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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147556
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】発泡性清酒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/022 20190101AFI20231005BHJP
【FI】
C12G3/022 119J
C12G3/022 119U
C12G3/022 119S
C12G3/022 119Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055121
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】397012484
【氏名又は名称】朝日酒造 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】細田 康
(72)【発明者】
【氏名】本間 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 諒
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115CN14
4B115CN41
4B115CN43
4B115CN63
4B115CN88
4B115CN95
(57)【要約】
【課題】芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができ、しかも、にごり成分が少なく効率よく発泡性清酒を製造することができる発泡性清酒の製造方法を提供する。
【解決手段】酵母を含有する少量のにごり清酒と、上槽した清酒であって糖分を多量に含有した第1の清酒とを混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させる発泡性清酒の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性清酒の製造方法であって、酵母を含有する少量のにごり清酒と、上槽した清酒であって糖分を多量に含有した第1の清酒とを混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第1の混合清酒中の前記にごり清酒の割合は、質量比で0.05%以下であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は瓶であり、前記二次発酵させた後、前記瓶を逆さ状態にしてにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させた前記にごり成分を除去することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵させた後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記瓶の瓶口側に集積させる際、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、前記瓶を逆さ状態にして前記にごり成分を瓶口側に集積させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項6】
請求項3~5いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項7】
請求項1,2いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は貯蔵タンクであり、前記二次発酵させた後、にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させて該にごり成分以外を瓶に充填することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の発泡性清酒の製造方法において、前記瓶に充填した後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項9】
請求項7,8いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させる際、前記貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度まで低下させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり清酒、前記第1の清酒、前記第1の混合清酒、前記第2の清酒及び前記第2の混合清酒のそれぞれのアルコール度、日本酒度、酸度及びアミノ酸度は、下記1~下記5に示すとおりであり、また、前記にごり清酒と前記第1の混合清酒との混合比率は、にごり清酒:第1の混合清酒=1:約5000であり、また、前記第1の混合清酒と前記第2の清酒との混合比率は、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75であり、また、前記第1の混合清酒中の酵母の増殖は、前記第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
記1
アルコール度数:5%~15%
日本酒度:-50~-30
酸度:3.0~8.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記2
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記3
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記4
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記5
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第1の清酒及び前記第2の清酒は、グルコース濃度が4%~7%であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性清酒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性清酒の製造方法に関し、例えば、特許文献1~5に示すような、清酒とにごり清酒とを混合し、密閉容器内で二次発酵させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-089663号公報
【特許文献2】WO2009/048180号公報
【特許文献3】特開2017-184656号公報
【特許文献4】特開2018-174709号公報
【特許文献5】特開2018-174910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に開示される発泡性清酒の製造方法(以下、「従来法」という。)により得られる発泡性清酒は、通常の清酒に単に炭酸ガスを入れただけのものという印象を受けるものや、甘さ若しくは酸味を増強した清酒に炭酸ガスが入っているだけのものという印象を受けるものが散見され、酒質のバランスが良くないと感じられるものが多い。
【0005】
さらに、従来法においては、二次発酵させるベース酒(清酒とにごり清酒とを混合した混合清酒)中のにごり清酒の割合が多く、そのため、前記ベース酒に多くのにごり成分(主に米分や酵母)が含まれるため、二次発酵により得られた発泡性清酒中にも多くのにごり成分が含まれ、このにごり成分を除去しクリアな発泡性清酒とするまでに多くの時間を要し、効率よく生産できない問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来法の現状に鑑みなされたものであり、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができ、しかも、にごり成分が少なく効率よく発泡性清酒を製造することができる発泡性清酒の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
