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  • 特開-建具枠及び建具枠の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147630
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】建具枠及び建具枠の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E06B1/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055258
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 茂
(72)【発明者】
【氏名】河合 厚
(72)【発明者】
【氏名】児玉 航
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA03
2E011KB01
2E011KC02
2E011KC04
2E011KD14
(57)【要約】
【課題】クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠と建具枠の施工方法を提供する。
【解決手段】建具枠10が備える2つの縦枠材11,12及び横枠材13は、開口2内に設けられて取り付けられる壁1の端部の端面の前端から後端までの少なくとも一部を覆う本体部14aと、本体部14aの前側と壁1の端部の前面とを覆う前側見切部14bと、本体部14aの後側と壁1の端部の後面とを覆う後側見切部15aとをそれぞれ有している。2つの縦枠材11,12及び横枠材13のそれぞれにおいて、前側見切部14bは本体部14aと一体に形成され、後側見切部15aは本体部14aと別体に形成されて本体部14aに取り付けられている。2つの縦枠材11,12の本体部14aは、上端部が横枠材13の本体部14aによって連結されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に設置される建具の建具枠であって、
上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、
上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面の前端から後端までの少なくとも一部を覆う本体部と、
上記本体部の前側に設けられ、上記本体部の前側と上記本体部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部と、
上記本体部の後側に設けられ、上記本体部の後側と上記本体部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とをそれぞれ有し、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記第1見切部は、上記本体部と一体に形成され、
上記第2見切部は、上記本体部と別体に形成され、上記本体部に取り付けられ、
上記2つの縦枠材の上記本体部は、上端部が上記横枠材の上記本体部によって連結されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項2】
請求項1に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第2見切部は、上記第1見切部と長さ及び幅が等しく、前後方向において上記第1見切部と重なる位置に設けられている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、
上記本体部と別体に形成され、上記第2見切部と該第2見切部の内端部から前方に延びて上記本体部と係合する係合部とが一体に形成されてなる見切部材と、
上記本体部と別体に形成され、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記本体部との隙間を後側から覆う遮蔽部材とをそれぞれ有し、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記本体部の後面と内面との角部には、上記見切部材の上記係合部が嵌まる切り欠きが形成され、
上記遮蔽部材は、上記切り欠きを覆うように上記本体部の内面の上記建具よりも後側の位置に固定され、
上記見切部材は、上記係合部が上記本体部と上記遮蔽部材との間に挟み込まれた状態で上記本体部及び上記壁の端部に固定されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項4】
請求項3に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記本体部には、該本体部を上記壁の端部に取り付けるためのビスを上記本体部の内面側から打ち込むためのビス穴が形成され、
上記ビス穴は、上記遮蔽部材によって覆われる位置に形成されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の建具枠の施工方法であって、
上記2つの縦枠材の上記本体部と上記横枠材の上記本体部とを組み立てて門型の枠本体を形成する枠本体組立工程と、
