(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147580
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】簡易建屋
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20231005BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20231005BHJP
D21H 19/18 20060101ALI20231005BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20231005BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/343 Q
D21H19/20
D21H19/18
D21H27/00 E
E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055157
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305013770
【氏名又は名称】日本紙通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100163234
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 順子
(72)【発明者】
【氏名】大根田 真也
(72)【発明者】
【氏名】龍田 博之
【テーマコード(参考)】
2E141
4L055
【Fターム(参考)】
2E141AA08
2E141BB01
2E141CC04
4L055AA02
4L055AA11
4L055AC06
4L055AC09
4L055AG08
4L055AH09
4L055AH11
4L055AH23
4L055AJ02
4L055BE08
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA14
4L055GA47
(57)【要約】
【課題】紙基材を使用し、防水性を有し、使用後のリサイクル性が高く、軽量な簡易建屋を提供する。
【解決手段】屋外と屋内を仕切る部材を有し、当該部材の少なくとも1つが、紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面に設けられた塗膜とを含む面材であり、当該面材の塗膜を有する面のコッブ吸水度が、30分で50g/m2以下である、簡易建屋である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外と屋内とを仕切る部材を有し、
前記部材の少なくとも1つが、紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に設けられた塗膜とを含む面材であり、
前記面材の前記塗膜を有する面のコッブ吸水度が、30分で50g/m2以下である、簡易建屋。
【請求項2】
屋根部材と、壁面部材及び/または床面部材とを、前記部材として有する、請求項1に記載の簡易建屋。
【請求項3】
前記塗膜が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、ワックスとを含む、請求項1または2に記載の簡易建屋。
【請求項4】
前記面材の前記塗膜が、屋外に面する、請求項1~3のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項5】
前記紙基材の紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項6】
前記紙基材のコッブ吸水度が、2分で50g/m2以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項7】
前記紙基材の透湿度が、1500g/m2・24h以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項8】
前記紙基材が単層紙または多層抄き板紙である、請求項1~7のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項9】
前記面材の紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度が、R8以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項10】
前記面材の透湿度が、500g/m2・24h以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項11】
前記塗膜の平均膜厚が、5.5~20μmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項12】
前記面材が、中芯をさらに有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の簡易建屋。
【請求項13】
前記面材が、片面段ボールである、請求項12に記載の簡易建屋。
【請求項14】
前記面材が、両面段ボールである、請求項12に記載の簡易建屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易建屋に関し、特に防水性を有する紙製の組み立て式簡易建屋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャンプや屋外のイベント会場等において、休息をとるための簡易建屋が使用されており、合成繊維等の材料による布地を用いたテントが広く使用されている。
しかしながら、上記布地と、フレーム及び杭とをもって張設するテントは、組み立てにハンマー等の補助道具を必要とし、また労力も要し、さらに価格も高価である。
