(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147592
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ケースモールド型フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20231005BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20231005BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20231005BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 301F
H01G4/32 531
H01G4/32 305A
H01G2/10 C
H01G2/10 K
H01G2/10 600
H01G4/228 S
H01G4/228 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055174
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】会森 信
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】阪口 拓巳
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA11
5E082AB03
5E082AB04
5E082BB03
5E082HH02
5E082HH03
5E082HH07
5E082HH28
5E082HH48
(57)【要約】
【課題】多極性間の絶縁に用いる絶縁部品の点数の増加が抑えられたケースモールド型フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】絶縁スペーサ40に、N極又はP極の一方の第1のバスバー20とN極又はP極の他方の第2のバスバー30とを絶縁する被組み付け部45の第1の延在部45aを設け、第1のバスバー20とグランド電極として用いられる金属ケース60とを絶縁する止め部47A、47B,47Cを設け、第2のバスバー30とグランド電極として用いられる金属ケース60とを絶縁する止め部46A、46B,46Cを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面に第1極又は第2極の一方の極性に対応する第1の端面電極が設けられ、他方の端面に他方の極性に対応する第2の端面電極が設けられたフィルムコンデンサ素子と、
前記フィルムコンデンサ素子の前記第1の端面電極に電気的に接続された第1の導体と、
前記フィルムコンデンサ素子の前記第2の端面電極に電気的に接続された第2の導体と、
前記フィルムコンデンサ素子を保持する保持部と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置される第1の絶縁部とを有し、一体成形品である絶縁部品と、
一方の面が開口しており、前記フィルムコンデンサ素子、前記絶縁部品、前記第1の導体、及び、前記第2の導体を収容し、前記第1極および前記第2極と異なる第3極の電極となる金属ケースと、
前記ケースに充填されて少なくとも前記フィルムコンデンサ素子をモールドする充填樹脂部と
を備えるケースモールド型フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記絶縁部品に、前記第1の導体と前記金属ケースとを絶縁する第2の絶縁部と、前記第2の導体と前記金属ケースとを絶縁する第3の絶縁部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁部品は、
前記フィルムコンデンサ素子が内側に配置される枠状の枠部と、
前記枠部のうちの前記金属ケースの前記開口の開口面と外面側が向き合う第1の側部の当該外面側に設けられた前記第1の絶縁部と、
前記枠部のうちの前記第1の側部以外に設けられた前記第2の絶縁部と、
前記枠部のうちの前記第1の側部以外に設けられた前記第3の絶縁部と
を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のケースモールド型フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第2の絶縁部は、前記枠部のうちの前記第1の側部と対向する第2の側部に設けられ、前記枠部の一の開口面から他の開口面に向かう方向での当該枠部の外側に前記第2の側部から延在する第1の延在部分と、当該第1の延在部分のうちの前記第2の側部側と反対側の部分で曲がって前記第2の側部から前記第1の側部に向かう方向に前記第1の延在部分の前記反対側の部分から延在する第2の延在部分を有し、
前記第3の絶縁部は、前記第2の側部に設けられ、前記枠部の前記他の開口面から前記一の開口面に向かう方向での当該枠部の外側に前記第2の側部から延在する第3の延在部分と、当該第3の延在部分のうちの前記第2の側部側と反対側の部分で曲がって前記第2の側部から前記第1の側部に向かう方向に前記第3の延在部分の前記反対側の部分から延在する第4の延在部分を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のケースモールド型フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多極性の極性間を絶縁するケースモールド型フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。特に、自動車業界においては、電気モータとガソリンエンジンで走行するハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記載する。)や電気自動車(以下、「EV」と記載する。)が市場導入されるなど、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV・EV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサ素子として、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサ素子が注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサ素子を採用する傾向が目立っている。なお、以下では、「金属化フィルムコンデンサ素子」を、単に、「フィルムコンデンサ素子」と記載する場合もある。
【0004】