上記枠本体組立工程で組み立てられた上記枠本体を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける枠本体施工工程と、
上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部にそれぞれ上記第2見切部を取り付ける見切施工工程とを備えている
ことを特徴とする建具枠の施工方法。
【請求項6】
請求項4に記載の建具枠の施工方法であって、
上記2つの縦枠材の上記本体部と上記横枠材の上記本体部とを組み立てて門型の枠本体を形成する枠本体組立工程と、
上記枠本体組立工程で組み立てられた上記枠本体を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける枠本体施工工程と、
上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部にそれぞれ上記第2見切部を取り付ける見切施工工程と、
上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部に、それぞれ上記ビス穴が上記遮蔽部材によって覆われるように上記遮蔽部材を取り付ける遮蔽部材施工工程とを備えている
ことを特徴とする建具枠の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口に設置され、建具が取り付けられる建具枠及び建具枠の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の開口に建具を取り付ける場合、通常は、壁の施工後、クロスを貼る前に、開口に建具枠を設置し、その後、壁にクロスを貼りつける。しかしながら、壁及びクロスの施工作業と建具枠の設置作業とは、施工者が異なることが多く、上記工程順では、作業に無駄が多かった。そこで、従来、壁の仕上げ(クロス)施工後に設置可能な建具枠が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された建具枠は、左右の縦枠材と上方の横枠材とを有し、3つの枠材がそれぞれ略コ字形状の断面を有するように形成されている。建具枠をこのような形状とすることにより、建具枠によって壁の端部(開口の周囲)と共にクロスの端部も覆われることとなるため、建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行うことなく、クロス施工後の壁の開口部に建具枠を設置することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-70426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記建具枠では、3つの枠材の断面がコ字形状であるため、それぞれ別個に開口部に取り付ける必要があった。また、上記建具枠では、枠材を開口部に取り付ける際に、縦枠材と横枠材とが垂直に組み立てられるように角度を調整する必要もあり、設置作業を容易に行うことができなかった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠と建具枠の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、建具枠の3つの枠材を、壁の端部の端面の少なくとも一部を覆う本体部と、本体部の前後において本体部と共に壁の端部の前後面を覆う2つの見切部とを有するように構成すると共に、一方の見切部は本体部と一体に形成する一方、他方の見切部は本体部と別体に形成することとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に施工される建具の建具枠を前提とするものである。
【0009】
そして、第1の発明は、上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面の前端から後端までの少なくとも一部を覆う本体部と、上記本体部の前側に設けられ、上記本体部の前側と上記本体部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部と、上記本体部の後側に設けられ、上記本体部の後側と上記本体部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とをそれぞれ有し、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第1見切部は、上記本体部と一体に形成され、上記第2見切部は、上記本体部と別体に形成され、上記本体部に取り付けられ、上記2つの縦枠材の上記本体部は、上端部が上記横枠材の上記本体部によって連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、建具枠の3つの枠材が、壁の端面の前端から後端までの少なくとも一部を覆う本体部の前後に、本体部と共に壁の端部の前後面を覆う第1及び第2見切部を有するように構成されている。そのため、建具枠の第1及び第2見切部によって開口を区画する壁の端部と共にクロスの端部も覆われることとなるため、従来のように建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行う必要がなく、クロス施工後の壁の開口に建具枠を設置することが可能となる。
