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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147553
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】冷却塔
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/06 20060101AFI20231005BHJP
   E04H 5/12 20060101ALI20231005BHJP
   F28C 1/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F28F25/06 A
E04H5/12
F28C1/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055117
(22)【出願日】2022-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】江崎 裕介
(72)【発明者】
【氏名】篠倉 大貴
(57)【要約】
【課題】温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる冷却塔を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の冷却塔は、温水槽での温水の水位が第1の水位以上で浮上して前記温水槽の散水孔を開放状態とし、且つ、前記第1の水位未満で沈降して前記散水孔を閉塞状態とする浮沈部材を備え、前記浮沈部材が、前記温水槽における温水の流れ方向の上流側に位置する散水孔を開閉するように備えられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽での温水の水位が第1の水位以上で浮上して前記散水孔を開放状態とし、且つ、前記第1の水位未満で前記散水孔を閉塞状態とする浮沈部材を備え、
前記浮沈部材が、前記流れ方向の上流側の少なくとも一部に位置する散水孔を開閉するように備えられている、冷却塔。
【請求項2】
前記流れ方向の上流側には、前記浮沈部材で開閉される複数の開閉散水孔と、前記浮沈部材で開閉されない複数の非開閉散水孔とが備えられ、
前記上流側では、前記複数の開閉散水孔が流れ方向に並んで列をなしており、
前記浮沈部材は、前記第1の水位未満で前記列の上を通って下流側に温水を送る水路となるように、前記複数の開閉散水孔を閉塞し得る底板と、前記底板の側端部より立ち上がる側壁とを有する、請求項1に記載の冷却塔。
【請求項3】
前記浮沈部材として、前記第1の水位において浮上する第1浮沈部材と、前記第1の水位よりも高い第2の水位において浮上する第2浮沈部材とを有する、請求項1又は2に記載の冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却塔は、工場の設備、ビル等の空調設備等から排出される温水を冷却して循環使用するために使用されている。
【0003】
冷却塔は、通常、温水を冷却する熱交換部を備え、該熱交換部は、供給された温水を外気と接触させて気化させる充填材によって構成されている。そして、冷却塔は、温水の冷却効率を高めるために、熱交換部に温水を十分に行きわたらせるための工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の冷却塔は、熱交換部の上方に備えられた温水槽を有し、該温水槽が、供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔を底壁に有し、該散水孔を介して熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されている。更に、特許文献1の冷却塔は、温水槽の底壁より上方に向けて筒状に延び且つ上端が開口した管状部材が、温水の流れ方向の下流側に位置する散水孔に備えられている(特許文献1の図5)。かかる冷却塔によれば、温水槽の水位が管状部材の高さよりも低い場合には、管状部材が備えられた散水孔からの温水の散水が阻止される。よって、温水の供給量が少ない場合における、温水槽の水位低下が抑制される。また、温水の供給量が多く、温水槽の水位が管状部材の高さよりも高くなるような場合には、管状部材の上端の開口を介して、管状部材が備えられた散水孔からも温水が散水される。
【0005】
この他、特許文献2に記載の冷却塔は、特許文献1と同様の上端のみが開口した管状部材として、第1管状部材と、該第1の管状部材よりも高い位置で開口した第2管状部材とを備えている。これによって、水位の変化に応じて、段階的に散水量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6190306号公報
