(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147625
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ダイヘッド
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20231005BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20231005BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055251
(22)【出願日】2022-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】橘田 浩貴
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA17
4F041CA03
4F041CA16
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
(57)【要約】
【課題】組立て再現性が高く、かつ被塗布材に到達するそれぞれの塗布液の位置や塗布量を精確に調整し得る、被塗布材に第1の塗布層とその両脇に隣接する第2の塗布層を形成するダイヘッドを提供する。
【解決手段】ダイヘッドは、第1本体ブロックと、第1本体ブロックに対向して配置された第2本体ブロックと、第1本体ブロックおよび第2本体ブロックの境界に一方向に沿って交互に配列されることにより、第1塗布液を吐出する第1吐出口および第2塗布液を吐出する第2吐出口を形成する第1流路ブロックおよび第2流路ブロックとを備え、第1吐出口は、第1流路ブロックが第1流路ブロックよりも厚い第2流路ブロックに一方向に沿って両側から挟み込まれ、第1本体ブロックおよび第2ブロックの一方と接し他方と離間することによって生じる間隙により形成されており、第2吐出口は、第2流路ブロックに設けられた有底溝により形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1本体ブロックと、
前記第1本体ブロックに対向して配置された第2本体ブロックと、
前記第1本体ブロックおよび前記第2本体ブロックの境界に一方向に沿って交互に配列されることにより、第1塗布液を吐出する第1吐出口および第2塗布液を吐出する第2吐出口を形成する第1流路ブロックおよび第2流路ブロックと
を備え、
前記第1吐出口は、前記第1流路ブロックが前記第1流路ブロックよりも厚い第2流路ブロックに前記一方向に沿って両側から挟み込まれ、前記第1本体ブロックおよび前記第2本体ブロックの一方と接し他方と離間することによって生じる間隙により形成されており、
前記第2吐出口は、前記第2流路ブロックに設けられた有底溝により形成されているダイヘッド。
【請求項2】
前記第1本体ブロックは、前記第1塗布液を一時的に貯留させると共に前記間隙と連通する第1マニホールドを有し、
前記第2流路ブロックは、前記有底溝の一部として前記第2塗布液を一時的に貯留させる第2マニホールドを有する請求項1に記載のダイヘッド。
【請求項3】
前記有底溝は、前記第2吐出口へ向かって浅くなるように設けられている請求項1または2に記載のダイヘッド。
【請求項4】
前記第1本体ブロックおよび前記第2本体ブロックの境界に、前記第1流路ブロックおよび前記第2流路ブロックに対向して配列されることにより、前記第1吐出口および前記第2吐出口の一側面を形成する第3流路ブロックを備える請求項1から3のいずれか1項に記載のダイヘッド。
【請求項5】
前記第1流路ブロック、前記第2流路ブロックおよび前記第3流路ブロックは、第1本体ブロックおよび第2本体ブロックよりも硬質な素材で形成されている請求項4に記載のダイヘッド。
【請求項6】
前記第2流路ブロックのうち前記有底溝が設けられた一面は、前記第3流路ブロックと接触する第1領域および前記第2本体ブロックと接触する第2領域を有し、
前記第2本体ブロックは、前記有底溝のうち前記第2領域に設けられた接続部と接続する、前記第2塗布液の供給孔を有する請求項4または5に記載のダイヘッド。
【請求項7】
前記第2吐出口を前記第1吐出口よりも前記第1本体ブロックに対して吐出方向へ突出させる調整機構を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のダイヘッド。
【請求項8】
前記第2吐出口は、前記第1吐出口から吐出される前記第1塗布液の吐出方向に対して前記第2塗布液の吐出方向が斜交するように設けられている請求項1から7のいずれか1項に記載のダイヘッド。
【請求項9】