【0011】
また、第1の発明では、2つの見切部の一方の第1見切部は本体部と一体に形成し、他方の第2見切部は本体部と別体に形成することとしている。そのため、第1の発明によれば、前後に見切部を有する建具枠であっても、3つの枠材の本体部を門型に組み立ててから開口に設置することができる。従って、第1の発明によれば、従来のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付けるために枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がないため、容易に建具枠を開口に設置することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第2見切部は、上記第1見切部と長さ及び幅が等しく、前後方向において上記第1見切部と重なる位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明では、本体部と別体に形成されて本体部の後側に設けられる第2見切部が、本体部と一体に形成されて本体部の前側に設けられる第1見切部と同じ大きさに形成されて、前後方向に重なる位置に設けられている。このような構成によれば、建具枠を前側から見たときと後側から見たときの意匠が同様で統一感のあるものとなるため、建具枠の意匠性を向上することができる。また、2つの見切部が前後方向に重なることにより、建具枠の各枠材の内面における段差が少なくなる点からも建具枠の意匠性を向上することができる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、上記本体部と別体に形成され、上記第2見切部と該第2見切部の内端部から前方に延びて上記本体部と係合する係合部とが一体に形成されてなる見切部材と、上記本体部と別体に形成され、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記本体部との隙間を後側から覆う遮蔽部材とをそれぞれ有し、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記本体部の後面と内面との角部には、上記見切部材の上記係合部が嵌まる切り欠きが形成され、上記遮蔽部材は、上記切り欠きを覆うように上記本体部の内面の上記建具よりも後側の位置に固定され、上記見切部材は、上記係合部が上記本体部と上記遮蔽部材との間に挟み込まれた状態で上記本体部及び上記壁の端部に固定されていることを特徴とするものである。
【0015】
第3の発明では、建具枠の3つの枠材が、それぞれ遮蔽部材を有するように構成されているため、建具が開口を閉鎖する位置にあるときに建具と本体部との間の隙間が遮蔽部材によって後側から覆われる。よって、第3の発明によれば、建具と建具枠との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、第3の発明では、遮蔽部材は、本体部の切り欠きを覆うように本体部の内面に固定され、切り欠きに嵌まる見切部材の係合部を本体部とで挟持している。つまり、第3の発明では、建具枠の3つの枠材が有する遮蔽部材が、明かり漏れを抑制する役割を有するだけでなく、第2見切部を有する見切部材の係合部を本体部とで挟持する役割を兼ねている。このような構成によれば、第2見切部を所望の位置に容易に取り付けることができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記本体部には、該本体部を上記壁の端部に取り付けるためのビスを上記本体部の内面側から打ち込むためのビス穴が形成され、上記ビス穴は、上記遮蔽部材によって覆われる位置に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明では、建具枠の3つの枠材が有する遮蔽部材が、明かり漏れを抑制する役割と見切部材の係合部を挟持する役割とを有するだけでなく、本体部を壁の端部に取り付けるためのビスを隠す役割も果たす。このような構成によれば、建具枠の施工後、本体部を取り付けるためのビスが遮蔽部材によって隠された意匠性に優れた建具枠を提供することができる。
【0018】
第5の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明に係る建具枠の施工方法であって、上記2つの縦枠材の上記本体部と上記横枠材の上記本体部とを組み立てて門型の枠本体を形成する枠本体組立工程と、上記枠本体組立工程で組み立てられた上記枠本体を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける枠本体施工工程と、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部にそれぞれ上記第2見切部を取り付ける見切施工工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