【特許文献2】実開昭61-192198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の冷却塔は、管状部材が備えられていない上流側の散水孔から温水が優先的に排出されるため、下流側に位置する散水孔を有効に機能させるという点において改善の余地がある。
【0008】
また、上端のみが開口した管状部材は、開口面が水平方向に広がっているため(垂直方向における広がりがないため)、水位の変化に応じて温水の管内への流入量を変化させることが困難である。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる冷却塔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷却塔は、
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽での温水の水位が第1の水位以上で浮上して前記散水孔を開放状態とし、且つ、前記第1の水位未満で前記散水孔を閉塞状態とする浮沈部材を備え、
前記浮沈部材が、前記流れ方向の上流側の少なくとも一部に位置する散水孔を開閉するように備えられている。
【0011】
斯かる構成によれば、温水の水位が第1の水位未満である場合、浮沈部材が備えられた上流側の散水孔からの散水が阻止されるため、阻止した分の温水を下流側に流すことができる。
また、温水の水位が第1の水位以上に達した場合には、浮沈部材が備えられた上流側の散水孔からも散水することができる。
よって、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる。
【0012】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、
前記流れ方向の上流側には、前記浮沈部材で開閉される複数の開閉散水孔と、前記浮沈部材で開閉されない複数の非開閉散水孔とが備えられ、
前記上流側では、前記複数の開閉散水孔が流れ方向に並んで列をなしており、
前記浮沈部材は、前記第1の水位未満で前記列の上を通って下流側に温水を送る水路となるように、前記複数の開閉散水孔を閉塞し得る底板と、前記底板の側端部より立ち上がる側壁とを有する。
【0013】
斯かる構成によれば、第1の水位未満の場合、上流側では、非開閉散水孔から散水しつつ、開閉散水孔からの散水を底板によって阻止しつつ、阻止した分の温水を底板と側壁とがなす水路によって下流側に誘導することができる。よって、温水の供給量が少ない場合において、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を更に有効に機能させ易くなる。
【0014】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、
前記浮沈部材として、前記第1の水位において浮上する第1浮沈部材と、前記第1の水位よりも高い第2の水位において浮上する第2浮沈部材とを有する。
【0015】
斯かる構成によれば、第1浮沈部材及び第2浮沈部材を有することによって、水位の変化に応じて段階的に散水に有効な散水孔を増やすことができる。すなわち、温水の供給量に応じて散水量を更に変化させ易くなる。
【発明の効果】
【0016】
以上の通り、本発明によれば、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる冷却塔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る冷却塔の断面図である。
図2】一実施形態に係る温水槽を上方から見たときの図であり、温水槽とともに緩衝部材を示す。
図3】一実施形態に係る温水槽の散水孔に浮沈部材が設置された状態で、温水槽を上方から見たときの図である。
図4】一実施形態に係る温水槽の側面図であり、図4(a)は浮沈部材が備えられた散水孔の閉塞状態を示し、図4(b)は浮沈部材が備えられた散水孔の開放状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る冷却塔について説明する。なお、以下では、図1の冷却塔100において、水平面と平行な第1方向を左右方向(D1)と称し、左右方向に直交し且つ水平面と平行な第2方向を前後方向(D2)と称し、左右方向及び前後方向の両方に直交する第3方向を上下方向(D3)と称することがある。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却塔100は、熱交換部1を収容する四角柱状の塔本体100aと、塔本体100aの内部に気流Fを生じさせる気流発生部2と、熱交換部1に温水を供給する温水供給部3と、温水供給部3から熱交換部1へ供給される温水を中継する温水槽4と、熱交換部1で冷却された温水を冷水として貯留する冷水槽5とを備えている。本実施形態の冷却塔100では、塔本体100aの中央部に上下方向に延びる四角柱状の空洞Vが設けられ、空洞Vの周りに熱交換部1が配置されている。また、本実施形態の冷却塔100は、空洞Vの上方に配置された気流発生部2と、熱交換部1の上方に配置された温水槽4と、熱交換部1の下方に配置された冷水槽5とを備えている。
