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特開2023-147529高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147529
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/013 20060101AFI20231005BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/232 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20231005BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231005BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20231005BHJP
   A23L 3/3544 20060101ALI20231005BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23D9/013
A61K31/202
A61K31/232
A61K47/22
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/14
A61K9/48
A61P3/06
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P25/28
A61P35/00
A61P37/08
A61P17/00
A23L33/12
A23L5/00 C
A23L5/00 L
A23L29/10
A23L3/3544 501
C11C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055081
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301049744
【氏名又は名称】日清ファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】牧田 美希
(72)【発明者】
【氏名】浅田 憲一
【テーマコード(参考)】
4B018
4B021
4B026
4B035
4C076
4C206
4H059
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD10
4B018MD11
4B018MD12
4B018MD25
4B018ME06
4B018MF02
4B021LA44
4B021LW08
4B021LW10
4B021MC03
4B021MK02
4B021MK26
4B021MP01
4B026DC04
4B026DG14
4B026DH05
4B026DK01
4B026DK10
4B026DX01
4B026DX08
4B035LC05
4B035LE01
4B035LG07
4B035LG09
4B035LG16
4B035LG41
4B035LK11
4B035LP21
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4C076CC01
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
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4C076DD41S
4C076DD45E
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4C076DD46E
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4C076DD59E
4C076DD59S
4C076EE52E
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4C076EE54E
4C076EE54S
4C076EE55E
4C076EE55S
4C076FF51
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA02
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4C206DB09
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA57
4C206NA03
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4C206ZA15
4C206ZA36
4C206ZA45
4C206ZA89
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZC33
4H059BA26
4H059BA30
4H059BA33
4H059BB03
4H059BB05
4H059BB07
4H059BC06
4H059BC07
4H059EA01
4H059EA03
(57)【要約】
【課題】アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの析出、沈殿、分離が生じず、好ましい外観と十分な酸化抑制効果を両立できる高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物を提供する。
【解決手段】高度不飽和脂肪酸又はそのエステルと、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度不飽和脂肪酸又はそのエステルと、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物。
【請求項2】
高度不飽和脂肪酸又はそのエステルが、エイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸又はそれらのエステルを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルに対するクリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルの配合比が、1:10~1000である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
グリセリン脂肪酸エステルが、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種以上である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステル又はアスコルビン酸ステアリン酸エステルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を含有するカプセル製剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を使用する高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化抑制及びアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステル析出抑制方法であって、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含有する組成物に、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを配合することを特徴とする、酸化抑制、析出抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを含有する組成物に関する。
詳細には、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルに加え、さらにクリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
魚油中などに含有されている高度不飽和脂肪酸及びそのエステルは、医学上又は栄養学上極めて重要な物質であることが知られている。例えば、魚油中の高度不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)は、血液中の中性脂肪およびコレステロール低下作用、血栓の抑制効果を有することから、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化等の予防、治療等に有効であり、又、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、学習機能の向上、抗腫瘍、抗アレルギー等の優れた効果を有することが知られている。さらに、EPA又はDHAはアトピー性等の皮膚炎に対しても有効であることが知られている。そのため、EPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸は、その広範な有効性から、食品、健康食品、医薬品として市販されている。
【0003】
しかしながら、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルはその不飽和結合部分が酸化されやすいという欠点を有しており、酸素・熱・光等により容易に酸化を受け、酸化されると魚のような異味異臭を発生し、健康への悪影響も懸念される過酸化物質が生成する。
【0004】
