(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147590
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ロボット設備の設計支援システム、及びロボット設備の設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20231005BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231005BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20231005BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q50/10
B25J19/06
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055170
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】福岡 貴史
(72)【発明者】
【氏名】桝山 貴史
【テーマコード(参考)】
3C707
5L049
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707KS11
3C707KS36
3C707LS20
3C707MS06
3C707MS08
3C707MS10
3C707MS15
3C707MS27
3C707MT08
5L049CC03
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】ロボットを用いたロボット設備の設計を支援する。
【解決手段】ロボット設備の設計支援システムは、ユーザの操作に基づき仮想空間上にロボットモデル及び設備モデルを設置する処理を実行可能な設置処理部と、ロボットモデルに基づいてロボットモデルの動作領域を設定し、動作領域を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域を設定し、設備モデルに基づいて作業者領域内における除外領域を設定し、作業者領域から除外領域を除いた要検出領域を算出する処理を実行可能な算出処理部と、ロボットモデルと設備モデルと要検出領域とを表示部の同一画面上に表示させる処理を実行可能な表示処理部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作に基づき仮想空間上にロボットモデル及び設備モデルを設置する処理を実行可能な設置処理部と、
前記ロボットモデルに基づいて前記ロボットモデルの動作領域を設定し、前記動作領域を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域を設定し、前記設備モデルに基づいて前記作業者領域内における除外領域を設定し、前記作業者領域から前記除外領域を除いた要検出領域を算出する処理を実行可能な算出処理部と、
前記ロボットモデルと前記設備モデルと前記要検出領域とを表示部の同一画面上に表示させる処理を実行可能な表示処理部と、
を備えるロボット設備の設計支援システム。
【請求項2】
前記算出処理部は、前記作業者の想定される移動速度に基づいて前記作業者領域を算出する処理を実行可能である、
請求項1に記載のロボット設備の設計支援システム。
【請求項3】
前記算出処理部は、前記設備モデルが前記ロボットモデルに対する前記作業者の接近を阻害するものである場合に前記作業者領域の境界から前記設備モデルまでの領域を前記除外領域に設定する処理を実行可能である、
請求項1に記載のロボット設備の設計支援システム。
【請求項4】
前記算出処理部は、前記作業者領域内において隣接する前記設備モデル間の距離が所定値以下である場合に隣接する前記設備モデル間の領域を前記除外領域に設定する処理を実行可能である、
請求項1に記載のロボット設備の設計支援システム。
【請求項5】
前記設置処理部は、ユーザの操作に基づき前記仮想空間上にセンサモデルを配置する処理を実行可能であり、
前記算出処理部は、前記要検出領域内において前記センサモデルによる検出の死角となる死角領域を算出する処理を実行可能であり、
前記表示処理部は、前記死角領域を前記表示部に表示させる処理を実行可能である、
請求項1に記載のロボット設備の設計支援システム。
【請求項6】
前記設置処理部は、前記要検出領域内においてセンサモデルによる検出の死角となる死角領域が生じないように前記仮想空間上に1つ以上の前記センサモデルを自動で配置する処理を実行可能であり、
前記表示処理部は、前記センサモデルの位置を前記表示部に表示させる処理を実行可能である、
