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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147575
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】皮膚化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20231005BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/10
A61K8/39
A61K8/365
A61K8/55
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055150
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(72)【発明者】
【氏名】小金澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】清水 真希
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB432
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD052
4C083AD112
4C083AD242
4C083AD532
4C083AD642
4C083CC23
4C083CC24
4C083DD12
4C083EE06
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】使用後の肌にべたつきがなく、もっちり感を付与することができる皮膚化粧料組成物を提供する。
【解決手段】成分A:エタノール、成分B:ポリグリセリルモノアルキルエーテル、成分C:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物、成分D:乳酸、並びに成分E:水を含有し、成分Aの含有量が18~55質量%であり、
成分Bおよび成分Cの合計含有量が0.02~1.0質量%であり、成分Bおよび成分Cの合計含有量に対する成分Bの含有量[成分Bの含有量/成分Bおよび成分Cの合計含有量]が0.15~0.75であり、成分Dの含有量が0.005~0.5質量%であり、
成分Eの含有量が40~82質量%である皮膚化粧料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分A~Eを含有し、
成分Aの含有量が18~55質量%であり、
成分Bおよび成分Cの合計含有量が0.02~1.0質量%であり、
成分Bおよび成分Cの合計含有量に対する成分Bの含有量[成分Bの含有量/成分Bおよび成分Cの合計含有量]が0.15~0.75であり、
成分Dの含有量が0.005~0.5質量%であり、
成分Eの含有量が40~82質量%である皮膚化粧料組成物。
成分A:エタノール
成分B:ポリグリセリルモノアルキルエーテル
成分C:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物
成分D:乳酸
成分E:水
【請求項2】
シート基材と、前記シート基材に含浸された請求項1に記載の皮膚化粧料組成物とを含むシート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー、ボディーソープ、クレンジング、洗顔剤、拭き取り用シートなどの皮膚洗浄料が知られている。中でも拭き取り用シートは、皮脂と汗を除去し、洗顔や体洗浄後のようなさっぱり感を付与するために使用されるが、さっぱり感を付与するためには、エタノール、油性成分や界面活性剤を使用することが必要となる。
【0003】
一方、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルと特定のポリグリセリン脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤と水とを配合することで、使用部位の皮脂汚れまでをも除去できる皮脂洗浄用組成物などが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-43981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エタノールを高配合する拭き取り用シートを汗量の多い腋窩に使用した場合は、汗が揮発してさらっとした快適な使用感が得られるが、汗量の多くない部位に使用した場合は過度な脱脂とシートの摩擦により、パサつきを感じる不快な使用感となる場合がある。このパサつきを感じる不快感を解消するには、保湿成分を配合することで使用後の肌を保湿し、もっちり感を付与することが考えられるが、同時にべたつきが生じてしまうという問題がある。また、特定の界面活性剤を配合することで皮膚洗浄力を向上させることができるが、この場合も同時にべたつきが生じてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、使用後の肌にべたつきがなく、もっちり感を付与することができる皮膚化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、エタノールを高配合する皮膚化粧料組成物であっても、ポリグリセリルモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物、乳酸および水を所定量含有する皮膚化粧料組成物とすることで、皮脂除去力を損なうことなく、使用後の肌にべたつきがなく、もっちり感を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕下記の成分A~Eを含有し、
成分Aの含有量が18~55質量%であり、
成分Bおよび成分Cの合計含有量が0.02~1.0質量%であり、
成分Bおよび成分Cの合計含有量に対する成分Bの含有量[成分Bの含有量/成分Bおよび成分Cの合計含有量]が0.15~0.75であり、
成分Dの含有量が0.005~0.5質量%であり、
成分Eの含有量が40~82質量%である皮膚化粧料組成物。
成分A:エタノール
成分B:ポリグリセリルモノアルキルエーテル
成分C:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物
成分D:乳酸
成分E:水
〔2〕シート基材と、前記シート基材に含浸された〔1〕に記載の皮膚化粧料組成物とを含むシート化粧料、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚化粧料組成物は、使用後の肌にべたつきがなく、もっちり感を付与する効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、皮膚化粧料組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0011】
