(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147593
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】流体供給装置および方法
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F15B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055175
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智己
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA02
3H089BB14
3H089BB17
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB05
3H089EE36
3H089FF08
3H089GG02
3H089JJ06
(57)【要約】
【課題】関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータに流体を給排する流体供給装置の消費エネルギを削減する。
【解決手段】流体供給装置10は、関節Ja,Jbを介して連結された2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させる複動アクチュエータ3の第1および第2流体室31,32に作動油を給排するものであり、リニアソレノイドバルブ151等を用いて第1流体室31における油圧を調整すると共に、リニアソレノイドバルブ152等を用いて第2流体室32における油圧を調整し、複動アクチュエータ3に動作方向と逆向きの力を発生させるときに、対をなすリニアソレノイドバルブ151,152等のうちの第1または第2流体室31,32に作動油を供給する一方の出力ポート15oをドレンポート15dを介して加圧タンク11に連通させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータの第1流体室および第2流体室に流体を給排する流体供給装置であって、
前記流体を貯留する流体貯留部と、
前記流体貯留部から前記流体を吸引して吐出するポンプと、
前記ポンプから前記流体が供給される第1入力ポート、前記第1流体室に連通する第1出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとに連通可能な第1ドレンポートを有し、前記第1出力ポートにおける前記流体の圧力または流量を調整する第1流体調整バルブと、
前記ポンプから前記流体が供給される第2入力ポート、前記第2流体室に連通する第2出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとに連通可能な第2ドレンポートを有し、前記第2出力ポートにおける前記流体の圧力または流量を調整する第2流体調整バルブと、
前記第1および第2流体調整バルブを制御すると共に、前記複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブのうちの前記第1または第2流体室に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポートを前記第1または第2ドレンポートを介して前記流体貯留部に連通させる制御装置と、
を備える流体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体供給装置において、
前記制御装置は、前記複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、前記第1または第2流体室から前記流体を排出させる前記第1および第2流体調整バルブの他方を前記第1または第2出力ポートにおける前記流体の圧力または流量が前記複動アクチュエータに要求される前記逆向きの力に応じた値になるように制御する流体供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体供給装置において、
前記第1流体調整バルブの前記第1ドレンポートおよび前記第2流体調整バルブの前記第2ドレンポートを前記流体貯留部に連通させる流体返送通路を更に備え、
前記流体貯留部は、前記流体を大気圧よりも高い圧力で貯留する加圧タンクである流体供給装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の流体供給装置において、
前記第1および第2流体調整バルブは、電磁部、スプール、前記スプールを付勢するスプリング、前記第1または第2出力ポートに連通するフィードバックポートを含み、前記電磁部が発生する推力と、前記スプリングの付勢力と、前記第1または第2出力ポートから前記フィードバックポートに供給される前記流体の圧力の作用により前記スプールに加えられる推力とをバランスさせて前記第1または前記第2出力ポートにおける前記流体の圧力を調整する流体供給装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の流体供給装置において、
前記複動アクチュエータは、シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に配置されるピストンと、前記ピストンに固定されるピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの一側に画成される前記第1流体室と、前記シリンダ内の前記ピストンの他側に画成される前記第2流体室とを含む複動シリンダである流体供給装置。
【請求項6】
関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータの第1流体室および第2流体室に流体を給排する流体供給方法であって、
流体貯留部から前記流体を吸引して吐出するポンプから前記流体が供給される第1入力ポート、前記第1流体室に連通する第1出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとに連通可能な第1ドレンポートを有する第1流体調整バルブを用いて前記第1流体室における前記流体の圧力を調整すると共に、前記ポンプから前記流体が供給される第2入力ポート、前記第2流体室に連通する第2出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとに連通可能な第2ドレンポートを有する第2流体調整バルブを用いて前記第2流体室における前記流体の圧力を調整し、
前記複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブのうちの前記第1または第2流体室に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポートを前記第1または第2ドレンポートを介して前記流体貯留部に連通させる流体供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータに流体を給排する流体供給装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機器の油圧シリンダを駆動する油圧シリンダ回路として、油圧シリンダのボトム側(伸び側)油室およびロッド側(縮み側)油室に接続される3ポジション式のコントロールバルブ(油圧パイロット切換弁)を含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この油圧シリンダ回路では、油圧シリンダのボトム側油室とコントロールバルブとを結ぶボトム側管路に、油圧シリンダの縮み側への操作時にボトム側油室から排出される戻り油をコントロールバルブを経由させずに直接タンクに戻す分岐管路が接続されている。更に、分岐管路には、油圧シリンダの縮み側への操作時にのみ油の流れを許容するクイックリターンバルブが設けられ、クイックリターンバルブの出口には、上記戻り油の一部を油圧シリンダのロッド側油室に供給するための再生回路が接続される。また、当該再生回路は、油圧シリンダの縮み側への操作時にクイックリターンバルブが油の流れを許容するときだけ、ボトム側油室からロッド側油室に戻り油を供給する。これにより、油圧シリンダの縮み側への操作時に、クイックリターンバルブによりボトム側油室からの戻り油の一部を直接タンクに戻して戻り側の圧力損失を低減すると共に、ロッド側油室における油の流量不足を再生回路からの戻り油で補ってキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0003】