このような高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化を防止するために、アスコルビン酸パルミチン酸エステルを添加することが試みられている。しかし、アスコルビン酸パルミチン酸エステルは油脂に対する溶解度が低いため、油脂中での結晶の析出、沈殿、分離が生じ、十分な酸化抑制効果が発揮されないと同時に、外観上の不都合も生じるという問題があった。
そこで、アスコルビン酸パルミチン酸エステルの油脂中における析出、沈殿、分離を抑制する手段がいくつか報告されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ペースト状レシチンおよび中鎖脂肪酸トリグリセライドからなる製剤を油脂に溶解させる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステルおよびナタネ油からなる製剤を油脂に溶解させる方法が開示されて、特許文献3には、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、並びに油脂および/またはトコフェロールを含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-336443号公報
【特許文献2】特開平9-208986号公報
【特許文献3】特開2005-314519号公報
【0008】
ところが、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸パルミチン酸エステルにレシチンを添加すると、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルに対する酸化防止効果は認められるものの、レシチン自体が析出して、カプセル内容物の透明性が失われるという問題が生じることがわかった。また、レシチンは原料のGMO管理が必要であるため、使い勝手が悪いという難点もある。同様な現象は、アスコルビン酸パルミチン酸エステルだけでなく、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを用いた場合にも観察される。
【0009】
アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルは、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルには溶解しにくく、溶解するためには、100℃以上に加熱、撹拌する必要があるが、そうすると高度不飽和脂肪酸又はそのエステルは容易に酸化してしまうという問題がある。そのため、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルにアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを溶解させる際には、できるだけ加熱、撹拌条件を温和なものに抑える必要があるが、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの析出防止と高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの十分な酸化防止を両立する手段は見出されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化抑制のためにアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを添加する際に、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの析出、沈殿、分離が生じず、好ましい外観と十分な酸化抑制効果を両立できる組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルにアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルを配合し、さらに、クリルオイル、ミツロウ、飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを添加することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
したがって、上記の課題は、以下の組成物、カプセル製剤及び酸化抑制方法によって解決することができる。
(1)高度不飽和脂肪酸又はそのエステルと、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物。
(2)高度不飽和脂肪酸又はそのエステルが、エイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸又はそれらのエステルを含有する、(1)の組成物。
(3)アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルに対するクリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルの配合比が、1:10~1000である、(1)又は(2)の組成物。
(4)飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸エステルである、(1)~(3)の組成物。
(5)グリセリン脂肪酸エステルが、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種以上である、(4)の組成物。
(6)アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステル又はアスコルビン酸ステアリン酸エステルである、(1)~(5)の組成物。
(7)アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである、(1)~(6)の組成物。
(8)(1)~(7)の組成物を含有するカプセル製剤。
(9)(1)~(7)の組成物を使用する高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化抑制及びアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステル析出抑制方法であって、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含有する組成物に、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリル
オイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを配合することを特徴とする、酸化抑制、析出抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルと、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルと、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する組成物は、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルに対するアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの溶解性が向上して、すぐれた酸化抑制効果が発揮され、保存中におけるアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの析出、沈殿、分離などの問題が生じにくい。本発明の組成物は、様々な製剤形態で使用することができるが、内容物が見えるような透明な皮膜を用いたソフトカプセル剤において、特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含有する組成物、カプセル製剤、酸化抑制、析出抑制方法について、以下に説明する。
【0015】
(高度不飽和脂肪酸)
本明細書において、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルにおける高度不飽和脂肪酸とは、ω-6脂肪酸やω-3脂肪酸などの不飽和結合を2つ以上持つ脂肪酸をいう。高度不飽和脂肪酸の例としては、リノール酸、γ-リノレン酸やアラキドン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを挙げることができ、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5n-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)は、特に好ましいものである。
【0016】
本発明で用いる高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの原料としては、主として天然物由来の油脂混合物であって、上述した高度不飽和脂肪酸又はそのエステルが含まれているものが挙げられる。そのような原料の例としては、魚類等の海産動物やプランクトン由来の油脂、藻類等の微生物由来の油脂などが挙げられ、中でもイワシ、ハマチ等の魚類由来の油脂が好ましい。
【0017】
本発明において、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルには、高度不飽和脂肪酸の遊離脂肪酸、高度不飽和脂肪酸のエステル、特にメチルエステルやエチルエステルなどの低級アルキルエステルや高度不飽和脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリド等が含まれ、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルは、単独でも、混合物であってもよい。