一方、近年プラスチック等の石油由来の材料を極力回避し、生物由来の材料への転換が模索されている。また、キャンプや屋外でのイベント会場において、しばしば使用後のテントが放棄され、ゴミとして問題になることがある。
【0003】
上記簡易建屋として、布地、フレーム及び杭を必要とするテントの代わりに、段ボール製の組み立て式簡易建屋が知られている。例えば、特許文献1には、構成部を摺動可能とすることで長さ方向の長さを変えられる段ボール製の非常用仮小屋が示されている。特許文献2には、段ボールシート用い、従来の段ボール製の簡易建屋より防水性及び機械的強度等を改善し、繰り返し使用を可能とした折畳式可搬居住手段が示されている。また、これらのような簡易建屋は、キャンプ等のアウトドアレジャーのみならず、災害時の非常用建屋としても使用されていることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-214519号公報
【特許文献2】特開2002-4427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記簡易建屋は、軽くて運搬が容易であることが好ましく、また、屋外で使用する以上、雨に耐えうる防水性が必要とされるため、防水性を有する紙を使用した簡易建屋が望ましい。
しかしながら、特許文献1の非常用仮小屋は段ボール製ではあるものの、防水性について、防水シート等を被せるか、非常用仮小屋を防水加工することが記載されているのみであり、防水性を持たせるためには建屋材料以外の道具または材料が必要となる。
特許文献2の折畳式可搬居住手段は、段ボールシートからなり、従来の段ボール製簡易建屋より防水性を改善したとあるものの、段ボールシートの表面或は表裏両面、或は端面に防水用の合成樹脂を被覆一体化する、または、防水剤を含浸させて防水性を改善することが記載されているのみである。
また、特許文献1及び2には、使用される段ボール材料の防水性能について何ら記載もされていない。
【0006】
特許文献2に記載される、紙に合成樹脂を被覆一体化する方法として、樹脂被膜でラミネートする方法や樹脂を含浸加工する方法が広く知られているが、ラミネート加工のため製造工程、あるいは含浸加工するための設備が煩雑となるほか、使用後に古紙として回収使用する際の離解性が著しく悪く、リサイクル性が悪い。
【0007】
以上から、本発明は、部材として紙基材を有し、軽量で防水性に優れ、使用後のリサイクル性が良好である簡易建屋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、下記本発明により当該課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 屋外と屋内とを仕切る部材を有し、前記部材の少なくとも1つが、紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に設けられた塗膜とを含む面材であり、前記面材の前記塗膜を有する面のコッブ吸水度が、30分で50g/m2以下である、簡易建屋。
[2] 屋根部材と、壁面部材及び/または床面部材とを、前記部材として有する、上記[1]に記載の簡易建屋。
[3] 前記塗膜が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、ワックスとを含む、上記[1]または[2]に記載の簡易建屋。
[4] 前記面材の前記塗膜が、屋外に面する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[5] 前記紙基材の紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[6] 前記紙基材のコッブ吸水度が、2分で50g/m2以下である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[7] 前記紙基材の透湿度が、1500g/m2・24h以上である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[8] 前記紙基材が単層紙または多層抄き板紙である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[9] 前記面材の紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度が、R8以上である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[10] 前記面材の透湿度が、500g/m2・24h以下である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[11] 前記塗膜の平均膜厚が、5.5~20μmである、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[12] 前記面材が、中芯をさらに有する、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の簡易建屋。
[13] 前記面材が、片面段ボールである、上記[12]に記載の簡易建屋。
[14] 前記面材が、両面段ボールである、上記[12]に記載の簡易建屋。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部材として紙基材を有し、軽量で防水性に優れ、使用後のリサイクル性が良好である簡易建屋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る簡易建屋を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る簡易建屋の展開図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る簡易建屋の一利用方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(簡易建屋)