また、従来、第1ノードと、当該第1ノードに連結される第2ノードと、第1および第2ノードに連結される油圧シリンダとを有するリンク機構を含む油圧マニピュレータが知られている(例えば、特許文献2参照)。この油圧マニピュレータは、更に、作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧シリンダのキャップ側空間に供給される単位時間当たりの作動油の供給量を調整する第1調整弁と、油圧シリンダのロッド側空間に供給される単位時間当たりの作動油の供給量を調整する第2調整弁とを含む。すなわち、油圧ポンプから吐出された作動油は、第1調整弁を介して油圧シリンダのキャップ側空間に供給されると共に、第2調整弁を介して油圧シリンダのロッド側空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-137062号公報
【特許文献2】特開2018-065197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2に記載されたような油圧マニピュレータに特許文献1に記載された3ポジション式のコントロールバルブ、クイックリターンバルブおよび再生回路を適用することで、油圧シリンダの収縮時にクイックリターンバルブによりキャップ側空間からの戻り油の一部を直接タンクに戻して戻り側の圧力損失を低減すると共に、ロッド側空間における油の流量不足を再生回路からの戻り油で補うことができるであろう。しかしながら、3ポジション式のコントロールバルブは、高い制御精度や応答性が要求される油圧マニピュレータの油圧シリンダに対する作動油の給排には不向きである。また、特許文献2に記載されたような油圧マニピュレータでは、流体供給源としての油圧ポンプにより圧送される高圧の作動油の消費を抑えて、当該油圧ポンプの消費エネルギ等を削減することが求められるが、特許文献2は、油圧ポンプにより圧送される高圧の作動油の消費の抑制に関する事項を開示も示唆もしていない。
【0006】
そこで、本開示は、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータに流体を給排する流体供給装置の消費エネルギを削減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の流体供給装置は、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータの第1流体室および第2流体室に流体を給排する流体供給装置であって、前記流体を貯留する流体貯留部と、前記流体貯留部から前記流体を吸引して吐出するポンプと、前記ポンプから前記流体が供給される第1入力ポート、前記第1流体室に連通する第1出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとに連通可能な第1ドレンポートを有し、前記第1出力ポートにおける前記流体の圧力または流量を調整する第1流体調整バルブと、前記ポンプから前記流体が供給される第2入力ポート、前記第2流体室に連通する第2出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとに連通可能な第2ドレンポートを有し、前記第2出力ポートにおける前記流体の圧力または流量を調整する第2流体調整バルブと、前記第1および第2流体調整バルブを制御すると共に、前記複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブのうちの前記第1または第2流体室に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポートを前記第1または第2ドレンポートを介して前記流体貯留部に連通させる制御装置とを含むものである。
【0008】
本開示の流体供給装置では、ポンプにより吐出された流体が第1流体調整バルブの第1入力ポートおよび第2流体調整バルブの第2入力ポートに供給される。第1流体調整バルブは、制御装置により制御されて複動アクチュエータの第1流体室に連通する第1出力ポートにおける流体の圧力または流量を調整する。また、第2流体調整バルブは、制御装置により制御されて複動アクチュエータの第2流体室に連通する第2出力ポートにおける流体の圧力または流量を調整する。更に、制御装置は、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、第1および第2流体調整バルブのうちの第1または第2流体室に流体を供給する一方の第1または第2出力ポートを第1または第2ドレンポートを介して流体貯留部に連通させる。これにより、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体が供給されることになる複動アクチュエータの第1および第2流体室の一方は、対応する第1または第2流体調整バルブの第1または第2出力ポートおよび第1または第2ドレンポートを介して流体貯留部側の流体を吸引する。この結果、流体が供給されるべき第1または第2流体室に対してポンプ側から供給すべき流体の量、すなわちポンプにより吐出される流体の消費量を低減させて、当該ポンプひいては流体供給装置の消費エネルギを削減することが可能となる。
【0009】
本開示の流体供給方法は、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる複動アクチュエータの第1流体室および第2流体室に流体を給排する流体供給方法であって、流体貯留部から前記流体を吸引して吐出するポンプから前記流体が供給される第1入力ポート、前記第1流体室に連通する第1出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとに連通可能な第1ドレンポートを有する第1流体調整バルブを用いて前記第1流体室における前記流体の圧力を調整すると共に、前記ポンプから前記流体が供給される第2入力ポート、前記第2流体室に連通する第2出力ポート、および前記流体貯留部に連通すると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとに連通可能な第2ドレンポートを有する第2流体調整バルブを用いて前記第2流体室における前記流体の圧力を調整し、前記複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブのうちの前記第1または第2流体室に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポートを前記第1または第2ドレンポートを介して前記流体貯留部に連通させるものである。
【0010】
かかる方法によれば、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体が供給されるべき第1または第2流体室に対してポンプ側から供給すべき流体の量、すなわちポンプにより吐出される流体の消費量を低減させて、当該ポンプひいては流体供給装置の消費エネルギを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の流体供給装置を含むロボット装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図1のロボット装置の流体アクチュエータを示す断面図である。
【
図4】本開示の流体供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本開示の流体供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本開示の流体供給装置の動作を説明するための系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図である。同図に示すロボット装置1は、ロボットアーム(ロボット本体)2と、当該ロボットアーム2を作動させる流体アクチュエータとしての複数(本実施形態では、2つ)の複動シリンダ(流体シリンダ)3に作動油(流体)を給排する流体供給装置(液体供給装置)10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な無人搬送車(AGV)または自律走行搬送ロボット(AMR)である搬送台車に搭載されるか、あるいは予め定められた設置箇所に定置されて使用される。ロボットアーム2は、
