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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014762
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】製造支援システム
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/20 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
H01R43/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118907
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599133026
【氏名又は名称】株式会社的
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 真司
(72)【発明者】
【氏名】西山 文章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063HA01
5E063HB19
5E063XA01
5E063XA08
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネス製造時又は検査時に作業者の視線等の適切な誘導を可能にすると共に、製造対象のワイヤハーネスの種類が変わってもハードウェアの主要部分を再利用可能にすること。
【解決手段】それぞれのコネクタハウジング23に対応付けて用意された複数の誘導ユニット32と、いずれかの誘導ユニット32に搭載可能な複数のハウジング受け冶具20と、各誘導ユニットに指示を与える上位制御部40とを備える。各誘導ユニットは二次元表示画面と、通信部と、表示内容を状況に応じて制御する表示制御部とを有し、ハウジング受け冶具20は誘導ユニットの画面と重なる状態で配置可能に構成される。表示する誘導パターンの変更で、様々な種類のコネクタに対応できる。各誘導ユニットが使用するデータや上位制御部40の指示により、ワイヤハーネスの仕様変更に対応できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの製造時又は検査時に、前記ワイヤハーネスに含まれる各コネクタハウジング上の各端子収容箇所と、当該箇所に装着すべき端子との対応関係について作業者の視線を誘導するための製造支援システムであって、
複数の前記コネクタハウジングに対応付けてそれぞれ用意された複数の誘導ユニットと、
それぞれが1つ又は複数のコネクタハウジング受け部を有し、前記複数の誘導ユニットのいずれかに搭載可能な複数のハウジング受け冶具と、
前記複数の誘導ユニットに対して指示を与える上位制御部と、
を備え、
前記各誘導ユニットが、二次元表示画面と、通信部と、前記二次元表示画面の表示内容を状況に応じて制御する表示制御部とを有し、
前記ハウジング受け冶具は、前記誘導ユニットの二次元表示画面と重なる状態で配置可能に構成された、
ことを特徴とする製造支援システム。
【請求項2】
前記複数の誘導ユニットの各々が複数の通信用接続端子を有し、
前記複数の誘導ユニットが所定の通信ケーブルによりデイジーチェーンの形態で接続された、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造支援システム。
【請求項3】
前記複数の誘導ユニットの各々が、作業の歩進入力を許容する入力受付部を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記入力受付部からの作業の歩進入力を受け付けて、歩進入力の情報を前記上位制御部へ送信すると共に、前記二次元表示画面の表示内容を更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造支援システム。
【請求項4】
前記複数の誘導ユニットの各々が、該当する作業対象コネクタか否かを表示可能な表示灯を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記上位制御部からの指示に従い、前記表示灯の表示状態を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造支援システム。
【請求項5】
前記複数の誘導ユニットの各々が、複数種類のコネクタに関する端子挿入口の形状データおよび型番を含むコネクタ情報を予め保持するコネクタ情報保持部を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記上位制御部からの指示に従い、前記コネクタ情報保持部のコネクタ情報に、新たな情報を追加する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの製造時や検査時に、このワイヤハーネスに含まれる各コネクタハウジング上の各端子収容箇所と、その箇所に装着すべき特定端子との対応関係について作業者を誘導するために利用可能な製造支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、様々な種類の多数の電線を束ねて一体的に構成した電線の集合体である。このワイヤハーネスは、車載バッテリーなどの電源と、車両上の様々な電装品との間を接続したり、複数の電装品同士の間を接続するために利用される。また、電線接続箇所の着脱を容易にするために、ワイヤハーネスは多数のコネクタを備えている。
【0003】
各コネクタの本体は、一般的に樹脂などの電気絶縁体で形成されるオス型又はメス型のコネクタハウジングとして構成される。また、各コネクタハウジングは、必要数の端子をそれぞれ収容可能なキャビティと呼ばれる多数の独立した空間を有している。ワイヤハーネスを製造する工程においては、各電線の端部に金属製の端子を圧着などにより固定した後、各電線の端子をその電線と共に、特定のコネクタハウジングにおける特定位置のキャビティに挿入して固定する。
【0004】