第6の発明は、第4の発明に係る建具枠の施工方法であって、上記2つの縦枠材の上記本体部と上記横枠材の上記本体部とを組み立てて門型の枠本体を形成する枠本体組立工程と、上記枠本体組立工程で組み立てられた上記枠本体を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける枠本体施工工程と、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部にそれぞれ上記第2見切部を取り付ける見切施工工程と、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付けられた上記枠本体の3つの上記本体部に、それぞれ上記ビス穴が上記遮蔽部材によって覆われるように上記遮蔽部材を取り付ける遮蔽部材施工工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0020】
第5及び第6の発明によれば、建具枠の3つの枠材を開口に設置する前に、該3つの枠材の本体部を予め組み立てて門型の枠本体とした上で開口に設置し、枠本体の設置後に、各本体部に第2見切部を取り付けることとしている。このような施工方法によれば、従来の建具枠のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がない。よって、第5の発明によれば、前後に見切部を有する建具枠であっても容易に建具枠を開口に設置することができる。
【0021】
また、第6の発明によれば、枠本体を開口に設置した後、枠本体の3つの本体部のそれぞれに遮蔽部材を取り付けるだけで、本体部を壁の端部に取り付けるためのビスを隠すことができ、意匠性に優れた建具枠を容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した如く、本発明によると、建具枠の3つの枠材を、本体部と2つの見切部とを有するように構成すると共に、一方の見切部は本体部と一体に形成する一方、他方の見切部は本体部と別体に形成することとしたため、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠を提供することができる。
【0023】
また、本発明によると、開口に設置する前に、建具枠の3つの枠材の本体部を予め組み立てた上で開口に設置し、その後、各本体部に第2見切部を取り付けることとしたため、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る建具枠を備えた建具装置の正面図である。
図2図2は、図1の建具装置の横断面図である。
図3図3は、図1の建具装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
《発明の実施形態1》
-建具装置の概略構成-
図1は、壁1の開口2に設置された本発明の実施形態1に係る建具枠10を備えた建具装置100の正面図であり、図2は建具装置100の横断面図であり、図3は建具装置100の縦断面図である。以下では、説明の便宜上、図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0027】
図1図3に示すように、壁1には、正面視において矩形状の開口2が形成されている。壁1は、開口2の左右両側に位置する躯体としての柱3,3と、開口2の上側に位置して柱3,3間に横架された躯体としてのまぐさ4と、複数の壁下地材5,…,5とを有している。壁1は、柱3及びまぐさ4からなる壁1の躯体の前後両側に、複数の壁下地材5,…,5が施工された大壁構造となっている。なお、開口2の下端は、沓摺り6によって区画されている。
【0028】
本実施形態1では、建具装置100は、壁1の開口2に設置される建具枠10と、ドア(建具)50とを備えている。ドア50は、建具枠10に上下の蝶番51,51によって揺動可能に取り付けられ、開閉操作用のレバー52が取り付けられている。
【0029】
本発明の特徴は、建具枠10にある。建具枠10は、開口2を区画する壁1の端部に取り付けられている。なお、本実施形態1では、壁1の躯体(柱3,3とまぐさ4)の内面(開口2側の面)にはスペーサ7が取り付けられている。スペーサ7は、壁1の厚さ以下の幅を有する厚さ10~20mmの長尺の木質板材からなっている。建具枠10は、スペーサ7を含む壁1の端部に取り付けられている。
【0030】
-建具枠の詳細構成-
建具枠10は、開口2の左端及び右端を区画する壁1の端部(左端部、右端部)に取り付けられる左右の縦枠材11,12と、開口2の上端を区画する壁1の端部(上端部)に取り付けられる水平方向の横枠材13とを備えた三方枠である。
【0031】
図2及び図3に示すように、縦枠材11,12及び横枠材13(以下、単に枠材11~13という。)は、いずれも例えば木質材からなっている。枠材11~13は、基本的には同じ断面構造を有している。枠材11~13は、本体部材14と、見切部材15と、遮蔽部材16とを備えている。なお、枠材11~13は、樹脂材や鋼材で構成されていてもよい。
【0032】
本体部材14は、断面がL字形状の長尺の木質板状部材からなる。本体部材14は、本体部14aと、前側見切部(第1見切部)14bとを有している。
【0033】
本体部14aは、壁1の厚さと同程度の幅を有する厚さ20~30mmの長尺の板状部分である。本体部14aは、開口2内に設けられ、壁1の端部の端面(本実施形態1では、スペーサ7の内面)に外面が当接するように取り付けられている。本体部14aは、取り付けられる壁1の端部の端面を前端から後端に亘って覆う大きさに形成されている。