図1に示すように、複数の複動シリンダ3に加えて、支持部材(ブラケット)4と、複数のアーム(リンク)5a,5b,5cと、当該複数のアーム5a,5b,5cとの協働により第1および第2の平行リンク機構を構成するリンク6a,6b,6c,6dと、把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)7と、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)Ja,Jb,Jcとを含む多関節アームである。
【0014】
ロボットアーム2の各複動シリンダ3は、
図2に示すように、シリンダ(シリンダチューブ)30と、当該シリンダ30内に軸方向に摺動自在に配置されるピストン34と、当該ピストン34に同軸に固定されるピストンロッド35とを含む。更に、各複動シリンダ3は、シリンダ30内のピストン34の一側(
図2における右側)に画成される第1流体室(伸長側流体室)31と、シリンダ30内のピストン34の他側(
図2における左側)に画成される第2流体室(収縮側流体室)32とを含む。流体供給装置10により第1流体室31に作動油を供給すると共に第2流体室32から作動油を排出させることで、ピストン34およびピストンロッド35をシリンダ30に対して
図2における左側に移動させて複動アクチュエータとしての複動シリンダ3を伸長させることができる。また、流体供給装置10により第2流体室32に作動油を供給すると共に第1流体室31から作動油を排出させることで、ピストン34およびピストンロッド35をシリンダ30に対して
図2における右側に移動させて複動シリンダ3を収縮させることができる。
【0015】
ロボットアーム2のアーム5aは、
図1に示すように、関節Jaを介してリンクとしての支持部材4に回動自在に連結され、本実施形態では単一の複動シリンダ3の伸縮により支持部材4に対して回動する。支持部材4およびアーム5aすなわち関節Jaに対応した複動シリンダ3の一端(ピストンロッド35の端部)は、支持部材4に固定されたレバー部材に回動自在に連結され、他端(シリンダ30の端部)は、アーム5aの先端部(アーム5b側の端部)に回動自在に連結される。また、アーム5bは、関節Jbを介してアーム5aに回動自在に連結され、本実施形態では単一の複動シリンダ3の伸縮によりアーム5aに対して回動する。アーム5a,5bすなわち関節Jbに対応した複動シリンダ3の一端(ピストンロッド35の端部)は、アーム5aの基端部(支持部材4側の端部)に回動自在に連結され、他端(シリンダ30の端部)は、アーム5bの基端部(アーム5a側の端部)に固定されたレバー部材に回動自在に連結される。更に、アーム5cは、関節Jcを介してアーム5bの先端部に回動自在に連結される。ただし、支持部材4およびアーム5aに対して、平行に配列される複数の複動シリンダ3が設けられてもよく、アーム5a,5bに対して、平行に配列される複数の複動シリンダ3が設けられてもよい。
【0016】
リンク6aは、支持部材4に固定され、リンク6bの基端部は、関節Jbを介してアーム5aの先端部およびアーム5bの基端部に回動自在に連結される。また、リンク6cは、アーム5aと同一のリンク長を有し、リンク6aの遊端部(ピボット部)に回動自在に連結されると共に、関節Jbからリンク6aのリンク長に相当する長さだけ離間した位置でリンク6bに回動自在に連結される。これにより、アーム5aを固定リンクとし、リンク6aを駆動リンクとし、リンク6bを従動リンクとし、リンク6cを中間リンクとする第1の平行リンク機構が構成される。更に、リンク6dは、関節Jcから所定長さだけ離間した位置でアーム5cに回動自在に連結されると共に、関節Jbから当該所定長さだけ離間した位置でリンク6bに回動自在に連結される。これにより、アーム5bを固定リンクとし、リンク6bを駆動リンクとし、アーム5cを従動リンクとし、リンク6dを中間リンクとする第2の平行リンク機構が構成される。そして、これらの第1および第2の平行リンク機構の作用により、アーム5cは、アーム5a,5bの回動角度に拘わらず搬送台車の走行面またはロボット装置1の設置面に対して常時平行に維持される。
【0017】
ロボットアーム2のハンド部7は、最も手先側のアーム5cに取り付けられており、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100により制御される。また、流体供給装置10は、各複動シリンダ3に作動流体としての作動油を給排するように制御装置100により制御される。これにより、ロボットアーム2を油圧(流体圧)により駆動してハンド部7を所望の位置に移動させることができる。ただし、流体供給装置10は、例えば水といった作動油以外の液体を各複動シリンダ3に給排するものであってもよく、例えば圧縮空気等の気体を各複動シリンダ3に給排するものであってもよい。
【0018】
図3は、各複動シリンダ3に作動流体としての作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10を示す系統図である。同図に示すように、流体供給装置10は、作動油貯留部(流体貯留部)を画成する加圧タンク11と、流体供給源としてのポンプ13と、バルブボディVBと、リリーフ弁(圧力制御弁)RVと、逆止弁CVと、アキュムレータ(蓄圧器)14と、流体調整部としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154とを含む。
【0019】
加圧タンク11は、作動油を大気圧よりも高い圧力(例えば、300kPa程度)で貯留するものである。加圧タンク11は、圧縮空気やバネ等により作動油を加圧するものであってもよく、例えばダイヤフラム式のアキュムレータであってもよい。図示するように、加圧タンク11には、リニアソレノイドバルブ151,152,153,154等からの作動油を当該加圧タンク11内に返送するための流体返送通路LDが接続されている。ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、加圧タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、インペラ等を含むポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構、制御装置100により制御されるインバータ等の駆動回路等を有する駆動ユニット130とを含む。リリーフ弁RVは、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧Plim(上限値、本実施形態では、例えば6-7MPa程度)を超えないように制限するものである。逆止弁CVは、ポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を流体供給通路LLに流出させると共に、流体供給通路LL側からポンプ13(およびリリーフ弁RV)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で流体供給通路LLに接続(直結)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。更に、流体供給通路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で当該流体供給通路LLにおける作動油の圧力すなわち元圧としてのライン圧PLを検出する元圧センサPSが設置されている。
【0020】
リニアソレノイドバルブ151-154は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディVB内に配置されると共に制御装置100により制御される。