このように、各電線の端子をコネクタハウジングのキャビティに取り付ける製造工程は、近年ではある程度は特定の製造装置を用いて自動化できる。しかし、ワイヤハーネスの構造上、一部の電線の端子については挿入作業の自動化が困難であったり、コストなどの観点から手作業による取り付けが行われる場合もある。
【0005】
しかし、端子の挿入作業を手作業で行う場合には、作業ミスが起こり得る。すなわち、コネクタハウジング、キャビティ、および端子(電線)の組合せが、設計仕様とは異なる状態で組み付けられた電線を含むワイヤハーネスが製造されてしまう可能性がある。そのため、各端子の挿入などの組み付け作業が終了した後で検査工程を実施して、異常な接続の有無などを調査している。
【0006】
例えば、特許文献1の端子金具の誘導装置は、コネクタハウジングの端子収容室に誤った端子金具を挿入することを抑制する。具体的には、サブハーネス組立装置は、電線収容棚とコネクタ保持治具と切り換えスイッチとを備えている。電線収容棚は、複数の電線収容筒と電線収容筒に対応したLEDとを備えている。コネクタ保持治具は、照射部を備えかつコネクタハウジングを保持する。照射部は、端子収容室に対応した照明ユニットを備えている。照明ユニットは、端子収容室の開口部を照らす。点灯したLEDに対応した電線収容筒から電線が取り出されLEDが押されると、照明ユニットは、端子金具を挿入すべき端子収容室の開口部を照らす。端子収容室に端子金具が挿入されて切り換えスイッチが押されると、次の電線収容筒に対応するLEDが点灯する。
【0007】
また、特許文献2の端子挿入誘導装置は、ワイヤハーネスの製造工程における端子の誤挿入を防止するために、スマートフォンの画面表示を利用することを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-227857号公報
【特許文献2】特開2017-50231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の誘導装置のように多数のLEDの表示により電線の選択などの際に作業者を誘導する場合には、製造するワイヤハーネスの種類毎に、その形状や構造に合わせた専用の誘導装置を製造する必要がある。そのため、製造対象のワイヤハーネスを搭載する車両の生産が終了した場合には、使い道のなくなった古い誘導装置は廃棄して、新たなワイヤハーネスに対応した別の誘導装置を用意しなければならなかった。
【0010】
一方、特許文献2の技術を利用する場合には、スマートフォンに組み込むソフトウェアを更新すれば、様々な種類のワイヤハーネスについて、同じ端子挿入誘導装置のハードウェアを再利用することが可能である。しかし、構造が複雑なワイヤハーネスには多数のコネクタが備わっているので、同時に多数のスマートフォンを用意するか、又は1台の同じスマートフォンの取り付け位置を順番に変更しながら作業しなければならない。また、スマートフォンの取り付け位置毎に、表示する内容を適切に切り替える必要があるが、該当するコネクタの位置や設計仕様とスマートフォンの表示内容との対応関係に不一致が生じないようにするためには何らかの工夫が必要になる。また、製造するワイヤハーネスの種類が変わった場合に、スマートフォンのソフトウェアの更新内容とコネクタの位置や設計仕様との間に不一致が生じる可能性がある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネス製造時又は検査時に作業者の視線等の適切な誘導を可能にすると共に、製造対象のワイヤハーネスの種類が変わってもハードウェアの主要部分を再利用することが可能な製造支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る製造支援システムは、下記(1)~(5)を特徴としている。
(1) ワイヤハーネスの製造時又は検査時に、前記ワイヤハーネスに含まれる各コネクタハウジング上の各端子収容箇所と、当該箇所に装着すべき端子との対応関係について作業者の視線を誘導するための製造支援システムであって、
複数の前記コネクタハウジングに対応付けてそれぞれ用意された複数の誘導ユニットと、
それぞれが1つ又は複数のコネクタハウジング受け部を有し、前記複数の誘導ユニットのいずれかに搭載可能な複数のハウジング受け冶具と、
前記複数の誘導ユニットに対して指示を与える上位制御部と、
を備え、
前記各誘導ユニットが、二次元表示画面と、通信部と、前記二次元表示画面の表示内容を状況に応じて制御する表示制御部とを有し、
前記ハウジング受け冶具は、前記誘導ユニットの二次元表示画面と重なる状態で配置可能に構成された、
ことを特徴とする製造支援システム。
【0013】
(2) 前記複数の誘導ユニットの各々が複数の通信用接続端子を有し、
前記複数の誘導ユニットが所定の通信ケーブルによりデイジーチェーンの形態で接続された、
ことを特徴とする上記(1)に記載の製造支援システム。
【0014】
(3) 前記複数の誘導ユニットの各々が、作業の歩進入力を許容する入力受付部を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記入力受付部からの作業の歩進入力を受け付けて、歩進入力の情報を前記上位制御部へ送信すると共に、前記二次元表示画面の表示内容を更新する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の製造支援システム。
【0015】
(4) 前記複数の誘導ユニットの各々が、該当する作業対象コネクタか否かを表示可能な表示灯を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記上位制御部からの指示に従い、前記表示灯の表示状態を制御する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の製造支援システム。
【0016】
(5) 前記複数の誘導ユニットの各々が、複数種類のコネクタに関する端子挿入口の形状データおよび型番を含むコネクタ情報を予め保持するコネクタ情報保持部を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記上位制御部からの指示に従い、前記コネクタ情報保持部のコネクタ情報に、新たな情報を追加する、
ことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の製造支援システム。