[皮膚化粧料組成物]
本発明の皮膚化粧料組成物は、エタノール、ポリグリセリルモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物、乳酸、並びに水を少なくとも含有する。なお、本明細書において、エタノールを「成分A」、ポリグリセリルモノアルキルエーテルを「成分B」、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物を「成分C」、乳酸を「成分D」、水を「成分E」とそれぞれ称する場合がある。
【0012】
すなわち、本発明の皮膚化粧料組成物は、成分A、成分B、成分C、成分D及び成分Eを少なくとも含有する。本発明の皮膚化粧料組成物は、上記成分A~E以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の皮膚化粧料組成物に含まれる各成分、例えば、成分B、成分C、及び他の成分などの各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0013】
[成分A]
成分Aはエタノールである。成分Aを高配合することにより、本発明の皮膚化粧料組成物は使用後のべたつきを抑制し、速乾性や清涼感を付与することができる。
【0014】
本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Aの含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、18~55質量%であり、好ましくは20~53質量%、より好ましくは35~52質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、使用後のべたつき抑制効果に優れ、速乾性や清涼感を付与することができる。また、使用後の肌にさっぱり感を付与することができる。
【0015】
[成分B]
成分Bは、ポリグリセリルモノアルキルエーテルである。成分Bを用いることにより、本発明の皮膚化粧料組成物は皮脂汚れの除去性に優れる。成分Bは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0016】
上記ポリグリセリルモノアルキルエーテルは、下記式(I)で表される化合物である。
R-(OCH-CH(OH)-CH)n-OH (I)
【0017】
式(I)中、Rはアルキル基であり、例えば、炭素数2~40、好ましくは炭素数4~30、より好ましくは炭素数6~20、さらに好ましくは炭素数8~16、特に好ましくは炭素数10~14の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。nは2以上の整数であり、好ましくは3以上の整数、より好ましくは4以上の整数である。nは、好ましくは20以下の整数、より好ましくは10以下の整数、さらに好ましくは5以下の整数である。
【0018】
成分Bとしては、例えばテトラグリセリルモノラウリルエーテル、デカグリセリルモノラウリルエーテル、エイコサグリセリルモノラウリルエーテルなどが挙げられる。中でも、皮脂汚れの除去性をより一層高める観点から、好ましくはテトラグリセリルモノラウリルエーテルである。
【0019】
成分Bは市販品を用いることもできる。成分Bの市販品としては、商品名「サンイーサーL-4」(ポリグリセリル-4ラウリルエーテル、太陽化学株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
[成分C]
成分Cは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸及びその塩からなる群より選択される1以上の化合物(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(塩)及び/又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸(塩))である。すなわち、成分Cは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である。成分Cは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸は、ポリオキシアルキレン残基と1価の飽和脂肪族アルコール残基とから構成されるエーテル(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)のリン酸エステルである。ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸は、ポリオキシアルキレン残基と1価の不飽和脂肪族アルコール残基とから構成されるエーテル(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル)のリン酸エステルである。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルにおけるポリオキシアルキレン残基を構成するオキシアルキレンとしては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等の炭素数2~4のオキシアルキレンなどが挙げられる。ポリオキシアルキレンとしては、中でも、ポリオキシエチレンが好ましい。上記ポリオキシアルキレンは、一種のみのオキシアルキレンを含んでいてもよいし、二種以上のオキシアルキレンを含んでいてもよい。また、ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレンの平均付加モル数は、例えば2~25、好ましくは2~20である。
【0022】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを構成する1価の飽和脂肪族アルコール残基は、1価の飽和脂肪族炭化水素基を含む。1価の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ラウリル基、セチル基、ステアリル基等の炭素数10~36(好ましくは炭素数12~18)の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記1価の飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
【0023】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルを構成する1価の不飽和脂肪族アルコール残基は、1価の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。1価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、オレイル基等の炭素数10~36(好ましくは炭素数12~18)の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記1価の不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸は、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のいずれであってもよく、これらのうちの2以上の混合物であってもよい。