このため、従来から、金属化フィルムコンデンサ素子(フィルムコンデンサ素子)をケースに充填樹脂とともに樹脂モールドしたケースモールド型フィルムコンデンサがある。ケースモールド型フィルムコンデンサとして、例えば、ケース、フィルムコンデンサ素子、一端側においてフィルムコンデンサ素子の一方の端面に形成された端面電極と接続され、他端側に外部接続端子部を有するP極バスバー、一端側においてフィルムコンデンサ素子の他方の端面に形成された端面電極と接続され、他端側に外部接続端子部を有するN極バスバー、ケースにフィルムコンデンサ素子が収容されている状態でケースに充填される充填樹脂、P極バスバーとN極バスバー間に配置された電極間絶縁部材、及び、P極バスバーとN極バスバーの外周側に配置された外周絶縁部材を有するケースモールド型フィルムコンデンサがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、異なる極性間では絶縁を必要とするため、異なる極性の数が増加した場合にはそれに比例して極性間の絶縁に用いる部品の点数が増加してしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加が抑えられたケースモールド型フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るケースモールド型フィルムコンデンサは、一方の端面に第1極又は第2極の一方の極性に対応する第1の端面電極が設けられ、他方の端面に他方の極性に対応する第2の端面電極が設けられたフィルムコンデンサ素子と、前記フィルムコンデンサ素子の前記第1の端面電極に電気的に接続された第1の導体と、前記フィルムコンデンサ素子の前記第2の端面電極に電気的に接続された第2の導体と、前記フィルムコンデンサ素子を保持する保持部と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置される第1の絶縁部とを有し、一体成形品である絶縁部品と、一方の面が開口しており、前記フィルムコンデンサ素子、前記絶縁部品、前記第1の導体、及び、前記第2の導体を収容し、前記第1極および前記第2極と異なる第3極の電極となる金属ケースと、前記ケースに充填されて少なくとも前記フィルムコンデンサ素子をモールドする充填樹脂部とを備えることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、フィルムコンデンサ素子を保持する保持部と、第1の導体(第1極又は第2極の一方の極性に対応するフィルムコンデンサ素子の第1の端面電極に接続されている導体)と第2の導体(第1極又は第2極の他方の極性に対応するフィルムコンデンサ素子の第2の端面電極に接続されている導体)との間に配置される第1の絶縁部とを有する絶縁部品を一体成形品にすることにより、第1の導体及び第2の導体それぞれを金属ケース(第3極の電極となるケース)と接触しないように配置することが容易になり、第1の導体および第2の導体と金属ケースとを絶縁することができ、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることができるとともに、部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることでケースモールド型フィルムコンデンサの組み立て作業の効率の向上を図ることができる。また、絶縁部品を一体成形品とすることで、絶縁部品の製造用の金型の個数の増加を防止できる。
【0010】
また、前記絶縁部品に、前記第1の導体と前記金属ケースとを絶縁する第2の絶縁部と、前記第2の導体と前記金属ケースとを絶縁する第3の絶縁部を設けてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1の導体と第2の導体とを絶縁する第1の絶縁部を有する絶縁部品に、第1の導体と金属ケースとを絶縁する第2の絶縁部、及び、第2の導体と金属ケースとを絶縁する第3の絶縁部を設けている。このようにして、第1の導体と第2の導体とを絶縁する絶縁部品を、第1の導体と金属ケースとの絶縁、及び、第2の導体と金属ケースとの絶縁に利用できるようにしている。このため、第1の導体と金属ケースとの絶縁および第2の導体と金属ケースとの絶縁とを確実にとることができ、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることができるとともに、部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることでケースモールド型フィルムコンデンサの組み立て作業の効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記絶縁部品は、前記フィルムコンデンサ素子が内側に配置される枠状の枠部と、前記枠部のうちの前記金属ケースの前記開口の開口面と外面側が向き合う第1の側部の当該外面側に設けられた前記第1の絶縁部と、前記枠部のうちの前記第1の側部以外に設けられた前記第2の絶縁部と、前記枠部のうちの前記第1の側部以外に設けられた前記第3の絶縁部とを有するとしてもよい。
【0013】
これによれば、第2の絶縁部及び第3の絶縁部を、第1の絶縁部が設けられている第1の側部以外の例えば同じ側部に設けることで、ケースモールド型フィルムコンデンサの組み立ての際に、第1の絶縁部が第2の絶縁部及び第3の絶縁部の邪魔になったり、第2の絶縁部及び第3の絶縁部が第1の絶縁部の邪魔になったりするのを防ぐことができる。
【0014】
また、前記第2の絶縁部は、前記枠部のうちの前記第1の側部と対向する第2の側部に設けられ、前記枠部の一の開口面から他の開口面に向かう方向での当該枠部の外側に前記第2の側部から延在する第1の延在部分と、当該第1の延在部分のうちの前記第2の側部側と反対側の部分で曲がって前記第2の側部から前記第1の側部に向かう方向に前記第1の延在部分の前記反対側の部分から延在する第2の延在部分を有し、前記第3の絶縁部は、前記第2の側部に設けられ、前記枠部の前記他の開口面から前記一の開口面に向かう方向での当該枠部の外側に前記第2の側部から延在する第3の延在部分と、当該第3の延在部分のうちの前記第2の側部側と反対側の部分で曲がって前記第2の側部から前記第1の側部に向かう方向に前記第3の延在部分の前記反対側の部分から延在する第4の延在部分を有するとしてもよい。
【0015】
これによれば、枠部の一の開口面から他の開口面に向かう方向での、第2の延在部の厚みにより、第1の導体と金属ケースとの絶縁を可能にしつつ、フィルムコンデンサ素子や第1の導体と金属ケースとの間のクリアランスができて充填樹脂部の厚みを確保できる。同様に、枠部の他の開口面から一の開口面に向かう方向での、第4の延在部の厚みにより、第2の導体と金属ケースとの絶縁を可能にしつつ、フィルムコンデンサ素子や第2の導体と金属ケースとの間にクリアランスができて充填樹脂部の厚みを確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルムコンデンサ素子を保持する保持部と、第1の導体と第2の導体との間に配置される第1の絶縁部とを有する絶縁部品を一体成形品にすることにより、第1の導体及び第2の導体それぞれを金属ケースと接触しないように配置することが容易になり、第1の導体および第2の導体と金属ケースとを絶縁することができ、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることができるとともに、部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることでケースモールド型フィルムコンデンサの組み立て作業の効率の向上を図ることができる。また、絶縁部品を一体成形品とすることで、絶縁部品の製造用の金型の個数の増加を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るケースモールド型フィルムコンデンサの分解斜視図である。