【0034】
前側見切部14bは、本体部14aの厚さとスペーサ7の厚さを足し合わせた長さより大きい幅(35~55mm)を有する厚さ5~15mmの長尺の板状部分である。前側見切部14bは、本体部14aの前側に設けられ、本体部14aの前側と本体部14aが取り付けられる壁1の端部の前面とを覆っている。前側見切部14bは、本体部14aと一体に形成され、前側見切部14bの内面と本体部14aの内面とは段差なく連続している。言い換えると、前側見切部14bの内面と本体部14aの内面とで構成される本体部材14の内面は、平坦面に構成されている。
【0035】
本体部材14の本体部14aの内面と後面との間の角部には、断面矩形状の切り欠き溝14cが形成されている。切り欠き溝14cは、幅(縦枠材11,12では左右方向の幅、横枠材13では上下方向の幅)が5~15mm、前後方向の深さが10~15mmとなるように形成されている。切り欠き溝14cは、後述する見切部材15の係合部15bが挿入されることにより、係合部15bと係合する。
【0036】
本体部材14の本体部14aの内面(開口2側の面)には、本体部材14を壁1の端部に取り付けるためのビス21を、本体部14aの内面側から打ち込むためのビス穴14dが形成されている。ビス穴14dは、本体部14aの内面の前後方向の中央より後側に形成されている。本実施形態1では、ビス穴14dは、ビス21を打ち込む前に本体部14aを厚さ方向に貫くものであり、本体部14aの内面側が壁1側よりも内径が大きい段付き構造(段堀構造)を有している。ビス穴14dは、大径部分にビス21の頭部全体を収容できる大きさに形成されている。なお、ビス穴14dは、ビス21を打ち込む前に本体部14aを厚さ方向に貫かないものであってもよく、例えば、ビス21の頭部全体を収容できる大径部分のみで構成されていてもよい。
【0037】
ビス穴14dは、複数設けられ、本体部14aの長さ方向に間隔を空けて設けられている。本体部材14は、本体部14aの内面側から壁1の端部に向かってビス21を打ち込むことにより、壁1の端部に取り付けられている。また、本体部材14の本体部14aの内面には、ビス穴14dの後側に、遮蔽部材16を本体部14aに取り付けるための雇い実22を収容する実溝も形成されている。実溝は、本体部材14の本体部14aの上端から下端に亘るように形成されている。
【0038】
見切部材15は、断面がL字形状の長尺の木質板状部材からなる。見切部材15は、後側見切部(第2見切部)15aと係合部15bとを有している。
【0039】
後側見切部15aは、前側見切部14bと等しい長さ及び幅(35~55mm)を有する厚さ5~15mmの長尺の板状部分である。後側見切部15aは、本体部材14の本体部14aの後側に設けられ、本体部14aの後側と本体部14aが取り付けられる壁1の端部の後面とを覆っている。
【0040】
係合部15bは、後側見切部15aの内側端部から前側に突出する突出高さが5~20mmで厚さ5~15mmの長尺の板状部分である。係合部15bは、本体部材14の本体部14aの切り欠き溝14cに挿入される。係合部15bは、切り欠き溝14cに挿入された状態で、見切部材15の内面(後側見切部15aの内面と係合部15bの内面)が本体部材14の内面と同一平面上に位置するように、厚さが切り欠き溝14cの幅と略等しくなるように形成されている。
【0041】
見切部材15は、係合部15bが本体部材14の切り欠き溝14cに挿入された状態で、接着剤及びピンネイル等の小径の釘部材で、壁1の端部及び本体部材14に固定されている。なお、本体部材14の前側見切部14bと見切部材15の後側見切部15aとは、長さ及び幅が等しい。また、見切部材15の係合部15bを本体部材14の切り欠き溝14cに挿入すると、見切部材15の内面(後側見切部15aの内面と係合部15bの内面)が本体部材14の内面と同一平面上に位置付けられ、前側見切部14bと後側見切部15aとが前後方向において重なる位置に設けられることとなる。
【0042】
なお、係合部15bの前後方向の突出高さは、切り欠き溝14cの前後方向の深さよりも低くなるように形成されている。このような構成により、係合部15bの切り欠き溝14c内への挿入長さを変えることができ、壁1の厚さが本体部材14の本体部14aの幅よりも厚い場合にも、係合部15bを切り欠き溝14c内に浅く挿入することにより、枠材11~13を壁1の端部に取り付けることができる。
【0043】
遮蔽部材16は、断面が矩形状の長尺の木質板状部材からなる。遮蔽部材16は、本体部材14の本体部14aの幅の1/2程度の幅(15~45mm)を有する厚さ10~20mmの長尺の板状部材である。遮蔽部材16は、本体部材14の本体部14aの内面に取り付けられている。遮蔽部材16には、雇い実22を収容する実溝が形成され、遮蔽部材16は、雇い実22と接着剤とによって本体部材14の本体部14aに取り付けられる。実溝は、遮蔽部材16の上端から下端に亘るように形成されている。雇い実22は、本体部材14の本体部14a及び遮蔽部材16の実溝によって形成される空洞内に嵌まる大きさの板状部材によって形成されている。なお、遮蔽部材16の本体部材14の本体部14aへの取り付け手法は雇い実継ぎに限られない。ダボで接合することとしてもよく、雄実及び雌実を形成して接合することとしてもよい。
【0044】