図3に示すように、リニアソレノイドバルブ(第1流体調整バルブ)151は、関節Ja(支持部材4およびアーム5a)に対応した複動シリンダ3の第1流体室31への油圧(駆動圧)を調整する。リニアソレノイドバルブ(第2流体調整バルブ)152は、関節Jaに対応した複動シリンダ3の第2流体室32への油圧を調整する。リニアソレノイドバルブ(第1流体調整バルブ)153は、関節Jb(アーム5a,5b)に対応した複動シリンダ3の第1流体室31への油圧を調整する。リニアソレノイドバルブ(第2流体調整バルブ)154は、関節Jbに対応した複動シリンダ3の第2流体室32への油圧を調整する。すなわち、リニアソレノイドバルブ151-154は、複数の複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32ごとに設けられる。
【0021】
図3に示すように、リニアソレノイドバルブ151-154は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、バルブボディVBにより保持されるスリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(
図6中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151,153は、入力ポート(第1入力ポート)15iと、出力ポート(第1出力ポート)15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート(第1フィードバックポート)15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート(第1ドレンポート)15dとを含む。同様に、リニアソレノイドバルブ152,154も、入力ポート(第2入力ポート)15iと、出力ポート(第2出力ポート)15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート(第2フィードバックポート)15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート(第2ドレンポート)15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-154の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で流体供給通路LLにそれぞれ連通し、当該流体供給通路LLを介してポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油(ライン圧PL)の供給を受ける。する。また、リニアソレノイドバルブ151-154のドレンポート15dは、それぞれ流体返送通路LDを介して加圧タンク11内に連通する。
【0022】
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-154は、常閉弁であり、スプール15sは、電磁部15eに電流が供給されていない非通電時にスプリング15spの付勢力により入力ポート15iと出力ポート15oとの連通を遮断すると共に出力ポート15oとドレンポート15dとを連通させる。そして、リニアソレノイドバルブ151-154の電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sをスプリング15spの付勢力に抗して軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
【0023】
また、各複動シリンダ3の第1または第2流体室31,32における油圧(駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-154にフィードバックすることで、複動シリンダ3により駆動されるロボットアーム2に当該複動シリンダ3以外からの外力が加えられたときに、当該外力による第1、第2流体室31,32の容積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。更に、当該外力が無くなった後には、各複動シリンダ3が要求される力を発生するようにリニアソレノイドバルブ151-154により出力ポート15oすなわち各複動シリンダ3の第1または第2流体室31,32における作動油の圧力を速やかに調整することが可能となる。
【0024】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-154の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサ等の検出値を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される流体供給通路LLにおける油圧すなわちライン圧PLが目標圧になるようにポンプ13の駆動ユニット130を制御する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-154の電磁部15eに供給される電流を制御する。また、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-154の電磁部15eを流れる電流を検出する図示しない複数の電流検出部を含み、各電流検出部により検出される電流を監視する。更に、制御装置100は、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32における油圧を検出する図示しない複数の圧力センサからの検出値や、ポンプ13の回転数、駆動ユニット130のインバータからポンプ13の電動モータに供給される電流等を監視する。制御装置100は、これらの電流や圧力、回転数等に基づいて各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32への油圧の供給異常の有無等を判定する。
【0025】
続いて、
図4から
図6を参照しながら、上述のように構成されるロボット装置1における複動シリンダ3の制御手順について説明する。
【0026】
ロボット装置1の制御装置100は、例えばハンド部7を把持対象まで移動させ、当該ハンド部7に把持対象を把持させて移送させる場合、ロボットアーム2の作動開始に先立って(ハンド部7の移動開始前に)、ハンド部7の最終的な目標到達位置と、初期位置から当該目標到達位置までのハンド部7の目標軌道とを設定する。制御装置100は、例えばカメラ等により取得されるデータに基づいて導出された把持対象の位置と、例えばユーザにより与えられているハンド部7の移動中の目標速度および目標加速度とに基づいて目標到達位置および目標軌道を設定する。また、目標軌道は、予め定められた数(複数)の目標位置すなわち経由位置(3次元座標)を含むように設定される。目標到達位置および目標軌道の設定後、制御装置100は、
図4に示すロボットアーム制御ルーチンを予め定められた実行周期dt(例えば10ms程度)で繰り返し実行する。
【0027】
図4のルーチンの開始に際して、制御装置100は、先に設定した目標位置と、図示しない複数の関節角度センサにより取得された関節Ja-Jcの関節角度θa,θb,θcを取得する(ステップS10)。以下、“i”を関節の番号として(ただし、本実施形態において、i=1,2であり、1番目の関節が関節Jaであり、2番目の関節が関節Jbである。)、i番目の関節を“関節Ji”といい、関節Jiの関節角度を“θi”という。ステップS10にて取得される目標位置は、上記目標軌道における1番目の目標位置または
図4のルーチンの前回実行時に設定された目標位置である。
【0028】
次いで、制御装置100は、取得した関節角度θa-θcとロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元とに基づいて、ハンド部7の現在位置(3次元座標)を導出し(ステップS20)、ハンド部7の現在位置が前回位置から変化しているか否か(ハンド部7が移動しているか否か)を判定する(ステップS30)。制御装置100は、ハンド部7の現在位置が前回位置から変化していると判定した場合(ステップS30:YES)、当該現在位置が目標位置に実質的に一致しているか否かを判定する(ステップS40)。現在位置が目標位置に実質的に一致していると判定した場合(ステップS40:YES)、制御装置100は、ステップS10にて取得した目標位置の次の目標位置を取得する(ステップS50)。ハンド部7の現在位置が目標位置に実質的に一致していない場合、ステップS50の処理は、スキップされる。