【0017】
上記(1)の構成の製造支援システムによれば、ハウジング受け冶具を、誘導ユニットの二次元表示画面と重なる状態で配置し、製造対象又は検査対象のワイヤハーネスに含まれるいずれかのコネクタハウジングをハウジング受け冶具に装着することができる。したがって、それぞれの誘導ユニットの二次元表示画面上に、該当するコネクタハウジング上の各端子収容箇所と、当該箇所に装着すべき特定端子との対応関係を表示すれば、作業者の視線を適切に誘導することが可能になる。また、上位制御部は通信を利用して複数の誘導ユニットに指示を与えることができるので、各誘導ユニットの表示内容を該当するコネクタハウジングの位置や設計仕様に合わせて適切に変更することが可能である。そのため、製造対象又は検査対象のワイヤハーネスの種類や設計仕様が変更された場合でも、ハウジング受け冶具以外のハードウェアはそのまま再利用できる。
【0018】
上記(2)の構成の製造支援システムによれば、複数の誘導ユニットが通信ケーブルを介して互いに物理的に接続されているので、これら全体の形状や相互の位置関係を、製造対象又は検査対象のワイヤハーネスの種類や設計仕様に合わせて適切に調整することが容易である。また、各誘導ユニットが表示する内容を、該当するコネクタハウジングの各端子収容箇所および端子に合わせることが容易になる。例えば、作業対象の各コネクタハウジングの並び順と、デイジーチェーン接続された複数の誘導ユニットの並び順とが一致するように位置関係を調整しておけば、物理的な並び順に従い表示内容を決定するだけで、設計仕様における各コネクタハウジングの位置や種類と各誘導ユニットが表示する内容とを合わせることができる。
【0019】
上記(3)の構成の製造支援システムによれば、作業者が1つの端子の挿入作業を完了する毎に、例えば当該作業者のボタン操作などにより歩進入力の信号を発生すれば、次の端子挿入位置などが表示されるように、表示内容を適切に更新できる。また、上位制御部は各誘導ユニットから送信される情報に基づいて作業の進捗状況を把握できるので、適切な指示を各誘導ユニットに与えることができる。
【0020】
上記(4)の構成の製造支援システムによれば、上位制御部が、作業の進捗状況に応じて次の作業対象の誘導ユニットに指示を送ることにより、作業対象のコネクタハウジングの位置を作業者が容易に視認できるように、該当する表示灯を点灯することができる。
【0021】
上記(5)の構成の製造支援システムによれば、各誘導ユニットは、コネクタ情報保持部が保持しているコネクタ情報を参照することにより、表示対象のコネクタにおける端子挿入口の形状データおよび型番を正しく把握できる。また、新たな設計仕様のワイヤハーネスを製造する場合であっても、不足するデータを前記各誘導ユニットが上位制御部から取得してコネクタ情報に追加できるので、同じハードウェアを再利用できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造支援システムによれば、ワイヤハーネス製造時又は検査時に作業者の視線等の適切な誘導が可能である。また、製造対象のワイヤハーネスの種類や設計仕様が変わった場合でもハードウェアの主要部分を再利用することが可能である。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係る製造支援システムの構成例の外観を示す斜視図である。
図2図2は、1つのハウジング受け冶具近傍の外観を示す斜視図である。
図3図3は、1つのハウジング受け冶具近傍を示す分解斜視図である。
図4図4は、図1に示した製造支援システムの構成を示すブロック図である。
図5図5は、1つの誘導ユニットおよび液晶パネルの外観を示す平面図である。
図6図6は、誘導ユニットの構成を示すブロック図である。
図7図7は、誘導ユニットの動作例を示すフローチャートである。
図8図8(a)、図8(b)、および図8(c)は、それぞれ異なる作業状態においてコネクタハウジングを端子挿入側から視た状態を表す平面図である。
図9図9は、変形例の製造支援システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0026】
<製造支援システムの外観および概要>
図1は、本発明の実施形態に係る製造支援システム100の構成例の外観を示す斜視図である。
図1に示した製造支援システム100は、ワイヤハーネスを構成する中間部品である各種のサブハーネスを製造する際に利用される。
【0027】
サブハーネスは、一般的に1本以上の電線とその端部に配置されたコネクタとを備える。電線は、導電性の芯線の外側を樹脂で構成される電気絶縁性の被覆で覆った被覆電線であり、その端部の芯線と電気的に接続されるように金属製の端子が圧着等の作業により固定される。コネクタの主要部品であるコネクタハウジングには、1つ以上のキャビティが端子を収容するための空間として形成されている。
【0028】
サブハーネスやワイヤハーネスを製造する場合には、予め1本の被覆電線と一体化された端子を、コネクタハウジングの中の特定位置のキャビティに挿入して固定する。このような端子挿入の作業は、自動化設備を用いて自動的に行う場合もあるが、図1に示した製造支援システム100は、作業者が手作業で端子の挿入を行う場合に作業を支援する機能を有している。
【0029】
図1に示した製造支援システム100においては、作業台10上に電線筒11-1、11-2、および11-3が上下方向に3段に重ねた状態で配置されている。各電線筒11-1~11-3には、互いに独立した多数の筒状の空間が横方向に1列に並んでいる。サブハーネスを製造する工程を始める前に、電線筒11-1~11-3の各筒状空間の内部に、1本以上の端子付きの電線が配置され保持される。つまり、各電線筒11-1~11-3のいずれかの筒状空間に用意されている電線を用いて、手作業でサブハーネスを製造することができる。
【0030】
各段の電線筒11-1~11-3の下方位置に、電線筒LED部12がそれぞれ設置されている。各電線筒LED部12は、各電線筒11-1~11-3と同等の幅を有し、各電線筒11-1~11-3に備わっている各筒状空間の直下の位置に、LED(発光ダイオード)13をそれぞれ備えている。
【0031】