請求項1に記載のロボット設備の設計支援システム。
【請求項7】
画像を表示可能な表示部と、ユーザからの操作を受け付ける入力部と、を制御するコンピュータに、
前記入力部に対するユーザの操作に基づき仮想空間上にロボットモデル及び設備モデルを設置する処理と、
前記ロボットモデルに基づいて前記ロボットモデルの動作領域を設定し、前記動作領域を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域を設定し、前記設備モデルに基づいて前記作業者領域内における除外領域を設定し、前記作業者領域から前記除外領域を除いた要検出領域を算出する処理を実行可能な処理と、
前記ロボットモデルと前記設備モデルと前記要検出領域とを同一画面上に表示させる処理と、
を実行させることができるロボット設備の設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボット設備の設計支援システム、及びロボット設備の設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に産業用ロボットを用いた設備において、その設備の設計者は、ロボットの動作によって現場での作業者に危害が及ばないようリスクアセスメントを実施する。例えば安全柵を用いずに作業者とロボットとの協働を可能とする設備の場合、作業者はロボットに接触可能な距離まで接近することができる。このため、設計者は、ロボットが作業者に接触しても作業者に危害が及ばないようにロボットの動作速度を制限したり、ロボットが作業者に接触する前にロボットを停止させたりといった設計にする必要がある。
【0003】
しかし、生産性を考慮した場合、ロボットを極力高速で動作させることが好ましい。そこで、人とロボットとの協働を前提とした設備の場合、ロボットに対する作業者の接近を検出し、作業者がロボットの周囲に存在していなければロボットを高速で動作させ、作業者がロボットに接近した場合はロボットを低速で動作又は停止させるような運用が多く行われている。
【0004】
ロボットに対する作業者の接近の検出には、例えばレーザスキャナや光電センサ等のように、角度と距離とで平面状に検出範囲が規定されるセンサが用いられることが多い。このようなセンサにおいて検出範囲の調整は、センサを実際の設備に設置して行われることが多い。この場合、設計者は、設備に設置したセンサの検出値を例えばパソコン等でグラフ化してモニタリングし、その検出値を実際の設備のレイアウトと照らし合わせながらセンサの検出範囲を調整する。
【0005】
この場合、ロボットと作業者とが接触する危険性を低減するため、設計者は、作業者がロボットに接触する前に作業者の接近を検出できるように、ロボットの動作範囲を考慮したうえでセンサの検出範囲を設定する必要がある。しかし、従来、設計時はもちろん、実際の設備においてもロボットの動作範囲とセンサの検出範囲との関係を設計者が定量的に把握することは難しい。そのため、従来、設計者は、センサの検出範囲の調整に多くの工数を要していた。また、従来は、上述したように実際の設備を用いてセンサの検出範囲を検証するため、設備の構想設計の段階ではセンサの検出範囲や死角の存在の検討は難しく、これにより設備のレイアウトの検討やセンサの選定等を困難にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6570742号公報
【特許文献2】特許第6585574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボット及び設備のレイアウトをシミュレーションすることでロボットを用いたロボット設備の設計を支援することができるロボット設備の設計支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によるロボット設備の設計支援システムは、ユーザの操作に基づき仮想空間上にロボットモデル及び設備モデルを設置する処理を実行可能な設置処理部と、前記ロボットモデルに基づいて前記ロボットモデルの動作領域を設定し、前記動作領域を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域を設定し、前記設備モデルに基づいて前記作業者領域内における除外領域を設定し、前記作業者領域から前記除外領域を除いた要検出領域を算出する処理を実行可能な算出処理部と、前記ロボットモデルと前記設備モデルと前記要検出領域とを表示部の同一画面上に表示させる処理を実行可能な表示処理部と、を備える。
【0009】