第1吐出口のうち前記一方向に直交する他方向に沿う開口幅は、前記第2吐出口のうち前記他方向に沿う開口幅よりも大きい請求項1から8のいずれか1項に記載のダイヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に用いられるダイヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池や燃料電池は、導電性シートを芯材とし、その表面に活物質と呼ばれる集電体形成用の塗布液を塗布して乾燥させた電極シート材を含む。電極シート材は、セパレータを挟んで幾重にも積層され、電解液に浸されて外装フィルムで封止される。ここで、加工工程において正極と負極が短絡することを防ぐために、例えばアルミナ等の無機物である絶縁材を活物質の両脇に隣接させる手法が知られるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、導電性シート上にストライプ塗工を施す場合には、ロール・トゥ・ロール方式によるダイコートが多く採用されている。ダイコートにおいては、一般的にシートの進行方向に直交する向きに配置されたダイヘッドから塗布液が吐出される。最近では、ダイヘッドの先端部に塗布液を吐出する開口部が複数設けられた多条塗工タイプのダイヘッドも用いられるようになってきている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2013/111624号
【特許文献2】特開2001-29861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロール・トゥ・ロール方式によって活物質の両脇に絶縁材を塗工する場合、これまでは薄い金属薄板であるシムシートをダイヘッドの先端部に挟み込んでそれぞれの塗布液の流路を形成することが多かった。シムシートは、一般的にレーザー加工やエッチング処理によって製作されることから、スリットの高精度化が難しかったり、それぞれの流路設計に制約があったりする。また、その薄さから位置合わせの調整などが難しく、例えば、分解清掃後の再組み付け時にずれが発生しやすいという問題があった。特に、活物質の両脇に絶縁材を塗工する場合には、それぞれの塗布液が導電シートに到達する位置や塗布量を精確に調整したいという要請があるが、シムシートでこれらの要請を実現することは難しかった。さらに、これを多条化しようとすると、シムシートではすべての塗布層を所望の状態に形成することが極めて難しかった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、被塗布材に第1の塗布層とその両脇に隣接する第2の塗布層を形成するダイヘッドであって、組立て再現性が高く、かつ被塗布材に到達するそれぞれの塗布液の位置や塗布量を精確に調整し得るダイヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるダイヘッドは、第1本体ブロックと、第1本体ブロックに対向して配置された第2本体ブロックと、第1本体ブロックおよび第2本体ブロックの境界に一方向に沿って交互に配列されることにより、第1塗布液を吐出する第1吐出口および第2塗布液を吐出する第2吐出口を形成する第1流路ブロックおよび第2流路ブロックとを備え、第1吐出口は、第1流路ブロックが第1流路ブロックよりも厚い第2流路ブロックに一方向に沿って両側から挟み込まれ、第1本体ブロックおよび第2ブロックの一方と接し他方と離間することによって生じる間隙により形成されており、第2吐出口は、第2流路ブロックに設けられた有底溝により形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、被塗布材に第1の塗布層とその両脇に隣接する第2の塗布層を形成するダイヘッドであって、組立て再現性が高く、かつ被塗布材に到達するそれぞれの塗布液の位置や塗布量を精確に調整し得るダイヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るダイヘッドを用いた塗布工程の様子を示す斜視図である。
【
図2】ダイヘッドの組み立てられた状態を示す斜視図である。
【
図3】ダイヘッドの一部の要素を分けて示す斜視図である。
【
図4】第1本体ブロックと第1流路ブロックおよび第2流路ブロックの関係を示す斜視図である。
【
図5】第1吐出口と第2吐出口の様子を示す上面図とその一部拡大図である。
【
図6】他の実施例に係るダイヘッドの一部の要素を分けて示す斜視図である。
【
図7】更に他の実施例に係るダイヘッドの組み立てられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、各図において、同一又は同様の構成を有する構造物が複数存在する場合には、煩雑となることを回避するため、一部に符号を付し、他に同一符号を付すことを省く場合がある。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイヘッド100を用いた塗布工程の様子を示す斜視図である。本実施形態においては、リチウムイオン電池の電極シート材を製造する一工程である、電極シート300に電極層と絶縁層を多条に形成する塗布工程を一実施例として説明する。塗布装置は、被塗布材である電極シート300を一方向へ送り出す搬送ローラー230と、搬送ローラー230の近傍において電極シート300の搬送方向に直交するように設置されたダイヘッド100とを含む。