【0029】
ステップS40またはS50の処理の後、制御装置100は、ステップS10またはS50にて取得した目標位置を制御に用いられる目標位置に設定し(ステップS60)、当該目標位置とステップS20にて導出したハンド部7の現在位置とに基づいて各関節Jiについての目標トルクTtag(i)を設定する(ステップS70)。ステップS70において、制御装置100は、ハンド部7が仮想的なバネおよびダンパが発生する引張力Fにより現在位置から把持対象あるいは当該把持対象の移送先まで引っ張られるとの仮定のもと、予め定められた関係式に従ってハンド部7の目標位置と現在位置とに応じた引張力Fを算出する。更に、制御装置100は、当該引張力Fと予め定められたヤコビ行列とから、関節Jiごとに、ハンド部7が現在位置から目標位置まで移動するように対応する2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させる関節トルクを算出し、算出した関節トルクを各関節Jiの目標トルクTtag(i)に設定する。
【0030】
各関節Jiの目標トルクTtag(i)を設定した後、制御装置100は、関節JaおよびJbすなわち複数(2つ)の複動シリンダ3ごとに、第1流体室31に供給されるべき油圧の目標圧力Ptag1(i)と、第2流体室32に供給されるべき油圧の目標圧力Ptag2(i)とを設定する(ステップS80)。
図5は、ステップS80における目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)の設定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、制御装置100は、まず、変数iを“1”に設定する(ステップS800)。更に、制御装置100は、関節Jiについての目標トルクTtag(i)、関節Jiの目標剛性R(i)、および関節Jiの現在の関節角度θiを取得する(ステップS810)。目標剛性R(i)は、関節Jiごとに別途設定されるものであり、当該関節Jiがもつべき剛性、すなわち関節Jiを介して連結される2つのアーム5a,5b等(リンク)を単位角度だけ相対的に回動させるのに必要な力(トルク)であって、当該2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させようとする外力に対する関節Jiの動きにくさを示すものである。
【0031】
次いで、制御装置100は、ステップS810にて取得した関節Jiの目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)に基づいて、関節Jiに対応した複動シリンダ3に要求される要求推力Ft(i)を導出する(ステップS820)。本実施形態では、関節Jiの目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)と当該関節Jiに対応した複動シリンダ3に要求される要求推力Ft(i)との関係を規定した図示しない推力設定マップが予め実験・解析を経て用意されている。ステップS820において、制御装置100は、当該推力設定マップから目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)に対応した要求推力Ft(i)を導出する。また、本実施形態において、要求推力Ft(i)は、例えば複動シリンダ3を伸長させる方向のときに正の値になり、複動シリンダ3を収縮させる方向のときに負の値になると定義されている。
【0032】
また、制御装置100は、ステップS810にて取得した関節Jiの現在の関節角度θiに基づいて、当該関節Jiに対応した複動シリンダ3のピストンロッド35の現在位置(初期位置(ゼロ点)からの変位)lr(i)を算出する(ステップS830)。ステップS830において、現在位置lr(i)は、リンクとしての支持部材4、アーム5a-5cの幾何学的関係に基づいて予め定められる関係式と関節角度θiとから得ることができる。更に、制御装置100は、ステップS830にて算出した現在位置lr(i)から
図5のルーチンの前回実行時にステップS830にて算出した現在位置lr(i)を減算して上記実行周期dtにおけるピストンロッド35の変位dr(i)(=今回lr(i)-前回lr(i))を算出する(ステップS840)。また、本実施形態では、例えば複動シリンダ3を伸長させるときの変位の方向が正とされ、複動シリンダ3を収縮させるときの変位の方向が負とされる。
【0033】
ステップS840の処理の後、制御装置100は、関節Jiに対応した複動シリンダ3への油圧を調整する2つのリニアソレノイドバルブ151,152等の一方のみへの油圧の調整により当該複動シリンダ3に要求推力Ft(i)を発生させる片側調圧制御を実行すべきか否かを判定する(ステップS850)。本実施形態において、片側調圧制御は、複動シリンダ3に発生させる推力すなわちステップS820にて導出した要求推力Ft(i)の向きと、当該複動シリンダ3の動作方向すなわちステップS840にて算出したピストンロッド35の変位dr(i)の向きとが逆向きであることを条件に実行される。また、後述の複動シリンダ3のヒステリシス特性を考慮した制御の連続性や複動シリンダ3の動作速度が小さい領域での制御性を確保するため、片側調圧制御は、要求推力Ft(i)の絶対値が予め定められた比較的小さい推力閾値よりも大きく、かつ変位dr(i)の絶対値が予め定められた比較的小さい変位閾値よりも大きいことを条件に実行される。
【0034】
ステップS850にて片側調圧制御を実行すべきでないと判定した場合(ステップS850:NO)、制御装置100は、ステップS840にて算出した変位dr(i)の符号に基づいて、第1流体室31の目標圧力Ptag1(i)と第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)とを設定するためのマップを選択する(ステップS855)。ここで、複動シリンダ3は、第1流体室31に供給される油圧と第2流体室32に供給される油圧との差圧(絶対値)が同一であっても、ピストン34およびピストンロッド35の移動方向によって、当該複動シリンダ3により出力される推力の大きさが変化する、いわゆるヒステリシス特性を有する。これを踏まえて、本実施形態では、第1流体室31の目標圧力Ptag1(i)と、第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)とを設定するために、複動シリンダ3のヒステリシス特性を考慮した第1および第2目標圧力設定マップ(図示省略)が予め実験・解析を経て関節Ja,Jbごとに用意されている。
【0035】
第1目標圧力設定マップは、ピストン34(およびピストンロッド35)が第1流体室31から第2流体室32に向かう方向(正方向)に移動するときの要求推力Ft(i)に対応した第1流体室31の目標圧力Ptag1(i)および第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)を規定するものである。また、第2目標圧力設定マップは、ピストン34(およびピストンロッド35)が第2流体室32から第1流体室31に向かう方向(負方向)に移動するときの要求推力Ft(i)に対応した第1流体室31の目標圧力Ptag1(i)および目標圧力Ptag2(i)を規定するものである。本実施形態において、負方向に対応した第2目標圧力設定マップは、正方向に対応した第1目標圧力設定マップに比べて、同一の要求推力Ft(i)に対応した作動油が供給される側の第1または第2流体室31,32への油圧を実験・解析を経て適合される値だけ例えば高くするように作成される。
【0036】
ステップS855において、制御装置100は、変位dr(i)の符号が正である場合、関節Jiに対応した第1目標圧力設定マップを選択し、変位dr(i)の符号が負である場合、関節Jiに対応した第2目標圧力設定マップを選択する。そして、制御装置100は、変位dr(i)の符号に応じて選択した関節Jiに対応した第1または第2目標圧力設定マップを用いて、ステップS820にて導出した要求推力Ft(i)に対応した目標圧力Ptag1(i)およびに目標圧力Ptag2(i)を設定する(ステップS865)。このように複動シリンダ3のヒステリシス特性を考慮することで、ロボットアーム2への要求に応じて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を精度よく設定することが可能となる。