【
図2】
図1のケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスを示す図である。
【
図3】
図2に続くケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスを示す図である。
【
図4】
図3に続くケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスを示す図である。
【
図5】
図4に続くケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスを示す図である。
【
図6】
図4に続くケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスを示す図である。
【
図7】
図1のケースモールド型フィルムコンデンサを構成する結線ユニットの正面図(y軸負側からy軸正側を見た場合の平面図)であり、ケースモールド型フィルムコンデンサを構成する金属ケースを点線で示している。
【
図8】
図1のケースモールド型フィルムコンデンサを構成する結線ユニットの右面図(x軸正側からx軸負側を見た場合の平面図)であり、ケースモールド型フィルムコンデンサを構成する金属ケースを点線で示している。
【
図9】(a)は、本発明の第2の実施形態に係るケースモールド型フィルムコンデンサに関し、結線ユニットを絶縁スペーサで保持した状態の斜視図であり、(b)は絶縁スペーサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
≪第1の実施形態≫
以下、本発明の第1の実施形態について、
図1から
図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
1.ケースモールド型フィルムコンデンサの構造
本発明の第1の実施形態に係るケースモールド型フィルムコンデンサの構造について
図1から
図8を参照して説明する。なお、
図1~
図8のx軸、y軸、z軸は同一であり、ケースモールド型フィルムコンデンサが完成した状態での金属ケース60の側部63の外面がxz平面となり、金属ケース60の開口60Aの開口面がxy面となるようにしている。
【0021】
本発明の第1の実施形態に係るケースモールド型フィルムコンデンサ1は、
図1に示すように、複数の金属化フィルムコンデンサ素子(本発明の「フィルムコンデンサ素子」に相当。本実施形態では、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10D)、第1のバスバー(本発明の「第1の導体」に相当)20、第2のバスバー(本発明の「第2の導体」に相当)30、絶縁スペーサ(本発明の「絶縁部品」に相当)40、充填樹脂部50、及び、金属ケース60を備える。
【0022】
なお、以下では、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10D、第1のバスバー20、第2のバスバー30、絶縁スペーサ40を組み立て、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極12A,12B,12C,12Dと第1のバスバー20とを半田付けし、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極13A,13B,13C,13Dと第2のバスバー30とを半田付けした状態となったものを、適宜、結線ユニット2と記載する。
【0023】
金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dは、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に押圧することにより形成される。なお、本実施形態の金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dは、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムにより形成されるとしたが、これに限定されるものではなく、亜鉛、マグネシウム等の他の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよく、これらの金属のうち、複数の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよく、これらの金属同士の合金を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。
【0024】
金属化フィルムコンデンサ素子10Aには、一方の端面に、亜鉛等の金属の吹き付けにより第1の端面電極12Aが形成され、他方の端面に、同じく亜鉛等の金属の吹き付けにより第2の端面電極13Aが形成される(
図3、
図5参照)。
【0025】
金属化フィルムコンデンサ素子10B,10C,10Dは、金属化フィルムコンデンサ素子10Aと同様の構造をしており、金属化フィルムコンデンサ素子10B,10C,10Dの一方の端面に形成された第1の端面電極12B,12C,12D及び他方の端面に形成された第2の端面電極13B,13C,13Dとを含む(
図3、
図5参照)。
【0026】
なお、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dは、本発明の「フィルムコンデンサ素子」に相当し、第1の端面電極12A,12B,12C,12Dは、本発明の「第1の端面電極」に相当し、第2の端面電極13A,13B,13C,13Dは、本発明の「第2の端面電極」に相当する。
【0027】
4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dは、隣接する金属化フィルムコンデンサと互いに周面が対向するように上下左右に配列され(2行2列のマトリックス状に配列され)、この状態で、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第1の端面電極12A,12B,12C,12Dに第1のバスバー20が電気的に接続され、第2の端面電極13A,13B,13C,13Dに第2のバスバー30が電気的に接続される。第1のバスバー20は、銅などの導電性材料により形成され、第2のバスバー30は、銅などの導電性材料により形成される。
【0028】
本実施形態では、第1の端面電極12A,12B,12C,12DをP極(本発明の「第1極」に相当)側とし、第2の端面電極13A,13B,13C,13DをN極(本発明の「第2極」に相当)側とする。この場合、第1のバスバー20がP極側となり、第2のバスバー30がN極側となる。なお、第1の端面電極12A,12B,12C,12DをN極側とし、第2の端面電極13A,13B,13C,13DをP極側とし、この場合、第1のバスバーがN極側となり、第2のバスバーがP極側となるようにしてもよい。