【0012】
ダイヘッド100は、電極層を形成するためのスラリーである電極材料(第1塗布液)と、絶縁層を形成するためのスラリーである絶縁材料(第2塗布液)とをそれぞれ吐出する吐出工具である。ダイヘッド100には、一面側に一つの第1チューブ210が、他面側に複数の第2チューブ220が接続されている。第1チューブ210は、不図示の第1貯留タンクからポンプによる輸送圧を受けて電極材料をダイヘッド100へ供給する。第2チューブ220は、不図示の第2貯留タンクからポンプによる輸送圧を受けて絶縁材料をダイヘッド100へ供給する。搬送ローラー230の回転速度やポンプによる輸送圧は、意図された電極層および絶縁層が形成されるように、不図示の制御部によって制御される。
【0013】
ダイヘッド100は、電極シート300の塗布領域のうち、搬送方向に直交する幅方向に対して複数(本実施形態においては3つ)の中央部領域(第1塗布領域)に電極材料を吐出すると共に、第1領域にそれぞれ隣接する2つの側方領域(第2塗布領域)に絶縁材料を吐出する。吐出された電極材料および絶縁材料は、電極シート300上でそれぞれ一定の高さ(層厚)をもって電極層および絶縁層を形成する。電極層および絶縁層は、その後の乾燥工程を経て固化する。
【0014】
なお、図示するようにx軸、y軸およびz軸を定める。すなわち、電極シート300の搬送方向がx軸方向であり、電極シート300の幅方向がy軸方向であり、電極シート300の塗布面に垂直な方向がz軸方向である。以後の図面においてもダイヘッド100が
図1のように設置された状態を基準とする同様の座標軸を併記することにより、それぞれの図面が表す構造物の向きを示す。また、本実施形態においては、図面の簡略化のため構造物を互いに締結する締結構造を省いて図示する。実際には、ダイヘッド100は、締結構造として、ボルトやナット、雌ねじ孔や座繰りなどを有する。
【0015】
図2は、ダイヘッド100の組み立てられた状態を示す斜視図である。特に、
図2(A)は、主に第2本体ブロック120側が視認できるように示す図であり、
図2(B)は、主に第1本体ブロック110側が視認できるように示す図である。ダイヘッド100は、主に、第1本体ブロック110、第2本体ブロック120、第1流路ブロック130、第2流路ブロック140、第3流路ブロック150によって構成されている。
【0016】
第1本体ブロック110および第2本体ブロック120は、電極シート300の塗布領域よりも幅広な長手方向を有する、全体的には直方体に近い金属ブロックである。第1流路ブロック130および第2流路ブロック140は、第1本体ブロック110のうち、第2本体ブロック120と対向する境界の長手方向(y軸方向)に沿って交互に配列され、それぞれが第1本体ブロック110に固定されている。第1流路ブロック130および第2流路ブロック140の具体的な形状およびこれらの配列については、後に詳述する。
【0017】
第3流路ブロック150は、第2本体ブロック120のうち、第1本体ブロック110と対向する境界の長手方向(y軸方向)に沿って配置され、第2本体ブロック120に固定されている。第3流路ブロック150の長手方向の長さは、第1流路ブロック130および第2流路ブロック140の配列方向の全体の長さにほぼ等しい。ダイヘッド100は、交互に配列された第1流路ブロック130および第2流路ブロック140のうち配列方向に沿うそれぞれの一面が第3流路ブロック150の長手方向に沿う一面と対向するように組み付けられている。なお、第3流路ブロック150は、本実施形態においては1つのブロックで複数の第1流路ブロック130および第2流路ブロック140と対向するが、複数のブロックに分割されていてもよい。
【0018】
図3は、ダイヘッド100の一部の要素を分けて示す斜視図である。特に、
図3(A)は、第1本体ブロック110のうち第2本体ブロック120と接触する接触面側が視認できるように示す図であり、
図3(B)は、第2本体ブロック120のうち第1本体ブロック110と接触する接触面側が視認できるように示す図である。
【0019】
第1本体ブロック110のうち第2本体ブロック120と接触する接触面側の上部には、上述のように長手方向に沿って第1流路ブロック130と第2流路ブロック140が交互に配列されて固定されている。より具体的には、本実施形態においては、3つの第1流路ブロック130と4つの第2本体ブロック120が、それぞれの第1流路ブロック130が両側から第2流路ブロック140に挟み込まれるように、配列されている。
