に、銀膜付きシリコンチップ側から180秒間、10MPaの圧力を加えた。
次いで、試験用積層体と銅板の上記の加熱、及び、試験用積層体に対する上記の加圧を解除した後、室温下で銀膜付きシリコンチップの外周からの、フィルム状焼成材料の試験片のはみ出し幅の最大値を求めた。その結果、前記はみ出し幅の最大値は240μmであった。
【0166】
<<接合体の製造>>
<第1積層体の製造>
第1部材として、大きさが30mm×30mmで、厚さが1.5mmの、平面形状が四角形状の銅板を用意した。また、第2部材として、前記銀膜付きシリコンチップを用意した。
前記銀膜付きシリコンチップ中の銀膜の露出面に、上記で得られたフィルム状焼成材料の一方の面を貼り合わせ、フィルム状焼成材料を積層した。このとき、前記銀膜の外周の全域において、フィルム状焼成材料の余剰部分を生じさせた。そして、フィルム状焼成材料の、この余剰部分を切断して除去することにより、同じ大きさ(2mm×2mm)の銀膜付きシリコンチップとフィルム状焼成材料が積層されている積層物を得た。さらに、この積層物中のフィルム状焼成材料のうち、銀膜付きシリコンチップ側とは反対側の面を、前記銅板の一方の面に貼り合わせ、前記銅板を積層した。このとき、前記積層物の外周の全域から前記銅板を突出させた(工程(I))。
ここまでの間では(工程(I)においては)、フィルム状焼成材料に対して必要最低限の圧力しか加わらないようにし、フィルム状焼成材料の形状及び大きさが変化しないようにした。
以上により、前記銅板と、フィルム状焼成材料と、銀膜付きシリコンチップと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、第1積層体を作製した。
【0167】
<第2積層体の製造>
上記で得られた第1積層体中の、銀膜付きシリコンチップのフィルム状焼成材料側とは反対側の面(すなわち露出面)の全面に、アルミホイル(アルミニウム製シート、厚さ40μm)を積層した。これは、後述の工程(II)以降の工程において、後述の焼結装置の汚染を防止するためである。
得られたアルミホイル付き第1積層体中の、前記銅板の露出面(フィルム状焼成材料側とは反対側の面)の全面を、焼結装置(伯東社製「HTM-3000」)中の2枚のプレートのうちの一方の表面上に接触させて、この一方のプレート上に前記アルミホイル付き第1積層体を載置した。このとき、前記一方のプレートの温度は、予め60℃に設定しておいた。これにより、焼結装置中の前記一方のプレートによって、前記アルミホイル付き第1積層体を受け止めるとともに、前記アルミホイル付き第1積層体を、その前記銅板側から加熱し、前記一方のプレートと同等の温度にまで加熱可能とするとともに、加熱を開始した。さらに、前記アルミホイル付き第1積層体中のアルミホイルの露出面(銀膜付きシリコンチップ側とは反対側の面)の全面に、焼結装置中の2枚のプレートのうちの他方の表面を軽く接触させ、この他方のプレートを、これによって前記アルミホイル付き第1積層体に対して意図的に加圧することのない位置に配置した。このとき、前記他方のプレートの温度も、予め60℃に設定しておいた。これにより、焼結装置中の前記他方のプレートによって、前記アルミホイル付き第1積層体に意図的に圧力を加えることなく(実質的に加える圧力を0MPaとして)、前記アルミホイル付き第1積層体を、そのアルミホイル側から加熱し、前記他方のプレートと同等の温度にまで加熱可能とするとともに、加熱を開始した。
以上により、前記第1積層体(アルミホイル付き第1積層体)に対して、前記銅板と、フィルム状焼成材料と、銀膜付きシリコンチップと、の積層方向において、圧力を加えることなく(加える圧力を0MPaとして)、第1積層体を加熱する温度(前記加熱環境の温度)を60℃として、第1積層体の加熱を開始した。
【0168】
次いで、このまま、前記第1積層体(アルミホイル付き第1積層体)に対して、前記銅板と、フィルム状焼成材料と、銀膜付きシリコンチップと、の積層方向において、圧力を加えることなく(加える圧力を0MPaとして)、焼結装置中の前記2枚のプレートによって、第1積層体を、その温度が60℃になるまで加熱した。
次いで、第1積層体に対して圧力を加えない状態のまま、焼結装置中の前記2枚のプレートによって、第1積層体を、その温度が60℃から300℃となるまで加熱した。このときの昇温速度は、50℃/secとした。
次いで、第1積層体の温度が300℃に到達した時点から、直ちに、第1積層体に対して、第1積層体での前記銅板と、フィルム状焼成材料と、銀膜付きシリコンチップと、の積層方向において、1MPaの圧力を加えながら、60秒間、第1積層体の温度を300℃に維持した(工程(II))。すなわち、前記加圧開始温度と、それ以降のフィルム状焼成材料の加熱温度とを、いずれも300℃とした。このとき、焼結装置中の前記他方のプレート(前記アルミホイル側のプレート)から、第1積層体に対して圧力を加えた。また、焼結装置中の前記2枚のプレートの温度は、第1積層体の温度が60℃に到達する前に、上昇させておいた。
以上により、第2積層体を作製した(工程(II))。
【0169】
<接合体の製造>