発泡性清酒の製造方法であって、酵母を含有する少量のにごり清酒と、上槽した清酒であって糖分を多量に含有した第1の清酒とを混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第1の混合清酒中の前記にごり清酒の割合は、質量比で0.05%以下であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は瓶であり、前記二次発酵させた後、前記瓶を逆さ状態にしてにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させた前記にごり成分を除去することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項3記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵させた後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記瓶の瓶口側に集積させる際、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、前記瓶を逆さ状態にして前記にごり成分を瓶口側に集積させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項3~5いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は貯蔵タンクであり、前記二次発酵させた後、にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させて該にごり成分以外を瓶に充填することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0015】
また、請求項7記載の発泡性清酒の製造方法において、前記瓶に充填した後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0016】
また、請求項7,8いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させる際、前記貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度まで低下させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0017】
また、請求項7~9いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0018】
また、請求項1~10いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり清酒、前記第1の清酒、前記第1の混合清酒、前記第2の清酒及び前記第2の混合清酒のそれぞれのアルコール度、日本酒度、酸度及びアミノ酸度は、下記1~下記5に示すとおりであり、また、前記にごり清酒と前記第1の混合清酒との混合比率は、にごり清酒:第1の混合清酒=1:約5000であり、また、前記第1の混合清酒と前記第2の清酒との混合比率は、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75であり、また、前記第1の混合清酒中の酵母の増殖は、前記第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
記1
アルコール度数:5%~15%
日本酒度:-50~-30
酸度:3.0~8.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記2
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記3
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記4
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記5
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
【0019】
また、請求項1~11いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第1の清酒及び前記第2の清酒は、グルコース濃度が4%~7%であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のようにするから、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができ、しかも、従来法に比べてにごり成分が少ないため、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態にすることができ、生産性も向上する。
【0021】
さらに、にごり成分が少ないことで、にごり成分を容器から除去する作業が容易になり、これにより、にごり成分を除去する作業において目減り量が低減され、歩留まりも向上する。
【0022】
このように、本発明は、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を、効率よく製造することができる画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1における発泡性清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図2】実施例1におけるにごり清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図3】実施例1における第1の清酒及び第2の清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図4】実施例2における発泡性清酒の製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
本発明は、少量のにごり清酒と、このにごり清酒に対して多量の第1の清酒とを混合して第1の混合清酒を得、さらに、この第1の混合清酒中の酵母(発酵活性を有する酵母)を増殖させるから、第1の混合清酒は、にごり成分が少なく、酵母が多いものとなる。
【0026】
すなわち、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を少なくするには、にごり成分を含むにごり清酒の混合量を少なくすれば良いが、にごり清酒の量を少なくした場合、酵母も少なくなり、酵母不足により十分な二次発酵が行われず、所望の発泡性清酒が得られないという問題が生じてしまう。
【0027】
また、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多いにごり清酒を用いることも考えられるが、にごり清酒は、一般的に粗漉しにより得られるものであるから、前記のように、米分を少なく、酵母を多くするように漉すことは難しく、前記のような米分が少なく酵母を多く含むにごり清酒を用いることは、実際のところ厄介である。これは、清酒に酵母のみを追加することが酒税法上禁止されていることも原因である。
【0028】
そこで、本発明者等は、にごり成分である米分が少なく、しかしながら、二次発酵に必要な十分な量の酵母を含むにごり清酒(第1の混合清酒)を得るため、鋭意研究を重ね、前記したように、少量のにごり清酒と、このにごり清酒に対して多量の第1の清酒とを混合して得られた第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させることで、米分が少なく酵母が多いにごり清酒(第1の混合清酒)の取得方法を見出した。