【0037】
一方、ステップS850にて要求推力Ft(i)と変位dr(i)とが逆向きであって両者の絶対値が比較的大きく片側調圧制御を実行すべきであると判定した場合(ステップS850:YES)、制御装置100は、ステップS840にて算出した変位dr(i)の符号に基づいて、関節Jiの複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32から、ピストン34の移動に応じて容積が増加する一方を特定し、特定した第1または第2流体室31,32に対応したリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に予め定められたリニアソレノイドバルブ151-154の全閉時の圧力Pcを設定する(ステップS860)。全閉時の圧力Pcは、電磁部15eへの通電を解除してリニアソレノイドバルブ151-154を出力ポート15oとドレンポート15dとが連通する全閉状態にしたときに加圧タンク11側からドレンポート15dに流入する作動油の圧力である。本実施形態において、圧力Pcは、実験・解析により通路抵抗(作動油の流量)等を考慮して、例えば実行周期dtにおけるピストンロッド35の変位drが大きいほど小さく定められる値であり、加圧タンク11における作動油の圧力よりも若干低い値とされる。
【0038】
更に、制御装置100は、ステップS820にて導出した要求推力Ft(i)および圧力Pcに基づいて、関節Jiの複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32のうち、ピストン34の移動に応じて容積が減少する他方に対応したリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)を設定する(ステップS870)。ステップS870において、制御装置100は、該当する複動シリンダ3のピストン34に容積が増加する第1または第2流体室31,32から圧力Pcが作用するとみなすと共に、上記ヒステリシス特性を考慮しながら当該複動シリンダ3が要求推力Ft(i)を発生するように、容積が減少する第1または第2流体室31,32に対応したリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)を設定する。
【0039】
目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)を設定した後、制御装置100は、変数iをインクリメントし(ステップS880)、変数iが値N以上であるか否かを判定する(ステップS890)。“N”は、ロボットアーム2における関節の数を示し、本実施形態では、N=3である。制御装置100は、変数iが値N未満であると判定した場合(ステップS890:NO)、上記ステップS810-S890の処理を再度実行する。また、制御装置100により変数iが値N以上であると判定されると(ステップS890:YES)、各複動シリンダ3の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定が完了する。
【0040】
更に、ロボット装置1では、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定後、あるいはステップS80と一部並行して、関節JaおよびJbすなわち複数(2つ)の複動シリンダ3ごとに第1流体室31に供給される作動油の流量Q1(i)と、第2流体室32に供給される作動油の流量Q2(i)とが推定(導出)される(ステップS90)。ステップS90において、制御装置100は、ピストンロッド35の変位dr(i)と、ピストン34の第1流体室31側の受圧面積および第2流体室32側の受圧面積と、上記実行周期dtとに基づいて流量Q1(i),Q2(i)を推定する。なお、第1、第2流体室31,32から排出される作動油の流量は、負の値で表される。
【0041】
そして、ステップS80にて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定し、かつステップS90にて流量Q1(i),Q2(i)を推定すると、制御装置100は、図示しない電流指令値設定マップから目標圧力Ptag1(i)と流量Q1(i)とに対応した電流値を導出してリニアソレノイドバルブ151または153への電流指令値に設定する(ステップS100)。更に、ステップS100において、制御装置100は、当該電流指令値設定マップから目標圧力Ptag2(i)と流量Q2(i)とに対応した電流値を導出してリニアソレノイドバルブ152または154への電流指令値に設定する。更に、制御装置100は、ステップS100にて設定した電流指令値に基づいてリニアソレノイドバルブ151-154を制御(PWM制御)し(ステップS110)、
図4のルーチンを一旦終了させる。
【0042】
また。制御装置100は、
図4のステップS30にてハンド部7の現在位置が前回位置から変化していないと判定した場合(ステップS30:NO)、その時点で
図4のルーチンを終了させ、例えばハンド部7に把持対象を把持させるためのハンド制御ルーチンを実行する。更に、制御装置100は、ハンド制御ルーチンの実行と並行してハンド部7の次の目標到達位置および目標軌道を設定する。ハンド制御ルーチンの完了後、制御装置100は、ハンド部7を当該次の目標到達位置(例えば、把持対象の移送先)まで移動させるべく、
図4のルーチンを再度実行する。
【0043】
上述のような
図4および
図5のルーチンが実行される結果、要求推力Ft(i)と変位dr(i)とが逆向きであり、かつ両者の絶対値が比較的大きくステップS850にて肯定判定がなされた場合(ステップS850:YES)、上記全閉時の圧力Pcが、ピストン34の移動に応じて容積が増加する複動シリンダ3の第1または第2流体室31,32に作動油を供給することになるリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に設定される(ステップS860)。これにより、
図6に示すように、当該リニアソレノイドバルブ151-154の何れか(
図6の例では、リニアソレノイドバルブ152および154)の電磁部15eへの通電が制御装置100により停止され、入力ポート15iと出力ポート15oとの連通が遮断されると共に出力ポート15oとドレンポート15dとが連通する。すなわち、ピストン34の移動に応じて容積が増加する複動シリンダ3の第1または第2流体室31,32(
図6の例では、各複動シリンダ3の第2流体室32)は、対応するリニアソレノイドバルブ151-154の出力ポート15oおよびドレンポート15dと、流体返送通路LDとを介して作動油貯留部である加圧タンク11の内部に連通する。
【0044】
従って、例えば重力等の外力や慣性に抗してロボットアーム2を制動しながら移動させるべく、複動シリンダ3に動作方向(変位dr(i)の向き、
図6の例では図中上向きの負の収縮方向)と逆向きの力(要求推力Ft(i)、
図6の例では、図中上向きの正方向)を発生させるときに、容積の増加に応じて作動油が供給されることになる複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32の一方は、対応するリニアソレノイドバルブ151-154の出力ポート15oおよびドレンポート15dを介して加圧タンク11側の作動油を吸引する(
図6における破線参照)。この結果、作動油が供給されるべき第1または第2流体室31,32に対してポンプ13(リリーフ弁RV)側から供給すべき作動油の量、すなわちポンプ13により吐出される作動油の消費量を低減させることができるので、ポンプ13を間欠的に停止させたり、当該ポンプ13の回転数を低下させたりして、当該ポンプ13ひいては流体供給装置10の消費エネルギを削減することが可能となる。
【0045】