図1図3に示すように、遮蔽部材16の厚さ(10~20mm)は、ドア50が開口2を閉鎖する位置にあるときに建具枠10(本体部材14の本体部14a)とドア50の端面(縦枠材11,12では側端面、横枠材13では上端面)との間の隙間(3~8mm)よりも厚い。そのため、枠材11~13の各本体部材14の本体部14aに遮蔽部材16を取り付けると、ドア50が開口2を閉鎖する位置にあるときに建具枠10とドア50との間の隙間が、遮蔽部材16によって後側から覆われるため、建具枠10とドア50との間の隙間からの明かり漏れが抑制される。つまり、遮蔽部材16は、ドア50と建具枠10との間の隙間からの明かり漏れを抑制する役割を有している。
【0045】
また、図2及び図3に示すように、遮蔽部材16は、本体部14aの切り欠き溝14cの内側を閉塞する位置に取り付けられ、切り欠き溝14cに見切部材15の係合部15bが挿入されることにより、本体部材14の本体部14aとの間に係合部15bを挟持する。つまり、遮蔽部材16は、ドア50と建具枠10との間の隙間からの明かり漏れを抑制する役割を有するだけでなく、後側見切部15aを有する見切部材15の係合部15bを本体部材14の本体部14aとの間に挟持する役割を兼ねている。
【0046】
さらに、遮蔽部材16は、本体部材14の本体部14aの内面のドア50よりも後側でビス穴14dを閉塞する位置に取り付けられる。そのため、各枠材11~13において、本体部材14をビス21で壁1の端部に取り付けた後、本体部材14の本体部14aに遮蔽部材16を取り付けると、ビス21及びビス穴14dが遮蔽部材16で覆われて見えなくなる。つまり、遮蔽部材16は、明かり漏れを抑制する役割と見切部材15の係合部15bを挟持する役割とを有するだけでなく、本体部14aを壁1の端部に取り付けるためのビス21を隠す役割も有している。
【0047】
また、図2に示すように、左側の縦枠材11の遮蔽部材16には、前面にパッキン16aが取り付けられている。パッキン16aは、遮蔽部材16の前面から前側に突出し、閉状態のドア50に当接するように湾曲した遮蔽部材16と同程度の長さの長尺の樹脂製の湾曲板材によって構成されている。遮蔽部材16は、このようにパッキン16aが取り付けられることにより、戸当たりとしての役割も有している。
【0048】
-建具枠の施工方法-
次に、建具枠10の施工方法について説明する。
【0049】
まず、枠材11~13の本体部14aを備える本体部材14を組み立てて門型の枠本体を形成する(枠本体組み立て工程)。具体的には、左右の縦枠材11,12の本体部材14の上端部間に、横枠材13の本体部材14を、横枠材13の本体部材14の木口面が左右の縦枠材11,12の本体部材14の上端部の内側面に当接するように差し渡し、ビス(図示省略)で固定する。このようにして枠材11~13の本体部材14は、いわゆる縦勝ちの配置で門型に組み立てられる。
【0050】
枠本体組み立て工程の後、組み立てられた門型の枠本体を、開口2を区画する壁1の端部に取り付ける(枠本体施工工程)。具体的には、まず、枠本体を、壁1の前側から開口2に向かって後退させて、各本体部材14の前側見切部14bの後面が壁1の端部の前面に当接する位置に配置する。次に、各本体部材14と壁1の躯体(柱3及びまぐさ4)との間に、スペーサ7を差し込む。スペーサ7は、壁1の後側から差し込む。そして、各本体部材14の本体部14aの内面側から壁1の端部に向かってビス穴14d内にビス21を打ち込み、各本体部材14を壁1の端部に取り付ける(固定する)。
【0051】
枠本体施工工程の後、枠本体の各本体部材14にそれぞれ後側見切部15aを備える見切部材15を取り付ける(見切施工工程)。具体的には、まず、見切部材15の壁1の端部及び本体部材14との当接部分に接着剤を塗布する。そして、見切部材15を、壁1の後側から前進させて、見切部材15の係合部15bを本体部材14の切り欠き溝14cに挿入し、見切部材15の後側見切部15aが壁1の端部の後面に当接する位置に配置する。その後、見切部材15に対して後側からピンネイル等の小径の釘部材を打ち込むことにより、見切部材15を壁1の端部と本体部材14とに取り付ける(固定する)。
【0052】
見切施工工程の後、遮蔽部材16を本体部材14の本体部14aの内面に取り付ける(遮蔽部材施工工程)。具体的には、まず、遮蔽部材16の実溝及び本体部材14の実溝に接着剤を注入し、遮蔽部材16及び本体部材14の互いの当接面の少なくとも一方に接着剤を塗布する。その後、雇い実22を遮蔽部材16の実溝及び本体部材14の実溝の一方に挿入し、他方の実溝に雇い実22が嵌まるように遮蔽部材16を本体部材14の内面に押し付けることにより、遮蔽部材16を本体部材14の内面に取り付ける(固定する)。このとき、各本体部材14のビス穴14dが、遮蔽部材16によって覆われるように遮蔽部材16を配置し、本体部材14に取り付ける。
【0053】
以上の工程により、建具枠10が開口2に施工される。
【0054】
-実施形態1の効果-