次いで、前記第2積層体の作製後(換言すると、第1積層体の温度を300℃に維持する時間が60秒間に到達した段階で)、直ちに、第2積層体に対して、第1積層体における前記銅板と、フィルム状焼成材料と、銀膜付きシリコンチップと、の積層方向と同じ方向において加える圧力を10MPaとし、この圧力を維持しながら、600秒間、第2積層体の温度を300℃に維持した。このとき、焼結装置中の前記他方のプレート(前記アルミホイル側のプレート)から、第2積層体に対して圧力を加えた。これにより、フィルム状焼成材料を焼成し、金属焼結層(厚さ20μm)を形成した(工程(III))。すなわち、フィルム状焼成材料の焼成温度を300℃とした。
以上により、前記銅板と、金属焼結層と、銀膜付きシリコンチップとを備え、前記銅板と、銀膜付きシリコンチップとが、前記金属焼結層によって接合されて構成された接合体を作製した。
【0170】
なお、ここまでの工程(I)、工程(II)及び工程(III)は、すべて大気雰囲気下で行った。
【0171】
上記と同じ方法で、さらに、4個の接合体を作製し、合計で5個の接合体を作製した。
【0172】
<<接合体の評価>>
<接合体の接合強度の評価>
23℃の環境下で、上記で得られた接合体のうち、金属焼結層の外周(側面)と、銀膜付きシリコンチップの外周(側面)と、の位置合わせされた部位に対して、同時に、銀膜付きシリコンチップの表面(銀膜付きシリコンチップ中のシリコンチップの銀膜を備えていない側の面)に対して平行な方向に、200μm/sの速度で力を加えた。このとき、力を加えるための押圧手段としては、ステンレス鋼製のプレート状であるものを用い、この押圧手段の先端部の位置を、接合体中の銅板の表面(金属焼結層側の面)から20μmの高さのところに設定して、押圧手段を銅板に接触させないようにした。そして、金属焼結層が破壊されるか、又は、金属焼結層が銅板から剥離する、までに加えられた力の最大値を測定し、その測定値を接合体のせん断強度として採用した。
このようなせん断強度を、5個の接合体のすべてで測定し、それらの平均値を、接合体のせん断強度として最終的に採用した。そして、下記基準に従って、接合体の接合強度を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:せん断強度が60MPa以上であり、接合強度が特に高い。
B:せん断強度が35MPa以上60MPa未満であり、Aよりも劣るが、接合強度が高い。
C:せん断強度が35MPa未満であり、接合強度が低い。
【0173】
<接合体における金属焼結層のはみ出しの抑制効果の評価>
上記で得られた接合体を、その銀膜付きシリコンチップ側の上方から見下ろして平面視したときの、銀膜付きシリコンチップの外周(側面)からの金属焼結層のはみ出し幅の最大値を求めた。このとき、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VHX-5000」)を用いて、上記の平面視での像を観察し、金属焼結層のはみ出し幅の最大値を求めた。そして、この最大値を金属焼結層のはみ出し幅として採用した。
このようなはみ出し幅を、5個の接合体のすべてで求め、それらの平均値を、金属焼結層のはみ出し幅として最終的に採用した。そして、下記基準に従って、接合体における金属焼結層のはみ出しの抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:はみ出し幅が200μm以下であり、はみ出しの抑制効果が高い。
B:はみ出し幅が200μm超220μm以下であり、Aよりも劣るが、はみ出しの抑制効果が認められる。
C:はみ出し幅が220μm超であり、はみ出しの抑制効果が低い。
【0174】
<<フィルム状焼成材料の製造、並びに、接合体の製造及び評価>>
[実施例2]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(II)において、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、第1積層体の温度を300℃に維持する時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)を、60秒間に代えて30秒間とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0175】
[実施例3]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(II)において、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、第1積層体の温度を300℃に維持する時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)を、60秒間に代えて10秒間とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0176】
[実施例4]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(III)において、第2積層体の温度を300℃で600秒間維持するときに、第2積層体に対して加える圧力を、10MPaに代えて5MPaとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0177】