また、流体供給装置10の制御装置100は、複動シリンダ3に動作方向と逆向きの力を発生させるときに(ステップS850:YES)、要求推力Ft(i)および上記圧力Pcに基づいて、関節Jiの複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32のうち、ピストン34の移動に応じて容積が減少する他方に対応したリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)を設定する(ステップS870)。これにより、容積の減少に応じて作動油が排出される複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32の他方に対応したリニアソレノイドバルブ151-154の何れかの出力ポート15oにおける作動油の圧力を当該複動シリンダ3への要求推力Ft(i)に応じた値にして、ポンプ13により吐出される作動油の消費量を低減させつつ、要求推力Ft(i)を各複動シリンダ3に出力させることが可能となる。
【0046】
更に、流体供給装置10は、リニアソレノイドバルブ151-154のドレンポート15dを加圧タンク11内に連通させる流体返送通路LDを含み、作動油貯留部としての加圧タンク11は、作動油を大気圧よりも高い圧力で貯留する。これにより、複動シリンダ3に動作方向と逆向きの力を発生させるときに、容積の増加に応じて作動油が供給されることになる複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32の一方に加圧タンク11側の作動油をスムースに吸引させることができる。この結果、複動シリンダ3に動作方向と逆向きの力を発生させるときに、加圧タンク11側の作動油を吸引する第1および第2流体室31,32の一方の内圧が流体返送通路LD等における抵抗により大気圧以下になるのを抑制し、作動油を吸引する当該第1および第2流体室31,32の一方で気泡が発生するのを良好に抑制することが可能となる。ただし、流体供給装置10は、加圧タンク11の代わりに、開放型のタンクを作動油貯留部(流体貯留部)として含むものであってもよく、その場合、上述の全閉時の圧力Pcは、通路抵抗等を考慮して大気圧よりも低く設定されればよい。
【0047】
また、ロボット装置1の複動シリンダ3は、シリンダ30と、当該シリンダ30内に摺動自在に配置されるピストン34と、当該ピストン34に固定されるピストンロッド35と、作動油が供給される第1および第2流体室31,32とを含む流体アクチュエータである。更に、流体供給装置10は、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32への作動油の圧力を調整するリニアソレノイドバルブ151-154を含む。これにより、リニアソレノイドバルブ151-154により各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32への作動油の圧力を精度よく調整して、支持部材4およびアーム5aまたはアーム5a,5bを高精度に相対的に回動させることが可能となる。そして、流体アクチュエータとして第1および第2流体室31,32を含む複動シリンダ3を用いることで、単一の流体アクチュエータにより支持部材4およびアーム5aまたはアーム5a,5bを相対的に回動させることができる。
【0048】
なお、流体供給装置10において、リニアソレノイドバルブ151-154の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、当該常開弁は、電磁部からの推力および当該電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-154の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートをもたず、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧(駆動圧)をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。更に、リニアソレノイドバルブ151-154の少なくとも何れか1つは、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブおよび当該信号圧に応じて作動油の圧力を調整するコントロールバルブで置き換えられてもよい。また、流体供給装置10,10は、リニアソレノイドバルブ(流体調整バルブ)151-154の代わりに、例えば圧力センサにより検出される第1および第2流体室31,32における油圧(流体圧)が要求推力Ft(i)に応じた圧力になるように複動シリンダ3への作動油(流体)の流量を制御する流量制御弁を含むものであってもよい。
【0049】
更に、ロボット装置1(ロボットアーム2)は、関節を1つだけ含むものであってもよく、複動シリンダ3を1つまたは2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、少なくとも1つの複動シリンダ3とハンド部7とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部7以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
【0050】
また、ロボット装置1のロボットアーム2は、アーム5a-5cを駆動する流体アクチュエータ(複動アクチュエータ)として2つの流体室を有する揺動モータ(例えば、ハンド部7の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボット装置1のロボットアーム2は、複動シリンダ3と揺動モータとの少なくとも何れか1つを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1において、複動シリンダ3の少なくとも何れか1つが、例えば互いに拮抗するように配置される2つの単動シリンダを含む複動アクチュエータ、互いに拮抗するように配置される2つのマッキベン型人工筋肉を含む複動アクチュエータ、あるいは互いに拮抗するように配置される2つの軸方向繊維強化型流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)含む複動アクチュエータで置き換えられてもよい。また、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとしてエアシリンダを含むものであってもよい。更に、関節Ja,Jbを介して連結された何れか2つのアーム5a,5bに、1つまたは複数の単動シリンダと、当該1つまたは複数の単動シリンダと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。
【0051】
以上説明したように、本開示の流体供給装置は、関節(Ja,Jb)を介して連結された2つのリンク(4,5a,5b)を相対的に回動させる複動アクチュエータ(3)の第1流体室(31)および第2流体室(32)に流体を給排する流体供給装置(10)であって、前記流体を貯留する流体貯留部(11)と、前記流体貯留部(11)から前記流体を吸引して吐出するポンプ(13)と、前記ポンプ(13)から前記流体が供給される第1入力ポート(15i)、前記第1流体室(31)に連通する第1出力ポート(15o)、および前記流体貯留部(11)に連通すると共に前記第1入力ポート(15i)と前記第1出力ポート(15o)とに連通可能な第1ドレンポート(15d)を有し、前記第1出力ポート(15o)における前記流体の圧力または流量を調整する第1流体調整バルブ(151,153)と、前記ポンプ(13)から前記流体が供給される第2入力ポート(15i)、前記第2流体室(32)に連通する第2出力ポート(15o)、および前記流体貯留部(11)に連通すると共に前記第2入力ポート(15i)と前記第2出力ポート(15o)とに連通可能な第2ドレンポート(15d)を有し、前記第1出力ポート(15o)における前記流体の圧力または流量を調整する第2流体調整バルブ(152,154)と、前記第1および第2流体調整バルブ(151,152,153,154)を制御すると共に、前記複動アクチュエータ(3)に動作方向と逆向きの力(Ft(i))を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブ(151,152,153,154)のうちの前記第1または第2流体室(31,32)に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポート(15o)を前記第1または第2ドレンポート(15d)を介して前記流体貯留部(11)に連通させる制御装置(100)とを含むものである。