【0029】
本発明は、このようなにごり成分である米分が少なく酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0030】
さらに、本発明は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)は、にごり成分が少ないものとなるから、この二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態、すなわち、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分(主に米分及び酵母)を短時間で回収・除去することができ、生産性が向上し、さらに、前記のとおりにごり成分が少ないことで、にごり成分を容器から除去する作業が容易になり、これにより、にごり成分を除去する作業における目減り量が低減され、歩留まりも向上する。
【実施例0031】
本発明の具体的な実施例1について図1図3に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、酵母を含有する少量のにごり清酒(懸濁清酒とも言う。酵母を含み、発酵活性のある醪を荒漉しして得られたもの。)と、上槽した清酒であって糖分を多量に含有した第1の清酒(酵母非含有)とを混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させて発泡性清酒を得る発泡性清酒の製造方法である。
【0033】
具体的には、本実施例は、図1に示すように、にごり清酒と第1の清酒とを混合(混和)して第1の混合清酒を得る第一混合工程と、第1の混合清酒中の酵母を増殖させる酵母増殖工程と、酵母を増殖させた第1の混合清酒と第2の清酒とを混合(混和)して第2の混合清酒を得る第二混合工程と、第2の混合清酒を容器に充填する充填工程と、容器に充填した第2の混合清酒を容器内で二次発酵させる二次発酵工程と、二次発酵させた容器内の第2の混合清酒(発泡性清酒)に対して殺菌処理を施す殺菌工程と、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を回収・除去するにごり成分除去工程と、にごり成分を除去した際に目減り(欠減)した分を補充する補充工程と、打栓により容器を密閉する打栓工程とを含むものである。
【0034】
以下、本実施例の発泡性清酒の製造方法について、図1に示すフローチャートに沿って前記工程ごとに具体的に説明する。
【0035】
<第一混合工程>
第一混合工程は、酵母を含有するにごり清酒と、上槽した第1の清酒とを混合(混和)して第1の混合清酒を得る工程である。
【0036】
具体的には、本実施例においては、この第一混合工程で、にごり清酒と第1の清酒とを、にごり清酒:第1の清酒=1:約5000(質量比)、具体的には、1:4999の比率で混合(混和)し、第1の混合清酒を得ている。
【0037】
この第一混合工程で用いるにごり清酒は、図2に示すような常法の製法により得られたものを用いており、具体的には、酵母による発酵活性を有し、成分値が、アルコール度数:5%~15%,日本酒度:-50~-30,酸度:3~8,アミノ酸度:0.5~1.5のにごり清酒を用いている。
【0038】
また、第1の清酒は、図3に示すような常法の製法により得られたものを用いており、具体的には、成分値が、アルコール度数:3%~4%,日本酒度:-15~-5,酸度:0.5~1.0,アミノ酸度:0.1~0.5,グルコース濃度:4%~7%の清酒を用いている。
【0039】
また、第1の清酒は、リンゴ酸高生産性酵母を使用し、さらに、グルコース濃度が高い清酒となっているため、一般的な清酒と比較してフルーティーで甘みの強い清酒となっている。
【0040】
前記のようにして得られる第1の混合清酒は、第1の清酒に対するにごり清酒の混合比率が極めて小さいため(第1の清酒に対するにごり清酒の混合量が極めて少ないため)、成分値が、アルコール度数:3%~4%,日本酒度:-15~-5,酸度:0.5~1.0,アミノ酸度:0.1~0.5と第1の清酒とほぼ同等であり、さらに、米分及び酵母の含有量が非常に少ない清酒(混合清酒)となる。
【0041】
<酵母増殖工程>
酵母増殖工程は、第一混合工程で得た第1の混合清酒中の酵母を増殖させ、二次発酵に必要な酵母量にする工程である。
【0042】
すなわち、第一混合工程で得た第1の混合清酒は、前記のとおり、第1の清酒に対するにごり清酒の混合比率が極めて小さいため、にごり成分である米分が極めて少なくなるが、米分と同様、酵母の量も少なくなっており、そのような少ない酵母量では、適正な二次発酵を行うことができない。本酵母増殖工程は、この酵母量が少ない第1の混合清酒において、第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させ、この第1の混合清酒中の酵母を適正な二次発酵を行うことができる適正な酵母量にする工程である。
【0043】
具体的には、この酵母増殖工程では、第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管し、この第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させている。
【0044】
詳しくは、本実施例は、第一混合工程に用いる第1の混合清酒を前記のとおり一般的な清酒よりも糖分を多く含んだ清酒を用いており、したがって、第1の混合清酒も多くの糖分を含むものとなっている。この酵母増殖工程では、この第1の混合清酒に含まれている多くの糖分を栄養源として酵母の増殖が行われる(第一混合工程の第1の清酒として一般的な糖分の少ない清酒を用いた場合、第1の混合清酒に含まれる糖分も少なくなり、栄養源が足りずに酵母の増殖が進まず、二次発酵に必要な適正な酵母量にならない。)。なお、前記温度環境及び保管日数は、第一混合工程におけるにごり清酒と第1の清酒との混合比率により適宜変更可能なものとする。
【0045】
<第二混合工程>
第二混合工程は、酵母増殖工程で酵母を増殖させた第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒とを混合(混和)して第2の混合清酒を得る工程である。
【0046】
具体的には、この第二混合工程では、酵母増殖後の第1の混合清酒と第2の清酒とを、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75(質量比)、具体的には、20:80の比率で混合(混和)して、第2の混合清酒を得ている。
【0047】
この第二混合工程で用いる第2の清酒は、第1の清酒と同様、図3に示すような常法の製法により得られたものを用いており、第1の清酒とは、加水量が異なるものである。
【0048】
具体的には、第2の清酒は、成分値が、アルコール度数:9%~12%,日本酒度:-50~-30,酸度:2.0~4.0,アミノ酸度:0.5~1.5,グルコース濃度:4%~7%の清酒であり、また、第1の清酒と同様に、一般的な清酒と比較してフルーティーで甘みの強い清酒となっている。
【0049】
前記のようにして得られる第2の混合清酒は、成分値が、アルコール度数:9%~12%,日本酒度:-50~-30,酸度:2.0~4.0,アミノ酸度:0.5~1.5と第2の清酒とほぼ同等であり、また、二次発酵に必要な酵母を適正量含みながらも、にごり成分(特に米分)が非常に少ない清酒(混合清酒)となる。
<充填工程>
充填工程は、第2の混合清酒を二次発酵させるために、所定の容器に移し替える工程である。
【0050】
具体的には、この充填工程では、第2の混合清酒を瓶(具体的には、販売形態で使用する瓶)に充填(瓶詰)し、密栓し、瓶内を密閉状態にしている。なお、瓶開口部を密栓する栓は、内側(天面の裏面)に凹部を有する王冠タイプの栓を用いている(後述するにごり成分除去工程において前記凹部がにごり成分回収部となる。)。
【0051】
<二次発酵工程>