また、実施形態によるロボット設備の設計支援プログラムは、画像を表示可能な表示部と、ユーザからの操作を受け付ける入力部と、を制御するコンピュータに、前記入力部に対するユーザの操作に基づき仮想空間上にロボットモデル及び設備モデルを設置する処理と、前記ロボットモデルに基づいて前記ロボットモデルの動作領域を設定し、前記動作領域を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域を設定し、前記設備モデルに基づいて前記作業者領域内における除外領域を設定し、前記作業者領域から前記除外領域を除いた要検出領域を算出する処理を実行可能な処理と、前記ロボットモデルと前記設備モデルと前記要検出領域とを同一画面上に表示させる処理と、を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、電気的構成の一例を概念的に示すブロック図
【
図2】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、ロボットモデルの平面方向における動作範囲を概念的に示す図
【
図3】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、仮想空間上にロボットモデルが配置されて作業者領域が設定された状態を概念的に示すもので、表示部に表示される画像の一例を示す図
【
図4】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、
図3の状態から更に設備モデルが配置された状態を概念的に示すもので、表示部に表示される画像の一例を示す図
【
図5】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、
図4の状態から更に除外領域が設定された状態を概念的に示すもので、表示部に表示される画像の一例を示す図
【
図6】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、
図5の矢印X6部分を拡大して示す図
【
図7】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、仮想空間上に配置されたロボットモデル及び設備モデルに対して要検出領域を設定した状態を示すもので、表示部に表示される画像の一例を示す図
【
図8】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、仮想空間上に配置されたロボットモデル及び設備モデルに対して要検出領域を設定した状態を示すもので、表示部に表示される画像の他の例を示す図
【
図9】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、仮想空間上に手動でセンサモデルを配置した状態を示すもので、表示部に表示される画像の他の例を示す図
【
図10】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、仮想空間上に自動でセンサモデルを配置した状態を示すもので、表示部に表示される画像の他の例を示す図
【
図11】一実施形態によるロボット設備の設計支援システムについて、制御装置で実行される処理内容の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すロボット設備の設計支援システム10は、ロボットを用いた設備いわゆるロボット設備の設計を行う際に設計者の支援を行うことを目的としたものである。なお、以下の説明では、ロボット設備の設計支援システム10を、単に設計支援システム10と称することがある。設計支援システム10は、コンピュータ内の仮想空間上にロボットモデルや設備モデル及びセンサモデルを仮想的に配置し、そのロボットモデルの動作範囲やセンサモデルの検出領域等のシミュレーションを行う機能を有する。
【0012】
設計支援システム10は、専用品で構成することもできるし、例えば市販のパソコンやスマートフォン若しくはタブレットにコンピュータプログラムをインストールすることで実現することもできる。設計支援システム10は、
図1に示すように、制御装置11、表示部12、入力部13、補助記憶装置14、設置処理部15、算出処理部16、及び表示処理部17を備えている。制御装置11は、CPU111及び主記憶装置112を有している。CPU111は、設計支援システム10における各処理を実行する。主記憶装置112は、RAM等の一時的な記憶媒体であって、各処理に必要な情報を一時的に記憶する。
【0013】
表示部12は、画像等の表示が可能なユーザインタフェースであり、例えば液晶ディスプレイ等で構成することができる。入力部13は、ユーザからの操作入力を受けるユーザインタフェースであり、例えばマウスやキーボード若しくはタッチパネル等で構成することができる。なお、本実施形態において、
図2から
図10は、ロボットモデルを上面から見た図である。また、
図3から