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と略記することがある)に係る簡易建屋は、屋外と屋内とを仕切る部材を有し、当該部材の少なくとも1つが、紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面に設けられた塗膜とを含む面材であり、当該面材の当該塗膜を有する面のコッブ吸水度が、30分で50g/m2以下であることを要する。部材として、紙基材と塗膜とを含む面材を用いることで、使用後の処分が容易となる。具体的には、塗膜層を有する紙は細かく溶解できるとともに、該塗膜層は紙から剥がれやすいため、例えばパルパーで古紙を溶解する際に、ラミネートフィルムによって防水加工した場合と比較して、回収時の離解性に優れ、リサイクルが容易である。
【0013】
本発明において、「部材」とは、例えば、屋根部材、壁面部材、床面部材等の簡易建屋の構成要素を指す。
本発明の一態様としての簡易建屋1は、例えば、
図1に示すように、部材として、屋根部材10及び11、壁面部材20及び21ならびに床面部材30を有するものである。
【0014】
本実施形態の簡易建屋は、通常、部材として屋根部材を有しており、屋根部材の他に壁面部材及び/又は床部材を有していてもよい。
該屋根部材は、地面よりも上部に位置し、他の部材と接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。屋根部材は、1つのみでもよく、例えば
図1に示すように、複数あってもよい。屋根部材は、防水性の観点から、地面に対して傾斜があることが好ましい。傾斜があることにより、雨水を部材上に溜めないようにすることができる。また、出入口または通気口としての穴または扉を設けてもよく、開閉式としてもよい。
【0015】
本実施形態の簡易建屋は、部材として壁面部材を有していてもよい。該壁面部材は、略鉛直に設置される。部材として屋根部材を有する場合は、屋根部材と接続されており、床面部材を有する場合は、床面部材と接続されていてもよい。壁面部材は、1つのみでもよく、複数あってもよい。また、出入口または換気口としての穴または扉を設けてもよい。
【0016】
本実施形態の簡易建屋は、部材として床面部材を有していてもよい。該床面部材は地面と接している。部材として屋根部材を有する場合は、屋根部材と接続されていてもよく、壁面部材を有する場合は、壁面部材と接続されていてもよい。床面部材は、1つのみでもよく、複数あってもよい。
【0017】
簡易建屋の1つの部材は、1つの面材からなることが好ましいが、2つ以上の面材を組み合わせてもよい。
上記面材同士は、糊、テープ、接着剤、ホットメルト、紐、ボルト・ナット、画鋲、ステープラー、釘、ネジ、ハドメまたは切込み・嵌め合い等による公知の材料及び方法で接続することができる。軽量性、ならびに使用後のリサイクル性及び処理性の観点から、糊、接着剤、紐(より好ましくは紙紐)、切込み・嵌め合いが好ましい。
【0018】
簡易建屋における部材同士の接続方法としては、公知の方法を挙げることができる。軽量性、ならびに使用後のリサイクル性及び処理性の観点から、糊、接着剤、紐(より好ましくは紙紐)、切込み・嵌め合いが好ましい。組み立て時の簡易性の観点から、例えば、
図2に示すような切込み・嵌め合いにより接続される形態が、他の材料を必要とせずより好ましい。接する部材同士がすべて接続されている必要はなく、一部の部材とのみ接続されていてもよく、例えば、一部の部材を開閉式の扉とすることもできる。また、1つの面材が、折り曲げられるなどして、2つ以上の部材を構成してもよい。
【0019】
部材は、骨組みを用いて補強してもよい。骨組みとしては、公知の材料を利用することができ、鉄製、塩ビ製もしくは紙製等の筒材、紐、木材、鉄骨、厚紙、炭素材料または石材等の材料を利用できる。軽量性、ならびに使用後のリサイクル性及び処理性の観点から、紙製の筒材または紐を用いることが好ましい。また、例えば、
図3に示すように、屋根部を開閉式にし、紙管等により支えられるようにすることで、就寝用のみならず、キャンプやイベント会場等において多目的に活用することができる。本発明においては、
図3に示す態様において、屋根部材11と、地面との間の空間も屋内と解することができる。
【0020】
(面材)
本実施形態の面材は、紙基材と、当該基材の少なくとも一方の面に設けられた塗膜とを含み、当該塗膜を有する面のコッブ吸水度は、30分で50g/m2以下であり、好ましくは40g/m2以下であり、より好ましくは30g/m2以下である。これにより、本発明の面材自体が防水性を持ち、面材以外の、例えば、防水シート等の材料を必要とせず、また、組み立て後の簡易建屋自体の防水加工を必要としない。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P 8140:1998に規定されたコッブ法に準拠して、100mlの蒸留水を塗膜に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積当たりの質量を測定することにより測定できる。
【0021】
本実施形態の簡易建屋において、面材の塗膜は屋外に面していることが好ましい。塗膜が屋外に面していることにより、簡易建屋の防水性を向上させることができる。また、屋内にも塗膜が面していてもよい。塗膜が屋内に面していることにより、屋内で水をこぼした場合や、屋内に人が居ることで自然に発生する湿気に対する防水性及び防湿性を向上させることができる。
【0022】
本実施形態の面材は、中芯をさらに有する段ボールであってもよく、片面段ボール及び両面段ボールのいずれであってもよい。片面段ボールである場合、塗膜、紙基材、中芯の順に構成されることが好ましい。両面段ボールである場合、面材、中芯、面材または紙基材の順に構成されることが好ましく、当該面材における塗膜は中芯と接する面とは反対側の面に有していることがより好ましい。面材が中芯を有することで、中芯を有しない場合よりも面材の強度及び剛度が高くなり、片面段ボールであれば丸めて運搬することができ、また、両面段ボールであればさらに強度及び剛度を高くすることができ、簡易建屋としての形状が安定しやすくなる。