【0020】
気流発生部2は、塔本体100aの上面部から上方に延びるように形成された大口径のノズル21と、ノズル21に収容された送風機22とを備えている。送風機22は、駆動時にノズル21の内部を上方に向けて移動する気流Fを発生させ得るように配されている。すなわち、気流発生部2は、空洞Vの空気を送風機22で吸い出して上方に移動させ得るように構成されている。
【0021】
温水供給部3は、温水槽4の上方に備えられている。温水供給部3は、温水槽4に温水を排出する温水排出部31を有する。温水排出部31は、温水槽4に向かって(下方に)開口した排出開口311を有する。
【0022】
熱交換部1は、温水を外気と接触させて冷却する複数の冷却部11を有する。各冷却部11は、上下方向に積み上げられたブロック状の充填材を複数有する。各充填材は、複数枚の充填材用シートで構成されている。充填材用シートは、平面視において平行四辺形に形成されており、一面側に複数の突起が設けられている。各充填材は、縦置きにされた複数の充填材用シートが前後方向に並べて配されることによってブロック状をなしている。また、各充填材は、一つの充填材用シートが突起の先端部を隣り合う他の充填材用シートに当接させることによって、それぞれの充填材用シートの間に気流Fの通路となり得る隙間を形成している。
【0023】
各冷却部11は、ブロック状の充填材が上下方向に複数段積み上げられることによって四角柱状をなしている。本実施形態では、空洞Vを介して左右方向の両側に、一対の冷却部11が設けられている。各冷却部11は、充填材の前記隙間が空洞Vに連通するように配置されている。そして、気流発生部2による空洞V内の空気の吸い出しに伴い、充填材の前記隙間に外気が誘引されることとなる。
【0024】
各冷却部11は、温水槽4から供給される温水を受け入れる平面視で矩形状の上面111を有する。上面111は、前後方向に延びる一対の長端縁と左右方向に延びる一対の短端縁とを有する。そして、各冷却部11では、前後方向に(上面111の長端縁の延びる方向に)充填材用シートが並んでいる。
【0025】
温水槽4は、各冷却部11の上方に1つずつ備えられている。各温水槽4の上方には温水供給部3の排出開口311が配されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、各温水槽4は、冷却部11の上面111に対向する矩形状の底壁41と、底壁41の外周から立ち上がる周側壁42とを有する。底壁41は、水平面に沿って広がるように形成されている。より具体的には、底壁41の上面は、水平面に沿って広がるように形成されている。周側壁42は、左右方向に延びる一対の短壁部421と、前後方向に延びる一対の長壁部422とを有する。底壁41及び周側壁42は、内側に温水収容空間を形成している。なお、温水槽4から温水が溢れる水位を温水槽4の限界水位と称する。
【0027】
底壁41には、温水を散水するための円形状の複数の散水孔43が設けられている。複数の散水孔43は、温水の流れ方向に沿って形成されている。散水孔43に到達した温水は、重力の作用によって、散水孔43を介して冷却部11の上面111に落下する。これによって、温水槽4は、各散水孔43を介して熱交換部1の複数箇所に温水を散水可能となっている。
【0028】
各散水孔43の開口面積は、温水供給部3の排出開口311の開口面積よりも小さい。
【0029】
本実施形態の複数の散水孔43は、前後方向D2及び左右方向D1に配列されることによって行列をなしている。具体的には、図2に示すように、前記行列は、前後方向D2に複数の散水孔43が並ぶ第1行~第M行(これらから選択される任意の行を第m行とする)と、左右方向D1に複数の散水孔43が並ぶ第1列~第N列(これらから選択される任意の列を第n列とする)とを有する。本実施形態の複数の散水孔43は、隣り合う第m行と第m+1行との散水孔43の形成位置が前後方向D2において揃っており、且つ、隣り合う第n列と第n+1列との散水孔43の形成位置が左右方向D1に揃っており、これによって碁盤目状をなしている。なお、隣り合う第m行と第m+1行との散水孔43の形成位置は、前後方向D2に位置ずれしていてもよく、隣り合う第n列と第n+1列との散水孔43の形成位置は、左右方向D1に位置ずれしていてもよい。
【0030】
本実施形態の冷却塔100は、温水供給部3の排出開口311から落下する温水の温水槽4の底壁41への勢いを緩衝する緩衝部材6を備えている。図2及び図3に示すように、本実施形態の緩衝部材6は、長方体状の箱型に形成されており、排出開口311と底壁41との間に配されて落下する温水の勢いを緩衝する底壁たる緩衝壁61と、緩衝壁61の外周から立ち上がる周側壁62と、緩衝壁61に対向する上壁63とを有する。緩衝部材6は、排出開口311から落下する温水を内部に受け入れるための受入孔631を上壁63に有する。また、緩衝部材6は、内部に受け入れた温水を温水槽4の底壁41に向けて排出する(落下させる)ための複数の排出孔611を緩衝壁61に有する。