本発明の組成物においては、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとして、エイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸又はそのエステルを5~70%程度含むものものが好ましく、45~70%程度含むものがさらに好ましい。
【0018】
本発明の高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとしては、市販されている油脂類を用いてもよく、例えば、含有する高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの種類や量が規格化された市販の魚油由来の油脂類などを用いることが好ましい。
【0019】
(アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステル)
本発明で用いるアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルにおける長鎖飽和脂肪酸としては、炭素数14~18の長鎖飽和脂肪酸を使用することができ、具体的には、アスコルビン酸ミリスチン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル及びアスコルビン酸ステアリン酸エステルを挙げることができる。なかでも、アスコルビン酸パルミチン酸エステル及びアスコルビン酸ステアリン酸エステルが好ましく、アスコルビン酸パルミチン酸エステルが特に好ましい。アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルは、高度不飽和脂肪酸又はそのエステル100質量部に対して、好ましくは、0.01~1質量%添加する。
【0020】
(クリルオイル)
クリルオイルは、南極オキアミから抽出される油脂成分である。クリルオイルの油脂は前記魚油と異なり、リン脂質が結合している。そのため、クリルオイルは、親水性が高く、水との混合が容易な油脂であるとされる。
【0021】
(飽和又は一価不飽和脂肪酸エステル)
飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルとしては、乳化作用のあるグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レチノール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等を挙げることができるが、グリセリン脂肪酸エステルは特に好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルの種類としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルが挙げられ、特に、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノオレートが好ましい。
【0022】
アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルに対して、クリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルは1:1より多く配合することが好ましく、特に好ましい配合比は、1:10~1000である。
【0023】
(製造方法)
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、原料を加温しながら撹拌・混合することにより製造することができる。高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化防止の観点から、加熱温度は100℃以下が好ましい。
【0024】
(その他成分)
本発明の組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、所望により、上記成分に加えて、更に、着色剤(例えば、酸化チタン、ベンガラ、タール系色素など)、香料、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、アスコルビン酸など)など、油脂組成物の製造に通常使用される添加剤を配合することができる。
【0025】
(カプセル製剤化)
本発明の組成物が内包されたカプセル剤の形態としては、ソフトカプセルが好ましい。ソフトカプセル剤の製造方法としては、浸漬法、打ち抜き法、滴下法等、通常用いられる方法を特に制限なく採用できる。
【0026】
カプセルの素材は、ゼラチン又は植物由来のセルロースを変性させたセルロース誘導体を基材とすることができる。このうち、食品であるゼラチンを基材とすることが好ましい。
【0027】
ゼラチンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、牛皮、豚皮、牛骨などに含まれる動物性コラーゲンに由来するもの、魚由来のゼラチンなどが挙げられる。これらの中でも、牛以外の動物由来のゼラチンが、狂牛病感染の恐れがない点で、好ましい。
セルロ-ス誘導体としては、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース等)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなど)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(酸化抑制評価)
本発明の高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含有する組成物の酸化指標は、過酸化物価(POV)で表すことができる。本発明の組成物は、35℃、75%R.H.で7日間保管後のPOV(mEq/kg)が、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。POVはヨウ素滴定法(ISO 3960:2007)などによって測定することができる。
【実施例0029】
次に、アスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルとしてアスコルビン酸パルミチン酸エステルを用いた実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例、比較例
(試料調製方法)
表に記載の各原料を100gスケールでビーカーに入れ、80℃に加温し、ホモミクサー(TK ROBOMIX、プライミクス株式会社)で3000rpm 、5分間混合した。ホモミクサーを回転したまま、室温まで冷却して試料液を得た。調製した試料液は、35℃、75%R.H.の恒温槽に7日間保管した。
【0031】
(原料)
・魚油(DHA-46G、日本水産製)
・アスコルビン酸パルミチン酸エステル(ビタミンCパルミテート、三菱ケミカル製)
・クリルオイル(クリルオイルII、清光薬品工業製)
・ミツロウ(ビースワックスGB、三木化学工業製)
・グリセリン脂肪酸エステル
:ジグリセリンモノオレート(ポエムDO-100V、理研ビタミン製)
:グリセリンモノベヘネート(ポエムB-100、理研ビタミン製)
【0032】
(評価方法)
35℃、75%R.H.の恒温槽に7日間保管後の過酸化物価(POV)を電位差滴定法で測定した。POVが25以下を効果ありとした。
また、以下の基準で外観評価(目視/析出、沈殿、分離)を行った。
◎:沈殿や析出物がなく、澄明な液体。
〇:ごくわずかに沈殿や析出物がみられる。
×:沈殿や析出物があり、液体が濁っている。
【0033】
(結果)
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表1の比較例1~3からは、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含む魚油は、35℃、75%R.H.で7日間保管後に酸化されて高いPOV値を示し(比較例1)、アスコルビン酸パルミチン酸エステルを配合することにより一定の酸化防止効果は得られるものの十分ではなく、しかも外観評価が劣ったものになること(比較例2)、レシチンを添加すれば酸化防止効果の点では十分であるものの、外観評価は劣ったものであること(比較例3)が理解できる。
【0037】
これに対して、表1の実施例1~5に示した、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルとアスコルビン酸パルミチン酸エステルに加え、さらにクリルオイル及び/又はミツロウ及び/又は飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルを含有する本発明の組成物では、35℃、75%R.H.で7日間保管後にも優れた高度不飽和脂肪酸の酸化防止効果が達成され、外観評価も好適なものであった。
【0038】
また、表2及び表3に示すように、クリルオイルや飽和又は一価不飽和脂肪酸エステルの配合量比を変化させても、酸化防止及び外観評価の両面で十分な性能を得ることができる。
【0039】
本発明により、高度不飽和脂肪酸又はそのエステルの酸化が防止されて、異味異臭や、過酸化物質の生成が抑制され、しかもアスコルビン酸長鎖飽和脂肪酸エステルの析出、沈殿、分離が生じない、高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物を提供することができるので、食品、健康食品、医薬品等として、極めて利用性が高い。