【0052】
本開示の流体供給装置では、ポンプにより吐出された流体が第1流体調整バルブの第1入力ポートおよび第2流体調整バルブの第2入力ポートに供給される。第1流体調整バルブは、制御装置により制御されて複動アクチュエータの第1流体室に連通する第1出力ポートにおける流体の圧力または流量を調整する。また、第2流体調整バルブは、制御装置により制御されて複動アクチュエータの第2流体室に連通する第2出力ポートにおける流体の圧力または流量を調整する。更に、制御装置は、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、第1および第2流体調整バルブのうちの第1または第2流体室に流体を供給する一方の第1または第2出力ポートを第1または第2ドレンポートを介して流体貯留部に連通させる。これにより、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体が供給されることになる複動アクチュエータの第1および第2流体室の一方は、対応する第1または第2流体調整バルブの第1または第2出力ポートおよび第1または第2ドレンポートを介して流体貯留部側の流体を吸引する。この結果、流体が供給されるべき第1または第2流体室に対してポンプ側から供給すべき流体の量、すなわちポンプにより吐出される流体の消費量を低減させて、当該ポンプひいては流体供給装置の消費エネルギを削減することが可能となる。
【0053】
また、前記制御装置(100)は、前記複動アクチュエータ(3)に動作方向と逆向きの力(Ft(i))を発生させるときに、前記第1または第2流体室(31,32)から前記流体を排出させる前記第1および第2流体調整バルブ(151,152,153,154)の他方を前記第1または第2出力ポート(15o)における前記流体の圧力または流量が前記複動アクチュエータ(3)に要求される前記逆向きの力(Ft(i))に応じた値になるように制御するものであってもよい。
【0054】
これにより、ポンプにより吐出される流体の消費量を低減させつつ、要求される力を複動アクチュエータに出力させることが可能となる。
【0055】
更に、前記流体供給装置(10)は、前記第1流体調整バルブ(151,153)の前記第1ドレンポート(15d)および前記第2流体調整バルブ(152,154)の前記第2ドレンポート(15d)を前記流体貯留部(11)に連通させる流体返送通路(LD)を含むものであってもよく、前記流体貯留部は、前記流体を大気圧よりも高い圧力で貯留する加圧タンク(11)であってもよい。
【0056】
これにより、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体が供給されることになる複動アクチュエータの第1および第2流体室の一方に流体貯留部である加圧タンク側の流体をスムースに吸引させることができる。この結果、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体貯留部側の流体を吸引する第1および第2流体室の一方の内圧が流体返送通路等における抵抗により大気圧以下になるのを抑制し、当該第1および第2流体室の一方で気泡が発生するのを良好に抑制することが可能となる。
【0057】
また、前記第1および第2流体調整バルブ(151,152,153,154)は、電磁部(15e)、スプール(15s)、前記スプール(15s)を付勢するスプリング(15sp)、前記第1または第2出力ポート(15d)に連通するフィードバックポート(15f)を含み、前記電磁部(15e)が発生する推力と、前記スプリング(15sp)の付勢力と、前記第1または第2出力ポート(15o)から前記フィードバックポート(15f)に供給される前記流体の圧力の作用により前記スプール(15s)に加えられる推力とをバランスさせて前記第1または前記第2出力ポート(15o)における前記流体の圧力を調整するものであってもよい。
【0058】
これにより、第1および第2流体調整バルブにより、複動アクチュエータが要求される力を発生するように第1および第2出力ポートにおける流体の圧力を精度よく調整することが可能となる。また、第1、第2流体調整バルブに第1、第2出力ポートにおける流体の圧力をフィードバックすることで、複動アクチュエータにより駆動される2つのリンクに当該複動アクチュエータ以外からの外力が加えられたときに、当該外力による第1、第2流体室の容積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。更に、当該外力が無くなった後には、複動アクチュエータが要求される力を発生するように第1、第2流体調整バルブにより第1、第2出力ポートにおける流体の圧力を速やかに調整することが可能となる。
【0059】
更に、前記複動アクチュエータは、シリンダ(30)と、前記シリンダ(30)内に摺動自在に配置されるピストン(34)と、前記ピストン(34)に固定されるピストンロッド(35)と、前記シリンダ(30)内の前記ピストン(34)の一側に画成される前記第1流体室(31)と、前記シリンダ(30)内の前記ピストン(34)の他側に画成される前記第2流体室(32)とを含む複動シリンダ(3)であってもよい。
【0060】
すなわち、複動アクチュエータとして第1および第2流体室を含む複動シリンダを用いることで、単一の複動アクチュエータにより2つのリンクを相対的に回動させることが可能となる。ただし、複動アクチュエータは、2つの流体室を有する揺動モータであってもよい。
【0061】
本開示の流体供給方法は、関節(Ja,Jb)を介して連結された2つのリンク(4,5a,5b)を相対的に回動させる複動アクチュエータ(3)の第1流体室(31)および第2流体室(32)に流体を給排する流体供給方法であって、流体貯留部(11)から前記流体を吸引して吐出するポンプ(13)から前記流体が供給される第1入力ポート(15i)、前記第1流体室(31)に連通する第1出力ポート(15o)、および前記流体貯留部(11)に連通すると共に前記第1入力ポート(15i)と前記第1出力ポート(15o)とに連通可能な第1ドレンポート(15d)を有する第1流体調整バルブ(151,153)を用いて前記第1流体室(31)における前記流体の圧力を調整すると共に、前記ポンプ(13)から前記流体が供給される第2入力ポート(15i)、前記第2流体室(32)に連通する第2出力ポート(15o)、および前記流体貯留部(11)に連通すると共に前記第2入力ポート(15i)と前記第2出力ポート(15o)とに連通可能な第2ドレンポート(15d)を有する第2流体調整バルブ(152,154)を用いて前記第2流体室(32)における前記流体の圧力を調整し、前記複動アクチュエータ(3)に動作方向と逆向きの力(Ft(i))を発生させるときに、前記第1および第2流体調整バルブ(151,152,153,154)のうちの前記第1または第2流体室(31,32)に前記流体を供給する一方の前記第1または第2出力ポート(15o)を前記第1または第2ドレンポート(15d)を介して前記流体貯留部(11)に連通させるものである。
【0062】
かかる方法によれば、複動アクチュエータに動作方向と逆向きの力を発生させるときに、流体が供給されるべき第1または第2流体室に対してポンプ側から供給すべき流体の量、すなわちポンプにより吐出される流体の消費量を低減させて、当該ポンプひいては流体供給装置の消費エネルギを削減することが可能となる。
【0063】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の発明は、複動アクチュエータに流体を給排する流体供給装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 複動シリンダ、30 シリンダ、31 第1流体室、32 第2流体室、34 ピストン、35 ピストンロッド、4 支持部材(リンク)、5a,5b,5c アーム(リンク)、10 流体供給装置、11 加圧タンク(流体貯留部)、13 ポンプ、151,152,153,154 リニアソレノイドバルブ(第1および第2流体調整バルブ)、15d ドレンポート、15e 電磁部、15f フィードバックポート、15i 入力ポート、15o 出力ポート、15s スプール、15sp スプリング、100 制御装置、Ja,Jb,Jc 関節、LD 流体返送通路、LL 流体供給通路。