【0031】
緩衝壁61は、温水槽4の底壁41よりも上方に配されている。また、緩衝壁61は、水平面に沿って広がるように形成されており、言い換えれば、温水槽4の底壁41と平行するように形成されている。本実施形態の緩衝壁61は、底壁41を左右方向D1にわたって覆うように形成されている。一方、本実施形態の緩衝壁61は、前後方向D2においては、中央領域に位置する散水孔43にのみ対向するように形成されている。
【0032】
ここで、本明細書では、温水槽4の底壁41において、排出孔611からの温水が直接落下する領域を温水落下領域と称する。本実施形態では、前記温水落下領域は、底壁41における排出孔611が対向する領域である。
【0033】
各排出孔611は、前後方向D2に延びる線状に形成されている。各排出孔611は、互いに平行するように形成されている。本実施形態の緩衝壁61は、複数の排出孔611が前後方向D2に延びる線状に形成されており、それによって、横格子状をなしている。
【0034】
本実施形態の緩衝部材6は、温水槽4の周側壁42に固定されている。具体的には、緩衝部材6の上壁63が温水槽4の一対の長壁部422の上方にまで延びている。そして、上壁63と各長壁部422とが、ボルト等の接合材によって固定されている。
【0035】
本実施形態の底壁41では、緩衝壁61の排出孔611から落下した温水は、底壁41の前後方向D2における中央部から各短壁部421及び各長壁部422に向かって流れる。また、各長壁部422に衝突した温水は、各長壁部422に沿って流れ得る。このように、本実施形態の温水槽4は、底壁41の前後方向D2(長壁部422の延びる方向)に沿って温水の流れが生じ易くなるように構成されている。このことから、本実施形態では、任意2つの散水孔43のうち、前後方向D2において前記温水落下領域に近い方の散水孔43が上流側の散水孔と称し、前後方向D2において前記温水落下領域から遠い方の散水孔43が下流側の散水孔と称することができる。
【0036】
図3図4に示すように、本実施形態の冷却塔100は、更に、温水の水位が第1の水位以上で浮上して散水孔43を開放状態(図4(b))とし、且つ、第1の水位未満で沈降して散水孔43を閉塞状態(図4(a))とする複数の浮沈部材7を備えている。各浮沈部材7は、散水孔43を閉塞する閉塞体71と、第1の水位以上で浮沈部材7を浮上させる浮力を発生させる浮力体72とを有する。
【0037】
本明細書では、浮沈部材7が備えられて開閉する散水孔43を開閉散水孔431と称し、浮沈部材7が備えられていない散水孔43を非開閉散水孔432と称する。
【0038】
本実施形態では、図3に示すように、緩衝部材6(前記温水落下領域)を介して前後方向D2の両側において対をなすように浮沈部材7が備えられている。なお、緩衝部材6(前記温水落下領域)を介して前後方向D2の各側に配された浮沈部材7のそれぞれは、同様の機能を有するため、以下では、緩衝部材6(前記温水落下領域)を介して前後方向D2の一方側に配された浮沈部材7についてのみ説明することとする。
【0039】
浮沈部材7は、第m-1行の散水孔43の上流側の一部に備えられている。すなわち、浮沈部材7は、第m-1行の散水孔43を、開閉散水孔431のなす上流側の開閉群pと、非開閉散水孔432のなす下流側の開放群qとに、前後方向D2に分割するように備えられている。一方、底壁41には、前後方向D2にわたって浮沈部材7が備えられていない行(例えば第m行)を有する。すなわち、浮沈部材7が備えられていない行は、非開閉散水孔432のみで構成されている。これによって、底壁41は、開閉群pと開放群qとが左右方向D1に並んだ上流領域Uと、開放群qのみが左右方向D1に並んだ下流領域Dとに区画されたものとなる。
【0040】
本実施形態では、上流領域Uにおいて、開閉群pと開放群qとが左右方向D1に交互に並んでいる。この他、上流領域Uにおいて、隣り合う複数列の開閉群pと、隣り合う複数列の開放群qとが形成されていてもよく、1列の開閉群pと、隣り合う複数列の開放群qとが形成されていてもよく、隣り合う複数列の開閉群pと、隣り合う1列の開放群qとが形成されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、浮沈部材7は、前記温水落下領域に位置する散水孔43には設けられていない。浮沈部材7は、少なくとも、前記温水落下領域の外縁から50cm以内の範囲に位置する散水孔43に設けられていることが好ましい。この他、長壁部422の1/3の長さを半径Acmとして、排出開口311の中心から半径Acm以内の領域内の少なくとも一部の散水孔43に浮沈部材7が設けられていてもよく、長壁部422の1/4の長さを半径Bcmとして、排出開口311の中心から半径Bcm以内の領域内の少なくとも一部の散水孔43に浮沈部材7が設けられていてもよい。