【0029】
第1のバスバー20及び第2のバスバー30は、上述したように、銅などの導電性材料により形成されており、以下の形状をしている。
【0030】
第1のバスバー20には、ケースモールド型フィルムコンデンサ1が組み立てられた状態で、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第1の端面電極12A,12B,12C,12Dと接触する平板状の端面電極接触部21が設けられている。本実施形態では、
図5(a)に示すように、第1のバスバー20の端面電極接触部21と4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第1の端面電極12A,12B,12C,12Dの各々とを半田20A付けすることにより、第1のバスバー20と4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第1の端面電極12A,12B,12C,12Dの各々とが電気的に接続される。
【0031】
また、第1のバスバー20には、平板状の端面電極接触部21の一の側面(ケースモールド型フィルムコンデンサ1が組み立てられた状態での金属ケース60の開口60A側の側面:
図1のz軸正側の側面)側に、絶縁スペーサ40の後述する被組み付け部45に組み付ける組み付け部22が設けられている。組み付け部22は、
図1のxz断面においてz軸正側を上側、x軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、端面電極接続部21の
図1のz軸正側の側面側から
図1のx軸の負方向に延在する矩形の平板状をした第1の延在部22a、及び、第1の延在部22aの端面電極接触部21側と反対側の部分から
図1のz軸の正方向に延在する矩形の平板状をした第2の延在部22bを含むように形成されている。
【0032】
また、第1のバスバー20には、組み付け部22のうちの第2の延在部22bの、第1の延在部22a側と反対側の部分から、
図1のx軸の正方向に延在する、外部機器と電気的に接続される外部電極端子23が設けられている。本実施形態では、第1のバスバー20の外部電極端子23は、P極側の外部電極端子である。
【0033】
第2のバスバー30は、上述したように、銅などの導電性材料により形成されており、以下の形状をしている。
【0034】
第2のバスバー30には、ケースモールド型フィルムコンデンサ1が組み立てられた状態で、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第2の端面電極13A,13B,13C,13Dと接触する平板状の端面電極接触部31が設けられている。本実施形態では、
図5(b)に示すように、第2のバスバー30の端面電極接触部31と4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第2の端面電極13A,13B,13C,13Dの各々とを半田30A付けすることにより、第2のバスバー30と4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第2の端面電極13A,13B,13C,13Dの各々とが電気的に接続される。
【0035】
また、第2のバスバー30には、平板状の端面電極接触部31の一の側面(ケースモールド型フィルムコンデンサ1が組み立てられた状態での金属ケース60の開口60A側の側面:
図1のz軸正側の側面)側に、絶縁スペーサ40の後述する被組み付け部45に組み付ける組み付け部32が設けられている。組み付け部32は、
図1のxz断面においてx軸負側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、端面電極接続部31の
図1のz軸正側の側面側から
図1のx軸の正方向に延在する矩形の平板状をした第1の延在部32a、及び、第1の延在部32aの端面電極接触部31側と反対側の部分から
図1のz軸の正方向に延在する矩形の平板状をした第2の延在部32bを含むように形成されている。
【0036】
また、第2のバスバー30には、組み付け部32のうちの第2の延在部32bの、第1の延在部32a側と反対側の部分から、
図1のx軸の正方向に延在する、外部機器と電気的に接続される外部電極端子33が設けられている。本実施形態では、第2のバスバー30の外部電極端子33は、N極側の外部電極端子である。
【0037】
絶縁スペーサ40は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレートなどの樹脂で形成されており、絶縁性を有する。本実施形態では、絶縁スペーサ40は一体成形品である。なお、絶縁スペーサ40が本発明の「絶縁部品」に相当する。
【0038】
絶縁スペーサ40には、4つの側部41,42,43,44を含んで構成される、矩形状の枠部(本発明の「保持部」に相当)40Aが設けられている。ケースモールド型フィルムコンデンサ1が組み立てられた状態で、側部41は本発明の「第1の側部」に相当し、その外側が金属ケース60の開口60Aの開口面と向き合い、側部42は、金属ケース60の底面と向き合い(側部41と対向しており、側部42は本発明の「第2の側部」に相当する)、側部43,44は金属ケース60の側部63,64と向き合う。
【0039】
枠部40Aの内側には、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dが配置される(
図3(b),(c)、
図4等参照)。本実施形態では、4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dは、上述したように、隣接する金属化フィルムコンデンサ素子が互いに周面が対向するように上下左右に配列される(2行2列のマトリックス状に配列される)。なお、金属化フィルムコンデンサ素子の配列は2行2列に限らず、例えば1行4列や3行2列であってもよい。
【0040】
側部41には、側部41の
図1のz軸正側に、第1のバスバー20の組み付け部22が組み付けられるとともに、第2のバスバー30の組み付け部32が組み付けられる、被組み付け部45が設けられている。被組み付け部45は、
図1のxz断面においてx軸正側を上側、z軸負側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部41側から
図1のz軸の正方向に延在する第1の延在部(本発明の「第1の絶縁部」に相当)45a、第1の延在部45aの側部41側と反対側の部分から
図1のx軸の正方向に延在する第2の延在部45b、第1の延在部45aのy軸負側の端部からx軸の正負方向それぞれに突出し且つ第2の延在部45bのy軸負側の端部からz軸の正負方向それぞれに突出した第1の位置決め部45c、及び、第1の延在部45aのy軸正側の端部からx軸の正負方向それぞれに突出し且つ第2の延在部45bのy軸正側の端部からz軸の正負方向それぞれに突出した第2の位置決め部45dを含むように形成されている。