二次発酵工程は、瓶詰した第2の混合清酒を瓶内で二次発酵させる(発泡性清酒にする)工程である。
【0052】
具体的には、この二次発酵工程では、瓶詰した第2の混合清酒を、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵(二次発酵)させ、アルコール度数:10%~13%,日本酒度:-40~-20,酸度:2~4,アミノ酸度:0.5~1.5,炭酸ガス含有量:4GV~6GVの発泡性清酒を得ている。
【0053】
<殺菌工程>
殺菌工程は、瓶内の発泡性清酒に対して殺菌処理を施す工程である。
【0054】
具体的には、この殺菌工程では、加熱殺菌処理を行っており、詳しくは、瓶詰状態のまま、65℃以上、5分以上の火入れ処理(例えば、65℃、10分))を行っている。
【0055】
<にごり成分除去工程>
にごり成分除去工程は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を回収・除去する工程である。
【0056】
具体的には、このにごり成分除去工程では、瓶を逆さ状態にして二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させたにごり成分を除去し、瓶内の発泡性清酒をクリアな状態にしている。
【0057】
より具体的には、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の入った瓶を、瓶口が下を向くように逆さ状態にし、途中、適宜なタイミングで瓶を揺動させながら、瓶内のにごり成分を瓶口側、具体的には、瓶口を密栓している栓(王冠)の裏面に設けられた凹部内)に沈降、集積させて回収し、その後、開栓し、にごり成分を瓶外に排出している。
【0058】
本実施例では、にごり成分の回収量が従来法の約1/250量と非常に少なくなるため、このにごり成分を除去する際の瓶内の第2の混合清酒(発泡性清酒)の目減り量(欠減量)を瓶内の二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)量の約1%と極めて少量に抑えることができる(従来法の目減り量は約30%)。
【0059】
<補充工程>
補充工程は、前記にごり成分除去工程において、にごり成分を除去した際に目減りした分の発泡性清酒を補充する工程である。
【0060】
具体的には、この補充工程では、にごり成分が除去されたクリアな発泡性清酒を、瓶内に充填しており、本実施例では、前記のように目減り量が非常に少ないため、補充量(充填量)も極めて少ないものとなっている。
【0061】
<打栓工程>
打栓工程は、瓶内の炭酸が抜けないように、打栓により瓶を再密閉する工程である。
【0062】
具体的には、本実施例の場合、コルク栓にて閉栓した後、ワイヤーフードを装着し、瓶を再び密閉状態にしている。
【0063】
以上のような各工程を含む本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0064】
本実施例は、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0065】
また、本実施例は、第2の混合清酒を得る際に第2の清酒と混合する第1の混合清酒中のにごり成分が非常に少ないから、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分も非常に少なく、したがって、この二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態にすることができ、生産性が向上し、さらに、前記のとおりにごり成分が少ないことで、にごり成分を瓶から除去する作業も容易になり、これにより、にごり成分を除去する際の第2の混合清酒(発泡性清酒)の目減り量を大幅に低減することができるので、発泡性清酒の補充量が少なくて済み、従来法に比べて歩留まりが大幅に向上する(約30%アップ)画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【実施例0066】
本発明の具体的な実施例2について図4に基づいて説明する。
【0067】
上述した実施例1の発泡性清酒の製造方法は、第2の混合清酒を瓶に充填し、この瓶内で二次発酵させて発泡性清酒を得る方法であるのに対し、本実施例の発泡性清酒の製造方法は、第2の混合清酒を貯蔵タンクに充填し、この貯蔵タンク内で二次発酵させて発泡性清酒を得るものである。
【0068】
以下、本実施例の発泡性清酒の製造方法について、図4に示すフローチャートに沿って前記工程ごとに具体的に説明する。なお、本実施例は、第2の混合清酒を得る第二混合工程までは実施例1と同様であるため、第二混合工程以前の説明を省略し、貯蔵タンクに充填する充填工程以降について説明する。
【0069】
<充填工程>
充填工程は、第2の混合清酒を二次発酵させるために、所定の容器に移し替える工程である。
【0070】
具体的には、この充填工程では、第2の混合清酒を貯蔵タンクに充填した後、貯蔵タンク内を密閉状態にしている。
【0071】
<二次発酵工程>
二次発酵工程は、貯蔵タンクに充填した第2の混合清酒を、貯蔵タンク内で二次発酵させる(発泡性清酒にする)工程である。
【0072】
具体的には、この二次発酵工程では、貯蔵タンク内に充填した第2の混合清酒を、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵(二次発酵)させ、アルコール度数:10%~13%,日本酒度:-40~-20,酸度:2~4,アミノ酸度:0.5~1.5,炭酸ガス含有量:4GV~6GVの発泡性清酒を得ている。
【0073】
<にごり成分除去工程>
にごり成分除去工程は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を貯蔵タンクの底側に沈降、堆積させる工程である。
【0074】
具体的には、このにごり成分除去工程では、貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度に設定した状態でにごり成分を貯蔵タンクの底側に沈降させ、貯蔵タンクの底上に堆積させている。なお、貯蔵タンクの底に堆積させたにごり成分は、適宜なタイミングで、貯蔵タンクの底部に設けられた排出口から貯蔵タンク外に排出する。
【0075】
<瓶詰工程>
瓶詰工程は、貯蔵タンク内でにごり成分が除去されたクリアな第2の混合清酒(発泡性清酒)を、瓶(具体的には、販売形態で使用する瓶)に瓶詰め(充填)する工程である。
【0076】
具体的には、この瓶詰工程では、貯蔵タンクに設けられた注出口から注出される発泡性清酒を直接、瓶に充填している。なお、貯蔵タンクの注出口は、貯蔵タンクの底からにごり成分が堆積する高さよりも上方に設けられており、貯蔵タンクから注出される発泡性清酒は、にごり成分が含まれないクリアな状態で注出される。
【0077】
<打栓工程>
打栓工程は、瓶内の炭酸が抜けないように、打栓により瓶を密閉する工程である。
【0078】
具体的には、本実施例の場合、コルク栓にて閉栓した後、ワイヤーフードを装着し、瓶を密閉状態にしている。
【0079】
<殺菌工程>
殺菌工程は、瓶内の発泡性清酒に対して殺菌処理を施す工程である。
【0080】
具体的には、この殺菌工程では、加熱殺菌処理を行っており、詳しくは、瓶詰状態のまま、65℃以上、5分以上の火入れ処理(例えば、65℃、10分))を行っている。
【0081】
以上のような各工程を含む本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0082】
本実施例は、実施例1同様、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0083】