【0042】
閉塞体71は、開閉群pを形成するように前後方向D2に延びる底板711を有する。底板711の下面は、開閉群pの複数の散水孔43を閉塞し得るように底壁41の上面に平行するように形成されている。これによって、図4に示すように、浮沈部材7は、第1の水位以上において、底板711の下面を底壁41の上面から離反させて散水孔43を開放する開放状態(図4(b))と、第1の水位未満において、底板711の下面を底壁41の上面に接触させて散水孔43を閉塞する閉塞状態(図4(a))とをとり得るものとなる。
【0043】
本実施形態では、図3に示すように、各開閉散水孔431は、閉塞体71によって全体的に閉塞され得る。言い換えれば、閉塞体71の底板711が、各開閉散水孔431を全体的に覆うように構成されている。この他、各開閉散水孔431は、閉塞体71によって部分的に閉塞されてもよい。すなわち、閉塞体71の底板711が、各開閉散水孔431を部分的に覆うように構成されていてもよい。
【0044】
また、底板711は、1列分の開閉群pを形成し得る幅を有していてもよく、複数列の開閉群pを形成し得る幅を有していてもよい。
【0045】
底板711の厚みは、10mm以下であることが好ましい。
【0046】
閉塞体71は、さらに、底板711の両側端部から上方に延びる一対の側壁712を有する。また、閉塞体71は、上流端及び下流端が開口するように形成されている。すなわち、閉塞体71は、前後方向の一方側から見たときに、U字状をなしている。これによって、閉塞体71は、底板711と一対の側壁712との内側に、前後方向D2に延びる水路Wを形成している。そして、本実施形態の浮沈部材7は、第1の水位未満において、閉塞体71の上流端の開口から水路Wに温水を受け入れ、受け入れた温水を水路Wによって下流側へ誘導し、閉塞体71の下流端の開口から温水を排出可能となる。すなわち、本実施形態の浮沈部材7は、第1の水位未満において、水路Wによって温水を下流側に供給するように機能する。この他、閉塞体71が底板711の一側端部から上方に延びる側壁を有するL字状に形成され、該側壁と周側壁42(具体的には長壁部422)とで水路Wが形成されてもよい。
【0047】
側壁712の高さは、第1の水位未満であってもよく、第1の水位以上であってもよい。
【0048】
浮力体72は、空気を気密に充填可能な長方体状のプラスチック製の容器によって構成されている。この他、浮力体72は、発泡剤によって構成されていてもよいが、この場合、該発泡剤は、浮沈の際の他の部材との摩擦による損傷を抑制する被覆材によって覆われていることが好ましい。
【0049】
浮力体72は、1つの閉塞体71に対して複数設けられている。各浮力体72は、各側壁712の外表面に固定されている。すなわち、各浮力体72は、一対の側壁712の両方から外方に(左右方向D1に)突き出すように設けられている。各浮力体72は、側壁712の長さ方向(前後方向D2)における所定の位置に固定されている。各浮力体72は、下方に配され得る非開閉散水孔432を閉塞しないように、底板711の下面よりも上方に固定されている。
【0050】
本実施形態の浮沈部材7は、図3及び図4に示すように、第m-1行の開閉群pを形成するように設けられた第1の閉塞体71aと、第m+1行の開閉群pを形成するように設けられた第2の閉塞体71bとを有する。また、本実施形態の浮沈部材7は、第1の閉塞体71a及び第2の閉塞体71bのそれぞれの側壁712から突き出すように設けられた浮力体72を有する。そして、浮沈部材7では、第1の閉塞体71aから突き出た浮力体72と、第2の閉塞体71bから突き出た浮力体72とが、それぞれの先端部を突き合せた状態で配されている。これによって、第1の閉塞体71aの側壁712と、これと向かい合う第2の閉塞体71bの側壁712との間には、浮力体72の突き出し長さ分の間隔dが形成されている。間隔dの長さは、散水孔43の内径以上である。
【0051】
本実施形態の浮沈部材7は、第1の閉塞体71aが第m-1行の開閉群pにおける各開閉散水孔431を全体的に覆い、且つ、第2の閉塞体71bが第m+1行の開閉群pにおける各開閉散水孔431を全体的に覆うように構成されている。この他、浮沈部材7は、第1の閉塞体71aが各開閉散水孔431を部分的に覆い、且つ、第2の閉塞体71bが各開閉散水孔431を全体的に覆うように構成されていてもよく、第1の閉塞体71aが各開閉散水孔431を部分的に覆い、且つ、第2の閉塞体71bが各開閉散水孔431を部分的に覆うように構成されていてもよい。
【0052】
本実施形態の冷却塔100は、浮沈部材7の左右方向D1及び前後方向D2の位置ずれを規制する複数の規制部8を備えている。規制部8は、浮沈部材7の左右方向D1における位置ずれを規制する第1規制部81と、浮沈部材7の前後方向D2における位置ずれを規制する第2規制部82とを含む。
【0053】