図11に示す表示部12に表示される画像のうち斜線で示した部分は、透明又は不透明に着色されていることを意味している。また、以下の説明においてユーザとは、ロボット設備の設計支援システム10の利用者すなわちロボット設備の設計者を意味する。
【0014】
補助記憶装置14は、有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体で構成される。補助記憶装置14の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。
【0015】
補助記憶装置14は、ロボットモデル情報21、設備モデル情報22、センサモデル情報23、及びロボット設備の設計支援プログラム24を記憶している。ロボットモデル情報21は、ロボット設備に用いるロボットに関する情報であって、例えばロボットの形状や動作領域、最大動作速度等の情報を含んでいる。
【0016】
ロボットモデル31の動作領域には、
図2に示すように、ロボットモデル31の構造に基づいて定まる第1動作領域A1と、第1動作領域A1に対してソフトウェアで制限を加えた第2動作領域A2とがあるが、本シミュレーションでは第2動作領域A2を用いる。第2動作領域A2は、いわゆるソフトウエアリミットと称することもある。なお、
図2の例において、第1動作領域A1は扇形状に設定され、第2動作領域A2は矩形に設定されているが、各領域A1、A2の形状は上述したものに限られず、ロボットモデル31の機械的特性や仕様等によって適宜設定される。
【0017】
第1動作領域A1は、ロボットモデル31の動作にソフトウェアによる制限が無い場合にロボットモデル31の手先が構造的に3次元上で到達可能な範囲をXY平面上に射影した領域に定義される。また、第2動作領域A2は、ロボットモデル31の動作にソフトウェアによる制限を設定した場合にロボットモデル31の手先がそのソフトウェアの制限内において3次元上で到達可能な範囲をXY平面上に射影した領域に定義される。なお、第1動作領域A1及び第2動作領域A2は、ロボットモデル31の手先に設けられるツールを考慮したものとすることもできる。また、第2動作領域A2は、ロボットモデル31に対する教示内容から設計支援システム10又は他のコンピュータが自動で生成しても良い。
【0018】
設備モデル情報22は、ロボット設備に用いるロボット以外の設備に関する情報であって、例えば設備の種類や形状等の情報を含んでいる。ロボット以外の設備とは、例えばワークを置くための架台やコンベア等の構造物があるがこれらに限られない。センサモデル情報23は、設備設計に用いるセンサに関する情報であって、例えばセンサの種類や最大検出領域等の情報を含んでる。各モデル情報21、22、23は、設計支援システム10のユーザつまり設計者が任意に登録することもできるし、例えばロボットのメーカーが運営するサーバ等からダウンロードすることで入手することもできる。
【0019】
なお、本明細書において、センサの最大検出領域とは、死角を考慮しない領域であり、例えばレーザスキャナ等であれば検出対象とセンサとの間に他の障害物が存在しない場合にそのレーザスキャナが検出対象を検出することができる最大の領域を意味する。これに対し、本明細書において、センサの検出可能領域と称した場合は、そのセンサの最大検出領域のうち死角を考慮した領域つまり設備の影響を受けずに検出することができる霊異記を意味する。すなわち、検出可能領域は、例えばセンサの最大検出領域内に設備等が存在しその設備等によってセンサに死角が生じる場合に、そのセンサの最大検出領域から死角となる領域を除いた部分となる。
【0020】
設計支援システム10は、CPU111が設計支援プログラム24を補助記憶装置14から読み出して主記憶装置112に展開し実行することで、
図1に示す設置処理部15、算出処理部16、及び表示処理部17をコンピュータ上で仮想的に実現することができる。なお、各処理部15、16、17の実現は、上記したハードウェアとプログラムとの組み合わせに限らず、設計支援プログラム24をインプリメントした集積回路のようなハードウェア単体で実現するようにしてもよいし、一部の機能を専用のハードウェアで実現し、一部をハードウェアとプログラムの組み合わせで実現するようにしてもよい。
【0021】
設置処理部15は、
図3及び
図4に示すように、ユーザすなわちロボット設備の設計者の操作に基づき、仮想空間41上にロボットモデル31及び設備モデル32を設置する処理を実行可能である。仮想空間41は、コンピュータ上で構築される空間であり、表示部12に表示される。ユーザは、例えば
図3に示すように、表示部12に表示されるロボットモデル31の画像を見ながら入力部13を操作することで、仮想空間41上にロボットモデル31を配置することができる。また、ユーザは、