【0020】
第1本体ブロック110のうち第2本体ブロック120と接触する接触面側には、長手方向に沿って半円筒状にくり抜かれた第1マニホールド112が設けられている。また、その中央部には、反対面(外面)側まで貫通する第1供給孔111が設けられている。上述の第1チューブ210は、第1供給孔111の外面開口に接続され、第1チューブ210によって供給される第1塗布液は、第1供給孔111を経由して第1マニホールド112に一時的に貯留される。第1マニホールド112に一時的に貯留された第1塗布液は、第1吐出口から吐出される。第1マニホールド112から第1吐出口までの第1流路については、後に詳述する。
【0021】
第2本体ブロック120のうち第1本体ブロック110と接触する接触面側の上部には、上述のように長手方向に沿って第3流路ブロック150が固定されている。第3流路ブロック150の高さ(z軸方向の長さ)は、第2流路ブロック140の高さよりも低く、第2本体ブロック120のうち第3流路ブロック150が固定された下側(z軸マイナス方向の側)には、反対面(外面)側まで貫通して第2流路ブロック140と接続する複数の第2供給孔121が、第2流路ブロック140の配置位置に応じて設けられている。上述の第2チューブ220は、第2供給孔121の外面開口に接続され、第2チューブ220によって供給される第2塗布液は、第2供給孔121を経由して第2流路ブロック140の後述する有底溝へ供給される。第2塗布液は、第2吐出口から吐出される。有底溝から第2吐出口までの第2流路については、後に詳述する。
【0022】
図4は、第1本体ブロック110と第1流路ブロック130および第2流路ブロック140の関係を示す斜視図である。第1本体ブロック110のうち第2本体ブロック120と接触する接触面側の上部には、長手方向に沿って収容溝113が設けられており、第1流路ブロック130と第2流路ブロック140は、この収容溝113に載置されて交互に配列された後に、第1本体ブロック110に固定される。
【0023】
第2流路ブロック140の厚み(x軸方向の長さ)は、第1流路ブロック130の厚みよりも厚い。したがって、第1流路ブロック130および第2流路ブロック140のそれぞれの背面(第3流路ブロック150および第2本体ブロック120と対向する対向面とは反対側の面)が第1本体ブロック110に接して固定されると、第2流路ブロック140の対向面は第3流路ブロック150および第2本体ブロック120の対向面と接触するものの、第1流路ブロック130の対向面は第3流路ブロック150および第2本体ブロック120の対向面とは離間する。すなわち、第1塗布液が流通する第1流路は、第1流路ブロック130が第2流路ブロック140に長手方向に沿って両側から挟み込まれ、第1本体ブロック110と接し第3流路ブロック150および第2本体ブロック120と離間することによって生じる間隙によって形成される。この第1流路は、一方の端で第1マニホールド112と連通し、他方の端で第1吐出口を形成して電極シート300と対向する。なお、第1吐出口が電極シート300に向かって突出するように、第1流路ブロック130および第3流路ブロック150の先端部は、電極シート300側(z軸プラス方向)へ向かって凸形状を成している。
【0024】
第2流路ブロック140は、第3流路ブロック150および第2本体ブロック120と接触する接触面に有底溝142が掘削されている。有底溝142の一部は、第2塗布液を一時的に貯留できるように深く形成されており、第2マニホールド143として機能する。第2流路ブロック140の高さは、第1流路ブロック130の高さと等しく、第3流路ブロック150の高さよりも高い。したがって、第2流路ブロック140の接触面は、第3流路ブロック150と接触する第1領域と、第2本体ブロック120と接触する第2領域とに区分される。
【0025】
第2マニホールド143は、第1領域と第2領域に跨いで設けられており、このうち第2領域の部分に、第2本体ブロック120に設けられた第2供給孔121の端が位置する。すなわち、第2マニホールド143の一部は、第2供給孔121の端と接続する接続部141として機能する。なお、第2塗布液の塗布量は第1塗布液の塗布量よりも少なく、第2塗布液の吐出に求められる整流性は、第1塗布液の吐出に求められる整流性ほど高くはないので、第2塗布液の性質や求められる精度等に応じて、第2流路ブロック140に対する第2マニホールド143の形成を省くこともできる。第2マニホールド143の形成を省く場合には、第2供給孔121の端の位置および形状に応じて、有底溝142の一部として接続部141を設ければよい。
【0026】
第2流路は、第2流路ブロック140が第3流路ブロック150および第2本体ブロック120と接触することにより、すなわち有底溝142が第3流路ブロック150および第2本体ブロック120によって閉蓋されることにより形成される。第2流路は、一方の端が第2塗布液の供給を受ける接続部141であり、他方の端で電極シート300と対向する第2吐出口を形成する。