【0041】
ケースモールド型フィルムコンデンサ1を組み立てた状態において、第1のバスバー20の組み付け部22が、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41と絶縁スペーサ40の被組み付け部45とでできる空間にちょうど収まるようになっており、第1のバスバー20の組み付け部22の第2の延在部22bの
図1のx軸負側の面が、絶縁スペーサ40の被組み付け部45の第1の延在部45aの
図1のx軸正側の面に接触する。
【0042】
ケースモールド型フィルムコンデンサ1を組み立てた状態において、第2のバスバー30の組み付け部32が、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41及び被組み付け部45の外側にちょうど収まるようになっており、第2のバスバー30の組み付け部32の第2の延在部32bの
図1のx軸正側の面が、絶縁スペーサ40の被組み付け部45の第1の延在部45aの
図1のx軸負側の面に接触する。
【0043】
したがって、ケースモールド型フィルムコンデンサ1を組み立てた状態では、第1のバスバー20の組み付け部22の第2の延在部22bと、第2のバスバー30の組み付け部32の第2の延在部32bとは、
図1のx軸正側からx軸負側を見た平面視で重なり合っており、また、この重なり合っている部分では第1のバスバー20の組み付け部22の第2の延在部22bと第2のバスバー30の組み付け部32の第2の延在部32bとの間に、絶縁スペーサ40の被組み付け部45の第1の延在部45aが配置される。このように配置されている絶縁スペーサ40の被組み付け部45の第1の延在部45aは、第1のバスバー20(第1のバスバー20の組み付け部22の第2の延在部22b)と第2のバスバー30(第2のバスバー30の組み付け部32の第2の延在部32b)とを絶縁するように作用する。
【0044】
絶縁スペーサ40の第1の位置決め部45cと第2の位置決め部45dとは、第1のバスバー20及び第2のバスバー30の絶縁スペーサ40への取り付けに際しての、第1のバスバー20及び第2のバスバー30の位置決めに利用される。
【0045】
側部41と対向する側部42には、側部42の
図2のx軸負側の面に、止め部(本発明の「第3の絶縁部」に相当)46A、46B,46Cが設けられており、側部42の
図2のx軸正側の面に、止め部(本発明の「第2の絶縁部」に相当)47A、47B,47Cが設けられている。止め部46A,46Bと止め部47Cとは、金属化フィルムコンデンサ素子10Bを絶縁スペーサ40の枠部40Aに固定する際に利用されるものであり、止め部46Cと止め部47A,47Bとは、金属化フィルムコンデンサ素子10Cを絶縁スペーサ40の枠部40Aの内側に固定する際に利用されるものである。
【0046】
なお、止め部47Aと止め部47Bとの間のy軸方向の中間点が、金属化フィルムコンデンサ素子10Cのy軸方向の中間点に一致するように、止め部47Aと止め部47Bとを形成し、止め部46Cのy軸方向の中間点が、金属化フィルムコンデンサ素子10Cのy軸方向の中間点に一致するように止め部46Cを形成することが好ましい。また、止め部46Aと止め部46Bとの間のy軸方向の中間点が、金属化フィルムコンデンサ素子10Bのy軸方向の中間点に一致するように、止め部46Aと止め部46Bとを形成し、止め部47Cのy軸方向の中間点が、金属化フィルムコンデンサ素子10Bのy軸方向の中間点に一致するように止め部47Cを形成することが好ましい。但し、止め部47A,47Bおよび46Cの形成位置、止め部46A,46Bおよび47Cの形成位置は、金属化フィルムコンデンサ素子10C,10Bが保持される限り、上記に限定されない。
【0047】
止め部46Aは、
図2のxz断面においてx軸正側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部42の
図2のx軸負側の面から
図2のx軸の負方向に延在する第1の延在部46A1、及び、第1の延在部46A1の側部42側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部46A2を含むように形成されている。
【0048】
止め部46Bは、
図2のxz断面においてx軸正側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部43の
図2のx軸負側の面から
図2のx軸の負方向に延在する第1の延在部46B1、及び、第1の延在部46B1の側部43側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部46B2を含むように形成されている。
【0049】
止め部46Cは、
図2のxz断面においてx軸正側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部42の
図2のx軸負側の面から
図2のx軸の負方向に延在する第1の延在部46C1、及び、第1の延在部46C1の側部42側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部46C2を含むように形成されている。
【0050】
止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2の
図4、
図7のx軸方向の厚みは、第2のバスバー30の端面電極接触部31の
図4、
図7のx軸方向の厚みよりも厚くなっている(
図7参照)。なお、
図7は、
図1のケースモールド型フィルムコンデンサ1を構成する結線ユニット2の正面図(y軸負側からy軸正側を見た場合の平面図)であり、ケースモールド型フィルムコンデンサを構成する金属ケースを点線で示している。このような厚みの関係にすることで、ケースモールド型フィルムコンデンサ1を組み立てた状態で、第2のバスバー30の端面電極接触部31と金属ケース60との間にクリアランスができ(
図7参照)、止め部46A,46B,46C(止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2)は、第2のバスバー30(第2のバスバー30の端面電極接触部31)と金属ケース60とを絶縁するように作用する。
【0051】
また、止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2により形成される、第2のバスバー30の端面電極接触部31や金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dと、金属ケース60との間のクリアランスにより、充填樹脂部50のx軸方向の厚みを確保できる。
【0052】
止め部47Aは、
図2のxz断面においてx軸負側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部42の
図2のx軸正側の面から
図2のx軸の正方向に延在する第1の延在部47A1、及び、第1の延在部47A1の側部42側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部47A2を含むように形成されている。