これらの各LED13は、作業者が選択すべき電線の収容位置に作業者の視線を誘導するために利用される。例えば、図1に示したように、電線筒11-2下方の電線筒LED部12において、左から3番目の位置のLED13のみを点灯することにより、電線筒11-2の左から3番目の筒状空間に収容されている電線付き端子の位置に作業者を誘導できる。
【0032】
作業台10は、その手前側の箇所に作業部10aを有している。この作業部10aで、作業者がサブハーネスを製造するための作業、つまり各コネクタハウジングの所定のキャビティへの端子挿入を手作業で順次に実施する。
【0033】
図1に示すように、作業部10aには、複数のハウジング受け冶具20が横方向に並べて配置してある。また、各ハウジング受け冶具20の直下位置に、複数の液晶パネル30がそれぞれ配置されている。各液晶パネル30は平板状の二次元表示画面を有し、この画面上に重なった状態でハウジング受け冶具20が配置されている。各ハウジング受け冶具20は、製造するサブハーネスの構成要素であるコネクタハウジングを保持することができる。各ハウジング受け冶具20にコネクタハウジングを保持した状態で、その所定のキャビティへ手作業で電線付きの端子が挿入される。
【0034】
各液晶パネル30の手前側に配置されているLED61は、その近傍に保持されているコネクタハウジングが作業対象であることを表すために利用される。例えば、図1のように一番左側のLED61が点灯している状態では、一番左側の位置のハウジング受け冶具20に保持されているコネクタハウジングが作業対象であることが分かるように作業者の視線を誘導する。
【0035】
作業者は、各液晶パネル30の画面に表示される誘導パターンにより電線付きの端子を挿入すべきキャビティの位置に誘導される。実際には、作業者は、まだ端子が挿入されていない状態のキャビティを挿入側(上方)からその奥側を視ることにより、下方に配置されている液晶パネル30の画面に表示されている誘導パターンを視認できる。
【0036】
図1には示されていない誘導ユニット32(後述する)の回路基板が、複数の液晶パネル30のそれぞれに接続されている。この誘導ユニット32は、各液晶パネル30の表示内容などを制御することができる。各誘導ユニット32は、図1に示したLANケーブル44を介して、誘導管理部40と接続されている。誘導管理部40は、管理部本体41およびインタフェース部42を有している。誘導管理部40に備わったバーコードリーダ43は、管理部本体41と接続されている。また、複数の電線筒LED部12のそれぞれが、接続ケーブル45を介してインタフェース部42の出力に接続されている。
【0037】
<ハウジング受け冶具近傍の構成>
ハウジング受け冶具20近傍の外観を図2および図3に示す。図3は、ハウジング受け冶具20近傍の各構成要素を分解した状態を表している。
【0038】
図3に示すように、ハウジング受け冶具20の中央やや前寄りの位置には、開口部21が形成されている。この開口部21は底面まで貫通しており、下方に配置されている液晶パネル30の画面が開口部21の上方から視認可能な状態になっている。
【0039】
ハウジング受け冶具20の開口部21に、その内空間と同等の外形形状を有する保持部材22を着脱自在に収容することができる。図3の例では、ハウジング受け冶具20の前側から矢印Yで示す軸方向に沿って保持部材22を横に押し込むことにより、図2のように保持部材22をハウジング受け冶具20に装着できる。保持部材22の外形形状は、直方体に似た形状で、且つ開口部21の周壁の箇所と嵌合できる形状に加工されている。
【0040】
保持部材22の着脱は、操作レバー24を操作することにより容易に行うことができる。保持部材22は、その内側にハウジング収容部22aの空間を有している。ハウジング収容部22aの形状および大きさは、この空間に収容する特定の種類のコネクタハウジング23の外形形状と合うように形成されている。また、このハウジング収容部22aは、保持部材22の上面から底面までを貫通する開口部として形成されている。
【0041】
コネクタハウジング23は、ハウジング収容部22aの上側から下側(矢印Zで示す軸方向)に押し込むことにより、図2のように保持部材22のハウジング収容部22aに収容される。ハウジング収容部22aの形状や大きさが異なる複数種類の保持部材22を予め用意しておくことにより、形状や大きさが異なる複数種類のコネクタハウジング23を共通のハウジング受け冶具20に装着することが可能となる。つまり、共通のハウジング受け冶具20を用いて、互いに種類の異なる複数のサブハーネスを製造できる。
【0042】
図2および図3に示すように、コネクタハウジング23はそれぞれ開口のように見える多数のキャビティ23aを有している。勿論、コネクタの種類によって、キャビティ23aの数、整列状態、大きさなどがそれぞれ異なる。各キャビティ23aは、図2に示す上面側から反対側まで貫通した開口になっている。
【0043】
したがって、図2に示した被覆電線25付きの金属端子26は、作業者の手作業によりいずれか1つのキャビティ23aに上方から矢印Zで示す軸方向に向けて挿入される。所定位置まで挿入されると、金属端子26の図示しない突起部等がキャビティ23aの周壁等と係合した状態になり、金属端子26はコネクタハウジング23内で動かないように固定される。なお、金属端子26を挿入した後で、作業者が被覆電線25を引っ張ることにより、金属端子26がコネクタハウジング23内で正しく固定され抜けることがないかどうかを確認できる。
【0044】
<製造支援システムの構成例>
図1に示した製造支援システムにおける電気回路など主要部の構成例を図4に示す。
図4の構成においては、複数の誘導ユニット32-1、32-2、32-3、32-4、・・・が順番に並んで作業台10の作業部10a上に配置されている場合を想定している。また、誘導ユニット32-1、32-2、32-3、および32-4のそれぞれに、液晶パネル30-1、30-2、30-3、および30-4が比較的短いケーブルで接続されている。したがって、液晶パネル30-1~30-4も順番に並んだ状態で作業台10の作業部10a上に配置されている。
【0045】
ハウジング受け冶具20-1は、液晶パネル30-1の画面上に重ねた状態で配置される。同様に、ハウジング受け冶具20-2~20-4は、それぞれ液晶パネル30-2~30-4の画面上に重ねた状態で配置される。