図4において拡大して示す第2流路ブロック140は、2つの第1流路ブロック130の間に配置されるブロックであるので、有底溝142は、それぞれの第1流路ブロック130側へ向けて二股に分岐し、2つの第2吐出口を形成する。一方でのみ第1流路ブロック130と隣接する(例えば、y軸方向の両端に位置する)第2流路ブロック140であれば、有底溝142は、その第1流路ブロック130側へ向かう単路として設けられ、一つの第2吐出口を形成する。
【0027】
第2吐出口付近の有底溝142の溝方向は、第1吐出口から吐出される第1塗布液の吐出方向に対して第2吐出口から吐出される第2塗布液の吐出方向が斜交するように、拡大図に示すように、長手方向であるy軸方向に対して斜めに設定されるとよい。このように設定された有底溝142から吐出された第2塗布液は、電極シート300上で第1塗布液と隙間なく隣接することが期待できる。なお、第2吐出口が電極シート300に向かって突出するように、第1流路ブロック130と同様に、第2流路ブロック140および第3流路ブロック150の先端部は、電極シート300側(z軸プラス方向)へ向かって凸形状を成している。
【0028】
有底溝142は、第2マニホールド142から第2吐出口へ向かって、その断面積が漸減するように設けられるとよい。このように第2吐出口へ向かって第2流路が絞られていると、第2チューブ220によって第2塗布液が供給される供給圧よりも、第2吐出口から吐出させる吐出圧を高めることができる。第2吐出口へ向かって第2流路を絞る手法は、有底溝142の幅を第2吐出口へ向かって狭めてもよいし、有底溝142の深さを第2吐出口へ向かって浅くしてもよい。
【0029】
第2流路およびその端の第2吐出口は、第2流路ブロック140の表面を掘削して設けられる有底溝142によって形成されるので、第2流路の経路や第2吐出口の位置は、従来のシムシートによって形成する場合に比べて制約を受けることなく自由に設計できる。例えば、シムシートでは、2つの部分に分離してしまうので、二股に分岐する経路を設定できず、また、狭角を成す端部は捲れやすく、被塗布材の塗布面を損傷することもあり得るので、端部にはある程度の幅を与える必要がある。第2流路ブロック140の表面に対して有底溝142を設ける場合には、図示するような二股の経路を設定でき、また、シムシートに対して剛性も確保できるので捲れなどの変形が生じる心配もない。
【0030】
図5は、第1吐出口と第2吐出口の様子を示す上面図とその一部拡大図である。上述のように、第1流路ブロック130の厚み(T
1)は、第2流路ブロック140の厚み(T
2)よりも小さいので、第1吐出口のうちx軸方向に沿う第1開口幅W
1は、その差であるT
2-T
1となる。また、y軸方向に沿う第2開口幅L
1は、第1流路ブロック130自身の幅と等しい。したがって、第1吐出口の大きさは、第1流路ブロック130の厚みや幅を変化させることにより調整することができる。すなわち、電極シート300上に形成する電極層の幅や厚みを調整することができる。
【0031】
第2吐出口のうち、x軸方向に沿う第1開口幅W2は、第2流路ブロック140に設けられる有底溝142の端における深さに等しい。また、y軸方向に沿う第2開口幅L2は、有底溝142の端における幅に等しい。したがって、第2吐出口の大きさは、第2流路ブロック140に形成する有底溝142の端の深さや幅を変化させることにより調整することができる。すなわち、電極シート300上に形成する絶縁層の幅や厚みを調整することができる。
【0032】
特に、電極層を厚く積層させるためにより多くの第1塗布液を吐出させる場合には、第1吐出口の第1開口幅W1を第2吐出口の第1開口幅W2より大きくすればよい。また、本実施形態においては、電極シート300に電極層と絶縁層を3条で形成する多条塗布の例を示すが、幅や厚みの異なる第1流路ブロック130や他の有底溝142が掘削された第2流路ブロック140等を組み合わせることにより、3条以外の多条塗布や単条塗布を実現することもできる。この場合、第1流路ブロック130および第2流路ブロック140以外に、例えば幅を調整するためのダミーブロックを介在させてもよい。
【0033】
ダイヘッド100を構成する各ブロックのうち、電極シート300と直接的に対向する第1流路ブロック130、第2流路ブロック140および第3流路ブロック150のそれぞれは、これらを支持する第1本体ブロック110および第2本体ブロック120よりも硬質の素材が用いられる。例えば、第1流路ブロック130、第2流路ブロック140および第3流路ブロック150の素材として超硬合金を採用し、第1本体ブロック110および第2本体ブロック120の素材としてステンレス鋼を採用するとよい。このように、吐出口を形成する流路ブロックをモジュール化して硬質素材とすることにより、塗布液を均一に塗布するための開口エッジ精度の確保と、高い耐摩耗性を実現している。一方で、体積比でダイヘッド100の多くを占める本体ブロックをステンレス鋼等で成形することにより、コストの低減を図ることができる。