【0023】
面材の坪量は、例えば、30~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、面材の坪量は、例えば、30~350g/m2とすることができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、面材の坪量は、100~700g/m2とすることができる。
【0024】
本実施形態の面材の撥水度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠して測定することができ、R8以上が好ましく、R9以上がより好ましい。これにより、本発明の簡易建屋の防水性を向上させることができる。
【0025】
本実施形態の面材の透湿度は、500g/m2・24h以下が好ましく、300g/m2・24h以下がより好ましく、100g/m2・24h以下がさらに好ましく、50g/m2・24h以下が最も好ましい。本発明において透湿度は、JIS Z 0208:1976に準拠して、面材の塗膜側から測定することができ、数値が小さいほど、防湿性が優れていることを意味する。
【0026】
(紙基材)
本実施形態の紙基材は、単層紙であってよく、2層以上の紙層を有する多層抄き板紙であってもよい。また、紙基材の坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、坪量は10~300g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、紙基材がクラフト紙の場合、坪量を30~250g/m2の範囲で設定することができる。また、2層以上を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、段ボールのライナの場合、坪量を80~600g/m2の範囲で設定することができる。
【0027】
本実施形態の紙基材の撥水度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠して測定することができ、R4以上が好ましく、R6以上がより好ましく、R8以上がさらに好ましい。紙基材の撥水度がR4以上であると、紙基材に塗工を行った場合、塗料に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することがなく、面材の強度及び剛度低下を抑制することができる。
【0028】
本実施形態の紙基材のコッブ吸水度は、2分で5g/m2以上が好ましく、7g/m2以上がより好ましく、10g/m2以上がさらに好ましい。また、塗工を行う面のコッブ吸水度は、2分で50g/m2以下が好ましく、40g/m2以下がより好ましく、30g/m2以下がさらに好ましい。本実施形態においては、ワックス等の撥水剤や、樹脂を含むニス等の防水性を有しないコーティング剤(目止め剤)等を塗工するなどして紙基材のコッブ吸水度を調整することができる。紙基材のコッブ吸水度が上記範囲にあることにより、防水塗料の溶媒中に含まれた水分の過剰な浸透による強度低下を防止し、防水塗料中の固形分が紙層表面に滞留して確実な被覆が行われることにより、防水性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態の紙基材の透湿度は、1500g/m2・24h以上が好ましく、1750g/m2・24h以上がより好ましく、2000g/m2・24h以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、5000g/m2・24h以下が好ましく、4500g/m2・24h以下がより好ましく、4000g/m2・24h以下がさらに好ましい。紙基材の透湿度が上記範囲にあることにより、乾燥工程において効率よく塗料中の水分を紙層側へ蒸発させることから、紙基材を均一に塗膜で被覆することができ、防水性が向上しやすくなる。
【0030】
紙基材の物性は特に制限されず、例えば、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強さが100~350N・m2/g、比破裂強さが2.80~5.00kPa・m2/gとなるように設定することができる。
なお、各物性は、それぞれ以下の方法で測定することができる。
縦伸び及び横伸びは、JIS P 8113:2006に準拠し、抄紙方向と直交する横方向、抄紙方向に対して平行な縦方向の破断伸びをそれぞれ測定する。
比圧縮強さは、JIS P 8126:2005の規定する紙及び板紙の圧縮強さ試験方法(リングクラッシュ法)に準拠し、抄紙方向と直交する横方向における圧縮強さを測定し、この測定値から比圧縮強さを算出する。
比破裂強さは、JIS P 8131:2009の規定する板紙のミューレン高圧形試験機による破裂強さ試験方法に準拠して測定した破裂強さの値を、坪量で除した値を比破裂強さとする。
【0031】
紙基材の点滴吸油度は、5秒以上が好ましく、7秒以上がより好ましく、10秒以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、80秒以下が好ましく、75秒以下がより好ましく、70秒以下がさらに好ましい。点滴吸油度が上記の範囲であることにより、塗料に含まれるワックスが紙表面にとどまり紙層に浸み込みにくくなることから、紙基材の防水性を向上させることができる。紙基材の点滴吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数を3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間によって評価することができる。
【0032】
紙基材の王研式平滑度は、12秒以上が好ましく、13秒以上がより好ましく、15秒以上がさらに好ましく、17秒以上がよりさらに好ましい。上限は特に限定されないが、100秒以下が好ましく、90秒以下がより好ましく、80秒以下がさらに好ましく、70秒以下が最も好ましい。紙基材の塗工を行う面の平滑度が上記範囲にあることにより、紙基材を均一に塗料で被覆することができ、防水性が向上する。