[実施例5]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(III)において、第2積層体の温度を300℃で600秒間維持するときに、第2積層体に対して加える圧力を、10MPaに代えて20MPaとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0178】
[実施例6]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(III)において、第2積層体に対して加える圧力を10MPaとしながら第2積層体の温度を300℃に維持する時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)を、600秒間に代えて300秒間とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0179】
[実施例7]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、工程(III)において、第2積層体に対して加える圧力を10MPaとしながら第2積層体の温度を300℃に維持する時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)を、600秒間に代えて180秒間とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0180】
<<フィルム状焼成材料の製造、並びに、比較用接合体の製造及び評価>>
[比較例1]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、第1積層体を作製した(工程(I))。
以降、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、第1積層体の温度を300℃に維持する時間(フィルム状焼成材料の加圧時間)を、60秒間に代えて300秒間とした点以外は、実施例1の工程(II)の場合と同じ方法を採用し、積層体を作製した。
この積層体を比較用接合体として用い、この比較用接合体について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0181】
[比較例2]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、第1積層体を作製した(工程(I))。
以降、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、60秒間、第1積層体の温度を300℃に維持するのに代えて、第1積層体に対して2MPaの圧力を加えながら、300秒間、第1積層体の温度を300℃に維持した点以外は、実施例1の工程(II)の場合と同じ方法を採用し、積層体を作製した。
この積層体を比較用接合体として用い、この比較用接合体について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0182】
[比較例3]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、第1積層体を作製した(工程(I))。
以降、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、60秒間、第1積層体の温度を300℃に維持するのに代えて、第1積層体に対して3MPaの圧力を加えながら、300秒間、第1積層体の温度を300℃に維持した点以外は、実施例1の工程(II)の場合と同じ方法を採用し、積層体を作製した。
この積層体を比較用接合体として用い、この比較用接合体について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0183】
[比較例4]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、第1積層体を作製した(工程(I))。
以降、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、60秒間、第1積層体の温度を300℃に維持するのに代えて、第1積層体に対して5MPaの圧力を加えながら、300秒間、第1積層体の温度を300℃に維持した点以外は、実施例1の工程(II)の場合と同じ方法を採用し、積層体を作製した。
この積層体を比較用接合体として用い、この比較用接合体について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0184】
[比較例5]
実施例1で得られた焼成材料組成物を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状焼成材料を製造した。
次いで、実施例1の場合と同じ方法で、第1積層体を作製した(工程(I))。