また、本実施例は、第2の混合清酒を得る際に第2の清酒と混合する第1の混合清酒中のにごり成分が非常に少ないから、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分も非常に少なく、したがって、貯蔵タンクの底に堆積するにごり成分の高さが低くなり、貯蔵タンク内のクリアな二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の量が増加する。よって、貯蔵タンクにおける二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の注出口の高さ位置を適宜な高さ位置にすることで、より多くの発泡性清酒を得ることができ、従来法に比べて歩留まりが大幅に向上する画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【0084】
なお、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性清酒の製造方法であって、酵母を含有するにごり清酒と、上槽した清酒であって日本酒度が-15~-5の第1の清酒とを、前記第1の清酒に対する前記にごり清酒の割合が質量比で0.05%以下となるように混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は瓶であり、前記二次発酵させた後、前記瓶を逆さ状態にしてにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させた前記にごり成分を除去することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項3】
請求項記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵させた後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項4】
請求項2,3いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記瓶の瓶口側に集積させる際、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、前記瓶を逆さ状態にして前記にごり成分を瓶口側に集積させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項5】
請求項2~4いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は貯蔵タンクであり、前記二次発酵させた後、にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させて該にごり成分以外を瓶に充填することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項7】
請求項記載の発泡性清酒の製造方法において、前記瓶に充填した後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項8】
請求項6,7いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させる際、前記貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度まで低下させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【請求項10】
請求項1~いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり清酒、前記第1の清酒、前記第1の混合清酒、前記第2の清酒及び前記第2の混合清酒のそれぞれのアルコール度、日本酒度、酸度及びアミノ酸度は、下記1~下記5に示すとおりであり、また、前記にごり清酒と前記第1の混合清酒との混合比率は、にごり清酒:第1の混合清酒=1:約5000であり、また、前記第1の混合清酒と前記第2の清酒との混合比率は、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75であり、また、前記第1の混合清酒中の酵母の増殖は、前記第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管することを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
記1
アルコール度数:5%~15%
日本酒度:-50~-30
酸度:3.0~8.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記2
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記3
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記4
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記5
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
【請求項11】
請求項1~10いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第2の清酒は、グルコース濃度が4%~7%であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性清酒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性清酒の製造方法に関し、例えば、特許文献1~5に示すような、清酒とにごり清酒とを混合し、密閉容器内で二次発酵させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-089663号公報
【特許文献2】WO2009/048180号公報
【特許文献3】特開2017-184656号公報
【特許文献4】特開2018-174709号公報
【特許文献5】特開2018-174910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に開示される発泡性清酒の製造方法(以下、「従来法」という。)により得られる発泡性清酒は、通常の清酒に単に炭酸ガスを入れただけのものという印象を受けるものや、甘さ若しくは酸味を増強した清酒に炭酸ガスが入っているだけのものという印象を受けるものが散見され、酒質のバランスが良くないと感じられるものが多い。
【0005】
さらに、従来法においては、二次発酵させるベース酒(清酒とにごり清酒とを混合した混合清酒)中のにごり清酒の割合が多く、そのため、前記ベース酒に多くのにごり成分(主に米分や酵母)が含まれるため、二次発酵により得られた発泡性清酒中にも多くのにごり成分が含まれ、このにごり成分を除去しクリアな発泡性清酒とするまでに多くの時間を要し、効率よく生産できない問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来法の現状に鑑みなされたものであり、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができ、しかも、にごり成分が少なく効率よく発泡性清酒を製造することができる発泡性清酒の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