【0033】
紙基材の水接触角は、75度以上が好ましく、77度以上がより好ましい。水接触角が上記範囲にあることにより、塗料中の水分が紙基材へ過剰に浸透することを防ぎ、面材の強度及び剛度低下を防ぐことができる。
【0034】
紙基材の原料パルプとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラ等から得られた非木材パルプを挙げることができる。
【0035】
本実施形態の紙基材は、古紙パルプを含有することができる。古紙パルプを含有する場合、紙基材が単層紙であれば、全パルプに占める古紙パルプの配合率を、10質量%以上、25質量%以上、50質量%以上、または、70質量%以上の範囲にすることができる。また、100質量%にすることもできる。紙基材が多層抄き板紙であれば、1層あたりの古紙パルプの配合率を上記範囲にすることができる。この場合、目的に応じて各層における古紙パルプの配合率を異なるものにすることができ、また、古紙パルプを含む層と含まない層との双方を含むこともできる。以上により、効率的に古紙を本発明の簡易建屋として再利用することができる。
【0036】
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に印刷された古紙、及び筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)等を使用することができる。
【0037】
紙基材の抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添することができ、さらに、強度を向上させるために紙力増強剤を内添することができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤等が挙げられる。撥水剤としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂ワックス等が挙げられる。紙力増強剤としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、変性でん粉等が挙げられる。本実施形態においては、ワックスを含む撥水剤を外添することが好ましく、パラフィン系ワックスを含む撥水剤を外添することがより好ましい。撥水剤を外添する場合の撥水剤の塗工量は、3g/m2以下が好ましく、2g/m2以下がより好ましい。
【0038】
また、必要に応じて紙基材に公知の填料を内添させることができ、無機填料や有機填料を制限なく使用することができる。無機填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等が挙げられる。有機填料としては、例えば、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0039】
さらに、紙基材の品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾル等を内添して使用してもよい。
【0040】
紙基材は、公知の抄紙方法で製造することができる。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ハイブリッドフォーマー抄紙機、オントップフォーマー抄紙機、丸網抄紙機等を用いて製造することができるが、これらに限定されない。
【0041】
(塗膜)
本実施形態の塗膜は、合成樹脂及びワックスを含むことが好ましく、当該合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、スチレン系樹脂及び/またはアクリル系樹脂であることがさらに好ましい。
【0042】
塗膜に含有され得るスチレン系樹脂は、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂が好ましく、スチレン系単量体の重合体のみからなる樹脂であってもよい。
【0043】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等が挙げられる。スチレン系樹脂は、これらのスチレン系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってもよい。
【0044】
スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上の組み合わせを用いてもよい。
【0045】
塗膜に含有され得るアクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなる樹脂であってもよい。
【0046】
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル等を挙げることができる。アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってもよい。
【0047】
アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上の組み合わせを用いてもよい。
【0048】
塗膜が含有するワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油等の合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上の組み合わせを用いてもよい。特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好ましい。
【0049】