【0025】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸塩としては、例えば、無機塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。無機塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アルミニウム塩;亜鉛塩等が挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、例えば、アルギニン塩、リジン塩等が挙げられる。
【0026】
成分Cとしては、例えば、ラウレス-2リン酸、ラウレス-4リン酸、ジラウレス-10リン酸、トリラウレス-4リン酸等のポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸;イソラウレス-4リン酸等のポリオキシアルキレンイソラウリルエーテルリン酸;セテス-10リン酸、セテス-20リン酸、トリセテス-5リン酸等のポリオキシアルキレンセチルエーテルリン酸; ステアレス-2リン酸、ステアレス-3リン酸等のポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸;トリセテアレス-4リン酸等のポリオキシアルキレンセテアリルエーテルリン酸;オレス-3リン酸、オレス-4リン酸、オレス-5リン酸、オレス-7リン酸、オレス-8リン酸、オレス-10リン酸、オレス-20リン酸、ジオレス-8リン酸等のポリオキシアルキレンオレイルエーテルリン酸;(C12-15)パレス-3リン酸、(C12-15)パレス-6リン酸、(C12-15)パレス-9リン酸、ジ(C12-15)パレス-2リン酸、ジ(C12-15)パレス-4リン酸、ジ(C12-15)パレス-6リン酸、ジ(C12-15)パレス-8リン酸、ジ(C12-15)パレス-10リン酸、トリ(C12-15)パレス-2リン酸、トリ(C12-15)パレス-8リン酸等のポリオキシアルキレンアルキル(C12-15)エーテルリン酸;及びこれらの塩などが挙げられる。
【0027】
成分Cとしては、中でも、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアルキル(C12-15)エーテルリン酸、ポリオキシアルキレンセテアリルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンセチルエーテルリン酸、及びこれらの塩が好ましく、より好ましくは、ラウレス-4リン酸、ジラウレス-10リン酸、トリラウレス-4リン酸、(C12-15)パレス-3リン酸、ジ(C12-15)パレス-2リン酸、ジ(C12-15)パレス-4リン酸、ジ(C12-15)パレス-6リン酸、ジ(C12-15)パレス-8リン酸、ジ(C12-15)パレス-10リン酸、トリ(C12-15)パレス-2リン酸、トリ(C12-15)パレス-8リン酸、トリセテス-5リン酸、トリセテアレス-4リン酸、オレス-3リン酸、オレス-5リン酸、オレス-7リン酸、オレス-10リン酸、オレス-20リン酸、ジオレス-8リン酸、及びこれらの塩である。
【0028】
本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Bおよび成分Cの合計含有量は、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、0.02~1.0質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、皮脂汚れの除去性と、使用後の肌のべたつきの抑制性の両方が優れる。
【0029】
本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Bおよび成分Cの合計含有量に対する成分Bの含有量[成分Bの含有量/成分Bおよび成分Cの合計含有量(質量比)]は、0.15~0.75であり、好ましくは0.17~0.70、より好ましくは0.2~0.6である。上記質量割合が0.15以上であることにより、皮脂汚れの除去性に優れる。上記質量割合が0.75以下であることにより、皮脂汚れの除去性に優れつつ、使用時や使用後の肌のべたつきを抑制することができる。
【0030】
[成分D:乳酸]
成分Dは、乳酸である。成分Dを特定量配合することにより、使用後の肌のパサつきを抑制し、もっちりとした使用感を付与することができる。
【0031】
本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Dの含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、0.005~0.5質量%であり、好ましくは0.01~0.3質量%、より好ましくは0.05~0.2質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、使用後の肌のパサつきを抑制し、もっちりとした使用感を付与することができる。
【0032】
[成分E:水]
成分Eは水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Cの含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、40~82質量%が好ましく、より好ましくは45~75質量%である。
【0033】
[その他の成分]
本発明の皮膚化粧料組成物は、上記成分A~E以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、例えば、油脂、多価アルコール、高級アルコール、エステル油、植物油、炭化水素油等の油性成分;ミツロウ、コメヌカロウ、ラノリン、ヒマワリ種子ロウ、カルナウバロウ等のロウ;高級脂肪酸(塩)等の乳化剤;ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の成分B及び成分C以外の界面活性剤;多価アルコール;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;金属イオン封鎖剤;粉体;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;中和剤;殺菌剤;制汗剤;消臭剤;酸;アルカリなどが挙げられる。
【0034】