本実施形態の第1規制部81は、図4に示すように、温水槽4に設けられており、複数の(全ての)浮沈部材7を左右方向D1に挟み込むように底壁41から上方に延びる対をなす規制片811を有する。また、第1規制部81は、規制片811の基端から底壁41に沿って延び底壁41に固定される固定片812を有する。なお、規制片811は、個々の浮沈部材7を左右方向D1に挟み込むように設けられてもよい。
【0054】
第2規制部82は、図3に示すように、温水槽4に設けられており、各浮沈部材7の閉塞体71と、緩衝部材6の周側壁62とをつなぎ合わせるワイヤで構成されている。この他又はこれに加えて、第2規制部82は、各浮沈部材7の閉塞体71と、温水槽4の周側壁42とをつなぎ合わせるワイヤで構成されていてもよい。
【0055】
本実施形態の冷却塔100は、さらに、温水槽4の底壁41から下方に延びるノズル部9を備えている。ノズル部9は、散水孔43を通って底壁41の下方に延びるように備えられている。ノズル部9は、排出する温水を四方に拡散するように構成されている。この他、ノズル部9は、温水を直線状に排出するように構成されてもよく、この場合には、温水の落下方向に交差するように、ノズル部9の下方に邪魔板が設けられていることが好ましい。これによって、冷却部11への温水の分散が促進される。
【0056】
なお、本発明に係る冷却塔は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る冷却塔は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る冷却塔は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、一つの浮沈部材が複数の散水孔を開閉可能にする態様を示したが、本発明はこれに限定されず、一つの浮沈部材が一つの散水孔に備えられていてもよい。
【0058】
また、本発明の冷却塔は、前記第1の水位において浮上する第1浮沈部材と、前記第1の水位よりも高い第2の水位において浮上する第2浮沈部材とを有してもよい。これによって、水位の変化に応じて段階的に散水に有効な散水孔を増やすことができる。この場合、下流側から上流側に向かうにつれて、前記第1浮沈部材が設けられた散水孔43の割合が減少し、且つ、前記第2浮沈部材が設けられた散水孔43の割合が増加するように構成されていることが好ましい。これによって、水位が低い場合(例えば前記第2の水位未満の場合)に、下流側に温水を行きわたらせ易くなる。なお、上流側から下流側に向かうにつれて、前記第1浮沈部材が設けられた散水孔43の割合が減少し、且つ、前記第2浮沈部材が設けられた散水孔43の割合が増加するように構成されていてもよい。
【0059】
また、本発明の浮沈部材は、第m-5行と第m-3行とを含む複数行の開閉群pを形成する第1の閉塞体と、第m-1行と第m+1行とを含む複数行の開閉群pを形成する第2の閉塞体とを備えていてもよい。これによって、浮沈部材の動作が安定し得る。具体的には、1つの浮沈部材が複数行の開閉群pを形成し得る底板711を有することによって、下方から浮力を受ける面積が比較的大きくなるため、特に、浮上する際の動作が安定し得る。
【0060】
また、浮沈部材7の閉塞体71は、散水孔43の内径よりも外径が小さく形成されて散水孔43に挿入され得る延出部を有してもよい。例えば、前記延出部は、閉塞体71の底板711から下方に延出するように設けられ得る。前記延出部は、散水孔43の内壁に当接し得るため、浮沈部材7の前後方向D2及び左右方向D1の位置ずれを抑制するように機能する。さらに、前記延出部は、基端から下端に向かって先細りとなるように形成されていてもよい。例えば、前記延出部は、下方に向かって先細りとなる円錐状又は円錐台状に形成される。これによって、水位が上昇するにつれて、徐々に散水孔の開口面積を広げることができる。
【0061】
これらの他、本発明の冷却塔は、緩衝部材6を備えていなくともよい。緩衝部材6を備えていない冷却塔は、温水槽4に、温水排出部31から直接に温水が供給されることとなる。この場合、前記温水落下領域は、底壁41における排出開口311が対向する領域である。
【符号の説明】
【0062】
100:冷却塔、100a:塔本体、V:空洞、1:熱交換部、11:冷却部、111:上面、2:気流発生部、21:ノズル、22:送風機、F:気流、3:温水供給部、31:温水排出部、311:排出開口、4:温水槽、41:底壁、42:周側壁、421:短壁部、422:長壁部、43:散水孔、431:開閉散水孔、432:非開閉散水孔、U:上流領域、D:下流領域、p:開閉群、q:開放群、WL:第1の水位、5:冷水槽、6:緩衝部材、61:緩衝壁、611:排出孔、62:周側壁、63:上壁、631:受入孔、7:浮沈部材、71:閉塞体、71a:第1の閉塞体、71b:第2の閉塞体、711:底板、712:側壁、72:浮力体、W:水路、d:間隔、8:規制部、81:第1規制部、811:規制片、812:固定片、82:第2規制部、9:ノズル部
図1
図2
図3
図4