発泡性清酒の製造方法であって、酵母を含有するにごり清酒と、上槽した清酒であって日本酒度が-15~-5の第1の清酒とを、前記第1の清酒に対する前記にごり清酒の割合が質量比で0.05%以下となるように混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は瓶であり、前記二次発酵させた後、前記瓶を逆さ状態にしてにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させた前記にごり成分を除去することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵させた後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項2,3いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記瓶の瓶口側に集積させる際、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、前記瓶を逆さ状態にして前記にごり成分を瓶口側に集積させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項2~4いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の発泡性清酒の製造方法において、前記容器は貯蔵タンクであり、前記二次発酵させた後、にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させて該にごり成分以外を瓶に充填することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項記載の発泡性清酒の製造方法において、前記瓶に充填した後、加熱温度:65℃以上、加熱時間:5分以上の加熱殺菌処理を施すことを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0015】
また、請求項6,7いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり成分を前記貯蔵タンクの底側に沈降させる際、前記貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度まで低下させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0016】
また、請求項6~8いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記二次発酵は、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵させることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【0017】
また、請求項1~いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記にごり清酒、前記第1の清酒、前記第1の混合清酒、前記第2の清酒及び前記第2の混合清酒のそれぞれのアルコール度、日本酒度、酸度及びアミノ酸度は、下記1~下記5に示すとおりであり、また、前記にごり清酒と前記第1の混合清酒との混合比率は、にごり清酒:第1の混合清酒=1:約5000であり、また、前記第1の混合清酒と前記第2の清酒との混合比率は、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75であり、また、前記第1の混合清酒中の酵母の増殖は、前記第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管することを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
記1
アルコール度数:5%~15%
日本酒度:-50~-30
酸度:3.0~8.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記2
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記3
アルコール度数:3%~4%
日本酒度:-15~-5
酸度:0.5~1.0
アミノ酸度:0.1~0.5
記4
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
記5
アルコール度数:9%~12%
日本酒度:-50~-30
酸度:2.0~4.0
アミノ酸度:0.5~1.5
【0018】
また、請求項1~10いずれか1項に記載の発泡性清酒の製造方法において、前記第2の清酒は、グルコース濃度が4%~7%であることを特徴とする発泡性清酒の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のようにするから、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができ、しかも、従来法に比べてにごり成分が少ないため、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態にすることができ、生産性も向上する。
【0020】
さらに、にごり成分が少ないことで、にごり成分を容器から除去する作業が容易になり、これにより、にごり成分を除去する作業において目減り量が低減され、歩留まりも向上する。
【0021】
このように、本発明は、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を、効率よく製造することができる画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1における発泡性清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図2】実施例1におけるにごり清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図3】実施例1における第1の清酒及び第2の清酒の製造方法に関するフローチャートである。
図4】実施例2における発泡性清酒の製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
本発明は、少量のにごり清酒と、このにごり清酒に対して多量の第1の清酒とを混合して第1の混合清酒を得、さらに、この第1の混合清酒中の酵母(発酵活性を有する酵母)を増殖させるから、第1の混合清酒は、にごり成分が少なく、酵母が多いものとなる。
【0025】
すなわち、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を少なくするには、にごり成分を含むにごり清酒の混合量を少なくすれば良いが、にごり清酒の量を少なくした場合、酵母も少なくなり、酵母不足により十分な二次発酵が行われず、所望の発泡性清酒が得られないという問題が生じてしまう。
【0026】
また、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多いにごり清酒を用いることも考えられるが、にごり清酒は、一般的に粗漉しにより得られるものであるから、前記のように、米分を少なく、酵母を多くするように漉すことは難しく、前記のような米分が少なく酵母を多く含むにごり清酒を用いることは、実際のところ厄介である。これは、清酒に酵母のみを追加することが酒税法上禁止されていることも原因である。
【0027】
そこで、本発明者等は、にごり成分である米分が少なく、しかしながら、二次発酵に必要な十分な量の酵母を含むにごり清酒(第1の混合清酒)を得るため、鋭意研究を重ね、前記したように、少量のにごり清酒と、このにごり清酒に対して多量の第1の清酒とを混合して得られた第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させることで、米分が少なく酵母が多いにごり清酒(第1の混合清酒)の取得方法を見出した。
【0028】
本発明は、このようなにごり成分である米分が少なく酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)は、にごり成分が少ないものとなるから、この二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態、すなわち、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分(主に米分及び酵母)を短時間で回収・除去することができ、生産性が向上し、さらに、前記のとおりにごり成分が少ないことで、にごり成分を容器から除去する作業が容易になり、これにより、にごり成分を除去する作業における目減り量が低減され、歩留まりも向上する。