【0053】
止め部47Bは、
図2のxz断面においてx軸負側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部42の
図2のx軸正側の面から
図2のx軸の正方向に延在する第1の延在部47B1、及び、第1の延在部47B1の側部42側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部47B2を含むように形成されている。
【0054】
止め部47Cは、
図2のxz断面においてx軸負側を上側、z軸正側を右側として見た場合に断面形状が略L字状をした形状をしており、側部42の
図2のx軸正側の面から
図2のx軸の正方向に延在する第1の延在部47C1、及び、第1の延在部47C1の側部42側と反対側の部分から
図2のz軸の正方向に延在する第2の延在部47C2を含むように形成されている。
【0055】
止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2の
図2、
図7のx軸方向の厚みは、第1のバスバー20の端面電極接触部21の
図2、
図7のx軸方向の厚みよりも厚くなっている(
図7参照)。このような厚みの関係にすることで、ケースモールド型フィルムコンデンサ1を組み立てた状態で、第1のバスバー20の端面電極接触部21と金属ケース60との間にクリアランスができ(
図7参照)、止め部47A,47B,47C(止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2)は、第1のバスバー20(第1のバスバー20の端面電極接触部21)と金属ケース60とを絶縁するように作用する。
【0056】
また、止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2により形成される、第1のバスバー20の端面電極接触部21や金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dと、金属ケース60との間のクリアランスにより、充填樹脂部50のx軸方向の厚みを確保できる。
【0057】
y軸負側からx軸正側を見た平面視において、止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2のx軸正側の面と止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2のx軸負側の面との距離は、結線ユニット2を金属ケース60に挿入可能であり、金属ケース60の側部61の内壁面と金属ケース60の側部62の内壁面との距離と略同じである。このようにすることにより、止め部46A,46B,46Cと、止め部47A,47B,47Cとは、金属ケース60内での結線ユニット2の位置決めに利用することができる。
【0058】
絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部42,43,44は、ケースモールド型フィルタコンデンサ1が組み立てられた状態で、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dや第1のバスバー20、第2のバスバー30を、金属ケース60と絶縁するように作用する。
【0059】
絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部43の
図1のz軸正側の面に
図1、
図2のy軸の負方向に突出した嵌合部48Aが設けられ、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部44の
図1、
図2のz軸正側の面に
図1のy軸の正方向に突出した嵌合部48Bが設けられている。
【0060】
絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部44の外面、側部42の外面、側部43の外面に外側に突出するガイド48が設けられている(
図1、
図5など参照)。
【0061】
金属ケース60は、アルミダイキャスト、銅などの導電性材料により形成され、本実施形態ではグランド電極(本発明の「第3極」の電極に相当)として用いられる。なお、金属ケース60は本発明の「金属ケース」に相当する。
【0062】
金属ケース60は、一方の面(
図1のz軸正側の面)が開放された開口60Aを有する直方体の箱状をしており、金属ケース60の側部64の内面、底部の内面、側部63の内面には、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部44の外面、側部42の外面、側部43の外面に突出して形成されたガイド48に対応する位置に、凹むように形成されたガイド溝65が形成されている(
図1、
図5参照)。
【0063】
金属ケース60の側部63の
図1のz軸正側の端部には、ケースモールド型フィルムコンデンサを組み立てた状態で、絶縁スペーサ60の嵌合部48Aが嵌め込まれる切り欠きの被嵌合部66Aが設けられている。また、金属ケース60の側部64の
図1のz軸正側の端部には、ケースモールド型フィルムコンデンサを組み立てた状態で、絶縁スペーサ60の嵌合部48Bが嵌め込まれる切り欠きの被嵌合部66Bが設けられている。
【0064】
充填樹脂部50は、金属ケース60と、組み立てた状態の金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10D、絶縁スペーサ40、第1のバスバー20、及び、第2のバスバー30との空きスペースを埋めるもので、例えば、エポキシ樹脂で形成される。なお、充填樹脂部50は、エポキシ樹脂に限らず、電子部品の封止樹脂として採用される種々の絶縁材料で形成することができる。なお、
図1では、充填樹脂部50が硬化したときの形状を模式的に示したものであり、硬化前は液体の状態で金属ケース60に充填される。
【0065】
金属ケース60の被嵌合部66A,66Bに、完成した結線ユニット2を構成する絶縁スペーサ40の嵌合部48A,48Bが嵌め込まれ、結線ユニット2が金属ケース6内部に収容される。絶縁スペーサ40の枠部40A内に配置された金属化フィルムコンデンサ素子10A,10Dのz軸正方向の上限位置は、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41のz軸負側の面で規制されるようになっている。
【0066】
金属ケース60の被嵌合部66A,66Bに、完成した結線ユニット2を構成する絶縁スペーサ40の嵌合部48A,48Bが嵌め込まれ、結線ユニット2が金属ケース6内部に収容された状態で、充填樹脂部50を形成する充填樹脂(注入時は液体である)が、少なくとも金属ケース60の開口60Aの開口面(
図8の点線L1で示す位置)からのz軸負方向の距離が第1の所定の距離になる位置(
図8の点線L2で示す位置)にまで、言い換えると、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41のz軸負側の面(