【0046】
また、1番目のコネクタハウジング23-1は、1番目のハウジング受け冶具20-1に、図3に示した保持部材22を介して装着される。同様に、2番目~4番目のコネクタハウジング23-2~23-4は、それぞれ2番目~4番目のハウジング受け冶具20-2~20-4に適切な形状の保持部材22を介して装着される。
【0047】
誘導管理部40と各誘導ユニット32-1、32-2、32-3、32-4、・・・とを接続する通信線は、デイジーチェーンの形態で順番に接続されている。すなわち、誘導管理部40と誘導ユニット32-1との間がLANケーブル44で接続され、誘導ユニット32-1、32-2の間がLANケーブル44-2で接続され、誘導ユニット32-2、32-3の間がLANケーブル44-3で接続され、誘導ユニット32-3、32-4の間がLANケーブル44-4で接続されている。
【0048】
このように各誘導ユニット32-1~32-4をデイジーチェーンで接続しているので、誘導ユニット32-4の下流側に更に必要数の他の誘導ユニット32を追加するように接続することができる。更に、製造対象のサブハーネスやワイヤハーネスの仕様における各コネクタの配置状態などに合わせて、各誘導ユニット32-1~32-4の配置状態を変更することが容易である。
【0049】
例えば、図4に示したように4個の誘導ユニット32-1~32-4を有する製造支援システム100は、4個のコネクタハウジング23-1~23-4を含むサブハーネスの製造に利用できる。
【0050】
誘導管理部40は、接続ケーブル45を介して電線筒LED部12と接続されている。また、バーコードリーダ43が誘導管理部40に接続されている。また、ホストコンピュータ46を必要に応じて誘導管理部40と接続することができる。
【0051】
なお、図4に示した誘導ユニット32-1~32-4は、全て同一のハードウェア構成を有する。また、図4に示した液晶パネル30-1~30-4は、全て同一構成のTFT(thin-film-transistor)カラー液晶パネルであり、図1中に示した液晶パネル30に相当する。
【0052】
また、各ハウジング受け冶具20-1~20-4については、図2に示したハウジング受け冶具20と共通の構成にすることができる。各コネクタハウジング23-1~23-4の品番、形状、大きさ等は、製造するサブハーネスの仕様に応じて、それぞれ適切に選択する必要がある。形状や大きさ等が異なるコネクタハウジング23であっても、それぞれ適切な形状の保持部材22を利用することにより、共通構成のハウジング受け冶具20-1~20-4に装着することができる。
【0053】
<誘導ユニットおよび液晶パネルの外観>
1つの誘導ユニット32および液晶パネル30の外観を図5に示す。
図5に示した例では、誘導ユニット32はこのユニットの機能を実現するために必要な電気回路部品を組み込んだ回路基板として構成されている。また、誘導ユニット32にフラットケーブルなどにより構成される接続ケーブル35を介して液晶パネル30が接続されている。この液晶パネル30は、薄型で平板状に形成されているので、その画面がコネクタハウジング23の位置と重なるようにハウジング受け冶具20の下方に配置することができる。
【0054】
また、誘導ユニット32の回路基板上に、接続ケーブル34を介してLED61が接続されている。また、誘導ユニット32の回路基板上に、接続ケーブル33を介してスイッチ62が接続されている。LED61は、作業対象のコネクタ位置に作業者の視線を誘導するために利用できる。スイッチ62は、作業者のボタン操作により端子挿入作業の進行状況を表す歩進入力信号を生成する。
【0055】
<誘導ユニットの構成>
誘導ユニット32の構成例を図6に示す。
図6に示すように、誘導ユニット32は、マイクロコンピュータ(CPU)32a、不揮発性メモリ32b、入出力部32c、通信部32d、32e、表示制御部32f、通信用接続口32g、および32hを備えている。
【0056】
マイクロコンピュータ32aは、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、誘導ユニット32に必要とされる各種の制御機能を実現する。例えば、通信部32d、又は32eを利用してマイクロコンピュータ32aと誘導管理部40との間で通信ができる。これにより、マイクロコンピュータ32aが当誘導ユニット32における状態を示す情報を誘導管理部40に送信したり、誘導管理部40から当誘導ユニット32への指示を受け取ることができる。
【0057】
また、マイクロコンピュータ32aは、作業対象のコネクタハウジング23における端子挿入対象のキャビティ23aの位置などに応じた誘導パターンを表示制御部32fを介して液晶パネル30の画面に表示することができる。誘導パターンを表示するために必要なコネクタの情報は、不揮発性メモリ32b上のコネクタ情報テーブルTBLに予め登録されている。すなわち、様々な種類のコネクタのそれぞれについて、端子挿入口の形状データ(各キャビティの位置など)や、コネクタ型番などの情報が不揮発性メモリ32bに保持されている。また、コネクタ情報テーブルTBLの内容は誘導管理部40等からの指示により後で追加できる。
【0058】
また、マイクロコンピュータ32aは入出力部32cを介してLED61の点灯/消灯/点滅などを制御できる。したがって、このLED61の表示により、作業対象のコネクタ位置に作業者の視線を誘導することができる。また、マイクロコンピュータ32aはスイッチ(SW)62のオンオフ状態を入出力部32cを介して監視できる。したがって、作業者がスイッチ62を操作した場合に、この操作をマイクロコンピュータ32aが作業進行の歩進入力として認識することができる。
【0059】
また、誘導管理部40がバーコードリーダ43で読み取った各コネクタの型番を表すデータは、それぞれの誘導ユニット32に送信される。誘導ユニット32内のマイクロコンピュータ32aは、誘導ユニット32から受け取った当誘導ユニット32のコネクタ型番に基づき、不揮発性メモリ32bから必要な情報を取得した結果を利用して適切な誘導パターンを液晶パネル30に表示する。そのため、様々な種類のコネクタハウジング23のいずれに対しても、作業の状況に応じて適切な位置に適切な誘導パターンを表示できる。