本実施形態において、塗膜は、防水性を損なわない範囲で顔料を含有してもよい。この場合、顔料を有しない場合と比較して、1%以上白色度が高くなる量で含むことが好ましい。このような顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリロナイト等の無機顔料を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上の組み合わせを用いてもよい。これらの顔料の中で、特に、粒子が扁平な形状であるカオリン、炭酸カルシウム、マイカは、防水性を阻害しにくいため特に好適である。このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。塗膜における顔料の含有量は、5~40質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましい。顔料の含有量が5質量%以上であれば、白色度の向上効果が十分に得られ、40質量%以下であれば、合成樹脂成分が有する塗膜の防湿性、防水性の機能に悪影響を与えない。
【0050】
本実施形態において、塗膜は、防水性を損なわない範囲で保温材(断熱材)を含有してもよい。塗膜が当該保温材を含むことにより、簡易建屋内の保温性(断熱性)を良好に保つことができる。保温材としては、特に限定されないが、熱膨張性マイクロカプセルもしくは中空粒子を用いることができる。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂の外殻を持ち、内部に膨張剤で
ある低沸点炭化水素を内包したものである。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリル酸またはその塩、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル等を、低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ネオペンタン、プロパン、プロピレン、ブテン、メタンのハロゲン化物(塩化メチル、メチレンクロリド等)、テトラアルキルシラン等を例示することができるが、これらに限定されない。
中空粒子としては、固体の外殻を持ち、その内部が空隙となっている(いわゆるバルーン構造を有する)微細粒子を用いることができる。外殻を構成する物質としては、無機元素もしくは無機化合物であることが好ましく、例えば、アルミニウムまたはその化合物、ケイ素またはその化合物、アルカリ金属またはその化合物、2族元素またはその化合物、4族元素またはその化合物、ホウ素またはその化合物等の1種以上を用いることができる。保温効果を向上させる効果を高めるため、空隙部を真空状態にした真空バルーン構造の中空粒子を使用することが好ましい。中空粒子の平均粒子径および粒子の外殻の平均厚さは特に限定されず、例えば、平均粒子径が5~200μm、外殻部の平均厚さが0.1~20μmの中空粒子を使用することができる。
【0051】
また、塗膜は、その他添加剤として、例えば、バインダー、安定剤、消泡剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、着色剤等を含有させてもよい。
【0052】
塗膜は、上記のような成分を含有する塗料を紙基材上に塗工し、乾燥することにより形成することができる。塗料を塗布するに際して、より均一に塗布することができるよう粘度調整等の目的で、溶媒を用いることもできる。当該溶媒は、塗料が均一に分散、溶解するものであれば特に限定されない。塗料の塗工量は、面材の防水性及び製造コストの観点から、4~20g/m2とすることが好ましく、5~15g/m2とすることがより好ましい。20g/m2を超えると、防水性のさらなる向上は望めない一方で、製造コストの増大を来すことがある。
【0053】
本実施形態の塗膜の平均膜厚は、面材の防湿性及び防水性の観点から、5.5~20μmが好ましく、6.0~17μmがより好ましく、6.5~15μmがさらに好ましい。ここで、塗膜の平均膜厚は、サンプルを短冊状に切断し、その断面の任意の10箇所を電子顕微鏡で観察し、測定した塗膜の厚みの平均値である。
【0054】
塗膜の形成は、公知の塗工方式を使用して塗料を塗工して行うことができる。例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工等の塗工方式を用いることができる。また、塗膜は、単層であっても複数層であってもよく、複数の塗膜を順次塗工してもよく、カーテン塗工等により、2層以上を同時に塗工してもよい。複数の塗膜を設ける場合は、少なくとも1層が防水性を有する塗膜であればよく、その場合には、最表面の塗膜が防水性を有することが好ましい。塗料を塗工する際の塗工速度は、塗料の粘度、目標塗工量等を考慮して適宜設定することができる。
【0055】
本発明の一態様において、上記のエアナイフ塗工やカーテン塗工といった輪郭塗工方式を用いることが好ましい。上記輪郭塗工方式を用いると、紙基材表面への塗工剤の塗工量が均一となるため、塗工厚みが均一となる。そのため、後工程である乾燥工程において、塗膜におけるブリスターの発生を抑制することができる。また、接触塗工方式に比べて塗料の使用量を低減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0056】
塗工方式にて塗膜を形成する場合、上記の乾燥工程を設けることが好ましい。この場合、乾燥工程は、出口の塗膜温度が120℃未満とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。出口での塗膜温度が120℃以上であると、塗膜におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、また、塗膜が形成された後に巻き取られた面材にブロッキングが発生することがある。一方、出口での塗膜温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上とすることもできる。出口での塗膜温度が60℃未満であると、場合によっては、塗膜が形成された後に巻き取られた面材にブロッキングが発生することがあるだけでなく、塗膜の乾燥が不十分であるために、防水機能を十分に発現できないことがある。
【0057】