図8の点線L3で示す位置)からのz軸正方向の距離が第2の所定の距離になる位置(
図8の点線L2で示す位置)にまで、金属ケース60の開口60Aから注入される。なお、
図8は、
図1のケースモールド型フィルムコンデンサ1を構成する結線ユニット2の右面図(x軸正側からx軸負側を見た場合の平面図)であり、ケースモールド型フィルムコンデンサ1を構成する金属ケース60を点線で示している。
【0067】
この場合、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10Dの周面のうちのz軸正側の面(
図8の点線L4で示す位置)の上部(z軸の正方向)には、少なくとも
図8の点線L4の位置と、
図8の点線L2との距離を樹脂厚みとする充填樹脂部50が形成される。
【0068】
絶縁スペーサ40の枠部40A内に配置された金属化フィルムコンデンサ素子10A,10Dのz軸正方向の上限位置は絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41のz軸負側の面(
図8の点線L3で示す位置)で規制されるため、充填樹脂部50のz軸正方向の樹脂厚みとして、z軸の正方向において、
図8の点線L3で示す位置から
図8の点線L2までの距離以上を確保できる。
【0069】
従って、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41のz軸負側の面(
図8の点線L3で示す位置)からのz軸正方向の距離が所望の樹脂厚みとなるように、充填樹脂部50の注入を行う位置(
図8の点線L2で示す位置)を設定することにより、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10Dの周面のうちのz軸正側の面(
図8の点線L4で示す位置)の上部(z軸の正方向)の充填樹脂部50の樹脂厚み(
図8の点線L4で示す位置から
図8の点線L2で示す位置までのz軸の正方向の距離)として、所望の樹脂厚み以上を確保できる。
【0070】
2.ケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセス
以下、上述した構造のケースモールド型フィルムコンデンサの製造プロセスについて
図2から
図6を参照して説明する。
【0071】
図2(a)に示すように、絶縁スペーサ40を、x軸負側から、第1のバスバー20の組み付け部22が、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41と絶縁スペーサ40の被組み付け部45とでできる空間に収まるように、第1のバスバー20に組み付ける。この組み付けた状態は
図2(b)に示す通りである。
図2(c)は、絶縁スペーサ40を第1のバスバー20に組み付けた状態を、
図2(b)と異なる角度から見た図である。
【0072】
図3(a)に示すように、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dを、絶縁スペーサ40と第1のバスバー20とを組み付けた状態にある絶縁スペーサ40の枠部40Aの内側に、x軸負側からセットする。このセットした状態は
図3(b)に示す通りである。
図3(c)は、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dを枠部40Aの内側にセットした状態を、
図3(b)と異なる角度から見た図である。
【0073】
金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dのセットでは、例として、まず、金属化フィルムコンデンサ素子10Bをセットし、続いて、金属化フィルムコンデンサ素子10Cをセットし、続いて、金属化フィルムコンデンサ素子10Aをセットし、最後に、金属化フィルムコンデンサ素子10Dをセットする。この状態では、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dのy軸正負方向の移動及びz軸正負方向の移動は、枠部40Aにより規制される。また、金属化フィルムコンデンサ素子10B,10Cのx軸の正負方向の移動は、止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2により規制される。また、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dのx軸正方向の移動は、第1のバスバー20の端面電極接触部21により規制される。
【0074】
図4(a)に示すように、第2のバスバー30を、x軸負側から、第2のバスバー30の組み付け部32が、絶縁スペーサ40の枠部40Aの側部41及び被組み付け部45の外側に収まるように、絶縁スペーサ40に組み付ける。この組み付けた状態は
図4(b)に示す通りである。
図4(c)は、第2のバスバー30を絶縁スペーサ40に組み付けた状態を、
図4(b)と異なる角度から見た図である。金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dのx軸負方向の移動は、第2のバスバー30の端面電極接触部31により規制される。
【0075】
図5(a)に示すように、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極12A,12B,12C,12Dと第1のバスバー20の端面電極接触部21とを半田20Aではんだ付けし、
図5(b)に示すように、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極13A,13B,13C,13Dと第2のバスバー30の端面電極接触部31とを半田30Aではんだ付けする。4つの金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10D、第1のバスバー20、第2のバスバー30、絶縁スペーサ40を組み立て、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極12A,12B,12C,12Dと第1のバスバー20の端面電極接触部21とを半田20Aではんだ付けし、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの端面電極13A,13B,13C,13Dと第2のバスバー30の端面電極接触部31とを半田30Aではんだ付けすることにより、結線ユニット2が完成する。
【0076】
図6(a)に示すように、z軸正側から、結線ユニット2を、絶縁スペーサ40の枠部40Aの外面に形成されたガイド48を金属ケース60の内壁面に形成されたがガイド溝65に沿わして、金属ケース60に収容する。
【0077】
図6(b)に示すように、金属ケース60の開口60Aから、液体のエポキシ樹脂を注入し、所定の硬化温度で硬化させることで、
図6(c)のケースモールド型フィルムコンデンサ1が完成する。
【0078】
3.効果