【0060】
<誘導ユニットの動作>
誘導ユニット32の動作例を図7に示す。例えば、図4に示した各誘導ユニット32-1~32-4内のマイクロコンピュータ32aが、図7に示した手順に従ってコネクタ位置毎に独立した状態で制御をそれぞれ実施する。図7の動作について以下に説明する。
【0061】
マイクロコンピュータ32aは、電源がオンになると、S11で初期化を実行する。これにより、誘導ユニット32内部の動作状態が初期化され、当誘導ユニット32に接続された液晶パネル30の表示が消灯し、マイクロコンピュータ32aと誘導管理部40との間でLANケーブル44等を介した通信が可能な状態になる。LED61は消灯状態になる。
【0062】
誘導管理部40から、当誘導ユニット32に対して端子挿入作業開始の指示が送信された場合には、マイクロコンピュータ32aの処理はS12からS13に進む。そして、マイクロコンピュータ32aはS13でLED61を点灯状態に制御する。これにより、当誘導ユニット32に近い位置のハウジング受け冶具20に保持されているコネクタハウジング23の位置に作業者の視線が誘導され、これを現在の作業対象として選択すべきことが作業者に認識される。
【0063】
マイクロコンピュータ32aは、誘導管理部40から当誘導ユニット32に送信されたコネクタの型番データに基づき、S14で不揮発性メモリ32b上のコネクタ情報テーブルTBLを参照して、該当するコネクタの形状データを取得する。
【0064】
マイクロコンピュータ32aは、当誘導ユニット32に対応する位置のコネクタハウジング23に対する端子挿入作業のうち、1番目の端子の挿入位置を表す表示パターンを、S15で誘導パターンとして液晶パネル30の画面に表示する。また、この時の表示パターンは、該当する金属端子26と接続されている被覆電線25の被覆と同等の着色や模様を利用して表示する。
【0065】
この場合、作業者はLED61が点灯している位置のコネクタハウジング23を上方から覗き込むことにより、次に金属端子26を挿入すべきキャビティ23aの位置を、下方の液晶パネル30の画面に表示された誘導パターンにより把握できる。また、この誘導パターンの着色や模様から、金属端子26に接続されている被覆電線25がサブハーネスの設計仕様と一致しているかどうか、すなわち電線選択の間違いが無いかどうかを視認に基づく比較により把握できる。
【0066】
作業者は、LED13が点灯している位置の電線筒11-1~11-3から取り出した1本の端子付き電線の金属端子26を持ち、LED61が点灯している位置に近い特定のコネクタハウジング23に注目し、液晶パネル30上の誘導パターンが表示されている位置のキャビティ23aに金属端子26を挿入する。また、この金属端子26に接続されている被覆電線25を引っ張って、固定されていることを確認した後で、スイッチ62と連動するボタンを操作する。
【0067】
誘導ユニット32のマイクロコンピュータ32aは、スイッチ62に対する作業者の操作を、S16で作業の歩進入力として認識する。そして、次のS17で歩進入力の情報を誘導管理部40へ送信する。
【0068】
引き続き、同じコネクタハウジング23に対する端子挿入作業を繰り返す場合には、マイクロコンピュータ32aはS18からS19の処理に進む。そして、液晶パネル30の画面に表示する誘導パターンを更新する。例えば、1番目のキャビティから2番目のキャビティの位置に移る場合には、2番目のキャビティと一致する位置に誘導パターンを表示する。表示する誘導パターンの着色や模様は、2番目のキャビティに挿入する金属端子26と接続されている被覆電線25の被覆と一致するように変更する。
【0069】
作業対象としている現在のコネクタハウジング23に対する今回の端子挿入作業が全て終了した場合には、マイクロコンピュータ32aはS18からS21の処理に進む。そして、現在のコネクタハウジング23に対する終了処理を実施する。すなわち、作業対象のコネクタハウジング23の位置を示すLED61を消灯し、当該コネクタの作業終了を誘導管理部40に通知する。
【0070】
ところで、新しい種類のワイヤハーネスやサブハーネスを生産する場合には、新しい種類のコネクタハウジング23を採用する可能性がある。その場合、新しい種類のコネクタハウジング23のデータは、各誘導ユニット32の不揮発性メモリ32bに配置されたコネクタ情報テーブルTBLにまだ登録されていない。そこで、新しい種類のコネクタハウジング23のデータを、例えば管理者がホストコンピュータ46上に準備した後で、ホストコンピュータ46がこのデータを誘導管理部40へ転送する。そして、誘導管理部40は、ホストコンピュータ46から転送されたデータを、コネクタ情報の追加命令と共に各誘導ユニット32へ送信する。
【0071】
各誘導ユニット32内のマイクロコンピュータ32aは、誘導管理部40からコネクタ情報の追加命令を受信すると、S22からS23の処理に進む。そして、誘導管理部40から受信した新しい種類のコネクタハウジング23のデータをマイクロコンピュータ32aがコネクタ情報テーブルTBL上に追加する。
【0072】
したがって、例えば車両の仕様変更に伴って、新しい種類のワイヤハーネスやサブハーネスを生産する場合でも、新しい種類のコネクタハウジング23に対応した新しい保持部材22の追加が必要になるだけで、製造支援システム100のハードウェアの大部分はそのまま再利用できる。
【0073】
また、例えば1つのサブハーネスに含まれる複数のコネクタハウジング23の並び順の仕様が変更された場合には、誘導管理部40が各コネクタ位置の誘導ユニット32に送信する指示内容の送信順序と宛先を入れ替えるだけで対応できるので、製造支援システム100のハードウェアはそのまま再利用できる。
【0074】
<作業者が視認可能な状態の具体例>
それぞれ異なる作業状態においてコネクタハウジング23をその端子挿入側から視た状態を図8(a)、図8(b)、および図8(c)にそれぞれ示す。つまり、図1の製造支援システム100を使用する際には、作業者は1つのコネクタハウジング23の箇所で図8(a)~図8(c)のような状況を視認できる。
【0075】