乾燥工程出口での塗膜温度の設定は、紙基材の坪量及び紙厚を考慮して適宜設定することができる。例えば、紙基材が多層抄き板紙であって坪量及び紙厚の大きい段ボールライナの場合、単層紙であって坪量及び紙厚が相対的に小さいクラフト紙に比べて、塗膜の表面にブリスターが発生し易い傾向にある。その理由は限定されないが、クラフト紙と比べて段ボールライナは、坪量及び紙厚が大きいと共に透気性が低いことが多く、クラフト紙と同じ紙中水分値であっても、乾燥工程において紙基材内部で気化した多くの水分が十分に逃げきれず、塗膜の表面にブリスターが発生し易くなると考えられる。このため、紙基材の坪量及び紙厚が大きいほど、乾燥工程出口での塗膜温度を、乾燥ができる範囲内で低めに調整することが好ましい。
【0058】
ここで、乾燥工程出口とは、乾燥工程における乾燥ゾーンが1個の場合、当該乾燥ゾーンの出口を意味し、乾燥工程における乾燥ゾーンが複数個の場合、最も下流側の乾燥ゾーンの出口を意味する。
【0059】
乾燥工程出口での塗膜温度の調整は、乾燥時間、乾燥ゾーンの温度の調節により行うことができる。乾燥時間は、紙基材の送り速度、乾燥ゾーンの個数、長さ、乾燥ゾーンの機器能力(風量、赤外線出力)等で決定される。乾燥方式としては、公知の乾燥方式を用いることができ、例えば、蒸気シリンダ加熱乾燥方式、熱風乾燥方式、ガス式赤外線乾燥方式、電気式赤外線乾燥方式等を挙げることができ、これらのいずれか1種を単独で使用することができ、2種以上の組み合わせを使用することもできる。
【実施例0060】
以下、具体例を用いて本発明を説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(紙基材の製造)
下記表1に示す配合率となるように原料パルプを抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後パラフィン系ワックス及びロジンを含む撥水剤を表層側に片面塗工し、再度ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行い、多層紙の紙基材a、b及びcを製造した。また、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)に内添サイズ剤及び紙力剤を配合した紙料から、単層紙の紙基材d、eを製造した。
【0062】
(紙基材の評価)
<坪量>
JIS P 8124:2011に準拠して測定した。結果を下記表1に示す。
【0063】
<紙厚>
JIS P 8118:2014に準拠して測定した。結果を下記表1に示す。
【0064】
<コッブ吸水度>
JIS P 8140:1998に準拠し、コッブ法により測定を行った。すなわち、100mlの蒸留水を接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積当たりの重量を測定した。なお測定時間は、通常の規定時間である120秒(2分)に加え、30分でも測定を行った。結果を下記表1に示す。
【0065】
<撥水度>
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠し、測定した。結果を下記表1に示す。
【0066】
<透湿度>
JIS Z 0208:1976に準拠し、測定した。結果を下記表1に示す。
【0067】
<点滴吸油度>
注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数を3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢が見えなくなるまでの時間を測定した。ただし、測定時間は600秒(10分)で打ち切り、600秒経過しても表面に光沢が見えた場合は「600秒以上」と評価した。結果を下記表1に示す。
【0068】
<王研式平滑度>
JIS P 8155:2010に準拠し、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工)を用いて王研式平滑度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0069】
<水接触角>
蒸留水をサンプル表面に1滴(50μL)滴下してから1秒後の接触角を、接触角測定装置(DAT1100 FIBRO System AB製)により測定した。結果を下記表1に示す。
【0070】
【0071】
紙基材a~eの表層側に、エアナイフを用いて、スチレン・アクリル系樹脂とワックスとを含有する塗料(マイケルマン VaporCoat2200)を、それぞれ表2に記載の塗工量で塗布し、乾燥工程出口における塗膜の温度が80℃となるよう熱風乾燥して面材A~Eを得た。
【0072】
(面材の評価)
坪量及び紙厚は、紙基材a~eと同様にして測定した。コッブ吸水度、撥水度、透湿度、点滴吸油度、王研式平滑度及び水接触角は、塗膜側から測定したこと以外は紙基材a~eと同様にして測定した。
塗膜の平均膜厚は、サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により塗膜の厚みを測定し、平均値を算出して塗膜の平均膜厚とした。
縦伸び及び横伸びは、JIS P 8113:2006に準拠し、抄紙方向と直交する横方向、抄紙方向に対して平行な縦方向の破断伸びをそれぞれ測定した。
比圧縮強さは、JIS P 8126:2005の規定する紙及び板紙の圧縮強さ試験方法(リングクラッシュ法)に準拠し、抄紙方向と直交する横方向における圧縮強さを測定し、この測定値から比圧縮強さを算出した。
比破裂強さは、JIS P 8131:2009の規定する板紙のミューレン高圧形試験機による破裂強さ試験方法に準拠し、紙基材をゴム隔膜側にして測定した破裂強さの値を、坪量で除した値を比破裂強さとした。
以上の結果を、上記塗膜を有さない紙基材a~cの結果とあわせて表2に示す。
【0073】
【0074】
表2に示す結果より、本発明の面材は、優れた防水性を有し、紙基材と比較しても機械的強度が維持され、簡易建屋の部材に好適に利用できることを確認した。一方、塗膜を有さない紙基材は、本発明の面材と比較して、防水性に劣るため、簡易建屋の部材に適さないことを確認した。