以上の実施形態によれば、第1のバスバー(P極に対応する金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第1の端面電極12A,12B,12C,12Dに接続されている部品)と第2のバスバー(N極に対応する金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dの第2の端面電極13A,13B,13C,13Dに接続されている部品)とを絶縁する被取付け部材45の第1の延在部45aを有する絶縁スペーサ40に、第1のバスバー20と金属ケース60(グランド電極となる金属ケース)とを絶縁する止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2、及び、第2のバスバー30と金属ケース60(グランド電極となる金属ケース)とを絶縁する止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2を設けている。このようにして、第1のバスバー20と第2のバスバー30とを絶縁する絶縁スペーサ40を、第1のバスバー20と金属ケース40との絶縁、及び、第2のバスバー30と金属ケース40との絶縁に利用できるようにしている。このため、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることができるとともに、部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることでケースモールド型フィルムコンデンサ1の組み立て作業の効率の向上を図ることができる。
【0079】
また、絶縁スペーサ40の枠部40Aのうちの、第1のバスバー20と第2のバスバー30とを絶縁する被取付け部45の第1の延在部45aが形成される側部41以外の側部42に、第1のバスバー20とグランド電極としての金属ケース60とを絶縁する止め部47A、47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2を設け、第2のバスバー30とグランド電極としての金属ケース60とを絶縁する止め部46A、46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2を設けることで、ケースモールド型フィルムコンデンサ1の組み立ての際に、互いに邪魔になるのを防ぐことができる。
【0080】
また、絶縁スペーサ40の枠部40Aに形成された止め部47A,47B,47Cの第2の延在部47A2,47B2,47C2のx軸方向の厚みにより、第1のバスバー20と金属ケース60との絶縁を可能にしつつ、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dや第1のバスバー20と金属ケース60との間のクリアランスができて充填樹脂部50の厚みを確保できる。同様に、絶縁スペーサ40の枠部40Aに形成された止め部46A,46B,46Cの第2の延在部46A2,46B2,46C2のx軸方向の厚みにより、第2のバスバー30と金属ケース60との絶縁を可能にしつつ、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dや第2のバスバー30と金属ケース60との間のクリアランスができて充填樹脂部50の厚みを確保できる。
【0081】
また、絶縁スペーサ40を一体成形品とすることで、絶縁スペーサ40の製造用の金型の個数の増加を防止できる。
【0082】
≪第2の実施形態≫
以下、本発明の第2の実施形態について、
図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0083】
第2の実施形態のケースモールド型フィルムコンデンサは、第1の実施形態のケースモールド型フィルムコンデンサ1が備える絶縁スペーサ40を、
図9に示す絶縁スペーサ100に置き換えたものである。なお、それ以外の各構成部品は、第1の実施形態のケースモールド型フィルムコンデンサ1に備えられた対応する構成部品と同じ構成をしているのでその説明は省略する。
【0084】
第2の実施形態の絶縁スペーサ100は、第1の実施形態の絶縁スペーサ40から、止め部46A,46B,46Cおよび止め部47A,47B,47Cを除いた構成をしており、この点を除くと第1の実施形態の絶縁スペーサ40と同じ構造をしているのでこれ以上の説明は省略する。
【0085】
第2の実施形態によれば、金属化フィルムコンデンサ素子10A,10B,10C,10Dを保持する枠部40Aと、第1のバスバー20と第2のバスバー30との間に配置されてこれらを絶縁する第1の延在部45aを含む被組み付け部45と、を少なくとも有する絶縁スペーサ100を一体成形品とすることにより、第1のバスバー20及び第2のバスバー30それぞれを金属ケースと接触しないように配置することが容易になり、第1のバスバー20および第2のバスバー30と金属ケース60とを絶縁することができ、異なる極性の数が増加した場合に極性間の絶縁に用いる部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることができるとともに、部品(絶縁部品)の点数の増加を抑えることでケースモールド型フィルムコンデンサの組み立て作業の効率の向上を図ることができる。また、絶縁スペーサ100を一体成形品とすることで、絶縁スペーサ100の製造用の金型の個数の増加を防止できる。
【0086】
また、絶縁スペーサ100は、絶縁スペーサ40と同様に枠部40Aにガイド48が設けられているので、ガイド48を金属ケース60のガイド溝65に沿わして結線ユニット2を金属ケース60に収容することで、第1のバスバー20と第2のバスバー30とが金属ケース60に接触するのを確実に防止することができる。
【0087】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態では、3極(P極、N極、グランド電極)の絶縁を対象としているが、これに限定されるものではなく、4極(例えば、P極(High)、P極(Low)、N極、グランド電極)以上であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、被組み付け部45の断面形状を略L字状をしたが、これに限定されるものではなく、第1のバスバー20と第2のバスバー30とを絶縁可能な形状であれば、被組み付け部45の断面形状はこれに限定されない。
【0090】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0091】
本発明は、多極性の極性間を絶縁するケースモールド型フィルムコンデンサに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1:ケースモールド型フィルムコンデンサ
2:結線ユニット
10A,10B,10C,10D:金属化フィルムコンデンサ素子
12A,12B,12C,12D:第1の端面電極
13A,13B,13C,13D:第2の端面電極
20:第1のバスバー(第1の導体)
22:組み付け部
30:第2のバスバー(第2の導体)
32:組み付け部
40,100:絶縁スペーサ(絶縁部品)
40A:枠部
45:被組み付け部
46A,46B,46C:止め部
47A,47B,47C:止め部
50:充填樹脂部
60:金属ケース