図8(a)に示した状態は、コネクタハウジング23の全てのキャビティ23aが空き状態で何も金属端子26が装着されていない状況である。図8(a)の例では、当コネクタハウジング23の下方に配置されている液晶パネル30の画面に表示される誘導パターンが、作業部位表示30aである。つまり、作業者は、12箇所のキャビティ23aのうち、上段で最も左の位置にある1つのキャビティ23aの開口箇所において、この作業部位表示30aを視認できる。したがって、作業者は、作業部位表示30aが見える特定のキャビティ23aに金属端子26を挿入すれば良いことが分かる。
【0076】
なお、図8(a)の作業部位表示30aはこの箇所のキャビティ23aに挿入すべき金属端子26と接続されている被覆電線25における被覆の着色や模様と一致するように表示されるので、作業者による視覚的な対比により、挿入する金属端子26が間違っていないかどうかを容易に把握できる。
【0077】
図8(b)に示した状態は、12箇所のキャビティ23aのうち上段で最も左の位置にある1つのキャビティ23aのみ、既に金属端子26Aが挿入された状況である。図8(b)の例では、当コネクタハウジング23の下方に配置されている液晶パネル30の画面に表示される誘導パターンが、作業部位表示30bである。つまり、作業者は、12箇所のキャビティ23aのうち、上段で左端から2番目の位置にある1つのキャビティ23aの開口箇所において、この作業部位表示30bを視認できる。したがって、作業者は、作業部位表示30bがあるキャビティ23aに金属端子26を挿入すれば良いことが分かる。
【0078】
図8(c)に示した状態は、12箇所のキャビティ23aのうち上段で左端から1番目および2番目の位置にある2つのキャビティ23aにそれぞれ金属端子26A、および26Bが挿入された状況である。図8(c)の例では、当コネクタハウジング23の下方に配置されている液晶パネル30の画面に表示される誘導パターンが、作業部位表示30cである。つまり、作業者は、12箇所のキャビティ23aのうち、上段で左端から3番目の位置にある1つのキャビティ23aの開口箇所において、この作業部位表示30cを視認できる。したがって、作業者は、作業部位表示30cがあるキャビティ23aに金属端子26を挿入すれば良いことが分かる。
【0079】
<変形例>
変形例の製造支援システム100Aの外観を図9に示す。
図9に示した製造支援システム100Aは、車両用のワイヤハーネスWHを手作業で製造する作業工程で利用することを想定している。例えば、図1に示した製造支援システム100などを用いて製造した多数のサブハーネスを、ベルトコンベアなどにより移動する作業台10B上で組み付けて一体化することにより、ワイヤハーネスWHを製造できる。
【0080】
ワイヤハーネスWHに含まれるそれぞれのサブハーネスを製造する際に、例えば複数のサブハーネスに跨がる電線の金属端子26については、コネクタハウジング23の一部のキャビティ23aに対して挿入作業を実施できない。その場合の端子挿入作業は、複数のサブハーネスを組み付けてワイヤハーネスWHを製造する際に、後嵌め作業として実施される。この後嵌め作業は作業者による手作業なので、これを支援するために製造支援システム100Aが利用される。
【0081】
図9に示した例では、ワイヤハーネスWHの端部などの各部位に、それぞれコネクタハウジング23A、23B、23C、23D、23E、23F、23G、および23Hが接続されている。そして、多数の誘導ユニット51A、51B、51C、51D、51E、51F、および51Gが、各コネクタハウジング23A~23Hの近傍や、配索経路の分岐箇所近傍に設置されている。
【0082】
図9の各誘導ユニット51A~51Gは、それぞれTFTなどの二次元表示画面を有する液晶パネル30を備えている。各誘導ユニット51A~51Gの液晶パネル30は、各キャビティ23aへ金属端子26を後嵌めする際の作業を支援するための情報を表示する。すなわち、後嵌め対象のキャビティ23aの位置、後嵌めする金属端子26に接続された被覆電線25の被覆における着色や模様などを液晶パネル30が表示する。また、この液晶パネル30は、LED灯のように作業ポイントを示すために用いられたり、作業者が所定の作業後に液晶パネル30の表示ボタンを押下することで、管理部本体41Aに作業の進捗状況を把握させることもできる。
【0083】
作業対象となる作業台10Bが、ベルトコンベアにより搬送されて管理部本体41A、またはインタフェース部42Aに接近すると、管理部本体41A、又はインタフェース部42Aは、各誘導ユニット51A~51Gに対する表示指示を送信する。図9の製造支援システム100Aにおいては、作業台10B上の複数箇所に、複数台の無線モジュール52A、52B、および52Cが設置されている。また、各誘導ユニット51A~51Gは無線通信機能を搭載している。更に、インタフェース部42Aの近傍に無線モジュール53が設置され、ホストコンピュータ46Aの近傍に無線モジュール54が設置されている。管理部本体41Aとインタフェース部42Aとの間は有線で接続されている。
【0084】
したがって、インタフェース部42Aと各誘導ユニット51A~51Gとの間は、Zigbee(登録商標)や無線LANなどの無線通信によりそれぞれ接続することができる。また、ホストコンピュータ46Aとインタフェース部42Aとの間も、無線通信により接続することができる。
【0085】
図9に示した管理部本体41Aは、インタフェース部42Aおよび無線モジュール53を経由して、各誘導ユニット51A~51Gに指示を送り、各位置の液晶パネル30に各端子の後嵌め作業に必要な誘導を行うための情報を表示する。
【0086】
以上のように、図1および図4に示した製造支援システム100においては、各誘導ユニット32が各液晶パネル30を用いて各コネクタハウジング23の位置で、作業者の視線を作業対象のキャビティ23aに誘導するための誘導パターンを表示できる。したがって、各種コネクタの形状データ等を予め用意しておけば、製造するサブハーネスやワイヤハーネスに含まれるコネクタの仕様が変化した場合でも、共通のハードウェアを利用して適切な誘導パターンを表示できる。
【0087】
また、製造するサブハーネスやワイヤハーネスに含まれる複数のコネクタの並び順や組み合わせの仕様が変化した場合でも、誘導管理部40が適切な指示を各誘導ユニット32に与えることで、共通のハードウェアを利用して適切な誘導パターンをそれぞれのコネクタハウジング23の適切なキャビティ位置に表示できる。