【実施例0030】
本発明の具体的な実施例1について図1図3に基づいて説明する。
【0031】
本実施例は、酵母を含有する少量のにごり清酒(懸濁清酒とも言う。酵母を含み、発酵活性のある醪を荒漉しして得られたもの。)と、上槽した清酒であって糖分を多量に含有した第1の清酒(酵母非含有)とを混合した第1の混合清酒において前記酵母を増殖させ、続いて、この第1の混合清酒に上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、続いて、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内において前記酵母により二次発酵させて発泡性清酒を得る発泡性清酒の製造方法である。
【0032】
具体的には、本実施例は、図1に示すように、にごり清酒と第1の清酒とを混合(混和)して第1の混合清酒を得る第一混合工程と、第1の混合清酒中の酵母を増殖させる酵母増殖工程と、酵母を増殖させた第1の混合清酒と第2の清酒とを混合(混和)して第2の混合清酒を得る第二混合工程と、第2の混合清酒を容器に充填する充填工程と、容器に充填した第2の混合清酒を容器内で二次発酵させる二次発酵工程と、二次発酵させた容器内の第2の混合清酒(発泡性清酒)に対して殺菌処理を施す殺菌工程と、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を回収・除去するにごり成分除去工程と、にごり成分を除去した際に目減り(欠減)した分を補充する補充工程と、打栓により容器を密閉する打栓工程とを含むものである。
【0033】
以下、本実施例の発泡性清酒の製造方法について、図1に示すフローチャートに沿って前記工程ごとに具体的に説明する。
【0034】
<第一混合工程>
第一混合工程は、酵母を含有するにごり清酒と、上槽した第1の清酒とを混合(混和)して第1の混合清酒を得る工程である。
【0035】
具体的には、本実施例においては、この第一混合工程で、にごり清酒と第1の清酒とを、にごり清酒:第1の清酒=1:約5000(質量比)、具体的には、1:4999の比率で混合(混和)し、第1の混合清酒を得ている。
【0036】
この第一混合工程で用いるにごり清酒は、図2に示すような常法の製法により得られたものを用いており、具体的には、酵母による発酵活性を有し、成分値が、アルコール度数:5%~15%,日本酒度:-50~-30,酸度:3~8,アミノ酸度:0.5~1.5のにごり清酒を用いている。
【0037】
また、第1の清酒は、図3に示すような常法の製法により得られたものを用いており、具体的には、成分値が、アルコール度数:3%~4%,日本酒度:-15~-5,酸度:0.5~1.0,アミノ酸度:0.1~0.5,グルコース濃度:4%~7%の清酒を用いている。
【0038】
また、第1の清酒は、リンゴ酸高生産性酵母を使用し、さらに、グルコース濃度が高い清酒となっているため、一般的な清酒と比較してフルーティーで甘みの強い清酒となっている。
【0039】
前記のようにして得られる第1の混合清酒は、第1の清酒に対するにごり清酒の混合比率が極めて小さいため(第1の清酒に対するにごり清酒の混合量が極めて少ないため)、成分値が、アルコール度数:3%~4%,日本酒度:-15~-5,酸度:0.5~1.0,アミノ酸度:0.1~0.5と第1の清酒とほぼ同等であり、さらに、米分及び酵母の含有量が非常に少ない清酒(混合清酒)となる。
【0040】
<酵母増殖工程>
酵母増殖工程は、第一混合工程で得た第1の混合清酒中の酵母を増殖させ、二次発酵に必要な酵母量にする工程である。
【0041】
すなわち、第一混合工程で得た第1の混合清酒は、前記のとおり、第1の清酒に対するにごり清酒の混合比率が極めて小さいため、にごり成分である米分が極めて少なくなるが、米分と同様、酵母の量も少なくなっており、そのような少ない酵母量では、適正な二次発酵を行うことができない。本酵母増殖工程は、この酵母量が少ない第1の混合清酒において、第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させ、この第1の混合清酒中の酵母を適正な二次発酵を行うことができる適正な酵母量にする工程である。
【0042】
具体的には、この酵母増殖工程では、第1の混合清酒を約30℃の温度環境下で約5日間保管し、この第1の混合清酒中の酵母を培養し増殖させている。
【0043】
詳しくは、本実施例は、第一混合工程に用いる第1の混合清酒を前記のとおり一般的な清酒よりも糖分を多く含んだ清酒を用いており、したがって、第1の混合清酒も多くの糖分を含むものとなっている。この酵母増殖工程では、この第1の混合清酒に含まれている多くの糖分を栄養源として酵母の増殖が行われる(第一混合工程の第1の清酒として一般的な糖分の少ない清酒を用いた場合、第1の混合清酒に含まれる糖分も少なくなり、栄養源が足りずに酵母の増殖が進まず、二次発酵に必要な適正な酵母量にならない。)。なお、前記温度環境及び保管日数は、第一混合工程におけるにごり清酒と第1の清酒との混合比率により適宜変更可能なものとする。
【0044】
<第二混合工程>
第二混合工程は、酵母増殖工程で酵母を増殖させた第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒とを混合(混和)して第2の混合清酒を得る工程である。
【0045】
具体的には、この第二混合工程では、酵母増殖後の第1の混合清酒と第2の清酒とを、第1の混合清酒:第2の清酒=15:85~25:75(質量比)、具体的には、20:80の比率で混合(混和)して、第2の混合清酒を得ている。
【0046】
この第二混合工程で用いる第2の清酒は、第1の清酒と同様、図3に示すような常法の製法により得られたものを用いており、第1の清酒とは、加水量が異なるものである。
【0047】
具体的には、第2の清酒は、成分値が、アルコール度数:9%~12%,日本酒度:-50~-30,酸度:2.0~4.0,アミノ酸度:0.5~1.5,グルコース濃度:4%~7%の清酒であり、また、第1の清酒と同様に、一般的な清酒と比較してフルーティーで甘みの強い清酒となっている。
【0048】
前記のようにして得られる第2の混合清酒は、成分値が、アルコール度数:9%~12%,日本酒度:-50~-30,酸度:2.0~4.0,アミノ酸度:0.5~1.5と第2の清酒とほぼ同等であり、また、二次発酵に必要な酵母を適正量含みながらも、にごり成分(特に米分)が非常に少ない清酒(混合清酒)となる。
【0049】
<充填工程>
充填工程は、第2の混合清酒を二次発酵させるために、所定の容器に移し替える工程である。
【0050】
具体的には、この充填工程では、第2の混合清酒を瓶(具体的には、販売形態で使用する瓶)に充填(瓶詰)し、密栓し、瓶内を密閉状態にしている。なお、瓶開口部を密栓する栓は、内側(天面の裏面)に凹部を有する王冠タイプの栓を用いている(後述するにごり成分除去工程において前記凹部がにごり成分回収部となる。)。
【0051】
<二次発酵工程>
二次発酵工程は、瓶詰した第2の混合清酒を瓶内で二次発酵させる(発泡性清酒にする)工程である。
【0052】
具体的には、この二次発酵工程では、瓶詰した第2の混合清酒を、10℃~20℃の温度環境下で10日~50日間発酵(二次発酵)させ、アルコール度数:10%~13%,日本酒度:-40~-20,酸度:2~4,アミノ酸度:0.5~1.5,炭酸ガス含有量:4GV~6GVの発泡性清酒を得ている。
【0053】
<殺菌工程>
殺菌工程は、瓶内の発泡性清酒に対して殺菌処理を施す工程である。
【0054】
具体的には、この殺菌工程では、加熱殺菌処理を行っており、詳しくは、瓶詰状態のまま、65℃以上、5分以上の火入れ処理(例えば、65℃、10分))を行っている。
【0055】
<にごり成分除去工程>
にごり成分除去工程は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を回収・除去する工程である。