本発明の皮膚化粧料組成物は、特に限定されないが、公知乃至慣用の方法により製造することができる。本発明の皮膚化粧料組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌する方法などで、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚化粧料組成物は、皮膚(肌)に塗布するために用いられる化粧料組成物である。本発明の皮膚化粧料組成物を塗布する部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元など)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。
【0036】
本発明の皮膚化粧料組成物は、特に限定されないが、皮脂除去力を損なうことなく、使用後の肌にべたつきがなく、もっちり感を付与する効果に優れるため、皮膚洗浄料として用いることが好ましい。上記皮膚洗浄料としては、クレンジング化粧料、洗顔料(使用後に洗い流して用いられる洗顔料)、ボディ洗浄料、フェイス用やボディ用の拭き取り用のシート化粧料などが挙げられる。中でも、洗顔料、シート化粧料として用いることがより好ましい。
【0037】
上記皮膚洗浄料の性状としては、固形状、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などが挙げられる。また、シート基材に含浸させたシート化粧料であってもよい。固形状、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状の皮膚洗浄料は、通常使用後洗い流して使用される。一方、シート化粧料とした場合、使用後は通常洗い流さなくてもよい。
【0038】
[使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料]
本発明の皮膚化粧料組成物の一の好ましい使用形態は、使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料である。上記使用形態においては、本発明の皮膚化粧料組成物は、それ自体が、使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料である。使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料としては、例えば、使用後に洗い流して用いられる洗顔料が好ましい。
【0039】
本発明の皮膚化粧料組成物が使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料である場合、本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Bと成分Cの含有量(合計の含有量)は、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、0.5~5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0040】
上記使用後に洗い流して用いられる皮膚洗浄料は、さらに、高級脂肪酸及び/又はその塩(高級脂肪酸(塩))や、成分B及び成分C以外の界面活性剤などを含んでいてもよい。
【0041】
上記高級脂肪酸(塩)(高級脂肪酸及び/又はその塩)としては、高級脂肪酸及び高級脂肪酸塩のうちのいずれか一方又は両方である。上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数10~22の高級脂肪酸;オリーブ油、ヤシ油、パーム油、綿実油等の植物性油脂;魚油、牛脂等の動物性油脂等が挙げられる。
【0042】
上記高級脂肪酸塩における塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。上記高級脂肪酸塩は、予め塩に調製された高級脂肪酸塩が配合されたものであってもよいし、高級脂肪酸及び塩基としてそれぞれ配合され、皮膚洗浄料を製造する過程で高級脂肪酸及び塩基から形成されたものであってもよい。
【0043】
[シート化粧料]
本発明の皮膚化粧料組成物の他の好ましい使用形態は、シート化粧料である。本発明の皮膚化粧料組成物をシート基材に含浸することによりシート化粧料が得られる。すなわち、上記シート化粧料は、シート基材と、上記シート基材に含浸された本発明の皮膚化粧料組成物とを含む。なお、本明細書では、上記シート化粧料を「本発明のシート化粧料」と称する場合がある。本発明のシート化粧料は、シート基材及び本発明の皮膚化粧料組成物以外の構成成分を含んでいてもよい。上記シート化粧料としては、例えば、顔用のシート化粧料(フェイスシート)が好ましい。
【0044】
本発明の皮膚化粧料組成物がシート化粧料に用いられる場合、なお、本発明の皮膚化粧料組成物中の成分Bと成分Cの含有量(合計の含有量)は、本発明の皮膚化粧料組成物100質量%に対して、0.02~1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1~0.7質量%である。
【0045】
上記シート基材は、本発明の皮膚化粧料組成物が含浸可能なシート状の支持体である。
上記シート基材としては、織布、不織布が好ましい。上記シート基材は、積層体(即ち、積層シート)であってもよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、織布と不織布の積層体などであってもよい。上記シート基材は、使用感、加工のしやすさ等の観点から、不織布を含むシート基材であることが好ましく、より好ましくは不織布である。
【0046】
上記不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。
【0047】
上記織布や不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維などが挙げられる。上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター、カボックなどが挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)などが挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。上記繊維は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、二種以上の上記繊維からなる混紡繊維を用いてもよい。
【0048】
上記シート基材は、エンボス加工処理が施されていてもよい。上記エンボス加工処理としては、特に限定されず、例えば、裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式などが挙げられる。
【0049】
上記シート基材の目付は、特に限定されないが、20~100g/mが好ましく、より好ましくは25~80g/mである。目付が上記範囲内であると、肌を拭く際に、シート基材が丸まらず使用感に優れる。また、シート化粧料の単位面積あたりの皮膚化粧料組成物の含浸量が多くなる。これにより、肌の広範囲に使用する場合にも十分な効果が得られ、特にボディ用のシート化粧料等として用いる場合の使用性がより一層向上するため好ましい。
【0050】