図4に示すように、表示部12に表示される設備モデル32の画像を見ながら入力部13を操作することで、仮想空間41上に設備モデル32を配置することができる。なお、本実施形態では、1台のロボットモデル31と複数この場合4つの設備モデル32が設置されることを想定している。以下の説明において、各設備モデル32を区別する場合は、それぞれ設備モデル321、322、323、324と称することがある。
【0022】
算出処理部16は、
図3から
図8に示すように、動作領域42、作業者領域43、及び除外領域44を設定し、これら動作領域42、作業者領域43、及び除外領域44に基づいて
図5に示す要検出領域45を算出する。要検出領域45は、安全上、センサにより作業者の侵入の検出を必要とする領域である。なお、本実施形態において、要検出領域45の外側の領域を外側領域46と称する。
【0023】
算出処理部16は、仮想空間41上にロボットモデル31が配置されると、
図3に示すように動作領域42及び作業者領域43を設定する。算出処理部16は、
図2で設置されたロボットモデル31に関するロボットモデル情報21を補助記憶装置14から取得し、そのロボットモデル情報21に基づいてロボットモデル31の動作領域42を仮想空間41上に設定する。
【0024】
作業者領域43は、動作領域42を拡大した領域であって作業者の動作に基づいて設定される領域である。この場合、作業者とは、ロボット設備においてロボットとの協働が想定される者である。作業者領域43は、作業者の接近をセンサが検知してからロボットが停止するまでに、作業者が移動したり姿勢を変更したりしても作業者が動作領域42の境界に到達しない大きさまで動作領域42を拡大したものである。本実施形態の場合、作業者領域43は、動作領域42の存在を前提とする領域であり、動作領域42を含む概念である。作業者領域43は、ロボットモデル31の周囲に設備モデル32等の構造物が存在しない場合の要検出領域45と一致する。以下の説明では、動作領域42の境界と作業者領域43の境界間の距離を拡大距離Lとする。
【0025】
算出処理部16は、作業者情報25に基づいて作業者領域43を算出すなわち拡大距離Lを算出する処理を実行可能である。作業者情報25は、作業者の想定される移動速度又は姿勢に関する情報であり、例えば設計者が入力部13に入力することで適宜設定しても良いし、予め補助記憶装置14等に記憶されたものでも良い。
【0026】
作業者情報25のうち作業者の想定される移動速度は、例えば最大速度でロボットが動作している状態から停止までに要する時間を停止時間trとし、作業者に想定される移動速度を作業者速度VSとした場合、拡大距離Lは、L=VS×trとすることができる。また、拡大距離Lは、センサの検出誤差Zを考慮して、L=VS×tr+Zとすることもできる。なお、この場合、センサの検出誤差Zの次元は長さであり、例えばセンサのメーカーが公表している値を用いることができる。また、作業者速度VSは、ロボット設備の目的や使用環境に応じて設計者が適宜設定することができる。
【0027】
また、センサが設置された高さ位置とは異なる高さ位置において、作業者が身を乗り出したり手を伸ばしたりといった特殊な姿勢を取った場合を考慮し、拡大距離Lを、例えば作業者の想定される姿勢に基づいて設定することもできる。この場合、設計者は、例えば規格や実測値を参考にして拡大距離Lを決定することができる。
【0028】
算出処理部16は、
図4に示すように仮想空間41上に設備モデル32が配置されると、
図5及び
図6に示すように除外領域44を設定する。除外領域44は、作業者領域43内においてセンサによる作業者の検出を行わない領域である。すなわち、除外領域44は、作業者領域43のうち要検出領域45から除外される領域である。算出処理部16は、例えばセンサによる設備モデル32の誤検出を防止するために、設備モデル32の周囲にいわゆる追加マージンとして除外領域を設定する。
【0029】
また、算出処理部16は、囲まれた領域等のように作業者の侵入が物理的に不可能若しくは極めて困難であることから、センサによる作業者の検出を行わなくても安全上問題無い領域に対しても除外領域441を設定する。例えば
図5の設備モデル321のように囲まれた領域がある場合、その領域内に作業者が侵入することは不可能であるか極めて困難である。そのため、例えば設備モデル321のように囲まれた領域がある場合、算出処理部16は、その囲まれた領域を除外領域441に設定する。
【0030】
また、算出処理部16は、例えば
図5に示す設備モデル322のように、設備モデル322がロボットモデル31に対する作業者の接近を阻害するものである場合、作業者領域43の境界から設備モデル322までの領域を除外領域442に設定する処理を実行可能である。設備モデル322がロボットモデル31に対する作業者の接近を阻害するものである場合とは、例えば設備モデル322の高さ寸法が想定される作業者の身長よりも高い場合等であって、作業者がロボットモデル31に接近することを物理的に阻害するような場合である。