【0034】
次に、本実施形態のいくつかの変形例について説明する。
図6は、他の実施例に係るダイヘッド100’の一部の要素を分けて示す斜視図である。
図6は、
図3(B)に対応する斜視図であり、図示するように、ダイヘッド100’は、第2本体ブロック120’の形状がダイヘッド100における第2本体ブロック120と異なる他はダイヘッド100の各構成要素と同様であるので、その説明を省略する。
【0035】
第2本体ブロック120’は、ダイヘッド100における第2本体ブロック120と第3流路ブロック150が一体化した形状と同等の形状を成す。例えば、電極シート300の素材などにより耐摩耗性を重視しなくてもよい場合には、第3流路ブロック150を別体として用意するのではなく、ステンレス鋼等を素材とする第2本体ブロック120’を採用すればよい。この場合、組立て性の容易化とコストの削減を期待できる。
【0036】
図7は、更に他の実施例に係るダイヘッド100”の組み立てられた状態を示す斜視図であり、
図2(B)に対応する。ダイヘッド100”は、第2流路ブロック140’の構造がダイヘッド100における第2流路ブロック140と異なり、また、第3流路ブロック150の代わりに第4流路ブロック170および第5流路ブロック180を備える点においてダイヘッド100と異なる。他の構成要素はダイヘッド100と同様であるので、その説明を省略する。
【0037】
第2流路ブロック140’は、第2塗布液の吐出方向であるz軸プラス方向へ設定された範囲において突出させることができる。具体的には、例えば第2流路ブロック140’を第1本体ブロック110に固定するボルトは、第1本体ブロック110を貫通して第2流路ブロック140’を第1本体ブロック110側へ引き込むことにより固定を実現するが、第1本体ブロック110を貫通する貫通孔をz軸方向へ長円とすることにより、第2流路ブロック140’をz軸方向へシフトさせて固定することができる。あるいは、突出量に応じた複数の第2流路ブロック140’を予め用意してもよい。
【0038】
上述の実施例において第3流路ブロック150は、複数の第1流路ブロック130、第2流路ブロック140’に対向する1つのブロックとして用意されたものであったが、本実施例においては、第1流路ブロック130、第2流路ブロック140’のそれぞれに一対一に対応するように、第4流路ブロック170第5流路ブロック180が設けられている。すなわち、第4流路ブロック170と第5流路ブロック180の組み合わせが、第3流路ブロック150と同等の機能を担う。
【0039】
第4流路ブロック170は、第1流路ブロック130に対向し、その間隙により第1吐出口を形成する。第5流路ブロック180は、第2流路ブロック140’に対向して接触すると共に第2流路ブロック140’と同様にz軸プラス方向へ突出し、第2流路ブロック140’に掘削された有底溝142を閉蓋することにより第2吐出口を形成する。このように、ダイヘッド100”が第2吐出口を第1吐出口よりも第1本体ブロック110に対して吐出方向へ突出させる調整機構を備えれば、第1塗布液による電極層の積層厚や、第1塗布液の吐出量と第2塗布液の吐出量のバランスなどをより自由に設定することができる。また、第2吐出口を、電極シート300に対向するように設ける場合に限らず、突出させた角部や側方部に設けることもできる。なお、簡易的には、
図6を用いて説明した第2本体ブロック120’を採用し、第2流路ブロック140’のz軸方向へのシフトに合わせて第2本体ブロック120’もシフトさせ、その状態で第1本体ブロック110と互いに固定できるように構成してもよい。
【0040】
以上説明した変形例を含む本実施形態の各ダイヘッドは、ダイヘッドの長手方向の端面である側方端面から塗布液が漏出しないように各ブロックの形状を定めたが、側方端面を封塞する側方プレートを組み付けるように構成してもよい。側方プレートを採用するのであれば、例えば第1マニホールド112をy軸方向へ貫通する溝構造としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
100、100’、100”…ダイヘッド、110…第1本体ブロック、111…第1供給孔、112…第1マニホールド、113…収容溝、120、120’…第2本体ブロック、121…第2供給孔、130…第1流路ブロック、140、140’…第2流路ブロック、141…接続部、142…有底溝、143…第2マニホールド、150…第3流路ブロック、170…第4流路ブロック、180…第5流路ブロック、210…第1チューブ、220…第2チューブ、230…搬送ローラー、300…電極シート