上記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。また、上記シート基材は市販品を用いることもできる。上記シート基材の市販品としては、特に限定されないが、例えば、商品名「RH」、商品名「AS-40」(以上、ダイワボウポリテック株式会社製)、商品名「TCF404WJ」(フタムラ化学株式会社製)、商品名「コットエース A060S/A18」、商品名「コットエース C030S/A18」(以上、ユニチカ株式会社製)、商品名「クラフレックスJP2445B019」、商品名「クラフレックスJP0509B056」、商品名「クラフレックスJP4250H023」(以上、株式会社クラレ製)、商品名「ベンリーゼJP254」、商品名「ベンリーゼRE75K」(以上、旭化成株式会社製)、商品名「サンモアSP8740」、商品名「サンモアSP8748」(以上、三昭紙業株式会社製)、商品名「M1-30-2PE」(伊野紙株式会社製)などが挙げられる。
【0051】
本発明のシート化粧料における、上記シート基材に対する含浸された本発明の皮膚化粧料組成物の質量割合は、特に限定されないが、上記シート基材100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、より好ましくは150~700質量部である。
【0052】
本発明のシート化粧料の形状はシート状である。これにより、皮膚(肌)を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状などが挙げられる。中でも、生産性、使用性や梱包性の観点からは四角形が好ましい。本発明のシート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型が施されていてもよい。本発明のシート化粧料のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、包装性などの観点から、100~3000cmが好ましく、より好ましくは150~1000cmである。
【0053】
本発明のシート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。本発明のシート化粧料は1枚ごとに個別包装されていてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚の本発明のシート化粧料が同一包装容器内に収納されていてもよい。1つの包装容器に収納される本発明のシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、2~50枚(/1包装容器)が好ましい。本発明のシート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0054】
上記包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器などが挙げられる。上記包装容器は、本発明の皮膚化粧料組成物の揮発を抑制できるものが好ましい。上記包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂;アルミニウム等の金属等が挙げられる。上記包装容器としては、軽量であり優れた揮発防止効果を有する観点から、表面に金属層が積層又は蒸着された樹脂製の包装容器(特に、包装袋)が好ましく、より好ましくは表面にアルミニウム蒸着された樹脂製の包装袋である。
【0055】
本発明のシート化粧料は、上記シート基材に本発明の皮膚化粧料組成物を含浸させることにより製造することができる。シート基材に本発明の皮膚化粧料組成物を含浸させる方法は、特に限定されず、例えば、折りたたまれた状態のシート基材に本発明の皮膚化粧料組成物を注入し含浸させる方法、シート基材に本発明の皮膚化粧料組成物をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に本発明の皮膚化粧料組成物を含浸させる方法、本発明の皮膚化粧料組成物中にシート基材を浸す方法などが挙げられる。
【0056】
本発明のシート化粧料は、皮膚(肌)を拭くために用いられる。本発明のシート化粧料により拭き取る部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。本発明のシート化粧料としては、例えば、シート洗顔料(洗顔シート)、ボディ用拭き取りシート、ウェットティッシュ、使い捨ておしぼり、お尻拭きシート、メイク落としシートなどが挙げられる。中でも、本発明のシート化粧料は、皮脂汚れの除去性に優れ、使用後の肌のべたつきを抑制することができるため、顔面拭き取り用、ボディ拭き取り用に特に好ましく用いられる。拭き取った後は、肌に塗布された本発明の皮膚化粧料組成物を洗い流してもよいし、洗い流さなくてもよい。なお、本発明のシート化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0057】
本発明のシート化粧料の使用方法は、特に限定されないが、肌上の汚れ、古い角質や皮脂等を拭き取る方法が挙げられる。本発明のシート化粧料は、肌上を拭いて使用するだけで、汚れ等が拭きとられるだけでなく、使用後の肌のべたつきを抑制することができるため、肌上を拭いて使用する拭き取り用シート化粧料とすることが好ましい。
【実施例0058】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0059】
実施例及び比較例
表1に記した各成分を用い、実施例及び比較例の各皮膚化粧料組成物を常法により調製した。さらに、上記皮膚化粧料組成物を、目付40g/mのスパンレース不織布に、不織布100質量部に対して皮膚化粧料組成物を290質量部の割合で含浸させ、実施例及び比較例の各試験用シート化粧料(シートサイズ:14cm×20cm、長方形)を作製した。
【0060】
(評価)
各試験用シート化粧料について以下の通り評価した。評価結果は表1に記載した。
【0061】
(1)べたつきのなさ
実施例及び比較例で得られた各シート化粧料1枚で、片方の前腕の内側を20cm幅で3往復するように拭き取り、拭き取り部分について、拭き取り直後の「べたつきのなさ」及び「もっちり感」を評価した。なお、両評価は3名の専門評価員によって行い、下記判定基準に従って協議した結果を評価結果とした。上記評価は、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
【0062】
[べたつきのなさの判定基準]
◎(優良):べたつきを全く感じない
○(良好):不快でない程度のべたつきを感じる
×(不良):不快なべたつきを感じる
【0063】
[もっちり感の判定基準]
◎(優良):心地よいもっちり感を感じる
○(良好):少しもっちり感を感じる
×(不良):パサつきを感じる
【0064】
【表1】
【0065】
さらに、以下に、本発明の皮膚化粧料組成物の処方例を示す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】