【0031】
更に、例えば
図5及び
図6に示す設備モデル322、323ように、作業者領域43内において隣接する設備モデル322、323間の距離Wが所定値Wx以下である場合に、算出処理部16は、隣接する設備モデル322、323間の領域を除外領域443に設定する処理を実行可能である。この場合、所定値Wxは、例えば数mm~数cm程度であり、例えば人の身体等が侵入できない程度の距離に設定される。そして、算出処理部16は、作業者領域43から除外領域44を除いて要検出領域45を算出する。
【0032】
算出処理部16が要検出領域45を算出すると、表示処理部17は、
図7又は
図8に示すように、ロボットモデル31と各設備モデル32と要検出領域45とを表示部12の同一画面上に表示させる処理を実行する。この場合、
図7は、表示部12の同一画面上に、ロボットモデル31及び各設備モデル32に加え、動作領域42、作業者領域45、要検出領域45、及び外側領域46を表示させた例である。また、
図8は、表示部12の同一画面上に、ロボットモデル31及び各設備モデル32に加え、要検出領域45を表示させた例であって、動作領域42、作業者領域45、及び外側領域46を非表示とした例である。ユーザは、例えば
図7又は
図8に示す表示態様を任意に選択することができる。これにより、設計者は、ロボットモデル31と各設備モデル32とのレイアウトにおいて、どの領域をセンサで検出する必要があるかを視覚的に把握することが出来る。
【0033】
なお、表示処理部17は、動作領域42、作業者領域43、除外領域44、及び要検出領域45のうち少なくとも要検出領域45を、ロボットモデル31及び各設備モデル32と共に表示部12の同一画面上に表示させる。この場合、表示処理部17は、動作領域42、作業者領域43、及び除外領域44のうちの1又は複数をそれぞれ区別可能な態様で要検出領域45に重ねて表示させる処理を行うこともできる。また、表示処理部17は、
ユーザの入力に基づいて、動作領域42、作業者領域43、除外領域44、要検出領域45、及び外側領域46をそれぞれ個別に表示させることもできる。
【0034】
設置処理部15は、入力部13に対するユーザの操作に基づいて、
図9に示すように、仮想空間41上にセンサモデル33を配置する処理を実行することができる。この場合、設計者は、例えば入力部13を操作して設置したいセンサモデルを選択する。すると、設置処理部15は、選択されたセンサモデルに関するセンサモデル情報23を補助記憶装置14から取得し、そのセンサモデル情報23に基づいてセンサモデル33の最大検出領域47を仮想空間41上に設定する。そして、表示処理部17は、センサモデル33の最大検出領域47を、ロボットモデル31と設備モデル32と要検出領域45とに重ねて表示部12に表示させる。これにより、設計者は、選択したセンサモデル33によってどの部分を検出できるのかを視覚的に把握することができる。
【0035】
また、算出処理部16は、要検出領域45内においてセンサモデル33による検出の死角となる死角領域48を算出する処理を実行可能である。死角領域48の算出方法は、センサモデルの種類に応じて適宜設定することができる。算出処理部16は、例えば
図9に示すように、設備モデル32の影になる領域を死角領域48として算出する。死角領域48は、要検出領域45とセンサモデル33の最大検出領域47とが重なる領域でかつ設備モデル32の影になるためそのセンサモデル33では検出することができない領域を意味する。
【0036】
そして、表示処理部17は、死角領域48を表示部12に表示させる処理を実行可能である。この場合、表示処理部17は、死角領域48を、要検出領域45及びセンサモデル33の最大検出領域47に対して区別可能な態様で表示部12に表示させる。この場合、表示処理部17は、例えばセンサモデル33の最大検出領域47と作業者領域43とが重なる領域から設備モデル32及び死角領域48を除いた領域を、センサモデル33の検出可能領域として表示部12に表示させても良い。これにより、設計者は、表示部12に表示される死角領域48を視覚的に把握することができる。
【0037】
また、設置処理部15は、死角領域48が無くなるようにセンサモデルの種類、位置、及び数を自動で設定する処理を実行可能である。この場合、設置処理部15は、