【0088】
また、図4に示した製造支援システム100は、誘導管理部40と、複数の誘導ユニット32-1~32-4の通信線をデイジーチェーンの形態で接続しているので、接続する誘導ユニット32の数を必要に応じて増やすことができる。したがって、システム構成の自由度が高く、製造するサブハーネスやワイヤハーネスの様々な仕様変更に対して容易に対応できる。つまり、ワイヤハーネスWHを搭載する車両の仕様が変化した場合に、製造支援システム100の多くのハードウェアを再利用して、新たな仕様のサブハーネスやワイヤハーネスの製造に対応できる。
【0089】
なお、製造支援システム100、および100Aは、サブハーネスやワイヤハーネスの製造時だけでなく、検査を実施する際にも利用できる。但し、検査の工程では各キャビティ23aに金属端子26が既に収容されているので、キャビティ23aの位置で作業者が液晶パネル30上の誘導パターンを視認することはできない。したがって、その場合は例えば該当するコネクタハウジング23に隣接する位置で、液晶パネル30の画面上にコネクタハウジング23の全キャビティ23aを模擬した形状パターンと、検査対象の端子位置の特定キャビティの誘導パターンとを表示することが想定される。また、この場合も表示する誘導パターンの表示色や模様を、該当する金属端子26に接続された被覆電線25と一致させることで検査が容易になる。
【0090】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る製造支援システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] ワイヤハーネスの製造時又は検査時に、前記ワイヤハーネスに含まれる各コネクタハウジング(23)上の各端子収容箇所(キャビティ23a)と、当該箇所に装着すべき端子(金属端子26)との対応関係について作業者の視線を誘導するための製造支援システム(100)であって、
複数の前記コネクタハウジングに対応付けてそれぞれ用意された複数の誘導ユニット(32-1~32-4)と、
それぞれが1つ又は複数のコネクタハウジング受け部を有し、前記複数の誘導ユニットのいずれかに搭載可能な複数のハウジング受け冶具(20-1~20-4)と、
前記複数の誘導ユニットに対して指示を与える上位制御部(誘導管理部40)と、
を備え、
前記各誘導ユニットが、二次元表示画面(液晶パネル30)と、通信部(32d,32e)と、前記二次元表示画面の表示内容を状況に応じて制御する表示制御部(マイクロコンピュータ32a)とを有し、
前記ハウジング受け冶具は、前記誘導ユニットの二次元表示画面と重なる状態で配置可能に構成された、
ことを特徴とする製造支援システム。
【0091】
[2] 前記複数の誘導ユニットの各々が複数の通信用接続端子(通信用接続口32g,32h)を有し、
前記複数の誘導ユニットが所定の通信ケーブル(LANケーブル44,44-2~44-4)によりデイジーチェーンの形態で接続された、
ことを特徴とする上記[1]に記載の製造支援システム。
【0092】
[3] 前記複数の誘導ユニットの各々が、作業の歩進入力を許容する入力受付部(スイッチ62)を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記入力受付部からの作業の歩進入力を受け付けて、歩進入力の情報を前記上位制御部へ送信すると共に、前記二次元表示画面の表示内容を更新する(ステップS16,S17,S19)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の製造支援システム。
【0093】
[4] 前記複数の誘導ユニットの各々が、該当する作業対象コネクタか否かを表示可能な表示灯(LED61)を有し、
前記誘導ユニット内の制御部は、前記上位制御部からの指示に従い、前記表示灯の表示状態を制御する(ステップS13)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の製造支援システム。
【0094】
[5] 前記複数の誘導ユニットの各々が、複数種類のコネクタに関する端子挿入口の形状データおよび型番を含むコネクタ情報を予め保持するコネクタ情報保持部(コネクタ情報テーブルTBL,不揮発性メモリ32b)を有し、
前記誘導ユニット内の制御部(マイクロコンピュータ32a)は、前記上位制御部からの指示に従い、前記コネクタ情報保持部のコネクタ情報に、新たな情報を追加する(S22,S23)、
ことを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造支援システム。
【符号の説明】
【0095】
10,10B 作業台
10a 作業部
11-1,11-2,11-3 電線筒
12 電線筒LED部
13 LED
20,20-1,20-2,20-3,20-4 ハウジング受け冶具
21 開口部
22 保持部材
22a ハウジング収容部
23,23-1,23-2,23-3,23-4 コネクタハウジング
23A,23B,23C,23D,23E,23F,23G コネクタハウジング
23a キャビティ
24 操作レバー
25,25A,25B 被覆電線
26,26A,26B 金属端子
30,30-1,30-2,30-3,30-4 液晶パネル
30a,30b,30c 作業部位表示
32,32-1,32-2,32-3,32-4 誘導ユニット
32a マイクロコンピュータ
32b 不揮発性メモリ
32c 入出力部
32d,32e 通信部
32f 表示制御部
32g,32h 通信用接続口
33,34,35 接続ケーブル
40 誘導管理部
41,41A 管理部本体
42,42A インタフェース部
43 バーコードリーダ
44,44-2,44-3,44-4,44-5 LANケーブル
45 接続ケーブル
46,46A ホストコンピュータ
51A,51B,51C,51D,51E,51F 誘導ユニット
52A,52B,52C,53,54 無線モジュール
61 LED
62 スイッチ
100,100A 製造支援システム
TBL コネクタ情報テーブル
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9