以降、第1積層体に対して1MPaの圧力を加えながら、60秒間、第1積層体の温度を300℃に維持するのに代えて、第1積層体に対して10MPaの圧力を加えながら、300秒間、第1積層体の温度を300℃に維持した点以外は、実施例1の工程(II)の場合と同じ方法を採用し、積層体を作製した。
この積層体を比較用接合体として用い、この比較用接合体について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
上記結果から明らかなように、実施例1~7においては、接合体のせん断強度が38MPa以上(38~103MPa)であり、接合体の接合強度が高かった。また、実施例1~7においては、金属焼結層のはみ出し幅が214μm以下(124~214μm)であり、金属焼結層のはみ出しが抑制されていた。
実施例1~7においては、工程(II)で第1積層体に対して加える圧力が1MPaであり、圧力を加える時間(加圧時間)が10秒間以上(10~60秒間)であった。そして、工程(III)で第2積層体に対して加える圧力が5MPa以上(5~20MPa)であり、圧力を加える時間(加圧時間)が180秒間以上(180~600秒間)であった。
【0188】
なかでも、実施例1~3、5においては、接合体のせん断強度が81MPa以上(81~103MPa)であり、接合体の接合強度が特に高かった。
実施例1~3、5においては、工程(III)で第2積層体に対して加える圧力が10MPa以上(10~20MPa)であり、圧力を加える時間(加圧時間)が600秒間であった。
【0189】
なかでも、実施例1、2、4~7においては、金属焼結層のはみ出し幅が188μm以下(124~188μm)であり、金属焼結層のはみ出しの抑制効果が特に高かった。
実施例1、2、4~7においては、工程(II)で第1積層体に対して圧力を加える時間(加圧時間)が30秒間以上(30~60秒間)であった。
【0190】
そして、実施例1、2、5においては、接合体の接合強度が特に高く、かつ、金属焼結層のはみ出しの抑制効果が特に高かった。
実施例1、2、5においては、工程(II)で第1積層体に対して圧力を加える時間(加圧時間)が30秒間以上(30~60秒間)であり、工程(III)で第2積層体に対して加える圧力が10MPa以上(10~20MPa)であり、圧力を加える時間(加圧時間)が600秒間であった。
【0191】
上記のとおり、実施例1~7においては、金属焼結層のはみ出し幅が214μm以下であり、工程(II)で第1積層体に対して加える圧力が1MPaであり、圧力を加える時間(加圧時間)が10秒間以上であった。これに対して、比較例3においては、工程(I)の後の工程で、第1積層体に対して加える圧力が3MPaであり、圧力を加える時間(加圧時間)が300秒間であって、いずれも、実施例1~7の工程(II)の場合よりも、フィルム状焼成材料がより強く加圧される条件であり、この場合の金属焼結層のはみ出し幅が213μmであった。これらの結果から、実施例1~7の工程(II)においては、フィルム状焼成材料のはみ出し幅は当然に220μm以下であったと判断できた。
【0192】
これに対して、比較例1~3においては、接合体のせん断強度が31MPa以下(13~31MPa)であり、接合体の接合強度が低かった。
比較例4~5においては、金属焼結層のはみ出し幅が236μm以上(236~237μm)であり、金属焼結層のはみ出しが抑制されていなかった。
【0193】
比較例1~3においては、工程(II)及び工程(III)をいずれも行っておらず、工程(I)の後の工程で、第1積層体に対して加える圧力が3MPa以下(1~3MPa)であった。
比較例4~5においても、工程(II)及び工程(III)をいずれも行っておらず、工程(I)の後の工程で、第1積層体に対して加える圧力が5MPa以上(5~10MPa)であった。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明は、部材同士が金属焼結層によって接合されて構成された接合体全般の製造に利用可能であり、特に、電力用半導体素子の製造に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0195】
1,1’・・・フィルム状焼成材料、1a・・・フィルム状焼成材料の支持シート側とは反対側の面、1b・・・フィルム状焼成材料の第2部材側とは反対側の面
10・・・金属焼結層
101・・・接合体
1011・・・第1積層体
1012・・・第2積層体
2・・・支持シート、2a・・・支持シートの一方の面
20・・・未分割部材
21・・・基材フィルム、21a・・・基材フィルムの一方の面
22・・・粘着剤層、22a・・・粘着剤層の基材フィルム側とは反対側の面
22’・・・粘着剤層の硬化物
301・・・支持シート付きフィルム状焼成材料
320・・・未分割積層体
8・・・第2部材、8b・・・第2部材の一方の面
81・・・フィルム状焼成材料付き第2部材
9・・・第1部材
L・・・フィルム状焼成材料のはみ出し幅
・・・第1部材から第2部材へ向かう方向(第1部材と、フィルム状焼成材料と、第2部材と、の積層方向)
・・・第2部材から第1部材へ向かう方向(第1部材と、フィルム状焼成材料と、第2部材と、の積層方向)
図1
図2
図3
図4
図5