図10に示すように、要検出領域45内においてセンサモデル33による検出の死角となる死角領域が生じないように仮想空間41上に1つ以上のセンサモデル33を自動で配置する処理を実行可能である。設置処理部15は、例えばセンサモデル33について死角領域が最小となる位置を決定し、死角領域が残っている場合は更に別のセンサモデル33を追加して残った死角領域が最小となる位置を決定する、という処理を死角領域が無くなるまで繰り返す。
【0038】
そして、表示処理部17は、センサモデル33の位置及びセンサモデル33の最大検出領域47の一部又は全部を表示部12に表示させる処理を実行可能である。これにより、設計者は、センサモデル33の位置を見ることでどこにセンサモデル33を配置すれば良いか容易に把握することができる。なお、この場合、表示処理部17は、
図10に示すように、各センサモデル33の位置とともに最大検出領域47を表示させても良い。また、詳細は図示しないが、設置されたセンサモデル33が複数ある場合、表示処理部17は、センサモデル33毎にそのセンサモデル33の最大検出領域47又は死角領域48を表示させる処理を実行可能としても良い。
【0039】
次に、
図11を参照して設置処理部15、算出処理部16、及び表示処理部17で実行される一連の制御内容について説明する。なお、以下の説明においては、設置処理部15、算出処理部16、及び表示処理部17で実行される制御は、いずれも制御装置11で実行されるものとして説明する。
【0040】
制御装置11は、まず、ステップS11において、設置処理部15の処理により、入力部13に対するユーザの操作等に基づいて、
図4に示すようにロボットモデル31及び設備モデル32を仮想空間41上に設置する処理を実行する。次に、制御装置11は、ステップS12において、算出処理部16の処理により、設置したロボットモデル31及び設備モデル32に基づいて、
図5から
図8に示すように要検出領域45を算出する。そして、制御装置11は、ステップS13において、表示処理部17の処理により、
図7及び
図8に示すように、ロボットモデル31、設備モデル32、及び要検出領域45を表示部12の同一画面上に表示させる。
【0041】
次に、制御装置11は、ステップS14において、入力部13に対するユーザの操作等に基づいて、センサモデル33の設置方法を判断する。この場合、ユーザは、センサモデル33の設置を手動で行うか自動で行うかを、例えば入力部13を用いて選択することができる。手動によるセンサモデル33の設置が選択された場合(ステップS14の「手動」)、制御装置11は、ステップS15に処理を移行させる。制御装置11は、ステップS15において、設置処理部15の処理により、例えば
図9に示すように入力部13に対するユーザの操作に基づいて仮想空間41上にセンサモデル33を配置する。
【0042】
次に、制御装置11は、ステップS16において、算出処理部16の処理により、センサモデル33の配置に基づいて死角領域48を算出する。そして、制御装置11は、ステップS17において、表示処理部17の処理により、例えば
図9に示すように、センサモデル33、そのセンサモデル33の最大検出領域47、及び死角領域48を表示部12の同一画面上に表示させる。そして、制御装置11は、一連の処理を終了する。
【0043】
また、ステップS14において自動によるセンサモデル33の設置が選択された場合(ステップS14の「自動」)、制御装置11は、ステップS18に処理を移行させる。制御装置11は、ステップS18において、設置処理部15の処理により、例えば
図10に示すように死角領域が無くなくように仮想空間41上に1つ以上のセンサモデル33を配置する。
【0044】
そして、制御装置11は、ステップS19において、表示処理部17の処理により、例えば
図10に示すように、センサモデル33及びそのセンサモデル33の最大検出領域47を表示部12の同一画面上に表示させる。そして、制御装置11は、一連の処理を終了する。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、ロボット設備の設計支援システム10は、設置処理部15と、算出処理部16と、表示処理部17と、を備える。設置処理部15は、ユーザすなわち設計者の操作に基づき仮想空間41上にロボットモデル31及び設備モデル32を設置する処理を実行可能である。算出処理部16は、設置したロボットモデル31に基づいてロボットモデル31の動作領域42を設定し、動作領域42を拡大した領域であって協働が想定される作業者の動作に関する作業者情報に基づいて設定される作業者領域43を設定し、設備モデル32に基づいて作業者領域43内における除外領域44を設定し、作業者領域43から除外領域44を除いた要検出領域45を算出する処理を実行可能である。そして、表示処理部17は、ロボットモデル31と設備モデル32と要検出領域45とを表示部12の同一画面上に表示させる処理を実行可能である。
【0046】