【0056】
具体的には、このにごり成分除去工程では、瓶を逆さ状態にして二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を瓶口側に集積させ、この瓶口側に集積させたにごり成分を除去し、瓶内の発泡性清酒をクリアな状態にしている。
【0057】
より具体的には、0℃~5℃の温度環境下で30日~45日間、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の入った瓶を、瓶口が下を向くように逆さ状態にし、途中、適宜なタイミングで瓶を揺動させながら、瓶内のにごり成分を瓶口側、具体的には、瓶口を密栓している栓(王冠)の裏面に設けられた凹部内)に沈降、集積させて回収し、その後、開栓し、にごり成分を瓶外に排出している。
【0058】
本実施例では、にごり成分の回収量が従来法の約1/250量と非常に少なくなるため、このにごり成分を除去する際の瓶内の第2の混合清酒(発泡性清酒)の目減り量(欠減量)を瓶内の二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)量の約1%と極めて少量に抑えることができる(従来法の目減り量は約30%)。
【0059】
<補充工程>
補充工程は、前記にごり成分除去工程において、にごり成分を除去した際に目減りした分の発泡性清酒を補充する工程である。
【0060】
具体的には、この補充工程では、にごり成分が除去されたクリアな発泡性清酒を、瓶内に充填しており、本実施例では、前記のように目減り量が非常に少ないため、補充量(充填量)も極めて少ないものとなっている。
【0061】
<打栓工程>
打栓工程は、瓶内の炭酸が抜けないように、打栓により瓶を再密閉する工程である。
【0062】
具体的には、本実施例の場合、コルク栓にて閉栓した後、ワイヤーフードを装着し、瓶を再び密閉状態にしている。
【0063】
以上のような各工程を含む本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0064】
本実施例は、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0065】
また、本実施例は、第2の混合清酒を得る際に第2の清酒と混合する第1の混合清酒中のにごり成分が非常に少ないから、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分も非常に少なく、したがって、この二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)を短時間でクリアな状態にすることができ、生産性が向上し、さらに、前記のとおりにごり成分が少ないことで、にごり成分を瓶から除去する作業も容易になり、これにより、にごり成分を除去する際の第2の混合清酒(発泡性清酒)の目減り量を大幅に低減することができるので、発泡性清酒の補充量が少なくて済み、従来法に比べて歩留まりが大幅に向上する(約30%アップ)画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【実施例0066】
本発明の具体的な実施例2について図4に基づいて説明する。
【0067】
上述した実施例1の発泡性清酒の製造方法は、第2の混合清酒を瓶に充填し、この瓶内で二次発酵させて発泡性清酒を得る方法であるのに対し、本実施例の発泡性清酒の製造方法は、第2の混合清酒を貯蔵タンクに充填し、この貯蔵タンク内で二次発酵させて発泡性清酒を得るものである。
【0068】
以下、本実施例の発泡性清酒の製造方法について、図4に示すフローチャートに沿って前記工程ごとに具体的に説明する。なお、本実施例は、第2の混合清酒を得る第二混合工程までは実施例1と同様であるため、第二混合工程以前の説明を省略し、貯蔵タンクに充填する充填工程以降について説明する。
【0069】
<充填工程>
充填工程は、第2の混合清酒を二次発酵させるために、所定の容器に移し替える工程である。
【0070】
具体的には、この充填工程では、第2の混合清酒を貯蔵タンクに充填した後、貯蔵タンク内を密閉状態にしている。
【0071】
<二次発酵工程>
二次発酵工程は、貯蔵タンクに充填した第2の混合清酒を、貯蔵タンク内で二次発酵させる(発泡性清酒にする)工程である。
【0072】
具体的には、この二次発酵工程では、貯蔵タンク内に充填した第2の混合清酒を、15℃~25℃の温度環境下で10日~50日間発酵(二次発酵)させ、アルコール度数:10%~13%,日本酒度:-40~-20,酸度:2~4,アミノ酸度:0.5~1.5,炭酸ガス含有量:4GV~6GVの発泡性清酒を得ている。
【0073】
<にごり成分除去工程>
にごり成分除去工程は、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分を貯蔵タンクの底側に沈降、堆積させる工程である。
【0074】
具体的には、このにごり成分除去工程では、貯蔵タンクの温度環境を-5℃程度に設定した状態でにごり成分を貯蔵タンクの底側に沈降させ、貯蔵タンクの底上に堆積させている。なお、貯蔵タンクの底に堆積させたにごり成分は、適宜なタイミングで、貯蔵タンクの底部に設けられた排出口から貯蔵タンク外に排出する。
【0075】
<瓶詰工程>
瓶詰工程は、貯蔵タンク内でにごり成分が除去されたクリアな第2の混合清酒(発泡性清酒)を、瓶(具体的には、販売形態で使用する瓶)に瓶詰め(充填)する工程である。
【0076】
具体的には、この瓶詰工程では、貯蔵タンクに設けられた注出口から注出される発泡性清酒を直接、瓶に充填している。なお、貯蔵タンクの注出口は、貯蔵タンクの底からにごり成分が堆積する高さよりも上方に設けられており、貯蔵タンクから注出される発泡性清酒は、にごり成分が含まれないクリアな状態で注出される。
【0077】
<打栓工程>
打栓工程は、瓶内の炭酸が抜けないように、打栓により瓶を密閉する工程である。
【0078】
具体的には、本実施例の場合、コルク栓にて閉栓した後、ワイヤーフードを装着し、瓶を密閉状態にしている。
【0079】
<殺菌工程>
殺菌工程は、瓶内の発泡性清酒に対して殺菌処理を施す工程である。
【0080】
具体的には、この殺菌工程では、加熱殺菌処理を行っており、詳しくは、瓶詰状態のまま、65℃以上、5分以上の火入れ処理(例えば、65℃、10分))を行っている。
【0081】
以上のような各工程を含む本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0082】
本実施例は、実施例1同様、にごり成分である米分が少なく、且つ、酵母が多い第1の混合清酒と、上槽した第2の清酒を混合して第2の混合清酒を得、この第2の混合清酒を容器に充填し、この容器内で第2の混合清酒を二次発酵させるから、酵母不足による二次発酵不足が生じず、第2の混合清酒を適正に二次発酵させることができ、芳醇な甘さと爽やかな酸味を有し、日本酒感を有しながらも酒質バランスが良く飲み易い発泡性清酒を得ることができる。
【0083】
また、本実施例は、第2の混合清酒を得る際に第2の清酒と混合する第1の混合清酒中のにごり成分が非常に少ないから、二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)中のにごり成分も非常に少なく、したがって、貯蔵タンクの底に堆積するにごり成分の高さが低くなり、貯蔵タンク内のクリアな二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の量が増加する。よって、貯蔵タンクにおける二次発酵させた第2の混合清酒(発泡性清酒)の注出口の高さ位置を適宜な高さ位置にすることで、より多くの発泡性清酒を得ることができ、従来法に比べて歩留まりが大幅に向上する画期的な発泡性清酒の製造方法となる。
【0084】
なお、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。