本実施形態1の建具枠10では、建具枠10を構成する3つの枠材11~13が、壁1の端面を前端から後端に亘って覆う本体部14aの前後に見切部14b,15aを有するように構成されている。そのため、建具枠10によって開口2を区画する壁1の端部と共にクロスの端部も覆われることとなるため、従来のように建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行う必要がなく、クロス施工後の壁1の開口2に建具枠10を設置することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態1では、2つの見切部14b,15aの一方の前側見切部(第1見切部)14bは本体部14aと一体に形成し、他方の後側見切部(第2見切部)15aは本体部14aと別体に形成することとしている。そのため、本実施形態1によれば、前後に見切部14b,15aを有する建具枠10であっても、3つの枠材11~13の本体部14aを門型に組み立ててから開口2に設置することができる。従って、本実施形態1によれば、従来のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付けるために枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がないため、容易に建具枠10を開口2に設置することができる。
【0056】
また、本実施形態1では、本体部14aと別体に形成されて本体部14aの後側に設けられる後側見切部15aが、本体部14aと一体に形成されて本体部14aの前側に設けられる前側見切部14bと同じ大きさに形成されて、前後方向に重なる位置に設けられている。このような構成によれば、建具枠10を前側から見たときと後側から見たときの意匠が同様で統一感のあるものとなるため、建具枠10の意匠性を向上することができる。また、2つの見切部14b,15aが前後方向に重なることにより、建具枠10の各枠材11~13の内面における段差が少なくなる点からも建具枠10の意匠性を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13が、それぞれ遮蔽部材16を有するように構成されているため、ドア50が開口2を閉鎖する位置にあるときにドア50と本体部14aとの間の隙間が遮蔽部材16によって後側から覆われる。よって、本実施形態1によれば、ドア50と建具枠10との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、本実施形態1では、遮蔽部材16は、本体部14aの切り欠き溝14cを覆うように本体部14aの内面に固定され、切り欠き溝14cに嵌まる見切部材15の係合部15bを本体部14aとで挟持している。つまり、本実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13が有する遮蔽部材16が、明かり漏れを抑制する役割を有するだけでなく、後側見切部15aを有する見切部材15の係合部15bを本体部14aとで挟持する役割を兼ねている。このような構成によれば、後側見切部15aを所望の位置に容易に取り付けることができる。
【0058】
また、本実施形態1では、各枠材11~13の本体部14aに、該本体部14aを壁1の端部に取り付けるためのビス21が打ち込まれるビス穴14dを、遮蔽部材16によって覆われる位置に形成することとしている。つまり、本実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13が有する遮蔽部材16が、明かり漏れを抑制する役割と見切部材15の係合部15bを挟持する役割とを有するだけでなく、本体部14aを壁1の端部に取り付けるためのビス21を隠す役割も果たす。このような構成によれば、建具枠10の施工後、本体部14aを取り付けるためのビス21が遮蔽部材16によって隠された意匠性に優れた建具枠10を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態1に係る建具枠10の施工方法では、建具枠10の3つの枠材11~13を開口2に設置する前に、該3つの枠材11~13の本体部材14(本体部14aを備える)を予め組み立てて門型の枠本体とした上で開口2に設置し、枠本体の設置後に、各本体部14aに見切部材15(後側見切部15aを備える)を取り付けることとしている。このような施工方法によれば、従来の建具枠のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がない。よって、本実施形態1によれば、前後に見切部14b,15aを有する建具枠10であっても、開口2内において角度を調整する等の手間なく容易に開口に設置することができる。
【0060】
また、本実施形態1では、枠本体を開口2に設置した後、枠本体の3つの本体部14aのそれぞれに遮蔽部材16を取り付けるだけで、本体部14aを壁1の端部に取り付けるためのビス21を隠すことができ、意匠性に優れた建具枠10を容易に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、建物の開口に設置され、建具が取り付けられる建具枠及び建具枠の施工方法に有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 壁
2 開口
10 建具枠
11 縦枠材
13 横枠材
14a 本体部
14b 前側見切部(第1見切部)
14c 切り欠き溝(切り欠き)
14d ビス穴
15 見切部材
15a 後側見切部(第2見切部)
15b 係合部
16 遮蔽部材
21 ビス
50 ドア(建具)
図1
図2
図3