これによれば、設計者は、ロボットモデル31と各設備モデル32とのレイアウトに関し、センサで検出が必要な要検出領域45を、実際の設備を用いることなく画面上で視覚的に把握することが出来る。そして、設計者は、要検出領域45を視覚的に把握することができるため、センサの選定や配置が容易となる。このように、本実施形態の設計支援システム10によれば、ロボットモデル31及び設備モデル32に基づいて要検出領域45を表示することができるため、要検出領域45の確認に関して設計者を支援することができる。
【0047】
算出処理部16は、作業者の想定される移動速度に基づいて作業者領域43を算出する処理を実行可能である。これによれば、設計者がロボット設備の使用目的や使用環境に応じて移動速度を設定することで、要検出領域45を、実際の使用態様に即したものとすることができる。これにより、ロボット設備のシミュレーションを高い精度で行うことができ、設計者をより効率的に支援することができる。
【0048】
ここで、例えば
図5に示す設備モデル322のように、設備モデル322の高さ寸法が作業者の身長よりも高い場合等、その設備モデル322は、ロボットモデル31に対する作業者の接近を阻害する。そのため、このような設備モデル322の外側の領域442は、作業者領域43であっても作業者がロボットに接触する可能性は無いため、センサによる検出を行わなくても問題ない。しかしながら、このような領域442についてまで要検出領域45として含めると、設計者の検討が増え、また、不要なセンサの設置等にも繋がる。
【0049】
そこで、算出処理部16は、例えば
図5に示す設備モデル322のように、設備モデル322がロボットモデル31に対する作業者の接近を阻害するものである場合に作業者領域43の境界から設備モデル322までの領域442を除外領域442に設定する処理を実行可能である。これによれば、例えば
図5に示す領域442のように、作業者領域43であっても作業者がロボットに接触する可能性の無い領域については要検出領域45から除外することで、設計者の不要な検討を削減でき、また、不要なセンサの設置等を抑制することもできる。
【0050】
また、上記した事情と同様に、例えば
図5及び
図6に示す設備モデル322、323のように、隣接する設備モデル322、323間の距離が狭く人等が侵入できないような場合も、センサによる検出を行わなくても問題ない。しかしながら、このような領域443についてまで要検出領域45として含めると、設計者の検討が増え、また、不要なセンサの設置等にも繋がる。
【0051】
そこで、算出処理部16は、例えば
図5及び
図6に示すように作業者領域43内において隣接する設備モデル322、323間の距離Wが所定値Wx以下である場合に隣接する設備モデル322、323間の領域443を除外領域44に設定する処理を実行可能である。これによれば、例えば
図6に示す領域443のように、作業者領域43であっても人等が侵入する余地の無い領域については要検出領域45から除外することで、設計者の不要な検討を削減でき、また、不要なセンサの設置等を抑制することもできる。
【0052】
また、設置処理部15は、
図9に示すように、ユーザの操作に基づき仮想空間41上にセンサモデル33を配置する処理を実行可能である。算出処理部16は、要検出領域45内においてセンサモデル33による検出の死角となる死角領域48を算出する処理を実行可能である。そして、表示処理部17は、死角領域48を表示部12に表示させる処理を実行可能である。
【0053】
これによれば、設計者は、表示部12に表示される死角領域48を視覚的に把握することができる。そのため、設計者は、例えば死角領域48が無くなるようにセンサモデル33の種類を選択したり配置したりすることが容易となり、その結果、設計効率を更に向上させることができる。
【0054】
また、設置処理部15は、要検出領域45内においてセンサモデル33による検出の死角となる死角領域が生じないように仮想空間41上に1つ以上のセンサモデル33を自動で配置する処理を実行可能である。そして、表示処理部17は、センサモデル33の位置を表示部12に表示させる処理を実行可能である。これによれば、設計者は、センサモデルを手動で配置する必要がないため、設計効率を更に向上させることができる。
【0055】
なお、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0056】
10…ロボット設備の設計支援システム、12…表示部、15…設置処理部、16…算出処理部、17…表示処理部、25…作業者情報、31…ロボットモデル、32、321、322、323、324…設備モデル、33…センサモデル、41…仮想空間、42…動作領域、44、441、442、443…除外領域、45…要検出領域、48…死角領域